(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152234
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】電子部品の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 13/00 20130101AFI20241018BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01G13/00 351Z
H01G4/30 311E
H01G4/30 517
H01G13/00 351A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066298
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】青山 寛之
(72)【発明者】
【氏名】日吉 優璃
(72)【発明者】
【氏名】田中 淳也
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AH01
5E001AJ03
5E082AA01
5E082AB03
5E082GG10
5E082GG28
5E082LL01
5E082LL02
5E082MM12
5E082MM13
5E082MM17
(57)【要約】
【課題】部品をペーストに浸漬させた際に、部品に付着したペースト中にポアができにくい電子部品の製造装置を提供する。
【解決手段】製造装置1は、弾性変形可能な樹脂で内面が被覆された貫通孔15を有し、貫通孔15に部品が挿入される保持具3と、部品に接触する先端面を有するピン4と、ピン4の先端面が部品に接触するようにピン4を移動させて、ピン4によって貫通孔15から部品を押し出して突出させるピン駆動手段6と、部品に付着させるペースト18が貯留される容器7と、容器7内のペースト18の液面に対して、保持具3の貫通孔15に挿入された部品が近づく方向又は離れる方向に、保持具3と容器7とのうち、一方又は双方を移動させることができる駆動手段8と、を備える。ピン4の先端面は、ピン4の軸方向に対して傾斜した傾斜面である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形可能な樹脂で内面が被覆された貫通孔を有し、前記貫通孔に部品が挿入される保持具と、
前記部品に接触する先端面を有するピンと、
前記ピンの前記先端面が前記部品に接触するように前記ピンを移動させて、前記ピンによって前記貫通孔から前記部品を押し出して突出させるピン駆動手段と、
前記部品に付着させるペーストが貯留される容器と、
前記容器内のペーストの液面に対して、前記保持具の前記貫通孔に挿入された前記部品が近づく方向又は離れる方向に、前記保持具と前記容器とのうち、一方又は双方を移動させることができる駆動手段と、を備え、
前記ピンの前記先端面は、前記ピンの軸方向に対して傾斜した傾斜面である、電子部品の製造装置。
【請求項2】
前記ピンは、前記ピンの軸線まわりに回転可能である、請求項1に記載の電子部品の製造装置。
【請求項3】
複数の前記ピンが立設された状態で保持されるピン保持部を備え、
前記保持具は、複数の前記部品それぞれが挿入される複数の前記貫通孔を有しており、
前記ピン保持部は、前記先端面の向く方向が異なる複数の前記ピンを有している、請求項2に記載の電子部品の製造装置。
【請求項4】
前記軸方向に対して垂直な面と、前記ピンの前記先端面とがなす角度は、0.3°~10°である、請求項1から3のいずれかに記載の電子部品の製造装置。
【請求項5】
弾性変形可能な樹脂で内面が被覆された貫通孔を有する保持具の前記貫通孔に部品を挿入するとともに、ピンによって前記貫通孔から前記部品を突出させる挿入工程と、
容器に貯留されたペーストに、前記貫通孔から突出した状態で前記貫通孔に挿入された前記部品のうち、前記貫通孔から突出した部分を浸漬する浸漬工程と、を含み、
前記ピンは、前記部品に接触する先端面を有し、前記先端面が前記ピンの軸方向に対して傾斜した傾斜面である、電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記保持具は、複数の前記部品それぞれが挿入される複数の前記貫通孔を有しており、
前記ピンは、複数であり、
複数の前記ピンは、ピン保持部に立設された状態で保持されており、
