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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152244
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】オイルゲル化剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20241018BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20241018BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/9789
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066313
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】尾田 遥
(72)【発明者】
【氏名】大久保 多恵
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC372
4C083CC02
4C083DD30
4C083DD41
4C083EE03
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】ヒマワリワックスを使用しつつ、ヒマワリワックスによる着色及び臭気が抑制され、且つ表面が平滑で高硬度のオイルワックスゲルを得ることのできるオイルゲル化剤を提供する。
【解決手段】下記成分(A)及び(B)を有効成分とし、該成分(A)及び(B)の合計量100質量%に対し、成分(A)の量が50~80質量%であり、成分(B)の量が20~50質量%である、オイルゲル化剤。
(A)下記一般式(1)で示される脂肪族エステル
-COO-R (1)
〔式中、Rは炭素数17以上29以下の直鎖アルキル基を表し、Rは炭素数18以上30以下の直鎖アルキル基を表す。〕
(B)ヒマワリワックス
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)及び(B)を有効成分とし、該成分(A)及び(B)の合計量100質量%に対し、成分(A)の量が50~80質量%であり、成分(B)の量が20~50質量%である、オイルゲル化剤。
(A)下記一般式(1)で示される脂肪族エステル
-COO-R (1)
〔式中、Rは炭素数17以上29以下の直鎖アルキル基を表し、Rは炭素数18以上30以下の直鎖アルキル基を表す。〕
(B)ヒマワリワックス
【請求項2】
25℃で液状の油剤及び請求項1に記載のオイルゲル化剤を含有する、オイルワックスゲル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルゲル化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
油性固形化粧料として、リップ化粧品、ファンデーション、コンシーラー、へアステック、クレンジングバーム等が知られている。これらは、固形状油剤(ワックス)を用いて常温で液状の油剤(オイル)を固化しており、オイルワックスゲルと呼ばれ、化粧品基剤として広く利用されている(特許文献1~4)。
【0003】
オイルワックスゲルの調製に用いるワックスとしては、非自然原料であるポリエチレンワックスが主流である。しかし近年、環境への配慮から、化粧品市場では、自然やオーガニックを訴求した化粧品への関心が高まっており、オイルワックスゲルの調製においても自然由来原料、特に植物由来原料が多く求められている。
【0004】
自然由来原料のワックスとしては、例えば、天然物由来の脂肪酸及びアルコールから製造したワックスである脂肪族エステルが考えられる。しかし、脂肪族エステルを単体で使用してもオイルの固化力を上げられず、また、オイルワックスゲルの表面にざらつきが出てしまい、外観に問題が生じる。
【0005】
その他に、植物由来原料のワックスとして、ひまわり種子から得られるヒマワリワックスを用いることで、スティック状化粧料に関して、高い耐熱安定性が得られることが知られている(特許文献5)。しかし、ヒマワリワックスは、着色や臭い及びその経時での変化の問題があり、使用用途が限られている(特許文献6)。
