(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152225
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】パウチ
(51)【国際特許分類】
B65D 30/02 20060101AFI20241018BHJP
B65D 33/38 20060101ALI20241018BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B65D30/02
B65D33/38
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066289
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴史
(72)【発明者】
【氏名】羽原 峰行
【テーマコード(参考)】
3E064
3E086
【Fターム(参考)】
3E064AA11
3E064BA17
3E064BA36
3E064BA55
3E064BB03
3E064FA04
3E064FA05
3E064GA01
3E064HN65
3E064HS04
3E086AA23
3E086AD01
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BB01
3E086BB51
3E086BB85
3E086CA11
3E086CA40
(57)【要約】
【課題】開封用部材の突き刺し性に優れたパウチを提供する。
【解決手段】パウチは、少なくとも1枚の積層フィルムで構成されている。積層フィルムは、少なくとも、パウチの内部表面側の第1層と、パウチの外部表面側の第2層とを有する。パウチは、第1層と第2層とがシーラント層である第1部位と、パウチに収容された収容物が通過する貫通孔を構成する内壁を有し、かつ、第1部位の第2層と熱溶着することにより第1部位に接合されたスパウトとを備える。スパウトと第1部位との接合領域では、スパウトの溶融物と第1部位の第2層の溶融物とを含む塊状物が、第1部位に溶着した状態で内壁に沿って形成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1枚の積層フィルムで構成されたパウチであって、
前記積層フィルムは、少なくとも、前記パウチの内部表面側の第1層と、前記パウチの外部表面側の第2層とを有し、
前記パウチは、
前記第1層と前記第2層とがシーラント層である第1部位と、
前記パウチに収容された収容物が通過する貫通孔を構成する内壁を有し、かつ、前記第1部位の前記第2層と熱溶着することにより前記第1部位に接合されたスパウトとを備え、
前記スパウトと前記第1部位との接合領域では、前記スパウトの溶融物と前記第1部位の前記第2層の溶融物とを含む塊状物が、前記第1部位に溶着した状態で前記内壁に沿って形成されている、パウチ。
【請求項2】
前記第1層および前記第2層のうち前記第1層のみがシーラント層である第2部位をさらに備え、
前記第1部位は、前記積層フィルムとしての第1積層フィルムで構成された、前記パウチのガセット部を構成し、
前記第2部位は、前記積層フィルムとしての第2積層フィルムで構成された、前記パウチの胴部を構成する、請求項1に記載のパウチ。
【請求項3】
前記第1部位の前記第1層の融点は、前記第1部位の前記第2層の融点および前記スパウトの融点よりも低い、請求項1または2に記載のパウチ。
【請求項4】
前記スパウトは、前記貫通孔が形成された筒部と、前記筒部を第1部位に取り付けるためのフランジ部とを有し、
前記第1部位のうち前記スパウトの上面視において前記貫通孔の内側に位置する部分は、前記第1部位のうち前記スパウトの上面視において前記フランジ部の外側に位置する部分よりも脆弱である、請求項1または2に記載のパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スパウト付きパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スパウトをパウチに取り付けたスパウト付きパウチが知られている。このようなパウチとして、特開2003-155079号公報(特許文献1)、特開平7-10160号公報(特許文献2)、および特表2002-504411号公報(特許文献3)には、スパウト(詳しくは、スパウトのフランジ)をパウチの外側面に溶着させる構成が開示されている。
