(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152280
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】転写用マスク、および、表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/38 20120101AFI20241018BHJP
G03F 1/28 20120101ALI20241018BHJP
【FI】
G03F1/38
G03F1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066386
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507066644
【氏名又は名称】韓国ホーヤ電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】HOYA ELECTRONICS KOREA CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】55,Hyeongoksandan-ro,Cheongbuk-myeon,Pyeongtaek-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】523117959
【氏名又は名称】台湾豪雅光電股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HOYA MICROELECTRONICS TAIWAN CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 36, Kedung 3rd Road, Science-Based industrial Park, Chunan, Miaoli County 350, Taiwan
(71)【出願人】
【識別番号】523117960
【氏名又は名称】重慶邁特光電有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHONGQING MASTEK ELECTRONICS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 1021, floor 10, No. 39, Yonghe Road, Yuzui town, Jiang Bei District, Chongqing, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 憲尚
(72)【発明者】
【氏名】今敷 修久
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BA07
2H195BA12
2H195BB12
2H195BC05
2H195BC09
(57)【要約】
【課題】開口部および柱状部の周囲の傾斜角が小さいPDLを実現することができる、転写用マスクを提供する。
【解決手段】透光性基板上に、透光部、第1透過部、第2透過部、および遮光部を含む転写用パターンを備えた転写用マスクであって、透光部は、透光性基板が露出したホール形状を有し、第1透過部は、透光部の外周に沿って、環状に設けられ、第2透過部は、第1透過部の外周に接して設けられ、露光光に対する第1透過部の透過率T1は、露光光に対する第2透過部の透過率T2よりも高く、遮光部は、第2透過部に隣接して設けられ、遮光部は、主パターンと、主パターンの外周の少なくとも一部に設けられ、解像しない線幅を有する副パターンと、主パターンと副パターンとの間に設けられ、解像しない線幅を有するスリットパターンとを備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板上に、透光部、第1透過部、第2透過部、および遮光部を含む転写用パターンを備えた転写用マスクであって、
前記透光部は、前記透光性基板が露出したホール形状を有し、
前記第1透過部は、前記透光部の外周に沿って、環状に設けられ、
前記第2透過部は、前記第1透過部の外周に接して設けられ、
露光光に対する前記第1透過部の透過率T1は、前記露光光に対する前記第2透過部の透過率T2よりも高く、
前記遮光部は、前記第2透過部に隣接して設けられ、
前記遮光部は、主パターンと、前記主パターンの外周の少なくとも一部に設けられ、解像しない線幅を有する副パターンと、前記主パターンと前記副パターンとの間に設けられ、解像しない線幅を有するスリットパターンとを備える
