(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152243
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】船外機および船舶
(51)【国際特許分類】
B63H 20/14 20060101AFI20241018BHJP
B63H 20/20 20060101ALI20241018BHJP
F16H 3/44 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B63H20/14 100
B63H20/20 100
F16H3/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066310
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 吉彦
【テーマコード(参考)】
3J528
【Fターム(参考)】
3J528EB42
3J528EB62
3J528EB74
3J528FC13
3J528FC23
3J528GA22
3J528HA13
3J528JA01
3J528JE02
3J528JF01
3J528JG02
3J528JH01
(57)【要約】
【課題】シフト機構に中間ギヤを要しない船外機。
【解決手段】船外機は、駆動源と、プロペラと、前後方向に延伸し、プロペラとともに回転するプロペラ軸と、駆動源の駆動力をプロペラ軸に伝達するシフト機構とを備える。シフト機構は、上下方向に略平行な第1の仮想軸の周りに配置された第1アセンブリであって、少なくとも駆動源の駆動力によって回転する入力軸を含む第1アセンブリと、上下方向に略平行な第2の仮想軸の周りに配置された第2アセンブリと、第1アセンブリと第2アセンブリとの間で動力の伝達を行う歯車伝動機構であって、第1の仮想軸の周りを回転する第1の歯車と、第1の歯車に噛み合い、第2の仮想軸の周りを回転する第2の歯車とから構成される歯車伝動機構と、第1アセンブリと第2アセンブリとの間で動力の伝達を行う巻き掛け伝動機構と、歯車伝動機構および巻き掛け伝動機構の動力伝達の入り切りを切り替える切替機構とを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船外機であって、
駆動源と、
プロペラと、
前後方向に延伸し、前記プロペラとともに回転するプロペラ軸と、
前記駆動源の駆動力を前記プロペラ軸に伝達するシフト機構であって、
上下方向に略平行な第1の仮想軸の周りに配置された第1アセンブリであって、少なくとも前記駆動源の駆動力によって回転する入力軸を含む第1アセンブリと、
上下方向に略平行な第2の仮想軸の周りに配置された第2アセンブリと、
前記第1アセンブリと前記第2アセンブリとの間で動力の伝達を行う歯車伝動機構であって、前記第1の仮想軸の周りを回転する第1の歯車と、前記第1の歯車に噛み合い、前記第2の仮想軸の周りを回転する第2の歯車とから構成される歯車伝動機構と、
前記第1アセンブリと前記第2アセンブリとの間で動力の伝達を行う巻き掛け伝動機構と、
前記歯車伝動機構および前記巻き掛け伝動機構の動力伝達の入り切りを切り替える切替機構と、を有するシフト機構と、
を備える、船外機。
【請求項2】
請求項1に記載の船外機であって、
前記第1アセンブリは、
前記入力軸と、
第1のクラッチと、
第1の回転体であって、前記第1のクラッチが固定されることによって前記入力軸の回転が伝達され、前記第1の仮想軸の周りを回転する第1の回転体と、を含み、
前記第2アセンブリは、
第2のクラッチと、
第2の回転体であって、前記第2のクラッチが固定されることによって、前記入力軸の回転が伝達され、前記第2の仮想軸の周りを回転する第2の回転体と、を含む、船外機。
【請求項3】
請求項2に記載の船外機であって、
前記第2の回転体は、前記プロペラ軸に動力を伝達する出力軸である、船外機。
【請求項4】
請求項3に記載の船外機であって、
前記切替機構は、
前記第1のクラッチを固定することによって、前記入力軸の回転を、前記歯車伝動機構と前記巻き掛け伝動機構との一方を介して前記出力軸に伝達し、
前記第2のクラッチを固定することによって、前記入力軸の回転を、前記歯車伝動機構と前記巻き掛け伝動機構との他方を介して前記出力軸に伝達する、船外機。
【請求項5】
請求項4に記載の船外機であって、
前記第1のクラッチと、前記第2のクラッチとは、油圧クラッチである、船外機。
【請求項6】
請求項3に記載の船外機であって、
前記第1アセンブリは、さらに、
第3のクラッチと、
前記入力軸の下方に配置された遊星歯車機構であって、
前記入力軸に接続された内歯歯車と、
太陽歯車と、
前記第1の回転体に接続された遊星歯車であって、前記第3のクラッチが固定されることによって前記太陽歯車と固定される遊星歯車と、
前記第1のクラッチが固定されることによって前記太陽歯車を固定する固定部と、を有する遊星歯車機構と、を備える、船外機。
【請求項7】
請求項6に記載の船外機であって、
前記切替機構は、
第1の状態であって、前記第1のクラッチを固定することによって、前記内歯歯車が前記入力軸の回転に伴って回転し、前記遊星歯車が前記固定部に固定された前記太陽歯車の周りを公転するとともに、前記入力軸の回転を、前記第1の回転体と、前記歯車伝動機構と前記巻き掛け伝動機構との一方とを介して前記出力軸に伝達する第1の状態と、
第2の状態であって、前記第3のクラッチを固定することによって、前記内歯歯車が前記入力軸の回転に伴って回転し、前記内歯歯車と前記太陽歯車と前記遊星歯車とが一体となって回転するとともに、前記入力軸の回転を、前記第1の回転体と、前記歯車伝動機構と前記巻き掛け伝動機構との一方とを介して前記出力軸に伝達する第2の状態と、の間で切り替える、船外機。
【請求項8】
請求項7に記載の船外機であって、
前記切替機構は、前記第2のクラッチを固定することによって、前記入力軸の回転を、前記歯車伝動機構と前記巻き掛け伝動機構との他方を介して前記出力軸に伝達する、船外機。
【請求項9】
請求項8に記載の船外機であって、
前記第1のクラッチと、前記第2のクラッチと、前記第3のクラッチとは、油圧クラッチである、船外機。
【請求項10】
請求項2に記載の船外機であって、さらに、
前記第1の回転体の回転に伴って前記第1の仮想軸の周りを回転する出力軸を備える、船外機。
【請求項11】
請求項10に記載の船外機であって、
前記第1アセンブリは、さらに、
第3のクラッチと、
前記入力軸の下方に配置された遊星歯車機構であって、
前記入力軸に接続された内歯歯車と、
太陽歯車と、
前記第1の回転体に接続された遊星歯車であって、前記第3のクラッチが固定されることによって前記太陽歯車と固定される遊星歯車と、
前記第1のクラッチが固定されることによって前記太陽歯車を固定する固定部と、を有する遊星歯車機構と、を備える、船外機。
【請求項12】
請求項11に記載の船外機であって、
前記切替機構は、
第1の状態であって、前記第1のクラッチを固定することによって、前記内歯歯車が前記入力軸の回転に伴って回転し、前記遊星歯車が前記固定部に固定された前記太陽歯車の周りを公転するとともに、前記入力軸の回転を、前記第1の回転体を介して前記出力軸に伝達する第1の状態と、
第2の状態であって、前記第3のクラッチを固定することによって、前記内歯歯車が前記入力軸の回転に伴って回転し、前記内歯歯車と前記太陽歯車と前記遊星歯車とが一体となって回転するとともに、前記入力軸の回転を、前記第1の回転体を介して前記出力軸に伝達する第2の状態と、の間で切り替える、船外機。
【請求項13】
請求項12に記載の船外機であって、
前記切替機構は、前記第2のクラッチを固定することによって、前記入力軸の回転を、前記第2の回転体と前記歯車伝動機構と前記巻き掛け伝動機構とを介して前記出力軸に伝達する、船外機。
【請求項14】
請求項13に記載の船外機であって、
前記第1のクラッチと、前記第2のクラッチと、前記第3のクラッチとは、油圧クラッチである、船外機。
【請求項15】
請求項1に記載の船外機であって、
前記第1の歯車と前記第2の歯車とは、はすば歯車である、船外機。
【請求項16】
請求項1に記載の船外機であって、
前記巻き掛け伝動機構は、
前記第1アセンブリの周りに設けられた第1のスプロケットと、
前記第2アセンブリの周りに設けられた第2のスプロケットと、
前記第1のスプロケットおよび前記第2のスプロケットに噛み合うチェーンと、を含む、船外機。
【請求項17】
請求項3に記載の船外機であって、さらに、
前記駆動源の駆動力によって駆動する被駆動機を備え、
前記第2アセンブリは、前記第1アセンブリの後方に配置され、
前記被駆動機は、前記入力軸よりも下方、かつ、前記出力軸よりも前方に配置される、船外機。
【請求項18】
船舶であって、
船体と、
前記船体の後部に取り付けられた請求項1から請求項17までのいずれか一項に記載の船外機と、
を備える、船舶。
【請求項19】
船外機であって、
駆動源と、
プロペラと、
前後方向に延伸し、前記プロペラとともに回転するプロペラ軸と、
前記駆動源の駆動力を前記プロペラ軸に伝達するシフト機構であって、
上下方向に略平行な第1の仮想軸の周りに配置された第1アセンブリであって、少なくとも前記駆動源の駆動力によって回転する入力軸を含む第1アセンブリと、
