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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152218
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】衣服及び衣服の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/015 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
A41D13/015
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066280
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】518387996
【氏名又は名称】株式会社トラスタ
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(72)【発明者】
【氏名】前定 達雄
【テーマコード(参考)】
3B211
【Fターム(参考)】
3B211AA01
3B211AB01
3B211AC04
(57)【要約】
【課題】
着用者の肩を保護することができるだけでなく、デザイン性を高めやすい衣服を提供する。
【解決手段】
複数のパーツを組み合わせて形成された衣服100において、前記複数のパーツが、着用者の肩部を覆うための肩被覆パーツ10を含むようにするとともに、肩被覆パーツ10が、オモテ地11とウラ地12との間に独立気泡系の発泡ゴムシートである緩衝用シート13を介在させた構造を有するようにし、緩衝用シート13を、肩被覆パーツ10の略全域に設けるようにした。これにより、緩衝用シート13の端縁が肩被覆パーツ10と他のパーツとの切替線に沿うようにし、緩衝用シート13の端縁部分における段差を目立ちにくくして、衣服100のデザイン性を高めやすくすることができる。独立気泡系の発泡ゴムシートである緩衝用シート13は、緩衝性と適度な柔らかさを兼ね備え、吸水性が低いため洗濯時にも乾きやすい。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパーツを組み合わせて形成された衣服であって、
前記複数のパーツが、着用者の肩部を覆うための肩被覆パーツを含み、
肩被覆パーツが、オモテ地とウラ地との間に独立気泡系の発泡ゴムシートである緩衝用シートを介在させた構造を有し、
緩衝用シートが、肩被覆パーツの略全域に設けられた
ことを特徴とする衣服。
【請求項2】
前記複数のパーツが、襟パーツをさらに含み、
襟パーツが、オモテ地とウラ地との間に緩衝用シートを介在させた構造を有する
請求項1記載の衣服。
【請求項3】
前記複数のパーツが、後身頃パーツをさらに含み、
後身頃パーツの左右方向中央部分に、緩衝用シートが設けられた
請求項1記載の衣服。
【請求項4】
肩被覆パーツに、オモテ地、ウラ地及び緩衝用シートを縫着するキルティング加工が施された請求項1記載の衣服。
【請求項5】
肩被覆パーツが、縫着によって他のパーツと組み合わされており、
肩被覆パーツと前記他のパーツとの縫着部分に、肩被覆パーツの緩衝用シートも一緒に縫い込まれている
請求項1記載の衣服。
【請求項6】
複数のパーツを組み合わせて形成された衣服の製造方法であって、
前記複数のパーツが、着用者の肩部を覆うための肩被覆パーツを含み、
オモテ地とウラ地との間に独立気泡系の発泡ゴムシートである緩衝用シートを介在させた構造を有し、その略全域に緩衝用シートが設けられた肩被覆パーツを形成する肩被覆パーツ形成工程と、
肩被覆パーツ形成工程で形成された肩被覆パーツと他のパーツとを組み合わせるパーツ組み合わせ工程と
を経ることを特徴とする衣服の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の上半身に着用するための衣服に関する。本発明はまた、この衣服の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高所作業を行う際にフルハーネスの着用が義務付けられたこともあり、フルハーネスを着用する作業者が増加している。しかし、フルハーネスを着用すると、フルハーネスの肩ベルトが着用者の肩に食い込んで、肩に負担がかかりがちであるという問題があった。
【0003】
この点、これまでには、肩を保護するものとして、肩当てパッド(例えば、特許文献1の図1における「肩当てパッド1」を参照。)が提案されている。この種の肩当てパッドは、通常、ベルト(特許文献1の肩当てパッド1では同文献の図1における「弾性帯状バンド3」)を用いて、使用者の肩部に取り付けるようになっている。しかし、この種の肩当てパッドは、使用者自身がそれを肩部に取り付ける必要があった。このため、この種の肩当てパッドは、その取り付け作業が煩わしかった。加えて、この種の肩当てパッドは、必ずしも適切な箇所に取り付けられるとは限らないことに加えて、適切な箇所に取り付けたとしても、使用するうちにその位置がずれてしまい、肩を保護できなくなる虞もあった。
【0004】
また、これまでには、着用者の身体における肩を覆う部分に肩保護部を設けた衣服(例えば、特許文献2の図1の「スポーツ用衣服A」における「肩パット5」や、特許文献3の図面及び「意匠に係る物品の説明」の欄を参照。)も提案されている。この種の肩保護部付きの衣服において、肩保護部は、衣服生地に、複数のブロック状の弾性体(クッション部材)を内包させることによって設けられる。肩保護部付きの衣服は、その衣服を着用すれば、自然と肩が保護された状態となるため、肩当てパッドを取り付ける煩わしさがないという点で優れている。加えて、肩保護部付きの衣服は、衣服に対する肩保護部の位置が定まっているため、上述した肩当てパッドと比較して、肩保護部の位置がずれにくいという利点も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-176237号公報
【特許文献2】実用新案登録第3100069号公報