【0003】
特許文献1~3に開示されているように、ユーザは、このようなパウチの使用時において、スパウトの開口に先端が尖った部材(開封用部材)を挿入し、かつ、当該部材をパウチ(詳しくはシート,フィルム材)に突き刺す。これにより、パウチに開口が形成され、パウチの収容物をスパウトを介してパウチの外に出すことができる。たとえば、特許文献1では先端が鋭利な突き刺し棒、特許文献2では刃物やドライバー等の破断具、および、特許文献3では傾斜を付けた端部を有する排出用連結部材を、スパウトの開口に挿入し、かつパウチのシートに突き刺す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-155079号公報
【特許文献2】特開平7-10160号公報
【特許文献3】特表2002-504411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スパウトをパウチの外側面に溶着させたパウチに対して、上記のような開封用部材をスパウトの開口に挿入してパウチのシートに突き刺す場合、開封用部材を突き刺す箇所の撓み量(フィルムの撓み量)が大きいと、シートに対する開封用部材の突き刺し性が低下する。
【0006】
本開示は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、開封用部材の突き刺し性に優れたパウチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある局面に従うと、パウチは、少なくとも1枚の積層フィルムで構成されている。積層フィルムは、少なくとも、パウチの内部表面側の第1層と、パウチの外部表面側の第2層とを有する。パウチは、第1層と第2層とがシーラント層である第1部位と、パウチに収容された収容物が通過する貫通孔を構成する内壁を有し、かつ、第1部位の第2層と熱溶着することにより第1部位に接合されたスパウトとを備える。スパウトと第1部位との接合領域では、スパウトの溶融物と第1部位の第2層の溶融物とを含む塊状物が、第1部位に溶着した状態で内壁に沿って形成されている。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、開封用部材の突き刺し性に優れたパウチを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】収容対象物が収容された後のパウチの状態を示す斜視図である。
【
図2】
図1のII-II線矢視断面図のうち、スパウト付近を示した要部断面図である。
【
図3】接合部および接合部近傍を撮影することにより得られた断面図である。
【
図5】塊状物のリング幅を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0011】
以下では、スパウト付きパウチについて説明する。本例では、スパウトが上方向に向いた状態で使用されるパウチについて説明する。このため、以下では、説明の便宜上、スパウトが取り付けられるシートを「天面シート」と称する。なお、以下の開示は、スパウトを下方向に向けて使用されるパウチにも適用できる。
【0012】
具体的には、以下では、複数のシートを貼り合わせることにより形成されるパウチを例に挙げて説明する。詳しくは、2枚の胴部シートと、1枚の天面シートとによって形成される上部船型のパウチを例に挙げて説明する。より詳しくは、本例では、3枚のシートのうち天面シートのみがガゼット(マチがある構造)になっているパウチを例に挙げて説明する。
【0013】
ただし、上記に限定されず、パウチは、1枚のシート、2枚のシート、あるいは、4枚以上のシートによって形成されてもよい。また、パウチは、ガゼットを有していなくてもよい。あるいは、パウチは、複数のガゼットを有していてもよい。
【0014】
なお、以下においては、説明の便宜上、天面シートからパウチの底部(胴部シート同士のシール部)に向かう方向を「下方向」とし、その逆を「上方向」とし、一対の胴部シートが積層される方向を容器の「表裏方向」とし、上下方向および表裏方向と直交する方向を容器の「幅方向」とする。
