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特開2024-152239乾物包装用積層体およびそれを用いた乾物用包装袋
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152239
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】乾物包装用積層体およびそれを用いた乾物用包装袋
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20241018BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066306
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000222462
【氏名又は名称】東レフィルム加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】小川 透
(72)【発明者】
【氏名】松浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】豊島 裕
(72)【発明者】
【氏名】徳田 浩忠
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA33
3E086BA35
3E086BB02
3E086BB51
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4F100AK07
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4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】環境を配慮して同系の素材を用いた食品包装用の包装袋として、耐熱性、耐衝撃性、低温ヒートシール性に優れ、従来の包装袋同様に製袋性に優れた乾物包装用積層体およびそれを用いた乾物用包装袋を提供する。
【解決手段】基材層とヒートシール層の積層体であり、該基材層は100℃での長手方向および幅方向の弾性率が500MPa以上のポリプロピレンを主成分とする二軸延伸フィルムであって、該ヒートシール層はポリプロピレンを主成分とし、エチレンαオレフィン共重合体を含有し、融点が125℃以上145℃以下であり、赤外吸光光度法による719cm-1のピークを973cm-1のピークで除した値が0.1以上0.3以下の範囲である無延伸フィルムであって、該ヒートシール層どうし重ねて135℃でヒートシールしたときのシール強度が15N/15mm以上である乾物包装用積層体、およびそれを用いた乾物用包装袋。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層とヒートシール層の積層体であり、該基材層は100℃での長手方向および幅方向の弾性率が500MPa以上のポリプロピレンを主成分とする二軸延伸フィルムであって、該ヒートシール層はポリプロピレンを主成分とし、エチレンαオレフィン共重合体を含有し、融点が125℃以上145℃以下であり、赤外吸光光度法による719cm-1のピークを973cm-1のピークで除した値が0.1以上0.3以下の範囲である無延伸フィルムであって、該ヒートシール層どうし重ねて135℃でヒートシールしたときのシール強度が15N/15mm以上である乾物包装用積層体。
【請求項2】
上記基材層の厚さが20μm以上30μm以下で、ヒートシール層の厚さが50μm以上70μm以下である、請求項1に記載の乾物包装用積層体。
【請求項3】
長手方向および幅方向の130℃での熱収縮率が5%以下である、請求項1に記載の乾物包装用積層体。
【請求項4】
上記請求項1~3のいずれかに記載の積層体を用いた3方シール包装袋で、包装袋のボトムシール温度140~150℃、縦シール温度130~140℃、トップシール温度130~140℃の温度範囲で、内容物1kgを包装時の製袋速度が40spm以上である乾物用包装袋。
【請求項5】
上記3方シール包装袋に内容物1kgを入れて、1mの高さから落下したときに破袋率が5%以下である、請求項4に記載の乾物用包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装用の乾物包装用積層体およびそれを用いた乾物用包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な食品包装用の積層体および包装袋としては、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETと称することがある。)、二軸延伸ポリアミドフィルム(以下、ONと称することがある。)などの耐熱性基材と無延伸のポリエチレンフィルム(以下、PEと称することがある。)やポリプロピレン系フィルム(以下、CPPと称することがある。)を貼合わせた、PET/ON/PE又はCPP、PET/PE又はCPP、OPP(二軸延伸ポリプロピレンフィルム)/ON/PE又はCPPの積層体を製袋して使用されている。この包装袋の要求特性としては、耐熱性、耐衝撃性、ヒートシール性、製袋加工性等が要求される。
【0003】
近年では、包装の環境対応に関連する法律が施行されており、包装袋において環境を配慮した設計が必須の状況となってきているため、多層ラミネートフィルムの層数削減や、モノマテリアルでリサイクル適性に優れた同系の素材の包装袋の要求が高まっている。
【0004】
そこで、高温での弾性率が高い二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下、OPPと称することがある。)/シーラント層のCPPというOPP/CPP構成の同系の素材の積層体の検討も行われており、シーラント層となるCPPへ耐衝撃性、低温ヒートシール性、滑り性への要求がより高く求められている。
【0005】
上記問題を解決するために、特許文献1では、弾性率の高いPP(ポリプロピレン)の片面にヒートシール層を積層したOPPが提案され、特許文献2では、熱収縮率の低いOPPの片面にCPPを積層した積層体が提案されているが、耐衝撃性と低温ヒートシール性の両立が不十分であり、製袋加工性にも劣るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-7441号公報