ことを特徴とする転写用マスク。
【請求項2】
前記透過率T1と前記透過率T2との差ΔTは、10%以上であることを特徴とする請求項1に記載の転写用マスク。
【請求項3】
前記透過率T1は、20%以上であることを特徴とする請求項1に記載の転写用マスク。
【請求項4】
前記透過率T2は、10%以上であることを特徴とする請求項1に記載の転写用マスク。
【請求項5】
前記主パターンおよび前記副パターンは、前記露光光に対する光学濃度が2.0よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の転写用マスク。
【請求項6】
前記第1透過部を透過した前記露光光と、前記透光部を透過した前記露光光との位相差の絶対値は、90度以下であり、
前記第2透過部を透過した前記露光光と、前記透光部を透過した前記露光光との位相差の絶対値は、90度以下であり、
前記第1透過部を透過した前記露光光と、前記第2透過部を透過した前記露光光との位相差の絶対値は、90度以下であることを特徴とする請求項1に記載の転写用マスク。
【請求項7】
前記露光光は、313nm以上436nm以下の波長の光を含むことを特徴とする請求項1に記載の転写用マスク。
【請求項8】
前記第1透過部は、前記透光性基板上に設けられた第1半透過膜からなり、
前記第2透過部は、前記透光性基板上に前記第1半透過膜と第2半透過膜とが順不同に積層されてなり、
前記主パターンおよび前記副パターンは、前記透光性基板上に前記第1半透過膜、前記第2半透過膜および遮光膜が順不同に積層されてなることを特徴とする請求項1に記載の転写用マスク。
【請求項9】
前記第2半透過膜は、前記第1半透過膜および前記遮光膜とは、互いにエッチング選択性を有する材料からなることを特徴とする請求項8に記載の転写用マスク。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の転写用マスクを準備する工程と、
基板上に、前記露光光に対して感光する感光性樹脂膜を形成する工程と、
露光装置を用いて前記転写用マスクを透過させた前記露光光を、前記感光性樹脂膜に照射し、前記転写用パターンを露光転写する工程と、
前記露光転写された前記感光性樹脂膜に対して現像処理を行う工程と、
を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記現像処理後の前記感光性樹脂膜には開口部と柱状部とが形成され、
前記露光転写する工程では、前記開口部の周囲に、断面の傾斜角が30度以下である傾斜部が形成され、かつ、前記柱状部の周囲に、断面の傾斜角が30度以下である傾斜部が形成されるように、前記転写用パターンを露光転写することを特徴とする請求項10に記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写用マスク、および、表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、露光により、複数の異なる残膜値をもつレジストパターンを被転写体上に形成するために、透光部、遮光部、および半透光部を含む転写用パターンをもつ、表示装置製造用のフォトマスクが開示されている。このフォトマスクにおいて、透光部は、透明基板が露出してなり、遮光部は、透明基板上に少なくとも遮光膜が形成された完全遮光部と、完全遮光部の外縁に接して形成され、透明基板上に半透光性のリム形成膜が形成されてなる幅γのリム部とを有する。半透光部は、遮光部に挟まれ、透明基板が、所定幅αで露出してなり、幅αは、半透光部の露光光透過率が、透光部の露光光透過率よりも小さくなるように設定されている。リム形成膜は、露光光の代表波長の光に対する透過率Trが5~60(%)、かつ代表波長の光に対する位相シフト量が90度以下である。
【0003】
また、特許文献2には、表示領域に画素がマトリクス状に配置された有機EL表示装置であって、各画素に配置された有機EL層と、有機EL層の縁を囲み、隣接する画素間に配置された分離層と、表示領域の全面を覆うことで有機EL層を封止する樹脂層と、樹脂層の縁を囲む枠状バンクと、を含み、分離層のテーパー角度と、枠状バンクのテーパー角度とが異なっていることを特徴とする有機EL表示装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-140207号公報
