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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152209
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
A61M1/36 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066259
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 和輝
(72)【発明者】
【氏名】鴨下 洋一
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077DD01
4C077DD16
4C077DD21
4C077DD22
4C077DD26
4C077GG02
4C077KK25
(57)【要約】
【課題】血液ポンプを逆転駆動することなく正転駆動するのみでプライミングを実行する。
【解決手段】プライミング液管路130は、動脈側血液回路111における動脈コネクタ116と血液ポンプ113との間の区間に接続された第1プライミング液管路131と、動脈コネクタ116と着脱可能に接続される第2プライミング液管路132とに、分岐している。第1プライミング液管路131には、第1プライミング液管路131を開閉する第1開閉弁131vが設けられている。第2プライミング液管路132には、第2プライミング液管路132を開閉する第2開閉弁132vが設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液浄化器と、
前記血液浄化器に接続され、前記血液浄化器に血液を流入させるための動脈側血液回路と、
前記血液浄化器に接続され、前記血液浄化器から血液を流出させるための静脈側血液回路と、
前記動脈側血液回路に設けられ、血液を送り出す血液ポンプと、
前記動脈側血液回路に接続され、プライミング液を供給するプライミング液管路と、
前記動脈側血液回路に設けられ、動脈にアクセス可能な動脈コネクタと、
前記静脈側血液回路に設けられ、静脈にアクセス可能な静脈コネクタとを備え、
前記プライミング液管路は、前記動脈側血液回路における前記動脈コネクタと前記血液ポンプとの間の区間に接続された第1プライミング液管路と、前記動脈コネクタと着脱可能に接続される第2プライミング液管路とに、分岐しており、
前記第1プライミング液管路には、前記第1プライミング液管路を開閉する第1開閉弁が設けられており、
前記第2プライミング液管路には、前記第2プライミング液管路を開閉する第2開閉弁が設けられている、血液浄化装置。
【請求項2】
前記動脈コネクタが前記第2プライミング液管路に接続された状態で前記第1開閉弁および前記第2開閉弁の各々を開放させつつ前記血液ポンプを正転駆動させることにより、前記第1プライミング液管路および前記第2プライミング液管路の両方から前記動脈側血液回路に前記プライミング液を供給させてプライミングを実行する、請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記動脈コネクタが前記第2プライミング液管路に接続され、かつ、前記第1開閉弁が閉じた状態で、前記第2開閉弁を開放させつつ前記血液ポンプを正転駆動させることにより、前記第2プライミング液管路から前記動脈側血液回路に前記プライミング液を供給させて返血を実行する、請求項1または請求項2に記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記血液ポンプ、前記第1開閉弁および前記第2開閉弁の各々を制御する制御部をさらに備える、請求項1に記載の血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透析システムの自動プライミングを開示した先行技術文献として、US2019/0381232(特許文献1)がある。特許文献1に記載された透析システムの自動プライミングにおいては、動脈ラインにプライミング液を供給する1本の供給ラインが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】US2019/0381232