【特許文献2】特開2023-13959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の課題は、環境を配慮して同系の素材を用いた食品包装用の包装袋として、耐熱性、耐衝撃性、低温ヒートシール性に優れ、従来の包装袋同様に製袋性に優れた乾物包装用積層体およびそれを用いた乾物用包装袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、下記の構成を有する積層体およびそれを用いた包装袋によって上記課題を解決するに至った。すなわち、基材層とヒートシール層の積層体であり、該基材層は100℃での長手方向および幅方向の弾性率が500MPa以上のポリプロピレンを主成分とする二軸延伸フィルムであって、該ヒートシール層はポリプロピレンを主成分とし、エチレンαオレフィン共重合体を含有し、融点が125℃以上145℃以下であり、赤外吸光光度法による719cm-1のピークを973cm-1のピークで除した値が0.1以上0.3以下の範囲である無延伸フィルムであって、該ヒートシール層どうし重ねて135℃でヒートシールしたときのシール強度が15N/15mm以上である乾物包装用積層体、およびそれを用いた乾物用包装袋である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、環境を配慮して同系の素材を用いたモノマテリアルの食品包装用の包装袋として、優れた耐熱性、耐衝撃性を維持して低温ヒートシール性と製袋性に優れ、包装袋の減量化も可能となる乾物包装用積層体およびそれを用いた乾物用包装袋を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の乾物包装用積層体およびそれを用いた乾物用包装袋について具体的に説明する。
本発明の積層体は、基材層とヒートシール層の2層構成の積層体であり、該基材層は100℃での長手方向および幅方向の弾性率がともに500MPa以上のポリプロピレンを主成分とする二軸延伸フィルムであって、該ヒートシール層はポリプロピレンを主成分とし、エチレン・α-オレフィン共重合体を含有し、融点が125℃以上145℃以下であり、赤外吸光光度法による719cm-1のピークを973cm-1のピークで除した値が0.1以上0.3以下の範囲である無延伸フィルムである。
【0011】
上記基材層のポリプロピレンを主成分とする二軸延伸フィルムの100℃での長手方向および幅方向の弾性率がともに500MPa以上であることにより、ヒートシール層を積層した積層体を、3方シール包装機で3方シールした包装袋を作成する際に、製袋速度として40spm(shots per minute)以上を得ることが可能になる。弾性率が500MPa未満では、積層体を用いた製袋時の形状保持性が低下して食品包装後の内容物保護性に劣ることがある。ここで、二軸延伸フィルムの長手方向および幅方向とは、フィルムを製膜する方向に平行な方向を、長手方向(縦方向あるいMD方向)と称し、フィルム面内で製膜方向に直交する方向を幅方向(横方向あるいはTD方向)と称する。
【0012】
上記ポリプロピレンを主成分とするとは、基材層樹脂の総量に対してポリプロピレンが50質量%以上であることをいう。
【0013】
上記ポリプロピレンとしては、ホモポリマー、エチレン・プロピレンランダム共重合体エチレン・プロピレンブロック共重合体、エチレン・プロピレン・ブテンランダム共重合体から選択されるが、本発明の基材層として用いる場合は、100℃での弾性率からホモポリマーのポリプロピレンが好ましい。
【0014】
上記ポリプロピレンは、20℃のキシレン可溶部(以下、CXSと称することがある。)が4質量%以下であり、かつ20℃のキシレン不溶部(以下、CXISと称することがある。)のメソペンタッド分率が95%以上であり、メルトフローレート(以下、MFRと称することがある。)が1g/10分以上、10g /10分以下(230℃ 、21.18N荷重)であることが好ましい。
【0015】
上記ポリプロピレンの20℃のキシレン可溶部(CXS)が4質量%以下であることが好ましいが、さらに好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは2質量%以下である。CXSは低いほど好ましいが、0.1質量%程度が下限である。このようなCXSを有するポリプロピレンとするには、樹脂を得る際の触媒活性を高める方法、得られた樹脂を溶媒あるいはプロピレンモノマー自身で洗浄する方法等が使用できる。CXSが4質量%以下であることにより、100℃での弾性率が500MPa以上となり、また、上記3方シール包装袋作成時の縦方向と横方向の130℃での熱収縮率が5%以下となる。
【0016】
上記ポリプロピレンは、20℃のキシレン不溶部(CXIS)のメソペンタッド分率が95%以上であることが好ましく、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上である。メソペンタッド分率は核磁気共鳴法(NMR法)で測定されるポリプロピレンの結晶相の立体規則性を示す指標であり、該数値が高いものほど結晶化度が高く、融点が高くなり、高温での使用に適するため好ましい。メソペンタッド分率の上限については特に規定するものではないが、99%を超えると二軸延伸が難しくなる。このように立体規則性の高い樹脂を得るには、n-ヘプタン等の溶媒で得られた樹脂パウダーを洗浄する方法や、触媒および/ または助触媒の選定、組成の選定を適宜行う方法等が好ましく採用される。
【0017】
上記ポリプロピレンは、MFRが1g/10分以上、10g /10分以下(230℃ 、21.18N荷重)であることが好ましく、より好ましくは2g/10分以上7g/10分以下の範囲のものが、製膜性の観点から好ましい。MFRを上記の値とするためには、平均分子量や分子量分布を制御する方法などが採用される。
【0018】
上記ポリプロピレンとしては、主としてプロピレンの単独重合体からなるが、本発明の目的を損なわない範囲で他の不飽和炭化水素による共重合成分などを含有してもよいし、プロピレンが単独ではない重合体がブレンドされていてもよい。このような共重合成分やブレンド物を構成する単量体成分として例えばエチレン、プロピレン(共重合されたブレンド物の場合)、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチルペンテン-1 、3-メチルブテンー1 、1-ヘキセン、4-メチルペンテン-1、5-エチルヘキセン-1 、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネンなどが挙げられる。共重合量またはブレンド量は、弾性率向上の観点から、共重合量では1mol%未満とし、ブレンド量では10質量%未満とするのが好ましい。
【0019】
