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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152193
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】車両用ベントダクト
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/26 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
B60H1/26 611A
B60H1/26 671A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066236
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星川 祐輔
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA14
3L211BA55
3L211DA17
3L211DA95
(57)【要約】
【課題】吸音材を用いて車外からの騒音やバタフライの衝突音を低減可能であるとともに車室内側への突出量をより少なくして車室内が狭くなることを抑制することができる、車両用ベントダクトを提供する。
【解決手段】車両に設けられて車室内の空気を車外へ排出可能な車両用ベントダクト10であって、車室内と車外とを連通するダクト22A、22Bと、開口が形成された開口面(23A、23B)と、を有するダクト本体20と、ダクト本体20に対して揺動自在に接続されてダクト22A、22Bを開閉するバタフライ30と、を有し、バタフライ30が、板状に成形した繊維からなる吸音材パッドと、揺動の軸心となるヒンジ(32A)と、を有する吸音材パッドユニット31とされている。また吸音材パッドユニット31は、網状かつ袋状に形成されたネット部とネット部に収容された吸音材パッド、あるいは吸音材パッドのみ、で構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられて車室内の空気を車外へ排出可能な車両用ベントダクトであって、
前記車室内と前記車外とを連通するダクトと、前記ダクトと連通する開口が形成された開口面と、を有するダクト本体と、
前記ダクト本体に対して揺動自在に接続されて前記開口面との接触と離間に伴う前記開口の開放または閉塞により前記ダクトを開閉するバタフライと、
を有し、
前記バタフライが、板状に成形した繊維からなる吸音材パッドと、前記ダクト本体に固定されて揺動の軸心となるヒンジと、を有する吸音材パッドユニットとされている、
車両用ベントダクト。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ベントダクトであって、
前記吸音材パッドユニットは、
網状かつ袋状に形成されたネット部と、
前記ネット部に収容された前記吸音材パッドと、
を有する、
車両用ベントダクト。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用ベントダクトであって、
前記ダクトが閉状態の場合に前記バタフライと前記ダクト本体とが接触する接触部の少なくとも一部における前記バタフライの側は、前記ネット部が省略されて前記閉状態の場合に前記吸音材パッドが前記ダクト本体に接触するように露出されている、
車両用ベントダクト。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用ベントダクトであって、
前記吸音材パッドユニットおよび前記ヒンジは、
前記吸音材パッドのみで一体成形されている、
車両用ベントダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられて車室内の空気を車外へ排出可能な車両用ベントダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、車室内に外気導入した際に車室内に流入させた空気を車外に排出させたり、回動式のドアを閉めた際に圧縮された車室内の空気を排出したりするために、車室内の空気を車外へ排出可能な車両用ベントダクトが設けられている。
【0003】