【0015】
図1は、収容対象物が収容された後のパウチ1の状態を示す斜視図である。
図1に示されるように、パウチ1は、3枚のシート材(積層フィルム)から構成される。パウチ1は、シート材として、表面シート11(第2部位、第2積層フィルム)と、裏面シート12(第2部位、第2積層フィルム)と、天面シート14(第1部位、第1積層フィルム、ガセット部)とを備える。表面シート11と、裏面シート12とで、一対の胴部シートを構成する。表面シート11と裏面シート12とは、本例では、それぞれ、パウチ1の表面部および裏面部をそれぞれ構成する。天面シート14は、本例では、パウチ1の上面部を構成する。
【0016】
パウチ1は、シール部として、トップシール部20と、ボトムシール部21と、2つのサイドシール部22とを有する。詳しくは、パウチ1では、互いに重ね合わされた表面シート11と裏面シート12との間に天面シート14を上端側から挿入した状態で、各シート材の端縁同士を接合するシール部が形成されている。
【0017】
パウチ1は、収容対象物が収容される内部空間である収容室(図示せず)を密閉した構造である。収容室は、一対の胴部シート(表面シート11および裏面シート12)と、天面シート14とによって形成される。収容室の上端は、天面シート14が表面シート11の上縁と裏面シート12の上縁とにシールされることで密閉される。
【0018】
詳しくは、ボトムシール部21が形成されていない状態で、底部側から収容対象物40が収容室に収容される。その後、底部側において表面シート11と裏面シート12とを接合することにより、ボトムシール部21が形成される。これにより、収容対象物が収容室に密閉される。
【0019】
収容される収容対象物40としては、特に限定されず、たとえば、シャンプー、リンス、トリートメント、洗剤等の生活用各種ケア製品やスポーツドリンク等の飲料が挙げられる。収容対象物40は、液体に限らず、粘性物や粉状物であってもよい。
【0020】
表面シート11と裏面シート12とは、上下方向に延びた略矩形状である。天面シート14は、略八角形状である。天面シート14は、表面シート11の上端と裏面シート12の上端とに設けられる。なお、天面シート14は、略八角形のものに限定されない。天面シート14は、たとえば、四角形、六角形等の他の多角形形状であってもよいし、あるいは、円形、楕円形、菱形等の形状であってもよい。なお、以下では、表面シート11と裏面シート12とで構成される部分を、「胴部」とも称する。
【0021】
表面シート11と裏面シート12と天面シート14との各々を形成するシート材は、通常、樹脂フィルムから構成される。トップシール部20と、ボトムシール部21と、サイドシール部22との各々は、このようなシート材を重ね合わせて接合することにより形成されている。
【0022】
トップシール部20と、ボトムシール部21と、サイドシール部22とは、たとえば、ヒートシールにより形成される。トップシール部20と、ボトムシール部21と、サイドシール部22とは、各シート材のシーラント層が容器の内側となるように重ね合わせて熱圧着することで形成できる。なお、トップシール部20と、ボトムシール部21と、サイドシール部22とは、ヒートシールに限らず、超音波シール、高周波シール、接着剤による接着等より形成されてもよい。各シート材の詳細については、後述する。
【0023】
トップシール部20は、天面シート14の端縁に略八角形をなす枠状に形成される。トップシール部20は、天面シート14の外周端縁と、表面シート11および裏面シート12の各上端部とが接合されて形成される。ボトムシール部21は、表面シート11と裏面シート12とが接合されて形成される。
【0024】
各サイドシール部22は、表面シート11および裏面シート12の幅方向端縁同士を直接接合して形成される。一方のサイドシール部22は、幅方向両端の一端に形成される。他方のサイドシール部22は、幅方向両端の他端に形成される。各サイドシール部22は、トップシール部20およびボトムシール部21と同様、収容室を密閉するための端縁シール部である。各サイドシール部22は、上下方向に沿って延伸して形成されている。
【0025】
