(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152256
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】避雷用コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 4/64 20060101AFI20241018BHJP
H01R 4/38 20060101ALI20241018BHJP
H02G 13/00 20060101ALI20241018BHJP
E04C 5/18 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01R4/64 F
H01R4/38 B
H02G13/00 040
E04C5/18 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066334
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 太志
【テーマコード(参考)】
2E164
5E012
【Fターム(参考)】
2E164AA01
2E164BA02
2E164BA23
5E012BA45
(57)【要約】
【課題】建築現場における管理を容易にする避雷用コネクタを提供する。
【解決手段】避雷用コネクタ50、50a、50bは、鉄筋20と、前記鉄筋が部分的に挿入される孔33を有する継手30と、を電気的に接続する。避雷用コネクタは、前記継手に接触する第1壁部61、及び前記孔から露出する前記鉄筋の露出部分22に接触する第2壁部62を有する本体部60、60a、60bと、前記本体部に設けられ、前記第2壁部を前記露出部分に押圧するための締結部70と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋と、
前記鉄筋が部分的に挿入される孔を有する継手と、を電気的に接続する避雷用コネクタであって、
前記継手に接触する第1壁部、及び前記孔から露出する前記鉄筋の露出部分に接触する第2壁部、を有する本体部と、
前記本体部に設けられ、前記第2壁部を前記露出部分に押圧するための締結部と、を備える、
ことを特徴とする避雷用コネクタ。
【請求項2】
前記第1壁部は、前記孔が形成される前記継手の端面に面接触する第1接触部を有し、
前記第2壁部は、前記露出部分の周面に面接触する第2接触部を有する、
請求項1に記載の避雷用コネクタ。
【請求項3】
前記本体部は、前記露出部分を間に挟んで対向するよう一対で構成され、
前記第2壁部はそれぞれ、前記第2接触部の両側に非接触部を有し、
前記締結部は、対向して配置される前記非接触部に設けられる、
請求項2に記載の避雷用コネクタ。
【請求項4】
前記第2接触部は、環状に形成され、
前記第2壁部は、前記第2接触部の両側に互いに対向する非接触部を有し、
前記締結部は、前記非接触部に設けられる、
請求項2に記載の避雷用コネクタ。
【請求項5】
前記第1壁部は、前記第1壁部の外縁部に少なくとも一つのスリットを有する、
請求項3又は4に記載の避雷用コネクタ。
【請求項6】
前記第1接触部は、前記第1壁部の内縁部に設けられ、
前記スリットは、前記外縁部から前記内縁部に向かって延在し、
前記内縁部側の前記スリットの端部は、前記第1接触部より外方に位置する、
請求項5に記載の避雷用コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避雷用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄筋と継手とを電気的に接続する避雷用コネクタが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、締結手段によって一対の押圧部材を一対の接触片に押圧させることで、一対の接触片が鉄筋に接触する。この結果、避雷用コネクタを介して、鉄筋と継手とが電気的に接続する。しかし、避雷用コネクタを構成する部品の数が多く、建築現場において、避雷用コネクタの管理が煩雑になるおそれがある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、建築現場における管理を容易にする避雷用コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る避雷用コネクタは、鉄筋と、前記鉄筋が部分的に挿入される孔を有する継手と、を電気的に接続する避雷用コネクタであって、前記継手に接触する第1壁部、及び前記孔から露出する前記鉄筋の露出部分に接触する第2壁部、を有する本体部と、前記本体部に設けられ、前記第2壁部を前記露出部分に押圧するための締結部と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、建築現場における避雷用コネクタの管理が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る避雷装置の一例を概略的に示す側面図である。
