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特開2024-152260土質試料サンプラーと土質試料サンプリング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152260
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】土質試料サンプラーと土質試料サンプリング方法
(51)【国際特許分類】
   E21B 25/10 20060101AFI20241018BHJP
   E02D 1/04 20060101ALI20241018BHJP
   G01N 1/08 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
E21B25/10
E02D1/04
G01N1/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066340
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391019740
【氏名又は名称】三信建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506343704
【氏名又は名称】株式会社トーメック
(71)【出願人】
【識別番号】522194647
【氏名又は名称】株式会社メガダイン
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正嘉
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 将美
(72)【発明者】
【氏名】大栗 雅明
(72)【発明者】
【氏名】木村 敏之
(72)【発明者】
【氏名】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】山口 文男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 旭
【テーマコード(参考)】
2D043
2G052
【Fターム(参考)】
2D043AA01
2D043AB01
2D043AC05
2D043BA08
2D043BB09
2G052AA19
2G052AC04
2G052AD12
2G052BA28
(57)【要約】
【課題】地下水が逆流して噴出することを防止しながら、土質試料をサンプリングすることのできる、土質試料サンプラーと土質試料サンプリング方法を提供する。
【解決手段】土質試料サンプラー60は、ボーリングロッド10と、ボーリングロッド10の先端12に装着されている逆止弁20と、逆止弁20に装着されて先端31に削孔体34を備えている外管30と、外管30に内装されて削孔体34にて削孔された土質試料SAを取り込む内管40と、外管30の基端32と逆止弁20との双方に装着されるスイベルヘッド50とを有し、逆止弁20は、地盤Gから外管30と内管40の間の隙間84を介して流通する地下水の水圧E1のみが作用している際は閉じ、ボーリングロッド10の内部を流通する削孔水の水圧E2が地下水の水圧E1を超えた際に開いて、削孔水を外管30と内管40の間の隙間84を介して削孔体34の周辺に供給する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土質試料をサンプリングする、土質試料サンプラーであって、
ボーリングマシンに一部が装着される、ボーリングロッドと、
前記ボーリングロッドの先端に装着されている、逆止弁と、
前記逆止弁に装着されて、先端に削孔体を備えている、外管と、
前記外管に内装され、前記削孔体にて削孔された前記土質試料を取り込む、内管と、
前記外管の基端と、前記逆止弁との双方に装着される、スイベルヘッドとを有し、
前記ボーリングロッドと、前記逆止弁と、前記スイベルヘッドと、前記外管は、一体に回転自在に接続され、
前記内管には、前記スイベルヘッドに設けられているスライド孔に挿通される、スライド棒が設けられ、該スイベルヘッドと前記外管の回転力が伝達されない状態で該スイベルヘッドに対して該内管が装着されており、
前記逆止弁は、
地盤から、前記外管と前記内管の間の隙間を介して流通する地下水の水圧のみが作用している際は閉じ、
前記ボーリングロッドの内部を流通する削孔水の水圧が前記地下水の水圧を超えた際に開いて、該削孔水を前記外管と前記内管の間の隙間を介して前記削孔体の周辺に供給することを特徴とする、土質試料サンプラー。
【請求項2】
前記内管には、試料採取ケースが設けられており、該内管の先端から入ってきた前記土質試料が該試料採取ケースに収容されることを特徴とする、請求項1に記載の土質試料サンプラー。
【請求項3】
前記スライド孔の途中には、拡径孔が設けられており、
前記拡径孔に内装されているバネにより、前記スライド棒が該バネからの付勢力を受けながらスライドすることを特徴とする、請求項1に記載の土質試料サンプラー。
【請求項4】
前記拡径孔には、前記スライド棒の周囲の一部を包囲するスラストベアリングがさらに内装されていることを特徴とする、請求項3に記載の土質試料サンプラー。
【請求項5】
地下水位以深における前記土質試料の採取に適用されることを特徴とする、請求項1に記載の土質試料サンプラー。
【請求項6】
シールドセグメントに設けられている、該シールドセグメントの背面に裏込め材を充填する際に適用されるグラウトホール、もしくは、前記土質試料の採取用配管を介して、前記ボーリングロッドが地盤内に挿入され、該土質試料が採取されることを特徴とする、請求項1に記載の土質試料サンプラー。
