(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152249
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241018BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20241018BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B41J2/01 403
C09D11/30
B41J2/01 501
B41J2/01 125
B41M5/00 100
B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066323
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】小山 明紀
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA17
2C056FA04
2C056FA13
2C056FC01
2C056HA46
2H186AB12
2H186BA08
2H186DA14
2H186FA18
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB58
4J039BC07
4J039BC13
4J039BE01
4J039BE12
4J039CA06
4J039DA02
4J039EA44
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】インクの吐出安定性に優れると共に、所望の画像濃度を有する画像を形成できるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置は、インクジェット用インクと、記録ヘッドとを備える。前記記録ヘッドは、ノズルを有し、前記インクジェット用インクを前記ノズルから記録媒体に吐出する吐出動作と、前記ノズル内の前記インクジェット用インクのメニスカスを揺動させる揺動動作とを行う。前記インクジェット用インクは、顔料及び水性媒体を含有する。前記水性媒体は、水及び特定有機溶媒を含有する。前記特定有機溶媒のオクタノール/水分配係数LogPは、0.30以上1.50以下である。乾燥処理後の前記インクジェット用インクの25℃における粘度は、120mPa・s以上3800mPa・s以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット用インクと、記録ヘッドとを備えるインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドは、ノズルを有し、前記インクジェット用インクを前記ノズルから記録媒体に吐出する吐出動作と、前記ノズル内の前記インクジェット用インクのメニスカスを揺動させる揺動動作とを行い、
前記インクジェット用インクは、顔料及び水性媒体を含有し、
前記水性媒体は、水及び特定有機溶媒を含有し、
前記特定有機溶媒のオクタノール/水分配係数LogPは、0.30以上1.50以下であり、
乾燥処理後の前記インクジェット用インクの25℃における粘度は、120mPa・s以上3800mPa・s以下であり、
前記乾燥処理は、前記インクジェット用インクの質量が30質量%減少するまで前記インクジェット用インクを40℃で加熱する処理である、インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記インクジェット用インクにおける前記特定有機溶媒の含有割合は、9.0質量%以上21.0質量%以下である、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記特定有機溶媒の25℃における粘度は、100.0mPa・s以上200.0mPa・s以下である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記特定有機溶媒は、3-メチル-1,5-ペンタンジオール及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルのうち少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記インクジェット用インクにおける前記水の含有割合は、60.0質量%以上75.0質量%以下である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
25℃における前記インクジェット用インクの粘度は、6.0mPa・s以上10.0mPa・s以下である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置には、インクの吐出安定性に優れると共に、所望の画像濃度を有する画像を形成できることが要求される。インクジェット記録装置で所望の画像濃度を有する画像を形成する方法としては、例えば、乾燥時の増粘率が一定割合であるインクジェット用インクを用いたインクジェット記録装置が提案されている(特許文献1)。このインクジェット記録装置によれば、インクジェット用インクが記録媒体に着弾した後、インクジェット用インクが速やかに増粘することで画像濃度が高い画像を容易に形成できるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のインクジェット記録装置は、記録ヘッドのノズル内でインクジェット用インクが増粘し、インクの吐出安定性が不十分となる場合がある。