パウチ1には、天面シート14の中央部に、収容対象物を収容および取り出すためのスパウト31が設けられている。スパウト31は、樹脂で一体形成されている。スパウト31は、筒部310と、筒部310を天面シート14に取り付けるためのフランジ部320とを有する。本例では、フランジ部320は円形状である。なお、フランジ部320は、円形状に限らず、四角形状、楕円形状、多角形状等の他の形状であってもよい。筒部310の外周には、ネジ部321が形成されている。パウチ1の流通時には、スパウト31にキャップ(図示せず)が被せられる。キャップは、スパウト31のネジ部321に螺合する。
【0026】
スパウト31は、天面シート14に接合(固定)されている。詳しくは、スパウト31のフランジ部320が、天面シート14の外側面(すなわち収容室とは反対側の面)に溶着により接合している。このような溶着は、たとえば、トップシール部20とボトムシール部21と2つのサイドシール部22とのうちボトムシール部21のみが形成されていない状態において、パウチ1の底部からヒータ装置(図示せず)をパウチ1の内部に挿入し、かつ天面シート14をパウチ1の内側から直接加熱することにより実現できる。
【0027】
より詳しくは、ヒータ装置の発熱部に通電した状態で当該発熱部をパウチ1の内部側から天面シート14の内側面に接触させることにより、天面シート14の外側面(詳しくは、後述するシーラント層451)にスパウト31のフランジ部320を溶着させる。溶着した後は、通電を停止し、かつ発熱部の温度が基準温度よりも下がると、パウチ1をヒータ装置から引き抜く。このような処理により、スパウト31が天面シート14に接合される。
【0028】
なお、ヒータ装置として、パルスヒータを用いることが好ましい。パルスヒータは、加熱と冷却とが一貫して行われるため、パウチ1を発熱部から他のヒータよりも早く離間させることができるためである。さらに、内面側のシーラント層454のダメージ(具体的には、ヒータ装置をパウチ1の内面から離す際のシーラント層454の糸引き、破れ等といった不具合)を軽減できるためである。
【0029】
図2は、
図1のII-II線矢視断面図のうち、スパウト31付近を示した要部断面図である。
図2に示されるように、筒部310は、パウチ1に収容された収容物(収容対象物)が通過する貫通孔39を構成する内壁31sを有する。本例では、貫通孔39は、円柱状である。
【0030】
なお、パウチ1の使用開始の際に、尖った先端部701を有する開封用部材700を矢印900の方向に移動させることにより、開封用部材700を貫通孔39に挿入する。これにより、パウチ1の上面視において、天面シート14のうちスパウト31の内壁31sに囲まれた穿孔対象領域T内に開口が形成される。開封用部材700は、たとえば、ポンプ等のアダプタのチューブ(吸入管等)に該当する。
【0031】
天面シート14は、パウチの外側面411と、パウチの内側面412とを有する。詳しくは、本例では、領域P内に示すように、天面シート14は、外側面411側から内側面412側に向けて(パウチ1の外側から内側に向けて)、シーラント層451(第2層)と、ナイロン層452と、アルミ層453と、シーラント層454(第1層)とを備える。このように、天面シート14は、パウチの外側面となる外側面411を形成する層と、パウチの内側面となる内側面412を形成する層との各々がシーラント層451,454で構成されている。詳しくは、本例では、シーラント層451,454は、シーラントフィルムで構成されている。
【0032】
シーラント層451と、ナイロン層452と、アルミ層453と、シーラント層454との厚みは、たとえば、それぞれ、約30μm、約15μm、約7μm、約30μmとすることができる。
【0033】
天面シート14では、アルミ層453はナイロン層452よりもシーラント層454側に設けられている。アルミ層453をナイロン層452よりもシーラント層454側に設けることにより、ナイロン層452をアルミ層453よりもシーラント層454側に設ける構成よりも、スパウト31が天面シート14から剥がれにくくなる。
【0034】