上記基材層の融点は、160℃ 以上、より好ましくは163 ℃ 以上であることが好ましい。ポリプロピレンの融点は示差走査熱量計(DSC)使用して測定することができる。融点が高いことにより、製袋適性が良く、製袋品のサイズやピッチのずれの少ない包装袋とすることができる。
【0020】
上記基材層には、本発明の目的を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば結晶核剤、酸化防止剤、熱安定剤、すべり剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、充填剤、粘度調整剤、着色防止剤などを含有せしめることもできる。
【0021】
これらの中で、酸化防止剤の種類および添加量の選定は長期安定性の観点から重要である。すなわち、酸化防止剤としては立体障害性を有するフェノール系のもので、そのうち少なくとも1 種は分子量500以上の高分子量型のものが好ましい。その具体例としては種々のものが挙げられるが、例えば2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール( BHT)とともに1,3,5-トリメチル-2 ,4 ,6-トリス(3 ,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン( 例えばBAS F 社製“ I r g a n o x ”( 登録商標)1330)、またはテトラキス[メチレン-3(3 ,5 -ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン( 例えばBASF社製“I r g a n o x ” ( 登録商標)1 0 1 0)等を併用することが好ましい。これら酸化防止剤の総含有量はポリプロピレン全量に対して0.0 3以上1.0質量%以下の範囲が好ましい。酸化防止剤が少なすぎると押出工程で熱劣化してフィルムが着色し、長期耐熱性に劣る場合がある。酸化防止剤が多すぎるとこれら酸化防止剤のブリードアウトにより透明性が低下する場合がある。より好ましい含有量は、0.1以上0.9質量%以下であり、特に好ましくは0.2以上0.8質量%の範囲である。
【0022】
上記ポリプロピレンには、本発明の目的に反しない範囲で、結晶核剤を添加することができる。結晶核剤としては、α晶核剤(ジベンジリデンソルビトール類、安息香酸ナトリウム等)、β晶核剤(1,2-ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウム、N,N’-ジシクロヘキシル-2 ,6-ナフタレンジカルボキサミド等のアミド系化合物、キナクリドン系化合物等)等が例示される。添加量は0.01質量%以上0.5質量%以下が好ましい。添加量が0.01質量%未満では添加効果がみられず、0.5質量%を超えると延伸性の低下やボイド形成等による透明性や強度の低下を引き起こす場合がある。
【0023】
上記基材層には、脂肪酸アミド系滑剤を100~1000ppm添加することが好ましい。脂肪酸アミド系滑剤の添加量が100ppm未満では滑り性が悪くなることがあり、1000ppmを超えると溶融押出時に熱飛散が多くなり製膜工程を汚して製膜性の悪化することがある。
【0024】
上記脂肪酸アミド系滑剤とは、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ベヘン酸アミド等が好ましく挙げられ、特にエルカ酸アミドが樹脂組成への分散性と、滑り性の発現性から好ましい。
【0025】
上記基材層には、樹脂組成総量に対して無機または有機粒子を300~3000ppm添加することが、ブロッキングを防止できて好ましい。添加量が300ppm未満では添加効果がなく、3000ppmを超えると溶融押出時に製膜工程を汚して製膜性の悪化することがある。
【0026】
上記無機粒子としては、該無機粒子としては、シリカ、ゼオライト、炭酸カルシウム等が好ましく挙げられる。また、有機粒子としては、アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、ポリオレフィン系樹脂粒子、ポリエステル系樹脂粒子、ポリウレタン系樹脂粒子、ポリカーボネート系樹脂粒子、ポリアミド系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、フッ素系樹脂粒子、あるいは上記樹脂の合成に用いられる2種以上のモノマーの共重合樹脂粒子等が挙げられ、これらは単独で用いても併用してもよい。
【0027】
上記粒子の平均粒子径は、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。平均粒子径が1μm未満であると、目的とする上記の算術平均表面粗さが得られない場合がある。一方、平均粒子径の上限は20μm以下が好ましく、より好ましくは15μm以下である。平均粒子径が20μmを超えると、製膜時に口金のリップ部に粒子が目ヤニ状に付着して生産性が悪化する場合や、粒子が脱落して工程通過性が悪化することがある。
【0028】
上記粒子の添加量は、0.1~3質量%であることが好ましい。添加量が0.1質量%未満では添加効果がみられないことがあり、3質量%を超えると膜時に口金のリップ部に粒子が目ヤニ状に付着して生産性が悪化する場合があり、トータルヘイズも高くなって透明性が悪化することがある。
【0029】
上記基材層の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、上述した原料を用い、インフレーション同時二軸延伸法、ステンター同時二軸延伸法、ステンター逐次二軸延伸法のいずれによっても得られるが、その中でも、製膜安定性、厚み均一性、フィルムの高剛性と寸法安定性を制御する点においてステンター逐次二軸延伸法を採用することが好ましい。
【0030】
上記二軸延伸の延伸倍率は、長手方向(MD方向)が3.5倍以上6倍以下で、幅方向(TD方向)が3.5倍以上10倍以下であると製膜が安定して、100℃での長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)の弾性率が500MPa以上のフィルムが得られるので好ましい。
【0031】
上記基材層は、少なくともヒートシール層のCPPとのラミネート面側に、通常工業的に実施されるコロナ放電処理、窒素や炭酸ガス雰囲気下でのコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理などの表面処理を施して、濡れ指数を36mN/m以上にすることが好ましい。
【0032】