【0005】
本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、インクの吐出安定性に優れると共に、所望の画像濃度を有する画像を形成できるインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態のインクジェット記録装置は、インクジェット用インクと、記録ヘッドとを備える。前記記録ヘッドは、ノズルを有し、前記インクジェット用インクを前記ノズルから記録媒体に吐出する吐出動作と、前記ノズル内の前記インクジェット用インクのメニスカスを揺動させる揺動動作とを行う。前記インクジェット用インクは、顔料及び水性媒体を含有する。前記水性媒体は、水及び特定有機溶媒を含有する。前記特定有機溶媒のオクタノール/水分配係数LogPは、0.30以上1.50以下である。乾燥処理後の前記インクジェット用インクの25℃における粘度は、120mPa・s以上3800mPa・s以下である。前記乾燥処理は、前記インクジェット用インクの質量が30質量%減少するまで前記インクジェット用インクを40℃で加熱する処理である。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態のインクジェット記録装置は、インクの吐出安定性に優れると共に、所望の画像濃度を有する画像を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態のインクジェット記録装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書において、個数平均一次粒子径は、特に断りがない限り、走査型電子顕微鏡(例えば、日本電子株式会社製「JSM-7401F」)及び画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて測定した、100個の一次粒子の円相当径(ヘイウッド径:一次粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。
【0010】
有機溶媒のオクタノール/水分配係数LogPは、文献値が有る有機溶媒については文献値を採用でき、文献値が無い有機溶媒については計算ソフト(例えば、パーキンエルマー社製「ChemDraw」)により算出される値を採用できる。
【0011】
粘度は、25℃において、回転粘度計(例えば、東機産業株式会社製「TV-100EL」)を用いて測定される値である。
【0012】
本明細書では、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。本明細書に記載の各成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
<インクジェット記録装置>
本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置は、インクジェット用インク(以下、「インク」と記載することがある)と、記録ヘッドとを備える。記録ヘッドは、ノズルを有し、インクをノズルから記録媒体に吐出する吐出動作と、ノズル内のインクのメニスカスを揺動させる揺動動作とを行う。インクは、顔料及び水性媒体を含有する。水性媒体は、水及び特定有機溶媒を含有する。特定有機溶媒のオクタノール/水分配係数LogP(以下、「LogP」と記載することがある)は、0.30以上1.50以下である。乾燥処理後のインクの25℃における粘度は、120mPa・s以上3800mPa・s以下である。乾燥処理は、インクの質量が30質量%減少するまでインクを40℃で加熱する処理である。
【0014】
本実施形態のインクジェット記録装置で画像形成を行う記録媒体としては、浸透性の記録媒体(例えば、普通紙)が好ましい。公知のインクジェット記録装置(特に、ライン型の記録ヘッドを備える公知のインクジェット記録装置)で普通紙に画像形成を行うと、画像濃度が不十分となり易い。これに対して、本実施形態のインクジェット記録装置は、普通紙に画像形成を行う場合でも、所望の画像濃度を有する画像を形成できる。
【0015】
本実施形態のインクジェット記録装置は、上述の構成を備えることにより、インクの吐出安定性に優れると共に、所望の画像濃度を有する画像を形成できる。本実施形態のインクジェット記録装置が上述の効果を奏する理由は、以下のように推察される。本実施形態のインクジェット記録装置が備えるインクは、水性媒体として、疎水性が比較的高い特定有機溶媒(LogPが0.30以上1.50以下の有機溶媒)を含む。インクは、特定有機溶媒を含有することにより、乾燥して水分が減少した際に、高い疎水性を示す。インクの疎水性が高くなると、インクに含まれる顔料が凝集し、インクが増粘する。このような理由から、本実施形態のインクジェット記録装置が備えるインクは、乾燥して水分が失われた際に、顔料が凝集して増粘し易い(乾燥処理後の25℃における粘度が120mPa・s以上3800mPa・s以下)。そして、このような乾燥によって増粘し易いインクは、記録媒体に着弾した後に速やかに増粘し、記録媒体の表面付近に顔料を留めて画像濃度が高い画像を形成する。このように、本実施形態のインクジェット記録装置は、乾燥によって増粘し易いインクを用いることにより、所望の画像濃度を有する画像を形成できる。
