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特開2024-152276自削孔型モニター装置及びそれを使用した地盤改良方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152276
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】自削孔型モニター装置及びそれを使用した地盤改良方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066373
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】391051049
【氏名又は名称】株式会社エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(74)【代理人】
【識別番号】100121474
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】金子 裕治
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AB03
2D040BA01
2D040BA02
2D040BD05
2D040CA01
2D040CB03
2D040DA02
2D040DA07
2D040DA17
(57)【要約】
【課題】小径のロッドでも簡易な方法で削孔水吐出口を閉塞することができる自削孔型モニター装置及びそれを使用した地盤改良方法を提供する。
【解決手段】自削孔型モニター装置の削孔水吐出口32にバルブ4を設ける。バルブ4は、弁体4aと、弁体4aの下方に設けられた弁座4bと、弁体4aを下方に向けて付勢する圧縮コイルばね4cと、弁体4aの下方への移動を規制して弁座4bへの当接を阻止する規制部材5とを有する。規制部材5は棒状部材6と棒受部材7とからなり、このうち棒受部材7は、削孔時の水圧を超える水圧が弁体4aに作用した場合に屈曲又は破断する脆弱部として構成されている。そして、棒受部材7が屈曲又は破断することにより規制が解除されて弁体4aが弁座4bに当接するようになっている。このため、削孔時の水圧を超える水圧を弁体4aに作用させることで削孔水吐出口32を閉塞することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔水吐出口と、硬化材噴射ノズルと、前記硬化材噴射ノズルを包囲する圧縮空気噴射ノズルと、削孔水と圧縮空気との共通の流路である第1流路と、硬化材用の第2流路と、前記第1流路と前記削孔水吐出口とを接続する第3流路と、前記第1流路と前記圧縮空気噴射ノズルとを接続する第4流路と、前記削孔水吐出口を開閉するバルブと、を備えた自削孔型モニター装置であって、
前記バルブは、弁体と、前記弁体の下方に設けられた弁座と、前記弁体を下方に向けて付勢するばね手段と、前記弁体の下方への移動を規制して前記弁座への当接を阻止する規制手段と、を備え、
前記規制手段は、削孔時の水圧を超える水圧が前記弁体に作用することにより規制が解除されるように構成されている、ことを特徴とする自削孔型モニター装置。
【請求項2】
前記規制手段の少なくとも一部が、削孔時の水圧を超える水圧が前記弁体に作用した場合に屈曲又は破断する脆弱部として構成されており、
前記脆弱部が屈曲又は破断することにより前記規制手段の規制が解除されるように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の自削孔型モニター装置。
【請求項3】
前記規制手段は、前記弁体から前記削孔水吐出口に至るまでの上下方向の流路を横断するように水平方向に延びる横方向部材と、この横方向部材から前記弁体に向かって上方に延びる縦方向部材とを備え、前記横方向部材が前記脆弱部として構成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の自削孔型モニター装置。
【請求項4】
前記圧縮空気噴射ノズルには、削孔時の水圧を超える圧力が作用することにより封止が解除される封止部材が設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の自削孔型モニター装置。
【請求項5】
請求項1に記載の自削孔型モニター装置を使用した地盤改良方法であって、
前記第1流路内に削孔水を供給し、同削孔水を前記削孔水吐出口から吐出させつつ前記モニター装置を旋回させて所定の深度まで削孔する削孔工程と、
前記削孔水の水圧を上昇させて前記規制手段の規制を解除して前記バルブを閉弁するバルブ閉弁工程と、
前記モニター装置を旋回させつつ引き上げながら、前記第1及び第2流路内にそれぞれ圧縮空気及び硬化材を供給することにより前記圧縮空気噴射ノズル及び前記硬化材噴射ノズルからそれぞれ圧縮空気及び硬化材を噴射して周囲の地盤を改良する地盤改良工程と、
を含むことを特徴とする地盤改良方法。
【請求項6】
請求項4に記載の自削孔型モニター装置を使用した地盤改良方法であって、
前記第1流路内に削孔水を供給し、同削孔水を前記削孔水吐出口から吐出させつつ前記モニター装置を旋回させて所定の深度まで削孔する削孔工程と、
前記削孔水の水圧を上昇させて前記規制手段の規制を解除して前記バルブを閉弁するバルブ閉弁工程と、
この上昇した削孔水の水圧により前記封止部材による前記圧縮空気噴射ノズルの封止を解除する封止解除工程と、