【特許文献2】国際公開第2018/061195号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スマートフォン、タブレット、テレビ等、薄型ディスプレイを有する表示装置において、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置を用いた製品が多く開発されている。一般に、有機EL表示装置には、発光素子の画素間を分割するため、画素分割層(PDL、Pixel Defining Layer)という絶縁層が形成される。
【0006】
本発明の一実施形態は、開口部および柱状部の周囲の傾斜角が小さいPDLを実現することができる、転写用マスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、
透光性基板上に、透光部、第1透過部、第2透過部、および遮光部を含む転写用パターンを備えた転写用マスクであって、
前記透光部は、前記透光性基板が露出したホール形状を有し、
前記第1透過部は、前記透光部の外周に沿って、環状に設けられ、
前記第2透過部は、前記第1透過部の外周に接して設けられ、
露光光に対する前記第1透過部の透過率T1は、前記露光光に対する前記第2透過部の透過率T2よりも高く、
前記遮光部は、前記第2透過部に隣接して設けられ、
前記遮光部は、主パターンと、前記主パターンの外周の少なくとも一部に設けられ、解像しない線幅を有する副パターンと、前記主パターンと前記副パターンとの間に設けられ、解像しない線幅を有するスリットパターンとを備える
ことを特徴とする転写用マスクである。
【0008】
本発明の第2の態様は、
前記透過率T1と前記透過率T2との差ΔTは、10%以上であることを特徴とする上記第1の態様に記載の転写用マスクである。
【0009】
本発明の第3の態様は、
前記透過率T1は、20%以上であることを特徴とする上記第1の態様に記載の転写用マスクである。
【0010】
本発明の第4の態様は、
前記透過率T2は、10%以上であることを特徴とする上記第1の態様に記載の転写用マスクである。
【0011】
本発明の第5の態様は、
前記主パターンおよび前記副パターンは、前記露光光に対する光学濃度が2.0よりも大きいことを特徴とする上記第1の態様に記載の転写用マスクである。
【0012】
本発明の第6の態様は、
前記第1透過部を透過した前記露光光と、前記透光部を透過した前記露光光との位相差の絶対値は、90度以下であり、
前記第2透過部を透過した前記露光光と、前記透光部を透過した前記露光光との位相差の絶対値は、90度以下であり、
前記第1透過部を透過した前記露光光と、前記第2透過部を透過した前記露光光との位相差の絶対値は、90度以下であることを特徴とする上記第1の態様に記載の転写用マスクである。
【0013】
本発明の第7の態様は、
前記露光光は、313nm以上436nm以下の波長の光を含むことを特徴とする上記第1の態様に記載の転写用マスクである。
【0014】
本発明の第8の態様は、
前記第1透過部は、前記透光性基板上に設けられた第1半透過膜からなり、
前記第2透過部は、前記透光性基板上に前記第1半透過膜と第2半透過膜とが順不同に積層されてなり、
前記主パターンおよび前記副パターンは、前記透光性基板上に前記第1半透過膜、前記第2半透過膜および遮光膜が順不同に積層されてなることを特徴とする上記第1の態様に記載の転写用マスクである。
【0015】
本発明の第9の態様は、
前記第2半透過膜は、前記第1半透過膜および前記遮光膜とは、互いにエッチング選択性を有する材料からなることを特徴とする上記第8の態様に記載の転写用マスクである。
【0016】
本発明の第10の態様は、
上記第1から上記第9の態様のいずれか1つに記載の転写用マスクを準備する工程と、
基板上に、前記露光光に対して感光する感光性樹脂膜を形成する工程と、
露光装置を用いて前記転写用マスクを透過させた前記露光光を、前記感光性樹脂膜に照射し、前記転写用パターンを露光転写する工程と、
前記露光転写された前記感光性樹脂膜に対して、現像処理を行う工程と、
を有することを特徴とする表示装置の製造方法である。
【0017】
本発明の第11の態様は、
前記現像処理後の前記感光性樹脂膜には開口部と柱状部とが形成され、
前記露光転写する工程では、前記開口部の周囲に、断面の傾斜角が30度以下である傾斜部が形成され、かつ、前記柱状部の周囲に、断面の傾斜角が30度以下である傾斜部が形成されるように、前記転写用パターンを露光転写することを特徴とする上記第10の態様に記載の表示装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施形態によれば、開口部および柱状部の周囲の傾斜角が小さいPDLを実現することができる、転写用マスクを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る、転写用マスク1を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1の転写用マスク1のA-A線の断面模式図である。