前記ピン保持部は、前記先端面の向く方向が異なる複数の前記ピンを有している、請求項5に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層セラミックコンデンサなどの電子部品を製造する際には、外部電極が形成されていない部品をペーストに浸漬させる工程がある。例えば、下記特許文献1には、ディップ器上に保持された導電性ペースト層に、弾性保持部に保持された誘電体素体が浸漬される第1のディップ工程を含む製造方法が開示されている。第1のディップ工程では、誘電体素体が保持された弾性保持部を下降させることで、誘電体素体をディップ器上の導電性ペースト層に浸漬させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の製造方法の場合、外部電極が形成されていない部品を下降させることでペーストに浸漬させているので、浸漬時において、液体状のペーストに気泡が入るおそれがある。部品に付着したペーストに気泡があると、ペーストが付着した部品を焼成した際に、気泡により外部電極中に微小な空隙であるポアが形成される場合がある。外部電極中にポアが形成されると、電子部品の信頼性に悪影響を与えたり、半田実装時にフローやリフローの熱によりポアが破裂し、半田が周囲にまき散らされたりすることがある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、部品をペーストに浸漬させた際に、部品に付着したペースト中にポアができにくい電子部品の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子部品の製造装置は、弾性変形可能な樹脂で内面が被覆された貫通孔を有し、前記貫通孔に部品が挿入される保持具と、前記部品に接触する先端面を有するピンと、前記ピンの前記先端面が前記部品に接触するように前記ピンを移動させて、前記ピンによって前記貫通孔から前記部品を押し出して突出させるピン駆動手段と、前記部品に付着させるペーストが貯留される容器と、前記容器内のペーストの液面に対して、前記保持具の前記貫通孔に挿入された前記部品が近づく方向又は離れる方向に、前記保持具と前記容器とのうち、一方又は双方を移動させることができる駆動手段と、を備え、前記ピンの前記先端面は、前記ピンの軸方向に対して傾斜した傾斜面である。
【0007】
本発明の電子部品の製造方法は、弾性変形可能な樹脂で内面が被覆された貫通孔を有する保持具の前記貫通孔に部品を挿入するとともに、ピンによって前記貫通孔から前記部品を突出させる挿入工程と、容器に貯留されたペーストに、前記貫通孔から突出した状態で前記貫通孔に挿入された前記部品のうち、前記貫通孔から突出した部分を浸漬する浸漬工程と、を含み、前記ピンは、前記部品に接触する先端面を有し、前記先端面が前記ピンの軸方向に対して傾斜した傾斜面である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、部品をペーストに浸漬させた際に、部品に付着したペースト中にポアができにくい電子部品の製造装置及び製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の使用状態を示す一部拡大縦断面図であり、振込具に部品が保持された状態を示している。
【
図3】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の使用状態を示す一部拡大縦断面図であり、保持具に部品が挿入された状態を示している。
【
図4】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の使用状態を示す一部拡大縦断面図であり、部品をペーストに浸漬する状態を示している。
【
図5】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の使用状態を示す一部拡大縦断面図であり、部品にペーストを付着させた状態を示している。
【
図6】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の使用状態を示す一部拡大縦断面図であり、部品を保持部から別の保持部に移し替える状態を示している。
【
図7】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の使用状態を示す一部拡大縦断面図であり、別の保持部に部品が保持された状態を示している。
【
図8】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の使用状態を示す一部拡大縦断面図であり、別の保持部に保持された部品をペーストに浸漬する状態を示している。
【
