(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152254
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20241018BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20241018BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20241018BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B60C11/00 D
B60C11/03 300C
B60C11/12 A
B60C11/13 C
B60C11/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066329
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】岩本 直樹
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA07
3D131BA08
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3D131EC12X
3D131EC14V
3D131EC15W
(57)【要約】
【課題】スノー路面での走行性能を向上させることができるタイヤを提供する。
【解決手段】本発明は、トレッド部2を有するタイヤである。トレッド部2は、接地面2sを形成するキャップゴム層23を含む。トレッド部2は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝3と、複数の周方向溝3に区分された複数の陸部4とを含む。複数の陸部4のそれぞれは、タイヤ軸方向に延びる複数の横溝16で区分された複数のブロック17を含むブロック列である。複数のブロック17のそれぞれには、タイヤ軸方向に延びる複数のサイプ18が設けられている。キャップゴム層23は、ガラス転移温度Tgが-30℃以下のキャップゴム23Gからなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、接地面を形成するキャップゴム層を含み、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、
前記複数の陸部のそれぞれは、タイヤ軸方向に延びる複数の横溝で区分された複数のブロックを含むブロック列であり、
前記複数のブロックのそれぞれには、タイヤ軸方向に延びる複数のサイプが設けられており、
前記キャップゴム層は、ガラス転移温度Tgが-30℃以下のキャップゴムからなる、
タイヤ。
【請求項2】
前記ガラス転移温度Tg(℃)と、前記接地面の前記複数の横溝のエッジ成分の総和Evt(mm)を、前記トレッド部に配された前記周方向溝、前記横溝及び前記サイプを全て埋めた仮想トレッド面の面積St(mm2)で除した単位面積当たりの横溝エッジ成分量Evt/St(mm/ mm2)との積Tg・Evt/Stは、-2.7~-3.6(℃・mm/ mm2)である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記キャップゴムの破断強度TB(MPa)と、前記接地面の前記複数のサイプのエッジ成分の総和Est(m)との積TB・Estは、100~170(MPa・m)である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記複数のサイプは、前記複数の周方向溝の最大深さの70%以上の最大深さを有する深底サイプを含み、
前記複数のブロックの少なくとも1つにおいて、前記複数のサイプの内の60%以上が前記深底サイプである、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記キャップゴムの破断時伸びEBは、400%以上である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記複数の横溝は、タイヤ周方向に一定又は可変のピッチで配されており、
前記複数の横溝の溝幅は、それぞれ前記ピッチの27%~29%である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記複数の陸部は、タイヤ赤道上に配されたクラウン陸部を含み、
前記複数の横溝は、前記クラウン陸部を横断する複数のクラウン横溝を含み、
前記複数のクラウン横溝のそれぞれは、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜した第1溝部と、タイヤ軸方向に対して前記第1溝部とは逆方向に傾斜した第2溝部とを含む、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記トレッド部は、第1トレッド端を含み、
前記陸部は、タイヤ赤道と前記第1トレッド端との間に配された第1ミドル陸部を含み、
前記第1ミドル陸部は、前記横溝に区分された複数の第1ミドルブロックを含み、
前記複数の第1ミドルブロックのそれぞれには、前記第1ミドルブロックをタイヤ周方向に横断する1本の縦サイプが設けられており、
前記縦サイプには、面取り部が形成されている、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記トレッド部は、第1トレッド端を含み、
前記陸部は、最も前記第1トレッド端側に配された第1ショルダー陸部を含み、
前記第1ショルダー陸部は、複数の第1ショルダー横溝に区分された複数の第1ショルダーブロックを含み、
前記複数の第1ショルダーブロックのそれぞれには、複数のショルダー縦サイプが設けられており、