【特許文献3】意匠登録第1596690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献2のスポーツ用衣服や、特許文献3の作業用衣服では、肩保護部に設けられたクッション部材の厚みにより、衣服の肩周辺がデコボコとして悪目立ちしてしまい、衣服のデザインを損ねるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、着用者の肩を保護することができるだけでなく、デザイン性を高めやすい衣服を提供するものである。また、この衣服の製造方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、
複数のパーツを組み合わせて形成された衣服であって、
前記複数のパーツが、着用者の肩部を覆うための肩被覆パーツを含み、
肩被覆パーツが、オモテ地とウラ地との間に独立気泡系の発泡ゴムシートである緩衝用シートを介在させた構造を有し、
緩衝用シートが、肩被覆パーツの略全域に設けられた
ことを特徴とする衣服
を提供することによって解決される。
【0009】
上記の衣服は、
複数のパーツを組み合わせて形成された衣服の製造方法であって、
前記複数のパーツが、着用者の肩部を覆うための肩被覆パーツを含み、
オモテ地とウラ地との間に独立気泡系の発泡ゴムシートである緩衝用シートを介在させた構造を有し、その略全域に緩衝用シートが設けられた肩被覆パーツを形成する肩被覆パーツ形成工程と、
肩被覆パーツ形成工程で形成された肩被覆パーツと他のパーツとを組み合わせるパーツ組み合わせ工程と
を経ることを特徴とする衣服の製造方法
によって製造することができる。
【0010】
上半身用の衣服は、多くの場合、複数のパーツを組み合わせて形成され、パーツ間の境界線は一般に「切替線」と呼ばれる。本発明に係る衣服においては、着用者の肩部を覆う肩被覆パーツを設けており、当該肩被覆パーツが、オモテ地とウラ地との間に緩衝用シートを介在させた構造を有するようにしている。これにより、肩被覆パーツに内蔵された緩衝用シートで着用者の肩を覆って保護することができ、例えばフルハーネス着用時等に、着用者の肩に痛みが生じにくくすることや、圧迫感を与えにくくすることができる。緩衝用シートは、肩被覆パーツの略全域に設けている。これにより、緩衝用シートの端縁が、肩被覆パーツと他のパーツとの切替線に沿うようにすることができ、緩衝用シートの端縁部分における段差を目立ちにくくすることができる。したがって、肩被覆パーツがデコボコした見た目になりにくく、衣服のデザイン性を高めやすい。換言すると、本発明に係る衣服は、通常の(肩保護機能が付いていない)衣服のような見た目でありながら、着用者の肩をしっかりと保護することができるものとなっている。
【0011】
本発明に係る衣服においては、緩衝用シートとして、独立気泡系の発泡ゴムシートを採用している。発泡ゴムシートは、適度な柔らかさと弾性を有するため、着用者の身体に沿いやすく、着心地を良くすることができる。また、オモテ地やウラ地が多少のストレッチ性を有する生地である場合に、その伸縮に追随することができる。発泡ゴムシートには、独立気泡系のものと連続気泡系のものがあるところ、独立気泡系のものは連続気泡系のものに比べて反発弾性や強度に優れるため、着用者の肩をよりしっかりと保護することができる。加えて、独立気泡系の発泡ゴムシートは、吸水しにくいという特徴も有している。したがって、これを緩衝用シートとして採用することにより、緩衝用シートが着用者の汗や雨水等を吸水して重くなってしまうことを防ぐことができる。また、洗濯時にも緩衝用シートが吸水しにくいため衣服を乾きやすくすることができる。
【0012】
ところで、着用者の肩を保護することだけを考えると、オモテ地とウラ地との間に緩衝用シートを介在させるのではなく、例えば、衣服における肩を被覆する部分の生地に、緩衝用シートを熱溶着や接着剤等によって貼り付けてもよいように思われる。しかし、この場合には、洗濯を繰り返した場合等に、緩衝用シートが衣服から剥がれやすくなるおそれがある。加えて、衣服の生地を、熱溶着や接着剤等に適した素材で形成する必要があるため、生地の素材が限定されるという問題もある。この点、本発明に係る衣服では、オモテ地とウラ地との間に緩衝用シートを介在させる構造を採用しているため、緩衝用シートが剥がれることがない。また、オモテ地やウラ地の素材が限定されにくいというメリットもある。
【0013】
本発明に係る衣服においては、肩被覆パーツのみに緩衝用シートを設けるようにしてもよい。ただし、フルハーネスのベルトや金具は、着用者の肩だけでなく首周りにも配されることが多いため、フルハーネスのベルトや金具等が着用者の首に当たったり食い込んだりするおそれがある。このため、前記複数のパーツが、襟パーツをさらに含む場合には、襟パーツも、オモテ地とウラ地との間に緩衝用シートを介在させた構造を有するものとすることが好ましい。襟パーツにも緩衝用シートを設けることにより、襟パーツを立たせやすくなり、襟に内蔵された緩衝用シートで着用者の首をしっかりと覆って保護することができる。
【0014】
ところで、フルハーネスのベルトや金具等は、着用者の背中周辺にも配されることが多い。特に、背中における左右方向中央部分は、一般によく流通しているX型やY型のフルハーネスのベルトや金具が配される部分であるため、ベルトや金具等が当たったり食い込んだりしやすい部分である。このため、本発明に係る衣服において、前記複数のパーツが、後身頃パーツをさらに含む場合には、後身頃パーツの左右方向中央部分にも、緩衝用シートを設けることが好ましい。これにより、着用者の背中における左右方向中央部分を緩衝用シートで覆って保護することができる。
【0015】
本発明に係る衣服においては、肩被覆パーツに、オモテ地、ウラ地及び緩衝用シートを縫着するキルティング加工を施すことが好ましい。これにより、オモテ地、ウラ地及び緩衝用シートが互いにズレにくくすることができる。また、キルティングパターンによって、衣服のデザイン性をより高めることもできる。
【0016】
本発明に係る衣服において、肩被覆パーツと他のパーツとの組み合わせ方法は、限定されない。肩被覆パーツは、例えば、縫着によって他のパーツと組み合わせることができる。この場合においては、肩被覆パーツと前記他のパーツとの縫着部分に、肩被覆パーツの緩衝用シートも一緒に縫い込むことが好ましい。これにより、緩衝用シートの端部を、縫着糸で押さえることができ、緩衝用シート端部の段差をより目立ちにくくすることができる。また、緩衝用シートが肩被覆パーツ内でよりヨレにくくすることもできる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によって、着用者の肩を保護することができるだけでなく、デザイン性を高めやすい衣服を提供することが可能になる。また、この衣服の製造方法を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第一実施形態の衣服を示す図である。