車両用ベントダクトは、一般的には、車両のリアバンパに隠れる左右の車体側面パネルに設けられている。車両用ベントダクトは、車室内と車外とを連通するダクトと、当該ダクトの車外側の開口部を開閉するように車外側に揺動自在とされた板状のバタフライとを有し、空気の流れや圧力に応じてバタフライが自動的に揺動してダクトが開閉する構造とされている。また前記ダクトは、例えば車室内側に延長されて下方に湾曲する車室内延長部を有しており、当該車室内延長部の内壁面には、吸音材が貼り付けられている。
【0004】
前記バタフライは、普段はダクトを閉じており、車外から排気ガスやダスト等が車室内に浸入することを防止している。また車両用ベントダクトには、車外から車室内に浸入する騒音を低減するために、前記吸音材が設けられている。当該吸音材を設けるために前記車室内延長部が車室内に延長されているが、車室内に突出した車室内延長部によって車室内が狭くなるので、当該車室内延長部の省略が望まれている。しかし、車室内延長部を省略すると吸音材も省略されてしまい、車外からの騒音を適切に低減させることができないので、単純に車室内延長部を省略することは好ましくない。
【0005】
またバタフライの材質は、一般的には、オレフィン系エラストマー(TPO)や、エチレンプロピレンゴム(EPDM)などが用いられ、ゴムのような性質を持ちながらプラスチックのように成形加工できる材質とされて薄板状とされている。このため、バタフライは、例えば車両のドアを閉めたときには車室内の圧力によってダクトを開く方向に瞬時に揺動して車室内の空気を排出し、その直後にはダクトを閉じる方向に自重で揺動してダクトに衝突するので衝突音が発生しやすい。当該バタフライの衝突音は、前記吸音材にて低減されるが、車室内延長部と吸音材を省略してしまうと、当該衝突音を適切に低減させることができないので好ましくない。
【0006】
例えば特許文献1には、車室内と車外とを連通するダクトを有する箱状のダクト本体と、ダクト本体内に収容された吸音材と、ダクトを開閉する弁体と、を有する車両用ベントダクト構造が開示されている。ダクト本体は、車両のリヤクォータパネルの開口部を挟んで車外側に配置された外枠と、前記開口部の車室内側に配置された内枠と、が連結された箱状とされている。吸音材は、千鳥状の複数の山谷部を有して山部と谷部が空間をあけて対向するように配置されて車室内から車外へ至るラビリンス状の空気の流路を形成してダクト本体内に収容されている。弁体は、ダクト本体における車外側に配置されて車外側に揺動自在とされてダクトを開閉している。
【0007】
また特許文献2には、車室内と車外とを連通するダクトを有するダクト本体と、ダクト本体の車室内側に取り付けられる吸音室部と、ダクトを開閉するバタフライ弁と、を有する車両用ベントダクトが開示されている。ダクト本体は、車室内空気を車外へ流出させる空気流出口(ダクト)が形成された枠体とされている。バタフライ弁は、空気流出口を開閉するように車外側へ開閉自在に配置されている。吸音室部は、ダクト本体に対して所定距離をあけて略平行となるように(対向するように)車室内側に配置された底面部と、底面部とダクト本体とを接合する側面部とを備えて箱状とされて車室内側に取り付けられている。そして底面部におけるダクト本体に対向している内壁面には吸音材が設けられ、側面部には空気流通口が開口されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-12575号公報
【特許文献2】特開2002-172927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された車両用ベントダクト構造において、箱状のダクト本体は、リヤクォータパネルの開口部から車外側への突出長さと、前記開口部から車室内側への突出長さは比較的長く、吸音材で吸音する距離が比較的長く設定されている。従って、車外から浸入する騒音や弁体の衝突音は、比較的長く設定されて千鳥状の山谷を通過しながら車室内へ到達するので、車外からの騒音や弁体の衝突音を低減する効果は比較的大きい。しかし、ダクト本体の車室内側への突出長さによって車室内が狭くなるので好ましくない。
【0010】
また特許文献2に記載された車両用ベントダクトは、ダクト本体から車室内側へ突出するように設けられた吸音室部(車室内延長部に相当)に吸音材が設けられているので、車外から浸入する騒音や弁体の衝突音を低減できる。しかし、吸音室部の底面部と側面部が車室内側に比較的大きく突出しており、車室内が狭くなるので好ましくない。