【
図3】
図3(a)~
図3(e)は、本発明の第1実施形態に係る、転写用マスク1の製造方法を説明する模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の変形例1に係る、転写用マスク2の断面模式図である。
【
図5】
図5(a)および
図5(b)は、本発明の変形例1に係る、転写用マスク2の製造方法を説明する模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の変形例2に係る、転写用マスク3の断面模式図である。
【
図7】
図7(a)および
図7(b)は、本発明の変形例2に係る、転写用マスク3の製造方法を説明する模式図である。
【
図8】
図8(a)および
図8(b)は、本発明の他の実施形態に係る、遮光部40を模式的に示す平面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施例1に係る、幅Dと傾斜角θの関係を示すグラフである。
【
図10】
図10は、本発明の実施例2に係る、幅Dと傾斜角θの関係を示すグラフである。
【
図11】
図11は、本発明の実施例1および実施例2のうち、所定の条件をピックアップしたグラフである。
【
図12】
図12は、有機EL表示装置のPDLの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<発明者の得た知見>
まず、発明者が得た知見について説明する。
図12は、有機EL表示装置のPDLの断面模式図である。PDLは、例えば、感光性ポリイミドからなり、
図12に示すように、発光層を形成するための開口部200と、発光層を形成する際のマスクを支えるための柱状部202と、開口部200と柱状部202との中間の高さの平坦部203と、を備えている。開口部200の周囲には傾斜角θの第1傾斜部201が形成され、柱状部202の周囲には傾斜角φの第2傾斜部204が形成されている。
【0021】
PDLの開口部200に発光層を形成した後、発光効率を維持するために、ポリイミド等の封止材によって発光層を封止する必要がある。この際、封止材の濡れ広がり、および、封止材の平坦性を改善することで、製造歩留まりを向上させることができる。したがって、PDLの第1傾斜部201の傾斜角θおよび第2傾斜部204の傾斜角φは、小さいことが好ましい。具体的には、傾斜角θおよび傾斜角φは、例えば、30度以下であることが好ましく、20度以下であることがより好ましい。また、傾斜角θおよび傾斜角φの下限値は、特に限定されないが、平坦部203の厚みを十分(例えば、0.8μm以上1.5μm以下)に確保しやすくする観点から、10度以上であることが好ましい。
【0022】
次に、本発明の一実施形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0023】
<本発明の第1実施形態>
(1)転写用マスク1の構成
まず、本実施形態の転写用マスク1の構成について説明する。
図1は、本実施形態の転写用マスク1を模式的に示す平面図であり、
図2は、
図1のA-A線の断面模式図である。
図1に示すように、本実施形態の転写用マスク1は、透光性基板100上に、透光部10と、第1透過部20と、第2透過部30と、遮光部40とを含む転写用パターンを備えている。本実施形態の転写用マスク1は、例えば、有機EL表示装置のPDLを形成するために用いることができる。特に、本実施形態の転写用マスク1は、PDLの開口部200と柱状部202とを同時に形成することができる。
【0024】
透光部10は、透光性基板100が露出しているホール形状の領域である。
図1においては、一例として、透光部10が四角形(長方形)のホール形状である場合を示しているが、例えば、円形や四角形以外の多角形のホール形状であってもよい。透光部10は、PDLを形成する際、PDLの開口部200に相当する領域であり、その大きさは特に限定されず、製造する表示装置の設計に応じて決定すればよい。なお、本明細書において、転写用マスク1を露光する露光光(以下、単に露光光ともいう)に対する透過率とは、透光部10(つまり、透光性基板100)を基準(100%)としたものである。
【0025】
第1透過部20は、
