(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152195
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】ドーナツ類用吸油抑制剤およびドーナツ類の吸油抑制方法
(51)【国際特許分類】
A21D 2/18 20060101AFI20241018BHJP
A21D 13/60 20170101ALI20241018BHJP
A21D 2/26 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
A21D2/18
A21D13/60
A21D2/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066241
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】519127797
【氏名又は名称】三菱商事ライフサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】助川 大樹
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB24
4B032DG02
4B032DK02
4B032DK03
4B032DK12
4B032DK14
4B032DK18
4B032DK43
4B032DK47
4B032DK51
4B032DK54
4B032DL11
4B032DP08
4B032DP23
4B032DP25
4B032DP33
4B032DP47
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明の課題は、従来技術とは異なる、ドーナツ類の吸油を抑制する吸油抑制剤の提供をすることである。
【解決手段】アルギン酸エステルとグルコースオキシダーゼをドーナツ類に添加することにより、吸油を従来以上に抑制することを見出した。フライ調理中の吸油だけでなく、フライ調理後の吸油も防ぐことで油っぽさの軽減されたドーナツ類が得られた。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギン酸エステルおよびグルコースオキシダーゼを含むドーナツ類用吸油抑制剤。
【請求項2】
ドーナツ類に含まれる穀物粉100重量部に対して、アルギン酸エステルが0.01重量部以上0.1重量部未満およびグルコースオキシダーゼが1SRU以上10SRU以下含まれる請求項1に記載のドーナツ類用吸油抑制剤。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のドーナツ類用吸油抑制剤をフライ調理されるドーナツ類に添加することを特徴とする、ドーナツ類の吸油を抑制する方法。
【請求項4】
ドーナツ類に含まれる穀物粉100重量部に対して、アルギン酸エステルを0.01重量部以上0.1重量部未満およびグルコースオキシダーゼを1SRU以上10SRU以下添加する、ドーナツ類の吸油を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライ調理において吸油を抑制するドーナツ類用吸油抑制剤と、当該剤を用いてドーナツ類の吸油量を低減させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドーナツやカレーパンなどのフライ調理されたベーカリー食品は、過度の油を含むと風味、食感が悪くなる。さらに、食事制限を必要とする人は食べられないことがあり、また、原材料として使用するフライ油の使用量を増加させることがある。
【0003】
このような課題に対して、フライ調理食品の吸油を抑制する吸油抑制剤が開示されている。特許文献1には、硬質小麦の細胞壁断片と澱粉を結合させた複合体を含み、パン粉の吸油を抑制できる食品素材が開示されている。特許文献2には、乳由来のリン脂質とタンパク質が一定比率で含まれる水性液と分子量サイズが20万以下のデキストランと増粘多糖類からなる油菓子用の吸油抑制材が開示されている。特許文献3には、キサンタンガム、グアーガム、ビタミンC、重曹、キシラナーゼを含む、吸油抑制されたケーキドーナツ用生地が開示されている。特許文献4には、一定比率のグリセリン脂肪酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステルを含む吸油抑制剤がベーカリー食品だけでなく、フライ食品にも効果を示すことが開示されている。特許文献5には、水溶性セルロースエーテルを吸油抑制剤として用い、ドーナツや揚げパン等のフライ調理されたドウ組成物についての製造方法が開示されている。特許文献6には、グルタチオン高含有乾燥酵母を用いる吸油抑制剤が開示されている。特許文献7には、乾燥酵母を含む吸油抑制剤が開示されている。特許文献8には、アルギン酸エステルを含む吸油抑制剤が開示されている。
【0004】
様々な吸油抑制剤または吸油抑制方法が開示される一方で、非特許文献1には、吸油のメカニズムについて開示されている。吸油はドーナツ類がフライ油に浸漬されている状態で生地に浸透する油(以下、フライ調理時の吸油と略記する)と、フライ調理後にドーナツ類の生地内部に留まる油(以下、フライ調理後の吸油と略記)を合わせたものと記載されている。後者の吸油は、ドーナツの一種であるポンデケージョなどで顕著であり、揚げたては丸く張りのある形状を示すが、時間の経過とともに荒熱がとれて萎んで歪になり、官能特性として揚げたてよりも油っぽさを感じやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-063243