【請求項7】
土質試料をサンプリングする、土質試料サンプリング方法であって、
ボーリングロッドと、逆止弁と、スイベルヘッドと、先端に削孔体を備えている外管と、該外管に内装されて、該削孔体にて削孔された土質試料を取り込む内管とを備え、該ボーリングロッドと該逆止弁と該スイベルヘッドと該外管は、一体に回転自在に相互に接続されている、土質試料サンプラーを使用し、
ボーリングマシンの駆動により、前記ボーリングロッドを回転させ、前記削孔体を回転させることによって地盤を削孔し、削孔の過程で前記土質試料をサンプリングする、削孔工程と、
前記ボーリングマシンの駆動を停止し、ボーリングロッドの継ぎ足しを行う、継ぎ足し工程とを有し、
前記削孔工程では、
前記ボーリングロッドの内部を介して削孔水を送水しながら前記削孔体を回転させ、その際に、前記逆止弁は、該ボーリングロッドの内部を流通する該削孔水の水圧が地下水の水圧を超えた段階で開き、該削孔水を前記外管と前記内管の間の隙間を介して前記削孔体の周辺に供給し、
前記継ぎ足し工程では、
前記ボーリングロッドの内部を介した前記削孔水の送水を停止し、その際に、前記逆止弁は、地盤から、前記外管と前記内管の間の隙間を介して流通する地下水の水圧のみが作用していることにより閉じていることを特徴とする、土質試料サンプリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土質試料サンプラーと土質試料サンプリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水位以深における地盤から、土質調査に供される土質試料(地山のコア)や、既に施工済みの地盤改良土の品質を確認するための土質試料(地盤改良土のコア)等をサンプリングする(採取する)場合がある。この土質試料のサンプリングでは、地下水位がサンプリング基盤(採取基盤)よりも高い場合に、サンプリング中に地下水が逆流し、噴出する恐れがある。
より具体的には、ボーリングロッドの後方にボーリングマシンを設置し、さらにボーリングロッド内へ削孔水を供給するためのスイベルを設置し、ボーリングマシンを駆動することによりボーリング孔を施工する過程で、ボーリングロッドを継ぎ足す際に、スイベルを解体した際に、地下水が逆流し、噴出し得る。
【0003】
ここで、土質試料のサンプリングは、構造物の地下の底盤や地上から地盤内にボーリング孔を削孔し、この削孔の過程で土質試料をサンプリングする方法や、シールド工法にて、地盤内に施工されたシールドセグメントに設けられているグラウトホール等から地盤内にボーリング孔を削孔し、土質試料をサンプリングする方法などがある。地上からサンプリングする場合であっても、地下水の被圧の程度によっては、上記する地下水の噴出の可能性が十分にあり得る。通常の土質試料サンプラーでは、地下水位以深にある地盤から土質試料をサンプリングすることが想定されていないことから、サンプリング中の上記地下水の噴出を防止可能な土質試料サンプラーが望まれる。
【0004】
ここで、特許文献1には、気体流を使用する土質試料サンプラーと、土質試料の採取方法が提案されている。この気体流を使用する土質試料サンプラーは、回転駆動する中空のボーリングロッドの下端に固定されたサンプラーヘッドと、サンプラーヘッドに上端が固定された外管と、スラストベアリングを介して外管内に嵌装された非回転式の内管と、外管の下端に固定されたビットと、キャリアースイベルを介してボーリングロッドの内部にスライムキャリアーを送りこむスライムキャリアー源とを有する。
外管の内周と、内管の外周との間隙をスライムキャリアーの往路とし、外管の外周とビットにより穿孔される地中孔の孔壁との間隙をスライムキャリアーの復路とし、ボーリングロッドを回転させつつ地中方向に移動させて、ビットにより土層を穿孔し、同時に、スライムキャリアー源からスライムキャリアーをキャリアースイベル、ボーリングロッドの内部、往路、ビットの周辺、及び復路を順に通過させ、スライムキャリアーの流れに乗せてスライムを地表に排出するとともに、外管の内部に残された土質試料を内管に収容する。
スライムキャリアー源から送られるスライムキャリアーが気体であり、ビットは、水平面内で、外管の外周から外管の外側に向って3mm以上突出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-239358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の気体流を使用する土質試料サンプラーによれば、地盤への泥水や気泡の注入を避けることにより、地中孔の周辺地盤への影響を極力排除した土質試料サンプラーを得ることができるとしている。しかしながら、上記する課題、すなわち、サンプリング中に地下水が逆流し、噴出することを防止できる手段の開示はない。
【0007】
本発明は、地下水が逆流して噴出することを防止しながら、土質試料をサンプリングすることのできる、土質試料サンプラーと土質試料サンプリング方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明による土質試料サンプラーの一態様は、
土質試料をサンプリングする、土質試料サンプラーであって、
ボーリングマシンに一部が装着される、ボーリングロッドと、
前記ボーリングロッドの先端に装着されている、逆止弁と、
前記逆止弁に装着されて、先端に削孔体を備えている、外管と、
前記外管に内装され、前記削孔体にて削孔された前記土質試料を取り込む、内管と、
前記外管の基端と、前記逆止弁との双方に装着される、スイベルヘッドとを有し、
前記ボーリングロッドと、前記逆止弁と、前記スイベルヘッドと、前記外管は、一体に回転自在に接続され、