図1に示すように、透光部10の外周に沿って、環状に設けられた領域である。なお、本明細書において、「環状」とは円形だけでなく、四角形等の多角形のホールを囲む形状も含むものとする。第1透過部20は、露光光を一部透過するように構成されている。第1透過部20は、PDLを形成する際、PDLの開口部200の周囲に位置する第1傾斜部201の傾斜角θを小さくするために必要な領域である。なお、第1透過部20は、透光部10の外周のすべてを囲むことが好ましいが、発明の効果が得られる範囲であれば、第1透過部20は、環状の領域の一部が欠けた形状(欠けた部分は第2透過部30の一部になる。)であってもよい。また、第1透過部20は、透光部10の外周の80%以上を囲んでいれば、一部が欠けていても環状に設けられているというものとする。第1透過部20は、透光部10の外周の90%以上を囲むことが好ましく、100%(全周)を囲むとより好ましい。
【0026】
第2透過部30は、
図1に示すように、第1透過部20の外周に接するように設けられた領域である。第2透過部30は、PDLを形成する際、PDLの平坦部203に相当する領域である。また、第2透過部30は、
図1に示すように、透光部10、第1透過部20、第2透過部30、遮光部40の中で、最も大きな面積を有する領域である。
【0027】
遮光部40は、
図1に示すように、第2透過部30に隣接するように設けられた領域であり、主パターン41と、主パターン41の外周の少なくとも一部(本実施形態では環状)に設けられ、解像しない線幅を有する副パターン42と、主パターン41と副パターン42との間に設けられ、解像しない線幅を有するスリットパターン43とを備えている。遮光部40は、PDLを形成する際、PDLの柱状部202に相当する領域であり、副パターン42およびスリットパターン43は、PDLの柱状部202の周囲に位置する第2傾斜部204の傾斜角φを小さくするために必要な領域である。主パターン41および副パターン42は、実質的に露光光が透過しない(遮光される。例えば、露光光に対する光学濃度ODが2.0より大きい。好ましくはODが2.5以上、より好ましくはODが3.0以上)ように構成されており、スリットパターン43は、露光光を一部透過するように構成されている。なお、副パターン42は、主パターン41の外周の80%以上を囲むことが好ましく、90%以上を囲むことがより好ましく、100%(全周)を囲むとさらに好ましい。
【0028】
転写用マスク1において、第1透過部20の透過率T1は、第2透過部30の透過率T2よりも高くなっている。これにより、PDLを形成する際、開口部200の周囲に位置する第1傾斜部201の傾斜角θを小さくすることができる。
【0029】
転写用マスク1は、透光部10、第1透過部20、および第2透過部30のそれぞれを透過する露光光間の位相差によって、露光光の光量が減衰する現象の発生が抑制されていることが好ましい。具体的には、第1透過部20を透過した露光光と、透光部10を透過した露光光との位相差の絶対値は、90度以下であり、かつ、第2透過部30を透過した露光光と、透光部10を透過した露光光との位相差の絶対値は、90度以下であり、かつ、第1透過部20を透過した露光光と、第2透過部30を透過した露光光との位相差の絶対値は、90度以下であることが好ましい。転写用マスク1の透光部10、第1透過部20、および第2透過部30のそれぞれを透過する露光光間の位相差が上記の各範囲を超える場合、PDLの第1傾斜部201の傾斜角θが大きくなってしまう可能性がある。これに対し、転写用マスク1の透光部10、第1透過部20、および第2透過部30のそれぞれを透過する露光光間の位相差が上記の各範囲内とすることで、第1傾斜部201の傾斜角θを小さくすることが可能となる。第1透過部20を透過した露光光と、透光部10を透過した露光光との位相差の絶対値は、80度以下であるとより好ましく、60度以下であるとさらに好ましい。第2透過部30を透過した露光光と、透光部10を透過した露光光との位相差の絶対値は、80度以下であるとより好ましく、60度以下であるとさらに好ましい。第1透過部20を透過した露光光と、第2透過部30を透過した露光光との位相差の絶対値は、80度以下であるとより好ましく、60度以下であるとさらに好ましい。
【0030】