【0006】
このように、植物由来原料として使用し得るワックスはいくつか知られているが、オイルワックスゲルの十分な固化力を備え、外観、色相に優れ、且つ臭気が抑制されたオイルワックスゲルを製造可能な満足し得るオイルゲル化剤は得られていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-193607号公報
【特許文献2】特開2015-174844号公報
【特許文献3】特開2010-265230号公報
【特許文献4】特開平6-263618号公報
【特許文献5】特公昭63-66281号公報
【特許文献6】特開2011-184369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ヒマワリワックスを使用しつつ、ヒマワリワックスによる着色及び臭気が抑制され、且つ表面が平滑で高硬度のオイルワックスゲルを得ることのできるオイルゲル化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題に対して鋭意検討を行った結果、ヒマワリワックスと脂肪族エステルを特定の割合で組み合わせることにより、オイルワックスゲルの硬度を十分に高める固化力を有し、外観及び色相に優れ、且つ臭気が抑制されたオイルワックスゲルを製造可能なオイルゲル化剤が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の〔1〕及び〔2〕からなっている。
〔1〕下記成分(A)及び(B)を有効成分とし、該成分(A)及び(B)の合計量100質量%に対し、成分(A)の量が50~80質量%であり、成分(B)の量が20~50質量%である、オイルゲル化剤。
(A)下記一般式(1)で示される脂肪族エステル
-COO-R (1)
〔式中、Rは炭素数17以上29以下の直鎖アルキル基を表し、Rは炭素数18以上30以下の直鎖アルキル基を表す。〕
(B)ヒマワリワックス
〔2〕25℃で液状の油剤及び前記〔1〕に記載のオイルゲル化剤を含有する、オイルワックスゲル。
【発明の効果】
【0011】
本発明のオイルゲル化剤は、ヒマワリワックスを使用しながらも、ヒマワリワックスによる着色及び臭気が抑制され、且つ表面が平滑で高硬度のオイルワックスゲルを製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に用いられる成分(A)は、下記一般式(1)で示される脂肪族エステルである。
-COO-R (1)
〔式中、Rは炭素数17以上29以下の直鎖アルキル基を表し、Rは炭素数18以上30以下の直鎖アルキル基を表す。〕
【0013】
一般式(1)中のRの炭素数は、好ましくは17以上27以下であり、より好ましくは21以上23以下である。また、一般式(1)中のRの炭素数は、好ましくは18以上26以下であり、より好ましくは22以上24以下である。
【0014】
成分(A)の具体例としては、例えば、ステアリン酸ステアリル〔一般式(1)において、Rの炭素数が17且つRの炭素数が18の脂肪族エステル。以下、「C17-C18」のように表記する。〕、ステアリン酸アラキジル(C17-C20)、ステアリン酸ベヘニル(C17-C22)、ステアリン酸リグノセリル(C17-C24)、ステアリン酸セロチル(C17-C26)、ステアリン酸モンタニル(C17-C28)、ステアリン酸メリシル(C17-C30)、アラキジン酸ステアリル(C19-C18)、アラキジン酸アラキジル(C19-C20)、アラキジン酸ベヘニル(C19-C22)、アラキジン酸リグノセリル(C19-C24)、アラキジン酸セロチル(C19-C26)、アラキジン酸モンタニル(C19-C28)、アラキジン酸メリシル(C19-C30)、ベヘニン酸ステアリル(C21-C18)、ベヘニン酸アラキジル(C21-C20)、ベヘニン酸ベヘニル(C21-C22)、ベヘニン酸リグノセリル(C21-C24)、ベヘニン酸セロチル(C21-C26)、ベヘニン酸モンタニル(C21-C28)、ベヘニン酸メリシル(C21-C30)、リグノセリン酸ステアリル(C23-C18)、リグノセリン酸アラキジル(C23-C20)、リグノセリン酸ベヘニル(C23-C22)、リグノセリン酸リグノセリル(C23-C24)、リグノセリン酸セロチル(C23-C26)、リグノセリン酸モンタニル(C23-C28)、リグノセリン酸メリシル(C23-