【0016】
一方、記録ヘッドのノズルの吐出口付近に充填されているインクは、吐出口を介して外気と接しているため、乾燥に晒されている。そのため、乾燥によって増粘し易いインクを公知のインクジェット記録装置に用いると、記録ヘッドのノズルの吐出口付近で乾燥して増粘し、吐出不良を発生させることがある。これに対して、本実施形態のインクジェット記録装置が備える記録ヘッドは、インクをノズルから記録媒体に吐出する吐出動作に加え、ノズル内のインクのメニスカスを揺動させる揺動動作を行う。記録ヘッドは、上述の揺動動作でノズル内のインクの拡散を促し、吐出口付近に充填されるインクが乾燥することを抑制できる。その結果、本実施形態のインクジェット記録装置は、インクの吐出安定性に優れる。
【0017】
以下、本実施形態のインクジェット記録装置について、インクの詳細を説明した後、装置の詳細を説明する。なお、本実施形態のインクジェット記録装置は、1種のインクのみを備えてもよく、複数種のインク(例えば、イエローインク、シアンインク、マゼンタインク及びブラックインクの4種)を備えてもよい。本実施形態のインクジェット記録装置が複数種のインクを備える場合、少なくとも1つのインクが以下の条件を満たせばよいが、全てのインクが以下の条件を満たすことが好ましい。
【0018】
[インク]
インクは、顔料及び水性媒体を含有する。インクは、顔料被覆樹脂及び界面活性剤のうち少なくとも1つを更に含有することが好ましい。
【0019】
乾燥処理後のインクの25℃における粘度は、120mPa・s以上3800mPa・s以下であり、200mPa・s以上3400mPa・s以下が好ましく、200mPa・s以上500mPa・s以下がより好ましい。乾燥処理後のインクの25℃における粘度を120mPa・s以上とすることで、本実施形態のインクジェット記録装置は、所望の画像濃度を有する画像を形成できる。乾燥処理後のインクの25℃における粘度を3800mPa・s以下とすることで、本実施形態のインクジェット記録装置は、インクの吐出安定性を最適化できる。
【0020】
なお、乾燥処理は、インクの質量が30質量%減少するまでインクを40℃で加熱する処理である。加熱処理の詳細については、実施例に記載の方法又はこれに準拠した方法を採用できる。
【0021】
インクの25℃における粘度は、6.0mPa・s以上10.0mPa・s以下が好ましく、7.0mPa・s以上8.8mPa・s以下がより好ましい。インクの25℃における粘度を6.0mPa・s以上10.0mPa・s以下とすることで、本実施形態のインクジェット記録装置は、インクの吐出安定性を更に最適化できる。
【0022】
(顔料)
インクにおいて、顔料は、例えば、顔料被覆樹脂と共に顔料粒子を構成する。顔料粒子は、例えば、顔料を含むコアと、コアを被覆する顔料被覆樹脂とにより構成される。顔料粒子は、例えば、水性媒体に分散した状態で存在する。
【0023】
顔料としては、例えば、黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、紫色顔料、及び黒色顔料が挙げられる。黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(74、93、95、109、110、120、128、138、139、151、154、155、173、180、185、及び193)が挙げられる。橙色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ(34、36、43、61、63、及び71)が挙げられる。赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(122及び202)が挙げられる。青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(15、より具体的には15:3)が挙げられる。紫色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット(19、23、及び33)が挙げられる。黒色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック(7)が挙げられる。
【0024】
顔料粒子の個数平均一次粒子径としては、10nm以上300nm以下が好ましく、40nm以上120nm以下がより好ましい。顔料粒子の個数平均一次粒子径を10nm以上とすることで、本実施形態のインクジェット記録装置は、形成される画像に所望の画像濃度を付与し易くなる。顔料粒子の個数平均一次粒子径を300nm以下とすることで、インクに優れた保存安定性を付与できる。
【0025】
インクにおける顔料の含有割合としては、1.0質量%以上12.0質量%以下が好ましく、4.0質量%以上8.0質量%以下がより好ましい。インクにおける顔料の含有割合を1.0質量%以上とすることで、本実施形態のインクジェット記録装置は、所望の画像濃度を有する画像を更に形成し易くなる。インクにおける顔料の含有割合を10.0質量%以下とすることで、本実施形態のインクジェット記録装置は、インクの吐出安定性を更に最適化できる。
【0026】
(顔料被覆樹脂)