シーラント層454の融点は、シーラント層451の融点およびスパウト31の融点よりも低い。シーラント層451の融点とスパウト31の融点との差は、10℃程度であればよく、5℃以下であることが好ましい。両者の融点の差がこのような値である理由は、スパウト31のフランジ部320を天面シート14に溶着させるためである。詳しくは、スパウト31のフランジ部320の表面をシーラント層451と同時に溶かす必要があるためである。融点の差が小さくなるほど、スパウト31が天面シート14に溶着しやすくなる。
【0035】
内側のシーラント層454の融点が外側のシーラント層451の融点よりも低い理由は、以下のとおりである。スパウト31をガゼットとして機能する天面シート14に取り付ける前に、天面シート14と、表面シート11と、裏面シート12とをヒートシールする必要がある。その際、天面シート14は、外側面が谷折りとなった状態で、表面シート11および裏面シート12と溶着する。それゆえ、内側のシーラント層454の融点を低くしておかないと、天面シート14のシーラント層451同士が互いに引っ付いてしまう。すなわち、ガゼット表面が谷折り状態で引っ付いてしまう。そのため、内側のシーラント層454の融点が外側のシーラント層451の融点よりも低くなるように、天面シート14が構成されている。
【0036】
表面シート11と裏面シート12とは、パウチ1の外側から内側に向けて、図示しない、ナイロン層(第2層)と、アルミ層と、シーラント層(第1層)とを備える。表面シート11と裏面シート12とは、パウチ1の内部表面側のみがシーラント層となっている。パウチ1の外部表面側にシーラント層が不要である理由は、表面シート11と裏面シート12とにはスパウト31が取り付けられないためである。
【0037】
表面シート11と裏面シート12では、ナイロン層と、アルミ層と、シーラント層との厚みは、たとえば、それぞれ、約15μm、約7μm、約50μmとすることができる。本例では、表面シート11と裏面シート12とにおけるシーラント層の厚みは、天面シート14のシーラント層454の厚みよりも厚い。ただし、これに限らず、表面シート11と裏面シート12とにおけるシーラント層の厚みは、天面シート14のシーラント層454の厚みよりも薄くてもよいし、あるいは、同じであってもよい。
【0038】
次に、スパウト31のフランジ部320と天面シート14との接合状態について説明する。具体的には、
図2の領域Q(接合部および接合部近傍)の状態を例に挙げて、接合状態について説明する。
【0039】
図3は、領域Qを撮影することにより得られた断面図である。
図4は、スパウト31を上面から視た図である。
図3および
図4に示されるように、スパウト31と天面シート14との接合領域では、スパウト31(詳しくは、フランジ部320)の溶融物と天面シート14のシーラント層451(外側面411側の層、
図2参照)の溶融物とを含む塊状物500が、天面シート14に溶着した状態でスパウト31の内壁31sに沿って形成されている。このような塊状物500は、「ポリ溜まり」とも称される。スパウト31の筒部310に形成された貫通孔39の開口端の形状が円形であるため、本例では、塊状物500は、リング状をしている。
【0040】
図5は、塊状物500のリング幅を説明するための図である。
図5に示されるように、スパウト31の上面視において、スパウト31の貫通孔39の内径Dsから塊状物500の内径Dpを差し引いた値を内径Dsで除することにより得られた値(以下、「比率R」と称する)が、0よりも大きく、かつ0.3未満である。なお、内径Dsと内径Dpとは、スパウト31の上面視において貫通孔39の中心点Oを通る直径である。
【0041】
比率Rが0.3以上となると、開封用部材700先端部701(
図2)が天面シート14ではなく塊状物500に突き刺さる虞がある。それゆえ、本例では、突き刺し性を考慮して、比率Rが0.3未満となるように、スパウト31を天面シート14に接合している。
【0042】
突き刺しやすさを考慮して、比率R(=(Ds-Dp)/Ds)が、0.005よりも大きく、かつ0.2未満であることが好ましい。比率Rが、0.01よりも大きく、かつ0.1未満であることがより好ましい。
【0043】