第1透過部20の幅D(つまり、透光部10と第1透過部20との境界と、第1透過部20と第2透過部30との境界との間の距離)は、例えば、1.5μm以上であることが好ましい。幅Dが1.5μm未満では、第1傾斜部201の傾斜角θを十分に小さくできない可能性がある。これに対し、幅Dを1.5μm以上とすることで、第1傾斜部201の傾斜角θを十分に小さくすることができる。幅Dは、1.5μmよりも大きいことがより好ましく、1.7μm以上であるとさらに好ましい。一方、幅Dは、10μm以下であることが好ましい。幅Dが10μmを超えると、第1透過部20と遮光部40とが接触、または近接しすぎる可能性がある。これに対し、幅Dを10μm以下とすることで、第1透過部20と遮光部40との間隔を十分に確保することができる。幅Dは、7μm以下であることがより好ましく、5μm以下であるとさらに好ましい。幅Dが5μmを超えると、第1傾斜部201の傾斜角θを小さくする効果が飽和する可能性がある。
【0031】
第1透過部20の幅Dは、略一定の値(例えば、平均値±5%の範囲内)であることが好ましい。例えば、透光部10の中心からの方向によって、幅Dが異なる値となっている場合、PDLを形成する際、第1傾斜部201の傾斜角θが該方向によって異なってしまう可能性がある。これに対し、幅Dを略一定の値とすることで、PDLを形成する際、第1傾斜部201の傾斜角θを略一定の値にすることができる。これにより、表示装置を製造する際の歩留まりをより向上させることができる。
【0032】
遮光部40における、副パターン42の線幅D1およびスリットパターン43の線幅D2は、例えば、それぞれ0.5μm以上2.0μm以下であることが好ましい。D1およびD2が0.5μm未満では、副パターン42とスリットパターン43を遮光部40に形成し難い。これに対し、D1およびD2を0.5μm以上とすることで、副パターン42とスリットパターン43を遮光部40に形成しやすくなり、第2傾斜部204の傾斜角φを小さくする効果が得られやすい。一方、D1およびD2が2.0μmを超えると、第1透過部20と遮光部40とが接触、または近接しすぎる可能性がある。これに対し、D1およびD2を2.0μm以下とすることで、第1透過部20と遮光部40との間隔を十分に確保することができる。また、この転写用マスク1を用いて、表示装置を構成する基板上にPDLを形成するときに行われる、感光性樹脂に対する転写用マスク1の転写パターンの露光転写を行ったときに、副パターン42とスリットパターン43が、その感光性樹脂上で解像しないようにすることができる。
【0033】
副パターン42の線幅D1に対するスリットパターン43の線幅D2の割合(D2/D1)は、例えば、0.5以上1.5以下であることが好ましく、0.8以上1.2以下であることがより好ましい。これにより、第2傾斜部204の傾斜角φを小さくする効果が得られやすくなる。
【0034】
副パターン42の線幅D1およびスリットパターン43の線幅D2は、それぞれ略一定の値(例えば、平均値±5%の範囲内)であることが好ましい。例えば、遮光部40の中心からの方向によって、線幅D1または線幅D2が異なる値となっている場合、PDLを形成する際、第2傾斜部204の傾斜角φが該方向によって異なってしまう可能性がある。これに対し、線幅D1および線幅D2をそれぞれ略一定の値とすることで、PDLを形成する際、第2傾斜部204の傾斜角φを略一定の値にすることができる。これにより、表示装置を製造する際の歩留まりをより向上させることができる。
【0035】
第1透過部20の透過率T1[%]と第2透過部30の透過率T2[%]との差ΔT[%](=T1-T2)は、例えば、10%以上であることが好ましい。透過率差ΔTが10%未満では、第1傾斜部201の傾斜角θを十分に小さくできない可能性がある。これに対し、透過率差ΔTを10%以上とすることで、第1傾斜部201の傾斜角θを十分に小さくすることができる。一方、透過率差ΔTは30%以下とすることが好ましく、25%以下であるとより好ましい。透過率差ΔTが25%を超えると、第1傾斜部201の傾斜角θを小さくする効果が得られにくくなる可能性がある。これに対し、透過率差ΔTを25%以下とすることで、第1傾斜部201の傾斜角θを十分に小さくすることができる。
【0036】
第1透過部20の幅D[μm]と、透過率T1[%]と透過率T2[%]との差ΔT[%]は、例えば、D≧-3.14×ΔT/100+2.32の関係を満たすことが好ましい。これにより、第1傾斜部201の傾斜角θをより小さく(例えば、30度以下に)することができる。上記関係式については、後述の実施例において詳細を説明する。
【0037】
第1透過部20の透過率T1は、20%以上であることが好ましく、30%以上であるとより好ましく、30%よりも大きいとさらに好ましい。一方、透過率T1は、60%以下であることが好ましく、50%以下であるとより好ましい。
第2透過部30の透過率T2は、10%以上であると好ましく、15%以上であるとより好ましく、20%以上であるとさらに好ましい。一方、透過率T2は、40%以下であると好ましく、30%以下であるとより好ましい。