【
図2】実施形態に係る避雷用コネクタの一例を概略的に示す斜視図である。
【
図3】
図1のA方向から見た平面図であり、継手の外形を想像線で示すとともに、上部鉄筋、鉄筋用ナット及びコンクリート構造物を省略し、下部鉄筋及び避雷用コネクタのみを示すものである。
【
図4】
図1のB方向から見た底面図であり、継手の外形を想像線で示すとともに、グラウト材を省略し、下部鉄筋及び避雷用コネクタのみを示すものである。
【
図5】実施形態に係る避雷用コネクタの取付け手順を説明する図面であり、(a)は、上部鉄筋、継手用ナット、及び継手がコンクリート構造物に埋設された状態を部分断面で示し、(b)は、継手の孔内にグラウト材を注入する様子を部分断面で示し、(c)は、継手の孔内に下部鉄筋を挿入する様子を部分断面で示し、(d)は、継手の孔内に下部鉄筋が固定された状態を部分断面で示し、(e)は、避雷用コネクタが下部鉄筋に取付けられた状態を示す。
【
図6】実施形態に係る避雷装置における電気の流れを概略的に示すものである。
【
図7】変形例1に係る避雷用コネクタの一例を概略的に示す斜視図である。
【
図8】
図7の避雷用コネクタが下部鉄筋に押圧された状態を示す平面図であり、継手の外形を想像線で示すとともに、上部鉄筋、鉄筋用ナット及びコンクリート構造物を省略し、下部鉄筋及び避雷用コネクタのみを示すものである。
【
図9】変形例2に係る避雷用コネクタの一例を概略的に示す斜視図である。
【
図10】
図9の避雷用コネクタが下部鉄筋に押圧された状態を示す平面図であり、継手の外形を想像線で示すとともに、上部鉄筋、鉄筋用ナット及びコンクリート構造物を省略し、下部鉄筋及び避雷用コネクタのみを示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態]
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る避雷装置10、及び避雷用コネクタ50について説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。説明の便宜上、
図1において、紙面上下方向、紙面左右方向を、避雷装置10及び避雷用コネクタ50の上下方向、左右方向とし、上下方向及び左右方向に垂直な方向を、避雷装置10及び避雷用コネクタ50の前後方向と記載する。また、上下方向に沿う方向を軸線X方向、軸線X周りの方向を周方向、軸線X方向に垂直な方向を径方向とも記載する。
【0010】
図1は、実施形態に係る避雷装置10の一例を概略的に示す側面図である。
図2は、実施形態に係る避雷用コネクタ50の一例を概略的に示す斜視図である。
図3は、
図1のA方向から見た平面図であり、継手30の外形を想像線で示すとともに、上部鉄筋20a、鉄筋用ナット80及びコンクリート構造物Cを省略し、下部鉄筋20b及び避雷用コネクタ50のみを示すものである。
図4は、
図1のB方向から見た底面図であり、継手30の外形を想像線で示すとともに、グラウト材40を省略し、下部鉄筋20b及び避雷用コネクタ50のみを示すものである。
図5は、実施形態に係る避雷用コネクタ50の取付け手順を説明する図面であり、(a)は、上部鉄筋20a、鉄筋用ナット80、及び継手30がコンクリート構造物Cに埋設された状態を部分断面で示し、(b)は、継手30の孔33内にグラウト材40を注入する様子を部分断面で示し、(c)は、継手30の孔33内に下部鉄筋20bを挿入する様子を部分断面で示し、(d)は、継手30の孔33内に下部鉄筋20bが固定された状態を部分断面で示し、(e)は、避雷用コネクタ50が下部鉄筋20bに取付けられた状態を示す。
図6は、実施形態に係る避雷装置10における電気の流れを概略的に示すものである。
【0011】
<避雷装置>
避雷装置10は、建物の避雷設備における引き下げ導線を構成し、建物が落雷を受けた場合、この落雷による電流を大地に導き、建物の被害を防ぐよう機能する。
【0012】