以上のように、パウチ1は、3枚のシート11,12,14(3枚の積層フィルム)で構成されている。各シート11,12,14は、少なくとも、パウチ1の内部表面側の第1層と、パウチ1の外部表面側の第2層とを有する。パウチ1は、第1層と第2層とが、それぞれ、シーラント層454,451である天面シート14(第1部位)を備える。パウチ1は、パウチ1に収容された収容物が通過する貫通孔39を構成する内壁31sを有し、かつ、天面シート14のシーラント層451と熱溶着することにより天面シート14に接合されたスパウト31をさらに備える。スパウト31と天面シート14との接合領域では、スパウト31の溶融物と天面シート14のシーラント層451の溶融物とを含む塊状物500が、天面シート14に溶着した状態で内壁31sに沿って形成されている。
【0044】
このような構成によれば、塊状物500が天面シート14に溶着した状態で内壁31sに沿って形成されているため、塊状物500が天面シート14に溶着した状態で内壁31sに沿って形成されていない構成よりも、開封用部材700を突き刺す領域の面積を小さくできる。
【0045】
それゆえ、開封用部材700を突き刺す領域の撓み量を、塊状物500が形成されていない構成よりも、小さくすることができる。すなわち、開封用部材700を突き刺す領域を、塊状物500が形成されていない構成よりも、ピンと張った状態とすることができる。
【0046】
したがって、パウチ1によれば、開封用部材700をスパウトの開口に挿入してパウチのシートに突き刺す際に、塊状物500が形成されていない構成よりも、突き刺しやすくなる。さらに、塊状物500により、塊状物500が形成されていない構成に比べて、スパウト31の天面シート14への取り付け強度を増すことができる。
【0047】
<変形例>
(第1の変形例)
上記においては、
図2に示したように、天面シート14として、パウチ1の外側から内側に向けて、シーラント層451と、ナイロン層452と、アルミ層453と、シーラント層454とを備える構成を例に挙げて説明した。しかしながら、これに限定されるものではない。天面シート14は、ナイロン層452とアルミ層453との間に、アルミ蒸着を施したポリエチレンテレフタレート層をさらに有していてもよい。このような構成によれば、パウチ1の屈曲によるバリア性の低下を抑制することが可能となる。
【0048】
より詳しくは、上記ポリエチレンテレフタレート層の両面のうち、アルミを蒸着させた面がナイロン層452に接するように天面シート14を構成してもよいし、アルミを蒸着させた面がアルミ層453に接するように天面シート14を構成してもよい。本例では、天面シート14がアルミ層453を有するため、アルミを蒸着させた面を、ナイロン層452側とアルミ層453との何れに接触させてもよい。
【0049】
(第2の変形例)
図6は、パウチ1の変形例を示した図である。
図6に示されるように、パウチ1Aは、天面シート14の代わりに天面シート14Aを備える点において、パウチ1とは異なる。
【0050】
天面シート14は、厚みが略均一で、約90μmであった。天面シート14Aは、一部の部位142の厚みW2が、部位142の周囲の部位141の厚みW1よりも薄くなっている。部位141の厚みW1は、天面シート14の厚みと同じである。
【0051】
部位142の少なくとも一部は、スパウト31の上面視において貫通孔39の内側に位置している。部位142の一部は、塊状物500の外周側でフランジ部320と溶着していてもよい。部位142は、典型的には、パウチ1の上面視において円形である。
【0052】
部位141は、スパウト31の上面視において、部位142の外周側でフランジ部320と溶着している。本例では、部位141とフランジ部320とは、リング状に溶着している。
【0053】
上記に限定されず、天面シート14のうちスパウト31の上面視において貫通孔39の内側に位置する部分の膜厚が、天面シート14のうちスパウト31の上面視においてフランジ部320の外側に位置する部分の膜厚よりも薄ければよい。
【0054】
このような構成によれば、開封用部材700を突き刺す箇所の天面シート14の厚みがパウチ1よりも薄くなるため、パウチ1に比べて天面シートに開封用部材700を突き刺しやすくなる。すなわち、パウチ1Aによれば、パウチ1よりも小さな力で天面シートに開口を開けることが可能となる。
【0055】