【特許文献2】特開2019-071805
【特許文献3】特開2016-214230
【特許文献4】特開2016-174569
【特許文献5】特開2010-268693
【特許文献6】特開2005-080584
【特許文献7】特開2005-080583
【特許文献8】特開2002-209531
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】鈴木徹,フライ調理における食品の状態の変化と油吸収,オレオサイエンス,9(2),2009年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術とは異なる、ドーナツ類の吸油を抑制する吸油抑制剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題の解決につき鋭意研究を重ねた結果、アルギン酸エステルとグルコースオキシダーゼをドーナツ類に添加することにより、吸油を従来以上に抑制することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、
(1)アルギン酸エステルおよびグルコースオキシダーゼを含むドーナツ類用吸油抑制剤、
(2)ドーナツ類に含まれる穀物粉100重量部に対して、アルギン酸エステルが0.01重量部以上0.1重量部未満およびグルコースオキシダーゼが1SRU以上10SRU以下含まれる前記(1)に記載のドーナツ類用吸油抑制剤。
(3)前記(1)または(2)に記載のドーナツ類用吸油抑制剤をフライ調理されるドーナツ類に添加することを特徴とする、ドーナツ類の吸油を抑制する方法。
(4)ドーナツ類に含まれる穀物粉100重量部に対して、アルギン酸エステルを0.01重量部以上0.1重量部未満およびグルコースオキシダーゼを1SRU以上10SRU以下添加する、ドーナツ類の吸油を抑制する方法。
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、アルギン酸エステルおよびグルコースオキシダーゼをドーナツ類に添加することにより、フライ調理時の吸油を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明におけるドーナツ類とは、イーストドーナツ、ケーキドーナツ、デニッシュドーナツ、クルーラー、フレンチクルーラー、チュロス、サーターアンダギー、揚げパン、カレーパン、惣菜やフィリングを包んでフライ調理したベーカリー食品等を挙げることができる。いずれのドーナツ類も、穀物粉、砂糖、卵、食塩、油脂、乳化剤、膨張剤、調味料、香料、又は色素等を原材料とし、対粉100重量部以下の水とミキシングして、生地を作製し、成型して、フライ調理するものである。
【0012】
本発明における吸油とは、ドーナツ類がフライ油に浸漬されている状態で生地に浸透する油(以下、「フライ調理時の吸油」と略記する)と、フライ調理後にドーナツ類の生地内部に留まる油(以下、「フライ調理後の吸油」と略記)を合わせたものである。フライ調理中のドーナツ類は、生地中の水分が蒸発し、生地内部に多孔質構造を形成することで、ドーナツ類全体のボリュームを大きくすることができる。次第に生地内部の水分が減少して蒸発がなくなると、蒸気圧が低下し、毛細管現象により油が多孔質構造へ浸透する。このときドーナツ類に浸透した油は、フライ調理時の吸油として測定される。フライ油から取り上げられたドーナツ類は、温度が低くなるに従い、多孔質構造の内部にある蒸気が凝縮し、陰圧となって、ドーナツ類表面に付着していた油が多孔質構造の内部に吸引される。このときドーナツ類表面に付着したまま油と吸引された油は、フライ調理後の吸油として評価される。
【0013】
本発明における吸油の測定および評価の方法は、フライ調理時の吸油とフライ調理後の吸油に分けて行った。フライ調理時の吸油は、フライ調理前のドーナツ類の重量に対する、フライ調理時に浸透した油の重量で示した値(吸油率)である。例えば、下記の式により、求められる。
重量A:フライヤーラックの重量
重量B:成型済みのドーナツ類をフライヤーラックに並べてフライヤーラックごと測定したときの重量
重量C:フライ調理後ただちに、余分な油を切った後、フライヤーラックごと測定したときの重量
吸油率(%)=重量(C-A)-重量(B-A)/ 重量(B-A)×100
フライ調理後の吸油は、フライ調理後、保存1日目のものについて官能評価し、「油の匂い」「油っぽさ」について低減されているかどうかを評価した。
【0014】
本発明におけるドーナツ類用吸油抑制剤とは、アルギン酸エステルおよびグルコースオキシダーゼを含有する組成物である。当該剤中の各成分の配合量は任意であり、本願明細書に記載したドーナツ類への添加量となるような配合で良い。以下に、各成分について説明する。
【0015】
(アルギン酸エステル)
本発明におけるアルギン酸エステルとは、アルギン酸のカルボキシル基のうち少なくとも一部をプロピレングリコールでエステル結合させた化合物である。アルギン酸エステルの分子量やエステル化度は特に制限されない。また、アルギン酸エステルを構成するα-L-グルロン酸とβ‐D‐マンヌロン酸の比率や配列順序も特に制限されず、α-L-グルロン酸のみで構成される部位、β‐D‐マンヌロン酸のみで構成される部位、両者を混合する部位のいずれか1種以上を含むアルギン酸エステルを使用してよい。