上下方向に略平行な第2の仮想軸の周りに配置された第2アセンブリと、
前記第1アセンブリと前記第2アセンブリとの間で動力の伝達を行う巻き掛け伝動機構と、
前記巻き掛け伝動機構の動力伝達の入り切りを切り替える切替機構と、を有するシフト機構と、
を備える、船外機。
【請求項20】
船舶であって、
船体と、
前記船体の後部に取り付けられた請求項19に記載の船外機と、
を備える、船舶。
【請求項21】
船外機であって、
駆動源と、
プロペラと、
前後方向に延伸し、前記プロペラとともに回転するプロペラ軸と、
前記駆動源の駆動力を前記プロペラ軸に伝達するシフト機構であって、
上下方向に略平行な第1の仮想軸の周りに配置された第1アセンブリであって、少なくとも前記駆動源の駆動力によって回転する入力軸を含む第1アセンブリと、
上下方向に略平行な第2の仮想軸の周りに配置された第2アセンブリと、
前記第1アセンブリと前記第2アセンブリとの間で動力の伝達を行う歯車伝動機構であって、前記第1の仮想軸の周りを回転する第1の歯車と、前記第1の歯車に噛み合い、前記第2の仮想軸の周りを回転する第2の歯車とから構成される歯車伝動機構と、
前記第1アセンブリと前記第2アセンブリとの間で動力の伝達を行う伝動機構であって、前記第1の仮想軸の周りを回転する第3の歯車と、前記第3の歯車と離間して配置され、前記第2の仮想軸の周りを回転する第4の歯車と、を含み、前記第1アセンブリと前記第2アセンブリとを同じ方向に回転させる伝動機構と、
前記歯車伝動機構および前記伝動機構の動力伝達の入り切りを切り替える切替機構と、を有するシフト機構と、
被駆動機と、
前記被駆動機に前記駆動源の駆動力を伝達する被駆動機用軸であって、前記第3の歯車と前記第4の歯車とのいずれか一方、または両方が回転することに伴って駆動する被駆動機用軸と、
を備える、船外機。
【請求項22】
船舶であって、
船体と、
前記船体の後部に取り付けられた請求項21に記載の船外機と、
を備える、船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、船外機および船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶は、船体と、船体の後部に取り付けられた船外機とを備える。船外機は、船舶を推進させる推力を生み出す装置である。船外機は、駆動源と、プロペラと、プロペラとともに回転するプロペラ軸と、駆動源の駆動力をプロペラ軸に伝達するシフト機構とを備える。
【0003】
従来、エンジンと、プロペラ駆動用の下部ギヤ機構と、エンジンと下部ギヤ機構との間に配置された変速装置と、エンジンから変速装置に動力を伝達する入力軸と、変速装置から下部ギヤ機構に動力を伝達する出力軸とを備える船外機が開示されている(例えば、特許文献1参照)。上記先行技術では、変速装置は、前進軸および後進軸を備えており、前進軸と、後進軸と、互いに同軸上に並ぶ入力軸および出力軸とが、互いに並列に並ぶ3軸構成を有し、各軸がギヤによって係合している。具体的には、入力軸と出力軸とは、同一の軸上に離間して配置され、それらに対して前進軸と後進軸とがそれぞれ並列している。各軸には、それぞれクラッチおよび中間ギヤが設けられ、各軸間での動力の伝達を切り替えることによって前進と後進とを切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記先行文献では、入力軸と出力軸とが離間して配置され、入力軸と出力軸とは別に前後進の切り替えを行う前進軸および後進軸に並列して配置され、前進軸と後進軸とのそれぞれにクラッチおよび中間ギヤを配置することとなるため、シフト機構または船外機が大型化したり、複雑化したりするおそれがある。
【0006】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示される船外機は、駆動源と、プロペラと、前後方向に延伸し、前記プロペラとともに回転するプロペラ軸と、前記駆動源の駆動力を前記プロペラ軸に伝達するシフト機構とを備える。前記シフト機構は、上下方向に略平行な第1の仮想軸の周りに配置された第1アセンブリであって、少なくとも前記駆動源の駆動力によって回転する入力軸を含む第1アセンブリと、上下方向に略平行な第2の仮想軸の周りに配置された第2アセンブリと、前記第1アセンブリと前記第2アセンブリとの間で動力の伝達を行う歯車伝動機構であって、前記第1の仮想軸の周りを回転する第1の歯車と、前記第1の歯車に噛み合い、前記第2の仮想軸の周りを回転する第2の歯車とから構成される歯車伝動機構と、前記第1アセンブリと前記第2アセンブリとの間で動力の伝達を行う巻き掛け伝動機構と、前記歯車伝動機構および前記巻き掛け伝動機構の動力伝達の入り切りを切り替える切替機構とを有する。
【0009】
本船外機によれば、シフト機構が、第1の仮想軸の周りに配置された第1アセンブリと、第2の仮想軸の周りに配置された第2のアセンブリと、第1アセンブリおよび第2アセンブリとの間で動力の伝達を行う歯車伝動機構と、第1アセンブリおよび第2アセンブリとの間で動力の伝達を行う巻き掛け伝動機構とを有する。そのため、入力軸と出力軸とは別に前後進の切り替えを行う前進軸および後進軸に並列して配置され、前進軸と後進軸とのそれぞれに設けたクラッチおよび中間ギヤを要することなく、前進と後進との切り替えを、入力軸と出力軸とに設けた第1アセンブリと、第2アセンブリとによって行うことが可能となる。
【0010】
(2)本明細書に開示される他の船外機は、駆動源と、プロペラと、前後方向に延伸し、前記プロペラとともに回転するプロペラ軸と、前記駆動源の駆動力を前記プロペラ軸に伝達するシフト機構とを備える。前記シフト機構は、上下方向に略平行な第1の仮想軸の周りに配置された第1アセンブリであって、少なくとも前記駆動源の駆動力によって回転する入力軸を含む第1アセンブリと、上下方向に略平行な第2の仮想軸の周りに配置された第2アセンブリと、前記第1アセンブリと前記第2アセンブリとの間で動力の伝達を行う巻き掛け伝動機構と、前記巻き掛け伝動機構の動力伝達の入り切りを切り替える切替機構とを有する。
【0011】
本船外機によれば、シフト機構が、第1の仮想軸の周りに配置された第1アセンブリと、第2の仮想軸の周りに配置された第2のアセンブリと、第1アセンブリと第2アセンブリとの間で動力の伝達を行う巻き掛け伝動機構とを有する。そのため、入力軸と出力軸とは別に前後進の切り替えを行う前進軸および後進軸に並列して配置され、前進軸と後進軸とのそれぞれに設けたクラッチおよび中間ギヤを要することなく、前進と後進との切り替えを、入力軸と出力軸とに設けた第1アセンブリと、第2アセンブリとによって行うことが可能となる。
【0012】
(3)本明細書に開示される他の船外機は、駆動源と、プロペラと、前後方向に延伸し、前記プロペラとともに回転するプロペラ軸と、前記駆動源の駆動力を前記プロペラ軸に伝達するシフト機構と、被駆動機と、前記被駆動機に前記駆動源の駆動力を伝達する被駆動機用軸とを備える。前記シフト機構は、上下方向に略平行な第1の仮想軸の周りに配置された第1アセンブリであって、少なくとも前記駆動源の駆動力によって回転する入力軸を含む第1アセンブリと、上下方向に略平行な第2の仮想軸の周りに配置された第2アセンブリと、前記第1アセンブリと前記第2アセンブリとの間で動力の伝達を行う歯車伝動機構であって、前記第1の仮想軸の周りを回転する第1の歯車と、前記第1の歯車に噛み合い、前記第2の仮想軸の周りを回転する第2の歯車とから構成される歯車伝動機構と、前記第1アセンブリと前記第2アセンブリとの間で動力の伝達を行う伝動機構であって、前記第1の仮想軸の周りを回転する第3の歯車と、前記第3の歯車と離間して配置され、前記第2の仮想軸の周りを回転する第4の歯車と、を含み、前記第1アセンブリと前記第2アセンブリとを同じ方向に回転させる伝動機構と、前記歯車伝動機構および前記伝動機構の動力伝達の入り切りを切り替える切替機構と、を有する。前記被駆動機用軸は、前記第3の歯車と前記第4の歯車とのいずれか一方、または両方が回転することに伴って駆動する。
【0013】
本船外機によれば、シフト機構が、第1の仮想軸の周りに配置された第1アセンブリと、第2の仮想軸の周りに配置された第2のアセンブリと、第1アセンブリと第2アセンブリとの間で動力の伝達を行う歯車伝動機構と、第1アセンブリと第2アセンブリとの間で動力の伝達を行い、第1アセンブリと第2アセンブリとを同じ方向に回転させる伝動機構とを有する。そのため、入力軸と出力軸とは別に前後進の切り替えを行う前進軸および後進軸に並列して配置され、前進軸と後進軸とのそれぞれに設けたクラッチおよび中間ギヤを要することなく、前進と後進との切り替えを、入力軸と出力軸とに設けた第1アセンブリと、第2アセンブリとによって行うことが可能となる。また、被駆動機用軸がシフト機構に含まれる第3の歯車と第4の歯車とのいずれか一方、または両方が回転することに伴って駆動するため、被駆動機用軸を駆動させるための別体のギヤ機構等を要することなく、被駆動機用軸を駆動することが可能となる。