前記モニター装置を旋回させつつ引き上げながら、前記第1及び第2流路内にそれぞれ圧縮空気及び硬化材を供給することにより前記圧縮空気噴射ノズル及び前記硬化材噴射ノズルからそれぞれ圧縮空気及び硬化材を噴射して周囲の地盤を改良する地盤改良工程と、
を含むことを特徴とする地盤改良方法。
【請求項7】
前記封止解除工程において、前記第1流路内に削孔水を供給するとともに前記第2流路内に圧縮空気を供給して、前記硬化材噴射ノズルから圧縮空気を噴射させながら、前記第1流路内に供給した削孔水の水圧により前記封止部材の封止を解除する、ことを特徴とする請求項6に記載の地盤改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧噴射撹拌工法等に用いられる自削孔型モニター装置及びそれを使用した地盤改良方法に関し、詳しくは、削孔水流路と圧縮空気流路とを兼用するタイプの自削孔型モニター装置及びそれを使用した地盤改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
削孔水流路と圧縮空気流路とを兼用するタイプの自削孔型モニター装置の従来技術として、本発明者が先に出願した特許文献1がある。同文献に記載された自削孔型モニター装置では、削孔水吐出口に複数の孔が開孔された多孔面が設けられており、削孔工程から地盤改良工程に切り替える際に、ロッドの上部から複数のスチールボールを投入してこの多孔面の各孔を塞ぐことにより削孔水吐出口を閉塞するようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-147987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の従来技術では、削孔水流路と圧縮空気流路の共通の流路を通してロッドの上部(つまり地表)から複数のスチールボールを投入し、それによって削孔水吐出口を閉塞するようになっているため、ロッドの径がある程度大きくなければならず、小径のロッドには不向きという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、ロッドの径の大小に左右されず、小径のロッドにも適用できる自削孔型モニター装置及びそれを使用した地盤改良方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自削孔型モニター装置は、
削孔水吐出口と、硬化材噴射ノズルと、前記硬化材噴射ノズルを包囲する圧縮空気噴射ノズルと、削孔水と圧縮空気との共通の流路である第1流路と、硬化材用の第2流路と、前記第1流路と前記削孔水吐出口とを接続する第3流路と、前記第1流路と前記圧縮空気噴射ノズルとを接続する第4流路と、前記削孔水吐出口を開閉するバルブと、を備えた自削孔型モニター装置であって、
前記バルブは、弁体と、前記弁体の下方に設けられた弁座と、前記弁体を下方に向けて付勢するばね手段と、前記弁体の下方への移動を規制して前記弁座への当接を阻止する規制手段と、を備え、
前記規制手段は、削孔時の水圧を超える水圧が前記弁体に作用することにより規制が解除されるように構成されている、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の自削孔型モニター装置によれば、削孔時の水圧下では、規制手段によって弁体の弁座への当接(着座)が規制され、バルブは開弁状態を維持するため、削孔工程を支障なく行うことできる一方、削孔時の水圧を超える水圧を弁体に作用させることで規制手段による規制が解除されて弁体が弁座に当接(着座)し、バルブが閉弁されることになる。このため、第1流路に供給する削孔水の流量を増加させるなどして弁体に作用する水圧を上昇させ、これによって削孔水吐出口を閉塞することができるため、特許文献1の従来技術のようにロッドを通して地表からスチールボールを投入する必要がなく、小径のロッドにも適用することができる。
【0008】
本発明の自削孔型モニター装置では、その好適な実施形態の一つとして、
前記規制手段の少なくとも一部が、削孔時の水圧を超える水圧が前記弁体に作用した場合に屈曲又は破断する脆弱部として構成されており、
前記脆弱部が屈曲又は破断することにより前記規制手段の規制が解除されるように構成することができる。
【0009】
また、その場合の好適な実施形態の一つとして、
前記規制手段は、前記弁体から前記削孔水吐出口に至るまでの上下方向の流路を横断するように水平方向に延びる横方向部材と、この横方向部材から前記弁体に向かって上方に延びる縦方向部材とを備え、前記横方向部材を前記脆弱部として構成することができる。
【0010】
さらに、本発明の自削孔型モニター装置では、その好適な実施形態の一つとして、前記圧縮空気噴射ノズルには、削孔時の水圧を超える圧力が作用することにより封止が解除される封止部材が設けられていてもよい。
【0011】
このような封止部材によって圧縮空気噴射ノズルを封止しておくことにより、削孔時に削孔水を第1流路に供給した場合でも、圧縮空気噴射ノズルから削孔水が漏れ出ることを防止することができる。そして、削孔工程終了後、削孔時の水圧を超える水圧を封止部材に作用させることにより封止を解除することができるため、その後は圧縮空気噴射ノズルとしての本来の機能を発揮することができる。
【0012】
次に、本発明の地盤改良方法は、上述した自削孔型モニター装置を使用した地盤改良方法であって、
前記第1流路内に削孔水を供給し、同削孔水を前記削孔水吐出口から吐出させつつ前記モニター装置を旋回させて所定の深度まで削孔する削孔工程と、
前記削孔水の水圧を上昇させて前記規制手段の規制を解除して前記バルブを閉弁するバルブ閉弁工程と、