なお、上記基材層の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、上記方法により作製されたものに限られず、100℃での長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)の弾性率が500MPa以上であれば、市販されたものを用いてもよい。
【0033】
上記積層体のヒートシール層は、ポリプロピレンを主成分とし、エチレン・α-オレフィン共重合体を含有し、融点が125℃以上145℃以下であり、赤外吸光光度法による719cm-1のピークを973cm-1のピークで除した値が0.1以上0.3以下の範囲である無延伸フィルムであって、該ヒートシール層どうしを重ねて135℃でヒートシールしたときのシール強度が15N/15mm以上である。
【0034】
上記ヒートシール層においてポリプロピレンを主成分とは、ヒートシール層樹脂の総量に対してポリプロピレンが50質量%以上であることをいう。ポリプロピレンの比率が50質量%未満では、ヒートシール層どうしを重ねて135℃でヒートシールしたときのシール強度が15N/15mmを得ることが難しい。
【0035】
上記ポリプロピレンとしては、ホモポリマー、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・プロピレンブロックコポリマー、エチレン・プロピレン・ブテンランダム共重合体から選択されるが、ヒートシール強度からエチレン・プロピレンランダム共重合体(以下、EPCと称することがある)が好ましい。
【0036】
上記エチレン・プロピレンランダム共重合体(EPC)としては、ポリプロピレンに、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチルペンテン-1 、3-メチルブテンー1 、1-ヘキセン、4-メチルペンテン-1、5-エチルヘキセン-1 、1-オクテンから選ばれる一種以上を共重合したものが好ましい。
【0037】
上記共重合量は、ヒートシール強度の観点から、共重合量では1mol%以上10mol%以下とするのが好ましい。共重合量が1mol%未満ではヒートシール強度が低くなり、10mol%を超えるとブロッキング力が高くなって、フィルムの巻き取り時に皺が入りやすく、また巻き出し性にフィルム破れが起こることがある。
【0038】
上記ヒートシール層の融点は、125℃ 以上145℃以下であることが好ましい。融点は示差走査熱量計(DSC)使用して測定することができる。融点125未満ではブロッキング力が高くなり、製袋品に内容物を詰める際に袋の開封性が悪くなり、製袋速度が低下することがある。融点が145℃を超えると135℃でのヒートシール強度が15N/15mm以下に低下する。
【0039】
上記ヒートシール層に、エチレン・α-オレフィン共重合体を含有することにより、低温ヒートシール性と耐衝撃性が向上するので好ましい。
【0040】
上記エチレン・α-オレフィン共重合体を含有量は、5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。含有量が5質量%未満では低温ヒートシール性と耐衝撃性の向上効果がみられず、20質量%を超えると、ブロッキング力が高くなり、上記積層体を用いた製袋品に内容物を詰める際に袋の開封性が悪くなり、製袋速度が低下することがある。
【0041】
上記エチレン・α-オレフィン共重合体は、主成分として50~95質量%のエチレンと共重合モノマーとしてα-オレフィンとの共重合体であり、具体的にはメタロセン系触媒により製造されるものが好ましい。
【0042】
上記α-オレフィンとしては、炭素数が3~10のプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどが使用でき、具体的なエチレン・α-オレフィンとしては、エチレン・プロピレン共重合体エラストマー、エチレン・ブテン共重合体エラストマー、エチレン・オクテン共重合体エラストマー、エチレンにα―オレフィンとしてブテン、オクテン、ヘキセン等を共重合体した直鎖状低密度ポリエチレン等を挙げることができ、特に、耐衝撃性からエチレン・プロピレン共重合体エラストマーおよびエチレン・ブテン共重合体エラストマーが好ましい。
【0043】
上記エチレン・α-オレフィン共重合体のMFRは、190℃、荷重21.18N下で、ポリプロピレン系樹脂との混和性の観点及び耐ブロッキング性の観点から、0.5~10g/10分の範囲が好ましい。
【0044】
上記ヒートシール層中のエチレンおよびゴム成分の含有量を示す、フーリエ変換赤外分光光度計による透過測定で(赤外吸光光度法による測定で)、719cm-1のピーク強度を973cm-1のピーク強度で除した値が0.1以上0.3以下であることが好ましい。719cm-1のピーク強度を973cm-1のピーク強度で除した値が0.1未満では耐衝撃性および低温ヒートシール性に劣り、積層体を包装袋にして内容物を詰めて落袋時に包装袋から内容物が漏れることがある。0.3を超えるとヒートシール層どうしがブロッキングして製袋機で内容物を詰める際に開封性が悪くなり、内容物の漏れや製袋速度が低下することがある。
【0045】
上記ヒートシール層には、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、耐熱安定剤、中和剤、帯電防止剤、塩酸吸収剤、アンチブロッキング剤、滑剤等を含むことができる。これらの添加剤は1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
ここで酸化防止剤の具体例としては、ヒンダードフェノール系として、2,6-ジ-t-ブチルフェノール(BHT)、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(“イルガノックス”1076、“Sumilizer”BP-76)、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(“イルガノックス”1010、“Sumilizer”BP-101)、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(“イルガノックス”3114、Mark AO-20)等があげられる。
【0047】