スリットパターン43の透過率T3は、10%以上であると好ましく、15%以上であるとより好ましく、20%以上であるとさらに好ましい。一方、スリットパターン43の透過率T3は、透光部10の透過率以下であることが好ましい。
また、スリットパターン43の透過率T3は、第2透過部30の透過率T2と同じあるいはそれ以上であることが好ましい。
【0038】
露光光とは、表示装置製造用の露光装置が備える光源が照射する光である。本実施形態の露光光は、例えば、313nm以上436nm以下の波長の光を含む。露光光としては、単一波長光(例えば、波長が365nmのi線)を用いてもよいし、複数の波長を含むブロード波長光を用いても良い。なお、本明細書における、透過率や位相差は、露光光が単一波長からなる場合はその波長に対するものとし、ブロード波長光を用いる場合は、313nm以上436nm以下の波長域に含まれるいずれかの波長(代表波長)に対するものとする。
【0039】
第1透過部20は、例えば、透光性基板100上に設けられた第1半透過膜101からなり、第2透過部30は、例えば、透光性基板100上に第1半透過膜101と第2半透過膜102とが順不同に積層されてなることが好ましい。特に、
図2に示すように、第2透過部30は、透光性基板100上に第2半透過膜102が形成され、第2半透過膜102上に第1半透過膜101が形成されてなることがより好ましい。この構成により、第1透過部20の透過率T1は、第1半透過膜101が有する透過率HT1と等しくなる。一方、第2透過部30の透過率T2は、第1半透過膜101と第2半透過膜102の積層構造での透過率となる。第2半透過膜102の透過率HT2は、第2透過部30の透過率T2と第1半透過膜101の透過率HT1から、光学設計する必要がある。
【0040】
主パターン41および副パターン42は、例えば、透光性基板100上に第1半透過膜101、第2半透過膜102、および、遮光性を有する遮光膜103が順不同に積層されてなることが好ましい。特に、
図2に示すように、透光性基板100上に遮光膜103が形成され、遮光膜103上に第2半透過膜102が形成され、第2半透過膜102上に第1半透過膜101が形成されてなることがより好ましい。この構成により、
図2に示すような転写用マスク1の製造を容易に行うことができる。主パターン41および副パターン42は、クロム系材料や金属シリサイド系材料で形成してもよい。
また、スリットパターン43は、例えば、透光性基板100上に第1半透過膜101と第2半透過膜102とが順不同に積層されてなることが好ましい。特に、
図2に示すように、スリットパターン43は、透光性基板100上に第2半透過膜102が形成され、第2半透過膜102上に第1半透過膜101が形成されてなることがより好ましい。この構成により、スリットパターン43の透過率は、第1半透過膜101と第2半透過膜102の積層構造での透過率(つまり、第2透過部30と同じ透過率)となる。なお、スリットパターン43は、第1半透過膜101のみ、あるいは第2半透過膜102のみで構成されていてもよく、透光性基板100上に、いずれの薄膜も形成されていない構成としてもよい。
【0041】
第1半透過膜101の膜厚d1は、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であるとより好ましい。また、膜厚d1は、80nm以下であることが好ましく、60nm以下であるとより好ましい。
第2半透過膜102の膜厚d2は、3nm以上であることが好ましく、5nm以上であるとより好ましい。また、膜厚d2は、50nm以下であることが好ましく、40nm以下であるとより好ましい。
遮光膜103の膜厚d3は、50nm以上であることが好ましく、80nm以上であるとより好ましく、100nm以上であるとさらに好ましい。また、膜厚d3は、200nm以下であることが好ましく、170nm以下であるとより好ましく、150nm以下であるとさらに好ましい。
【0042】