前記モニター装置を旋回させつつ引き上げながら、前記第1及び第2流路内にそれぞれ圧縮空気及び硬化材を供給することにより前記圧縮空気噴射ノズル及び前記硬化材噴射ノズルからそれぞれ圧縮空気及び硬化材を噴射して周囲の地盤を改良する地盤改良工程と、
を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の地盤改良方法によれば、削孔工程においては規制手段によって弁体の弁座への当接(着座)が規制され、バルブは開弁状態を維持するため、削孔工程を支障なく行うことできる一方、削孔時の水圧を超える水圧を弁体に作用させることで規制手段による規制が解除されて弁体が弁座に当接(着座)し、バルブが閉弁されることになる。このため、削孔工程終了後、第1流路に供給する削孔水の流量を増加させるなどして弁体に作用する水圧を上昇させ、これによって削孔水吐出口を閉塞することができるため、特許文献1の従来技術のようにロッドを通して地表からスチールボールを投入する必要がなく、小径のロッドを使用した地盤改良にも適用することができる。
【0014】
また、本発明の地盤改良方法は、上述した自削孔型モニター装置を使用した地盤改良方法であって、
前記第1流路内に削孔水を供給し、同削孔水を前記削孔水吐出口から吐出させつつ前記モニター装置を旋回させて所定の深度まで削孔する削孔工程と、
前記削孔水の水圧を上昇させて前記規制手段の規制を解除して前記バルブを閉弁するバルブ閉弁工程と、
この上昇した削孔水の水圧により前記封止部材による前記圧縮空気噴射ノズルの封止を解除する封止解除工程と、
前記モニター装置を旋回させつつ引き上げながら、前記第1及び第2流路内にそれぞれ圧縮空気及び硬化材を供給することにより前記圧縮空気噴射ノズル及び前記硬化材噴射ノズルからそれぞれ圧縮空気及び硬化材を噴射して周囲の地盤を改良する地盤改良工程と、
を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の地盤改良方法によれば、封止部材によって圧縮空気噴射ノズルを封止しておくことにより、削孔時に削孔水を第1流路に供給した場合でも、圧縮空気噴射ノズルから削孔水が漏れ出ることを防止することができる。そして、削孔工程終了後、削孔時の水圧を超える水圧を封止部材に作用させることにより封止を解除することができるため、その後は圧縮空気噴射ノズルとしての本来の機能を発揮することができる。
【0016】
本発明の地盤改良方法では、その好適な実施形態の一つとして、前記封止解除工程において、前記第1流路内に削孔水を供給するとともに前記第2流路内に圧縮空気を供給して、前記硬化材噴射ノズルから圧縮空気を噴射させながら、前記第1流路内に供給した削孔水の水圧により前記封止部材の封止を解除するようにしてもよい。
【0017】
このように第1流路内に削孔水を供給するとともに第2流路内に圧縮空気を供給して、硬化材噴射ノズルから圧縮空気を噴射させながら削孔水の水圧で圧縮空気噴射ノズルの封止を解除することにより、削孔水が硬化材噴射ノズルを通してモニター装置内に逆流することを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1流路に供給する削孔水の流量を増加させるなどして弁体に作用する水圧を上昇させ、これによってバルブを閉弁できるため、削孔水吐出口を閉塞させるために特許文献1の従来技術のようにロッドを通して地表からスチールボールを投入する必要がなく、小径のロッドにも適用することができる。したがって、ロッドの径の大小に左右されないというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る自削孔型モニター装置の断面図(バルブは開弁状態)。
図2】上記モニター装置の削孔水吐出口付近の拡大断面図であり、(A)はバルブが開弁している状態、(B)はバルブが閉弁している状態を示す。
図3】(A)は棒状部材の正面図、(B)はその平面図、(C)は棒受部材の正面図、(D)はその平面図。
図4】実施形態に係る地盤改良方法の工程図であり、(A)は据付工程、(B)は削孔工程、(C)はテスト噴射工程、(D)は地盤改良工程(造成工程)、(E)はロッドの引抜き及び孔埋め工程を示す。
図5】変形例に係る地盤改良装置の圧縮空気噴射ノズル付近の拡大断面図であり、(A)は封止部材70によって圧縮空気噴射ノズルが封止された状態、(B)は封止部材70の封止が解除された状態を示す。
図6】(A)は変形例に係る封止部材70の正面図、(B)はその側面視断面図。
図7】参考例に係る自削孔型モニター装置の断面図(バルブは閉弁状態)。
図8】上記モニター装置の削孔水吐出口付近の拡大断面図であり、(A)はバルブが閉弁している状態、(B)はバルブが開弁している状態を示す。
図9】(A)は下部玉受け部材の正面視断面図、(B)は下部玉受け部材の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.本発明の実施形態
以下、本発明の実施形態について図面に基づき説明する。
【0021】
本発明の実施形態に係る地盤改良装置は、削孔工程と地盤改良工程とのいずれにも使用することができる自削孔型モニター装置3を備えた地盤改良装置であり、図4(A)に示すように、地上に設置されたボーリングマシンMと、ロッド1と、同ロッド1の基端部(図示例では上端部)に設けられたスイベル2と、同ロッド1の先端部(図示例では下端部)に設けられた自削孔型モニター装置3とを備える。
【0022】
ロッド1は、図1に概略的に示すように、削孔水流路と圧縮空気流路とを兼用する第1流路11と、硬化材流路となる第2流路12とが形成された二重管ロッドであり、断面視でロッド1の中央部に第2流路12が、その周囲に同心円状に第1流路11が配置されている。