図9】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の使用状態を示す一部拡大縦断面図であり、別の保持部に保持された部品にペーストを付着させた状態を示している。
【
図10】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の他の使用状態を示す一部拡大縦断面図であり、振込具に部品が保持された状態を示している。
【
図11】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造方法の典型例を示すフローチャートである。
【
図14】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の別の使用状態を示す一部拡大縦断面図であり、
図5の状態から保持部を回転させた状態を示している。
【
図15】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の別の使用状態を示す一部拡大縦断面図であり、
図14の状態から部品を突出させた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の概略構成を示す斜視図である。
図2から
図9は、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の使用状態を時系列に示す一部拡大縦断面図である。本実施形態の電子部品の製造装置1によって製造される電子部品は、例えば、積層セラミックコンデンサである。本実施形態の電子部品の製造装置1は、振込具2、保持具3、ピン4、ピン保持部5、ピン駆動手段6、容器7、及び駆動手段8を備える。以下、これらについて、順に説明する。
【0012】
振込具2は、上面視略矩形の板状で、板面を上下に向けた状態で位置している。振込具2は、厚み方向に貫通する貫通孔9を有している。貫通孔9は、段付き孔であり、上部に位置する大径孔10と、下部に位置する小径孔11とを有している。典型的には、大径孔10及び小径孔11は、上面視円形状である。本実施形態では、振込具2は、複数の貫通孔9を有している。図示例では、振込具2は、複数の貫通孔9が長手方向に沿って配列された一群を複数有している。すなわち、複数の貫通孔9は、格子状に配置されている。
【0013】
振込具2の大径孔10には、部品12が収容される。大径孔10に部品12を収容するには、振込具2の上面に複数の部品12が載置された状態において、振込具2を振動させたり、振込具2を傾けたりすればよい。大径孔10に収容される部品12は、製造される電子部品が積層セラミックコンデンサの場合、外部電極が形成されていない状態の電子部品である。部品12は、直方体状である。大径孔10の開口部の直径は、部品12の長さ方向の寸法よりも小さい。そのため、部品12が大径孔10に収容された状態において、部品12の長手方向は、大径孔10の軸方向に沿っている。また、大径孔10の深さは、部品12の長さ方向の寸法よりも大きいことが好ましい。
【0014】
なお、図示例では、大径孔10は、上面視円形状とされたが、これに限定されるものではなく、例えば、上面視略矩形状であってもよい。図示しないが、大径孔10の上端部の内周面は、上方に行くに従って拡径するテーパ状であってもよい。これにより、部品12は、大径孔10に収容し易い。本実施形態では、振込具2を動かすことで、大径孔10に部品12が収容されたが、小径孔11から真空吸引することで、大径孔10に部品12を収容してもよい。
【0015】
保持具3は、板状の基体13と、基体13を覆う樹脂14とを有している。基体13は、上面視略矩形の金属製の板状で、板面を上下に向けた状態で位置している。基体13は、金属製に限定されない。基体13は、厚み方向に貫通する貫通孔15を有している。典型的には、貫通孔15は、上面視略矩形状である。本実施形態では、基体13は、複数の貫通孔15を有している。図示例では、基体13は、複数の貫通孔15が長手方向に沿って配列された一群を複数有している。すなわち、複数の貫通孔15は、格子状に配置されている。樹脂14は、基体13の外面及び貫通孔15の内面を被覆するように、基体13に設けられる。なお、樹脂14は、貫通孔15の内面のみを被覆してもよい。樹脂14は、弾性変形可能である。樹脂14は、例えばシリコーン樹脂である。このように保持具3は、弾性変形可能な樹脂14で内面が被覆された貫通孔15を有している。貫通孔15には、振込具2から部品12が挿入される。なお、本実施形態では、基体13が複数の貫通孔15を有しているので、保持具3は、複数の部品12それぞれが挿入される複数の貫通孔15を有している。