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された透析システムの自動プライミングにおいては、動脈ラインにおける供給ラインとの接続位置より下流側をプライミングする際には血液ポンプを正転駆動させ、動脈ラインにおける供給ラインとの接続位置より上流側をプライミングする際には血液ポンプを逆転駆動させる必要がある。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、血液ポンプを逆転駆動することなく正転駆動するのみでプライミングを実行することができる、血液浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づく血液浄化装置は、血液浄化器と、動脈側血液回路と、静脈側血液回路と、血液ポンプと、プライミング液管路と、動脈コネクタと、静脈コネクタとを備える。動脈側血液回路は、血液浄化器に接続され、血液浄化器に血液を流入させるために設けられている。静脈側血液回路は、血液浄化器に接続され、血液浄化器から血液を流出させるために設けられている。血液ポンプは、動脈側血液回路に設けられ、血液を送り出す。プライミング液管路は、動脈側血液回路に接続され、プライミング液を供給する。動脈コネクタは、動脈側血液回路に設けられ、動脈にアクセス可能である。静脈コネクタは、静脈側血液回路に設けられ、静脈にアクセス可能である。プライミング液管路は、動脈側血液回路における動脈コネクタと血液ポンプとの間の区間に接続された第1プライミング液管路と、動脈コネクタと着脱可能に接続される第2プライミング液管路とに、分岐している。第1プライミング液管路には、第1プライミング液管路を開閉する第1開閉弁が設けられている。第2プライミング液管路には、第2プライミング液管路を開閉する第2開閉弁が設けられている。
【0007】
本発明の一形態においては、動脈コネクタが第2プライミング液管路に接続された状態で第1開閉弁および第2開閉弁の各々を開放させつつ血液ポンプを正転駆動させることにより、第1プライミング液管路および第2プライミング液管路の両方から動脈側血液回路にプライミング液を供給させてプライミングを実行する。
【0008】
本発明の一形態においては、動脈コネクタが第2プライミング液管路に接続され、かつ、第1開閉弁が閉じた状態で、第2開閉弁を開放させつつ血液ポンプを正転駆動させることにより、第2プライミング液管路から動脈側血液回路にプライミング液を供給させて返血を実行する。
【0009】
本発明の一形態においては、血液浄化装置は、血液ポンプ、第1開閉弁および第2開閉弁の各々を制御する制御部をさらに備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、血液ポンプを逆転駆動することなく正転駆動するのみでプライミングを実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る血液浄化装置の構成を示す回路図である。
図2】本発明の一実施形態に係る血液浄化装置における制御部と各構成との電気的接続関係を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る血液浄化装置において、プライミングを実行している状態を示す回路図である。
図4】本発明の一実施形態に係る血液浄化装置において、リークチェックを実行している状態を示す回路図である。
図5】本発明の一実施形態に係る血液浄化装置において、治療を終了し返血される前の状態を示す回路図である。
図6】本発明の一実施形態に係る血液浄化装置において、動脈コネクタを第2プライミング液管路に接続した状態を示す回路図である。
図7】本発明の一実施形態に係る血液浄化装置において、返血を実行している状態を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る血液浄化装置について図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0013】
以下の実施形態の説明においては、血液浄化装置として、持続緩徐式血液浄化療法(continuous renal replacement therapy:CRRT)に用いられる血液浄化装置について説明する。ただし、血液浄化装置は、持続的血液濾過透析法(continuous hemodiafiltration:CHDF)、持続的血液ろ過法(continuous hemofiltration:CHF)、持続的血液透析法(continuous hemodialysis:CHD)、および、持続緩徐式限外濾過(slow continuous ultrafiltration:SCUF)のいずれかに用いられる血液浄化装置であってもよい。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る血液浄化装置の構成を示す回路図である。図1に示すように、本発明の一実施形態に係る血液浄化装置100は、血液浄化器120と、動脈側血液回路111と、静脈側血液回路112と、血液ポンプ113と、プライミング液管路130と、動脈コネクタ116と、静脈コネクタ119と、制御部とを備える。
【0015】
血液浄化装置100は、動脈側エアートラップチャンバ114と、静脈側エアートラップチャンバ117と、静脈側開閉弁112vと、動脈側圧力測定装置115と、静脈側圧力測定装置118と、プライミング液供給源140と、第1開閉弁131vと、第2開閉弁132vとをさらに備える。
【0016】