前記複数のショルダー縦サイプは、前記第1ショルダー横溝から延び、かつ、前記第1ショルダーブロック内で途切れる、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ミドルブロックに複数のミドルサイプが設けられたタイヤが提案されている。前記タイヤは、前記ミドルサイプを改善することにより、雪上性能を維持しつつ、ドライ路面での操縦安定性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両の高性能化に伴い、スノー路面での走行性能について、さらなる向上が求められている。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、スノー路面での走行性能を向上させたタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、接地面を形成するキャップゴム層を含み、前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、前記複数の陸部のそれぞれは、タイヤ軸方向に延びる複数の横溝で区分された複数のブロックを含むブロック列であり、前記複数のブロックのそれぞれには、タイヤ軸方向に延びる複数のサイプが設けられており、前記キャップゴム層は、ガラス転移温度Tgが-30℃以下のキャップゴムからなる、タイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、スノー路面での走行性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の横断面図である。
【
図4】
図3の2つの第1ミドルブロックの拡大図である。
【
図6】他の実施形態の縦サイプの拡大断面図である。
【
図7】第1ショルダー周方向溝の拡大断面図と、第1ミドル横溝の拡大断面図を並べた参考図である。
【
図8】
図2の第2ショルダー周方向溝及び第2クラウン周方向溝の拡大図である。
【
図11】
図2の第2ミドル陸部及びクラウン陸部の拡大図である。
【
図13】他の実施形態のクラウンブロックの先細部の断面図である。
【
図14】
図2の第1ショルダー陸部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態のタイヤ1の正規状態におけるトレッド部2の横断面図である。
図2は、トレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、乗用車用の空気入りタイヤであって、ドライ路面やウェット路面に加えてスノー路面も走行可能なオールシーズンタイヤ(オールウェザータイヤとも称される。)として好適に使用される。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、重荷重用の空気入りタイヤや、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤに適用されても良い。
【0010】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0011】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0012】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0013】
図1に示されるように、トレッド部2は、接地面2sを形成するキャップゴム層23を含む。本実施形態のトレッド部2は、キャップゴム層23のタイヤ半径方向内側に配されたベースゴム層24をさらに含む。これらキャップゴム層23及びベースゴム層24は、公知のゴム材料や添加剤が適宜組み合わされて製造され得る。
【0014】
図2に示されるように、本発明のトレッド部2は、第1トレッド端T1と、第2トレッド端T2と、第1トレッド端T1と第2トレッド端T2との間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝3と、これらの周方向溝3に区分された複数の陸部4とを含む。望ましい態様として、本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2が4本の周方向溝3及び5つの陸部4で構成されている。
【0015】
第1トレッド端T1及び第2トレッド端T2は、それぞれ、前記正規状態のタイヤ1に正規荷重の70%が負荷され、トレッド部2をキャンバー角0°で平面に接地させたときの接地面の端に相当する。
【0016】
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。また、各種の規格が定められていないタイヤの場合、「正規荷重」は、上述の規格に準じ、タイヤを使用する上で適用可能な最大の荷重を指す。
【0017】
本発明では、複数の陸部4のそれぞれが、タイヤ軸方向に延びる複数の横溝16によって区分された複数のブロック17を含むブロック列として構成されている。また、複数のブロック17のそれぞれには、タイヤ軸方向に延びる複数のサイプ18が設けられている。
【0018】
本明細書において、「サイプ」とは、小さな幅を有する切れ込みであって、サイプ本体部において、2つのサイプ壁間の幅が1.5mm以下であるものを意味する。また、サイプ本体部は、2つのサイプ壁が互いに略平行にタイヤ半径方向に延びる部分を意味する。「略平行」とは、2つのサイプ壁の間の角度が10°以下である態様を意味する。後述されるように、サイプは、そのエッジに面取り部が形成されているものでも良い。また、サイプは、その底部において幅が拡大した所謂フラスコ底を備えるものでも良い。
【0019】
サイプは、上述の構成によって、接地圧が作用したとき、サイプ本体部において2つのサイプ壁同士が接触し、サイプが配された部分の剛性を維持することができる。なお、本明細書において、各溝は、接地圧が作用しても2つの溝壁が接触せず、実質的な排水経路を維持することができる。このような観点から、各溝の溝幅は、例えば、2.0mm以上とされる。
【0020】
本実施形態のトレッド部2は、車両への装着の向きが指定されている。これにより、第1トレッド端T1は、車両装着時に車両外側に位置することが意図されている。第2トレッド端T2は、車両装着時に車両内側に位置することが意図されている。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部(図示省略)に、文字又は記号で表示される。但し、本発明のタイヤ1は、このような態様に限定されず、車両への装着の向きが指定されないものや、第1トレッド端T1が車両装着時に車両内側に位置するものでも良い。
【0021】