ホスファイト系(リン系)酸化防止剤として、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(“Irgafos”168、Mark 2112)、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4-4’-ビフェニレン-ジホスホナイト(“Sandstab”P-EPQ)、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(“Ultranox”626,Mark PEP-24G)、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(Mark PEP-8)等が挙げられる。
【0048】
なかでもこれらのヒンダードフェノール系とホスファイト系の両機能を合わせ持つ6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]-ジオキサホスフェピン(“Sumilizer”GP)、及び、アクリル酸2[1-2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル]エチル]-4,6-ジ-t-ペンチルフェニル(“Sumilizer”GS)が好ましく、特に、この両者の併用は、フィルムの製膜に際し、樹脂の分解抑制に効果を発揮し、耐衝撃性と耐ブロッキング性の両立に寄与することから好ましい。
【0049】
酸化防止剤の添加量としては、用いる酸化防止剤の種類にもよるが、100~10000ppmの範囲で適宜設定すればよい。
【0050】
中和剤としては、ハイドロタルサイト類化合物、水酸化カルシウムなどがフィルム製膜時の発煙低下に好ましい。
【0051】
上記ヒートシール層には、樹脂組成総量に対して脂肪酸アミド系滑剤を100~1000ppm添加することが好ましい。脂肪酸アミド系滑剤の添加量が100ppm未満では滑り性が悪くなることがあり、1000ppmを超えると溶融押出時に熱飛散が多くなり製膜工程を汚して製膜性の悪化や、ヒートシール強度も低下することがある。
【0052】
上記脂肪酸アミド系滑剤とは、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ベヘン酸アミド等が好ましく挙げられ、特にエルカ酸アミドが樹脂組成への分散性と、滑り性の発現性から好ましい。
【0053】
上記ヒートシール層には、樹脂組成総量に対して無機または有機粒子を300~3000ppm添加することが、ブロッキングを防止できて好ましい。添加量が300ppm未満では添加効果がなく、3000ppmを超えると溶融押出時に製膜工程を汚して製膜性の悪化や、ヒートシール強度も低下することがある。
【0054】
上記無機粒子としては、シリカ、ゼオライト、炭酸カルシウム等が好ましく挙げられる。また、有機粒子としては、アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、ポリオレフィン系樹脂粒子、ポリエステル系樹脂粒子、ポリウレタン系樹脂粒子、ポリカーボネート系樹脂粒子、ポリアミド系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、フッ素系樹脂粒子、あるいは上記樹脂の合成に用いられる2種以上のモノマーの共重合樹脂粒子等が挙げられ、これらは単独で用いても併用してもよい。
【0055】
上記粒子の平均粒子径は、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。平均粒子径が1μm未満であると、目的とする上記の算術平均表面粗さが得られない場合がある。一方、平均粒子径の上限は20μm以下が好ましく、より好ましくは15μm以下である。平均粒子径が20μmを超えると、製膜時に口金のリップ部に粒子が目ヤニ状に付着して生産性が悪化する場合や、粒子が脱落して工程通過性が悪化することがある。
【0056】
上記粒子の添加量は、0.1~3質量%であることが好ましい。添加量が0.1質量%未満では添加効果がみられないことがあり、3質量%を超えると膜時に口金のリップ部に粒子が目ヤニ状に付着して生産性が悪化する場合があり、トータルヘイズも高くなって透明性が悪化することがある。
【0057】
上記ヒートシール層は、ヒートシール強度から無延伸フィルムであることが好ましい。無延伸フィルムを得る方法としては、上記樹脂組成を溶融してT型口金から冷却ドラム上に押し出し冷却固化する方法や、上記二軸延伸ポリプロピレン上に溶融押出してラミネートする方法等を挙げることができるが、本発明ではT型口金から冷却ドラム上に押し出し冷却固化した無延伸フィルムが、ヒートシール強度が高くなるので好ましい。
【0058】
本発明の積層体の基材層の厚さは20μm以上30μm以下で、ヒートシール層の厚さが50μm以上70μm以下であることが、耐衝撃性と低温ヒートシール性が得られ、製袋性も維持できるので好ましい。
【0059】
上記積層体の基材層とヒートシール層を積層するドライラミネート用接着剤としては特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン系ポリオール、ポリエステル系ポリオール及びポリエーテル系ポリオールからなる群より選ばれるポリオールの1種または2種以上からなる第1液と、イソシアネートからなる第2液(硬化剤)とで構成される2液反応型の芳香族系接着剤、または2液反応型脂肪族系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、エラストマー系接着剤、フッ素系接着剤等により形成された接着剤が挙げられる。
【0060】
接着剤層の厚さは0.5~5μmが好ましく、0.5~3.0μmがより好ましい。接着層の厚さが0.5μm以上であれば膜厚のコントロールがしやすくなり、5μm以下であれば充分な接着強度を付与しつつ、乾燥時間に短縮と生産コストを抑えることが容易になる。
【0061】
上記積層体のヒートシール層どうしを重ねて135℃でヒートシールしたときのヒートシール強度が15N/15mm以上であることが好ましい。ヒートシール強度が15N/15mm未満であると、積層体を包装袋にして内容物を詰め、運搬や積載などの際や落袋時に包装袋から内容物が漏れる可能性がある。
【0062】
上記積層体の長手方向および幅方向の130℃での熱収縮率がともに5%以下であることが好ましい。長手方向(MD方向)と幅方向(TD方向)の130℃での熱収縮率が5%を超えると、包装袋にひねりや皺等が発生して外観が悪くなり、商品価値が低減するので好ましくない。ここで、熱収縮率とは積層体を幅10mm 、長さ200mm(測定方向)の試料を5本切り出し、両端から25mmの位置に標線として印しを付けて、万能投影機で標線間の距離を測定し試長(10)とし、次に、試験片を紙に挟み込み荷重ゼロの状態で130℃ に保温されたオーブン内で、60分加熱後に取り出して、室温で冷却後、寸法(1l)を万能投影機で測定して下記式にて求めたものであり、5 本の平均値を熱収縮率とする。