【0023】
スイベル2には、削孔水及び圧縮空気供給口2aと、硬化材供給口2bとが設けられており、削孔水及び圧縮空気供給口2aは第1流路11に、硬化材供給口2bは第2流路12にそれぞれ接続されている。
【0024】
なお、本実施形態におけるボーリングマシンM、ロッド1及びスイベル2の構成は、従来の二重管ロッド式の地盤改良装置に用いられるものとほぼ同様であるため、以下では主に自削孔型モニター装置3の構成について詳述する。
【0025】
図1及び2に示すように、本実施形態の自削孔型モニター装置3は、その下端部にメタルクラウン(削孔ビット)31と削孔水吐出口32とを備える。また、モニター装置3の中間部には、側方に向けて、硬化材噴射ノズル33と、その周囲を包囲する圧縮空気噴射ノズル34とが同心円状に設けられている。
【0026】
モニター装置3の内部には、ロッド1の内部から延びている第1流路11と第2流路12とが形成されており、このうち、第2流路12はモニター装置3の内部をさらに延びて硬化材噴射ノズル33に接続されている。
【0027】
他方、第1流路11は、モニター装置3の内部において、第3流路13と第4流路14とに分岐しており、第3流路13は削孔水吐出口32に、第4流路14は圧縮空気噴射ノズル34に、それぞれ接続している。つまり、第1流路11は、第3流路13を介して削孔水吐出口32に接続され、第4流路14を介して圧縮空気噴射ノズル34に接続されるようになっている。なお、図示していないが、第3流路13はモニター装置3内に複数形成されており、これら複数の第3流路13が下流で合流した上で削孔水吐出口32に接続されている。
【0028】
本実施形態のモニター装置3には、削孔水吐出口32を開閉するバルブ4が設けられている。このバルブ4は、図2に示すように、鋼球からなる弁体4aと、この弁体4aの下方に設けられた弁座4bと、弁体(鋼球)4aを下方に向けて付勢する圧縮コイルばね4cと、弁体4aの下方への移動を規制する規制部材5とを備えている。
【0029】
規制部材5は、削孔水吐出口32に連通する削孔水の出口通路32a内に上下方向に配置された棒状部材6と、この出口通路32aの下部の削孔水吐出口32を水平方向に横切るように架け渡された棒受部材7とを備えている。棒状部材6が本発明の「縦方向部材」に相当し、棒受部材7が本発明の「横方向部材」に相当する。
【0030】
このうち、棒状部材6は、図3(A)(B)に示すように、丸棒状の棒本体6aと、その上下方向中央部に設けられた平面視十字形の振れ止め部6bとを備えている。棒本体6aは、上端部が弁体4aに当接し、下端部が棒受部材7に当接することにより、圧縮コイルばね4cのばね圧や削孔時における削孔水の水圧が弁体4aに作用しても、弁体4aがそれ以上は下方へ移動しないように「突っ張り棒」として機能するものである。他方、振れ止め部6bは、出口通路32a内で棒状部材6が左右に傾斜したり倒れたりしないように真っ直ぐ支えるためのものであり、出口通路32aの内部に嵌まる外形に形成されている。振れ止め部6bが平面視十字形に形成されているのは、その隙間を通して削孔水の通過を許容するためである。なお、本実施形態では、振れ止め部6bは棒本体6aの中央部に1個設けられているが、棒本体6aの長手方向に沿って2個以上設けてもよい。
【0031】
棒受部材7は、削孔時の水圧を超える水圧が弁体4aに作用したときに屈曲又は破断する脆弱部として構成されており、削孔水吐出口32に図示しないねじにより固定されている(なお、図3(C)(D)中、符号7aは、かかるねじを通すためのねじ孔である)。これにより、削孔時の水圧を超える水圧を弁体4aに作用させることで棒受部材7が屈曲又は破断し、これにより規制部材5の規制が解除されて弁体4aが下方に移動できるようになっている。なお、ここでいう「破断」には、棒受部材7(横方向部材)自体が破断する場合だけでなく、それを固定していたねじが外れて棒受部材7(横方向部材)が削孔水吐出口32から脱離したり、脱離しないまでも一端のみで係止したりしている場合も含むものとする。
【0032】
本実施形態に係る自削孔型モニター装置3の圧縮空気噴射ノズル34は封止部材60によって封止されている。本実施形態における封止部材60は、円環帯状のアルミ板によって構成されており、このアルミ板は図示しないねじによって圧縮空気噴射ノズル34の周囲に固定されている。この封止部材60は、削孔時の水圧を超える圧力が作用することにより封止を解除できるようになっている。具体的には、削孔時の水圧下では封止を維持する一方、削孔時の水圧を超える圧力が作用することによりアルミ板が吹き飛ばされるようになっている。
【0033】
なお、封止部材の構成は、上記構成に限らず、特許文献1の図7・8又は図9・10に記載されたものであってもよい。いずれにしても、硬化材噴射ノズル33は封止部材によって封止されていない。
【0034】
以上のとおり構成された本実施形態の地盤改良装置は以下のように使用される。
図4は、同地盤改良装置を使用した地盤改良方法を工程順に説明した図である。以下、工程順に説明する。
【0035】
《1》据付工程
図4(A)に示すように、地上にボーリングマシンMを設置し、ボーリングマシンMにロッド1を装着する。同ロッド1の上端部にはスイベル2が装着され、その下端部には上述した自削孔型モニター装置3が装着される。
【0036】
《2》削孔工程