周方向溝3は、第1ショルダー周方向溝5及び第2ショルダー周方向溝6と、これらの間に設けられた第1クラウン周方向溝7及び第2クラウン周方向溝8とを含む。第1ショルダー周方向溝5は、複数の周方向溝3のうち、最も第1トレッド端T1の側に設けられている。第2ショルダー周方向溝6は、複数の周方向溝3のうち、最も第2トレッド端T2の側に設けられている。第1クラウン周方向溝7は、第1ショルダー周方向溝5とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。第2クラウン周方向溝8は、第2ショルダー周方向溝6とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。
【0022】
タイヤ赤道Cから第1ショルダー周方向溝5又は第2ショルダー周方向溝6の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの20%~35%であるのが望ましい。タイヤ赤道Cから第1クラウン周方向溝7又は第2クラウン周方向溝8の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L2は、例えば、トレッド幅TWの5%~15%であるのが望ましい。なお、トレッド幅TWは、前記正規状態における第1トレッド端T1から第2トレッド端T2までのタイヤ軸方向の距離である。
【0023】
なお、本明細書において各種のパラメータの数値範囲が説明されている場合、特に断りの無い限り、前記数値範囲は、当該パラメータの平均の値についての数値範囲を意味している。また、上述の「平均の値」には、例えば、当該パラメータの測定対象を妥当な大きさの複数の微小領域に分割して、各微小領域について当該パラメータを測定し、得られた各微小領域の当該パラメータの合計を、分割した微小領域の個数で除したものが採用される。
【0024】
各周方向溝3の溝幅W1は、少なくとも3mm以上であるのが望ましい。また、各周方向溝3の溝幅W1は、例えば、トレッド幅TWの3.0%~7.0%であるのが望ましい。各周方向溝3の深さは、乗用車用の空気入りタイヤの場合、例えば、5~10mmである。
【0025】
本実施形態の複数の陸部4は、クラウン陸部10、第1ミドル陸部11、第2ミドル陸部12、第1ショルダー陸部13及び第2ショルダー陸部14を含む。本実施形態のクラウン陸部10は、第1クラウン周方向溝7と第2クラウン周方向溝8との間に区分されている。これにより、クラウン陸部10は、タイヤ赤道C上に設けられている。第1ミドル陸部11は、第1ショルダー周方向溝5と第1クラウン周方向溝7との間に区分されている。第2ミドル陸部12は、第2ショルダー周方向溝6と第2クラウン周方向溝8との間に区分されている。第1ショルダー陸部13は、第1ショルダー周方向溝5のタイヤ軸方向外側に区分されており、第1トレッド端T1を含んでいる。第2ショルダー陸部14は、第2ショルダー周方向溝6のタイヤ軸方向外側に区分されており、第2トレッド端T2を含んでいる。
【0026】
図1に示されるように、本発明において、トレッド部2のキャップゴム層23は、ガラス転移温度Tgが-30℃以下のキャップゴム23Gからなる。キャップゴム23Gのガラス転移温度Tgは、例えば、-30℃~-50℃であり、望ましくは-30℃~-40℃である。なお、ガラス転移温度は、例えば、JIS K 6240:2011 原料ゴム―示差走査熱量測定(DSC)に準じる方法で測定される。本発明のタイヤ1は、上述の構成により、スノー路面での走行性能(以下、「雪上性能」という場合がある。)を向上させることができる。そのメカニズムは、以下の通りである。
【0027】
図2に示されるように、本発明では、複数の陸部4のそれぞれが、複数のブロック17を含むブロック列であり、複数のブロック17のそれぞれには、タイヤ軸方向に延びる複数のサイプ18が設けられている。これにより、複数のブロック17がタイヤ周方向に適度に倒れ易くなる。したがって、雪上走行時、横溝16内に入り込んだ雪が、ブロック17によって強く押し固められ、大きな雪柱せん断力を発揮することができる。また、本発明では、キャップゴム23G(
図1に示す)のガラス転移温度Tgが-30℃以下と低いため、雪上走行時においてトレッド部2の柔軟性が維持され、優れた雪上性能が発揮される。
【0028】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0029】
ブロック17のエッジ成分が少ないと、雪上性能を損ねる場合があり、ブロック17のエッジ成分が多いと、ドライ路面での操縦安定性を損ねる場合がある。このような観点から、トレッド部2の接地面2sの複数の横溝16のエッジ成分の総和Evt(mm)を、トレッド部2に配された周方向溝3、横溝16及びサイプ18を全て埋めた仮想トレッド面の面積St(mm2)で除した単位面積当たりの横溝エッジ成分量Evt/St(mm/ mm2)は、0.09~0.12(mm/ mm2)であるのが望ましい。
【0030】
また、発明者らは、キャップゴム23Gのガラス転移温度Tgと横溝エッジ成分量Evt/Stとの積を規定することにより、操縦安定性と雪上性能とをバランス良く向上できることを知見した。その知見を踏まえ、本実施形態では、前記ガラス転移温度Tg(℃)と、前記横溝エッジ成分量Evt/St(mm/ mm2)との積Tg・Evt/Stが、-2.7~-3.6(℃・mm/ mm2)とされる。これにより、上述の効果が得られる。
【0031】
キャップゴム23Gの破断強度TB(MPa)は、10~30MPaであるのが望ましい。また、。また、キャップゴム23Gの破断時伸びEBは、400%以上が望ましく、より望ましくは400%~500%である。なお、前記破断強度TB及び前記破断時伸びEBは、例えば、JIS-K-6251「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム引っ張り特性の求め方」に準じて、3号ダンベルを用い、ロール押し出し方向をX軸方向として各方向の引張り試験を実施して測定される。
【0032】
トレッド部2の接地面2sの複数のサイプ18のエッジ成分の総和Est(m)は、例えば、6.0~10.0(m)である。また、キャップゴム23Gの破断強度TB(MPa)と、接地面2sの複数のサイプ18のエッジ成分の総和Est(m)との積TB・Estは、100~170(MPa・m)であるのが望ましい。これにより、操縦安定性と雪上性能とがバランス良く向上する。
【0033】
上述のキャップゴム23Gは、公知のゴム材料や添加剤を適宜組み合わせることにより、実現することができ、ここでの説明は省略される。