【0014】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、船外機、船外機と船体とを備える船舶等の形態で実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本明細書に開示される船外機によれば、シフト機構が、第1の仮想軸の周りに配置された第1アセンブリと、第2の仮想軸の周りに配置された第2のアセンブリと、第1アセンブリと第2アセンブリとの間で動力の伝達を行い、第1アセンブリと第2アセンブリとを同じ方向に回転させる伝動機構とを有する。そのため、入力軸と出力軸とは別に前後進の切り替えを行う前進軸および後進軸に並列して配置され、前進軸と後進軸とのそれぞれに設けたクラッチおよび中間ギヤを要することなく、前進と後進との切り替えを、入力軸と出力軸とに設けた第1アセンブリと、第2アセンブリとによって行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の船舶10の構成を概略的に示す斜視図
【
図2】第1実施形態における船外機100の構成を概略的に示す側面図
【
図3】船舶10におけるシフト制御構成を示すブロック図
【
図4】第1実施形態における船舶10の前進状態でのシフト機構300の動力伝達を概略的に示す説明図
【
図5】第1実施形態における船舶10の後進状態でのシフト機構300の動力伝達を概略的に示す説明図
【
図6】第1実施形態における船舶10のニュートラル状態でのシフト機構300の動力伝達を概略的に示す説明図
【
図7】第2実施形態における船外機100aの構成を概略的に示す側面図
【
図8】第2実施形態における船舶10の前進状態でのシフト機構300aの動力伝達を概略的に示す説明図
【
図9】第2実施形態における船舶10の後進状態でのシフト機構300aの動力伝達を概略的に示す説明図
【
図10】第2実施形態における船舶10のニュートラル状態でのシフト機構300の動力伝達を概略的に示す説明図
【
図11】第3実施形態における船外機100bの構成を概略的に示す側面図
【
図12】第3実施形態における船舶10の前進状態でのシフト機構300bの動力伝達を概略的に示す説明図
【
図13】第3実施形態における船舶10の後進状態でのシフト機構300bの動力伝達を概略的に示す説明図
【
図14】第3実施形態における船舶10のニュートラル状態でのシフト機構300bの動力伝達を概略的に示す説明図
【
図15】変形例における船外機100cの構成を概略的に示す側面図
【
図16】変形例におけるシフト機構300cの周辺の構成を概略的に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.第1実施形態:
A-1.船舶10の構成:
図1は、第1実施形態の船舶10の構成を概略的に示す斜視図である。
図1および後述する他の図面には、船舶10の位置を基準とした各方向を表す矢印を示している。各図には、前方(FRONT)、後方(REAR)、左方(LEFT)、右方(RIGHT)、上方(UPPER)および下方(LOWER)のそれぞれを表す矢印を示している。前後方向、左右方向、上下方向(鉛直方向)は、それぞれ互いに直交する方向である。なお、本明細書における前後方向に延びる軸線や部材等は、必ずしも前後方向と平行である必要はない。前後方向に延びる軸線や部材とは、前後方向に対して±45°の範囲で傾斜している軸線や部材を含む。同様に、上下方向に延びる軸線や部材とは、上下方向に対して±45°の範囲で傾斜している軸線や部材を含み、左右方向に延びる軸線や部材とは、左右方向に対して±45°の範囲で傾斜している軸線や部材を含む。
【0018】
船舶10は、船体200と、船外機100とを備える。本実施形態では、船舶10は、1つの船外機100を有するが、船舶10が複数の船外機100を有していてもよい。
【0019】
(船体200の構成)
船体200は、船舶10において乗員が搭乗する部分である。船体200は、居住空間204を有する船体本体部202と、居住空間204に設置された操縦席240と、操縦席240付近に設置された操縦装置250とを有する。操縦装置250は、操船のための装置であり、例えば、ステアリングホイール252と、シフト・スロットルレバー254と、ジョイスティック255と、モニタ256と、入力装置258とを有する。また、船体200は、居住空間204の後端を区画する仕切壁220と、船体200の後端に位置するトランサム210とを有する。前後方向において、トランサム210と仕切壁220との間には空間206が存在している。
【0020】
(船外機100の構成)
図2は、第1実施形態における船外機100の構成を概略的に示す側面図である。以下では、特に断りがない限り、基準姿勢の船外機100について説明する。基準姿勢は、後述するクランクシャフト124の回転軸線Acが上下方向に延伸し、かつ、後述するプロペラ軸137の回転軸線Apが前後方向に延伸する姿勢である。前後方向、左右方向および上下方向のそれぞれは、基準姿勢の船外機100に基づいて定められる。
【0021】
船外機100は、船舶10を推進させる推力を発生する装置である。船外機100は、船体200の後部のトランサム210に取り付けられている。船外機100は、船外機本体110と、懸架装置150とを有する。
【0022】
(船外機本体110の構成)
船外機本体110は、エンジンアセンブリ120と、伝達機構130と、プロペラ112と、カウル114と、ケーシング116と、ウォーターポンプ140と、ポンプシャフト134とを有する。
【0023】
カウル114は、船外機本体110の上部に配置された収容体である。カウル114は、カウル114の下部を構成する下部カウル114bと、カウル114の上部を構成する上部カウル114aとを有する。上部カウル114aは、下部カウル114bに対して、取り外し可能に取り付けられている。
【0024】
ケーシング116は、カウル114の下方に位置し、船外機本体110の下部に配置された収容体である。ケーシング116は、ロワーケース116bと、アッパーケース116aとを有する。ロワーケース116bは、後述の出力軸133の少なくとも一部およびプロペラ軸137を収容している。ロワーケース116bは、出力軸133を中心として回動自在となるように、アッパーケース116aと接続されている。アッパーケース116aは、ロワーケース116bの上部に配置され、シフト機構300を収容している。
【0025】
エンジンアセンブリ120は、カウル114内に収容されている。エンジンアセンブリ120は、エンジン本体122と、フライホイール式マグネット発電機127とを有する。
【0026】
エンジン本体122は、動力を発生する原動機である。エンジン本体122は、例えば内燃機関により構成されている。エンジン本体122は、図示しないピストンの往復運動を回転運動に変換するクランクシャフト124を有する。クランクシャフト124は、その回転軸線Acが上下方向に延伸する姿勢で配置されている。エンジン本体122は、特許請求の範囲における駆動源の一例である。なお、本実施形態の船外機100は、駆動源の一例として内燃機関であるエンジン本体122を備えているが、船外機100は、駆動源として電動モータを備えていてもよいし、内燃機関と電動モータとの両方を備えていてもよい。
【0027】
フライホイール式マグネット発電機127は、エンジン本体122の補機としての交流発電機であり、カウル114内におけるエンジン本体122の上方に収容されている。フライホイール式マグネット発電機127は、フライホイールロータ128と、ステータ129とを有する。フライホイールロータ128は、クランクシャフト124の上端部に連結されており、クランクシャフト124の回転に伴い回転する。
【0028】
伝達機構130は、エンジン本体122の駆動力をプロペラ112に伝達する機構である。伝達機構130の少なくとも一部は、ケーシング116に収容されている。伝達機構130は、シフト機構300と、プロペラ軸137とを有する。
【0029】
プロペラ軸137は、棒状の部材であり、船外機本体110の比較的下方において、前後方向に延伸する姿勢で配置されている。プロペラ軸137は、プロペラ112とともに回転する。プロペラ軸137の前端部は、ロワーケース116bに収容されており、プロペラ軸137の後端部は、ロワーケース116bから後方に突出している。プロペラ軸137の前端部は、ギヤ138を有している。
【0030】
シフト機構300は、エンジン本体122の駆動力をプロペラ軸137に伝達する。シフト機構300は、出力軸133の上方に設けられている。シフト機構300の動作については後に詳述するが、プロペラ軸137の回転方向を切り替え、プロペラ112の回転方向を変えることにより、船舶10を前進状態と後進状態との間で切り替える。
【0031】
プロペラ112は、複数枚の羽根を有する回転体であり、プロペラ軸137の後端部に取り付けられている。プロペラ112は、回転軸線Apまわりのプロペラ軸137の回転に伴って回転する。プロペラ112は、回転することによって推力を発生する。前述のように、ロワーケース116bが回動自在であるため、プロペラ112は、ロワーケース116bの回動に伴って、出力軸133を中心として回動する。そのため、船舶10は、ロワーケース116bを回動させることによって操船が行われる。
【0032】
ウォーターポンプ140は、例えばエンジン本体122を冷却するための水を船外機100の外部から汲み上げる。ポンプシャフト134は、上下方向に延伸している。ポンプシャフト134は、エンジン本体122の駆動力によって駆動し、ウォーターポンプ140に動力を伝達する。ウォーターポンプ140は、ポンプシャフト134によって伝達されるエンジン本体122の駆動力によって駆動する。ウォーターポンプ140は、特許請求の範囲における被駆動機の一例である。ポンプシャフト134は、特許請求の範囲における被駆動機用軸の一例である。