顔料被覆樹脂は、顔料の表面に付着して、水性媒体に対する顔料の分散安定性を最適化する。なお、顔料被覆樹脂の一部は、顔料の表面に付着することなく、水性媒体中に遊離していてもよい。顔料被覆樹脂としては、例えば、ポリエーテル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン-(メタ)アクリル樹脂、及びスチレン-マレイン酸樹脂が挙げられる。
【0027】
インクにおいて、顔料被覆樹脂の含有割合としては、0.1質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.7質量%以上2.5質量%以下がより好ましい。顔料被覆樹脂の含有割合を0.1質量%以上とすることで、水性媒体に対する顔料の分散安定性を更に最適化できる。顔料被覆樹脂の含有割合を5.0質量%以下とすることで、本実施形態のインクジェット記録装置は、インクの吐出安定性を更に最適化できる。
【0028】
インクにおいて、顔料の質量に対する顔料被覆樹脂の質量の比率としては、0.05以上0.40以下が好ましく、0.10以上0.30以下がより好ましい。顔料の質量に対する顔料被覆樹脂の質量の比率を0.10以上0.40以下とすることで、水性媒体に対する顔料の分散安定性を更に最適化できる。
【0029】
(水性媒体)
水性媒体は、水及び特定有機溶媒を含有する媒体である。水性媒体は、溶媒として機能してもよく、分散媒として機能してもよい。水性媒体は、水及び特定有機溶媒に加え、特定有機溶媒以外の水溶性有機溶媒(以下、その他の水溶性有機溶媒と記載することがある)を更に含有してもよい。
【0030】
(水)
インクにおいて、水の含有割合としては、40.0質量%以上80.0質量%以下が好ましく、55.0質量%以上70.0質量%以下がより好ましく、60.0質量%以上65.0質量%以下が更に好ましい。
【0031】
(特定有機溶媒)
特定有機溶媒のLogPは、0.30以上1.50以下であり、0.30以上0.60以下が好ましい。特定有機溶媒としては、例えば、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(LogP:0.35)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(LogP:0.44)、テトラヒドロフラン(LogP:0.45)、及び酢酸エチル(LogP:0.70)が挙げられる。特定有機溶媒としては、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、又はトリエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0032】
インクにおいて、特定有機溶媒の含有割合としては、9.0質量%以上21.0質量%以下が好ましく、16.0質量%以上21.0質量%以下がより好ましい。特定有機溶媒の含有割合を9.0質量%以上21.0質量%以下とすることで、乾燥処理後のインクの25℃における粘度を上述の範囲に調整し易くなる。
【0033】
(その他の水溶性有機溶媒)
その他の水溶性有機溶媒は、LogPが0.30未満、又は1.50超の水溶性有機溶媒である。その他の水溶性有機溶媒としては、例えば、グリコール化合物、グリコールエーテル化合物、ラクタム化合物、含窒素化合物、アセテート化合物、チオジグリコール、グリセリン及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0034】
グリコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールが挙げられる。
【0035】
その他の水溶性有機溶媒としては、グリコール化合物が好ましく、1,3-プロパンジオールがより好ましい。
【0036】
インクにおけるその他の水溶性有機溶媒の含有割合としては、5.0質量%以上30.0質量%以下が好ましく、7.0質量%以上12.0質量%以下がより好ましい。
【0037】
インクにおける特定有機溶媒及びその他の水溶性有機溶媒の合計含有割合としては、20.0質量%以上40.0質量%以下が好ましく、25.0質量%以上35.0質量%以下がより好ましい。
【0038】
水性媒体は、水、特定有機溶媒及び1,3-プロパンジオールのみを含有することが好ましい。水性媒体における水、特定有機溶媒及び1,3-プロパンジオールの合計含有割合としては、90質量%以上が好ましく、99質量%以上がより好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0039】
(界面活性剤)
界面活性剤は、インクに含まれる各成分の相溶性及び分散安定性を最適化する。また、界面活性剤は、インクに、記録媒体に対する濡れ性を付与する。インクにおける界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤が好ましい。
【0040】
インクにおけるノニオン界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール界面活性剤(アセチレングリコール化合物を含む界面活性剤)、シリコーン界面活性剤(シリコーン化合物を含む界面活性剤)及びフッ素界面活性剤(フッ素樹脂又はフッ素含有化合物を含む界面活性剤)が挙げられる。アセチレングリコール界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコールのエチレンオキシド付加物及びアセチレングリコールのプロピレンオキシド付加物が挙げられる。インクは、アセチレングリコール界面活性剤を含有することが好ましい。