図2図1の衣服における緩衝用シートが設けられた箇所を示す図である。
図3】他のパーツと組み合わせる前の肩被覆パーツを示した図である。
図4】他のパーツと組み合わせる前の襟パーツを示した図である。
図5図1の衣服における肩被覆パーツと他のパーツとの切替線付近を、厚み方向に平行な平面で切断して模式的に示した断面模式図である。
図6】第二実施形態の衣服を示す図である。
図7図6の衣服における緩衝用シートが設けられた箇所を示す図である。
図8】第三実施形態の衣服を示す図である。
図9図8の衣服における緩衝用シートが設けられた箇所を示す図である。
図10】第四実施形態の衣服を示す図である。
図11図10の衣服における緩衝用シートが設けられた箇所を示す図である。
図12図10の衣服における肩被覆パーツとその周辺部を、厚み方向に平行な平面で切断して模式的に示した断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.第一実施形態の衣服
本発明の好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。図1は、第一実施形態の衣服100を示す図である。図1(a)は正面図であり、図1(b)は背面図である。図2は、図1の衣服100における緩衝用シートが設けられた箇所を示す図である。斜線で示した箇所が、緩衝用シートが設けられた箇所である。
【0020】
第一実施形態の衣服100は、図1及び図2に示すように、襟付きのポロシャツである。この衣服100は、複数のパーツを組み合わせて形成されている。より具体的には、第一実施形態の衣服100は、着用者の肩部を覆うための一対の肩被覆パーツ10と、着用者の首回りに配されるための襟パーツ20と、前開きを補強するための前立てパーツ30と、着用者の胸部から腹部を覆うための前身頃パーツ40と、着用者の背中を覆うための後身頃パーツ50と、着用者の腕を覆うための一対の袖パーツ60とを備えており、パーツ同士を縫い合わせることで形成されている。
【0021】
第一実施形態の衣服100では、図2に示すように、肩被覆パーツ10、襟パーツ20、前立てパーツ30及び後身頃パーツ50に、発泡ゴム製の緩衝用シートを設けている。これにより、例えば衣服100の外側にフルハーネスを着用した際に、着用者の肩や首や背中を緩衝用シートで覆って保護することができるようになっている。以下、それぞれのパーツについて詳しく説明する。
【0022】
1.2 肩被覆パーツ
図3は、他のパーツと組み合わせる前の肩被覆パーツ10を示した図である。図3(a)は、肩被覆パーツ10をオモテ地11側から見た状態を示しており、図3(b)は、図3(a)の肩被覆パーツ10を分解した状態を示している。図3における網掛けハッチングは、他のパーツとの縫い合わせに用いるための縫い代10aを示している。肩被覆パーツ10は、図3に示すように、オモテ地11とウラ地12との間に、独立気泡系の発泡ゴムシートである緩衝用シート13を介在させた構造を有している。これにより、着用者が衣服100を着用した際に、着用者の肩部を緩衝用シート13で覆って保護することができる。
【0023】
緩衝用シート13は、肩被覆パーツ10の略全域に設けられている。換言すると、肩被覆パーツ10は、図3(b)に示すように、略同型のオモテ地11と緩衝用シート13とウラ地12とが、この順に積層された構造を有している。これにより、衣服100のデザイン性を高めることができる。この理由は、以下の通りである。
【0024】
すなわち、緩衝用シート13は、後述するようにある程度厚みを有するものであるところ、仮に、緩衝用シート13を肩被覆パーツ10の一部分だけに設けた場合には、緩衝用シート13の端縁の位置で肩被覆パーツ10に段差ができてしまい、肩被覆パーツ10がデコボコした見た目になって衣服100のデザイン性を損なうおそれがある。この点、第一実施形態の衣服100では、肩被覆パーツ10の略全域に緩衝用シート13を設けており、緩衝用シート13の端縁が、肩被覆パーツ11の切替線に沿う(略一致する)状態となっている。パーツ間の切替線は、元々段差ができやすい箇所であるから、緩衝用シート13の端縁と切替線とを略一致させることにより、緩衝用シート13の端縁による段差を目立ちにくくすることができる。したがって、衣服100のデザイン性を高めることができ、衣服100を、いかにも肩部を保護するための服というよりは、一般的な服のような見た目にすることができる。
【0025】
第一実施形態の衣服100では、緩衝用シート13を衣服100の外側や内側に貼り付けるのではなく、オモテ地11とウラ地12との間に介在させる(挟む)ようにしている。これにより、緩衝用シート13が脱落しにくくすることができる。また、緩衝用シート13を貼り付ける場合に比べて、衣服100の素材が限定されにくくすることもできる。第一実施形態の衣服100における肩部分では、肩被覆パーツ10のウラ地12が最も内側の層を成しており、ウラ地12よりも内側に他の生地は積層されていない。第一実施形態において、緩衝用シート13は、オモテ地11及びウラ地12のいずれにも接着や融着(以下「接着等」と表現することがある。)されていない。これにより、洗濯を繰り返した際等にも、緩衝用シート13とオモテ地11やウラ地12とがヨレにくくすることができる。
【0026】
第一実施形態の衣服100では、図3(b)に示すように、1つの肩被覆パーツ10に設けられた緩衝用シート13が、1枚の連続したシート状となっている。換言すると、1つの肩被覆パーツ10に設けられている緩衝用シート13には、切れ目がない状態となっている。これにより、肩被覆パーツ10の見た目が、よりデコボコしにくくすることができる。また、着用者の肩部をよりしっかりと保護することもできる。
【0027】