【0033】
(懸架装置150の構成)
懸架装置150は、船外機本体110を船体200に懸架する装置である。懸架装置150は、左右一対のクランプブラケット152と、チルト軸160と、スイベルブラケット156とを含む。
【0034】
左右一対のクランプブラケット152は、船体200の後方に、互いに左右方向に離隔した状態で配置されており、例えばボルトによって船体200のトランサム210に固定されている。各クランプブラケット152は、左右方向に延伸する貫通孔が形成された筒状の支持部152aを有する。
【0035】
チルト軸160は、棒状の部材であり、クランプブラケット152の支持部152aの貫通孔内に回転可能に支持されている。チルト軸160の中心線であるチルト軸線Atは、船外機100のチルト動作における水平方向(左右方向)の軸線を構成する。
【0036】
スイベルブラケット156は、一対のクランプブラケット152に挟まれるように配置されており、チルト軸線Atまわりに回転可能に、チルト軸160を介してクランプブラケット152の支持部152aに支持されている。スイベルブラケット156は、例えば油圧シリンダ等のアクチュエータを含むチルト装置(図示せず)により、クランプブラケット152に対してチルト軸線Atまわりに回転駆動される。
【0037】
スイベルブラケット156がクランプブラケット152に対してチルト軸線Atまわりに回転すると、スイベルブラケット156に支持された船外機本体110もチルト軸線Atまわりに回転する。これにより、船体200に対して船外機本体110を上下方向に回転させるチルト動作が実現される。船外機100のチルト動作により、プロペラ112が水中に位置するチルトダウン状態(船外機100が基準姿勢にある状態)からプロペラ112が水面より上側に位置するチルトアップ状態までの範囲で、船外機本体110のチルト軸線Atまわりの角度を変更することができる。なお、船外機本体110のチルト軸線Atまわりの角度を調整して船舶10の走行時の姿勢を調整するトリム動作も実行することができる。
【0038】
A-2.シフト機構300による船舶10のシフト制御:
(船舶10のシフト制御構成)
図3は、船舶10におけるシフト制御構成を示すブロック図である。船舶10は、コントローラ(制御装置)180と、切替機構190とを備えている。
【0039】
コントローラ180は、例えば、CPU、マルチコアCPU、プログラマブルなデバイス(Field Programmable Gate Array(FPGA)、Programmable Logic Device(PLD)等)を用いて構成される。
【0040】
切替機構190は、シフト機構300に含まれており、例えば油圧等によって、後述する第1のクラッチ331や第2のクラッチ332といった船外機100の各部の構成を機械的に制御する。
【0041】
コントローラ180は、乗員によるシフト・スロットルレバー254の操作に基づいて切替機構190の動作を制御する。切替機構190は、第1のクラッチ331や第2のクラッチ332を動作させることにより、後述の巻き掛け伝動機構310および後述の歯車伝動機構320の動力伝達の入り切りを切り替え、船舶10のシフト制御を行う。
【0042】
(シフト機構300の詳細構成)
図4は、第1実施形態における船舶10の前進状態でのシフト機構300の動力伝達を概略的に示す説明図である。
図5は、第1実施形態における船舶10の後進状態でのシフト機構300の動力伝達を概略的に示す説明図である。
図6は、第1実施形態における船舶10のニュートラル状態でのシフト機構300の動力伝達を概略的に示す説明図である。
【0043】
第1実施形態におけるシフト機構300は、ハウジング304と、第1アセンブリ301と、第2アセンブリ302と、巻き掛け伝動機構310と、歯車伝動機構320と、前述の切替機構190とを有する。
【0044】
ハウジング304は、シフト機構300を構成する部品の少なくとも一部を収容する収容体である。
【0045】
第1アセンブリ301は、上下方向に略平行な第1の仮想軸VA1の周りに配置された部品の集合体である。第1アセンブリ301は、入力軸132と、第1のクラッチ331と、第1のピストン335と、第1の回転体341とを含む。また、第1アセンブリ301を構成する少なくとも一部の部品には、第1のピストン335を動作させるために用いられるオイルの流路である第1の流路351が形成されている。
【0046】
入力軸132は、上下方向に延伸する棒状の部材である。入力軸132の上端部は、エンジン本体122におけるクランクシャフト124の下端部と機械的に接続されており、エンジン本体122との接続部から下方に延伸している。入力軸132は、エンジン本体122の駆動力によって、クランクシャフト124とともに回転する。
【0047】
第1の回転体341は、入力軸132の周りに配置され、第1の仮想軸VA1の周りを回転する回転体である。
【0048】
第1のクラッチ331および第1のピストン335は、入力軸132の周りに配置されている。第1のピストン335は、第1の流路351を介して供給されるオイルの油圧によって動作し、第1のクラッチ331の固定と切り離しとを切り替える。すなわち、第1のクラッチ331は、油圧クラッチである。第1のクラッチ331が固定されることにより、後述の第1のスプロケット311と第1の回転体341が接続される。
【0049】
第2アセンブリ302は、第1の仮想軸VA1よりも後方、かつ、上下方向に略平行な第2の仮想軸VA2の周りに配置された部品の集合体である。第2アセンブリ302は、出力軸133と、第2のクラッチ332と、第2のピストン336とを含む。また、第2アセンブリ302を構成する少なくとも一部の部品には、第2のピストン336を動作させるために用いられるオイルの流路である第2の流路352が形成されている。
【0050】
出力軸133は、プロペラ軸137に動力を伝達する棒状の部材である。出力軸133の下部は、ハウジング304から突出している。出力軸133の下端部は、ギヤ135を有している。出力軸133は、出力軸133のギヤ135とプロペラ軸137のギヤ138とが噛み合うことによって、プロペラ軸137と機械的に接続されている。出力軸133は、プロペラ軸137との接続部から上方に向かって延伸している。出力軸133は、入力軸132よりも後方に入力軸132と離間して配置されている。出力軸133は、第2の回転体の一例である。
【0051】
第2のクラッチ332および第2のピストン336は、出力軸133の周りに配置されている。第2のクラッチ332が固定されることにより、後述の第2のスプロケット312と出力軸133とが接続される。第2のピストン336は、第2の流路352を介して供給されるオイルの油圧によって動作し、第2のクラッチ332の固定と切り離しとを切り替える。すなわち、第2のクラッチ332は、油圧クラッチである。
【0052】
歯車伝動機構320は、第1アセンブリ301と第2アセンブリ302との間での動力の伝達を行う。歯車伝動機構320は、第1の歯車321と、第2の歯車322とから構成されている。第1の歯車321と第2の歯車322とは、はすば歯車である。
【0053】
第1の歯車321は、第1の回転体341の外周に取り付けられており、第1の回転体341とともに第1の仮想軸VA1の周りを回転する。第2の歯車322は、出力軸133の外周に取り付けられており、第1の歯車321に噛み合い、出力軸133とともに第2の仮想軸VA2の周りを回転する。第1の歯車321と第2の歯車322とが噛み合っているため、第1の歯車321と第2の歯車322との一方が回転することにより、第1の歯車321と第2の歯車322との他方も回転する。歯車伝動機構320による動力の伝達では、第1アセンブリ301と第2アセンブリ302とを互いに反対の方向に回転させる。
【0054】
巻き掛け伝動機構310は、歯車伝動機構320に対して上方に配置されており、第1アセンブリ301と第2アセンブリ302との間での動力の伝達を行う。巻き掛け伝動機構310は、第1のスプロケット311と、第2のスプロケット312と、チェーン314とを含む。巻き掛け伝動機構310は、特許請求の範囲における伝動機構の一例である。第1のスプロケット311は、特許請求の範囲における第3の歯車の一例である。第2のスプロケット312は、第4の歯車の一例である。
【0055】
第1のスプロケット311は、入力軸132の周りに設けられている。第1のスプロケット311は、入力軸132とともに第1の仮想軸VA1の周りを回転する。第2のスプロケット312は、出力軸133の周りに設けられている。第2のスプロケット312は、第1のスプロケット311と離間して配置され、出力軸133とともに第2の仮想軸VA2の周りを回転する。チェーン314は、第1のスプロケット311および第2のスプロケット312の双方に噛み合う。チェーン314が第1のスプロケット311と第2のスプロケット312との双方に噛み合っているため、第1のスプロケット311と第2のスプロケット312との一方が回転することにより、第1のスプロケット311と第2のスプロケット312との他方も回転する。巻き掛け伝動機構310による動力の伝達では、第1アセンブリ301と第2アセンブリ302とを互いに同じ方向に回転させる。