【0041】
インクにおける界面活性剤の含有割合としては、0.1質量%以上2.0質量%以下が好ましく、0.3質量%以上0.8質量%以下がより好ましい。
【0042】
(その他の成分)
インクは、必要に応じて、公知の添加剤(より具体的には、例えば、溶解安定剤、乾燥防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤及び防カビ剤)を更に含有してもよい。
【0043】
下記表1に、インクの好ましい組成である組成A-Cを挙げる。なお、下記表1の数値は、質量%を示す。例えば、組成Aの顔料の「5.0-7.5」という表記は、顔料を5.0質量%以上7.5質量%以下含有することを示す。他の欄の表記も同様である。「MPD」、「1,3PD」及び「BTG」は、それぞれ、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-プロパンジオール及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルを示す。
【0044】
【0045】
(インクの製造方法)
インクは、例えば、顔料を含む顔料分散液と、水性媒体と、必要に応じて添加される他の成分(例えば、界面活性剤)とを混合することで製造できる。インクの製造では、各成分を均一に混合した後、フィルター(例えば孔径5μm以下のフィルター)により異物及び粗大粒子を除去してもよい。
【0046】
[インクジェット記録装置の構造]
以下、本実施形態のインクジェット記録装置について、図面を参照しつつ説明する。なお、参照する図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の大きさ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合がある。
【0047】
図1は、本実施形態のインクジェット記録装置の一例であるインクジェット記録装置100の要部を示す図である。
図1は、インクジェット記録装置100の要部を示す図である。
図1に示すように、インクジェット記録装置100は、搬送部1と、4個のライン式記録ヘッド11とを主に備える。インクジェット記録装置100は、給紙トレイ2、給紙ローラー3、給紙従動ローラー4、搬送ベルト5、ベルト駆動ローラー6、ベルト従動ローラー7、排出ローラー8、排出従動ローラー9及び排紙トレイ10を更に備える。搬送ベルト5、ベルト駆動ローラー6及びベルト従動ローラー7は、搬送部1の一部を構成する。インクジェット記録装置100の図中左端部には、給紙トレイ2が設けられている。給紙トレイ2は、記録用紙P(記録媒体)を収容する。給紙トレイ2の一端部には、給紙ローラー3と、給紙従動ローラー4とが設けられている。給紙ローラー3は、収容された記録用紙Pを、最上位置の記録用紙Pから順に一枚ずつ取り出し、搬送ベルト5に搬送し給紙する。給紙従動ローラー4は、給紙ローラー3に圧接されて従動回転する。
【0048】
給紙ローラー3及び給紙従動ローラー4の用紙搬送方向下流側(
図1において右側)には、搬送ベルト5が回転自在に配設されている。搬送ベルト5は、ベルト駆動ローラー6とベルト従動ローラー7とに掛け渡されている。ベルト駆動ローラー6は、用紙搬送方向下流側に配置される。ベルト駆動ローラー6は、搬送ベルト5を駆動する。ベルト従動ローラー7は、用紙搬送方向上流側に配置される。ベルト従動ローラー7は、搬送ベルト5を介してベルト駆動ローラー6に従動して回転する。ベルト駆動ローラー6が時計方向に回転駆動されることにより、記録用紙Pが矢印で示される搬送方向Xに搬送される。
【0049】
また、搬送ベルト5の搬送方向下流側には、排出ローラー8と排出従動ローラー9とが設けられている。排出ローラー8は、図中時計回りに駆動され、画像が形成された記録用紙Pを装置筐体外へ排出する。排出従動ローラー9は、排出ローラー8の上部に圧接され従動回転する。排出ローラー8及び排出従動ローラー9の下流側には、排紙トレイ10が設けられている。排紙トレイ10には、装置筐体外に排出された記録用紙Pが積載される。
【0050】
4個のライン式記録ヘッド11は、第1ライン式記録ヘッド11C、第2ライン式記録ヘッド11M、第3ライン式記録ヘッド11Y及び第4ライン式記録ヘッド11Kを含む。第1ライン式記録ヘッド11C、第2ライン式記録ヘッド11M、第3ライン式記録ヘッド11Y及び第4ライン式記録ヘッド11Kは、搬送ベルト5の上方において、記録用紙Pの搬送方向Xの上流側から下流側に向けて、この順に略等間隔で配設されている。4個のライン式記録ヘッド11は、それぞれ、搬送ベルト5の上面との距離が所定の長さとなる高さで支持されている。4個のライン式記録ヘッド11は、それぞれ、搬送ベルト5上を搬送される記録用紙Pに画像を記録する。4個のライン式記録ヘッド11は、それぞれ、異なる4色(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)のインク(第1インク、第2インク、第3インク及び第4インク)が収容されている。4個のライン式記録ヘッド11は、それぞれ、一定の吐出間隔Tを空け、所定の順序に沿って記録用紙Pにインクジェット吐出を行う。これにより、記録用紙P上にカラー画像が形成される。
