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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152200
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】柱脚
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20241018BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
E02D27/00 D
E04B1/58 511L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066248
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】辻 千佳
(72)【発明者】
【氏名】西塔 純人
【テーマコード(参考)】
2D046
2E125
【Fターム(参考)】
2D046AA14
2E125AA03
2E125AA45
2E125AB12
2E125AC23
2E125AE01
2E125BA02
2E125BB12
2E125BE08
2E125BF05
2E125CA05
(57)【要約】
【課題】構造が複雑化することなく、アンカーボルトの位置誤差を許容する大径円孔をベースプレート部が有しつつ、水平荷重による横ずれの抑止および引張力等の鉛直荷重に対する耐力向上が図られた柱脚を提供する。
【解決手段】この柱脚1は、基礎2の上端から先端ボルト部3aを突出させたアンカーボルト3に固定される。この柱脚1は、アンカーボルト3の位置誤差を許容する大径円孔11aを有するベースプレート部11と、アンカーボルト3の直径よりも大径で大径円孔11aよりも小径のボルト挿通孔12aを非中心部に有する偏心円盤座金12と、ベースプレート部11上に溶接され、大径円孔11aの中心に一致する中心を有し、偏心円盤座金12が収容される円孔部13aを有する壁部13と、壁部13の外側位置で立ち上がるとともにアンカーボルト3への操作を可能にする門型脚部14と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎の上端から先端ボルト部を突出させたアンカーボルトに固定される柱脚であって、上記アンカーボルトの位置誤差を許容する大径円孔を有するベースプレート部と、上記アンカーボルトの直径よりも大径で上記大径円孔よりも小径のボルト挿通孔を非中心部に有する偏心円盤座金と、上記ベースプレート部上に溶接されており、上記大径円孔の中心に一致する中心を有する円孔部を有し、この円孔部内に上記偏心円盤座金が回転可能に収容される壁部と、上記壁部の外側位置で立ち上がり、上記アンカーボルトに対するナット締結操作を可能にする門型脚部と、を備えることを特徴とする柱脚。
【請求項2】
請求項1に記載の柱脚において、上記壁部は、上記ベースプレート部上に下縁側が溶接された丸パイプからなることを特徴とする柱脚。
【請求項3】
請求項2に記載の柱脚において、上記門型脚部は、上記丸パイプに近接して位置する側の部分以外において上記ベースプレート部上に下縁側が溶接されており、上記丸パイプは、上記門型脚部が近接して位置する部分以外の外周側において上記ベースプレート部上に下縁側が溶接されていることを特徴とする柱脚。
【請求項4】
請求項1に記載の柱脚において、上記ベースプレート部は、四角パイプ材における下側に位置させた一つの面部上に配置されて当該四角パイプ材に溶接された面部上板材を備えてなり、上記一つの面部以外の三つの面部が上記門型脚部を構成し、上記面部上板材上に、上記壁部が溶接されていることを特徴とする柱脚。
【請求項5】
請求項4に記載の柱脚において、上記壁部は、中央側に上記円孔部を有し、周囲縁が上記ベースプレート部上に溶接された矩形板材からなることを特徴とする柱脚。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の柱脚において、上記門型脚部の上側に、木製柱が接合される接合板を備えることを特徴とする柱脚。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基礎の上端から突出するアンカーボルトに固定される柱脚に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アンカーボルトの位置誤差を吸収でき、しかも水平荷重に対して高い剛性を有し、耐震性の向上などが図られた柱脚金物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7049670号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の柱脚金物では、構造が複雑化する等の欠点がある。