前記内管には、前記スイベルヘッドに設けられているスライド孔に挿通される、スライド棒が設けられ、該スイベルヘッドと前記外管の回転力が伝達されない状態で該スイベルヘッドに対して該内管が装着されており、
前記逆止弁は、
地盤から、前記外管と前記内管の間の隙間を介して流通する地下水の水圧のみが作用している際は閉じ、
前記ボーリングロッドの内部を流通する削孔水の水圧が前記地下水の水圧を超えた際に開いて、該削孔水を前記外管と前記内管の間の隙間を介して地盤に供給することを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、ボーリングロッドと、先端に削孔体を備えている外管の基端に装着されるスイベルヘッドに対して逆止弁が装着され、逆止弁が、地盤から外管と内管の間の隙間を介して流通する地下水の水圧のみが作用している際は閉じ、ボーリングロッドの内部を流通する削孔水の水圧が地下水の水圧を超えた際に開くことにより、例えばボーリングロッドの継ぎ足しに当たり、スイベルを取り外してボーリングロッドに削孔水を流通させない場合に逆止弁が地下水の水圧で閉じることによって、地下水の逆流による噴出を効果的に防止できる。
その一方で、ボーリング孔を削孔する際は、ボーリングロッド内に削孔水を流通させ、削孔水の水圧が地下水の水圧を超えた際に逆止弁が開くことにより、削孔水を外管と内管の間の隙間を介して削孔体の周辺に供給しながら、ボーリング孔の削孔を行うことができる。
また、削孔体にて削孔された土質試料を取り込む内管がスライド棒を備え、スライド棒がスイベルヘッドに設けられているスライド孔に挿通され、スイベルヘッドと外管の回転力が伝達されない状態でスイベルヘッドに対して内管が装着されていることにより、回転しない内管にて乱れのない土質試料をサンプリングすることができる。
尚、逆止弁は、スイベルヘッドと別体の部材であってもよいし、スイベルヘッドと一体とされた部材であってもよい。
【0010】
また、本発明による土質試料サンプラーの他の態様において、
前記内管には、試料採取ケースが設けられており、該内管の先端から入ってきた前記土質試料が該試料採取ケースに収容されることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、試料採取ケースが内管に設けられ、内管の先端から入ってきた土質試料が試料採取ケースに収容されることにより、より一層乱れのない土質試料をサンプリングすることができ、内管から試料採取ケースを取り外して試料採取ケースから土質試料を取り外すことにより、乱れのない土質試料を速やかに回収することができる。
ここで、試料採取ケースとしては、採取したい土質試料の長さを有する硬質のケースや、短い長さの硬質のケースに、ビニールや布等の袋が取り付けられていて、ケースに土質試料が入ってきた際に袋が伸びて土質試料を袋の中に収容する袋付きケース等、様々な形態のケースがある。
【0012】
また、本発明による土質試料サンプラーの他の態様において、
前記スライド孔の途中には、拡径孔が設けられており、
前記拡径孔に内装されているバネにより、前記スライド棒が該バネからの付勢力を受けながらスライドすることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、スライド孔の途中に設けられている拡径孔に内装されているバネによる付勢力を受けながらスライド棒がスライドすることにより、例えば、内管が地山から過度の押付け力で押付けられた場合でも、内管が付勢力を受けながら徐々にスライドすることができ、乱れのない状態で土質試料を内管(の内部の試料採取ケース)にサンプリングすることができる。
【0014】
また、本発明による土質試料サンプラーの他の態様において、
前記拡径孔には、前記スライド棒の周囲の一部を包囲するスラストベアリングがさらに内装されていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、スライド棒の周囲の一部を包囲するスラストベアリングが拡径孔に内装されていることにより、例えば、内管が地山から過度の押付け力を受けた場合でも、内管の周囲で回転する外管やスイベルヘッド等の回転力が、内管に作用することを抑制できる。
【0016】
また、本発明による土質試料サンプラーの他の態様は、
地下水位以深における前記土質試料の採取に適用されることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、サンプリング中に地下水が逆流し、噴出する恐れのある地下水位以深における土質試料の採取に適用されることにより、地下水の噴出を防止しながら土質試料をサンプリングすることができる。ここで、地下水位以深の土質試料の採取としては、構造物の地下の底盤や地上から地盤内にボーリング孔を削孔して土質試料をサンプリングする方法などを挙げることができる。
【0018】
また、本発明による土質試料サンプラーの他の態様は、
シールドセグメントに設けられている、該シールドセグメントの背面に裏込め材を充填する際に適用されるグラウトホール、もしくは、前記土質試料の採取用配管を介して、前記ボーリングロッドが地盤内に挿入され、該土質試料が採取されることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、シールドセグメントの背面に裏込め材を充填する際に適用されるグラウトホールや、土質試料の採取用配管を介して、ボーリングロッドが地盤内に挿入されて土質試料が採取されることにより、シールドセグメントの内部において、その周辺の地山の土質調査や地盤改良土の品質確認を行う際に、地下水のシールドセグメント内への噴出を防止しながら土質試料のサンプリングを行うことが可能になる。