【0056】
(船舶10の前進時におけるシフト制御方法)
図4を参照しつつ、船舶10の前進時におけるシフト機構300の動力伝達について説明する。
図4には、入力軸132から伝達される動力の伝達経路(太矢印)と、入力軸132からの動力を受けた各構成要素の回転方向(細矢印)とが矢印によって示されている。
【0057】
まず、切替機構190は、第1の流路351を介して第1のピストン335にオイルを供給することにより、第1のクラッチ331を固定させる。第1のクラッチ331が固定されることによって、第1のスプロケット311と第1の回転体341とが接続される。第1のスプロケット311は、入力軸132の回転に伴って回転する。入力軸132の回転は、第1のスプロケット311を介して第1の回転体341に伝達され、第1の回転体341は、第1の仮想軸VA1の周りを回転する。第1の回転体341の回転に伴って、第1の歯車321が回転する。第1の歯車321が回転することにより、第2の歯車322が回転し、第2の歯車322の回転に伴って、出力軸133が回転する(すなわち、歯車伝動機構320による第1アセンブリ301から第2アセンブリ302への動力の伝達が起こる)。出力軸133の回転は、プロペラ軸137に伝達され、船舶10を前進させる推力を発生させる。
【0058】
なお、前進時においては、切替機構190は、第2のクラッチ332を切り離す。つまり、第2のスプロケット312と出力軸133とが接続されない。これにより、入力軸132の回転に伴って第1のスプロケット311が回転し、チェーン314を介して第2のスプロケット312が回転したとしても、第2のスプロケット312の回転は出力軸133に伝達されない。そのため、巻き掛け伝動機構310による第1アセンブリ301から第2アセンブリ302への動力の伝達は起こらない。
【0059】
(船舶10の後進時におけるシフト制御方法)
図5を参照しつつ、船舶10の後進時におけるシフト機構300の動力伝達について説明する。
図5には、入力軸132から伝達される動力の伝達経路(太矢印)と、入力軸132からの動力を受けた各構成要素の回転方向(細矢印)とが矢印によって示されている。
【0060】
まず、切替機構190は、第2の流路352を介して第2のピストン336にオイルを供給することにより、第2のクラッチ332を固定させる。第2のクラッチ332が固定されることによって、第2のスプロケット312と出力軸133とが接続される。第1のスプロケット311は、入力軸132の回転に伴って回転する。入力軸132の回転が第1のスプロケット311に伝達されると、チェーン314を介して第2のスプロケット312が回転し、第2のスプロケット312の回転に伴って、出力軸133が第2の仮想軸VA2の周りを回転する(すなわち、巻き掛け伝動機構310による第1アセンブリ301から第2アセンブリ302への動力の伝達が起こる)。出力軸133の回転は、プロペラ軸137に伝達され、船舶10を後進させる推力を発生させる。
【0061】
なお、後進時においては、切替機構190は、第1のクラッチ331を切り離す。つまり、第1のスプロケット311と第1の回転体341とが接続されない。これにより、入力軸132の回転に伴って第1のスプロケット311が回転したとしても、第1のスプロケット311の回転は第1の回転体341に伝達されない。そのため、歯車伝動機構320による第1アセンブリ301から第2アセンブリ302への動力の伝達は起こらない。
【0062】
(船舶10のニュートラル時におけるシフト制御方法)
図6を参照しつつ、船舶10のニュートラル時におけるシフト機構300の動力伝達について説明する。
図6には、入力軸132から伝達される動力の伝達経路(太矢印)と、入力軸132からの動力を受けた各構成要素の回転方向(細矢印)とが矢印によって示されている。
【0063】
まず、切替機構190は、第1のピストン335および第2のピストン336へのオイルの供給を停止し、第1のクラッチ331および第2のクラッチ332を切り離す。第1のクラッチ331が切り離されることによって、第1のスプロケット311と第1の回転体341とが接続されない。これにより、入力軸132の回転に伴って第1のスプロケット311が回転したとしても、第1のスプロケット311の回転は第1の回転体341に伝達されない。そのため、歯車伝動機構320による第1アセンブリ301から第2アセンブリ302への動力の伝達は起こらない。また、第2のクラッチ332が切り離されることによって、第2のスプロケット312と出力軸133とが接続されない。これにより、入力軸132の回転に伴って第1のスプロケット311が回転し、チェーン314を介して第2のスプロケット312が回転したとしても、第2のスプロケット312の回転は出力軸133に伝達されない。そのため、巻き掛け伝動機構310による第1アセンブリ301から第2アセンブリ302への動力の伝達は起こらない。このように、入力軸132の回転が、巻き掛け伝動機構310と歯車伝動機構320とのいずれによっても出力軸133に伝達されないため、入力軸132の回転がプロペラ軸137に伝達されない。
【0064】
以上に説明したように、切替機構190は、船舶10の前進時には、入力軸132の回転を、巻き掛け伝動機構310と歯車伝動機構320との一方である歯車伝動機構320を介して出力軸133に伝達する(つまり、入力軸132と出力軸133とが、互いに反対の方向に回転する)。また、切替機構190は、船舶10の後進時には、入力軸132の回転を、巻き掛け伝動機構310と歯車伝動機構320との他方である巻き掛け伝動機構310を介して出力軸133に伝達する(つまり、入力軸132と出力軸133とが、互いに同じ方向に回転する)。また、切替機構190は、船舶10のニュートラル時には、入力軸132の回転を、出力軸133に伝達しない。これにより、船舶10の前進状態、後進状態およびニュートラル状態が切り替えられ、船舶10のシフト制御が実現される。
【0065】
なお、第1実施形態では、第1の仮想軸VA1上にポンプシャフト134が配置されている。ポンプシャフト134は、入力軸132の下方において入力軸132と接続されており、入力軸132や第1のスプロケット311とともに回転する。ウォーターポンプ140は、入力軸132よりも下方、かつ、出力軸133よりも前方に配置されている(
図2参照)。換言すれば、ウォーターポンプ140は、出力軸133が入力軸132に対して後方にオフセットされることによって形成された空間に配置されているため、船外機100内のスペースが有効に活用され、船外機100の大型化を抑制することができる。なお、ウォーターポンプ140は入力軸132よりも下方に配置されるが、ウォーターポンプ140の少なくとも一部が入力軸132の下端部よりも下方に配置されていればよく、ウォーターポンプ140の一部が入力軸132の一部よりも上方に配置される構成であってもよいし、ウォーターポンプ140と入力軸132とが上下方向に完全に離間する構成であってもよい。また、ウォーターポンプ140は出力軸133よりも前方に配置されるが、ウォーターポンプ140の少なくとも一部が出力軸133の前端部よりも前方に配置されていればよく、ウォーターポンプ140の一部が出力軸133の一部よりも後方に配置される構成であってもよいし、ウォーターポンプ140と出力軸133とが前後方向に完全に離間する構成であってもよい。
【0066】
B.第2実施形態:
(船外機100aの構成)
図7は、第2実施形態における船外機100aの構成を概略的に示す側面図である。以下では、第2実施形態の船外機100aの構成のうち、上述した第1実施形態の船外機100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。第2実施形態の船外機100aでは、シフト機構300aとシフト機構300aの周辺構成が、第1実施形態の船外機100と異なっている。
【0067】
(シフト機構300aの詳細構成)
図8は、第2実施形態における船舶10の前進状態でのシフト機構300aの動力伝達を概略的に示す説明図である。
図9は、第2実施形態における船舶10の後進状態でのシフト機構300aの動力伝達を概略的に示す説明図である。
図10は、第2実施形態における船舶10のニュートラル状態でのシフト機構300の動力伝達を概略的に示す説明図である。
【0068】
第2実施形態におけるシフト機構300aにおいても、第1実施形態のシフト機構300と同様に、第1アセンブリ301aと、第2アセンブリ302aと、巻き掛け伝動機構310aと、歯車伝動機構320aと、切替機構190とを有する。
【0069】
第2実施形態のシフト機構300aは、主として第1アセンブリ301aの構成が、第1実施形態の第1アセンブリ301と異なっている。第1実施形態の第1の回転体341と異なり、第2実施形態の第1の回転体341aは、入力軸132aの下方に配置されている。また、第2実施形態の第1アセンブリ301aは、第1実施形態のシフト機構300の構成に加え、第3のクラッチ333aと、第3のピストン337aと、遊星歯車機構370aとを備えている。また、第3のピストン337aを動作させるために用いられるオイルの流路である第3の流路353aが形成されている。
【0070】