【0016】
ピン4は、保持具3の貫通孔15から部品12を押し出して突出させる。典型的には、ピン4は、棒状である。ピン4は、横断面が円形の丸棒状である。ピン4は、保持具3の貫通孔15から部品12を突出させる際に部品12に接触する先端面16を有している。ピン4の先端面16は、ピン4の軸方向の一端側に位置している。ピン4の先端面16は、ピン4の軸方向に対して傾斜した傾斜面である。
図2に示すように、ピン4の延びる方向である軸方向に対して垂直な面17と、ピン4の先端面16とがなす角度αは、0.3°~10°である。なお、角度αは、0.3°~10°に限定されない。
【0017】
本実施形態では、製造装置1は、複数のピン4を備える。複数のピン4は、軸方向が上下方向に沿うように立設された状態で、ピン保持部5に保持される。各ピン4は、軸方向の他端側がピン保持部5に保持される。図示例では、ピン保持部5には、複数のピン4がピン保持部5の長手方向に沿って配列された一群が複数設けられている。すなわち、複数のピン4は、ピン保持部5に格子状に配置されている。
【0018】
各ピン4は、ピン保持部5に保持された状態で、ピン4の軸線まわりに能動的な力を加えることなく回転可能である、いわゆるフリーな状態が好ましい。ピン4は、間接的に力が加えられると、回転することができる。各ピン4は、独立して回転することができる。この場合、ピン保持部5は、ピン4が回転することで、ピン4の先端面16の向く方向が異なる複数のピン4を有することになる。例えば、
図10に示すように、ピン保持部5において、隣り合うピン4同士の先端面16の向く方向が異なっている。ピン4は設備の微細な振動により、回転させることで、ピン保持部5に保持された複数のピン4の先端面16の向く方向をランダムに異ならせることができる。なお、ピン4に能動的に力を加えて回転させてもよい。すなわち、ピン4に直接に力を加えることで、ピン4を回転させることができる。
【0019】
ピン駆動手段6は、振込具2に保持された部品12に対して、ピン4が近づく方向又は離れる方向に、ピン4を移動させる手段である。典型的には、ピン駆動手段6は、モータである。本実施形態では、複数のピン4がピン保持部5に保持されているので、ピン駆動手段6は、ピン保持部5に接続されている。これにより、ピン駆動手段6は、ピン保持部5を移動させることで、ピン4を振込具2に保持された部品12に近づく方向に移動させて、ピン4を部品12に押し当てたり、ピン4を振込具2に保持された部品12から離れる方向に移動させたりできる。従って、ピン駆動手段6は、振込具2に保持された部品12に対して、ピン4により部品12を保持具3に移し替えるように、ピン4を移動させることができる。
【0020】
本実施形態では、製造装置1によって製造される電子部品は、積層セラミックコンデンサである。電子部品が積層セラミックコンデンサの場合、電子部品は、外部電極及び内部電極を有する。外部電極は、下地電極層と、下地電極層を覆う導電性樹脂層と、導電性樹脂層を覆うめっき層とを有する3層構造である。外部電極は、部品12の長手方向両端部に設けられる。内部電極は、部品12の内部に位置している。なお、積層セラミックコンデンサである電子部品の詳細については、後述する。
【0021】
容器7は、部品12に付着させるペースト18が貯留される。図示例では、容器7は、上方に開口した上面視略矩形の箱状である。そのため、容器7内に貯留されたペースト18の液面は、外部に露出している。容器7内に貯留されたペースト18は、任意の粘性を有している。容器7内に貯留されたペースト18は、例えば、外部電極の下地電極層を形成する。この場合、ペースト18は、ガラスと導電性金属とを含む導電性ペーストである。導電性ペースト中のガラスは、例えばSiを含む。導電性ペースト中の導電性金属は、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag-Pd合金、Au等から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0022】
このように、外部電極の下地電極層は、容器7内に貯留されたペースト18によって形成される。外部電極の導電性樹脂層は、導電性粒子と熱硬化性樹脂とを含んでもよい。外部電極のめっき層は、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag-Pd合金、Au等から選ばれる少なくとも1つの金属からなる。下地電極層及び導電性樹脂層は、複数層で構成されてもよい。めっき層は、複数層で構成されてもよい。好ましくは、めっき層は、Niめっき層と、Snめっき層とを有する2層構造である。Niめっき層は、電子部品を実装する際の半田によって下地電極層が侵食されるのを防止できる。Snめっき層は、電子部品を実装する際の半田の濡れ性を向上させ、電子部品を容易に実装することができる。