【0020】
また、本発明による土質試料サンプリング方法の一態様は、
土質試料をサンプリングする、土質試料サンプリング方法であって、
ボーリングロッドと、逆止弁と、スイベルヘッドと、先端に削孔体を備えている外管と、該外管に内装されて、該削孔体にて削孔された土質試料を取り込む内管とを備え、該ボーリングロッドと該逆止弁と該スイベルヘッドと該外管は、一体に回転自在に相互に接続されている、土質試料サンプラーを使用し、
ボーリングマシンの駆動により、前記ボーリングロッドを回転させ、前記削孔体を回転させることによって地盤を削孔し、削孔の過程で前記土質試料をサンプリングする、削孔工程と、
前記ボーリングマシンの駆動を停止し、ボーリングロッドの継ぎ足しを行う、継ぎ足し工程とを有し、
前記削孔工程では、
前記ボーリングロッドの内部を介して削孔水を送水しながら前記削孔体を回転させ、その際に、前記逆止弁は、該ボーリングロッドの内部を流通する該削孔水の水圧が地下水の水圧を超えた段階で開き、該削孔水を前記外管と前記内管の間の隙間を介して地盤に供給し、
前記継ぎ足し工程では、
前記ボーリングロッドの内部を介した前記削孔水の送水を停止し、その際に、前記逆止弁は、地盤から、前記外管と前記内管の間の隙間を介して流通する地下水の水圧のみが作用していることにより閉じていることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、ボーリングロッドの先端と、先端に削孔体を備えている外管の基端に装着されるスイベルヘッドに対して逆止弁が装着され、逆止弁が、地盤から外管と内管の間の隙間を介して流通する地下水の水圧のみが作用している際は閉じ、ボーリングロッドの内部を流通する削孔水の水圧が地下水の水圧を超えた際に開くことにより、例えばボーリングロッドの継ぎ足しに当たり、スイベルを取り外してボーリングロッドに削孔水を流通させない場合に逆止弁が地下水の水圧で閉じることによって、地下水の逆流による噴出を効果的に防止できる。
その一方で、ボーリング孔を削孔する際は、ボーリングロッド内に削孔水を流通させ、削孔水の水圧が地下水の水圧を超えた際に逆止弁が開くことにより、削孔水を外管と内管の間の隙間を介して地盤に供給しながら、ボーリング孔の削孔を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の土質試料サンプラーと土質試料サンプリング方法によれば、地下水が逆流して噴出することを防止しながら、土質試料をサンプリングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係る土質試料採取装置がシールドセグメントに適用されている状態を示す図である。
図2】実施形態に係る土質試料採取装置と土質試料サンプラーの一例の全体構成図である。
図3図2のIII部の拡大図であって、実施形態に係る土質試料サンプラーを拡大した図である。
図4図3のIV部の拡大図である。
図5】実施形態に係る土質試料サンプラーの外管の一例の外観図であって、(a)は外管の一部を示す図であり、(b)は(a)のb部の拡大図である。
図6A】実施形態に係る土質試料サンプリング方法の一例の工程図である。
図6B図6Aに続いて、実施形態に係る土質試料サンプリング方法の一例の工程図である。
図6C図6Bに続いて、実施形態に係る土質試料サンプリング方法の一例の工程図である。
図7A図6AのVII部の拡大図である。
図7B図6BのVII部の拡大図である。
図8】実施形態に係る土質試料採取装置を構成する、実施形態に係るバルブ取り付け用治具の分解縦断面図である。
図9】シールドセグメントのグラウトホールに対して、実施形態に係るバルブ取り付け用治具が取り付けられている状態を示す縦断面図である。
図10】シールドセグメントのグラウトホールに対して、従来のバルブ取り付け用治具が取り付けられている状態を示す縦断面図である。
図11】(a)、(b)、(c)、(d)の順に、実施形態に係るバルブ取り付け用治具をグラウトホールに取り付ける方法の工程図である。
図12図11(d)に続いて、(a)、(b)、(c)の順に、実施形態に係るバルブ取り付け用治具をグラウトホールに取り付ける方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態に係る土質試料採取装置と土質試料サンプラー、土質試料サンプリング方法、及びバルブ取り付け用治具について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0025】
[実施形態に係る土質試料採取装置と土質試料サンプラー、土質試料サンプリング方法、及びバルブ取り付け用治具]
図1乃至図12を参照して、実施形態に係る土質試料採取装置と土質試料サンプラー、土質試料サンプリング方法、及びバルブ取り付け用治具の一例について説明する。
ここで、図1は、実施形態に係る土質試料採取装置がシールドセグメントに適用されている状態を示す図である。また、図2は、実施形態に係る土質試料採取装置と土質試料サンプラーの一例の全体構成図であり、図3は、図2のIII部の拡大図であって、実施形態に係る土質試料サンプラーを拡大した図であり、図4は、図3のIV部の拡大図であり、図5は、実施形態に係る土質試料サンプラーの外管の変形例の外観図であって、(a)は外管の一部を示す図であり、(b)は(a)のb部の拡大図である。また、図6A図6B、及び図6Cは順に、実施形態に係る土質試料サンプリング方法の一例の工程図であり、図7A図7Bはそれぞれ、図6A図6BのVII部の拡大図である。さらに、図8は、実施形態に係る土質試料採取装置を構成する、実施形態に係るバルブ取り付け用治具の分解縦断面図であり、図9は、シールドセグメントのグラウトホールに対して、実施形態に係るバルブ取り付け用治具が取り付けられている状態を示す縦断面図である。