血液浄化器120は、たとえば中空糸膜からなる半透膜を内部に含んでいる。血液浄化器120は、血液入口121および血液出口122を有している。血液入口121には、動脈側血液回路111が接続されている。血液出口122には、静脈側血液回路112が接続されている。
【0017】
動脈側血液回路111には、血液を送り出す血液ポンプ113が設けられている。動脈側血液回路111において、血液ポンプ113と血液浄化器120との間に、動脈側エアートラップチャンバ114が設けられている。動脈側エアートラップチャンバ114には、動脈側エアートラップチャンバ114内の圧力を測定する動脈側圧力測定装置115が設けられている。
【0018】
動脈コネクタ116は、動脈側血液回路111に設けられ、動脈にアクセス可能である。動脈コネクタ116を通じて患者の動脈から採取された血液は、動脈側血液回路111を流れて動脈側エアートラップチャンバ114を通過する際に圧力を測定された後、血液入口121から血液浄化器120内に流入する。動脈側エアートラップチャンバ114は、動脈側血液回路111内の血液に空気が混入することを防止するために設けられている。
【0019】
静脈側血液回路112には、静脈側エアートラップチャンバ117が設けられている。静脈側エアートラップチャンバ117には、静脈側エアートラップチャンバ117内の圧力を測定する静脈側圧力測定装置118が設けられている。静脈側血液回路112には、静脈側血液回路112を開閉する静脈側開閉弁112vが設けられている。
【0020】
静脈コネクタ119は、静脈側血液回路112に設けられ、静脈にアクセス可能である。血液浄化器120によって浄化された血液は、静脈側血液回路112を流れて静脈側エアートラップチャンバ117を通過する際に圧力を測定された後、静脈コネクタ119を通じて患者の静脈に返される。静脈側エアートラップチャンバ117は、静脈側血液回路112内の血液に空気が混入することを防止するために設けられている。
【0021】
血液浄化器120は、透析液入口124および排液出口123をさらに有している。透析液入口124には、図示しない透析液管路が接続される。排液出口123には、図示しない排液管路が接続される。
【0022】
プライミング液管路130は、動脈側血液回路111に接続され、プライミング液10を供給する。プライミング液10は、生理食塩液または透析液などである。プライミング液管路130において分岐していない部分の端部は、プライミング液供給源140に接続されている。プライミング液供給源140は、生理食塩液バックまたはオンラインHDF用の透析液供給ポートである。
【0023】
プライミング液管路130は、動脈側血液回路111における動脈コネクタ116と血液ポンプ113との間の区間に接続された第1プライミング液管路131と、動脈コネクタ116と着脱可能に接続される第2プライミング液管路132とに、分岐している。具体的には、プライミング液管路130は、第1プライミング液管路131と第2プライミング液管路132とに、逆Y字状に分岐している。
【0024】
第1プライミング液管路131には、第1プライミング液管路131を開閉する第1開閉弁131vが設けられている。第2プライミング液管路132には、第2プライミング液管路132を開閉する第2開閉弁132vが設けられている。第2プライミング液管路132の端部には、動脈コネクタ116と着脱可能な接続口133が設けられている。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態に係る血液浄化装置における制御部と各構成との電気的接続関係を示すブロック図である。図2に示すように、血液浄化装置100が備える制御部1は、血液ポンプ113、静脈側開閉弁112v、第1開閉弁131v、第2開閉弁132v、動脈側圧力測定装置115および静脈側圧力測定装置118の各々と電気的に接続されている。制御部1は、血液ポンプ113、静脈側開閉弁112v、第1開閉弁131vおよび第2開閉弁132vの各々の動作を制御する。なお、本実施形態に係る血液浄化装置100においては、制御部1によって各構成を全自動で動作可能であるが、第1開閉弁131vおよび第2開閉弁132vの少なくとも一方は、手動で開閉されてもよい。
【0026】
以下、本実施形態に係る血液浄化装置100において、プライミングを実行する際の動作について説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る血液浄化装置において、プライミングを実行している状態を示す回路図である。
【0027】
図3に示すように、プライミングを実行する際には、動脈コネクタ116は、第2プライミング液管路132の接続口133に接続される。静脈コネクタ119は、図示しない排液ポートに接続される。
【0028】