【0023】
このような構成の外部電極は、内部電極を焼成後に、部品12とともに焼成される。なお、外部電極が部品12に形成された後、部品12及び外部電極は、内部電極と同時に焼成されてもよい。
【0024】
駆動手段8は、容器7内のペースト18の液面に対して、保持具3の貫通孔15に挿入された部品12が近づく方向又は離れる方向に、保持具3を移動させる手段である。そのため、駆動手段8は、保持具3に接続されている。駆動手段8は、容器7内のペースト18の液面に対して、保持具3の貫通孔15に挿入された部品12が近づく方向又は離れる方向に、容器7を移動させる手段であってもよい。この場合、駆動手段8は、容器7に接続されている。駆動手段8は、容器7内のペースト18の液面に対して、保持具3の貫通孔15に挿入された部品12が近づく方向又は離れる方向に、保持具3及び容器7の双方を移動させる手段であってもよい。この場合、保持具3及び容器7それぞれに駆動手段8が接続されていてもよいし、保持具3及び容器7に共通の駆動手段8が接続されていてもよい。従って、駆動手段8は、部品12をペースト18の液面に近づく方向に移動させて、部品12をペースト18に浸漬させたり、部品12をペースト18の液面から離れる方向に移動させたりできる。なお、駆動手段8は、例えばサーボモータやステッピングモータなどである。
【0025】
次に、本実施形態に係る電子部品の製造方法について説明する。
図2から
図9は、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造方法を時系列に示す図である。
図11は、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造方法の典型例を示すフローチャートである。本実施形態の製造方法は、例えば、積層セラミックコンデンサである電子部品を製造する際に用いられる。
図12及び
図13は、電子部品である積層セラミックコンデンサを示す図であり、
図12は概略斜視図、
図13は
図12のA-A断面図である。積層セラミックコンデンサ19のセラミック積層体20の内部には、隣接する内部電極21及び内部電極22の一部同士がセラミック層を介して対向するように、内部電極21及び内部電極22が配置される。セラミック積層体20の一方の端面には、内部電極21に接続される外部電極23が形成される。セラミック積層体20の他方の端面には、内部電極22に接続される外部電極24が形成される。
【0026】
このような構成の積層セラミックコンデンサ19の外部電極を形成する際に、本実施形態の製造方法が用いられる。本実施形態の製造方法では、上述した製造装置1が用いられる。なお、積層セラミックコンデンサ19のセラミック積層体20は、従来公知の方法により形成される。
【0027】
セラミック積層体20は、誘電体材料により構成される層を有する。誘電体材料は、BaTiO3、CaTiO3、SrTiO3、又はCaZrO3などの成分を含む誘電体セラミックが用いられる。誘電体材料は、これらの主成分にMn化合物、Fe化合物、Cr化合物、Co化合物、Ni化合物などの副成分を添加したものであってもよい。副成分は、主成分よりも含有量が少ない。セラミック積層体20の内部には、内部電極が設けられる。内部電極は、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag-Pd合金、Au等の金属を含有している。内部電極は、誘電体材料により構成される層に含まれるセラミックスと同一組成系の誘電体粒子を含んでいてもよい。
【0028】
図11に示すように、本実施形態の製造方法では、振込工程S1、挿入工程S2、浸漬工程S3、第1乾燥工程S4、移し替え工程S5、逆側浸漬工程S6、及び第2乾燥工程S7が順次に実行される。なお、振込工程S1の前には、部品12が形成される。部品12は、外部電極が形成される前の状態であるので、従来公知の方法により形成される。部品12は、セラミック積層体20である。部品12は、直方体状である。部品12の長さ方向の寸法は、1.6mm~3.2mmであり、部品12の幅方向の寸法は、0.8mm~2.5mmであり、部品12の厚み方向の寸法は、0.8mm~2.5mmである。なお、部品12の大きさは、これに限定されない。部品12は、焼成後の状態であってもよいし、焼成前の状態であってもよい。
【0029】