【0011】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、吸音材を用いて車外からの騒音やバタフライの衝突音を低減可能であるとともに車室内側への突出量をより少なくして車室内が狭くなることを抑制することができる、車両用ベントダクトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、第1の発明は、車両に設けられて車室内の空気を車外へ排出可能な車両用ベントダクトであって、前記車室内と前記車外とを連通するダクトと、前記ダクトと連通する開口が形成された開口面と、を有するダクト本体と、前記ダクト本体に対して揺動自在に接続されて前記開口面との接触と離間に伴う前記開口の開放または閉塞により前記ダクトを開閉するバタフライと、を有し、前記バタフライが、板状に成形した繊維からなる吸音材パッドと、前記ダクト本体に固定されて揺動の軸心となるヒンジと、を有する吸音材パッドユニットとされている、車両用ベントダクトである。
【0013】
次に、第2の発明は、上記第1の発明に係る車両用ベントダクトであって、前記吸音材パッドユニットは、網状かつ袋状に形成されたネット部と、前記ネット部に収容された前記吸音材パッドと、を有する、車両用ベントダクトである。
【0014】
次に、第3の発明は、上記第2の発明に係る車両用ベントダクトであって、前記ダクトが閉状態の場合に前記バタフライと前記ダクト本体とが接触する接触部の少なくとも一部における前記バタフライの側は、前記ネット部が省略されて前記閉状態の場合に前記吸音材パッドが前記ダクト本体に接触するように露出されている、車両用ベントダクトである。
【0015】
次に、第4の発明は、上記第1の発明に係る車両用ベントダクトであって、前記吸音材パッドユニットおよび前記ヒンジは、前記吸音材パッドのみで一体成形されている、車両用ベントダクトである。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、ダクト本体に吸音材が収容された特許文献1や、ダクト本体から車室内側へ延長した吸音室部(車室内延長部)に吸音材を有する特許文献2と比較して、バタフライが吸音材パッドユニットとされている。従って、ダクト本体から車室内側へ延長させる車室内延長部を省略しても、適切に吸音材を備えることができる。また、バタフライが吸音材パッドユニットであるので、バタフライとダクト本体との衝突音を低減させることができる。これにより、吸音材を用いて車外からの騒音やバタフライの衝突音を低減可能であるとともに、車室内延長部を省略して車室内側への突出量をより少なくすることが可能となり、車室内が狭くなることを抑制することができる。
【0017】
第2の発明によれば、ダクト本体に対して揺動可能に接続されてダクトを開閉するバタフライを、容易に実現することができる。また、吸音材パッドは袋状のネット部に収容されているだけなので、ユーザの希望に沿うように吸音材パッドを交換することが容易である。
【0018】
第3の発明によれば、ダクトが閉状態の場合のバタフライとダクト本体との接触部の少なくとも一部は、吸音材パッドとダクト本体とが接触する。これにより、バタフライがダクトを閉状態にする際、バタフライとダクト本体との衝突音がより低減される。
【0019】
第4の発明によれば、吸音材パッドユニットおよびヒンジが吸音材パッドのみで一体成形されているので、部品点数が削減されるとともに、バタフライが揺動してダクトに衝突した際の衝突音を、さらに低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】車両に取り付けられた車両用ベントダクトの位置の例を説明する図である。
図2】車両用ベントダクトの外観と構造を説明する斜視図である。
図3】車両用ベントダクトの構造とバタフライの動作を説明する側面図(一部断面図)である。
図4】ダクト本体の外観と構造を説明する斜視図である。
図5図4に示すダクト本体をV方向から見た斜視図である。
図6】ネット部と吸音材パッドで構成されたバタフライ(吸音材パッドユニット)の外観を説明する図である。
図7】ネット部の一部が省略されて(開口されて)吸音材パッドが露出されている例を説明する図である。