制御部1は、動脈コネクタ116が第2プライミング液管路132に接続された状態で第1開閉弁131v、第2開閉弁132vおよび静脈側開閉弁112vの各々を開放させつつ血液ポンプ113を正転駆動させることにより、第1プライミング液管路131および第2プライミング液管路132の両方から動脈側血液回路111にプライミング液10を供給させてプライミングを実行する。なお、第1開閉弁131vおよび第2開閉弁132vの開閉タイミングは、同時である場合に限られず、時間差を有していてもよい。
【0029】
これにより、血液ポンプ113を逆転駆動することなく正転駆動するのみで、動脈側血液回路111における第1プライミング液管路131との接続位置より上流側の部分に、第2プライミング液管路132からプライミング液10を供給してプライミングすることができる。すなわち、血液ポンプ113を逆転駆動することなく正転駆動するのみで、プライミングを実行することができる。
【0030】
本実施形態に係る血液浄化装置100においては、プライミングの途中段階で、動脈側血液回路111および静脈側血液回路112からなる血液回路のリークチェックを実行することが可能である。図4は、本発明の一実施形態に係る血液浄化装置において、リークチェックを実行している状態を示す回路図である。
【0031】
プライミングを開始して、動脈側血液回路111における動脈側エアートラップチャンバ114と血液ポンプ113との間の区間のいずれかの位置までプライミング液10が流入した状態で、図4に示すように、制御部1は静脈側開閉弁112vを閉鎖させる。静脈側開閉弁112vが閉じてから一定時間経過するまで血液ポンプ113を正転駆動し続けることにより、血液回路内にある空気が圧縮される。血液回路内において圧縮された空気の圧力は、動脈側圧力測定装置115または静脈側圧力測定装置118によって測定される。
【0032】
測定された圧力の変動量を制御部1にて監視することにより、血液回路のリークチェックを実行することができる。具体的には、一定時間内における圧力の変動量が閾値未満である場合は血液回路のリークがないと判断され、一定時間内における圧力の変動量が閾値以上である場合は血液回路のリークがあると判断される。
【0033】
本実施形態においては、動脈側エアートラップチャンバ114および静脈側エアートラップチャンバ117の液面を調整するためのポンプを用いることなく、血液回路のリークチェックを実行することができる。
【0034】
リークチェック後は、制御部1は、図3に示すように、静脈側開閉弁112vを開放させつつ血液ポンプ113を正転駆動させることにより、プライミングを完了させる。
【0035】
次に、本実施形態に係る血液浄化装置100において返血を実行する際の動作について説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る血液浄化装置において、治療を終了し返血される前の状態を示す回路図である。
【0036】
図5に示すように、治療を終了し返血される前の状態においては、動脈コネクタ116は患者の動脈に繋がれており、静脈コネクタ119は患者の静脈に繋がれている。第1開閉弁131vおよび第2開閉弁132vの各々は、閉じた状態になっている。血液回路の内部は、患者の血液で満たされている。血液ポンプ113は、停止している。
【0037】
図6は、本発明の一実施形態に係る血液浄化装置において、動脈コネクタを第2プライミング液管路に接続した状態を示す回路図である。図6に示すように、動脈コネクタ116を患者の動脈から外して、第2プライミング液管路132の接続口133に接続する。
【0038】
図7は、本発明の一実施形態に係る血液浄化装置において、返血を実行している状態を示す回路図である。図7に示すように、制御部1は、動脈コネクタ116が第2プライミング液管路132に接続され、かつ、第1開閉弁131vが閉じた状態で、第2開閉弁132vを開放させつつ血液ポンプ113を正転駆動させることにより、第2プライミング液管路132から動脈側血液回路111にプライミング液10を供給させて返血を実行する。
【0039】
本実施形態においては、返血を実行する際の血液回路の変更として、動脈コネクタ116を第2プライミング液管路132の接続口133に接続するのみでよいため、簡易に返血を実行することができる。
【0040】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
1 制御部、10 プライミング液、100 血液浄化装置、111 動脈側血液回路、112 静脈側血液回路、112v 静脈側開閉弁、113 血液ポンプ、114 動脈側エアートラップチャンバ、115 動脈側圧力測定装置、116 動脈コネクタ、117 静脈側エアートラップチャンバ、118 静脈側圧力測定装置、119 静脈コネクタ、120 血液浄化器、121 血液入口、122 血液出口、123 排液出口、124 透析液入口、130 プライミング液管路、131 第1プライミング液管路、131v 第1開閉弁、132 第2プライミング液管路、132v 第2開閉弁、133 接続口、140 プライミング液供給源。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7