次に、図4(B)に示すように、削孔水Wとして水又はベントナイト泥水を使用し、この削孔水Wを第1流路11に連通するスイベル2の削孔水及び圧縮空気供給口2aに供給してモニター装置3の下端部の削孔水吐出口32から削孔水Wを吐出するとともに、ボーリングマシンMによってロッド1を回転させながら、所定の深度まで削孔する。前述のとおり、この削孔行程時の削孔水Wの水圧によっては規制部材5の規制は解除されず、また、封止部材60の封止は解除されない。したがって、削孔水Wは、モニター装置3の下端の削孔水吐出口32のみから排出されることになる。削孔によって生じた泥土は、サンドポンプ50によって地上に吸引され排出される。
【0037】
削孔行程では、第1流路11内に削孔水Wを供給するとともに第2流路12内に圧縮空気を供給して、削孔水吐出口32から削孔水Wを吐出させるとともに硬化材噴射ノズル33から圧縮空気を噴射させるようにしてもよい。上述のとおり、硬化材噴射ノズル33は封止部材60によって封止されていないため、削孔行程において硬化材噴射ノズル33から圧縮空気を噴射させることは可能である。このように削孔行程において硬化材噴射ノズル33から圧縮空気を噴射させることにより、削孔によって生じた泥土の地表への排出を促進することができる。
【0038】
《3》バルブ閉弁行程及び封止解除行程
削孔工程終了後、供給する削孔水Wの流量(供給流量)を増加させると、バルブ4の開度が規制部材5によって制限されているため、モニター装置3内の水圧(内圧)が上昇する。この水圧の上昇によって、脆弱部として構成された棒受部材7が屈曲又は破断され、弁体4aが下方に移動してバルブ4が閉弁される。また、このときの水圧の上昇によって封止部材60の封止も解除される。なお、封止部材60の封止を解除するに当たっては、同時に第2流路12内に圧縮空気を供給して、硬化材噴射ノズル33から圧縮空気を噴射させてもよい。このように、硬化材噴射ノズル33から圧縮空気を噴射させながら、水圧の上昇した削孔水Wにより封止部材60の封止を解除することによって、削孔水Wが硬化材噴射ノズル33からモニター装置3内に逆流することを防止することができる。
【0039】
《4》テスト噴射行程
バルブ閉弁行程及び封止解除行程後、テスト噴射用の水W0を硬化材供給口2bに供給するとともに削孔水及び圧縮空気供給口2aに圧縮空気Aを供給してテスト噴射を行う(図4(C))。
【0040】
《5》地盤改良工程(造成工程)
異常がなければ、テスト噴射用の水W0を硬化材Gに切り換えて、圧縮空気噴射ノズル34から圧縮空気Aを噴射させるとともに、硬化材噴射ノズル33から硬化材Gを噴射させる。そして、所定の旋回角度・引き上げ速度・回転数に従ってロッド1を回転させながら引き上げる。これによりロッド1の周囲に固結体(改良体)40を造成し、地盤改良を行う(図4(D))。
【0041】
《6》ロッドの引抜き及び孔埋め工程
地盤改良工程(造成工程)が終了したら、ロッド1を引き抜いて、孔埋めを行う。これにより、一連の工程が終了する(図4(E))。
【0042】
以上のとおり、本実施形態の地盤改良装置及び地盤改良方法によれば、削孔時の水圧下では、規制部材5によって弁体4aの弁座4bへの当接(着座)が規制され、バルブ4は開弁状態を維持するため、削孔工程を支障なく行うことできる一方、削孔時の水圧を超える水圧を弁体4aに作用させることで規制部材5による規制が解除されて弁体4aが弁座4bに当接(着座)し、バルブ4が閉弁されることになる。このため、第1流路11に供給する削孔水Wの流量を増加させるなどして弁体4aに作用する水圧を上昇させ、これによって削孔水吐出口32を閉塞することができるため、削孔水吐出口32を閉塞させるために特許文献1の従来技術のようにロッドを通して地表からスチールボールを投入する必要がなく、小径のロッドにも適用することができる。
【0043】
また、本実施形態の地盤改良装置及び地盤改良方法では、圧縮空気噴射ノズル34に、削孔時の水圧を超える圧力が作用することにより封止が解除される封止部材60が設けられているため、削孔時に第1流路11に削孔水Wを供給した場合でも圧縮空気噴射ノズル34から削孔水Wが漏れ出ることを防止できる一方、削孔工程終了後、削孔時の水圧を超える水圧を封止部材60に作用させることによりその封止を解除することができるため、その後は圧縮空気噴射ノズルとしての本来の機能を発揮することができる。
【0044】
さらに、封止解除工程において、第1流路11内に削孔水Wを供給するとともに第2流路12内に圧縮空気を供給して、硬化材噴射ノズル33から圧縮空気を噴射させながら、水圧の上昇した削孔水Wにより封止部材60の封止を解除するようにした場合は、削孔水Wが硬化材噴射ノズル33を通してモニター装置3内に逆流することを防止することができる。
【0045】
2.変形例
次に、本発明の変形例について図5・6に基づき説明する。図5は変形例に係る地盤改良装置の圧縮空気噴射ノズル付近の拡大断面図である。この変形例は封止部材の変形例に関するものであり、前記実施形態における封止部材60を別素材・別構成からなる封止部材70に変更したものである。
【0046】
具体的には、前記実施形態では、円環帯状のアルミ板からなる封止部材60によって圧縮空気噴射ノズル34を封止していたが、本変形例では、それに代えてゴム製の栓(ゴム栓)からなる封止部材70によって圧縮空気噴射ノズル34を封止するようにしたものである。このゴム栓70(封止部材70)は円錐台状の外形を有し、中央部に貫通孔を備えている。この中央部の貫通孔は、硬化材噴射ノズル33を挿通させるためのものである。なお、先述した実施形態及び本変形例における圧縮空気噴射ノズル34の内周面は、先端方向に徐々に小径となる円錐台状に形成されているため、ゴム栓70の外形はそれに対応して形成されている。
【0047】