第一実施形態の衣服100では、図3(a)に示すように、肩被覆パーツ10に、オモテ地11、ウラ地12及び緩衝用シート13を縫着するキルティング加工10bを施している。これにより、オモテ地11やウラ地12と緩衝用シート13とがズレにくくすることができる。キルティング加工10bは、肩被覆パーツ10の一部に施すこともできるが、第一実施形態においては、肩被覆パーツ10の略全域に施している。これにより、緩衝用シート13がよりズレにくくすることができる。ただし、他の実施形態では、肩被覆パーツ10にキルティング加工を施さないようにすることもできる。
【0028】
キルティング加工10bのキルティングパターンは、特に限定されない。第一実施形態においては、ストライプ状のキルティングパターンを採用しているが、キルティングパターンとしては、例えば格子状、波線状、折れ線(ジグザグ)状、幾何学模様状、不定形状等を採用することができる。
【0029】
肩被覆パーツ10の形状や大きさは、着用者の肩の少なくとも一部を覆うことができるようになっていれば、特に限定されない。肩被覆パーツ10は、例えば、肩だけでなく着用者の上腕まで覆うものであってもよい。ただし、肩被覆パーツ10は、緩衝用シート13が内蔵されている関係上、衣服100における他の部分に比べるとややしなやかさに劣りがちであるところ、肩被覆パーツ10が大きくなりすぎると、肩被覆パーツ10が着用者の身体に沿いにくくなり、悪目立ちして衣服100のデザインをかえって損ねるおそれがある。また、肩被覆パーツ10がゴワゴワして着用感が悪くなるおそれもある。このため、第一実施形態においては、図1~2に示すように、肩被覆パーツ10の外側端部10cが、セットインスリーブの肩切替線を形成するようにしている。これにより、着用者の肩をしっかりと保護しつつも肩被覆パーツ10をコンパクトなものとして着用感を高めることができる。なお、肩被覆パーツ10の内側端部(図示省略)は、襟パーツ20との切替線を形成している。
【0030】
肩被覆パーツ10の面積(肩被覆パーツ10を一対で設ける場合、1つの肩被覆パーツ10の面積。以下同様。)は、限定されないが、小さすぎると肩を十分に保護しにくくなるおそれがある。このため、肩被覆パーツ10の面積は、100cm以上であることが好ましく、200cm以上であることがより好ましい。一方、肩被覆パーツ10の面積が大きすぎると、衣服100の着用感が低下するおそれがある。このため、肩被覆パーツ10の面積は、500cm以下であることが好ましく、400cm以下であることが好ましい。
【0031】
緩衝用シート13としては、既に述べたように、独立気泡系の発泡ゴムシートを採用している。これにより、緩衝用シート13を、しなやかで、かつ高い緩衝機能を有するものとすることができる。加えて、緩衝用シート13の吸水性を低くすることができ、衣服100を着用した着用者が汗をかいた際等に、緩衝用シート13が吸水して重くなることを防ぐことができる。さらに、衣類100を洗濯した際等に、衣類100が乾きやすくすることもできる。
【0032】
発泡ゴムシートを形成する素材は、ゴム弾性を有する素材であればその種類を特に限定されない。発泡ゴムシートの素材としては、熱硬化性エラストマと熱可塑性エラストマのいずれを採用することもできる。発泡ゴムシートの素材としては、例えば、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ウレタンゴム(U)、天然ゴム(NR)、シリコンゴム(SI)、ニトリルゴム(NBR)、スチレンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、フッ素ゴム(FMK、FPM)等を採用することができる。発泡ゴムシートの素材は、1種類だけであっても、2種類以上を組み合わせてもよい。第一実施形態においては、緩衝用シート13として、独立気泡系のクロロプレンゴム製発泡ゴムシートを採用している。
【0033】
緩衝用シート13は、少なくともそのオモテ面(オモテ地11に面する側の面。以下同じ。)が、平坦であることが好ましい。ここで、「平坦」とは、高さ2mm以上の突起や深さ2mm以上の凹みがないことをいう。これにより、肩被覆パーツ10の見た目がデコボコしにくくすることができ、衣服100のデザイン性をより高めやすくなる。第一実施形態における緩衝用シート13は、図3(b)に示すように、オモテ面及びウラ面(ウラ地12に面する側の面。以下同じ。)の両方が平坦なものとなっている。
【0034】
緩衝用シート13の厚みは、緩衝用シート13の素材によっても異なり、特に限定されない。ただし、緩衝用シート13が薄すぎると、緩衝機能を高めにくくなるおそれがある。このため、緩衝用シート13の厚みは、1mm以上とすることが好ましく、2mm以上とすることがより好ましい。一方、緩衝用シート13が厚すぎると、肩被覆パーツ10がゴワゴワしやすくなるおそれや、悪目立ちしやすくなるおそれがある。このため、緩衝用シート13の厚みは、8mm以下とすることが好ましく、6mm以下とすることがより好ましく、4mm以下とすることがさらに好ましい。第一実施形態における緩衝用シート13の厚みは、3mm程度となっている。
【0035】
肩被覆パーツ10のオモテ地11として、どのような生地を採用するのかは特に限定されない。肩被覆パーツ10のオモテ地11としては、例えば、肩被覆パーツ10に隣接する他のパーツ(例えば、襟パーツ20や、前身頃パーツ40や、後身頃パーツ50や、袖パーツ60)とは異なる生地(例えば、柄、色、形成方法、素材等が異なる生地)を採用することができる。これにより、肩被覆パーツ10と隣接する他のパーツとの生地の違いが目を引きやすいようにして、緩衝用シート13の有無による違いがより目立ちにくいようにすることができる。また、色柄等で遊びを効かせることによって、衣服100のデザイン性をより高めることができる。
【0036】
肩被覆パーツ10のオモテ地11としては、例えば、ニット地(編生地)、布帛(織生地)等を採用することができる。ニット地としては、例えば、メッシュ生地、ストレッチ生地、ストレッチメッシュ生地、鹿の子、フライス、天竺、インターロック、スムース等が例示される。オモテ地11の素材としては、例えば、綿、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、アクリル、リネン、ウール、レーヨン等を採用することができる。オモテ地11の素材は、1種類だけとすることも、2種類以上を組み合わせたものとすることもできる。