図8】バタフライ(吸音材パッドユニット)のヒンジとダクト本体のヒンジ取付部の例(取付例1)を説明する図である。
図9】バタフライ(吸音材パッドユニット)のヒンジとダクト本体のヒンジ取付部の例(取付例2)を説明する図である。
図10図8に示すバタフライ(吸音材パッドユニット)に対して、ネット部を省略して吸音材パッドでバタフライ(吸音材パッドユニット)を構成した例を説明する図である。
図11図9に示すバタフライ(吸音材パッドユニット)に対して、ネット部を省略して吸音材パッドでバタフライ(吸音材パッドユニット)を構成した例を説明する図である。
図12】従来の車両用ベントダクトの外観と構造の例を説明する斜視図である。
図13図12に示す従来の車両用ベントダクトの構造とバタフライの動作を説明する側面図(一部断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の車両用ベントダクト10について、図面を用いて説明する。なお、図中に上下、前後、左右の各軸が記載されている場合、各軸は、図1に示す車両1の上下方向、前後方向、左右方向を示している。
【0022】
<車両用ベントダクト10の車両1への取付位置(図1)と、車両ベントダクトの外観と構造(図2図3)>
図1に示すように、車両用ベントダクト10は、一般的には、車両1のリアバンパ2に隠れる位置の左右の車体側面パネルに取り付けられている。なお、図1に示す車両1の左右に設けられたそれぞれの車両用ベントダクト10は、同じ構造であるので、以下、左後方に設けられた車両用ベントダクト10を例として説明する。
【0023】
図2及び図3に示すように、車両用ベントダクト10は、ダクト本体20と、ダクト本体20に形成されたダクト22A、22Bを開閉するように揺動自在とされたバタフライ30とを有している。バタフライ30が空気の流れや圧力に応じて自動的に揺動してダクトを開閉することで、車両用ベントダクト10は、外気導入した際に車室内に流入させた空気を車外に排出させたり、回動式のドアを閉めた際に圧縮された車室内の空気を排出したりする。車両用ベントダクト10は、車両1に設けられて車室内の空気を車外へ排出可能とされている。
【0024】
<ダクト本体20の外観と構造(図4図5)>
ダクト本体20は、図4及び図5に示すように、樹脂等にて成形された略箱状の形状を有し、本体上面21A、本体側面21L、21R、本体底面21B、本体中面21M等を有している。本体上面21Aと本体側面21L、21Rと本体中面21Mとで囲まれた空間が、ダクト22Aであり、本体底面21Bと本体側面21L、21Rと本体中面21Mとで囲まれた空間が、ダクト22Bである。ダクト22A、22Bは、車室内と車外とを連通している。
【0025】
ダクト22A、22Bのそれぞれには、所定傾斜角度θ1(図3参照)を有するように車外開口面23A、23B(開口面に相当)が設けられている。車外開口面23Aは、本体上面21Aと本体側面21L、21Rと本体中面21Mと隙間なく接続されており、車外開口面23Bは、本体底面21Bと本体側面21L、21Rと本体中面21Mと隙間なく接続されている。また車外開口面23Aには複数の貫通孔である通気口24A(ダクトと連通する開口に相当)が形成されており、車外開口面23Bには複数の貫通孔である通気口24B(ダクトと連通する開口に相当)が形成されている。
【0026】
また図5に示すように、ダクト22Aには、ダクト22A内の空気の通路を複数の通路に仕切るとともにダクト本体20の剛性を向上させる複数の仕切板21Sが設けられている。同様に、ダクト22Bには、ダクト22B内の空気の通路を複数の通路に仕切るとともにダクト本体20の剛性を向上させる複数の仕切板21Tが設けられている。通気口24A、24Bは、仕切板21S、21Tで仕切られた各通路を開口している。
【0027】
また本体上面21Aと本体中面21Mには、バタフライ30のヒンジ32A(図3参照)を取り付けるためのヒンジ取付部25A、25Bがそれぞれ形成されている。そして本体上面21Aと本体底面21Bのそれぞれには、車両用ベントダクト10(図1参照)を車両に取り付けるための車両取付部26A、26Bが、それぞれ設けられている。
【0028】
<バタフライ30(吸音材パッドユニット31)の外観と構造(図6図9)>