このように形成されたゴム栓70は圧縮空気噴射ノズル34の内部に取り付けられて、同ノズル34を封止するようになっている。そして、削孔時の水圧を超える圧力が作用することにより封止を解除できるようになっている。具体的には、削孔時の水圧下では封止を維持する一方、削孔時の水圧を超える圧力が作用することにより吹き飛ばされるようになっている。封止部材としての目的及び機能は前記封止部材60と同様である。
【0048】
なお、封止部材として、このゴム栓70と併せて、先述した円環帯状のアルミ板からなる封止部材60を圧縮空気噴射ノズル34の先端部に取り付けてもよい。つまり、封止部材60と70とを併用してもよい。また、封止部材70の素材はゴム製に限定されず、プラスチック製あるいは木製であってもよい。
【0049】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明はかかる実施形態等に限定されるものではない。上記実施形態等では、規制手段が棒状部材6(縦方向部材)と棒受部材7(横方向部材)とからなる規制部材5によって構成されていたが、規制手段はかかる構成に限定されるものではない。
【0050】
上記実施形態等では、棒受部材7(横方向部材)が脆弱部として構成されていたが、脆弱部として構成される部位は棒受部材7(横方向部材)に限定されるものではない。棒状部材6(縦方向部材)を脆弱部として構成してもよく、棒受部材7(横方向部材)と棒状部材6(縦方向部材)の両方を脆弱部として構成してもよい。
【0051】
上記実施形態等では、縦方向部材(棒状部材6)と横方向部材(棒受部材7)とが別体に構成され、縦方向部材(棒状部材6)の下端部が横方向部材(棒受部材7)に当接するように構成されていたが、両者を一体的に構成してもよい。両者を一体的に構成する場合は、例えば、棒状部材6(縦方向部材)の下端部を棒受部材7(横方向部材)に結合させることにより一体化させることができる。
【0052】
3.参考例
次に、本発明の参考例について図面に基づき説明する。図7~9は参考例に係る地盤改良装置を示す。なお、上記実施形態の部材と同一又は対応する部材には同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
参考例に係る地盤改良装置は、上記実施形態に係る地盤改良装置と同様、削孔工程と地盤改良工程とのいずれにも使用することができる自削孔型モニター装置103を備えた地盤改良装置であり、図4(A)に示すように(参考例に係る地盤改良装置の全体的構成及び各工程の概要は実施形態に係る地盤改良装置と同様であるため、参考例についても図4を引用する。但し、参考例について図4を引用する場合は符号3を符号103と読み替えるものとする)、地上に設置されたボーリングマシンMと、ロッド1と、同ロッド1の基端部(図示例では上端部)に設けられたスイベル2と、同ロッド1の先端部(図示例では下端部)に設けられた自削孔型モニター装置103とを備える。参考例におけるボーリングマシンM、ロッド1及びスイベル2の構成は実施形態のものと同様である。
【0054】
図7及び8に示すように、参考例の自削孔型モニター装置103は、その下端部にメタルクラウン(削孔ビット)31と削孔水吐出口32とを備える。また、モニター装置103の中間部には、側方に向けて、硬化材噴射ノズル33と、その周囲を包囲する圧縮空気噴射ノズル34とが同心円状に設けられている。
【0055】
モニター装置103の内部には、ロッド1の内部から延びている第1流路11と第2流路12とが形成されており、このうち、第2流路12はモニター装置3の内部をさらに延びて硬化材噴射ノズル33に接続されている。
【0056】
他方、第1流路11は、モニター装置103の内部において、第3流路13と第4流路14とに分岐しており、第3流路13は削孔水吐出口32に、第4流路14は圧縮空気噴射ノズル34に、それぞれ接続している。つまり、第1流路11は、第3流路13を介して削孔水吐出口32に接続され、第4流路14を介して圧縮空気噴射ノズル34に接続されるようになっている。なお、図示していないが、第3流路13はモニター装置103内に複数形成されており、これら複数の第3流路13が下流で合流した上で削孔水吐出口32に接続されている。
【0057】
参考例のモニター装置103は、削孔水吐出口32を開閉するバルブ104が設けられている。このバルブ104は、図8に示すように、鋼球からなる弁体104aと、この弁体104aの上方に設けられた弁座104bと、弁体(鋼球)104aを上方に向けて付勢する圧縮コイルばね104cと、弁体104aの所定以上の下方への移動を規制する規制部材105とを備えている。この参考例におけるバルブ104は、削孔時の水圧を受けて弁体104aが圧縮コイルばね104cのばね力に抗して下方に移動して開弁するようになっている一方、地盤改良時の圧縮空気の圧力によっては閉弁状態を維持するようになっている。
【0058】
参考例に係る規制部材105は、実施形態に係る規制部材5とは異なり、削孔水吐出口32に連通する削孔水の出口通路32a内に上下方向に配置された円筒状の下部玉受け部材として構成されている。この下部玉受け部材105は、その上端105aが圧縮コイルばね104cの内部に挿入されており、その円筒状の外壁に形成された環状凸条105b(図9)が、削孔水の出口通路32aの内壁に形成された環状凹条32b(図8)に嵌合することにより固定されている。
【0059】