【0034】
複数のサイプ18は、複数の周方向溝3の最大深さの70%以上の最大深さを有する深底サイプ18aを含む。本実施形態では、後述される縦サイプ27、第1ミドル横サイプ35、第2ミドルサイプ43、第1クラウンサイプ51及びショルダー横サイプ57が、深底サイプ18aとして構成されている。望ましい態様では、複数のブロック17の少なくとも1つにおいて、複数のサイプ18の内の60%以上が深底サイプ18aである。より望ましい態様として、本実施形態では、各ブロック17について、上述の構成が実現されている。これにより、雪上性能がより一層向上する。
【0035】
複数のサイプ18は、複数の周方向溝3の最大深さの70%未満の最大深さを有する浅底サイプ18bを含む。浅底サイプ18bの深さは、3.0mm以下であるのがより望ましい。本実施形態では、後述される第2クラウンサイプ52及びショルダー縦サイプ58が、浅底サイプ18bとして構成されている。このような浅底サイプ18bは、陸部の剛性を維持し、ドライ路面での操縦安定性を維持することができる。
【0036】
複数の横溝16は、タイヤ周方向に一定又は可変のピッチP1で配されている。複数の横溝16の溝幅W15は、それぞれ前記ピッチP1の27%~29%であるのが望ましい。これにより、操縦安定性と雪上性能とがバランス良く向上する。
【0037】
図3には、ブロック列の一例として、
図2の第1ミドル陸部11の拡大図が示されている。
図3に示されるように、第1ミドル陸部11は、複数の第1ミドル横溝25によって区分された複数の第1ミドルブロック26を含むブロック列である。
【0038】
図4には、2つの第1ミドルブロック26の拡大図が示されている。本発明では、複数のブロック17(本実施形態では、第1ミドルブロック26である。)のそれぞれには、1本の縦サイプ27が設けられている。この縦サイプ27は、少なくとも1つの横溝16(本実施形態では第1ミドル横溝25である。)に連通してタイヤ周方向に延びている。また、縦サイプ27は、局所的に折れ曲がった屈曲部28を少なくとも1つ含む。
【0039】
図5には、
図4のC-C線断面図が示されている。
図5に示されるように、本実施形態の縦サイプ27のエッジの少なくとも一方には、面取り部30が形成されている。面取り部30は、ブロックの接地面とサイプ本体部27Aのサイプ壁とで形成される稜角が除去された領域を意味する。このため、面取り部30は、縦サイプ27の長手方向と直交する断面において、ブロックの接地面からタイヤ法線に対して傾斜して延びる傾斜面31を含む。面取り部30の傾斜面31の幅W7は、サイプ本体部27Aの幅W6の少なくとも50%以上であるのが望ましい。
【0040】
上述の縦サイプ27は、屈曲部28を含むため、スノー路面においてタイヤ軸方向に摩擦力を提供し、スノー路面での走行性能を向上させる。また、縦サイプ27のエッジの少なくとも一方には面取り部30が形成されているため、ドライ路面での旋回時等、ブロックに大きな荷重が作用したときでも、縦サイプのエッジに接地圧が集中せず、ブロック17に作用する接地圧を均一にすることができる。したがって、本実施形態のタイヤ1は、操縦安定性を維持しつつ、雪上性能を向上させることができる。
【0041】
本実施形態では、面取り部30は、縦サイプ27の両側のエッジのそれぞれに形成されている。
図6に示されるように、他の実施形態では、面取り部30は、縦サイプ27の一方のエッジのみに形成されても良い。また、本実施形態の傾斜面31は、その横断面において直線となる平面状である。他の実施形態において、傾斜面31は、その横断面において円弧状に湾曲することにより、凸面又は凹面として構成されても良く、その横断面において矩形状に折れ曲がっているものでも良い。
【0042】
図5に示されるように、前記接地圧をより均一にする観点から、傾斜面31の幅W7(接地面の平面視における傾斜面の幅である)は、望ましくは0.5mm以上、より望ましくは1.0mm以上であり、望ましくは2.0mm以下、より望ましくは1.5mm以下である。同様に、面取り部30の面取り深さd3は、0.5~2.0mmである。
【0043】
縦サイプ27の最大の深さd4は、縦サイプ27が設けられたブロック(第1ミドルブロック26)の最大の高さ(図示省略)の50%~100%である。これにより、雪上性能を確実に維持することができる。
【0044】
図4に示されるように、面取り部30は、縦サイプ27の全長さに亘って形成されているのが望ましい。これにより、操縦安定性の向上に加え、偏摩耗の抑制も期待することができる。なお、
図4では、面取り部30の傾斜面31によって形成される稜線32が細線で示されている(
図2及び
図3では、これらの稜線32が省略されている。)。
【0045】
縦サイプ27の屈曲部28での折れ曲がり角度θ8は、90~135°であるのが望ましい。これにより、操縦安定性と雪上性能とがバランス良く向上する。なお、前記折れ曲がり角度θ8は、縦サイプ27の中心線で測定される角度である。
【0046】
縦サイプ27は、一端27aが第1ミドル横溝25(
図3に示す)の一つに連通し、かつ、他端27bがブロック内で途切れる途切れ端である。また、第1ミドルブロック26には、さらに、副縦サイプ33が設けられている。副縦サイプ33は、縦サイプ27が連通している第1ミドル横溝25とは反対側に位置する他の第1ミドル横溝25に連通してタイヤ周方向に延びている。副縦サイプ33は、第1ミドルブロック26内に途切れ端を有している。また、副縦サイプ33の途切れ端と、縦サイプ27の途切れ端との間の最短距離が2.0mm以下である。これにより、第1ミドルブロック26をタイヤ周方向に完全に横断する縦サイプ27が設けられた場合と比較して、第1ミドルブロック26の剛性を維持することができ、操縦安定性が向上する。
【0047】
副縦サイプ33には、面取り部34が形成されており、副縦サイプ33の面取り部34は、縦サイプ27の面取り部30と連なっているのが望ましい。これにより、操縦安定性及び耐偏摩耗性能が向上する。
【0048】
縦サイプ27は、その途切れ端からタイヤ周方向に対して、第1の向きに傾斜して延びる部分29を含む。副縦サイプ33は、タイヤ周方向に対して、第1の向きとは逆向きの第2の向きに傾斜している。これにより、縦サイプ27の前記部分29と副縦サイプ33とでサイプの向きが急変している。また、これらの間の角度θ9は、縦サイプ27の屈曲部28の角度θ8と同様、90~135°となっている。このような縦サイプ27及び副縦サイプ33は、多方向に摩擦力を提供でき、雪上での旋回性能を向上させる。