遊星歯車機構370aは、入力軸132aの下方に配置されている。遊星歯車機構370aは、内歯歯車371aと、太陽歯車372aと、遊星歯車373aと、固定部374aとを有する。
【0071】
内歯歯車371aは、入力軸132aに接続されており、入力軸132aの回転に伴って回転する。太陽歯車372aは、第1の回転体341aの周りに配置されている。遊星歯車373aは、例えば3つの歯車から構成され、3つの歯車のそれぞれが内歯歯車371aと太陽歯車372aとの間に配置されている。遊星歯車373aは、第1の回転体341aに接続されており、遊星歯車373aが第1の仮想軸VA1の周りを回転することに伴って第1の回転体341aが回転する。固定部374aは、太陽歯車372aの下方に配置されている。
【0072】
第1のクラッチ331aおよび第1のピストン335aと、第3のクラッチ333aおよび第3のピストン337aとは、入力軸132aの周りに配置されている。第1のクラッチ331aが固定されることにより、太陽歯車372aが固定部374aに固定される。また、第3のピストン337aは、第3の流路353aを介して供給されるオイルの油圧によって動作し、第3のクラッチ333aの固定と切り離しとを切り替える。すなわち、第3のクラッチ333aは、油圧クラッチである。第3のクラッチ333aが固定されることにより、遊星歯車373aが太陽歯車372aに固定される。
【0073】
(船舶10の前進時におけるシフト制御)
図8を参照しつつ、船舶10の前進時におけるシフト機構300aの動力伝達について説明する。
図8には、入力軸132aから伝達される動力の伝達経路(太矢印)と、入力軸132aからの動力を受けた各構成要素の回転方向(細矢印)とが矢印によって示されている。第2実施形態のシフト機構300aは、低速状態と高速状態との2つの前進状態を有しており、これらの2つの前進状態は、切替機構190によって切り替えられる。低速状態は、特許請求の範囲における第1の状態の一例であり、高速状態は、特許請求の範囲における第2の状態の一例である。
【0074】
はじめに、2つの前進状態のうち、低速状態について説明する。まず、切替機構190は、第1の流路351aを介して第1のピストン335aにオイルを供給することにより、第1のクラッチ331aを固定させる。第1のクラッチ331aが固定されることによって、太陽歯車372aが固定部374aに固定される。また、切替機構190は、第3のピストン337aへのオイルの供給を停止することにより、第3のクラッチ333aを切り離す。第3のクラッチ333aが切り離されることによって、遊星歯車373aが太陽歯車372aと固定されない。内歯歯車371aは、入力軸132aの回転に伴って回転する。内歯歯車371aが回転することにより、遊星歯車373aが、固定部374aに固定された太陽歯車372aの周りを公転するとともに、入力軸132aの回転を、第1の回転体341aに伝達する。第1の回転体341aは、第1の仮想軸VA1の周りを回転する。第1の回転体341aの回転に伴って、第1の歯車321aが回転する。第1の歯車321aが回転することにより、第2の歯車322aが回転し、第2の歯車322aの回転に伴って、出力軸133aが回転する(すなわち、歯車伝動機構320aによる第1アセンブリ301aから第2アセンブリ302aへの動力の伝達が起こる)。出力軸133aの回転は、プロペラ軸137に伝達され、船舶10を前進させる推力を発生させる。出力軸133aは、特許請求の範囲における第2の回転体の一例である。
【0075】
次に、2つの前進状態のうち、高速状態について説明する。まず、切替機構190は、第3の流路353aを介して第3のピストン337aにオイルを供給することにより、第3のクラッチ333aを固定させる。第3のクラッチ333aが固定されることによって、遊星歯車373aが太陽歯車372aと固定される。また、切替機構190は、第1のピストン335aへのオイルの供給を停止することにより、第1のクラッチ331aを切り離す。第1のクラッチ331aが切り離されることによって、太陽歯車372aが固定部374aに固定されない。内歯歯車371aは、入力軸132aの回転に伴って回転する。内歯歯車371aが回転することにより、内歯歯車371aと太陽歯車372aと遊星歯車373aとが一体となって回転するとともに、入力軸132aの回転を、第1の回転体341aに伝達する。第1の回転体341aは、第1の仮想軸VA1の周りを回転する。第1の回転体341aの回転に伴って、第1の歯車321aが回転する。第1の歯車321aが回転することにより、第2の歯車322aが回転し、第2の歯車322aの回転に伴って、出力軸133aが回転する(すなわち、歯車伝動機構320aによる第1アセンブリ301aから第2アセンブリ302aへの動力の伝達が起こる)。出力軸133aの回転は、プロペラ軸137に伝達され、船舶10を前進させる推力を発生させる。
【0076】
なお、前進時においては、切替機構190は、第2のクラッチ332aを切り離す。つまり、第2のスプロケット312aと出力軸133aとが接続されない。これにより、入力軸132aの回転に伴って第1のスプロケット311aが回転し、チェーン314aを介して第2のスプロケット312aが回転したとしても、第2のスプロケット312aの回転は出力軸133aに伝達されない。そのため、巻き掛け伝動機構310aによる第1アセンブリ301aから第2アセンブリ302aへの動力の伝達は起こらない。
【0077】
(船舶10の後進時におけるシフト制御)
図9を参照しつつ、船舶10の後進時におけるシフト機構300aの動力伝達について説明する。
図9には、入力軸132aから伝達される動力の伝達経路(太矢印)と、入力軸132aからの動力を受けた各構成要素の回転方向(細矢印)とが矢印によって示されている。
【0078】
まず、切替機構190は、第2の流路352aを介して第2のピストン336aにオイルを供給することにより、第2のクラッチ332aを固定させる。第2のクラッチ332aが固定されることによって、第2のスプロケット312aと出力軸133aとが接続される。第1のスプロケット311aは、入力軸132aの回転に伴って回転する。入力軸132aの回転が第1のスプロケット311aに伝達されると、チェーン314aを介して第2のスプロケット312aが回転し、第2のスプロケット312aの回転に伴って、出力軸133aが第2の仮想軸VA2の周りを回転する(すなわち、巻き掛け伝動機構310aによる第1アセンブリ301aから第2アセンブリ302aへの動力の伝達が起こる)。出力軸133aの回転は、プロペラ軸137に伝達されることにより、船舶10を後進させる推力を発生させる。
【0079】
なお、後進時においては、切替機構190は、第1のクラッチ331aおよび第3のクラッチ333aを切り離す。つまり、太陽歯車372aが固定部374aに固定されず、かつ、遊星歯車373aが太陽歯車372aと固定されない。これにより、入力軸132aの回転に伴って内歯歯車371aが回転したとしても、遊星歯車373aが第1の仮想軸VA1の周りを公転しないため、入力軸132aの回転は第1の回転体341aに伝達されない。そのため、歯車伝動機構320aによる第1アセンブリ301aから第2アセンブリ302aへの動力の伝達は起こらない。
【0080】
(船舶10のニュートラル時におけるシフト制御方法)
図10を参照しつつ、船舶10のニュートラル時におけるシフト機構300aの動力伝達について説明する。
図10には、入力軸132aから伝達される動力の伝達経路(太矢印)と、入力軸132aからの動力を受けた各構成要素の回転方向(細矢印)とが矢印によって示されている。
【0081】
まず、切替機構190は、第1のピストン335a、第2のピストン336aおよび第3のピストン337aへのオイルの供給を停止し、第1のクラッチ331a、第2のクラッチ332aおよび第3のクラッチ333aを切り離す。第1のクラッチ331aおよび第3のクラッチ333aが切り離されることによって、太陽歯車372aが固定部374aに固定されず、かつ、遊星歯車373aが太陽歯車372aと固定されない。これにより、入力軸132aの回転に伴って内歯歯車371aが回転したとしても、遊星歯車373aが第1の仮想軸VA1の周りを公転しないため、入力軸132aの回転は第1の回転体341aに伝達されない。そのため、歯車伝動機構320aによる第1アセンブリ301aから第2アセンブリ302aへの動力の伝達は起こらない。また、第2のクラッチ332aが切り離されることによって、第2のスプロケット312aと出力軸133aとが接続されない。これにより、入力軸132aの回転に伴って第1のスプロケット311aが回転し、チェーン314aを介して第2のスプロケット312aが回転したとしても、第2のスプロケット312aの回転は出力軸133aに伝達されない。そのため、巻き掛け伝動機構310aによる第1アセンブリ301aから第2アセンブリ302aへの動力の伝達は起こらない。このように、入力軸132aの回転が出力軸133aに伝達されないため、入力軸132aの回転がプロペラ軸137に伝達されない。
【0082】