【0037】
肩被覆パーツ10のウラ地12として、どのような生地を採用するのかも特に限定されない。ウラ地12としては、オモテ地11について述べた構成と同様の構成を採用することができる。ウラ地12は、オモテ地11と同じ生地であっても、異なる生地であってもよい。また、ウラ地12は、肩被覆パーツ10に隣接する他のパーツと同じ生地であっても、異なる生地であってもよい。
【0038】
1.3 襟パーツ
図4は、他のパーツと組み合わせる前の襟パーツ20を示した図である。図4(a)は、襟パーツ20をオモテ地21側から見た状態を示しており、図4(b)は、図4(a)の襟パーツ20を分解した状態を示している。図4における網掛けハッチングは、他のパーツとの縫い合わせに用いるための縫い代20aを示している。
【0039】
第一実施形態においては、図4に示すように、襟パーツ20にも緩衝用シート23を設けている。すなわち、襟パーツ20は、オモテ地21とウラ地22との間に緩衝用シート23を介在させた構造を有している。これにより、衣服100の襟を立ちやすく(倒れにくく)することができる。したがって、着用者が衣服100を着用した際に、着用者の首を緩衝用シート23でしっかりと覆って保護することができる。一般的な衣服においては、襟に不織布製の芯地が入れられることがあるが、第一実施形態においては、緩衝用シート23が芯地としての役割も果たしている。
【0040】
緩衝用シート23は、襟パーツ20の一部だけ(例えば、首の後方に配される部分だけ)に設けることもできるが、第一実施形態においては、襟パーツ20の略全域に設けている。換言すると、襟パーツ20は、図4(b)に示すように、略同型のオモテ地21と緩衝用シート23とウラ地22とが、この順に積層された構造を有している。これにより、衣服100の襟をよりしっかりと立ちやすくすることができる。第一実施形態において、緩衝用シート23は、オモテ地21及びウラ地22のいずれにも接着等されていない。これにより、洗濯を繰り返した際等にも、緩衝用シート23とオモテ地21やウラ地22とがヨレにくくすることができる。
【0041】
肩被覆パーツ10には、キルティング加工10b(図3)が施されていた。これに対し、襟パーツ20には、図4に示すように、キルティング加工は施していない。代わりに、襟パーツ20の外縁部にステッチ20bを施している。これにより、襟パーツ20の見た目をスマートにしながら、オモテ地21やウラ地22と緩衝用シート23とがズレにくくすることができる。
【0042】
襟パーツ20の形状は、着用者の首回りに配されるようになっていれば、特に限定されない。襟パーツ20としては、例えば、スタンダードカラー(ポイントカラー)、ラウンドカラー、スタンドカラー、ハイネック等を採用することができる。
【0043】
襟パーツ20の緩衝用シート23としては、肩被覆パーツ10の緩衝用シート13について述べた構成と同様の構成を採用することができる。襟パーツ20の緩衝用シート23は、肩被覆パーツ10の緩衝用シート13と同じ素材であっても、異なる素材であってもよい。
【0044】
襟パーツ20の緩衝用シート23の厚みは、肩被覆パーツ10の緩衝用シート13と同等か、0.5~1mm程度薄くすることが好ましい。すなわち、緩衝用シート23の厚みは、0.5mm以上であることが好ましく、1.5mm以上であることがより好ましい。緩衝用シート23の厚みは、7mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましく、3mm以下であることがさらに好ましい。第一実施形態における緩衝用シート23の厚みは、2~3mm程度となっている。
【0045】
襟パーツ20のオモテ地21及びウラ地22には、肩被覆パーツ10のオモテ地11について述べた構成と同様の構成を採用することができる。オモテ地21及びウラ地22は、互いに同じ生地であっても、異なる生地であってもよい。また、オモテ地21やウラ地22は、それぞれ、襟パーツ20に隣接する他のパーツと同じ生地であっても、異なる生地であってもよい。
【0046】
1.4 前立てパーツ
第一実施形態においては、肩被覆パーツ10と襟パーツ20に加えて、前立てパーツ30にも緩衝用シート(図示省略)を設けている。すなわち、前立てパーツ30は、その略全域が、オモテ地(図示省略)とウラ地(図示省略)との間に緩衝用シート(図示省略)を介在させた構造を有している。これにより、前立てパーツ30に厚みを出して高級感を演出することができるとともに、前立てパーツ30に皺が寄りにくくすることができる。また、既に述べたように、洗濯時の乾きも早い。一般的な衣服においては、前立てに不織布製の芯地が入れられることがあるが、第一実施形態においては、緩衝用シート(図示省略)が芯地としての役割を果たしている。
【0047】
前立てパーツ30の緩衝用シートとしては、肩被覆パーツ10の緩衝用シート13について述べた構成と同様の構成を採用することができる。前立てパーツ30の緩衝用シートは、肩被覆パーツ10の緩衝用シート13と同じ材質や素材であっても、異なる材質や素材であってもよい。前立てパーツ30の緩衝用シートの厚み、オモテ地、ウラ地については、それぞれ、襟パーツ20の緩衝用シート23の厚み、オモテ地21、ウラ地22について述べた構成と同様の構成を採用することができる。
【0048】
1.5 後身頃パーツ
第一実施形態における衣服100では、図2に示すように、後身頃パーツ50の左右方向中央部分にも、緩衝用シートを設けている。これにより、着用者の背中における左右方向中央部分(左右の肩甲骨に挟まれた箇所)を緩衝用シートで覆って保護することができる。第一実施形態においては、後身頃パーツ50の左右方向中央部分における上端部から下端部まで連続して緩衝用シートを設けているが、緩衝用シートは、着用者の左右の肩甲骨に挟まれた箇所を覆うことができるようになっていれば、その具体的な大きさや形状を限定されない。
【0049】