【0026】
以下、図示例における土質試料サンプリング方法は、シールド工法にて地中に施工されているシールドトンネルを構成するシールドセグメントS(構造物の一例)のスキンプレートW(壁面の一例)に設けられている、グラウトホールR(連通管の一例)を介して、土質試料採取装置100を構成する土質試料サンプラー60を地盤Gに圧入しながら、土質試料を採取する方法を取り上げて説明する。ここで、土質試料採取装置100や土質試料サンプラー60が適用される構造物とその壁面は、シールドセグメントとそのスキンプレート以外にも、地下ピットの壁面や底盤、地表に設けられている底盤等であってもよく、少なくとも地下水位WL以深における地山から、土質調査に供される土質試料(地山のコア)や、既に施工済みの地盤改良土の品質を確認するための土質試料(地盤改良土のコア)等をサンプリングできる構造物とその壁面であればよい。
【0027】
図1に示すシールドセグメントSは、鋼製セグメントであり、鋼製セグメントSの任意の位置にグラウトホールRが設けられている。ここで、鋼製セグメントSに不図示の土質試料の採取用配管が設けられている場合は、この採取用配管を利用してもよい。
【0028】
グラウトホールRに装着されている不図示の閉塞蓋が取り外され、グラウトホールRに対してバルブ取り付け用治具70が取り付けられた後に、シールドトンネルの内部から、バルブ取り付け用治具70とグラウトホールRの内部を介して地盤Gに対して土質試料サンプラー60が圧入される。尚、バルブ取り付け用治具70と、グラウトホールRへのバルブ取り付け用治具70の取り付け方法は、以下で詳説する。
【0029】
土質試料採取装置100は、グラウトホールRに取り付けられているバルブ取り付け用治具70と、バルブ取り付け用治具70に取り付けられているメインバルブV1と、メインバルブV1に取り付けられているプリペンダーP(止水プリペンダー)と、これらの中空を介して地盤Gに圧入される土質試料サンプラー60と、土質試料サンプラー60を形成するボーリングロッド10の途中位置に装着されるボーリングマシンMと、ボーリングロッド10の基端11に装着されるスイベルSWとを有する。プリペンダーPには、余剰の削孔水や地下水を排水するための水抜きバルブV2が装着されている。図示例は、シールドトンネルの内部にある台座Tに土質試料採取装置100が載置されている。
【0030】
図2に示すように、土質試料サンプラー60は、複数の継ぎ足しロッド10Aにより形成されるボーリングロッド10と、ボーリングロッド10の先端12に装着されている逆止弁20と、逆止弁20に装着されて、先端31に削孔体34を備えている外管30と、外管30に内装され、削孔体34にて削孔された土質試料を取り込む内管40と、外管30の基端32と逆止弁20の双方に装着されるスイベルヘッド50とを有する。土質試料サンプラー60の各構成要素は、いずれも鋼製の部材にて製作される。
【0031】
内管40の内部には試料採取ケース44が内装されており、内管40に取り込まれた土質試料は、試料採取ケース44の内部にサンプリングされるようになっている。
【0032】
ボーリングマシンMを駆動することにより、土質試料サンプラー60をX1方向に回転させ、外管30の先端31の削孔体34にて地盤Gを削孔しながら、地盤G内に土質試料サンプラー60をX2方向に圧入する過程で、内管40の内部に土質試料を取り込んでサンプリングする。
【0033】
この土質試料サンプラー60の圧入の際には、後方のスイベルSWから削孔水をX5方向に供給する。図3に明りょうに示すように、供給された削孔水は、ボーリングロッド10の内部の流路81をX6方向に流通し、逆止弁20の流路82を介してX7方向に流通し、スイベルヘッド50の流路83(隙間)をX8方向に流通し、さらに外管30と内管40の間の流路84(隙間)をX9方向に流通した後、地盤Gを削孔する削孔体34の周囲へX10方向に供給されるようになっている。
【0034】
また、余剰の削孔水や地下水は、外管30の周囲を介し、グラウトホールRを介して、水抜きバルブV2からX12方向へ排水されるようになっている。
【0035】
ここで、図3図4に示すように、ボーリングロッド10と、逆止弁20と、スイベルヘッド50と、外管30は、一体に回転自在に相互に接続されている。一方、内管40の後方には、スライド棒48が装着されている。
【0036】
スイベルヘッド50は、外本体51と、内本体52とを備えた二重管構造となっており、外本体51と内本体52の間に流路83が設けられている。また、内本体52にはスライド孔54が設けられており、このスライド孔54に対して、内管40の後方から伸びるスライド棒48がY5方向にスライド自在に挿通されている。ここで、内本体52の前方には、オイルシール59が設けられている。
【0037】
スライド孔54の途中には、2種類の拡径孔55A、55Bが設けられており、一方の拡径孔55Aには、スライド棒48に付勢力を付与するバネ57が内装されており、他方の拡径孔55Bには、スライド棒48の周囲の一部を包囲するスラストベアリング58が内装されている。
【0038】
内管40の先端の内部に取り付けられている試料採取ケース44は、円筒状のケース45と、ケース45の後方外周凹部45aに折り畳み部46aが収容されている袋体46とを有する。ここで、袋体46は、ビニール袋により形成される。削孔体34の回転と圧入により、土質試料が内管40の内部へY1方向に取り込まれると、後方外周凹部45aに折り畳み部46aが収容されている状態の袋体46は、取り込まれた土質試料によって後方へ押し込まれ、後方へY2方向に広がりながら土質試料を収容する。