振込工程S1は、振込具2の内部に部品12を収容する工程である。具体的には、振込工程S1は、振込具2の大径孔10に部品12を収容する工程である。振込工程S1では、振込具2の上面に複数の部品12が載置された状態において、振込具2を振動させたり、振込具2を傾けたりすることで、振込具2の大径孔10に部品12が収容される。この場合、振込具2には、振込具2を振動させる手段、振込具2を傾ける手段が接続されている。振込工程S1では、振込具2の小径孔11から真空吸引することで、大径孔10に部品12を収容してもよい。この場合、振込具2には、真空ポンプなどの真空吸引手段が接続されている。
【0030】
挿入工程S2は、振込工程S1によって大径孔10に収容された部品12を保持具3の貫通孔15に挿入するとともに、貫通孔15から部品12を突出させる工程である。挿入工程S2では、
図2に示すように、振込具2の上に保持具3が重ね合わされる。保持具3を振込具2に重ね合わせるには、駆動手段8によって保持具3を振込具2まで移動させればよい。振込具2に保持具3が重ね合わされた状態では、保持具3の貫通孔15と振込具2の大径孔10とは、上下方向に重なっている。
【0031】
振込具2に保持具3が重ね合わされた状態で、
図2に示すように、ピン4は、小径孔11を介して上方に移動される。ピン4の移動は、ピン駆動手段6によってピン保持部5を移動させることでなされる。これにより、ピン4の先端面16が部品12に接触した状態で、ピン4が上方に移動されるので、大径孔10に収容された部品12は、保持具3の貫通孔15に押し出され、挿入される。
図3に示すように、部品12が貫通孔15に挿入された後、さらにピン4を上方に移動させることで、貫通孔15の上部開口から部品12を突出させることができる。これにより、部品12の長手方向の一端部は、貫通孔15から突出した状態となる。このように、ピン駆動手段6は、ピン4の先端面16が部品12に接触するようにピン4を移動させて、ピン4によって貫通孔15から部品12を押し出して突出させることができる。挿入工程S2では、例えば、部品12の貫通孔15への挿入及び部品12の貫通孔15からの突出は、ピン4を連続して移動させることでなされる。
【0032】
前述したように、本実施形態の製造方法では、製造装置1が用いられている。従って、挿入工程S2では、弾性変形可能な樹脂14で内面が被覆された貫通孔15を有する保持具3の貫通孔15にピン4によって部品12を挿入するとともに、ピン4によって貫通孔15から部品12を突出させる。貫通孔15の内面が弾性変形可能な樹脂14で被覆されているので、先端面16が傾斜面であるピン4によって部品12を押し上げると、貫通孔15から突出した部品12は、貫通孔15の軸方向に対して傾斜した状態となる。
【0033】
本実施形態の製造方法では、製造装置1が用いられている。従って、保持具3は、複数の部品12それぞれが挿入される複数の貫通孔15を有している。複数のピン4は、ピン保持部5に立設された状態で保持されている。この場合、
図10に示すように、ピン保持部5は、ピン4を回転させることで、先端面16の向く方向が異なる複数のピン4を有している。このようにしてピン保持部5に設けられたピン4によって部品12を押し上げると、貫通孔15から突出した部品12はそれぞれ、貫通孔15の軸方向に対して傾斜した状態において、傾斜方向が異なる。このような構成であるので、保持具3を使用するたびに、ピン4を回転させることで、各貫通孔15に挿入された部品12の傾斜方向を変更できる。従って、樹脂14のうち、傾いた部品12が接触する部分を変更することができるので、樹脂14の片摩耗を抑制することができる。
【0034】
浸漬工程S3は、部品12にペースト18を付着させる工程である。具体的には、浸漬工程S3は、容器7に貯留されたペースト18に、貫通孔15から突出した状態で貫通孔15に挿入された部品12のうち、貫通孔15から突出した部分を浸漬する工程である。浸漬工程S3では、保持具3は、駆動手段8によって容器7の上方に移動される。そして、
図4に示すように、保持具3は、上下が逆になるように回転される。これにより、保持具3の貫通孔15に挿入された部品12は、貫通孔15から下方に突出した状態とされる。この状態から、駆動手段8は、容器7内のペースト18の液面に対して部品12が浸漬するように、保持具3を下方に移動させる。これにより、部品12の長手方向の一端部は、容器7内のペースト18に浸漬される。部品12のペースト18への浸漬は、複数回行ってもよい。
【0035】