C30)、セロチン酸ステアリル(C25-C18)、セロチン酸アラキジル(C25-C20)、セロチン酸ベヘニル(C25-C22)、セロチン酸リグノセリル(C25-C24)、セロチン酸セロチル(C25-C26)、セロチン酸モンタニル(C25-C28)、セロチン酸メリシル(C25-C30)、モンタン酸ステアリル(C27-C18)、モンタン酸アラキジル(C27-C20)、モンタン酸ベヘニル(C27-C22)、モンタン酸リグノセリル(C27-C24)、モンタン酸セロチル(C27-C26)、モンタン酸モンタニル(C27-C28)、モンタン酸メリシル(C27-C30)、メリシン酸ステアリル(C29-C18)、メリシン酸アラキジル(C29-C20)、メリシン酸ベヘニル(C29-C22)、メリシン酸リグノセリル(C29-C24)、メリシン酸セロチル(C29-C26)、メリシン酸モンタニル(C29-C28)、メリシン酸メリシル(C29-C30)が挙げられる。これら脂肪族エステルは、いずれか1種のみを用いても良いし、2種以上を任意に組み合わせて用いても良い。
【0015】
本発明における成分(A)の製造方法としては、例えば、炭素数18以上30以下の1価の直鎖飽和脂肪酸と炭素数18以上30以下の1価の直鎖飽和アルコールとの脱水縮合反応を利用する方法が挙げられる。反応効率を高めるために、触媒を利用しても良い。反応温度は180~250℃が好ましく、減圧下で反応を行なっても良い。また、反応の後、脱酸や水洗等により精製しても良い。
【0016】
炭素数18以上30以下の1価の直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。これら炭素数18~30の1価の直鎖飽和脂肪酸はいずれか1種のみを用いても良いし、2種以上を任意に組み合わせて用いても良い。また、炭素数18~30の1価の直鎖飽和脂肪酸としては、炭素数18~30の1価の直鎖飽和脂肪酸を主体とし、炭素数が18未満又は炭素数が30を超える1価の直鎖飽和脂肪酸を含む混合脂肪酸であっても良く、その場合、炭素数18~30の1価の直鎖飽和脂肪酸の含有量は50質量%以上、好ましくは70質量%以上である。
【0017】
炭素数18~30の1価の直鎖飽和アルコールとしては、例えば、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、リグノセリルアルコール、セリルアルコール、モンタニルアルコール、メリシルアルコール等が挙げられる。これら炭素数18~30の1価の直鎖飽和アルコールはいずれか1種のみを用いても良いし、2種以上を任意に組み合わせて用いても良い。また、炭素数18~30の1価の直鎖飽和アルコールとしては、炭素数18~30の1価の直鎖飽和アルコールを主体とし、炭素数が18未満又は炭素数が30を超える1価の直鎖飽和アルコールを含む混合アルコールであっても良く、その場合、炭素数18~30の1価の直鎖飽和アルコールの含有量は50質量%以上、好ましくは70質量%以上である。
【0018】
本発明に用いられる成分(A)は、非自然原料であってもよく、植物や微生物等の天然物から採取された油分から精製されたもの、又は天然物から採取された成分から製造された化学合成品(即ち、自然由来原料)であってもよいが、サスティナビリティの観点から、自然由来原料であることが好ましく、植物由来原料であることがより好ましい。
【0019】
本発明で成分(B)として用いられるヒマワリワックスは、ヒマワリの種子から得られる、長鎖脂肪酸と長鎖アルコールから構成される総炭素数が36~62のモノエステルを主成分とするワックスである。ヒマワリワックスは、融点が50℃以上、好ましくは60℃以上、最も好ましくは70℃以上のものが好ましい。また、その上限は、例えば90℃である。
【0020】
ヒマワリワックスとしては、例えば、Cerafume Sunflower wax 5301(商品名;融点:77℃;FUMEIPHARM社製)等が商業的に製造及び販売されており、本発明にはこれを用いることができる。
【0021】
本発明のオイルゲル化剤の成分(A)及び(B)の量は、成分(A)及び(B)の合計量100質量%に対し、成分(A)の量が50~80質量%、より好ましくは60~80質量%であり、最も好ましくは70~80質量%であり、成分(B)の量が好ましくは20~50質量%、より好ましくは20~40質量%であり、最も好ましくは20~30質量%に調整することができる。