【0005】
この発明は、構造が複雑化することなく、アンカーボルトの位置誤差を許容する大径円孔をベースプレート部が有しつつ、水平荷重による横ずれの抑止および引張力等の鉛直荷重に対する耐力向上が図られた柱脚を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の柱脚は、上記課題を解決するために、基礎の上端から先端ボルト部を突出させたアンカーボルトに固定される柱脚であって、上記アンカーボルトの位置誤差を許容する大径円孔を有するベースプレート部と、上記アンカーボルトの直径よりも大径で上記大径円孔よりも小径のボルト挿通孔を非中心部に有する偏心円盤座金と、上記ベースプレート部上に溶接されており、上記大径円孔の中心に一致する中心を有する円孔部を有し、この円孔部内に上記偏心円盤座金が回転可能に収容される壁部と、上記壁部の外側位置で立ち上がり、上記アンカーボルトに対するナット締結操作を可能にする門型脚部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記の構成であれば、上記偏心円盤座金のボルト挿通孔と上記アンカーボルトとの離間幅は、上記アンカーボルトの位置誤差を許容する大径円孔と当該アンカーボルトとの離間幅に比べて狭くできるので、上記偏心円盤座金が無い構造に比べ、地震等による当該柱脚の水平ずれ量を低減することができる。また、地震等による当該柱脚の水平ずれにおいて、水平面内のどの方向からの水平荷重も、上記偏心円盤座金によって、上記壁部および上記ベースプレート部へ等しく伝達される。また、上記ベースプレート部に掛かる引張力等の鉛直荷重に対しては、当該ベースプレート部と上記偏心円盤座金の総合厚みで耐えることができる。そして、上記ベースプレート部上に溶接された上記壁部によって当該ベースプレート部が補強され、上記鉛直荷重による当該ベースプレート部の変形の程度が低減される。すなわち、上記ベースプレート部上に上記壁部が溶接され、当該壁部内に上記偏心円盤座金がセットされる比較的簡単な構造で、各種荷重に耐えつつ、上記アンカーボルトの位置誤差を許容する構成が実現される。
【0008】
上記壁部は、上記ベースプレート部上に下縁側が溶接された丸パイプからなっていてもよい。これによれば、丸パイプが補強リブとなるので、上記鉛直荷重によるベースプレート部の変形の程度が低減されるとともに、汎用品である丸パイプを利用した構成となるので、柱脚の低コスト化が図りやすい。
【0009】
上記門型脚部は、上記丸パイプに近接して位置する側の部分以外において上記ベースプレート部上に下縁側が溶接されており、上記丸パイプは、上記門型脚部が近接して位置する部分以外の外周側において上記ベースプレート部上に下縁側が溶接されていてもよい。ここで、上記丸パイプの径を小さくすれば、その全外周の溶接が可能となるが、このような全外周溶接よりも、上記丸パイプの外周面を上記門型脚部に近接させた上記形態での溶接の方が、補強効果を高めることができる。
【0010】
また、上記ベースプレート部は、四角パイプ材における下側に位置させた一つの面部上に溶接された面部上板材を備えてなり、上記一つの面部以外の三つの面部が上記門型脚部を構成し、上記面部上板材上に、上記壁部が溶接されていてもよい。これによれば、汎用品である四角パイプ材を利用した構成となるので、柱脚の低コスト化が図りやすい。
【0011】
上記壁部は、中央側に上記円孔部を有し、周囲縁が上記ベースプレート部上に溶接された矩形板材からなっていてもよい。
【0012】
これらの柱脚において、上記門型脚部の上側に、木製柱が接合される接合板を備えてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明であれば、比較的簡単な構造で、各種荷重に耐えつつ、アンカーボルトの位置誤差を許容する構成が実現されるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の柱脚を示した図であり、同図(A)は正面視による一部断面図、同図(B)はA-A矢視断面図である。