バタフライ30は、図6図9に示すように、網状かつ上面が開口した袋状に形成されたネット部32と、袋状のネット部32内に収容される吸音材パッド33等にて構成されている。図6図9に示すバタフライ30、30Bは、ネット部32と吸音材パッド33にて吸音材パッドユニット31、31Bが構成されている。バタフライ30、30Bは、ダクト本体20に対して揺動自在に接続されて車外開口面23A、23B(開口面に相当)との接触と離間に伴う通気口24A、24B(開口に相当)の開放または閉塞によりダクト22A、22Bを開閉する。
【0029】
ネット部32は、例えばオレフィン系エラストマー(TPO)や、エチレンプロピレンゴム(EPDM)などでメッシュ状(網状)に形成されて、例えばメッシュの1本1本の厚さは約2[mm]程度とされている。
【0030】
吸音材パッド33は、周囲の音を吸収して低減する機能を有し、例えば綿状繊維(中綿素材、化学繊維素材など)が圧縮等されて略直方体の板状とされ、例えば厚さは約20[mm]程度とされている。
【0031】
また図7に示すように、通気口24A、24B(図4図5参照)に対向するネット部32の下方の位置は、ネット部が省略されたネット開口部32Zが形成されて吸音材パッド33が露出されている。露出された個所における吸音材パッド33には、通気口24A、24Bの側に突出するパッド突出面33Aを有している。パッド突出面33Aは、通気口24A、24Bと対向するバタフライ30の面であるバタフライ対向面とほぼ同一の面となるように、突出高さが調整されている。
【0032】
つまり、ダクト22A、22Bが閉状態の場合にバタフライ30とダクト本体20の車外開口面23A、23Bが接触する接触部の少なくとも一部におけるバタフライ30の側は、ネット部32が省略されている(ネット開口部32Zが形成されている)。そしてネット部32が省略されたネット開口部32Zでは、ダクト22A、22Bが閉状態の場合に吸音材パッド33のパッド突出面33Aが、ダクト本体20の車外開口面23A、23Bと接触するように露出されている。
【0033】
ネット部32から露出したパッド突出面33Aにより、上方に揺動したバタフライ30が自重で下方に揺動して車外開口面23A、23Bに衝突した際、衝突時の速度が最も大きい個所(揺動の際にヒンジから最も遠い位置の周囲)では、ネット部32ではなく吸音材パッド33のパッド突出面33Aが車外開口面23A、23Bに衝突する。これにより、バタフライ30が車外開口面23A、23Bと衝突した際の衝突音が低減される。
【0034】
また図6及び図7に示すように、ネット部32における上方には、ダクト本体20に設けられたヒンジ取付部25A、25B(図4図5参照)にバタフライ30を取り付けるためのヒンジ32Aが一体成形されている。図8に示すように、バタフライ30のヒンジ32Aがヒンジ取付部25Aに挿通されてバタフライ30は揺動自在となるようにダクト本体20に取り付けられる。
【0035】
また図9に示すバタフライ30B(吸音材パッドユニット31B)の例は、図8に示すバタフライ30(吸音材パッドユニット31)に対して、ヒンジ32Bに取付孔35Bが形成されている点と、ダクト本体20の車外開口面23Aにヒンジ取付部25Cが形成されている点と、ピン34を用いてヒンジ32Bをヒンジ取付部25Cに取り付ける点が異なる。なお、ヒンジ32Bの取付孔35Bに、補強のためのカラー等を取り付けてもよい。バタフライ30をダクト本体20に対して揺動自在に取り付けるためのヒンジやヒンジ取付部の構造は、これらの例に限定されず、種々の構造で取り付けることができる。上記のように、バタフライ30、30Bは、板状に成形した繊維からなる吸音材パッド33と、ダクト本体20に固定されて揺動の軸心となるヒンジ32A、32Bと、を有する吸音材パッドユニット31、31Bとされている。
【0036】
<バタフライ(吸音材パッドユニット)の、その他の例(図10図11)>
また図10に示すバタフライ30C(吸音材パッドユニット31C)の例は、図8に示すバタフライ30(吸音材パッドユニット31)に対して、ネット部32が省略されて、吸音材パッド33Cにヒンジ32Cが一体成形されている点が異なる。吸音材パッドユニット31Cは、吸音材パッド33Cのみにて構成されている。つまり、吸音材パッドユニット31Cおよびヒンジ32C、吸音材パッドユニット31Dおよびヒンジ32Dは、吸音材パッド33Cのみで一体成形されている。
【0037】