【0039】
内管40に取り付けられているスライド棒48は、スイベルヘッド50と外管30の回転力が伝達されない状態でスライド孔54に挿通されている。このことにより、回転しない内管40の内部にある試料採取ケース44にて、乱れのない土質試料をサンプリングすることができる。
【0040】
また、スライド孔54の途中に設けられている拡径孔55Aに内装されているバネ57による付勢力を受けながらスライド棒48がY5方向にスライドすることにより、例えば、内管40が地盤Gから過度の押付け力で押付けられた場合でも、内管40が付勢力を受けながら徐々にスライドすることができるため、乱れのない状態で土質試料を内管40の内部の試料採取ケース44にてサンプリングすることが可能になる。
【0041】
さらに、スライド棒48の周囲の一部を包囲するスラストベアリング58が別途の拡径孔55Bに内装されていることにより、例えば、内管40が地盤Gから過度の押付け力を受けた場合でも、内管40の周囲で回転する外管30やスイベルヘッド50等の回転力が、内管40に作用することを抑制できる。
【0042】
ボーリングロッド10の先端12と、スイベルヘッド50の外本体51の基端51aに装着される逆止弁20は、弁本体21と、弁本体21の中空の内部に取り付けられているバネ23と、バネ23に取り付けられて左右へY7方向にスライド自在なスライド蓋22とを有する。
【0043】
図3図4では、スライド蓋22の左側から地下水の水圧E1が作用し、右側から削孔水の水圧E2が作用している状態を示している。削孔水の水圧E2が地下水の水圧E1を超えた際に、スライド蓋22はバネ23の付勢力に抗して左側へスライドし、弁本体21とスライド蓋22との間に流路82が形成される。
【0044】
一方、ボーリングロッド10の内部を削孔水が流通しない場合は、スライド蓋22には地下水の水圧E1のみしか作用しないことから、スライド蓋22は右側へスライドし、弁本体21とスライド蓋22との間の流路82が閉塞される。
【0045】
すなわち、土質試料をサンプリングする際は、ボーリングロッド10の流路81に削孔水を供給することから、逆止弁20の内部には流路82が形成されて、削孔体34の周囲へ削孔水が流通する。対して、例えば継ぎ足しロッド10Aを継ぎ足してボーリングロッド10を延長する際は、削孔水の供給を停止することから、逆止弁20の内部における流路82は閉塞される。このことにより、土質試料のサンプリングの際には削孔体34の周囲に削孔水を供給することができ、継ぎ足しロッド10Aの継ぎ足しの際には、地下水がシールドセグメントSの内部に逆流して噴出することを防止できる。
【0046】
図5(a)に示すように、外管30の外周面33のうち、少なくとも地盤Gと接する領域には、複数のディンプル35が設けられている。
【0047】
ディンプル35は、例えば、大きさがマイクロオーダーの微小(マイクロ)ディンプルである。鋼製の外管30の外周面33にこのような微小のディンプル35を加工するディンプル加工方法としては、ショットブラスト加工やWPC(Wide Peening and cleaning登録商標)加工、エッチング加工、及び放電加工などが挙げられる。
【0048】
ディンプル35は、湾曲状に陥没した微小の凹みであり、例えば、入口径がφ5μm乃至φ100μmの範囲に設定され、深さが0.5μm乃至30μmの範囲に設定される。このような寸法の多数のディンプル35を有することにより、回転する外管30と地盤Gとの間の高い摩擦低減効果と、ディンプル35の凹み内における高い潤滑材保持性を保証することができる。
【0049】
すなわち、ディンプル35は、その空洞によって地盤Gとの間の摩擦を低減する機能と、ディンプル35に収容されている潤滑材からの滲み出しによって地盤Gとの間の摩擦を低減する機能を有しており、後者の機能においては、多数のマイクロディンプルにて潤滑材の保持性を高めることができる。
【0050】
また、図示例は、外管30の外周面33における先端31側において、スパイラル状の羽根36を備えており、この羽根36の表面にも多数のディンプル35が設けられている。この構成により、より一層地盤Gとの間の摩擦低減効果の高いサンプラー60を形成できる。
【0051】
ここで、図5(b)に示すように、羽根36は、幅が6mm程度(先端側と後端側の幅が4mmと2mm)で、高さが2mm程度の寸法に製作することができる。
【0052】
次に、図6図7を参照して、実施形態に係る土質試料サンプリング方法の一例について説明する。
【0053】
図6Aに示すように、シールドセグメントSのスキンプレートWに設けられているグラウトホールRに対して、バルブ取り付け用治具70を取り付け、バルブ取り付け用治具70に対してメインバルブV1を取り付け、メインバルブV1にプリペンダーPを取り付けた後、土質試料サンプラー60をこれらの中空に挿通する。
【0054】
土質試料サンプラー60のボーリングロッド10の一部にボーリングマシンMを装着し、ボーリングロッド10の基端11にスイベルSWを装着して土質試料採取装置100を形成する。
【0055】
スイベルSWから削孔水を供給し、土質試料サンプラー60の各流路を流通させて先端にある削孔体34の周囲に削孔水を供給しながら、ボーリングマシンMの駆動によってボーリングロッド10を回転させ、削孔体34をX1方向に回転させながら地盤Gを削孔し、削孔体34を前方へX2方向に圧入していく。この削孔圧入の過程で、内管40の内部に土質試料SAをY1方向に取り込み、取り込んだ土質試料SAを試料採取ケース44の内部にサンプリングする。
【0056】