【0049】
他の実施形態では、例えば、本実施形態の縦サイプ27と副縦サイプ33とが連なることにより、1本の縦サイプ27が、ブロックをタイヤ周方向に完全に横断しているものでも良い。このような実施形態では、雪上性能をさらに向上させることができる。
【0050】
図3に示されるように、第1ミドル横溝25は、第1ショルダー周方向溝5から第1クラウン周方向溝7までタイヤ軸方向に延びている。本実施形態の第1ミドル横溝25は、例えば、第1溝部25a及び第2溝部25bを含む。第1溝部25a及び第2溝部25bは、それぞれ、直線状に延びている。第1溝部25aは、第1ショルダー周方向溝5に連通し、タイヤ軸方向に対して傾斜して延びている。第1溝部25aのタイヤ軸方向に対する角度θ4(溝中心線の角度であり、以下、同様である。)は、例えば、10~20°である。第2溝部は、第1クラウン周方向溝7に連通し、タイヤ軸方向に対して第1溝部25aとは逆向きに傾斜している。第2溝部25bのタイヤ軸方向に対する角度θ5は、例えば、15~25°である。このような第1溝部25a及び第2溝部25bを含む第1ミドル横溝25は、雪上走行時、タイヤ軸方向にも雪柱せん断力を提供できる。
【0051】
第1溝部25aと第2溝部25bとの溝中心線の交点25cは、第1ミドル陸部11のタイヤ軸方向の中心位置よりもタイヤ赤道C(
図2に示す)側に位置しているのが望ましい。これにより、交点25c付近に大きな接地圧が作用し、第1ミドル横溝25内でより固い雪柱が形成される。
【0052】
図7には、第1ショルダー周方向溝5の拡大断面図と、第1ミドル横溝25の拡大断面図を並べた参考図が示されている。
図7に示されるように、第1ショルダー周方向溝5の溝壁5Aのタイヤ法線に対する角度θ6は、第1ミドル横溝25の溝壁25Aのタイヤ法線に対する角度θ7よりも大きいのが望ましい。具体的には、前記角度θ6は、10~15°である。前記角度θ7は、1~4°である。これにより、第1ミドル陸部11(
図3に示す)は、タイヤ軸方向の剛性が相対的に高くなり、ドライ路面での操縦安定性を高めることができる。
【0053】
図3に示されるように、第1ミドルブロック26には、第1ショルダー周方向溝5又は第1クラウン周方向溝7からタイヤ軸方向に延びる複数の第1ミドル横サイプ35が設けられている。複数の第1ミドル横サイプ35は、それぞれ、縦サイプ27に連通することなく終端しているのが望ましい。このような第1ミドル横サイプ35は、操縦安定性と雪上性能とをバランス良く高めることができる。
【0054】
第1ミドル横サイプ35は、外側第1ミドル横サイプ36と、内側第1ミドル横サイプ37とを含む。外側第1ミドル横サイプ36は、第1ショルダー周方向溝5に連通し、ジグザグ状に延びている。内側第1ミドル横サイプ37は、第1クラウン周方向溝7に連通し、タイヤ軸方向に傾斜して直線状に延びている。これにより、第1ミドルブロック26において、縦サイプ27よりも第1ショルダー周方向溝5の側の領域の剛性が相対的に大きくなり、雪上性能を維持しつつ、操縦安定性を高めることができる。
【0055】
操縦安定性と雪上性能とをバランス良く向上させる観点から、第1ミドル陸部11の接地面のタイヤ軸方向の幅W11は、例えば、トレッド幅TW(
図2に示され、以下、同様である。)の14.1%~15.3%であり、望ましくは14.8%~15.3%である。
【0056】
図8には、第2ショルダー周方向溝6及び第2クラウン周方向溝8の拡大図が示されている。なお、
図8において、これらの周方向溝の間の第2ミドル陸部12は省略されている。
図9には、第2ショルダー周方向溝6の横断面を示す図として、
図8のA-A線断面図が示されている。
図10には、第2クラウン周方向溝8の横断面を示す図として、
図8のB-B線断面図が示されている。
図8及び
図9に示されるように、第2ショルダー周方向溝6の両側の溝壁6Aは、それぞれ、第2ショルダー周方向溝6の横断面がタイヤ軸方向に変位を繰り返すジグザグ面である。なお、この特徴を理解し易いように、
図9では、A-A線断面で切断される溝壁6aの輪郭が実線で示されており、この溝壁6aからタイヤ軸方向に変異した溝壁6bが、実線又は破線で示されている。
【0057】
一方、
図8及び
図10に示されるように、第2クラウン周方向溝8の両側の溝壁8Aは、それぞれ、第2クラウン周方向溝8の横断面がタイヤ軸方向に変位することなく、タイヤ周方向に平行に延びる平坦面である。すなわち、第2クラウン周方向溝8は、
図8においてB-B線で示される切断面をタイヤ周方向に移動した場合であっても、
図10で示される溝壁8Aの輪郭がタイヤ軸方向に移動しない。これにより、第2ショルダー周方向溝6によって固い雪柱が形成される一方、第2クラウン周方向溝8は、その両側の陸部の剛性を維持することができる。したがって、操縦安定性と雪上性能とがバランス良く向上する。
【0058】
図8に示されるように、第2ショルダー周方向溝6の各溝縁6eは、ジグザグ状に延びている。より具体的には、第2ショルダー周方向溝6の各溝縁6eは、タイヤ周方向に近い角度で延びる第1縁部21eと、タイヤ軸方向に近い角度で延びる第2縁部22eとを含む。第2縁部22eは、第1縁部21eよりも小さい長さで構成されている。本実施形態では、第1縁部21e及び第2縁部22eがそれぞれ直線状に延びている。
【0059】
第2ショルダー周方向溝6の両側の溝壁6Aは、それぞれ、第1面21sと第2面22sとをタイヤ周方向に交互に含んでいる。第1面21sは、第1縁部21eからタイヤ半径方向に平坦状に延びる面である。第2面22sは、第1面21sと異なる向きに延びており、具体的には、第2縁部22eからタイヤ半径方向に平坦状に延びる面である。なお、
図9に示されるように、第2ショルダー周方向溝6の溝壁6Aが通常有する抜け勾配に応じて、第1面21s及び第2面22sは、タイヤ半径方向に対して傾斜している。
図8に示されるように、実施形態の第2ショルダー周方向溝6の溝壁6Aは、第1面21sと第2面22sとをタイヤ周方向に交互に含むことにより、上述のジグザグ面を構成している。
【0060】