後身頃パーツ50に緩衝用シートを設ける方法は、特に限定されない。緩衝用シートは、例えば、後身頃パーツ50のオモテ側やウラ側に縫着したり接着したりすることもできるが、そうすると緩衝用シートが悪目立ちするおそれや、はがれやすくなるおそれがある。このため、第一実施形態においては、後身頃パーツ50を、着用者の背中における左右方向中央部分を覆うための中央サブパーツ51と、中央サブパーツ51の左側に接続された左側サブパーツ52と、中央サブパーツ51の右側に接続された右側サブパーツ53とを備えたものとするとともに、中央サブパーツ51を、オモテ地(図示省略)とウラ地(図示省略)との間に緩衝用シート(図示省略)を介在させた構造を有するものとしている。緩衝用シートは、中央サブパーツ51の略全域に設けている。これにより、肩被覆パーツ10等と同様に、中央サブパーツ51の緩衝用シートが悪目立ちしにくくすることができる。
【0050】
後身頃パーツ50の緩衝用シート(図示省略)としては、肩被覆パーツ10の緩衝用シート13について述べた構成と同様の構成を採用することができる。後身頃パーツ50の緩衝用シート(図示省略)は、肩被覆パーツ10の緩衝用シート13と同じ素材であっても、異なる素材であってもよい。
【0051】
後身頃パーツ50の緩衝用シート(図示省略)の厚みは、肩被覆パーツ10の緩衝用シート13と同等か、1~2mm程度厚くすることが好ましい。すなわち、後身頃パーツ50の緩衝用シート(図示省略)の厚みは、2mm以上とすることが好ましく、3mm以上とすることがより好ましい。後身頃パーツ50の緩衝用シート(図示省略)の厚みは、10mm以下とすることが好ましく、8mm以下とすることがより好ましく、6mm以下とすることがさらに好ましい。
【0052】
後身頃パーツ50を形成する生地(例えば、中央サブパーツ51のオモテ地(図示省略)やウラ地(図示省略))には、肩被覆パーツ10のオモテ地11について述べた構成と同様の構成を採用することができる。中央サブパーツ51のオモテ地(図示省略)及びウラ地(図示省略)は、互いに同じ生地であっても、異なる生地であってもよい。また、中央サブパーツ51のオモテ地(図示省略)やウラ地(図示省略)は、それぞれ、左側サブパーツ52や右側サブパーツ53と同じ生地であっても、異なる生地であってもよい。
【0053】
なお、第一実施形態の衣服100においては、前身頃パーツ40には緩衝用シートを設けていない。すなわち、衣服100における着用者の胸よりも下側を覆う部分には緩衝用シートを設けていない。これにより、衣服100における胴回りがゴワゴワしにくくすることができ、着用者が動きやすくすることができる。また、衣服100のデザイン性をより高めることや、衣服100の通気性を高めることもできる。
【0054】
1.6 製造方法
以下、第一実施形態の衣服100の製造方法について説明する。第一実施形態の衣服100は、肩被覆パーツ形成工程と、襟パーツ形成工程と、前立てパーツ形成工程と、後身頃パーツ形成工程と、パーツ組み合わせ工程とを経ることによって製造することができる。
【0055】
1.6.1 肩被覆パーツ形成工程
肩被覆パーツ形成工程は、肩被覆パーツ10(図3)を形成する工程である。肩被覆パーツ10は、オモテ地11とウラ地12との間に緩衝用シート13を介在させた構造を有しており、緩衝用シート13が、肩被覆パーツ10の略全域に設けられるように形成されれば、その具体的な形成方法を限定されない。
【0056】
肩被覆パーツ10は、例えば、オモテ地11、緩衝用シート13及びウラ地12を、それぞれ肩被覆パーツ10の外形に沿った形状にカットしてからこの順に積層し、図3(a)に示すようにキルティング加工10bを施すようにしてもよい。この方法は、例えば、肩被覆パーツ10の形状に基づいてキルティング加工10bを施したい場合等に適している。
【0057】
ただし、上記の方法では、肩被覆パーツ10ごとにキルティング加工10bを施さなくてはならず、手間がかかるおそれがある。そこで、他の方法として、大判のままのオモテ地11、緩衝用シート13及びウラ地12をこの順に積層し、キルティング加工10bを施して緩衝用キルティング生地を製造し、当該緩衝用キルティング生地を肩被覆パーツ10の外形に沿った形状にカットすることによって肩被覆パーツ10を形成する方法を採用することもできる。この方法は、例えば、キルティング加工10bのキルティングパターンが連続的な模様である場合等に適している。
【0058】
第一実施形態における肩被覆パーツ形成工程で形成された肩被覆パーツ10は、図3(b)に示すように、他のパーツと縫い合わせるための縫い代10aにおいても、オモテ地11とウラ地12との間に緩衝用シート13を介在させた構造を有している。
【0059】
1.6.2 襟パーツ形成工程
襟パーツ形成工程は、襟パーツ20(図4)を形成する工程である。第一実施形態の襟パーツ形成工程では、まず、オモテ地21、ウラ地22及び緩衝用シート23を襟パーツ20の外形に沿った形状にカットする。続いて、オモテ地21とウラ地22とを中表に重ね、衿付け部分(縫い代20aがある部分)を除いて袋状に縫着してから表に返す。表に返したオモテ地21とウラ地22との袋の中に、緩衝用シート23を挿入して、上からステッチ20bで押さえる。これにより、図4(a)に示す襟パーツ20を形成することができる。なお、ステッチ20bの代わりに、あるいはステッチ20bに加えて、キルティング加工を施すこともできる。
【0060】
第一実施形態における襟パーツ形成工程で形成された襟パーツ20は、図4(b)に示すように、衿付け部分の縫い代20aにおいても、オモテ地21とウラ地22との間に緩衝用シート23を介在させた構造を有している。
【0061】
1.6.3 前立てパーツ形成工程
前立てパーツ形成工程は、前立てパーツ30を形成する工程である。第一実施形態の襟パーツ形成工程では、襟パーツ形成工程と同様に、まずオモテ地(図示省略)とウラ地(図示省略)とを袋状に縫着してから、当該袋の中に緩衝用シート(図示省略)を挿入して、上からステッチやボタン付け糸やボタン穴等で押さえることにより、前立てパーツ30を形成することができる。
【0062】
1.6.4 後身頃パーツ形成工程
後身頃パーツ形成工程は、後身頃パーツ50を形成する工程である。第一実施形態における後身頃パーツ形成工程は、中央サブパーツ51を形成する中央サブパーツ形成工程と、中央サブパーツ形成工程で形成された中央サブパーツ51を、左側サブパーツ52及び右側サブパーツ53と組み合わせるサブパーツ組み合わせ工程とを含んでいる。
【0063】