図1に示すように、避雷装置10は、鉄筋20と、継手30と、避雷用コネクタ50と、鉄筋用ナット80とを有する。鉄筋20、継手30、避雷用コネクタ50、及び鉄筋用ナット80は、導電性を有する金属により形成される。
【0013】
<<鉄筋>>
鉄筋20は、建物の骨格を構成する部材である。本実施形態において、鉄筋20は、上部鉄筋20aと下部鉄筋20bとを有する。上部鉄筋20aは、建物の上層階のコンクリート構造物Cに埋設される。下部鉄筋20bは、建物の下層階のコンクリート構造物に埋設される。
図1では、下部鉄筋20bが、下層階のコンクリート構造物に埋設される前の状態が示される。なお、上部鉄筋20a及び下部鉄筋20b自体の構成は同じであるので、以下では下部鉄筋20bの構成を説明し、上部鉄筋20aの構成の説明は省略する。
【0014】
図1に示すように、下部鉄筋20bは、軸線X方向即ち上下方向に延在する棒状の部材である。下部鉄筋20bは、継手30の孔33に部分的に挿入される。下部鉄筋20bのうち、孔33から露出する部分を露出部分22と呼ぶ。
【0015】
図3及び
図4に示すように、下部鉄筋20bは、平坦部26及び湾曲部27を有する。平坦部26及び湾曲部27の表面には、防錆などを目的とし、導電性を有する表面処理が施されてもよい。湾曲部27は、周方向で180°間隔をおいた位置において、周方向に延在部分である。本実施形態では、2つの湾曲部27が示される。湾曲部27には、螺旋状のねじ山21と節部25とが形成される。ねじ山21及び節部25はそれぞれ、ねじ外面(周面の一例)23及び節部表面24を有する。平坦部26は、2つの湾曲部27の間に配置される。本実施形態では、左右方向に延在する2つの平坦部26が示される。平坦部26には、ねじ山21が形成されない。
【0016】
<<継手>>
継手30は、上部鉄筋20aと下部鉄筋20bを機械的に接続する部材である。
図3に示すように、継手30は、平面視六角の外形を有する筒状に形成される。継手30は、上側を向く面である上側端面31と、下側を向く面である下側端面(端面の一例)32と、上側端面31から下側端面32に上下方向に延びる孔33を有する。孔33は、上側端面31から下側端面32まで、上下方向に継手30を貫通する。なお、孔33は、上側端面31から下側端面32まで貫通していなくてもよく、上部鉄筋20a及び下部鉄筋20bが部分的に挿入される深さを有していれば、上下方向の途中で終端してもよい。孔33は、平面視円形の孔内面34を有する。
図5に示すように、孔内面34には、螺旋状の雌ねじ35が形成される。雌ねじ35には、下部鉄筋20bのねじ山21が螺合される。継手30の上側端面31には、上部鉄筋20aに螺合した鉄筋用ナット80が当接する。鉄筋用ナット80と上部鉄筋20a、及び、継手30と上部鉄筋20aは、導通している。
【0017】
<<グラウト材>>
グラウト材40は、下部鉄筋20bを継手30に固定する部材である。下部鉄筋20bを継手30へ挿入する際の作業性を考慮して、継手30の孔内面34と下部鉄筋20bの節部表面24との間、及び、継手30の雌ねじ35と下部鉄筋20bのねじ外面23との間には、隙間Gが設けられる。グラウト材40は、隙間Gに充填される流動性のある液体素材である。グラウト材40の例としては、例えば、エポキシ樹脂モルタルが挙げられる。グラウト材40は、絶縁性の材料である。グラウト材40を隙間Gに充填し、硬化させることにより、下部鉄筋20bが継手30に固定される。グラウト材40は、隙間Gに充填されるとともに、その一部が継手30の下側端面32から外部に露出する(
図1参照)。グラウト材40が、下側端面32から外部に露出していることにより、作業者は、継手30内にグラウト材40が注入されていることを、確実に把握できる。
【0018】
<<避雷用コネクタの構成>>
避雷用コネクタ50は、下部鉄筋20bと継手30を電気的に接続する部材である。避雷用コネクタ50は、本体部60と締結部70とを有する。締結部70は、本体部60を露出部分22に押圧する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態において、本体部60は、露出部分22を間に挟んで対向するよう一対で構成される。本体部60はそれぞれ、第1壁部61と第2壁部62とを有する。第1壁部61及び第2壁部62は一体形成される。第1壁部61及び第2壁部62は直角又は略直角を成し、
図2の前方向から見てL字又は略L字の形状を示す。
【0020】