熱収縮率={(10-11)/10}× 100(%)
【0063】
なお、本願においては、フィルムの製膜する方向に平行な方向を、長手方向(縦方向あるいはMD方向)と称し、フィルム面内で製膜方向に直交する方向を幅方向(横方向あるいはTD方向)と称する。
【0064】
上記基材層とヒートシール層の積層体を用いた3方シール包装袋において、製袋機の包装袋のボトムシール温度(底辺部)140以上150℃以下、縦シール温度130℃以上140℃以下、トップシール温度(内容物充填後の密封部)130℃以上140℃以下の温度において、内容物1kgを包装するときの製袋速度が40spm以上であることが好ましい。上記製袋速度が40spm未満では、製品の歩留まりが悪く、製造コストが高くなるので好ましくない。
【0065】
上記製袋機での製袋において内容物1kgを入れて、1mの高さから落下したときの破袋率が5%以下であることが好ましい。破袋率が5%を超えると、商品の運搬や積載などの際や落袋時に包装袋から内容物が漏れる可能性があり、実用性が低くなる。
【0066】
上記包装袋は、ヒートシール層を袋の内面として、平袋(平パウチ)、スタンディングパウチなどに製袋加工されて使用することもできる。
【0067】
上記包装袋は、包装袋の要求特性、例えば、包装する食品の品質保持期間を満たすための水蒸気バリア性能、内容物の質量に対応できるサイズ・耐衝撃性、ヒートシール強度、内容物の視認性などに応じて適宜選択される。
【実施例0068】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。また、本発明の詳細な説明および実施例中の各評価項目の測定値は、下記の方法で測定した。
【0069】
(1)ポリプロピレンの20℃キシレン可溶部(CXS)と不溶部(CXIS)の含有量
ポリプロピレン系樹脂5gを沸騰キシレン(関東化学社製1級)500mlに完全に溶解させた後に、20℃に降温し、4時間以上放置する。その後、これを析出物と溶液とに濾過して、キシレン可溶部とキシレン不溶部に分離した。キシレン不溶部(CXIS)の質量は、析出部を減圧下70℃で乾燥後、その質量を23℃で測定して含有量(質量%)を求めた。また、キシレン可溶部(CXS)は濾液を乾固して減圧下70℃で乾燥後、その質量を測定して含有量(質量%)を求めた。
【0070】
(2)メソペンタンド分率
上記キシレン不溶部のメソペンタッド分率(アイソタクチックメソペンタッド分率)は、「Zambelliら、Macromolecules,第6巻,925頁(1973)」に記載の方法に従って算出した。13C-NMR測定は、BRUKER社製「AVANCE500」を用い、試料200mgをo-ジクロロベンゼンと重ベンゼンの8:2(体積比)の混合液に135℃で溶解させ、110℃で実施した。
【0071】
(3)メルトフローレート(MFR)
JIS K-7210-1999に準拠し、ポリプロピレン系樹脂は温度230℃、ポリエチレン、エチレン・αオレフィン共重合体、エチレン・αオレフィン共重合体エラストマーは温度190℃で、それぞれ荷重21.18Nにて測定した。
【0072】
(4)100℃雰囲気下の弾性率
二軸延伸ポリプロピレンフィルム単体をJIS K 7127:1999に基づき、オリエンテック社製テンシロン万能材料試験機(PTG-1210、平行締付型エアジョウ)を使用して、100℃の雰囲気下でフィルムの長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)を、n数5回で測定し、その平均値を求めた。
【0073】
(5)耐ブロッキング性
幅30mmで長さ100mmのフィルムサンプルを準備し、シール層どうしを30mm×40mmの範囲を重ね合わせて、1kg/12cm2の荷重をかけ、80℃のオーブン内で24時間加熱処理した後、23℃、湿度65%の雰囲気下に30分以上放置した後、オリエンテック社製テンシロンを使用して300mm/分の引張速度で剪断剥離力を測定した。本測定法で剪断剥離力が20N/12cm2以下であれば耐ブロッキング性良好「〇」とし、20N/12cm2を超えるものを耐ブロッキング性不良「×」とした。
【0074】
(6)フィルム厚さおよび厚さ構成
フィルム厚さは、ダイヤルゲージを用い、JIS K7130(1992)A-2法に準じて、フィルムの任意の10ヶ所について厚さを測定した。その平均値をフィルム厚みとした。
【0075】
(7)フィルムのフーリエ変換赤外分光光度計による719cm-1のピーク強度と973cm-1のピーク強度比。
ポリプロピレン系フィルムのフーリエ変換赤外分光光度計(株式会社 島津製作所製IR Tracer-100)による透過測定(10回積算)で、719cm-1のピーク強度と973cm-1のピーク強度を測定して、719cm-1のピーク強度を973cm-1のピーク強度で除した値を求めた。この値は、フィルム中のエチレンおよびゴム成分の含有量の目安となるものである。
【0076】
(8)熱収縮率
基材層の種類およびヒートシール層の積層構成を変えて、脂肪族エステル系接着剤(三井化学(株)製タケラックA385/タケネートA50、接着剤層厚さ2.5μm)を用いて通常のドライラミネート法で、基材層とヒートシール層を貼合わせ、40℃で3日間エージングして、積層体を作成した。
【0077】
上記積層体について、幅10mm 、長さ200mm(測定方向)の試料を5本切り出し、両端から25mmの位置に標線として印しを付けて、万能投影機で標線間の距離を測定し試長(10)とし、次に、試験片を紙に挟み込み荷重ゼロの状態で130℃ に保温されたオーブン内で、60分加熱後に取り出して、室温で冷却後、寸法(11)を万能投影機で測定して下記式にて求めたものであり、5 本の平均値を熱収縮率とした。
熱収縮率={(10-1l)/10}× 100(%)
なお、本願においては、フィルムの製膜する方向に平行な方向を、長手方向(縦方向あるいはMD方向)と称し、フィルム面内で製膜方向に直交する方向を幅方向(横方向あるいはTD方向)と称する。
【0078】
(9)破袋率
基材層の種類およびヒートシール層の積層構成を変えて、脂肪族エステル系接着剤(三井化学(株)製タケラックA385/タケネートA50、接着剤層厚さ2.5μm)を用いて通常のドライラミネート法で、基材層とヒートシール層を貼合わせ、40℃で3日間エージングして、積層体を作成した。
【0079】