但し、通常の状態(つまり削孔水も圧縮空気も作用していない状態)では、下部玉受け部材(規制部材)105の上端105aは圧縮コイルばね104cの上部から突出しておらず、その内部に留まるようになっている。このため、圧縮コイルばね104cによって上方に付勢された弁体104aと、下部玉受け部材105の上端105aとは互いに当接せず、両者は離隔されている。この結果、この離隔された範囲では弁体104aは下方に移動可能になっており、削孔時の水圧を受けてバルブ104が開弁する上で支障がないようになっている。
【0060】
他方、本参考例では、削孔時の水圧が作用することによって弁体104aが下部玉受け部材105の上端105aに当接するようになっており、これにより、参考例のバルブ104は、削孔時の水圧を受けて弁体104aが下方に移動して開弁するものの、下部玉受け部材105の存在によってその開度が制限されて、所定の開度以上には開弁しないようになっている。
【0061】
本参考例においても、圧縮空気噴射ノズル34が封止部材60によって封止されている点は実施形態と同様である。参考例における封止部材60も円環帯状のアルミ板によって構成されており、このアルミ板は図示しないねじによって圧縮空気噴射ノズル34の周囲に固定されている。この封止部材60は、実施形態の場合と同様、削孔時の水圧下では封止を維持する一方、削孔時の水圧を超える圧力が作用することにより封止を解除できるようになっている。なお、封止部材の構成が上記構成に限らず特許文献1の図7・8若しくは図9・10に記載されたもの又は前記変形例に係るゴム栓70(封止部材70)であってもよい点、及び、硬化材噴射ノズル33が封止部材によって封止されていない点は、実施形態の場合と同様である。
【0062】
以上のとおり構成された本参考例の地盤改良装置は以下のように使用される。以下、図4に基づいて工程順に説明する。なお、前述のとおり、図4中の符号3は符号103に読み替えるものとする。
【0063】
《1》据付工程
図4(A)に示すように、地上にボーリングマシンMを設置し、ボーリングマシンMにロッド1を装着する。同ロッド1の上端部にはスイベル2が装着され、その下端部には上述した自削孔型モニター装置103が装着される。
【0064】
《2》削孔工程
次に、図4(B)に示すように、削孔水Wとして水又はベントナイト泥水を使用し、この削孔水Wを第1流路11に連通するスイベル2の削孔水及び圧縮空気供給口2aに供給してモニター装置103の下端部の削孔水吐出口32から削孔水Wを吐出するとともに、ボーリングマシンMによってロッド1を回転させながら、所定の深度まで削孔する。前述のとおり、削孔行程時の削孔水Wの水圧によって弁体104aが圧縮コイルばね104cのばね力に逆らって下方に移動し、バルブ104が開弁するとともに、弁体104aが下部玉受け部材105の上端105aに当接し、それ以上の下方への移動が規制される。このとき、封止部材60の封止は解除されない。したがって、削孔水Wは、モニター装置3の下端の削孔水吐出口32のみから排出されることになる。削孔によって生じた泥土は、サンドポンプ50によって地上に吸引され排出される。
【0065】
実施形態の場合と同様、削孔行程では、第1流路11内に削孔水Wを供給するとともに第2流路12内に圧縮空気を供給して、削孔水吐出口32から削孔水Wを吐出させるとともに硬化材噴射ノズル33から圧縮空気を噴射させるようにしてもよい。上述のとおり、硬化材噴射ノズル33は封止部材60によって封止されていないため、削孔行程において硬化材噴射ノズル33から圧縮空気を噴射させることは可能である。このように削孔行程において硬化材噴射ノズル33から圧縮空気を噴射させることにより、削孔によって生じた泥土の地表への排出を促進することができる。
【0066】
《3》封止解除行程
削孔工程終了後、削孔水Wの供給流量を増加させると、弁体104aのこれ以上の下方への移動は下部玉受け部材105によって規制されているため(つまり、バルブ104の開度が制限されているため)、削孔水Wの水圧(内圧)が上昇する。この水圧の上昇によって封止部材60の封止が解除される。なお、実施形態の場合と同様、封止部材60の封止を解除するに当たっては、同時に第2流路12内に圧縮空気を供給して、硬化材噴射ノズル33から圧縮空気を噴射させてもよい。このように、硬化材噴射ノズル33から圧縮空気を噴射させながら、水圧の上昇した削孔水Wにより封止部材60の封止を解除することによって、削孔水Wが硬化材噴射ノズル33からモニター装置103内に逆流することを防止することができる。
【0067】
《4》テスト噴射行程
封止解除行程後、テスト噴射用の水W0を硬化材供給口2bに供給するとともに削孔水及び圧縮空気供給口2aに圧縮空気Aを供給してテスト噴射を行う(図4(C))。
【0068】
《5》地盤改良工程(造成工程)
異常がなければ、テスト噴射用の水W0を硬化材Gに切り換えて、圧縮空気噴射ノズル34から圧縮空気Aを噴射させるとともに、硬化材噴射ノズル33から硬化材Gを噴射させる。そして、所定の旋回角度・引き上げ速度・回転数に従ってロッド1を回転させながら引き上げる。これによりロッド1の周囲に固結体(改良体)40を造成し、地盤改良を行う(図4(D))。この地盤改良工程では、バルブ104は閉弁状態を維持することになる。
【0069】
《6》ロッドの引抜き及び孔埋め工程
地盤改良工程(造成工程)が終了したら、ロッド1を引き抜いて、孔埋めを行う。これにより、一連の工程が終了する(図4(E))。
【0070】
以上のとおり、参考例の地盤改良装置及び地盤改良方法によれば、削孔時の水圧が弁体104aに作用することによりバルブ104は開弁するため、削孔工程を支障なく行うことできる一方、地盤改良工程では、バルブ104が閉弁状態を維持するため、削孔水吐出口32を閉塞させるために特許文献1の従来技術のようにロッドを通して地表からスチールボールを投入する必要がない。このため、小径のロッドにも適用することができる。