【0022】
本発明のオイルワックスゲルは、25℃で液状の油剤及び成分(A)及び(B)を含有する。該オイルワックスゲル中の成分(A)と成分(B)の含有量の比〔(A):(B)〕は、50:50~80:20(質量比)であり、より好ましくは60:40~80:20(質量比)であり、最も好ましくは70:30~80:20(質量比)に調整することができる。
【0023】
25℃で液状の油剤としては、例えば、炭化水素油、分岐脂肪酸、分岐アルコール、エステル油、エーテル油、シリコーン油等が挙げられる。
【0024】
具体的には、炭化水素油としては、例えば、スクワラン、スクワレン、流動パラフィン、α-オレフィンオリゴマー、水添ポリイソブテン、イソパラフィン等が挙げられる。また、分岐脂肪酸としては、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソベヘン酸等が挙げられる。また、分岐アルコールとしては、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール等が挙げられる。また、エステル油としては、リンゴ酸ジイソステアリル、2-エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル、2-エチルヘキサン酸イソノニル、アジピン酸ジイソブチル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、2-エチルヘキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸2-ヘキシルデシル、ジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イロプロピル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-ヘキシルデシル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸2-ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリル、ネオペンタン酸イソデシル、ネオペンタン酸イソステアリル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸2-オクチルドデシル、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル、12-ステアロリルステアリン酸2-オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、サリチル酸2-エチルヘキシル、炭酸ジアルキル等が挙げられる。また、エーテル油としては、ジオクチルエーテル、ポリオキシエチレン・ポロオキシプロピレンジメチルエーテル等が挙げられる。また、シリコーン油としては、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、カプリルメチコン、メチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0025】
これら25℃で液状の油剤は、いずれか1種のみを用いても良いし、2種以上を任意に組み合わせて用いても良い。
【0026】
本発明のオイルワックスゲル全体に占める成分(A)、(B)及び25℃で液状の油剤の含有量は、オイルワックスゲルの用途や目的とする硬度等により異なり一様ではなく、特に制限されないが、本発明のオイルワックスゲル100質量%中、成分(A)及び(B)の合計量が1~30質量%、好ましくは5~20質量%であり、残余が25℃で液状の油剤となるように調整することができる。
【0027】
本発明のオイルワックスゲルの製造方法に特に制限はないが、例えば、25℃で液状の油剤に成分(A)及び(B)を加え、これらをその融点以上(例えば、80~120℃)に加熱して均一に混合し、得られた混合物を型に入れ冷却及び固化する方法等を実施することができる。
【0028】
本発明のオイルワックスゲルは、例えば、化粧品、医薬品、医薬部外品、生活雑貨品等に使用でき、化粧品に使用することが特に好ましい。化粧品の具体例としては、例えば油性ファンデーション、口紅、リップグロス等の固形状油性化粧品の他、固形状油性クレンジング化粧品等が挙げられる。