図2】実施形態の柱脚を示した図であり、同図(A)は側面図、同図(B)は平面図(偏心円盤座金および溶接箇所省略)である。
図3】実施形態の柱脚において、偏心円盤座金のボルト挿通孔とアンカーボルトとの離間幅と、ベースプレートの大径円孔とアンカーボルトとの離間幅との比較説明図である。
図4】壁部である丸パイプを有しない仮定の柱脚構造における引張荷重によるベースプレートの変形の態様を示した説明図である。
図5】実施形態の柱脚における引張荷重によるベースプレートの変形の態様を示した説明図である。
図6】実施形態の柱脚の木造建物での使用例を示した説明図である。
図7】他の実施形態の柱脚を示した概略の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1(A)、(B)および図2(A)、(B)に示すように、柱脚1は、基礎2の上端から先端ボルト部3aを突出させたアンカーボルト3に固定される。この柱脚1は、ベースプレート部11と、偏心円盤座金12と、壁部13と、門型脚部14と、接合板15とを備える。
【0016】
ベースプレート部11は、四角形の鋼板からなり、アンカーボルト3の位置誤差を許容する大径円孔11aを有する。ベースプレート部11は、例えば、12mm或いは、16mmといった板厚を有しており、1辺が例えば118mmの正方形状を有している。また、大径円孔11aの直径は、例えば、32mmである。
【0017】
偏心円盤座金12は、円形の鋼板からなり、一例として、ベースプレート部11が12mm厚の場合、9mm以上の板厚を有し、ベースプレート部11が16mm厚の場合、4.5mm以上の板厚を有する。
【0018】
また、偏心円盤座金12は、アンカーボルト3の直径よりも大径で上記大径円孔11aよりも小径である例えば直径26mmのボルト挿通孔12aを非中心部に有する。偏心円盤座金12は、壁部13内で回転可能に位置し、この回転によって、上記大径円孔11aの範囲内で、ボルト挿通孔12aの位置を変化させる。
【0019】
壁部13は、偏心円盤座金12が収容される円孔部13aを有する。この円孔部13aの中心は、大径円孔11aの中心に一致する。この実施形態では、壁部13は、鋼製の丸パイプからなり、その外周縁の全部または一部が溶接によってベースプレート部11上に固定される。一例として、上記丸パイプの外径は、76.3mmであり、厚さは3.2mmであり、高さは5mm以上とされる。この実施形態では、上記丸パイプの高さは、偏心円盤座金12の高さよりも高くしている。
【0020】
門型脚部14は、壁部13である上記丸パイプの外側位置で当該丸パイプを挟んで互いに平行に立ち上がる2枚の立上部位141と、当該立上部位141の上端に固定されて当該2枚の立上部位141に渡る上面部位142とを有しており、これら立上部位141と上面部位142とで囲われる空間内において、上記アンカーボルト3へのナット装着等の操作が可能となる。各立上部位141は、その中央側で互いに平行に位置する平面部の両端に屈曲片部141aを有する。対角に位置する2つの屈曲片部141aに沿う線は、大径円孔11aの中心側を通る。
【0021】
また、立上部位141は、壁部13である上記丸パイプに近接して位置する側の部分以外においてベースプレート部11上に下縁側が溶接されている。一方、壁部13である上記丸パイプは、当該門型脚部14が近接して位置する部分以外の外周において、上記ベースプレート部11上に下縁側が溶接されている。
【0022】
接合板15は、鋼板からなり、門型脚部14の上面部位142の中央側に溶接によって立設されている。接合板15には、ボルト等の締結部材が挿通される複数の挿通孔15aが形成されている。
【0023】
上記の構成であれば、図3に示すように、偏心円盤座金12のボルト挿通孔12aとアンカーボルト3との離間幅D1は、アンカーボルト3の位置誤差を許容する大径円孔11aと当該アンカーボルト3との離間幅D2に比べて狭くなるので、偏心円盤座金12が無い構造に比べて、地震等による当該柱脚1の水平ずれ量を低減することができる。また、地震等による当該柱脚1の水平ずれにおいて、水平面内のどの方向からの水平荷重も、偏心円盤座金12によって、壁部13およびベースプレート部11へ等しく伝達される。また、ベースプレート部11に掛かる引張力等の鉛直荷重に対しては、当該ベースプレート部11と偏心円盤座金12の総合厚みで耐えることができる。
【0024】