以上に説明したように、切替機構190は、船舶10の前進時には、入力軸132aの回転を、巻き掛け伝動機構310aと歯車伝動機構320aとの一方である歯車伝動機構320aを介して出力軸133aに伝達する(つまり、入力軸132aと出力軸133aとが、互いに反対の方向に回転する)。また、切替機構190は、船舶10の後進時には、入力軸132aの回転を、巻き掛け伝動機構310aと歯車伝動機構320aとの他方である巻き掛け伝動機構310aを介して出力軸133aに伝達する(つまり、入力軸132と出力軸133とが、互いに同じ方向に回転する)。また、切替機構190は、船舶10のニュートラル時には、入力軸132aの回転を、出力軸133aに伝達しない。これにより、船舶10の前進状態、後進状態およびニュートラル状態が切り替えられ、船舶10のシフト制御が実現される。
【0083】
なお、第2実施形態では、ポンプシャフト134aは、歯車伝動機構325aを介して入力軸132aの動力が伝達されている。具体的には、エンジン本体122の駆動力が伝達されることによって、第2のスプロケット312aが回転することに伴ってポンプシャフト134aの周りに設けられた歯車が回転し、ポンプシャフト134aが回転する。
【0084】
C.第3実施形態:
(船外機100bの構成)
図11は、第3実施形態における船外機100bの構成を概略的に示す側面図である。以下では、第3実施形態の船外機100bの構成のうち、上述した第2実施形態の船外機100aと同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。第3実施形態の船外機100bでは、シフト機構300bとシフト機構300bの周辺構成が、第2実施形態の船外機100aと異なっている。
【0085】
(シフト機構300bの詳細構成)
図12は、第3実施形態における船舶10の前進状態でのシフト機構300bの動力伝達を概略的に示す説明図である。
図13は、第3実施形態における船舶10の後進状態でのシフト機構300bの動力伝達を概略的に示す説明図である。
図14は、第3実施形態における船舶10のニュートラル状態でのシフト機構300bの動力伝達を概略的に示す説明図である。
【0086】
第3実施形態におけるシフト機構300bにおいても、第2実施形態のシフト機構300aと同様に、第1アセンブリ301bと、第2アセンブリ302bと、巻き掛け伝動機構310bと、歯車伝動機構320bと、切替機構190とを有する。
【0087】
第3実施形態の第1アセンブリ301bは、第2実施形態のシフト機構300aの構成に加え、出力軸133bを備えている。出力軸133bは、第1の回転体341bよりも下方に配置されている。第1の歯車321bは、出力軸133bの上端部および第1の回転体341bの下端部の外周に設けられている。そのため、出力軸133bは、第1の回転体341bの回転に伴って第1の仮想軸VA1の周りを回転する。
【0088】
第3実施形態の第2アセンブリ302bは、第2実施形態の出力軸133aの替わりに、第2の回転体342bを有している。第2の回転体342bは、プロペラ軸137のギヤ138に噛み合うギヤを有していないこと、および、全体がハウジング304bに収容されていることを除いては、出力軸133aと基本的には同様の構成を有している。
【0089】
(船舶10の前進時におけるシフト制御)
図12を参照しつつ、船舶10の前進時におけるシフト機構300bの動力伝達について説明する。
図12には、入力軸132bから伝達される動力の伝達経路(太矢印)と、入力軸132bからの動力を受けた各構成要素の回転方向(細矢印)とが矢印によって示されている。第3実施形態のシフト機構300bにおいても、第2実施形態のシフト機構300aと同様に、低速状態と高速状態との2つの前進状態を有しており、これらの2つの前進状態は、切替機構190によって切り替えられる。
【0090】
はじめに、2つの前進状態のうち、低速状態について説明する。まず、切替機構190は、第1の流路351bを介して第1のピストン335bにオイルを供給することにより、第1のクラッチ331bを固定させる。第1のクラッチ331bが固定されることによって、太陽歯車372bが固定部374bに固定される。また、切替機構190は、第3のピストン337bへのオイルの供給を停止することにより、第3のクラッチ333bを切り離す。第3のクラッチ333bが切り離されることによって、遊星歯車373bが太陽歯車372bと固定されない。内歯歯車371bは、入力軸132bの回転に伴って回転する。内歯歯車371bが回転することにより、遊星歯車373bが、固定部374bに固定された太陽歯車372bの周りを公転するとともに、入力軸132bの回転を、第1の回転体341bに伝達する。第1の回転体341bは、第1の仮想軸VA1の周りを回転する。第1の回転体341bの回転に伴って、第1の歯車321bが回転し、第1の歯車321bが回転することにより、出力軸133bが回転する。出力軸133bの回転は、プロペラ軸137に伝達され、船舶10を前進させる推力を発生させる。
【0091】
次に、2つの前進状態のうち、高速状態について説明する。まず、切替機構190は、第3の流路353bを介して第3のピストン337bにオイルを供給することにより、第3のクラッチ333bを固定させる。第3のクラッチ333bが固定されることによって、遊星歯車373bが太陽歯車372bに固定される。また、切替機構190は、第1のピストン335bへのオイルの供給を停止することにより、第1のクラッチ331bを切り離す。第1のクラッチ331bが切り離されることによって、太陽歯車372bが固定部374bに固定されない。内歯歯車371bは、入力軸132bの回転に伴って回転する。内歯歯車371bが回転することにより、内歯歯車371bと太陽歯車372bと遊星歯車373bとが一体となって回転するとともに、入力軸132bの回転を、第1の回転体341bに伝達する。第1の回転体341bは、第1の仮想軸VA1の周りを回転する。第1の回転体341bの回転に伴って、第1の歯車321bが回転し、第1の歯車321bが回転することにより、出力軸133bが回転する。出力軸133bの回転は、プロペラ軸137に伝達され、船舶10を前進させる推力を発生させる。
【0092】
なお、前進時においては、切替機構190は、第2のクラッチ332bを切り離す。つまり、第2のスプロケット312bと第2の回転体342bとが接続されない。これにより、入力軸132bの回転に伴って第1のスプロケット311bが回転し、チェーン314bを介して第2のスプロケット312bが回転したとしても、第2のスプロケット312bの回転は第2の回転体342bに伝達されない。そのため、巻き掛け伝動機構310bによる第1アセンブリ301bから第2アセンブリ302bへの動力の伝達は起こらず、歯車伝動機構320bによる第2アセンブリ302bから第1アセンブリ301bへの動力伝達も起こらない。
【0093】
(船舶10の後進時におけるシフト制御)
図13を参照しつつ、船舶10の後進時におけるシフト機構300bの動力伝達について説明する。
図13には、入力軸132bから伝達される動力の伝達経路と、入力軸132bからの動力を受けた各構成要素の回転方向とが矢印によって示されている。
【0094】
まず、切替機構190は、第2の流路352bを介して第2のピストン336bにオイルを供給することにより、第2のクラッチ332bを固定させる。第2のクラッチ332bが固定されることによって、第2のスプロケット312bと第2の回転体342bとが接続される。第1のスプロケット311bは、入力軸132bの回転に伴って回転する。入力軸132bの回転が第1のスプロケット311bに伝達されると、チェーン314bを介して第2のスプロケット312bが回転し、第2のスプロケット312bの回転に伴って、第2の回転体342bが第2の仮想軸VA2の周りを回転する(すなわち、巻き掛け伝動機構310bによる第1アセンブリ301bから第2アセンブリ302bへの動力の伝達が起こる)。第2の回転体342bの回転に伴って、第2の歯車322bが回転し、第2の歯車322bの回転に伴って、出力軸133bが回転する(すなわち、歯車伝動機構320bによる第2アセンブリ302bから第1アセンブリ301bへの動力の伝達が起こる)。出力軸133bの回転は、プロペラ軸137に伝達されることにより、船舶10を後進させる推力を発生させる。
【0095】
なお、後進時においては、切替機構190は、第1のクラッチ331bおよび第3のクラッチ333bを切り離す。つまり、太陽歯車372bが固定部374bに固定されず、かつ、遊星歯車373bが太陽歯車372bと固定されない。これにより、入力軸132bの回転に伴って内歯歯車371bが回転したとしても、遊星歯車373bが第1の仮想軸VA1の周りを公転しないため、入力軸132bの回転は第1の回転体341bに伝達されず、出力軸133bにも伝達されない。
【0096】
(船舶10のニュートラル時におけるシフト制御方法)
図14を参照しつつ、船舶10のニュートラル時におけるシフト機構300bの動力伝達について説明する。
図14には、入力軸132bから伝達される動力の伝達経路(太矢印)と、入力軸132bからの動力を受けた各構成要素の回転方向(細矢印)とが矢印によって示されている。
【0097】