【0029】
本発明のオイルワックスゲルを化粧品に使用する場合、該オイルワックスゲルには、前記成分以外に、通常の化粧品に用いられる成分、例えば、着色顔料、染料、体質顔料、界面活性剤、酸化防止剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤等を含有させることができる。
【0030】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0031】
[合成例1]
ベヘニン酸718g(2.2モル;商品名:RADIACID0560;oleon社製)とベヘニルアルコール700g(2.1モル;商品名:GINOL-22(98%);GODREJ社製)を仕込み、230℃にて、酸価の低下が認められなくなるまで10時間エステル化反応を行い、エステル化生成物(ベヘニン酸ベヘニル)1340gを得た。
【0032】
[合成例2]
ステアリン酸769g(2.7モル;商品名:ルナックS-98;花王社製)とステアリルアルコール731g(2.7モル;商品名:カルコール8688;花王社製)を仕込み、230℃にて、酸価の低下が認められなくなるまで10時間エステル化反応を行い、エステル化生成物(ステアリン酸ステアリル)1400gを得た。
【0033】
[合成例3]
パルミチン酸693g(2.7モル;商品名:パルミチン酸 98;ミヨシ油脂社製)とステアリルアルコール731g(2.7モル;商品名:カルコール8688;花王社製)を仕込み、230℃にて、酸価の低下が認められなくなるまで10時間エステル化反応を行い、エステル化生成物(パルミチン酸ステアリル)1300gを得た。
【0034】
[オイルゲル化剤の調製]
(1)オイルゲル化剤の原材料
1)ベヘニン酸ベヘニル(合成例1;C21-C22)
2)ステアリン酸ステアリル(合成例2;C17-C18)
3)パルミチン酸ステアリル(合成例3;C15-C18)
4)ヒマワリワックス(商品名:Cerafume Sunflower wax 5301;融点:77℃;FUMEIPHARM社製)
5)キャンデリラロウ(商品名:精製キャンデリラワックス MD-21;融点:66℃;横関油脂工業社製)
6)カルナウバロウ(商品名:精製カルナウバワックス R-100;融点:83℃;横関油脂工業社製)
7)コメヌカロウ(商品名:ライスワックス SS-I;融点:78℃;ボーソー油脂社製)
8)ミツロウ(商品名:ビースワックス;融点:64℃;三木化学工業社製)
【0035】
上記原材料を用いて調製したオイルゲル化剤1~18の配合組成を表1~3に示す。このうち、表1に示すオイルゲル化剤1~6は本発明に係る実施例であり、表2及び3に示すオイルワックスゲル7~17はそれらに対する比較例である。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
(2)オイルゲル化剤の調製方法
200mL容ビーカーに表1~3に従ってそれぞれのワックスを入れ、90℃に加熱し、その内容物が均一になるまで十分に振り混ぜた。得られた混合物を25℃で30分間冷却及び固化し、オイルゲル化剤1~17を各100g得た。尚、オイルゲル化剤16及び17は、一種類の原材料のみからなるため、当該原材料そのものをオイルゲル化剤とした。
【0040】
[試験例1]
[中鎖脂肪酸トリグリセライドを用いたオイルワックスゲルの製造及び評価]
(1)オイルワックスゲルの硬度の測定及び外観評価
50mL容ビーカーに中鎖脂肪酸トリグリセライド(商品名:アクターM1;25℃で液状の油剤;理研ビタミン社製)9g及びオイルゲル化剤(1~17のいずれか)1gをそれぞれ入れ、これを90℃に加熱し、その内容物が均一になるまで十分に振り混ぜた。得られた混合物をプラスチック製容器に流し入れ、25℃で30分間冷却及び固化し、オイルゲル化剤の含有量が10質量%のオイルワックスゲル(各10g)を得た。
【0041】
得られたオイルワックスゲルを、テクスチャーアナライザー(製品名:Ez Test;島津製作所社製)を用いて25℃の環境下で硬度を測定した。測定では、直径14mmの円柱形の治具をオイルワックスゲルに向けて20mm/minの速度で下降してオイルワックスゲルを圧縮し、その降伏点(応力の上昇が緩和する点:ピークもしくは変曲点)を硬度(N)とし、以下の評価基準に従いそれぞれ記号化した。また、オイルワックスゲルの表面の外観を目視で観察し、以下の評価基準に従いそれぞれ記号化した。尚、オイルゲル化剤12~15は、固化しなかったため、硬度の測定をせずに「×」の結果とし、外観評価をせずに「-」の結果とした。結果を表5に示す。