この際、図7Aに示すように、削孔水の水圧E2が地下水の水圧E1を超えた際に、スライド蓋22は左側へスライドし、弁本体21とスライド蓋22との間に流路82が形成され、削孔体34の周囲への削孔水の供給が実現される。
【0057】
ここで、余剰の削孔水や地下水は外管30の外周をX11方向に流通し、グラウトホールRの内部を介して水抜きバルブV2から排水する。
【0058】
この削孔圧入においては、図5を参照して説明したように、外管30の外周面33に多数のディンプル35が設けられ、さらに、スパイラル状の羽根36が設けられ、この羽根36の表面にも多数のディンプル35が設けられていることにより、地盤Gとの間の摩擦を効果的に低減することができ、効率的な土質試料SAのサンプリングを実現できて好ましい(以上、削孔工程)。
【0059】
次に、地盤Gのより奥側の土質試料をサンプリングするべく、図6Bに示すように、ボーリングマシンMの駆動と削孔水の供給を停止し、スイベルSWをボーリングロッド10の基端11から取り外す。ボーリングロッド10の基端11に対して継ぎ足しロッド10Bを取り付け、継ぎ足しロッド10Bの基端11に対してスイベルSWを取り付ける。
【0060】
削孔水の供給を停止することにより、図7Bに示すように、スライド蓋22には地下水の水圧E1のみしか作用しないことから、スライド蓋22は右側へスライドし、弁本体21とスライド蓋22との間の流路82が閉塞される。この流路82の閉塞により、継ぎ足しロッド10A,10Bの継ぎ足しの際には、地下水がシールドセグメントSの内部に逆流して噴出することを防止できる(以上、継ぎ足し工程)。
【0061】
長さが延長されたボーリングロッド10を備えた土質試料サンプラー60を使用し、削孔水の供給を再開し、ボーリングマシンMの駆動を再開して、地盤Gの削孔圧入を行うことにより、図6Cに示すように、地盤Gのより奥側の土質試料SAをサンプリングする(以上、削孔工程)。
【0062】
図示例の土質試料サンプリング方法によれば、土質試料SAをサンプリングする際は、ボーリングロッド10の流路81に削孔水を供給することから、逆止弁20の内部には流路82が形成されて、削孔体34の周囲に削孔水を流通させ、継ぎ足しロッド10Aを継ぎ足してボーリングロッド10を延長する際は、削孔水の供給を停止することから、逆止弁20の内部における流路82は閉塞される。このことにより、土質試料SAのサンプリングの際には削孔体34の周囲に削孔水を供給することができ、継ぎ足しロッド10Aの継ぎ足しの際には、地下水がシールドセグメントSの内部に逆流して噴出することを防止できる。
【0063】
次に、図8乃至図12を参照して、実施形態に係るバルブ取り付け用治具と、グラウトホールへのバルブ取り付け用治具の取り付け方法について説明する。ここで、図8等では、バルブ取り付け用治具70の効果を理解し易くする観点から、具体的な寸法の一例を明記する。
【0064】
図8に示すように、バルブ取り付け用治具70は、グラウトホールRの外周に挿設される、円筒状の第1治具71と、円筒状で楔状の断面を有する本体75と、後部76とを備える環状楔74と、円筒状の固定部78と、接続部79とを備える第2治具77とを有する。
【0065】
第1治具71の内周面71bには、環状楔74の一部が嵌め込まれる環状溝71cが設けられている。
【0066】
第2治具77の固定部78の内周面78aは、第1治具71の外周面71aと螺合するようになっている。一方、第2治具77の接続部79の外周面79aには、メインバルブが螺合するようになっている。
【0067】
図9に示すように、グラウトホールRの外周面に第1治具71が挿設され、第1治具71の環状溝71cとグラウトホールRの外周面との間に環状楔74が嵌め込まれ、第1治具71の外周面71aに第2治具77の固定部78の内周面78aが螺合することにより、バルブ取り付け用治具70が形成されてグラウトホールRに取り付けられる。
【0068】
バルブ取り付け用治具70では、第1治具71から後方へ張り出している環状楔74の後部76が、第2治具77の座刳り底78bから前方へ押し込み力Q1にて押し込まれ、押し込まれた環状楔74が、その本体75の上下で接している第1治具71とグラウトホールRを押し込み力Q2にて押し込むことにより、グラウトホールRとバルブ取り付け用治具70が強固に密着する。
【0069】
ここで、第1治具71と第2治具77は鋼製の部材である一方、これらの間に介在する環状楔74はゴム等の樹脂製の部材である。このように、グラウトホールRの外周面と第1治具71の環状溝71cの双方に密着する環状楔74が、樹脂製の部材であって圧縮されていることにより、グラウトホールRとバルブ取り付け用治具70による液密性の高い止水シールが形成される。
【0070】
このように、グラウトホールRの外周面に円筒状の第1治具71が挿設され、円筒状で楔状の断面を有する環状楔74が、断面の幅が小さくなる先端側が先行して第1治具71とグラウトホールRとの間に嵌め込まれ、メインバルブV1が接続される円筒状の第2治具77が第1治具71の外周面71aに固定される構成において、第2治具77にて環状楔74の後部76が押し込まれ、環状楔74にて第1治具71が押し込まれていることにより、グラウトホールRの有する内径を確保しながら、メインバルブV1を接続することができる。
【0071】
具体的には、図9に示すように、グラウトホールRの有効内径が56.7mmであるのに対して、バルブ取り付け用治具70の内径を規定する第2治具77の接続部79の内径は60mmとなり、グラウトホールRの有効内径以上となる。
【0072】