中央サブパーツ形成工程では、肩被覆パーツ形成工程と同様に、オモテ地(図示省略)、緩衝用シート(図示省略)及びウラ地(図示省略)をそれぞれカットしてから積層し、キルティング加工51bを施すことや、予めキルティング加工51bが施された緩衝用キルティング生地をカットすること等によって、中央サブパーツ51を形成することができる。このようにして形成された中央サブパーツ51は、肩被覆パーツ10と同様に、他のパーツと縫い合わせるための縫い代(図示省略)においても、オモテ地(図示省略)とウラ地(図示省略)との間に緩衝用シート(図示省略)を介在させた構造を有している。
【0064】
サブパーツ組み合わせ工程では、中央サブパーツ51を、左側サブパーツ52及び右側サブパーツ53と縫い合わせる。中央サブパーツ51では、緩衝用シート(図示省略)が縫い代(図示省略)にまで設けられているため、中央サブパーツ51と左側サブパーツ52及び右側サブパーツ53とを縫い合わせる際には、当該縫着部分に、緩衝用シート(図示省略)も一緒に縫い込まれることになる。これにより、緩衝用シート(図示省略)縁部の段差をより目立ちにくくすることができる。
【0065】
1.6.5 パーツ組み合わせ工程
パーツ組み合わせ工程は、肩被覆パーツ形成工程で形成された肩被覆パーツ10と他のパーツとを組み合わせる工程である。第一実施形態におけるパーツ組み合わせ工程では、肩被覆パーツ10と、襟パーツ形成工程で形成された襟パーツ20と、前立てパーツ形成工程で形成された前立てパーツ30と、後身頃パーツ形成工程で形成された後身頃パーツ50と、前身頃パーツ40と、袖パーツ60とを組み合わせる。パーツ同士は、例えば、熱溶着や接着剤を用いた接着等によっても組み合わせることができるが、第一実施形態においては、縫着によってパーツ同士を組み合わせている。
【0066】
既に述べたように、第一実施形態における肩被覆パーツ10では、緩衝用シート13が縫い代10aにまで設けられている。したがって、肩被覆パーツ10と、これに隣接する他のパーツ(例えば、襟パーツ20、前身頃パーツ40、後身頃パーツ50、袖パーツ60等)とを縫い合わせる際には、当該縫着部分に、緩衝用シート13も一緒に縫い込まれるようになる。これにより、緩衝用シート13の縁部を縫着糸で押さえて圧縮することができ、緩衝用シート13縁部による段差をより目立ちにくくすることができる。また、緩衝用シート13と肩被覆パーツ10とをより一体化させやすくなり、緩衝用シート13がヨレにくくすることもできる。
【0067】
図5は、図1の衣服100における肩被覆パーツ10と他のパーツとの切替線付近を、厚み方向に平行な平面で切断して模式的に示した断面模式図である。図5(a)は、肩被覆パーツ10と袖パーツ60との切替線付近を示しており、図5(b)は、肩被覆パーツ10と前身頃パーツ40との切替線付近を示している。
【0068】
以下、図5(a)を参照しながら、肩被覆パーツ10と袖パーツ60とを縫い合わせる方法についてより具体的に説明する。まず、肩被覆パーツ10と袖パーツ60とを中表に重ねる。続いて、肩被覆パーツ10の縫い代10aと袖パーツ60の縫い代60aとを縫着糸10dで縫い合わせるとともに、かがり糸(図示省略)で縫い代10a及び縫い代60aの裁ち端を処理する。最後に、中表になっていた肩被覆パーツ10と袖パーツ60とを開く。これにより、図5(a)に示すように、緩衝用シート13も一緒に縫い込まれた状態で、肩被覆パーツ10と袖パーツ60とが縫着される。
【0069】
次に、図5(b)を参照しながら、肩被覆パーツ10と前身頃パーツ40とを縫い合わせる場合についても説明する。まず、肩被覆パーツ10と前身頃パーツ40とを中表に重ねる。続いて、肩被覆パーツ10の縫い代10aと前身頃パーツ40の縫い代40aとを縫着糸10eで縫い合わせるとともに、かがり糸(図示省略)で縫い代10a及び縫い代40aの裁ち端を処理する。最後に、中表になっていた肩被覆パーツ10と前身頃パーツ40とを開くとともに、縫い代10a及び縫い代40aを肩被覆パーツ10側に倒して、肩被覆パーツ10と一緒にステッチ10fで押さえる。すると、図5(b)に示すように、肩被覆パーツ10の縫い代10aに含まれる緩衝用シート13の端部が、ステッチ10fで押さえられて厚み方向に圧縮された状態となる。これにより、緩衝用シート13端部による段差をより目立ちにくくすることができる。肩被覆パーツ10と後身頃パーツ50との縫着も、同様の方法で行うことができる。
【0070】
第一実施形態における襟パーツ20では、肩被覆パーツ10と同様に、緩衝用シート23が縫い代20aにまで設けられている。したがって、襟パーツ20とこれに隣接する他のパーツ(例えば、肩被覆パーツ10、前身頃パーツ40、後身頃パーツ50等)とを縫い合わせる際には、当該縫着部分に、緩衝用シート23も一緒に縫い込まれることになる。これにより、衣服100の襟がよりしっかりと立ちやすくすることができる。また、緩衝用シート23縁部の段差をより目立ちにくくすることや、緩衝用シート23をヨレにくくすることもできる。
【0071】
2.第二実施形態の衣服
図6は、第二実施形態の衣服100を示す図である。図6(a)は正面図であり、図6(b)は背面図である。図7は、図6の衣服100における緩衝用シートが設けられた箇所を示す図である。斜線で示した箇所が、緩衝用シートが設けられた箇所である。第二実施形態の衣服100は、図6~7に示すように、ハーフジップアップタイプのスタンドカラーポロシャツである。第一実施形態の衣服100では、前立てパーツ30(図1)を設けていたが、第二実施形態の衣服100では前立てパーツを設けていない。
【0072】
第一実施形態の衣服100では、図2に示すように、後身頃パーツ50の緩衝用シートが、後身頃パーツ50の左右方向中央部分における上端部から下端部まで連続して設けられていた。これに対し、第二実施形態の衣服100では、図7に示すように、後身頃パーツ50の緩衝用シートを、後身頃パーツ50の上端部から上下方向中央部分まで連続して設けており、後身頃パーツ50における上下方向中央部分から下端部まで(着用者の腰回りを覆う部分)には緩衝用シートを設けていない。より具体的には、後身頃パーツ50が、中央サブパーツ51と、中央サブパーツ51の左側、下側及び右側に接続された周辺サブパーツ54とを備えたものとしている。これにより、衣服100の通気性を高めることができる。
【0073】