以上のように、本変形例では、貫通孔39の内側に位置する部分の膜厚をフランジ部320の外側に位置する部分の膜厚よりも薄くすることにより、貫通孔39の内側に位置する部分をフランジ部320の外側に位置する部分よりも脆弱としている。すなわち、貫通孔39の内側に位置する部分をフランジ部320の外側に位置する部分よりも脆弱な脆弱部としている。
【0056】
(第3の変形例)
天面シート14のナイロン層452として、ポロソ加工が施されたフィルムを用いてもよい。ナイロン層452として、エンボス加工が施されたフィルムを用いてもよい。ナイロン層452に対してレーザを照射することにより、ナイロン層452対してハーフカットを行ってもよい。このようなフィルムを用いることにより、突き刺し性をさらに向上させることができる。
【0057】
フィルムに対して、ポロソ加工、エンボス加工、または、レーザ照射による加工を局所的に行い、当該加工が行われた箇所が貫通孔39の内側に位置する部分になるように、パウチ1を形成してもよい。このような構成によれば、貫通孔39の内側に位置する部分をフランジ部320の外側に位置する部分よりも脆弱にすることができる。すなわち、当該構成によっても、貫通孔39の内側に位置する部分をフランジ部320の外側に位置する部分よりも脆弱な脆弱部とすることができる。
【0058】
(第4の変形例)
天面シート14,14Aは、少なくともスパウト31が溶着される領域に、シーラント層451を有していればよい。天面シート14,14Aの外側面411(
図2)の全体にわたってシーラント層451が設けられている必要はない。
【0059】
<付記>
〔項目1〕
少なくとも1枚の積層フィルムで構成されたパウチであって、
前記積層フィルムは、少なくとも、前記パウチの内部表面側の第1層と、前記パウチの外部表面側の第2層とを有し、
前記パウチは、
前記第1層と前記第2層とがシーラント層である第1部位と、
前記パウチに収容された収容物が通過する貫通孔を構成する内壁を有し、かつ、前記第1部位の前記第2層と熱溶着することにより前記第1部位に接合されたスパウトとを備え、
前記スパウトと前記第1部位との接合領域では、前記スパウトの溶融物と前記第1部位の前記第2層の溶融物とを含む塊状物が、前記第1部位に溶着した状態で前記内壁に沿って形成されている、パウチ。
【0060】
〔項目2〕
前記第1層および前記第2層のうち前記第1層のみがシーラント層である第2部位をさらに備え、
前記第1部位は、前記積層フィルムとしての第1積層フィルムで構成された、前記パウチのガセット部を構成し、
前記第2部位は、前記積層フィルムとしての第2積層フィルムで構成された、前記パウチの胴部を構成する、項目1に記載のパウチ。
【0061】
〔項目3〕
前記第1部位の前記第1層の融点は、前記第1部位の前記第2層の融点および前記スパウトの融点よりも低い、項目1または2に記載のパウチ。
【0062】
〔項目4〕
前記スパウトは、前記貫通孔が形成された筒部と、前記筒部を第1部位に取り付けるためのフランジ部とを有し、
前記第1部位のうち前記スパウトの上面視において前記貫通孔の内側に位置する部分は、前記第1部位のうち前記スパウトの上面視において前記フランジ部の外側に位置する部分よりも脆弱である、項目1から3のいずれか1項に記載のパウチ。
【0063】
〔項目5〕
前記第1積層フィルムは、ナイロン層とアルミ層とをさらに有し、前記アルミ層は前記ナイロン層よりも前記第1層側に設けられている、項目2に記載のパウチ。
【0064】
〔項目6〕
前記第1積層フィルムは、前記ナイロン層と前記アルミ層との間に、アルミ蒸着を施したポリエチレンテレフタレート層をさらに有する、項目5に記載のパウチ。
【0065】
今回開示された実施の形態は例示であって、上記内容のみに制限されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
1,1A パウチ、11 表面シート、12 裏面シート、14,14A 天面シート、20 トップシール部、21 ボトムシール部、22 サイドシール部、31 スパウト、31s 内壁、39 貫通孔、40 収容対象物、141,142 部位、310 筒部、320 フランジ部、321 ネジ部、411 外側面、412 内側面、451,454 シーラント層、452 ナイロン層、453 アルミ層、500 塊状物、700 開封用部材、701 先端部。