第1面21sのタイヤ軸方向に対する角度θ1は、望ましくは60°以上、より望ましくは65°以上であり、望ましくは80°以下、より望ましくは75°以下である。また、第2面22sのタイヤ軸方向に対する角度θ2は、望ましくは10°以上、より望ましくは15°以上であり、望ましくは30°以下、より望ましくは25°以下である。これにより、第1面21sと第2面22sとの間の角度θ3は、80~110°とされる。このような第1面21s及び第2面22sを含む溝壁6Aは、雪上走行時、固い雪柱を形成するのに役立つ。なお、上述の角度θ1、θ2及びθ3は、例えば、溝縁において測定される。
【0061】
第2ショルダー周方向溝6内で固い雪柱を形成する観点から、第2ショルダー周方向溝6に沿った方向の第1面21sの長さL3は、第2ショルダー周方向溝6の溝幅W2よりも小さいのが望ましい。具体的には、第1面21sの前記長さL3は、第2ショルダー周方向溝6の前記溝幅W2の60%~90%であり、望ましくは70%~80%である。これにより、第2ショルダー周方向溝6の溝縁の偏摩耗を抑制しつつ、雪上性能が向上する。なお、前記溝幅W2は、第2ショルダー周方向溝6の溝中心線と直交する方向の幅であり、本実施形態では、第2トレッド端T2(
図2に示す)側の溝壁の第1面21sが有する溝縁と、タイヤ赤道C(
図2に示す)側の溝壁の第1面21sが有する溝縁との間についての、前記溝中心線と直交する方向の距離に相当する。
【0062】
第2面22sの長さL4(所謂ペリフェリ長さである。)は、例えば、第1面21sの長さL3の50%以下であり、望ましくは20%~40%である。これにより、第2ショルダー周方向溝6の溝縁6eの偏摩耗を抑制しつつ、雪上でのトラクション性能が向上する。
【0063】
本実施形態では、第2ショルダー周方向溝6の両側の溝壁6Aは、それぞれ、第2ショルダー周方向溝6に連通する複数の横溝16(後述される第2ミドル横溝40及び第2ショルダー横溝60である。)によってタイヤ周方向に分断されている。第2ショルダー周方向溝6の両側の溝壁は、それぞれ、タイヤ周方向に隣接する2つの横溝16の間に第1面21sを2~4個備えている。これにより、雪上性能とドライ路面での操縦安定性がバランス良く向上する。
【0064】
雪上性能を確実に向上させる観点から、第2ショルダー周方向溝6の溝幅W2は、第2クラウン周方向溝8の溝幅W3よりも大きいのが望ましい。具体的には、第2ショルダー周方向溝6の溝幅は、第2クラウン周方向溝8の溝幅W3の105%~110%である。これにより、雪上性能を維持しつつ、操縦安定性が向上する。
【0065】
図9及び
図10に示されるように、第2クラウン周方向溝8の深さd1は、第2ショルダー周方向溝6の深さd2の100%~105%である。これにより、ドライ路面での操縦安定性が向上し得る。
【0066】
図2に示されるように、本実施形態の第1ショルダー周方向溝5及び第1クラウン周方向溝7は、第2クラウン周方向溝8と同様の溝壁を有している。すなわち、第1ショルダー周方向溝5及び第1クラウン周方向溝7の両側の溝壁は、その横断面がタイヤ軸方向に変位することなく、タイヤ周方向に平行に延びる平坦面である(図示省略)。これにより、ドライ路面での操縦安定性がより一層向上する。
【0067】
第1クラウン周方向溝7の溝幅W4は、第2ショルダー周方向溝6の溝幅W2(
図8に示す)よりも小さく、かつ、第2クラウン周方向溝8の溝幅W3(
図8に示す)よりも小さいのが望ましい。また、第1ショルダー周方向溝5の溝幅W5は、第1クラウン周方向溝7の溝幅W4よりも大きく、第2クラウン周方向溝8の溝幅W3よりも大きいのが望ましい。これにより、ドライ路面での操縦安定性と雪上性能とがバランス良く向上する。
【0068】
図11には、
図2の第2ミドル陸部12及びクラウン陸部10の拡大図が示されている。
図11に示されるように、第2ミドル陸部12は、複数の第2ミドル横溝40によって区分された複数の第2ミドルブロック41を含むブロック列である。
【0069】
操縦安定性と雪上性能とをバランス良く向上させる観点から、第2ミドル陸部12の接地面のタイヤ軸方向の幅W12は、例えば、トレッド幅TW(
図2に示す)の14.1%~15.3%であり、望ましくは14.8%~15.3%である。
【0070】
第2ミドル横溝40は、第2ショルダー周方向溝6から第2クラウン周方向溝8までタイヤ軸方向に延びている。本実施形態の第2ミドル横溝40は、例えば、第1溝部40a及び第2溝部40bを含む。第1溝部40a及び第2溝部40bは、それぞれ、直線状に延びている。第1溝部40aは、第2クラウン周方向溝8に連通してタイヤ軸方向に対して傾斜して延びている。第1溝部40aのタイヤ軸方向に対する角度θ10は、例えば、30~50°である。第2溝部40bは、第2ショルダー周方向溝6に連通し、タイヤ軸方向に対して第1溝部40aよりも小さい角度で延びている。第2溝部40bのタイヤ軸方向に対する角度は、10°以下である。このような第1溝部40a及び第2溝部40bを含む第1ミドル横溝25は、上述の第2ショルダー周方向溝6と相俟って、操縦安定性と雪上性能とをバランス良く高めることができる。
【0071】
第2ミドルブロック41には、例えば、その接地面と第2クラウン周方向溝8の溝壁との間の稜角を切り欠いた部分面取り部42が設けられている。これにより、第2ミドルブロック41の偏摩耗が抑制される。
【0072】
第2ミドルブロック41には、タイヤ軸方向に延びる複数の第2ミドルサイプ43が設けられている。第2ミドルサイプ43は、それぞれ、ジグザグ状に延びている。このような第2ミドルサイプ43は、第2ミドルブロック41の剛性を維持しつつ、雪上性能を高めることができる。
【0073】
第2ミドルサイプ43は、大型第2ミドルサイプ43a、中型第2ミドルサイプ43b及び、小型第2ミドルサイプ43cを含む。大型第2ミドルサイプ43aは、第2ショルダー周方向溝6から第2クラウン周方向溝8まで延びている。中型第2ミドルサイプ43bは、第2ショルダー周方向溝6から第2ミドル横溝40の第1溝部40aまで延びている。小型第2ミドルサイプ43cは、第2ミドル横溝40の第1溝部40aから第2クラウン周方向溝8まで延びている。本実施形態の1つの第2ミドルブロック41には、これらの第2ミドルサイプ43が1本ずつ設けられている。これにより、ドライ路面での操縦安定性と雪上性能とがバランス良く向上する。
【0074】
クラウン陸部10は、複数のクラウン横溝45によって区分された複数のクラウンブロック46を含むブロック列である。