浸漬工程S3では、保持具3を上下が逆になるように回転させた後、保持具3を容器7の上方に移動させてもよい。浸漬工程S3では、容器7に駆動手段8が接続されている場合、容器7を保持具3の下方に移動させてもよい。この場合、保持具3を上下が逆になるように回転させた後、駆動手段8は、容器7内のペースト18の液面に対して部品12が浸漬するように、容器7を上方に移動させる。これにより、部品12の長手方向の一端側は、容器7内のペースト18に浸漬される。浸漬工程S3では、保持具3及び容器7の双方が駆動手段8に接続されている場合、保持具3及び容器7の双方を移動させることで、部品12を容器7内のペースト18に浸漬させてもよい。浸漬工程S3では、保持具3を容器7の上方に配置した後、ピン4によって貫通孔15から部品12を突出させてもよい。
【0036】
挿入工程S2において、振込具2から保持具3の貫通孔15に部品12を挿入する際、ピン4による部品12の押し込み量を少なくすることで、部品12を貫通孔15から下方に突出させてもよい。この場合、浸漬工程S3において、保持具3を上下が逆になるように回転させる必要がない。
【0037】
図5に示すように、保持具3は、部品12を容器7内のペースト18に浸漬させた後、容器7内のペースト18の液面に対して部品12が離隔するように上方に移動される。これにより、部品12の長手方向の一端部にペースト18が付着した状態となる。部品12を容器7内のペースト18に浸漬させる際、部品12は、容器7の底部27に押し付けられてもよい。これにより、部品12の傾斜状態が解除されるので、保持具3を上方に移動させる際、部品12は、貫通孔15の軸方向に沿った状態である。なお、容器7に駆動手段8が接続されている場合には、容器7を下方に移動させる。保持具3及び容器7の双方が駆動手段8に接続されている場合には、容器7内のペースト18の液面に対して部品12が離隔するように、保持具3と容器7とのうち、一方又は双方を移動させる。
【0038】
第1乾燥工程S4は、部品12の長手方向の一端部に付着したペースト18を乾燥させる工程である。第1乾燥工程S4では、熱風によってペースト18を乾燥させてもよいし、遠赤外線を照射することでペースト18を乾燥させてもよい。
【0039】
移し替え工程S5は、第1乾燥工程S4後に、保持具3に挿入された部品12を別の保持具25に移し替える工程である。別の保持具25は、保持具3と同様の構成である。移し替え工程S5では、
図6に示すように、保持具3は、上下が逆になるように回転される。すなわち、部品12のペースト18が付着した部分が上方に向くように、保持具3を回転させる。そして、保持具3は、駆動手段8によって、別の保持具25の下方に移動される。この移動後、
図7に示すように、ピン保持部5のピン4によって、部品12は、保持具3の貫通孔15から別の保持具25の貫通孔26に挿入される。具体的には、ピン4の先端面16が部品12の長手方向の他端側に接触した状態で、ピン4を上方に移動させる。この際、部品12は、別の保持具25の貫通孔26から下方に突出した状態とされる。
【0040】
移し替え工程S5では、別の保持具25の貫通孔26の内面が弾性変形可能な樹脂14で被覆されているので、先端面16が傾斜面であるピン4によって部品12を押し上げると、貫通孔26から突出した部品12は、貫通孔26の軸方向に対して傾斜した状態となる。移し替え工程S5では、部品12が挿入された保持具3を別の保持具25の上方に移動させた後、部品12を上方からピン4で押し込むことで、部品12を別の保持具25の貫通孔26に挿入してもよい。この際、部品12は、別の保持具25の貫通孔26から下方に突出した状態とされる。
【0041】
逆側浸漬工程S6は、部品12の長手方向の他端部をペースト18に浸漬させる工程である。逆側浸漬工程S6では、別の保持具25は、駆動手段8によって容器7の上方に移動される。そして、
図8に示すように、駆動手段8は、容器7内のペースト18の液面に対して部品12が浸漬するように、別の保持具25を下方に移動させる。これにより、部品12の長手方向の他端部は、容器7内のペースト18に浸漬される。逆側浸漬工程S6では、部品12の長手方向の他端部をペースト18に浸漬させる際、容器7を移動させてもよいし、容器7及び別の保持具25の双方を移動させてもよい。逆側浸漬工程S6で用いられる容器7は、浸漬工程S3で用いられた容器7であってもよいし、ペースト18が貯留された別の容器であってもよい。
【0042】