【0051】
以下、
図2及び
図3を用いて、ライン式記録ヘッド11の詳細を説明する。なお、第1ライン式記録ヘッド11C、第2ライン式記録ヘッド11M、第3ライン式記録ヘッド11Y及び第4ライン式記録ヘッド11Kは、ほぼ同一の構造を有する。そのため、以下の説明では、第1ライン式記録ヘッド11Cを代表に挙げて説明するが、同様の説明は第2ライン式記録ヘッド11M、第3ライン式記録ヘッド11Y及び第4ライン式記録ヘッド11Kにも当てはまる。
【0052】
図2はインクジェット記録装置100の第1ライン式記録ヘッド11Cの底面図である。
図3は、
図2のI-I断面における拡大図である。
【0053】
図2に示すように、第1ライン式記録ヘッド11Cの底面223には複数の吐出口224が開口している。複数の吐出口224は、インク滴が記録用紙P上に吐出されたときに隣り合う記録ドット間に空白が生じないように、底面223上に千鳥状に配置される。また、吐出口224は、底面223の長手方向において、インクジェット記録装置100で画像形成可能な最大の用紙の最大幅に亘って設けられる。
【0054】
図3に示すように、第1ライン式記録ヘッド11Cは、複数のノズル222(
図3では1つのみ図示)と、撥水膜225と、複数のインク収容室226(
図3では1つのみ図示)と、インク槽(図示せず)と、共通流路227と、供給孔228と、ノズル流路229と、振動板230と、共通電極231と、圧電素子232と、個別電極233とを備える。
【0055】
複数のノズル222の各々は、第1ライン式記録ヘッド11Cの底面223に開口して吐出口224を形成している(
図2参照)。複数のノズル222は、第1ライン式記録ヘッド11Cの長手方向に沿って複数の列に配列される。
【0056】
撥水膜225は、底面223のうち、吐出口224以外の部分を覆うように形成されている。
【0057】
インク収容室226は、複数の吐出口224の各々に対応して1つずつ設けられる。
【0058】
インク槽はインクを貯留する。第1ライン式記録ヘッド11Cのインク槽はシアンのインクカートリッジ(図示せず)に連通し、当該インクカートリッジから供給されるシアンインクを貯留する。なお、第2ライン式記録ヘッド11M、第3ライン式記録ヘッド11Y及び第4ライン式記録ヘッド11Kのインク槽は、それぞれ、マゼンタのインクカートリッジ、イエローのインクカートリッジ又はブラックのインクカートリッジ(何れも図示せず)に連通し、当該インクカートリッジから供給されるマゼンタインク、イエローインク又はブラックインクを貯留する。
【0059】
共通流路227は、複数のインク収容室226の各々にインク槽のインクを供給する。複数のインク収容室226と共通流路227とは供給孔228を介して連通している。
【0060】
ノズル流路229はノズル222とインク収容室226とを連通させる。
【0061】
振動板230は、インク収容室226の壁のうち底面223と反対側の壁を構成する。振動板230は複数のインク収容室226に亘って連続して形成されている。
【0062】
共通電極231は、振動板230上において、複数のインク収容室226に亘って連続して形成されている。
【0063】
圧電素子232は、共通電極231上において、複数のインク収容室226の各々に対応して設けられている。
【0064】
個別電極233は、共通電極231との間に圧電素子232を挟むように、複数のインク収容室226の各々に対応して設けられている。
【0065】
後述する吐出用駆動パルスの印加によって、吐出口224から1ドット分のインク滴が記録用紙P上に吐出される。なお、インク滴が吐出されない間もノズル222内にはインクが満たされており、ノズル222内でインクはメニスカスMを形成している
【0066】
インクジェット記録装置100の制御機構(図示略)は、吐出用駆動パルスを個別電極233に印加することで、圧電素子232を変形させる。この圧電素子232の変形が振動板230に伝えられ、振動板230の変形によってインク収容室226は圧縮される。その結果、ノズル222内のインクに圧力が付与され、ノズル222を通ったインクが吐出口224からインク滴となって記録用紙P上に吐出される。
【0067】
吐出用駆動パルスは、パルス幅がヘッド流路の固有振動周期の半周期に近い長さとなるように設定される。ここで「ヘッド流路」とは、ノズル222、ノズル流路229、インク収容室226、及び供給孔228を含む部分で構成される流路である。よって、圧電素子232に印加される駆動電圧のパルス幅も、同様にヘッド流路の固有振動周期の半分に近い長さになる。このような駆動パルスによると、1つのインク滴が吐出口224から吐出される。これにより、第1ライン式記録ヘッド11Cは、インクを所定の位置のノズル222から記録媒体に吐出する吐出動作を実施する。
【0068】
インクジェット記録装置100の制御機構(図示略)は、揺動用駆動パルスを個別電極233に印加することで、圧電素子232を変形させる。揺動用駆動パルスは、吐出用駆動パルスのパルス幅よりも小さい幅のパルスが複数回繰り返して印加されるように設定される。揺動用駆動パルスの個々のパルス幅は、ヘッド流路の固有振動周期よりも短く設定される。よって、圧電素子232に印加される駆動電圧のパルス幅も、同様にヘッド流路の固有振動周期よりも短くなる。このような短いパルスが連続すると、ノズル222内のインクの流速は、メニスカスMが揺動されるもののインク滴が吐出されない程度の値となる。これにより、第1ライン式記録ヘッド11Cは、ノズル222内のインクのメニスカスMを揺動させる揺動動作を実施する。