<硬度の評価基準>
◎:20N以上
○:10N以上、20N未満
△:5.0N以上、10N未満
×:5.0N未満
<外観の評価基準>
◎:表面が平滑である
×:表面にざらつきがある
【0042】
(2)オイルワックスゲルの色相の測定
200mL容ビーカーに中鎖脂肪酸トリグリセライド(商品名:アクターM1;25℃で液状の油剤;理研ビタミン社製)80g及び各オイルゲル化剤(1~17のうちいずれか)20gをそれぞれ入れ、これを90℃に加熱し、その内容物が均一になるまで十分に振り混ぜ、オイルゲル化剤の含有量が20質量%のオイルワックスゲル(各100g)を得た。得られたオイルワックスゲルが90℃で溶解した状態でAPHA比色管に標線まで入れ、基準油脂分析試験法2.2.1.4-1996(日本油化学会)に基づいて色相(APHA)を測定し、以下の評価基準に従いそれぞれ記号化した。結果を表5に示す。
<色相の評価基準>
◎:APHA 100未満
○:APHA 100以上、120未満
△:APHA 120以上、140未満
×:APHA 140以上
【0043】
(3)オイルワックスゲルの臭気の官能評価
50mL容ビーカーに中鎖脂肪酸トリグリセライド(商品名:アクターM1;25℃で液状の油剤;理研ビタミン社製)8g及びオイルゲル化剤(1~17のうちいずれか)2gをそれぞれ入れ、これを90℃に加熱し、その内容物が均一になるまで十分に振り混ぜた。得られた混合物をプラスチック製容器に流し入れ、25℃で30分間冷却及び固化し、オイルゲル化剤の含有量が20質量%のオイルワックスゲル(各10g)を得た。次いで、得られたオイルワックスゲルの臭気について官能評価を行った。評価は、表4に示す評価基準に従って5名のパネラーで行い、結果は5名の評点の平均値を下記の基準に従って記号化した。結果を表5に示す。
<記号化基準>
◎:良好 平均値2.5以上
○:やや良好 平均値1.5以上、2.5未満
×:悪い 平均値1.5未満
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
表5の結果から明らかなように、実施例のオイルゲル化剤1~6を添加したオイルワックスゲルは、硬度、外観、色相及び臭気のすべての項目にて「◎」又は「〇」であった。しかし、比較例のオイルゲル化剤7~17を添加したオイルワックスゲルは、硬度、外観、色相又は臭気いずれかの項目にて「△」以下の結果であり、実施例のものに比べて劣っていた。
【0047】
[試験例2]
[2-エチルヘキサン酸セチルを用いたオイルワックスゲルの製造及び評価]
【0048】
試験例1の中鎖脂肪酸トリグリセライド(商品名:アクターM1;25℃で液状の油剤;理研ビタミン社製)に替えて2-エチルヘキサン酸セチル(商品名:CIO;25℃で液状の油剤;日光ケミカルズ社製)を用いたこと以外は、試験例1と同様にオイルワックスゲルを製造し、硬度、外観、色相及び臭気の評価を行った。結果を表6に示す。
【0049】
【表6】
【0050】
表6の結果から明らかなように、実施例のオイルゲル化剤1、3及び4を添加してオイルワックスゲルを製造することにより、油剤として2-エチルヘキサン酸セチルを用いた場合であっても、硬度、外観、色相及び臭気のすべての項目にて「◎」又は「〇」であり、試験例1の実施例と同様の優れた結果となることが確認された。
【0051】
[試験例3]
[リンゴ酸ジイソステアリルを用いたオイルワックスゲルの製造及び評価]
試験例1の中鎖脂肪酸トリグリセライド(商品名:アクターM1;25℃で液状の油剤;理研ビタミン社製)に替えてリンゴ酸ジイソステアリル(商品名:DISM;25℃で液状の油剤;日光ケミカルズ社製)を用いたこと以外は、試験例1と同様にオイルワックスゲルを製造し、硬度、外観、色相及び臭気の評価を行った。結果を表7に示す。
【0052】
【表7】
【0053】
表7の結果から明らかなように、実施例のオイルゲル化剤1、3及び4を添加してオイルワックスゲルを製造することにより、油剤としてリンゴ酸ジイソステアリルを用いた場合であっても、硬度、外観、色相及び臭気のすべての項目にて「◎」又は「〇」であり、試験例1の実施例と同様の優れた結果となることが確認された。