【0075】
クラウン陸部10のタイヤ軸方向の幅W10は、例えば、トレッド幅TW(
図2に示す)の13%以下であり、望ましくは10.8%~11.5%である。
【0076】
クラウン横溝45は、第1クラウン周方向溝7から第2クラウン周方向溝8まで延びている。本実施形態のクラウン横溝45は、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜した第1溝部45aと、タイヤ軸方向に対して第1溝部45aとは逆向きに傾斜した第2溝部45bとを含む。第1溝部45a及び第2溝部45bは、それぞれ、直線状に延びており、タイヤ軸方向に対して40~70°の角度で傾斜している。これにより、第1溝部45aと第2溝部45bとの間の角度θ11は、70~90°である。このような第1溝部45a及び第2溝部45bを有するクラウン横溝45は、内部で固い雪柱を形成でき、雪上性能をさらに高めることができる。
【0077】
第1溝部45aは、例えば、クラウン陸部10のタイヤ軸方向の中心位置を横断しているのが望ましく、より望ましくはタイヤ赤道Cを横断している。これにより、第1溝部45aで固い雪柱が形成され、雪上での旋回性能が向上する。
【0078】
クラウン横溝45の第2溝部45bは、例えば、第2ミドル横溝40の第1溝部40aをその長さ方向に延長した仮想領域と重複するのが望ましい。これにより、雪上走行時、クラウン横溝45と第2ミドル横溝40とが協働してタイヤ軸方向に長い雪柱を形成でき、雪上でのトラクション性能が向上する。
【0079】
クラウンブロック46には、1本のクラウン短溝47が設けられている。クラウン短溝47は、例えば、第2クラウン周方向溝8から延び、クラウンブロック46内で途切れている。クラウン短溝47が、タイヤ軸方向に対してクラウン横溝45の第2溝部45bと同じ向きに傾斜しており、望ましい態様ではこれらの角度差が10°以下とされる。また、クラウン短溝47は、第2ミドル横溝40の第1溝部40aをその長さ方向に延長した仮想領域と重複するのが望ましい。このようなクラウン短溝47は、クラウンブロック46の剛性を維持しつつ、雪上性能を高めることができる。
【0080】
クラウンブロック46は、第1クラウン周方向溝7とクラウン横溝45の第1溝部45aとの間に、クラウンブロック46のタイヤ周方向の端に向かって幅が小さくなる先細部48を備えている。
図12には、
図11のD-D線断面図が示されている。
図12に示されるように、先細部48には、平面状の面取りが設けられている。このような先細部は、クラウン横溝45や第1クラウン周方向溝7(
図11に示す)と協働して雪を踏み固め、雪上でのトラクション性能を向上させる。
【0081】
図13には、本発明の他の実施形態のクラウンブロック46の先細部48の拡大断面図が示されている。この実施形態の先細部48は、クラウンブロック46の接地面46sに対して傾斜した第1面48aと、前記接地面に沿って延びる第2面48bとを交互に含む階段状の外面48sを有している。この外面48sには、局所的に突出して先細部48の先端48tに向かって延びる複数の突条49が設けられている。このような先細部48は、クラウンブロック46の欠けを防ぎつつ、第1クラウン周方向溝7やクラウン横溝45(
図11に示す)に雪が詰まるのを抑制することができる。
【0082】
図11に示されるように、クラウンブロック46には、タイヤ軸方向にジグザグ状に延びる複数の第1クラウンサイプ51と、少なくとも一端が第1クラウンサイプ51に連通する第2クラウンサイプ52とが設けられている。第1クラウンサイプ51は、第1クラウン周方向溝7から第2クラウン周方向溝8、又は、第1クラウン周方向溝7からクラウン横溝45までジグザグ状に延びている。第2クラウンサイプ52は、タイヤ周方向で隣り合う2本の第1クラウンサイプ51、又は、第1クラウンサイプ51及びクラウン短溝に連通し、直線状に延びている。このような第1クラウンサイプ51及び第2クラウンサイプ52は、そのエッジによって多方向に摩擦力を提供できる。
【0083】
図14には、
図2の第1ショルダー陸部13の拡大図が示されている。
図14に示されるように、第1ショルダー陸部13は、複数の第1ショルダー横溝55によって区分された複数の第1ショルダーブロック56を含むブロック列である。
【0084】
第1ショルダー陸部13の接地面のタイヤ軸方向の幅W13は、例えば、トレッド幅TWの15.4%以上であり、具体的には、15.4%~15.7%であるのが望ましい。これにより、操縦安定性と雪上性能とがバランス良く向上する。
【0085】
第1ショルダー横溝55は、例えば、第1トレッド端T1を横切りタイヤ軸方向に延びる第1溝部55aと、第1溝部55aから第1ショルダー周方向溝5まで延びる第2溝部55bとを含む。第1溝部55aのタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、10°以下である。第2溝部55bは、タイヤ軸方向に対して第1溝部55aよりも大きい角度で傾斜している。第2溝部55bのタイヤ軸方向に対する角度θ12は、例えば、10~20°である。
【0086】
第1ショルダーブロック56には、複数のショルダー横サイプ57及び複数のショルダー縦サイプ58が設けられている。ショルダー横サイプ57は、第1ショルダー周方向溝5から第1トレッド端T1まで延びている。ショルダー横サイプ57は、第1ショルダー横溝55の第1溝部55aと平行に直線状に延びる第1サイプ部57aと、第1ショルダー横溝55の第2溝部55bと同じ向きに傾斜してジグザグ状に延びる第2サイプ部57bとを含む。望ましい態様では、第2サイプ部57bは、その横断面においてタイヤ半径方向にもジグザグ状に延びる所謂3Dサイプとして構成されている。このようなショルダー横サイプ57は、第1ショルダーブロック56の剛性を維持しつつ、雪上性能を高めることができる。
【0087】
ショルダー縦サイプ58は、例えば、第1ショルダー横溝55から延び、かつ、第1ショルダーブロック56内で途切れている。ショルダー縦サイプ58は、ショルダー横サイプ57に連通することなく途切れているのが望ましい。このようなショルダー縦サイプ58は、操縦安定性と雪上性能とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0088】