【0069】
以上のように、複数のインク収容室226の各々に設けられた圧電素子232がインクに圧力を付与することにより、吐出動作又は揺動動作が行われる。なお、揺動動作とは、ノズル222内のインクのメニスカスMを揺動させるが、ノズル222からインク滴を吐出させない動作である。
【0070】
第1ライン式記録ヘッド11Cは、例えば、揺動動作の直後に吐出動作を行う。なお、第1ライン式記録ヘッド11Cは、短時間に複数回の吐出動作を行う際には、特定の吐出動作と次の吐出動作との間に揺動動作を行わず、連続して吐出動作を行ってもよい。
【0071】
以上、本実施形態のインクジェット記録装置の一例について説明したが、本実施形態のインクジェット記録装置は、
図1~3に示されるものに限定されない。
【0072】
図1~3では、4色のインクに対応する4個の記録ヘッド11を備えるインクジェット記録装置100を例に挙げて説明した。しかしながら、本実施形態のインクジェット記録装置が備える記録ヘッドの数は、特に限定されず、例えば、1個以上10個以下とすることができ、3個以上5個以下が好ましい。
【0073】
また、インクジェット記録装置100は、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの4色のインクをこの順番で吐出するが、本実施形態のインクジェット記録装置において、インクの種類、組み合わせ及び吐出順序はこれに限定されない。
【0074】
更に、インクジェット記録装置100は、揺動用駆動パルスを圧電素子232に印加することでノズル222内のインクのメニスカスMを揺動させる。しかし、本実施形態のインクジェット記録装置は、他の機構(例えば、記録ヘッド自体の揺動)によってノズルのインクのメニスカスを揺動させてもよい。そのため、記録ヘッドは、サーマル式の記録ヘッドであってもよい。
【0075】
更に、本実施形態のインクジェット記録装置は、スキャナー、複写機、プリンター又はファクシミリの機能を更に有する複合機であってもよい。
【実施例0076】
以下、本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0077】
[粘度の測定]
実施例において、有機溶媒及びインクの粘度の測定は、温度25℃において、トルクバランス・サーボ方式回転粘度計(東機産業株式会社製「TV-100EL」)を用いて実施した。
【0078】
実施例において使用した有機溶媒の詳細を下記表2に示す。なお、3-メチル-1,5-ペンタンジオール及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルは、特定有機溶媒であった。
【0079】
【0080】
[インクの調製]
以下の方法により、実施例及び比較例のインクジェット記録装置に用いるインク(A)~(F)を調製した。各インクの組成を下記表3に示す。
【0081】
(黒色顔料分散液の調製)
黒色顔料としてのカーボンブラック(キャボット社製「Black Pearls(登録商標)800」)18.0質量部と、顔料被覆樹脂(ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK(登録商標)-190」、顔料親和性基を有するアクリルブロック共重合体)4.0質量部と、イオン交換水78.0質量部とをディスパーを用いて混合した。得られた混合液を、ビーズミルを用いて分散処理することにより、黒色顔料分散液(顔料粒子のD50:110nm)を得た。
【0082】
(インク(A)の調製)
35.0質量部の黒色顔料分散液(黒色顔料6.3質量部、顔料被覆樹脂1.4質量部、イオン交換水27.3質量部)と、20.0質量部の3-メチル-1,5-ペンタンジオールと、10.0質量部の1,3-プロパンジオールと、0.5質量部の界面活性剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール(登録商標)420」、アセチレン界面活性剤)と、34.5質量部のイオン交換水とを混合し、混合液を得た。
【0083】
上述の混合物を、攪拌機(新東科学株式会社製「スリーワンモーターBL-600」)を用いて回転数400rpmで攪拌した。次に、孔径5μmのフィルターを用いて、攪拌後の混合液を孔径5μmのフィルターでろ過し、異物及び粗大粒子を除去した。その結果、インク(A)を得た。
【0084】
(インク(B)~(F)の調製)
使用する原料の種類及び量を下記表3に示す通りに変更した以外は、インク(A)の調製と同様の方法により、インク(B)~(F)を調製した。下記表3に記載の数字は、各成分の質量部を示す。「MPD」、「1,3PD」及び「BTG」は、それぞれ、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-プロパンジオール及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルを示す。
【0085】
【0086】
[インクの粘度測定]
上述の方法により、インク(A)~(F)について、25℃における粘度を測定した。測定結果を下記表4に示す。
【0087】
[乾燥処理後のインクの粘度測定]