その積層体を用いて、製袋機にてボトムシール温度(底辺部)140以上150℃以下、縦シール温度130℃以上140℃以下、トップシール温度(内容物充填後の密封部)130℃以上140℃以下の温度において、内容物として食塩を1kg詰めた包装袋を60個作成し、60個を1mの高さから落下させて、内容物の漏れ等を確認して破袋率を求めた。破袋率が5%以下であれば「〇」とし、5%を超えると「×」として評価した。
【0080】
(10)製袋速度
上記(9)の破袋率を求める際の製袋条件において、1分間に内容物として食塩を1kg詰めた包装袋ができる個数を製袋速度spm(shots per minute)として評価した。
【0081】
(11)ヒートシール強度
(9)項で作成した積層体のヒートシール層どうしを重ねて135℃でヒートシールしたサンプルを、オリエンテック社製テンシロンを使用して、300mm/分の剥離速度でヒートシール強度を測定した。本測定法で23℃でのヒートシール強度が15N/15mm以上であれば「〇」とし、15N/15mm未満であれば「×」として評価した。
【0082】
本発明において用いた各種原料組成と原料処方について下記する。また、その原料処方によるポリプロピレン系フィルムの特性と包装袋の特性を表1にまとめて記した。
【0083】
(1)ポリプロピレン(a1)
MFR:2.2g/10min
CXS量:0.5質量%
メソペンタンド分率:96%
酸化防止剤:“Ir g a n o x ”(登録商標)1 0 1 0を2000ppmと“Irgafos”(登録商標)168を2000ppm含有
融点(Tm):164℃
【0084】
(2)ポリプロピレン(a2)
MFR:2.5g/10min
CXS量:4.5質量%
メソペンタンド分率:92%
融点(Tm):162℃
酸化防止剤:“Ir g a n o x ”(登録商標)1 0 1 0を2000ppmと“Irgafos”(登録商標)168を2000ppm含有
【0085】
(3)エチレン・プロピレンブロック共重合体(a3)
MFR:2.0g/10min
CXS量:12.0質量%
メソペンタンド分率:92%
融点(Tm):162℃
酸化防止剤:“Ir g a n o x ”(登録商標)1 0 1 0を2000ppmと“Irgafos”(登録商標)168を2000ppm含有
【0086】
(4)エチレン・プロピレンランダム共重合体(a4)
エチレン含量:4質量%
MFR:3.0g/10min。
融点(Tm):142℃
酸化防止剤:“Ir g a n o x ”(登録商標)1 0 1 0を2000ppmと“Irgafos”(登録商標)168を300ppm含有
無機粒子:1.5質量%
【0087】
(5)エチレン・プロピレンランダム共重合体(a5)
エチレン含量:6質量%
MFR:3.0g/10min。
融点(Tm):132℃
酸化防止剤:“Ir g a n o x ”(登録商標)1 0 1 0を2000ppmと“Irgafos”(登録商標)168を300ppm含有
無機粒子:1.5質量%
【0088】
(6)ポリエチレン(b1)
ブテン共重合の直鎖状低密度ポリエチレン
MFR:2.2g/10min
密度:0.921g/cm3
融点:123℃
【0089】
(7)ポリエチレン(b2)
高密度ポリエチレン
MFR:1.1g/10min
密度:0.950g/cm3
融点:132℃
【0090】
(8)エチレン・プロピレン共重合体エラストマー(c1)
三井化学株式会社製“タフマー”(登録商標)
MFR:5.0g/10min
エチレン量:74質量%
【0091】
(9)エチレン・ブテン共重合体エラストマー(c2)
三井化学株式会社製“タフマー”(登録商標)
MFR:6.5g/10min
エチレン量:85質量%
【0092】
(10)滑剤マスターバッチ(d1)
(4)のポリプロピレン-エチレンランダム共重合体(a4):95質量%
エルカ酸アミド:5質量%
MFR:10g/10min
【0093】
[実施例1]
基材層として、ポリプロピレン(a1)を単軸の溶融押出機に供給し、溶融温度260℃で溶融押出を行い、30℃に表面温度を制御したキャスティングドラムに吐出して未延伸シートを得た。続いて、該シートを145℃ に予熱し、周速差を設けたロール間でフィルムの長手方向に4.5倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、170℃で予熱後、165℃で8.0倍に延伸し、幅方向に10%の弛緩を与えながら165℃で熱処理を行い、その後100℃の冷却工程を経て、片面にコロナ放電処理をして、厚み20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0094】
ヒートシール層として、ポリプロピレン-エチレンランダム共重合体(a4)89.5質量%、エチレン・プロピレン共重合体エラストマー(c1)10質量%、滑剤マスターバッチ(d1)0.5質量%を混合して、260℃に温調された二軸押出機に供給して溶融混練し、次いで250℃でTダイより60m/分で押出し、45℃の冷却ロールに接触させて冷却・固化させた後、片面をコロナ放電処理して、厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0095】
上記基材層の二軸延伸ポリプロピレンフィルムと無延伸ポリプロピレンフィルムを、脂肪族エステル系接着剤(三井化学(株)製タケラックA385/タケネートA50、接着剤層厚さ2.5μm)を用いて、上記通常のドライラミネート法で貼合わせた後、40℃で3日間エージングして積層体を作成した。
【0096】
上記積層体を用いて、製袋機にてボトムシール温度(底辺部)145℃、縦シール温度135℃、トップシール温度(内容物充填後の密封部)135℃の温度で、内容物として食塩を1kg詰めた包装袋を作成した。
【0097】
このとき、得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの特性と、および無延伸ポリプロピレンフィルムの特性と、製袋性、包装袋の特性を表1に示した。
【0098】
上記二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、100℃での長手方向および幅方向の弾性率が500MPa以上で、無延伸ポリプロピレンフィルムの赤外吸光光度法による719cm-1のピークを973cm-1のピークで除した値が0.25であり、該ヒートシール層どうしを重ねて135℃でヒートシールしたときのヒートシール強度が25N/15mmであり、130℃での熱収縮率が5%以下であり、製袋速度も45spmが得られ、内容物として食塩1kg詰めた製袋品の破袋率は0%で、本発明の要求特性を全て満たしていた。
【0099】
[実施例2]