図2に示すように、第1壁部61は、上下方向に厚みを有し、左右方向及び前後方向に広がる板状の部材である。第1壁部61は、内縁部61aと、外縁部61bと、継手接触面(第1接続部の一例)61fとを有する。
【0021】
内縁部61aは、本体部60が露出部分22に押圧された状態で、ねじ外面23に隣接し、後述する第2壁部62の上端部62aに接続される部分である。外縁部61bは、本体部60が露出部分22に押圧された状態で、ねじ外面23から離れる外方(即ち左方向及び右方向)に位置する部分である。
【0022】
図3に示すように、継手接触面61fは、第1壁部61の上面61dに設けられる。継手接触面61fは、本体部60が露出部分22に押圧された状態で、継手30の下側端面32に面接触する部分である。
【0023】
図2に示すように、第2壁部62は、左右方向の厚みを有し、上下方向及び前後方向に延びる板状の部材である。第2壁部62は、上端部62aと、下端部62bと、鉄筋接触面(第2接触部の一例)62eと、非接触部62fと、貫通孔62gとを有する。
【0024】
上端部62aは、本体部60が露出部分22に押圧された状態で、孔33に隣接し、第1壁部61の内縁部61aに接続される部分である。下端部62bは、本体部60が露出部分22に押圧された状態で、孔33から離れる外方(即ち下方向)に位置する部分である。
【0025】
鉄筋接触面62eは、第2壁部62の内面62cにおいて、上下方向に延在する。なお、第2壁部62の内面62cは、本体部60が露出部分22に押圧された状態で、露出部分22の側を向く面である。
図3及び
図4に示すように、鉄筋接触面62eは、本体部60が露出部分22に押圧された状態で、ねじ外面23に面接触する部分である。より詳細には、本体部60が露出部分22に押圧されると、第2壁部62は、周方向に湾曲するように変形する。これにより、第2壁部62は、鉄筋接触面62eにおいて、ねじ外面23に面接触する。なお、
図3及び
図4では、第2壁部62が周方向に変形する前の状態、即ち、本体部60が露出部分22に押圧される前の状態が示される。
【0026】
非接触部62fは、鉄筋接触面62eの両側に設けられる。具体的には、本実施形態において、非接触部62fは、鉄筋接触面62eの前後に位置する部分である。一方の本体部60の非接触部62fは、それぞれ、本体部60が露出部分22に押圧された状態で、他方の本体部60の非接触部62fと対向して配置される。
【0027】
貫通孔62gは、非接触部62fにおいて、第2壁部62の内面62c及び外面62dを貫通するよう形成される。なお、第2壁部62の外面62dは、本体部60が露出部分22に押圧された状態で、露出部分22から離れる側を向く面である。一方の本体部60の貫通孔62gは、ぞれぞれ、本体部60が露出部分22に押圧された状態で、他方の本体部60の貫通孔62gと対向して配置される。
【0028】
締結部70は、対向して配置される非接触部62fに設けられる。本実施形態において、締結部70は、ボルト71、ナット72、及び貫通孔62gを含む総称である。締結部70は、第2壁部62を、鉄筋接触面62eにおいて、ねじ外面23に押圧させるよう機能する。ボルト71は、互いに対向する貫通孔62gに挿入される。ボルト71が貫通孔62gに挿入された状態で、一方の第2壁部62の外面62dにヘッドが当接し、他方の第2壁部62の外面62dから軸部が突出する。ナット72は、他方の第2壁部62の外面62dから突出した軸部に螺合される。ボルト71とナット72が締結されると、一方の第2壁部62の非接触部62fと他方の第2壁部62の非接触部62fが近接するよう湾曲し、これにより、第2壁部62が、鉄筋接触面62eにおいて、ねじ外面23に押圧される。
【0029】
<<避雷用コネクタの取付け>>
次に、
図5を参照して、避雷用コネクタ50を使用して、コンクリート構造体Cに埋設された上部鉄筋20aに、下部鉄筋20bを電気的に接続する方法について説明する。
図5に示す例では、避雷用コネクタ50が建物の逆打ち工法に用いられる場合が示される。逆打工法においては、地表側から地下側に向かって工事が行われる。
【0030】
まず、
図5(a)に示すように、鉄筋用ナット80を用いて上部鉄筋20aを予め継手30に固定し、継手30、上部鉄筋20a及び鉄筋用ナット80を、上層階のコンクリート構造体Cに埋設する。
【0031】
次いで、
図5(b)に示すように、上層階のコンクリート構造体Cに埋設された継手30の孔33に、注入装置90を用いて、グラウト材40を注入する。グラウト材40は、孔内面34に付着する。
【0032】
次いで、