測定対象となるインク(詳しくは、インク(A)~(F)の何れか)100質量部をシャーレに投入した。シャーレを40℃のオーブンに入れ、乾燥処理を行った。乾燥処理中は、シャーレ内の測定対象の質量を経時的に測定した。そして、シャーレ内の測定対象の質量が70質量部にまで減少した段階(測定対象の質量が30質量%減少した段階)で、乾燥処理を終了した。乾燥処理後の測定対象について、上述の方法により、25℃における粘度を測定した。測定結果(乾燥粘度)を下記表4に示す。
【0088】
<評価>
ピエゾ方式でインクを吐出するライン型の記録ヘッドを備える印字試験機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製)を、評価機(インクジェット記録装置)として用いた。上述の記録ヘッドは、インクをノズルから記録媒体に吐出する吐出動作(吐出液滴量:10pL、解像度600dpi)と、ノズル内のインクのメニスカスを揺動させる揺動動作とを実施可能であった。なお、記録ヘッドは、揺動動作の際に、インクが吐出されない程度の弱い圧力をノズルに加えることで、ノズル内のインクのメニスカスを揺動させた。記録媒体としては、A4サイズの普通紙(mondi社製「Color Copy(登録商標)」、坪量90g/m2)を用いた。
【0089】
評価機の記録ヘッドに下記表4に示すインク(詳しくは、インク(A)~(F)の何れか)を充填し、それぞれ実施例1~3及び比較例1~3のインクジェット記録装置とした。実施例1~3及び比較例1~3のインクジェット記録装置について、形成される画像の画像濃度と、インクの吐出安定性とを評価した。評価結果を下記表4に示す。なお、評価は、特に断りのない限り、温度25℃、湿度50%RHの環境下において行った。
【0090】
[画像濃度]
評価機を用いて、記録媒体にソリッド画像を形成した。形成されたソリッド画像の画像濃度(ID値)を、蛍光分光濃度計(コニカミノルタ株式会社製「FD-5」)で測定した。画像濃度は、以下の基準で判定した。
【0091】
(画像濃度の基準)
A(良好):ID値が1.2以上である。
B(不良):ID値が1.2未満である。
【0092】
[吐出安定性]
実施例1~3及び比較例1~3のインクジェット記録装置に対して、以下の「吐出試験(揺動あり)」及び「吐出試験(揺動無し)」を実施した。そして、「吐出試験(揺動あり)」及び「吐出試験(揺動無し)」のうち少なくとも一方が合格であるインクジェット記録装置は、吐出安定性が良好(A)であると判断した。一方、「吐出試験(揺動あり)」及び「吐出試験(揺動無し)」のうち両方が不合格であるインクジェット記録装置は、吐出安定性が不良(B)であると判断した。
【0093】
(吐出試験(揺動あり))
評価機を用いて、記録媒体にソリッド画像(I)を形成した。次に、記録ヘッドにキャップを被せない状態で、評価機を1分間静置した。次に、記録ヘッドによって揺動動作を実施した。次に、評価機を用いて記録媒体にソリッド画像(II)を再度形成した。ソリッド画像(II)を目視で観察し、吐出不良に起因する画像不良の有無を確認した。画像不良としては、具体的には、ソリッド画像の印字方向先端部におけるインクの吐出抜け、及び吐出ヨレに起因する画像の乱れを確認した。吐出安定性(揺動あり)は、以下の基準で判定した。
【0094】
(吐出試験(揺動あり)の基準)
OK(合格):画像不良が確認されなかった。
NG(不合格):画像不良が確認された。
【0095】
(吐出試験(揺動なし))
評価機を用いて、記録媒体にソリッド画像(I)を形成した。次に、記録ヘッドにキャップを被せない状態で、評価機を1分間静置した。次に、評価機を用いて記録媒体にソリッド画像(II)を再度形成した。ソリッド画像(II)を目視で観察し、吐出不良に起因する上述の画像不良の有無を確認した。吐出安定性(揺動なし)は、以下の基準で判定した。
【0096】
(吐出試験(揺動なし)の基準)
OK(合格):画像不良が確認されなかった。
NG(不合格):画像不良が確認された。
【0097】
【0098】
表1~4に示すように、実施例1~3のインクジェット記録装置は、インクと、記録ヘッドとを備えていた。記録ヘッドは、ノズルを有し、インクをノズルから記録媒体に吐出する吐出動作と、ノズル内のインクのメニスカスを揺動させる揺動動作とを行った。インクは、顔料及び水性媒体を含有していた。水性媒体は、水及び特定有機溶媒を含有していた。特定有機溶媒のLogPは、0.30以上1.50以下であった。乾燥処理後のインクの25℃における粘度は、120mPa・s以上3800mPa・s以下であった。乾燥処理は、インクの質量が30質量%減少するまでインクを40℃で加熱する処理であった。実施例1~3のインクジェット記録装置は、インクの吐出安定性に優れると共に、所望の画像濃度を有する画像を形成できた。
【0099】
一方、比較例1のインクジェット記録装置に用いたインク(D)は、乾燥処理後の25℃における粘度が3800mPa・s超であった。比較例1のインクジェット記録装置は、インク(D)がノズルの開口部で増粘し、吐出安定性を低下させたと判断される。
【0100】
比較例2及び3のインクジェット記録装置に用いたインク(E)及び(F)は、乾燥処理後の25℃における粘度が120mPa・s未満であった。比較例2及び3のインクジェット記録装置は、記録媒体に着弾したインク(E)及び(F)があまり増粘しないため、形成される画像の画像濃度が不良であった。