【0071】
また、参考例の地盤改良装置及び地盤改良方法では、圧縮空気噴射ノズル34に、削孔時の水圧を超える圧力が作用することにより封止が解除される封止部材60が設けられているため、削孔時に第1流路11に削孔水Wを供給した場合でも、圧縮空気噴射ノズル34から削孔水Wが漏れ出ることを防止できる一方、削孔工程終了後、削孔水Wの供給流量を増加させるなどして削孔時の水圧を超える水圧を封止部材60に作用させることにより封止を解除することができるため、その後は圧縮空気噴射ノズルとしての本来の機能を発揮することができる。
【0072】
さらに、封止解除工程において、第1流路11内に削孔水Wを供給するとともに第2流路12内に圧縮空気を供給して、硬化材噴射ノズル33から圧縮空気を噴射させながら、水圧の上昇した削孔水Wにより封止部材60の封止を解除するようにした場合は、削孔水Wが硬化材噴射ノズル33を通してモニター装置3内に逆流することを防止することができる。
【0073】
以下、参考例の要部をまとめておく。
【0074】
[1] 削孔水吐出口と、硬化材噴射ノズルと、前記硬化材噴射ノズルを包囲する圧縮空気噴射ノズルと、削孔水と圧縮空気との共通の流路である第1流路と、硬化材用の第2流路と、前記第1流路と前記削孔水吐出口とを接続する第3流路と、前記第1流路と前記圧縮空気噴射ノズルとを接続する第4流路と、前記削孔水吐出口を開閉するバルブと、を備えた自削孔型モニター装置であって、
前記バルブは、弁体と、前記弁体の上方に設けられた弁座と、前記弁体を上方に向けて付勢するばね手段と、を備え、
前記バルブは、削孔時の水圧が作用した場合に開弁し、地盤改良時の圧縮空気の圧力が作用した場合には閉弁状態を維持するように構成されていることを特徴とする自削孔型モニター装置。
【0075】
[2] 前記バルブに、削孔時の水圧と同一又はそれを超える水圧が作用した場合に前記弁体と当接して当該弁体の下方への移動を規制する規制手段が設けられており、これにより前記バルブはその開度が制限されて所定の開度以上には開弁しないようになっており、
前記圧縮空気噴射ノズルには、削孔時の水圧を超える圧力が作用することにより封止が解除される封止部材が設けられている、ことを特徴とする前記[1]に記載の自削孔型モニター装置。
【0076】
[3] 前記ばね手段は圧縮コイルばねとして構成されており、
前記規制手段は、前記弁体から前記削孔水吐出口に至るまでの上下方向の流路内に配置された円筒状部材として構成されており、
この円筒状部材の上端部は、前記圧縮コイルばねの下方からその内部に挿入された上でその内部に留まるように配置されている、ことを特徴とする前記[2]に記載の自削孔型モニター装置。
【0077】
[4] 前記[1]に記載した自削孔型モニター装置を使用した地盤改良方法であって、
前記第1流路内に削孔水を供給し、同削孔水を前記削孔水吐出口から吐出させつつ前記モニター装置を旋回させて所定の深度まで削孔する削孔工程と、
前記削孔水の供給を停止して前記バルブを閉弁するバルブ閉弁工程と、
前記モニター装置を旋回させつつ引き上げながら、前記第1及び第2流路内にそれぞれ圧縮空気及び硬化材を供給することにより前記圧縮空気噴射ノズル及び前記硬化材噴射ノズルからそれぞれ圧縮空気及び硬化材を噴射して周囲の地盤を改良する地盤改良工程と、
を含むことを特徴とする地盤改良方法。
【0078】
[5] 前記[2]に記載した自削孔型モニター装置を使用した地盤改良方法であって、
前記第1流路内に削孔水を供給し、同削孔水を前記削孔水吐出口から吐出させつつ前記モニター装置を旋回させて所定の深度まで削孔する削孔工程と、
前記削孔水の水圧を上昇させて、前記封止部材による前記圧縮空気噴射ノズルの封止を解除する封止解除工程と、
前記モニター装置を旋回させつつ引き上げながら、前記第1及び第2流路内にそれぞれ圧縮空気及び硬化材を供給することにより前記圧縮空気噴射ノズル及び前記硬化材噴射ノズルからそれぞれ圧縮空気及び硬化材を噴射して周囲の地盤を改良する地盤改良工程と、
を含むことを特徴とする地盤改良方法。
【0079】
[6] 前記封止解除工程において、前記第1流路内に削孔水を供給するとともに前記第2流路内に圧縮空気を供給して、前記硬化材噴射ノズルから圧縮空気を噴射させながら、前記第1流路内に供給した削孔水の水圧により前記封止部材の封止を解除する、ことを特徴とする前記[5]に記載の地盤改良方法。
【符号の説明】
【0080】
1…ロッド、2…スイベル、2a…削孔水及び圧縮空気供給口、2b…硬化材供給口、3…自削孔型モニター装置(実施形態)、4…バルブ、4a…鋼球(弁体)、4b…弁座、4c…圧縮コイルばね、5…規制部材、6…棒状部材、6a…棒本体、6b…振れ止め部、7…棒受部材、7a…ねじ孔、11…第1流路、12…第2流路、13…第3流路、14…第4流路、31…メタルクラウン(削孔ビット)、32…削孔水吐出口、32a…出口通路、32b…環状凹条、33…硬化材噴射ノズル、34…圧縮空気噴射ノズル、40…固結体(改良体)、50…サンドポンプ、60…封止部材(アルミ板)、70…封止部材(ゴム栓)、103…自削孔型モニター装置(参考例)、104…バルブ、104a…鋼球(弁体)、104b…弁座、104c…圧縮コイルばね、105…下部玉受け部材(規制部材)、105a…(下部玉受け部材の)上端、105b…環状凸条、A…圧縮空気、G…硬化材、M…ボーリングマシン、W…削孔水、W0…テスト噴射用の水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9