図5(c)に示すように、継手30の孔33に、下側から、下部鉄筋20bを挿入する。具体的には、下部鉄筋20bのねじ山21を、孔内面34の雌ねじ35に螺合させる。
【0033】
この結果、
図5(d)に示すように、グラウト材40は、隙間G(即ち、継手30の孔内面34と下部鉄筋20bの節部表面24との間、及び継手30の雌ねじ35と下部鉄筋20bのねじ外面23との間)に充填される。その後、グラウト材40を乾燥、硬化させることにより、下部鉄筋20bが継手30に固定される。このとき、グラウト材40の一部が、継手30の下側端面32から外部に露出する(
図5(d)参照)。
【0034】
その後、下側端面32から外部に露出したグラウト材40の一部を拭い取り、継手30の下側端面32を露出させる。グラウト材40の残部は、下側端面32から外部に露出させたままにしておく。次いで、本体部60の第1壁部61を継手30の下側端面32に押し付けつつ、ボルト71及びナット72を締結する。この結果、第2壁部62は、鉄筋接触面62eにおいて、露出部分22のねじ外面23に押圧され、
図5(e)に示すように、避雷用コネクタ50の露出部分22及び継手30への取付けが完成する。
【0035】
図5(e)に示すように、露出部分22及び継手30への避雷用コネクタ50の取付けが完成すると、継手接触面61fを介して、継手30と避雷用コネクタ50が導通し、鉄筋接触面62eを介して、避雷用コネクタ50と露出部分22(即ち下部鉄筋20b)が導通する。このため、建物が落雷を受けた場合、落雷による電流は、
図6に示すように、上部鉄筋20a、鉄筋用ナット80、継手30、避雷用コネクタ50、及び下部鉄筋20bを介して、大地へ導かれる。
【0036】
[変形例1]
次いで、上記実施形態の変形例1に係る避雷用コネクタ50aについて説明する。
図7は、変形例1に係る避雷用コネクタ50aの一例を概略的に示す斜視図である。
図8は、
図7の避雷用コネクタ50aが下部鉄筋20bに押圧された状態を示す平面図であり、継手30の外形を想像線で示すとともに、上部鉄筋20a、鉄筋用ナット80及びコンクリート構造物Cを省略し、下部鉄筋20b及び避雷用コネクタ50のみを示すものである。
【0037】
変形例1に係る避雷用コネクタ50aは、上記実施形態に係る避雷用コネクタ50に対して、第1壁部61が上部スリット61cを有する点で異なる。以下、上記実施形態の避雷用コネクタ50と同じ又は類似する機能を有する構成については、避雷用コネクタ50と同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0038】
図7に示すように、第1壁部61は、当該第1壁部61の外縁部61bに少なくとも一つの上部スリット61cを有する。上部スリット61cは、外縁部61bにおいて、左方向及び右方向に開放し、且つ、厚さ方向(即ち上下方向)に貫通して形成される。上部スリット61cは、外縁部61bから内縁部61aに向かって延在している。
【0039】
図8に示すように、避雷用コネクタ50aが下部鉄筋20bに押圧された状態で、継手接触面61fは、第1壁部61の内縁部61aに設けられ、上部スリット61cの内縁部61a側の端縁は、継手接触面61fより外方(即ち左方向及び右方向)に位置するとよい。つまり、避雷用コネクタ50aが下部鉄筋20bに押圧された状態で、上部スリット61cは、継手接触面61fにオーバーラップしない位置に形成されるとよい。上部スリット61cが複数設けられる場合、上部スリット61cは、外縁部61bにおいて、前後方向に均等間隔をもって形成されるとよい。上部スリット61cが一つだけ設けられる場合、上部スリット61cは、外縁部61bの前後方向中央の部分に設けられるとよい。
【0040】
変形例1に係る避雷用コネクタ50aは、上述した上部スリット61cに加え、第2壁部62の下端部62bに下部スリット(図示せず)を有してもよい。下部スリットは、下端部62bにおいて、外方(即ち下方)に開放し、且つ、厚さ方向(即ち左右方向)に、第2壁部62を貫通するとよい。下部スリットが複数設けられる場合、下部スリットは、下端部62bにおいて、前後方向に均等間隔をもって形成されるとよい。下部スリットが一つだけ設けられる場合、下部スリットは、下端部62bの前後方向中央の部分に設けられるとよい。
【0041】
[変形例2]
次いで、上記実施形態の変形例2に係る避雷用コネクタ50bについて説明する。
図9は、変形例2に係る避雷用コネクタ50bの一例を概略的に示す斜視図である。
図10は、