図2に示されるように、第2ショルダー陸部14は、複数の第2ショルダー横溝60によって区分された複数の第2ショルダーブロック61を含むブロック列である。第2ショルダー陸部14の接地面のタイヤ軸方向の幅W14は、例えば、トレッド幅TWの15.4%以上であり、具体的には、15.4%~15.7%である。
【0089】
第2ショルダーブロック61には、第1ショルダーブロック56と同様のショルダー横サイプ57及びショルダー縦サイプ58が設けられている。これらには、上述の構成を適用することができる。
【0090】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0091】
本発明のタイヤの実施例1~9として、
図2の基本パターンを有するサイズ215/55R17の空気入りタイヤが試作された。実施例1~9のタイヤは、キャップゴムのガラス転移温度Tgが-30℃以下となっている。また、比較例として、キャップゴムのガラス転移温度Tgが-15℃であるタイヤが試作された。これら実施例1~9及び比較例について、ドライ路面での操縦安定性及びスノー路面での走行性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:17×7.5J
タイヤ内圧:全輪240kPa
テスト車両:排気量2500cc、前輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0092】
<ドライ路面での操縦安定性>
上記テスト車両でドライ路面を走行したときの操縦安定性が、運転者の官能により評価された。結果は、実施例1の前記操縦安定性を110とする評点であり、数値が大きい程、前記操縦安定性が優れていることを示す。
【0093】
<スノー路面での走行性能>
上記テスト車両でスノー路面を走行したときの走行性能が、運転者の官能により評価された。結果は、実施例1の前記走行性能を110とする評点であり、数値が大きい程、前記走行性能が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0094】
【0095】
表1に示されるように、比較例と比べ、実施例1~9のタイヤは、スノー路面での走行性能が有意に向上していることが確認できた。また、実施例1~9のタイヤは、各種のパラメータが規定されることにより、ドライ路面での操縦安定性とスノー路面での走行性能とをバランス良く向上させていることが確認できた。
【0096】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0097】
[本発明1]
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、接地面を形成するキャップゴム層を含み、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、
前記複数の陸部のそれぞれは、タイヤ軸方向に延びる複数の横溝で区分された複数のブロックを含むブロック列であり、
前記複数のブロックのそれぞれには、タイヤ軸方向に延びる複数のサイプが設けられており、
前記キャップゴム層は、ガラス転移温度Tgが-30℃以下のキャップゴムからなる、
タイヤ。
[本発明2]
前記ガラス転移温度Tg(℃)と、前記接地面の前記複数の横溝のエッジ成分の総和Evt(mm)を、前記トレッド部に配された前記周方向溝、前記横溝及び前記サイプを全て埋めた仮想トレッド面の面積St(mm2)で除した単位面積当たりの横溝エッジ成分量Evt/St(mm/mm2)との積Tg・Evt/Stは、-2.7~-3.6(℃・mm/ mm2)である、本発明1に記載のタイヤ。
[本発明3]
前記キャップゴムの破断強度TB(MPa)と、前記接地面の前記複数のサイプのエッジ成分の総和Est(m)との積TB・Estは、100~170(MPa・m)である、本発明1又は2に記載のタイヤ。
[本発明4]
前記複数のサイプは、前記複数の周方向溝の最大深さの70%以上の最大深さを有する深底サイプを含み、
前記複数のブロックの少なくとも1つにおいて、前記複数のサイプの内の60%以上が前記深底サイプである、本発明1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明5]
前記キャップゴムの破断時伸びEBは、400%以上である、本発明1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明6]
前記複数の横溝は、タイヤ周方向に一定又は可変のピッチで配されており、
前記複数の横溝の溝幅は、それぞれ前記ピッチの27%~29%である、本発明1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明7]
前記複数の陸部は、タイヤ赤道上に配されたクラウン陸部を含み、
前記複数の横溝は、前記クラウン陸部を横断する複数のクラウン横溝を含み、
前記複数のクラウン横溝のそれぞれは、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜した第1溝部と、タイヤ軸方向に対して前記第1溝部とは逆方向に傾斜した第2溝部とを含む、本発明1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明8]
前記トレッド部は、第1トレッド端を含み、
前記陸部は、タイヤ赤道と前記第1トレッド端との間に配された第1ミドル陸部を含み、
前記第1ミドル陸部は、前記横溝に区分された複数の第1ミドルブロックを含み、
前記複数の第1ミドルブロックのそれぞれには、前記第1ミドルブロックをタイヤ周方向に横断する1本の縦サイプが設けられており、
前記縦サイプには、面取り部が形成されている、本発明1ないし7のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明9]
前記トレッド部は、第1トレッド端を含み、
前記陸部は、最も前記第1トレッド端側に配された第1ショルダー陸部を含み、
前記第1ショルダー陸部は、複数の第1ショルダー横溝に区分された複数の第1ショルダーブロックを含み、
前記複数の第1ショルダーブロックのそれぞれには、複数のショルダー縦サイプが設けられており、
前記複数のショルダー縦サイプは、前記第1ショルダー横溝から延び、かつ、前記第1ショルダーブロック内で途切れる、本発明1ないし8のいずれか1項に記載のタイヤ。