ここで、図4に示すように、壁部13に相当するものが存在していない場合は、ベースプレート部に対する上方向の引張力に対して、ベースプレート部に大きな山形状の変形が生じるおそれがある。これに対し、図5に示すように、ベースプレート部11上に壁部(丸パイプ)13が存在すると、ベースプレート部11に掛かる上記引張力に対して、ベースプレート部11の変形は、変形程度が小さい略台形状の変形に抑えられる。
【0025】
このように、柱脚1は、ベースプレート部11上に壁部13が溶接され、当該壁部13内に偏心円盤座金12がセットされる比較的簡単な構造で、各種荷重に耐えつつ、上記アンカーボルトの位置誤差を許容する構成を実現する。また、これにより、柱脚1は、木造建物における高耐力壁の柱脚として好適となる。
【0026】
壁部13が、丸パイプからなっていると、丸パイプが補強リブとなってベースプレート部11の補強が図れるとともに、汎用品である丸パイプを利用した構成となるので、柱脚1の低コスト化が図りやすい。
【0027】
門型脚部14が、上記丸パイプからなる壁部13に近接して位置する側の部分以外においてベースプレート部11上に下縁側が溶接されており、上記丸パイプが、門型脚部14が近接して位置する部分以外の外周においてベースプレート部11上に下縁側が溶接されている。上記丸パイプ(壁部13)の径を小さくすれば、その全外周の溶接が可能となるが、このような全外周溶接よりも、上記丸パイプの外周面を門型脚部14の立上部位141に近接させた上記形態での溶接の方が、補強効果を高めることができる。
【0028】
図6に示すように、接合板15は、木製柱6の下端側に形成されたスリットに差し込まれ、木製柱6の側面から挿通されたボルトが挿通孔15aに通され、このボルトにナットが螺合されることで、木製柱6が柱脚1に固定される。なお、図6に示す例では、ブレース7が連結される連結部71は、柱脚1の横位置に取り付けられており、この連結部71も図示しないアンカーボルトによって基礎2に固定されている。
【0029】
(実施形態2)
以下、この発明の他の実施の形態を図7に基づいて説明する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付記する。
【0030】
この実施形態にかかる柱脚1のベースプレート部11は、鋼製の四角パイプ材Pにおける下側に位置させた一つの面部P1、および当該面部P1上に配置されて当該面部P1等に溶接された面部上板材B1とからなる。面部上板材B1は、平面視で四角形状を有しており、断面は台形状になっている。また、柱脚1の門型脚部14は、上記一つの面部P1以外の三つの面部P2,P3,P4からなる。そして、柱脚1の壁部13は、四角形の平板材B2からなり、この平板材B2の四辺周囲縁が面部上板材B1上に溶接されている。平板材B2からなる壁部13は、偏心円盤座金12が収容される円孔部13aを有する。この円孔部13aの中心は、面部上板材B1に形成されている大径円孔11aの中心に一致する。すなわち、この実施形態では、壁部13は、中央側に上記円孔部13aを有し、周囲縁がベースプレート部11上に溶接された矩形板材からなる。
【0031】
このような柱脚1であれば、汎用品である四角パイプ材Pを利用した構成となるので、柱脚1の低コスト化が図りやすい。
【0032】
また、このような柱脚1は、ベースプレート部(面部上板材B1)11に掛かる引張力等の鉛直荷重に対しては、当該ベースプレート部11と、偏心円盤座金12と、一つの面部P1との総合厚みで耐えることができる。なお、図7に示す例では、偏心円盤座金12の板厚は、壁部13である平板材B2の板厚と略同じとしている。
【0033】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 :柱脚
2 :基礎
3 :アンカーボルト
3a :先端ボルト部
6 :木製柱
7 :ブレース
11 :ベースプレート部
11a :大径円孔
12 :偏心円盤座金
12a :ボルト挿通孔
13 :壁部
13a :円孔部
14 :門型脚部
14a :屈曲片部
15 :接合板
15a :挿通孔
71 :連結部
141 :立上部位
141a :屈曲片部
142 :上面部位
B1 :面部上板材
B2 :平板材
D1 :離間幅
D2 :離間幅
P :四角パイプ材
P1 :面部
P2 :面部
P3 :面部
P4 :面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7