ヒートシール層として、ポリプロピレン-エチレンランダム共重合体(a5)89.5質量%、エチレン・プロピレン共重合体エラストマー(c1)10質量%、滑剤マスターバッチ(d1)0.5質量%を混合した以外は、実施例1と同様にして厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0100】
上記無延伸ポリプロピレンフィルムを用いて、実施例1と同様にして2層積層体を得た。得られた上記積層体と包装袋を実施例1と同様に評価した結果を表1に示した。ヒートシール層の無延伸ポリプロピレンフィルムの赤外吸光光度法による719cm-1のピークを973cm-1のピークで除した値が0.3であり、該ヒートシール層どうしを重ねて135℃でヒートシールしたときのヒートシール強度が23N/15mmであり、130℃での熱収縮率が5%以下であり、製袋速度も45spmが得られ、内容物として食塩1kg詰めた製袋品の破袋率は0%で、本発明の要求特性を全て満たしていた。
【0101】
[実施例3、4]
実施例3では、ヒートシール層としてポリプロピレン(a1)用いて、実施例1と同様にして厚さを50μmの無延伸ポリプロピレンフィルムとし、実施例4では、ヒートシール層としてポリプロピレン(a1)用いて、実施例1と同様にして厚さを70μmの無延伸ポリプロピレンフィルムとした以外は、実施例1同様に基材層と積層して2層積層体を得た。
【0102】
得られた上記積層体と包装袋を実施例1と同様に評価した結果を表1に示した。該ヒートシール層どうしを重ねて135℃でヒートシールしたときのヒートシール強度が15N/15mm以上であり、130℃での熱収縮率が5%以下であり、製袋速度も45spmが得られ、内容物として食塩1kg詰めた製袋品の破袋率は5%以下で、本発明の要求特性を全て満たしていた。
【0103】
[実施例5]
基材層の二軸延伸ポリプロピレンフィルムとして、市販の東洋紡(株)製二軸延伸ポリプロピレンフィルム(パイレンフィルム-OT(登録商標))P2171の厚さ20μmのフィルムを用いた以外は実施例1同様にして2層積層体を得た。
【0104】
得られた上記積層体と包装袋を実施例1と同様に評価した結果を表1に示した。上記二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、100℃での長手方向および幅方向の弾性率が500MPa以上で、ヒートシール層の無延伸ポリプロピレンフィルムの赤外吸光光度法による719cm-1のピークを973cm-1のピークで除した値が0.25であり、該ヒートシール層どうしを重ねて135℃でヒートシールしたときのヒートシール強度が15N/15mm以上であり、130℃での熱収縮率が5%以下であり、製袋速度も45spmが得られ、内容物として食塩1kg詰めた製袋品の破袋率は5%以下で、本発明の要求特性を全て満たしていた。
【0105】
[比較例1]
基材層として、ポリプロピレン(a2)を用いた以外は、実施例1と同様にして厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。上記二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いて、実施例1のヒートシール層の無延伸ポリプロピレンフィルムと実施例1同様にして積層して2層積層体を得た。
【0106】
得られた上記積層体と包装袋を実施例1と同様に評価した結果を表1に示した。基材層の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの100℃での長手方向(MD)の弾性率が500MPa未満で、積層体の幅方向の130℃での熱収縮率が5%以上であるため、製袋時の寸法変化およぶ変形が大きく、そのため、結果、ヒートシール強度が15N/15mm未満となり、製袋速度が40spm未満となり、生産性に劣ったものであった。
【0107】
[比較例2]
ヒートシール層として、プロピレン・エチレンブロック共重合体(a3)85質量%、高密度ポリエチレン(b2)5質量%、エチレン・プロピレン共重合体エラストマー(c1)10質量%を混合した以外は、実施例1と同様にして厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを得た。上記無延伸ポリプロピレンフィルムを用いて、実施例1と同様にして2層積層体を得た。
【0108】
得られた上記積層体と包装袋を実施例1と同様に評価した結果を表1に示した。ヒートシール層の無延伸ポリプロピレンフィルム融点が162℃で、赤外吸光光度法による719cm-1のピークを973cm-1のピークで除した値が0.5であり、該ヒートシール層どうしを重ねて135℃でヒートシールしたときのヒートシール強度が10N/15mmと低く、内容物として食塩1kg詰めた製袋品の破袋率が10%となって、本発明の目的を外れるものであった。
【0109】
[比較例3]
実施例1のヒートシール層の無延伸ポリプロピレンフィルムの厚さを40μmとした以外は、実施例1と同様にして2層積層体を得た。得られた上記積層体と包装袋を実施例1と同様に評価した結果を表1に示した。ヒートシール層の厚さが薄いため、該ヒートシール層どうしを重ねて135℃でヒートシールしたときのヒートシール強度が12N/15mmと低く、内容物として食塩1kg詰めた製袋品の破袋率が8%となって、本発明の目的を外れるものであった。
【0110】
[比較例4]
ヒートシール層として、エチレン・プロピレンランダム共重合体(a4)40質量%、低密度ポリエチレン(b1)60質量%を混合した以外は、実施例1同様にして厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを得た。上記無延伸ポリプロピレンフィルムを用いて、実施例1と同様にして2層積層体を得た。
【0111】
得られた上記積層体と包装袋を実施例1と同様に評価した結果を表1に示した。ヒートシール層の融点が123℃で、ヒートシール層の無延伸ポリプロピレンフィルムの赤外吸光光度法による719cm-1のピークを973cm-1のピークで除した値が0.6であり、ヒートシール層どうしのブロッキングが高くて製袋性が悪く、また、内容物として食塩1kg詰めた製袋品の破袋率が6%となって、本発明の目的を外れるものであった。
【0112】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、環境を配慮して同系の素材を用いた食品包装用の包装袋として、同一基材において、耐熱性、耐衝撃性、低温ヒートシール性に優れ、従来の包装袋同様の製袋性に優れた乾物包装用積層体およびそれを用いた乾物用包装袋を提供することができる。