図9に示すように、別の保持具25は、部品12を容器7内のペースト18に浸漬させた後、容器7内のペースト18の液面に対して部品12が離隔するように上方に移動される。これにより、部品12の長手方向の他端部にペースト18が付着した状態となる。なお、容器7に駆動手段8が接続されている場合には、容器7を下方に移動させる。別の保持具25及び容器7の双方が駆動手段8に接続されている場合には、容器7内のペースト18の液面に対して部品12が離隔するように、別の保持具25と容器7とのうち、一方又は双方を移動させる。
【0043】
第2乾燥工程S7は、部品12の長手方向の他端部に付着したペースト18を乾燥させる工程である。第2乾燥工程S7では、熱風によってペースト18を乾燥させてもよいし、遠赤外線を照射することでペースト18を乾燥させてもよい。第2乾燥工程S7後、部品12は、別の保持具25から取り外される。
【0044】
本実施形態の場合、部品12を貫通孔15に押し込むピン4の先端面16は、ピン4の軸方向に対して傾斜した傾斜面である。従って、部品12は、保持具3の貫通孔15に挿入された状態において、傾斜している。部品12が傾斜した状態で、部品12をペースト18に浸漬すると、傾斜面に沿って空気の逃げ道が確保されるので、部品12に付着したペースト18中にポアができにくい。
【0045】
本実施形態の場合、保持具3は、繰り返し使用される。ピン4は、ピン4の軸線まわりに自由に回転可能である。従って、設備の微小な振動やピン保持部5の移動などにより、ピン4の先端面16の向く方向を無秩序に異ならせることができる。よって、本実施形態の場合、ピン保持部5は、先端面16の向く方向が異なる複数のピン4を有することになる。従って、本実施形態によれば、保持具3の貫通孔15に挿入された部品12の傾斜方向を無秩序に異ならせることができる。保持具3の樹脂14は、貫通孔15に部品12が挿入される際に、部品12により少しずつ削られる。具体的には、樹脂14のうち、傾いた部品12が接触する部分が削れやすい。しかしながら、本実施形態によれば、保持具3を使用するたびに、保持具3の貫通孔15に挿入される部品12の傾斜方向を異ならせることができるので、特定の箇所だけが摩耗するのを防止できる。従って、保持具3の寿命を向上させることができる。
【0046】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
【0047】
図14及び
図15は、本発明の別の実施形態に係る電子部品の製造方法を時系列に示す図である。本変形例では、部品12の長手方向の一端部にペースト18を付着させた後、保持具3は、上下が逆になるように回転される。すなわち、保持具3は、部品12のペースト18が付着した部分が上方に向くように回転される。その後、保持具3の貫通孔15に挿入された部品12は、ピン保持部5に保持されたピン4によって、下方に押し込まれる。これにより、部品12は、保持具3の貫通孔15から下方に突出した状態とされる。すなわち、部品12の長手方向の他端部が突出した状態とされる。ピン4によって部品12が下方に突出することで、部品12の長手方向の他端部は、容器7内のペースト18に浸漬される。ここで用いられるピン4は、保持具3の貫通孔15に部品12が挿入される際に使用されるピン4でもよいし、別途用意されたピンであってもよい。また、部品12が保持具3の貫通孔15から下方に突出した状態とした後、保持具3を下方に異動させることで、部品12の長手方向の他端部は、容器7内のペースト18に浸漬してもよい。
【0048】
前記実施形態では、保持具3の厚みを薄くすることで、部品12が貫通孔15に挿入された状態において、部品12の長手方向の両端部の双方が貫通孔15から突出した状態にできる。この場合、部品12の長手方向の一端部にペースト18を付着させる際に、保持具3の上下が逆になるように回転させる必要がない。
【0049】
前記実施形態では、ピン4は、回転可能とされたが、回転不能であってもよい。すなわち、ピン4は、ピン保持部5に回転不能に設けてもよい。この場合、ピン保持部5は、ピン4の先端面16の向く方向が異なる複数のピン4を有しているのが好ましい。ピン4が回転不能の場合、ピン4の先端面16の向く方向が異なる複数種のピン保持部5を用意しておくのが好ましい。これにより、保持具3を繰り返して使用するたびに、複数種のピン保持部5から選択されたピン保持部5を用いることで、各貫通孔15に挿入された部品12の傾斜方向を変更できる。従って、樹脂14のうち、傾いた部品12が接触する部分を変更することができるので、樹脂14の片摩耗を抑制することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 電子部品の製造装置
3 保持具
4 ピン
5 ピン保持部
7 容器
8 駆動手段
12 部品
14 樹脂
15 貫通孔
16 先端面
18 ペースト