まず、切替機構190は、第1のピストン335b、第2のピストン336bおよび第3のピストン337bへのオイルの供給を停止し、第1のクラッチ331b、第2のクラッチ332bおよび第3のクラッチ333bを切り離す。第1のクラッチ331bおよび第3のクラッチ333bが切り離されることによって、太陽歯車372bが固定部374bに固定されず、かつ、遊星歯車373bが太陽歯車372bと固定されない。これにより、入力軸132bの回転に伴って内歯歯車371bが回転したとしても、遊星歯車373bが第1の仮想軸VA1の周りを公転しないため、入力軸132bの回転は第1の回転体341bに伝達されず、出力軸133bにも伝達されない。また、第2のクラッチ332bが切り離されることによって、第2のスプロケット312bと第2の回転体342bとが接続されない。これにより、入力軸132bの回転に伴って第1のスプロケット311bが回転し、チェーン314bを介して第2のスプロケット312bが回転したとしても、第2のスプロケット312bの回転は第2の回転体342bに伝達されない。そのため、巻き掛け伝動機構310bによる第1アセンブリ301bから第2アセンブリ302bへの動力の伝達は起こらず、歯車伝動機構320bによる第2アセンブリ302bから第1アセンブリ301bへの動力伝達も起こらない。このように、入力軸132bの回転が出力軸133bに伝達されないため、出力軸133bの回転がプロペラ軸137に伝達されない。
【0098】
以上に説明したように、第3実施形態においては、切替機構190は、船舶10の前進時には、入力軸132bの回転を、第1の回転体341bを介して出力軸133bに伝達する(つまり、入力軸132bと出力軸133bとが、互いに同じ方向に回転する)。また、船舶10の後進時には、入力軸132bの回転を、第2の回転体342bと歯車伝動機構320bと巻き掛け伝動機構310bとを介して出力軸133bに伝達する(つまり、入力軸132bと出力軸133bとが、互いに反対の方向に回転する)。また、切替機構190は、ニュートラル時には、入力軸132bの回転を、出力軸133bに伝達しない。これにより、船舶10の前進状態、後進状態およびニュートラル状態が切り替えられ、船舶10のシフト制御が実現される。
【0099】
なお、第3実施形態においても第2実施形態と同様に、エンジン本体122の駆動力が伝達されることによって、第2のスプロケット312aが回転することに伴ってポンプシャフト134aの周りに設けられた歯車が回転し、ポンプシャフト134aが回転する。
【0100】
D.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0101】
図15は、変形例における船外機100cの構成を概略的に示す側面図である。以下では、変形例の船外機100cの構成のうち、上述した第2実施形態の船外機100aと同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。変形例の船外機100cでは、シフト機構300cとシフト機構300cの周辺構成が、第2実施形態の船外機100aと異なっている。
【0102】
図16は、変形例におけるシフト機構300cの周辺の構成を概略的に示す説明図である。変形例のシフト機構300cは、上記実施形態の船外機100において備えられる巻き掛け伝動機構310の替わりに、歯車伝動機構380cを備えている。歯車伝動機構380cは、第3の歯車383cと、第4の歯車384cと、第5の歯車385cとから構成されている。歯車伝動機構380cは、特許請求の範囲における伝動機構の一例である。
【0103】
第3の歯車383cは、第1アセンブリ301cの周りに設けられ、第1の仮想軸VA1の周りを回転する。第4の歯車384cは、第2アセンブリ302cの周りに設けられ、第3の歯車383cと前後方向に離間して配置され、第2の仮想軸VA2の周りを回転する。第5の歯車385cは、第3の歯車383cと第4の歯車384cとの間に配置され、第3の歯車383cと第4の歯車384cとのいずれか一方、または両方と噛み合い駆動される。
【0104】
変形例における動力伝達は、上記実施形態と基本的には同様であるため詳細は省略するが、歯車伝動機構380cは、第3の歯車383cと第4の歯車384cとの間に第5の歯車385cが配置されているため、入力軸132cの回転を出力軸133cに伝達し、巻き掛け伝動機構310と同様に入力軸132cと同じ方向に出力軸133cを回転させる。これにより、船舶10の前進状態、後進状態およびニュートラル状態が切り替えられ、船舶10のシフト制御が実現される。
【0105】
なお、変形例における第5の歯車385cは、ポンプシャフト134cの周りに設けられている。そのため、エンジン本体122の駆動力が伝達されることによって、第5の歯車385cが第3の歯車383cと第4の歯車384cとの両方の回転に伴って回転し、ポンプシャフト134cが回転する。すなわち、変形例の歯車伝動機構380cは、入力軸132cから出力軸133cへの動力の伝達と、入力軸132cからウォーターポンプ140への動力の伝達とを行うことができる。
【0106】
上記実施形態の船舶10や船外機100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、巻き掛け伝動機構310が歯車伝動機構320の上方に配置されているが、巻き掛け伝動機構310が歯車伝動機構320の下方に配置されていてもよい。
【0107】
上記実施形態では、第2アセンブリ302は、第1アセンブリ301の後方に配置されているが、必ずしも第2アセンブリ302が第1アセンブリ301の後方に配置されることを要しない。
【0108】
上記実施形態では、巻き掛け伝動機構310は、2つのスプロケット(第1のスプロケット311および第2のスプロケット312)と、チェーン314とによって構成されているが、スプロケットの替わりにプーリー等を用いてもよく、チェーン314の替わりにベルト等を用いてもよい。
【0109】
上記実施形態では、船外機100は、被駆動機としてウォーターポンプ140を備えているが、ウォーターポンプ140を備えていなくてもよいし、ウォーターポンプ140の替わりに別の被駆動機を備えていてもよい。
【0110】
上記実施形態では、第1のクラッチ331、第2のクラッチ332および第3のクラッチ333aとして多板式のクラッチが示されているが、第1のクラッチ331、第2のクラッチ332および第3のクラッチ333aは、多板式以外の他の種類のクラッチを適用してもよい。また、第1のクラッチ331、第2のクラッチ332および第3のクラッチ333aは油圧式のクラッチであるが、例えばワイヤー式等の機械式のクラッチであってもよい。
【0111】
上記実施形態における第1の仮想軸VA1と第2の仮想軸VA2とは、上下方向に略平行に配置されているが、上下方向に対して厳密に平行である必要はない。第1の仮想軸VA1と第2の仮想軸VA2とは、少なくとも上下方向に直交していなければよく、上下方向に対して傾斜していてもよい。
【符号の説明】
【0112】
10:船舶 100,100a~100c:船外機 110:船外機本体 112:プロペラ 114:カウル 114a:上部カウル 114b:下部カウル 116:ケーシング 116a:アッパーケース 116b:ロワーケース 120:エンジンアセンブリ 122:エンジン本体 124:クランクシャフト 127:フライホイール式マグネット発電機 128:フライホイールロータ 129:ステータ 130:伝達機構 132,132a~132c:入力軸 133,133a~133c:出力軸 134,134a~134c:ポンプシャフト 135:ギヤ 137:プロペラ軸 138:ギヤ 140:ウォーターポンプ 150:懸架装置 152:クランプブラケット 152a:支持部 156:スイベルブラケット 160:チルト軸 180:コントローラ 190:切替機構 200:船体 202:船体本体部 204:居住空間 206:空間 210:トランサム 220:仕切壁 240:操縦席 250:操縦装置 252:ステアリングホイール 254:シフト・スロットルレバー 255:ジョイスティック 256:モニタ 258:入力装置 300,300a~300c:シフト機構 301,301a~301c:第1アセンブリ 302,302a~302c:第2アセンブリ 304,304a~304c:ハウジング 310,310a,310b:巻き掛け伝動機構 311,311a,311b:第1のスプロケット 312,312a,312b:第2のスプロケット 314,314a,314b:チェーン 320,320a~320c:歯車伝動機構 321,321a~321c:第1の歯車 322,322a~322c:第2の歯車 325a,325b:歯車伝動機構 331,331a~331c:第1のクラッチ 332,332a~332c:第2のクラッチ 333a~333c:第3のクラッチ 335,335a~335c:第1のピストン 336,336a~336c:第2のピストン 337a~337c:第3のピストン 341,341a~341c:第1の回転体 342b:第2の回転体 351,351a~351c:第1の流路 352,352a~352c:第2の流路 353a~353c:第3の流路 370a~370c:遊星歯車機構 371a~371c:内歯歯車 372a~372c:太陽歯車 373a~373c:遊星歯車 374a~374c:固定部 380c:歯車伝動機構 383c:第3の歯車 384c:第4の歯車 385c:第5の歯車 Ac:回転軸線 Ap:回転軸線 At:チルト軸線 VA1:第1の仮想軸 VA2:第2の仮想軸