【0016】
本発明におけるアルギン酸エステルは、天然物に由来するものであってもよいし、合成したものであってもよい。
【0017】
本発明におけるアルギン酸エステルは、適宜製造するドーナツ類の原材料やレシピによってその添加量を調整してもよく、通常は、穀物粉100重量部に対し0.005重量部より多く0.1重量部以下、さらに好ましくは0.01重量部以上0.1重量部である。穀物粉100重量部に対し0.005に満たない場合には、ドーナツ類に対する吸油抑制効果が低下し、0.1重量部を超えると生地表面のべたつきが強くなり、製パン性を悪化させる原因となる。
【0018】
本発明におけるアルギン酸エステルは、所望の効果を阻害しない範囲内において、その化合物内に官能基や架橋構造を有してもよい。また、当該化合物は、アルギン酸やアルギン酸塩をはじめとするアルギン酸誘導体を混在してもよい。さらに、当該化合物は、所望の効果を阻害しない範囲内において、その他の成分を有してもよい。
【0019】
(グルコースオキシダーゼ)
本発明におけるグルコースオキシダーゼとは、β‐D‐グルコースをグルコン酸と過酸化水素に変換する酵素である。当該酵素を単独で使用すると、グルテン間のジスルフィド結合を促進する作用があり、グルテン間の結合が強まることでボリューム向上を期待することが出来る。本発明におけるグルコースオキシダーゼは、当該酵素の単体または賦形剤で希釈されたグルコースオキシダーゼ製剤として用いることができ、その種類に制限されず、1種単独で用いてもよいし、2種以上で併用してもよい。
【0020】
本発明におけるグルコースオキシダーゼは、食品グレード以上のものが好ましく、市販品を用いて良い。例えば、DSM Food Specilities B.V.製、ダニスコジャパン株式会社製、新日本化学工業株式会社製、ノボザイムジャパン株式会社製、天野エンザイム株式会社製、ナガセケムテックス株式会社製等を入手することが出来る。
【0021】
本発明に用いられるグルコースオキシダーゼは、酸素存在下でグルコースをグルコン酸と過酸化水素に変換する。活性単位であるSRUは、DSM Food Specialities B.V.社の規定に基づいて定義され、活性測定時に消費される酸素がワールベルグ検圧計で10m3/分である酵素量を1SRUとする。
グルコースオキシダーゼの活性試験法(絶対活性値:U/g)は、酵素反応で生成するグルコン酸を水酸化ナトリウムで中和し、余剰の水酸化ナトリウムを塩酸で逆滴定することにより測定するDSM Food Specialities B.V.社の規定方法または食品添加物公定法(第9版)第2法を用いることが出来る。
例として、供試試料1.0gを秤量し、水もしくは酢酸・水酸化ナトリウム緩衝液(0.05mol/L、pH5.8、塩化ナトリウム含有)を加えて溶解もしくは均一に分散して100mLとしたもの、またはこれをさらに水もしくは同緩衝液を用いて10倍、100倍もしくは1000倍に希釈したものを試料液とする。D(+)-グルコース2.80gを秤量し、酢酸・水酸化ナトリウム緩衝液(0.05mol/L、pH5.8、塩化ナトリウム含有)100mLを加えて溶かしたものを基質溶液とする。あらかじめ35℃に加温した基質溶液25mLに試料液1mLを加えて、毛細管で通気しながら35℃で15分間加温した後、10mLの水で毛細管を洗い、毛細管を取り外し、洗液を合わせる。この液に直ちに水酸化ナトリウム試液(0.1mol/L)10mLを加え、35℃で60分間加温し、検液とする。別に基質溶液25mLに水10mL及び水酸化ナトリウム試液(0.1mol/L)10mLを加えた後、試料液1mLを加え、35℃で60分間加温し、比較液とする。検液及び比較液を塩酸試液(0.1mol/L)で滴定(指示薬フェノールフタレイン試液2滴)するとき、検液の塩酸試液(0.1mol/L)の消費量は、比較液の塩酸試液(0.1mol/L)の消費量よりも小さい。
また、DSM Food Specialities B.V.社以外のグルコースオキシダーゼを用いる場合も、上記活性試験法で絶対活性値を測定し、単位をU/gに揃えて比較するか、ワールベルグ検圧計を用いてSRU/gとして測定し、本発明における改良剤を作製して良い。
【0022】
本発明において、ドーナツ類用吸油抑制剤に含まれるグルコースオキシダーゼの配合量は任意であり、本願明細書に記載したドーナツ類への添加量となるような配合で良く、ドーナツ類の原材料中の穀物粉100gに対し、1-10SRUが好ましい。添加量が10SRUより多いと生地伸展性が低下する傾向にあり、1U/gより少ないと生地がべたつき、機械耐性が低下する傾向にある。
【0023】