例えば、従来のバルブ取り付け用治具である六角ニップルを使用する例を図10に示している。グラウトホールRの内面にある雌ねじに対して、雄ねじを備えたねじ込み継手である六角ニップルNをねじ込み、六角ニップルNの他端の外周にある雄ねじに対して、メインバルブV1の雌ねじが取り付けられることになる。
【0073】
このように、グラウトホールRの雌ねじに対して六角ニップルNの雄ねじをねじ込み、六角ニップルNに対してメインバルブV1を取り付ける方法では、六角ニップルNの内径:50mmがグラウトホールRの内径:56.7mmよりも小さいことから、グラウトホールRとねじ込み継手の全体の有効径はねじ込み継手の内径に規定されることとなり、グラウトホールと六角ニップルNに挿入可能なグラウトホースの径が小さくなり、あるいはサンプラーの径が小さくなることから、薬液注入においては施工効率が低下し、土質試料のサンプリングにおいては採取可能な土質試料の寸法(径)が小さくなることから好ましくない。
【0074】
この例では、グラウトホールRの内径がφ56.7mm程度である場合に、六角ニップルNを介してメインバルブV1を取り付けると、使用される六角ニップルNの内径はφ50mmまで小さくなり、従って、挿通可能なグラウトホースやサンプラーの径(外径)はこのφ50mm未満に制約されることになる。
【0075】
これに対して、図9に示すバルブ取り付け用治具70を適用することにより、グラウトホールRの有効内径:56.7mmにてグラウトホースやサンプラーの径が規定されることになるため、可及的に大径のグラウトホースやサンプラーを適用することが可能になる。このことにより、グラウトホースやサンプラーの径が小さくなることを防止できることから、効率的な薬液や裏込め材の注入に繋がり、シールドセグメントSの内部への可及的に大径の土質試料のサンプリングが可能になる。
【0076】
次に、図11図12を参照して、グラウトホールRへのバルブ取り付け用治具70の取り付け方法の一例を説明する。
【0077】
図11(a)に示すように、グラウトホールRを使用してない場合は、地下水の流入を防止するべく、閉塞蓋CにてグラウトホールRが閉塞されている。
【0078】
図11(b)に示すように、グラウトホールRにバルブ取り付け用治具70を取り付けるに当たり、まず、閉塞蓋C1をZ1方向に取り外し、図11(c)に示すように、グラウトホールRの外周面に対して第1治具71をZ2方向に挿設する。
【0079】
次に、図11(d)に示すように、第1治具71の環状溝71cとグラウトホールRの外周面との間に環状楔74をZ3方向に嵌め込み、図12(a)に示すように、第2治具77の固定部78をZ5方向に回転させながら第1治具71の外周面71aに螺合していく。
【0080】
この第1治具71の外周面71aと第2治具77の固定部78との螺合により、図12(b)に示すように第1治具71が第2治具77側へZ6方向に引き込まれ、この引き込まれの過程で環状溝71cの内部へ環状楔74が徐々に嵌め込まれていく。
【0081】
そして、環状楔74の後部76が第2治具77の座刳り底78bと当接するまで環状楔74が嵌め込まれた段階で、グラウトホールRの外周面に強固に密着した姿勢でバルブ取り付け用治具70が形成される。
【0082】
図12(c)に示すように、形成されたバルブ取り付け用治具70の接続部79の外周面79aに対して、メインバルブV1の内面を螺合することにより、バルブ取り付け用治具70に対するメインバルブV1の取り付けが完了する。
【0083】
図示するバルブ取り付け用治具70によれば、シールドセグメントSのスキンプレートWにあるグラウトホールRに対してメインバルブV1を取り付けるに当たり、グラウトホールRの有する内径を確保して、挿通される土質試料サンプラー60の径が小さくなることを防止することができる。このことにより、グラウトホールRと、グラウトホールRに取り付けられているバルブ取り付け用治具70、バルブ取り付け用治具70に取り付けられているメインバルブV1を介して、可及的に大径の土質試料をサンプリングすることのできる、土質試料採取装置100が形成される。
【0084】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0085】
10:ボーリングロッド
10A,10B:継ぎ足しロッド
11:基端
12:先端
20:逆止弁
21:弁本体
22:スライド蓋
23:バネ
30:外管
31:先端
32:基端
33:外周面
34:削孔体
35:ディンプル
36:スパイラル状の羽根(羽根)
37:スキンプレート
40:内管
44:試料採取ケース
45:ケース
45a:後方外周凹部
46:袋体
46a:折り畳み部
48:スライド棒
50:スイベルヘッド
51:外本体
51a:基端
52:内本体
54:スライド孔
55A,55B:拡径孔
57:バネ
58:スラストベアリング
59:オイルシール
60:土質試料サンプラー(サンプラー)
70:バルブ取り付け用治具
71:第1治具
71a:外周面
71b:内周面
71c:環状溝
74:環状楔
75:本体
76:後部
77:第2治具
78:固定部
78a:内周面
78b:座刳り底
79:接続部
79a:外周面
79b:内周面
81,82:流路
83,84:流路(隙間)
100:土質試料採取装置
G:地盤(地山)
WL:地下水位
S:構造物(シールドセグメント、鋼製セグメント)
W:壁面(スキンプレート)
R:連通管(グラウトホール)
C:閉塞蓋
V1:バルブ(メインバルブ)
V2:バルブ(水抜きバルブ)
P:プリペンダー(止水プリペンダー)
SW:スイベル
M:ボーリングマシン
SA:土質試料
T:台座
E1:地下水の水圧
E2:削孔水の水圧
N:六角ニップル
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12