吸音材パッド33Cは、周囲の音を吸収して低減する機能を有し、例えば綿状繊維(中綿素材、化学繊維素材など)が圧縮等されて略直方体の板状とされ、例えば厚さは約20[mm]程度とされている。吸音材パッド33Cの上方には、さらに圧縮等されたヒンジ32Cが一体成形されている。吸音材パッド33Cは、例えばシンサレート(登録商標)などの綿状繊維(中綿素材、化学繊維素材など)である。
【0038】
また図11に示すバタフライ30D(吸音材パッドユニット31D)の例は、図9に示すバタフライ30B(吸音材パッドユニット31B)に対して、ネット部32が省略されて、吸音材パッド33Cにヒンジ32Dが一体成形されている点が異なる。なお、図9に示した例と同様に、ヒンジ32Dの取付孔35Dに、補強のためのカラー等を取り付けてもよい。
【0039】
図10及び図11に示すバタフライ30C、30Dは、バタフライ30C、30Dがダクトを閉状態にするように揺動して車外開口面23A、23B(図4参照)に衝突した際、ネット部32(図6参照)を有していないので吸音材パッド33Cの全体が衝突し、衝突音がより低減される。
【0040】
<従来の車両用ベントダクト110の外観と構造(図12図13)>
次に比較のため、図12及び図13を用いて従来の車両用ベントダクト110の例について説明する。従来の車両用ベントダクト110は、ダクト本体120、バタフライ150、車室内延長部127等を有している。
【0041】
従来の車両用ベントダクト110では、バタフライ150の材質は、一般的なゴム材質のものが利用されている。従来の車両用ベントダクト110のバタフライ150には、例えばオレフィン系エラストマー(TPO)や、エチレンプロピレンゴム(EPDM)などの約0.3~0.5[mm]程度の薄板状のものが利用されており、吸音機能を有していない。このため、吸音材パッド160を配置するために車室内延長部127が設けられている。
【0042】
車室内延長部127は、側面開口部127B、下方開口部127Aが開口されて、ダクト本体120における車室内側に接続されている。また車室内延長部127の内壁面におけるダクト本体120と対向する面には、吸音材パッド160が取り付けられている。このため、車室内延長部127が車室内側に大きく突出して車室内が狭くなるので、あまり好ましくない。
【0043】
本実施の形態にて説明した車両用ベントダクト10は、図12及び図13に示す従来の車両用ベントダクト110と比較して、バタフライ30(30、30B、30C、30D)が、吸音材パッドを有する吸音材パッドユニット31(31、31B、31C、31D)とされている。これにより、車外からの騒音やバタフライがダクトを閉状態にする際の衝突音の吸音効果を保持しながら、車室内延長部127を省略しており、車室内が狭くなることを抑制することができる。
【0044】
本発明の、車両用ベントダクト10は、本実施の形態で説明した構成、構造、形状、外観等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えばバタフライのヒンジの構造や当該ヒンジをダクト本体に取り付ける構造は、本実施の形態にて説明した構造に限定されず、種々の構造とすることが可能である。
【0045】
また、通気口24A、24B(図4図5参照)に対向するネット部32の下方の位置のネット開口部32Z(図7参照)と、当該ネット開口部32Zにおける吸音材パッド33のパッド突出面33A(図7参照)は、省略してもよい。
【0046】
また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0047】
1 車両
2 リアバンパ
10 車両用ベントダクト
20 ダクト本体
21A 本体上面
21B 本体底面
21L、21R 本体側面
21M 本体中面
21S、21T 仕切板
22A、22B ダクト
23A、23B 車外開口面
24A、24B 通気口
25A、25B、25C ヒンジ取付部
26A、26B 車両取付部
30、30B、30C、30D バタフライ
31、31B、31C、31D 吸音材パッドユニット
32 ネット部
32A、32B、32C、32D ヒンジ
32Z ネット開口部
33、33C 吸音材パッド
33A パッド突出面
34 ピン
35B、35D 取付孔
127 車室内延長部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13