本発明におけるドーナツ類用吸油抑制剤は、アルギン酸エステル、グルコースオキシダーゼ以外に、食品を製造する際に一般的に使用する、他の食品材料や、添加物、香料、色素などを混合して、製剤化してもよい。例えば、有機酸塩として、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、酢酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウムなどが挙げられる。また、多糖類として、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、グアーガム、カードラン、デンプン、アラビアガム、ウェランガム、カシアガム、キサンタンガム、キトサン、サイリウムシードガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、デキストラン、ファーセレラン、プルラン、ヒアルロン酸などが挙げられる。また、タンパク質として、卵白、小麦グルテン、大豆タンパクなどを添加することもできる。その他に、各種食用油脂、乳製品、果汁、穀物粉等や、モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、ステアロイル乳酸ナトリウムやステアロイル乳酸カルシウム等の乳化剤、α-アミラーゼ、β‐アミラーゼ、グルコアミラーゼ、ヘミセルラーゼ(ペントサナーゼ)、セルラーゼ、本発明以外のプロテアーゼ等の酵素、システイン、シスチン、メチオニン、アラニン、アスパラギン酸、グリシン等のアミノ酸、コラーゲンや大豆タンパクやペプチド等、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸2水素カルシウム等の無機塩、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム等の核酸、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC(L-アスコルビン酸)、ビタミンE等のビタミン、エタノール、グリセロール等のアルコール、ショ糖、ブドウ糖、麦芽糖、乳糖等の糖類、デキストリン、各種澱粉等の賦形剤等を含有させてもよい。これらの添加成分は、1種類のみを選択して添加してもよいし、複数種を組み合わせて添加してもよい。
【0024】
本発明の吸油抑制剤の形態は特に制限されない。固体、ゼリー状、ペースト状、液状などの様々な形態をとることができる。吸油抑制剤の使用対象物や使用態様に応じて、適宜その形態を決定するのが望ましい。
【0025】
本発明におけるドーナツ類用吸油抑制剤は、製造方法に特別な制限はないが、各成分は夾雑物の少ない精製品を用いるか、各成分を含有する原材料を用いてもよく、その場合は規格値が安定的に管理されている原材料を用いることが好ましい。添加方法は、当該成分を穀物粉100重量部に対し、各成分ごとに秤量して添加しても良いし、穀物粉100重量部に添加しやすいように予め製剤化したものを秤量して添加しても良い。本発明のドーナツ類用吸油抑制剤を製剤化する場合は、上記成分による吸油抑制効果に影響を与えない限りは、通常のドーナツ類に使用する原材料と混合してもよい。
【実施例0026】
以下に実施例を用いて、本発明を具体的に説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。
―ドーナツ類用吸油抑制剤―
ベーカリー食品用吸油抑制剤の配合を表1に示した。表1はドーナツ類用吸油抑制剤100gあたりの重量比および活性値を示した。アルギン酸エステルには昆布酸501(株式会社キミカ製)を用い、グルコースオキシダーゼにはBAKERZYME GO CLASSIC(DSM株式会社製)を用いた。グルコースオキシダーゼの当該ロットは1585SRU/gであった。各原材料を秤量し、十分に混合した後、製パンに用いた。
【0027】
【0028】
ドーナツ類としてイーストドーナツを製造した。イーストドーナツの配合と作製工程を表2と表3に各々示した。ドーナツ類用吸油抑制剤はイーストドーナツの穀物粉100重量部に対し、1重量部添加した。ベーカーズパーセントで示されるアルギン酸エステル、グルコースオキシダーゼおよびL-アスコルビン酸の比率を表4に示した。
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
―評価方法―
ドーナツ類用吸油抑制剤の吸油抑制効果は、フライ調理時の吸油とフライ調理後の吸油に分けて測定、評価した。フライ調理時の吸油は、フライ調理前のドーナツ類の重量に対する、フライ調理時に浸透した油の重量で示した値(吸油率)とした。ドーナツ類用吸油抑制剤を添加していないコントロールに対して、吸油率50%カットしている試験区を「効果あり」とした。フライ調理後の吸油は、フライ調理後、保存1日目の「コントロール」「比較区1」「実施区1」について官能評価し、「油のにおい」「食べたときの油っぽさ」について低減されているかどうかを評価した(n=8)。検定方法はSteel検定とし、<p=0.05とした。
【0033】
―結果―
イーストドーナツの吸油率と官能評価の結果を表5および
図1に示した。
【0034】
【0035】
以上の結果から、アルギン酸エステル単独またはグルコースオキシダーゼ単独で用いた「比較区1」および「比較区2」は一定の効果は示されたが、吸油率を半分以下に落とすことは出来なかった。グルコースオキシダーゼと同様にパン生地の酸化に使用されるアスコルビン酸を添加した「比較区3」も効果は見られたが、吸油率を半分に減らすことは出来なかった。一方で、アルギン酸エステルとグルコースオキシダーゼを併用すると、吸油率が大幅に減少した。特に、アルギン酸エステルを対粉0.01以上0.1以下、グルコースオキシダーゼを対粉1SRU/g以上10SRU/gの範囲で用いることにより、飛躍的に吸油率が減少した。さらに、効果があった試験区は、フライ調理後の吸油についても油っぽさを感じさせない効果が得られた。