図9の避雷用コネクタ50bが下部鉄筋20bに押圧された状態を示す平面図であり、継手30の外形を想像線で示すとともに、上部鉄筋20a、鉄筋用ナット80及びコンクリート構造物Cを省略し、下部鉄筋20b及び避雷用コネクタ50のみを示すものである。
【0042】
変形例2に係る避雷用コネクタ50bは、上記実施形態に係る避雷用コネクタ50に対して、第1壁部61及び第2壁部62の構成の点で異なる。以下、実施形態の避雷用コネクタ50と同じ又は類似する機能を有する構成については、避雷用コネクタ50と同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0043】
図9に示すように、変形例2に係る避雷用コネクタ50bは、一つの本体部60bにより構成される。
【0044】
第1壁部61は、上下方向に厚みを有し、周方向に広がる円板状の部材である。
図10に示すように、継手接触面61fは、本体部60bが露出部分22に押圧された状態で、下側端面32に面接触する。継手接触面61fは、第1壁部61の上面61dにおいて、周方向に広がる領域である。
【0045】
図9に示すように、第2壁部62の鉄筋接触面62eは、環状に形成される。
図10に示すように、本体部60bが露出部分22に押圧された状態で、鉄筋接触面62eは、平坦部26及び湾曲部27を包囲する。第2壁部62は、本体部60bが露出部分22に押圧された状態で、縮径するよう変形し、この結果、鉄筋接触面62eにおいて、ねじ外面23に径方向外方から面接触する。
図10では、第2壁部62が縮径された後の状態、即ち、本体部60bが露出部分22に押圧されている状態が示される。
【0046】
第2壁部62は、鉄筋接触面62eの周方向における両側に、互いに対向する非接触部62fを有する。本変形例において、非接触部62fは、左右方向に所定の間隔を空けた状態で、互いに平行に前後方向に延在する。
【0047】
貫通孔62gは、非接触部62fを左右方向に貫通するよう形成される。貫通孔62gは、非接触部62fにおいて、互いに対向するように形成される。貫通孔62gには、ボルト71が挿入される。具体的には、本体部60bが露出部分22に押圧された状態で、互いに対向する貫通孔62gに、ボルト71が挿入される。
【0048】
ボルト71が互いに対向する貫通孔62gに挿入された状態で、一方の非接触部62fにヘッドが当接し、他方の非接触部62fから軸部が突出する。ナット72は、他方の非接触部62fから突出した軸部に螺合される。ボルト71とナット72が締結されると、一方の非接触部62fと他方の非接触部62fが近接するよう変形し、これにより、第2壁部62が縮径するよう変形し、鉄筋接触面62eにおいてねじ外面23に押圧される。鉄筋接触面62eは、ねじ外面23において面接触する。
【0049】
上記各実施形態においては、以下のような態様が開示される。
【0050】
(態様1)
避雷用コネクタ50、50a、50bは、下部鉄筋20bと、下部鉄筋20bが部分的に挿入される孔33を有する継手30と、を電気的に接続する。避雷用コネクタ50、50a、50bは、継手30に接触する第1壁部61、及び孔33から露出する下部鉄筋20bの露出部分22に接触する第2壁部62、を有する本体部60、60a、60bと、本体部60、60a、60bに設けられ、第2壁部62を露出部分22に押圧するための締結部70と、を備える。
【0051】
態様1の避雷用コネクタ50、50a、50bによれば、本体部60、60a、60bそれ自体に締結部70が設けられるため、避雷用コネクタ50、50a、50bの部品点数が減る。よって、建築現場における避雷用コネクタ50、50a、50bの管理が容易になる。
【0052】
(態様2)
態様1において、第1壁部61は、孔33が形成される継手30の下側端面32に面接触する継手接触面61fを有し、第2壁部62は、露出部分22のねじ外面23に面接触する鉄筋接触面62eを有する。
【0053】
態様2の避雷用コネクタ50、50a、50bによれば、継手30の下側端面32に面接触する継手接触面61f、及びねじ外面23に面接触する鉄筋接触面62eが設けられる。このため、継手30の下側端面32から避雷用コネクタ50、50a、50b、避雷用コネクタ50、50a、50bからねじ外面23へ、電気が流れる際の電気抵抗を低減が低下する。よって、落雷によって生じた電流を、大地に導きやすくなる。
【0054】
(態様3)
態様2において、本体部60、60aは、露出部分22を間に挟んで対向するよう一対で構成され、第2壁部62はそれぞれ、鉄筋接触面62eの両側に非接触部62fを有し、締結部70は、対向して配置される非接触部62fに設けられる。