第二実施形態の衣服100においては、肩被覆パーツ10におけるキルティング加工10bや中央サブパーツ51におけるキルティング加工51bのキルティングパターンとして、格子状のものを採用している。これ以外の構成については、第一実施形態の衣服100について述べた構成と同様の構成を採用することができる。
【0074】
4.第三実施形態の衣服
図8は、第三実施形態の衣服100を示す図である。図8(a)は正面図であり、図8(b)は背面図である。図9は、図8の衣服100における緩衝用シートが設けられた箇所を示す図である。斜線で示した箇所が、緩衝用シートが設けられた箇所である。第三実施形態の衣服100は、図8~9に示すように、フルジップアップタイプの作業着(作業用ブルゾン)である。第三実施形態の衣服100は、肩被覆パーツ10を含む略全体が、布帛で形成されている。これ以外の構成については、第一実施形態の衣服100又は第二実施形態の衣服100について述べた構成と同様の構成を採用することができる。
【0075】
3.第四実施形態の衣服
図10は、第四実施形態の衣服100を示す図である。図10(a)は正面図であり、図10(b)は背面図である。図11は、図10の衣服100における緩衝用シートが設けられた箇所を示す図である。斜線で示した箇所が、緩衝用シートが設けられた箇所である。図12は、図10の衣服100における肩被覆パーツ10とその周辺部を、厚み方向に平行な平面で切断して模式的に示した断面模式図である。第四実施形態の衣服100は、図10~11に示すように、クルーネックタイプのTシャツであり、より具体的には、コンプレッションウェアである。第四実施形態の衣服100は、肩被覆パーツ10を含む略全体が、高ストレッチ素材(ポリウレタンを5%以上含む生地)で形成されている。第一実施形態の衣服100では、襟パーツ20に緩衝用シート23(図4)を設けていたが、第四実施形態の衣服100では襟パーツ20に緩衝用シートを設けていない。また、第一実施形態の衣服100では前立てパーツ30(図1)を設けていたが、第四実施形態の衣服100では前立てパーツを設けていない。
【0076】
第一実施形態の衣服100では、図3(b)に示すように、肩被覆パーツ10における縫い代10aを含む略全域に緩衝用シート13が設けられており、肩被覆パーツ10と他のパーツとを縫い合わせる際には、図5に示すように、緩衝用シート13も一緒に縫い込まれるようになっていた。これに対し、第四実施形態の衣服100では、図12に示すように、肩被覆パーツ10における縫い代10aには緩衝用シート13を設けていない。換言すると、肩被覆パーツ10における縫い代10aを含まない部分の略全域に緩衝用シート13を設けている。そして、肩被覆パーツ10と他のパーツとを縫い合わせる際には、オモテ地11及びウラ地12だけを他のパーツ(図12においては、前身頃パーツ40や後身頃パーツ50)と縫い合わせるようにし、その際に緩衝用シート13は縫い込まないようにする。これにより、肩被覆パーツ10が高ストレッチ素材で形成されている場合に、緩衝用シート13が肩被覆パーツ10のストレッチを邪魔しないようにすることができる。この場合でも、緩衝用シート13の縁部は肩被覆パーツ10と他のパーツとの切替線に沿った状態となるため、緩衝用シート13の縁部による段差が目立ちにくくすることができる。後身頃パーツ50における中央サブパーツ51についても、同様に、縫い代(図示省略)を含まない部分の略全域に緩衝用シート(図示省略)を設けている。
【0077】
さらに、第一実施形態の衣服100では、図1~3に示すように、肩被覆パーツ10にキルティング加工10bを施していたが、第四実施形態の衣服100では、図10~11に示すように、肩被覆パーツ10にキルティング加工10bを施していない。これにより、肩被覆パーツ10をより滑らかにストレッチさせやすくすることができる。また、肩被覆パーツ10をストレッチさせた際に、キルティング加工の糸が引きつれる等して肩被覆パーツ10のオモテ地11やウラ地12が傷むことを防ぐことができる。後身頃パーツ50における中央サブパーツ51についても、同様に、キルティング加工を施していない。これ以外の構成については、第一実施形態の衣服100、第二実施形態の衣服100又は第三実施形態の衣服100について述べた構成と同様の構成を採用することができる。
【0078】
5.その他
本発明に係る衣服100は、上半身に着用するためのものであれば、その種類を特に限定されない。衣服100は、インナーウェア、ミドルレイヤーウェア、アウターウェアのいずれとすることもできる。インナーウェアとしては、例えば、ストレッチ素材で形成されたコンプレッションウェア等が例示される。ミドルレイヤーウェアとしては、例えば、ポロシャツや、ジップアップシャツや、ハイネックシャツや、クルーネックTシャツや、VネックTシャツ等が例示される。アウターウェアとしては、例えば、空調衣服、ブルゾン(作業着)、ジャケット等が例示される。衣服100の袖の長さも特に限定されない。衣服100は、長袖、ハーフスリーブ、半袖、ノースリーブ等とすることができる。
【0079】
本発明に係る衣服100の用途も、特に限定されない。本発明に係る衣服100は、肩を保護する必要がある各種の衣服とすることができる。例えば、高所で作業を行う際には、「フルハーネス」と呼ばれる安全帯を着用することがあるところ、このフルハーネスを着用すると、両肩にベルトが掛け回された状態となるため、肩に負荷が掛かるが、このフルハーネスの下側に着用する衣服(例えば、作業用シャツや、作業用ブルゾンや、空調衣服や、コンプレッションウェア等)として本発明に係る衣服100を採用することができる。このほかに肩を保護する必要がある衣服としては、例えば、作業着(配達員が配達時に着用する衣服を含む。)や、スポーツウェア等が例示される。
【符号の説明】
【0080】
100 衣服
10 肩被覆パーツ
10a 縫い代
10b キルティング加工
10c 外側端部
10d 縫着糸
10e 縫着糸
10f ステッチ
11 オモテ地
12 ウラ地
13 緩衝用シート
20 襟パーツ
20a 縫い代
20b ステッチ
21 オモテ地
22 ウラ地
23 緩衝用シート
30 前立てパーツ
40 前身頃パーツ
50 後身頃パーツ
51 中央サブパーツ
51b キルティング加工
52 左側サブパーツ
53 右側サブパーツ
60 袖パーツ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12