【0055】
態様3の避雷用コネクタ50、50aによれば、本体部60、60aが、両側(反対側)から下部鉄筋20bを挟み込むので、本体部60、60aと下部鉄筋20bとの間での接触圧を高くすることができる。よって、本体部60、60aと下部鉄筋20bとの間での接触抵抗が低減されるため、落雷による電流を、大地に導きやすくなる。また、非接触部62fが鉄筋接触面62eの両側に形成され、締結部70が対向する非接触部62fに設けられるため、締結部70を締結することにより、対向する非接触部62fが互いに近接するよう、第2壁部が湾曲する。よって、鉄筋接触面62eとねじ外面23との間の接触面積を極力大きくすることができるので、落雷による電流を、大地に導きやすくなる。
【0056】
(態様4)
態様2において、鉄筋接触面62eは、環状に形成され、第2壁部62は、鉄筋接触面62eの両側に互いに対向する非接触部62fを有し、締結部70は、非接触部62fに設けられる。
【0057】
態様4の避雷用コネクタ50bによれば、鉄筋接触面62eが環状に形成されるので、鉄筋接触面62eにより、露出部分22を周方向に包囲することができる。このため、鉄筋接触面62eとねじ外面23との間の接触面積を極力大きくすることができるので、落雷による電流を、大地に導きやすくなる。また、非接触部62fが鉄筋接触面62eの両側に互いに対向して形成され、締結部70が非接触部62fに設けられるため、締結部70を締結することにより、非接触部62fが互いに近接するよう、第2壁部62が縮径する。よって、鉄筋接触面62eとねじ外面23との間の接触面積を極力大きくすることができるので、落雷による電流を、大地に導きやすくなる。
【0058】
(態様5)
態様3又は4において、第1壁部61は、第1壁部61の外縁部61bに少なくとも一つの上部スリット61cを有する。
【0059】
態様5の避雷用コネクタ50aによれば、締結部70を締結することにより、第2壁部62が周方向に湾曲変形するとともに、上部スリット61c自体の隙間が広がるように、第1壁部61も周方向に大きく湾曲変形する。このため、鉄筋接触面62eとねじ外面23との間の接触面積を極力大きくすることができるので、落雷による電流を、大地に導きやすくなる。
【0060】
(態様6)
態様5において、継手接触面61fは、第1壁部61の内縁部61aに設けられ、上部スリット61cは、外縁部61bから内縁部61aに向かって延在し、内縁部61a側の上部スリット61cの端部は、継手接触面61fより外方に位置する。
【0061】
態様6の避雷用コネクタ50aによれば、本体部60aを露出部分22に押圧した状態で、上部スリット61cが継手接触面61fにオーバーラップしない。このため、継手接触面61fと継手30の下側端面32との間の接触面積を極力大きくすることができるので、落雷による電流を、大地に導きやすくなる。
【0062】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に係る避雷用コネクタ50、50a、50bに限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせても良い。例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的態様によって適宜変更され得る。
【0063】
上記実施形態では、締結部70の例として、ボルト71、ナット72、及び貫通孔62gを挙げた。しかし、締結部は、リベット及び貫通孔を有してもよい。
【0064】
上記実施形態では、本体部60、60aの形状を前側から見てL字状又は略L字状としたが、本体部60、60aの形状は、前側から見て、上下に細長いコ字状に形成されてもよい。
【0065】
上記実施形態では、上部スリット61c及び下部スリットを、変形例1に係る本体部60aに設ける場合を説明したが、上部スリット61c及び下部スリットは、変形例2に係る本体部60bに設けてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 避雷装置、20 鉄筋、22 露出部分、23 ねじ外面(周面)、30 継手、32 下側端面(端面)、33 孔、50,50a,50b 避雷用コネクタ、60,60a,60b 本体部、61 第1壁部、61a 内縁部、61b 外縁部、61c 上部スリット(スリット)、61f 継手接触面(第1接触部)、62 第2壁部、62e 鉄筋接触面(第2接触部)、62f 非接触部、62g 貫通孔、70 締結部、