第1半透過膜101、第2半透過膜102および遮光膜103は、クロム(Cr)、又は、クロム(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のうちの少なくともいずれか1つを含有する材料(クロム系材料)で形成してもよい。このクロム系材料としては、例えば、Cr、CrO、CrN、CrF、CrCO、CrCN、CrON、CrCON、CrCONFが挙げられる。一方、第1半透過膜101、第2半透過膜102および遮光膜103は、金属およびケイ素からなる材料、または金属およびケイ素に、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のうちの少なくともいずれか1つを含有する材料(金属シリサイド系材料)で形成してもよい。金属シリサイドの金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)などの遷移金属が好適である。金属シリサイド系材料における金属とケイ素の合計含有量(M+Si)[原子%]に対する金属の含有量[原子%]の比率(以下、「M/[M+Si]比率」という。)は、0.5以下であることが好ましく、1/3以下であるとより好ましく、0.3以下であるとさらに好ましい。一方、M/[M+Si]比率は、0.05以上であると好ましく、0.1以上であるとより好ましい。
【0043】
第1半透過膜101と第2半透過膜102とは、互いにエッチング選択性を有する材料からなることが好ましい。この構成により、
図2に示すような転写用マスク1の製造を容易に行うことができる。例えば、クロム系材料の薄膜と金属シリサイド系の薄膜は、互いにエッチング選択性を有する。第1半透過膜101と第2半透過膜102のうち、いずれか一方をクロム系材料で形成し、他方を金属シリサイド系材料で形成することで上記の効果を得ることができる。
第2半透過膜102と遮光膜103とは、互いにエッチング選択性を有する材料からなることが好ましい。この構成により、
図2に示すような転写用マスク1の製造を容易に行うことができる。例えば、第2半透過膜102と遮光膜103のうち、いずれか一方をクロム系材料で形成し、他方を金属シリサイド系材料で形成することで上記の効果を得ることができる。
つまり、第2半透過膜102は、第1半透過膜101および遮光膜103とは、互いにエッチング選択性を有する材料からなることがより好ましい。
【0044】
透光性基板100は、露光光に対して透明である。透光性基板100は、表面反射ロスが無いとしたときに、露光光に対して85%以上の透過率、好ましくは90%以上の透過率を有するものである。透光性基板100は、ケイ素と酸素を含有する材料からなり、合成石英ガラス、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO2-TiO2ガラス等)などのガラス材料で構成することができる。表示装置用途で使用される転写用マスクの透光性基板100は、一般に矩形状の基板であって、該透光性基板の短辺の長さは300mm以上であるものが使用される。
【0045】
(2)転写用マスク1の製造方法
次に、本実施形態の転写用マスク1の製造方法について、
図3(a)~
図3(e)を用いながら説明する。本実施形態の転写用マスク1は、例えば、以下に説明する方法によって製造することができる。
【0046】
まず、透光性基板100上に遮光膜103を成膜する。成膜方法は、公知の手段(例えば、スパッタリング法による成膜。)を適用できる。
【0047】
透光性基板100上に遮光膜103を成膜した後、
図3(a)に示すように、遮光部40の形状に合わせて、遮光膜103をパターニングする。パターニングは、公知の手段(例えば、遮光部40のパターンを有するレジスト膜を遮光膜103上に設け、レジスト膜をマスクとするウェットエッチングやドライエッチングを行って、遮光膜103に遮光部40のパターンを形成する。)を適用できる。
【0048】
遮光膜103をパターニングした後、
図3(b)に示すように、透光性基板100および遮光膜103上に、第2半透過膜102を成膜する。成膜方法は、公知の手段(例えば、スパッタリング法による成膜。)を適用できる。
【0049】
第2半透過膜102を成膜した後、
図3(c)に示すように、第1透過部20および透光部10の形状に合わせて、第2半透過膜102をパターニングする。パターニングは、公知の手段(例えば、第1透過部20および透光部10のパターンを有するレジスト膜を第2半透過膜102上に設け、そのレジスト膜をマスクとするウェットエッチングやドライエッチングを行って、第2半透過膜102に第1透過部20および透光部10のパターンを形成する。)を適用できる。
【0050】
第2半透過膜102をパターニングした後、
図3(d)に示すように、透光性基板100および第2半透過膜102上に、第1半透過膜101を成膜する。成膜方法は、公知の手段(例えば、スパッタリング法による成膜。)を適用できる。
【0051】
第1半透過膜101を成膜した後、
図3(e)に示すように、透光部10の形状に合わせて、第1半透過膜101をパターニングする。パターニングは、公知の手段(例えば、透光部10のパターンを有するレジスト膜を第1半透過膜101上に設け、そのレジスト膜をマスクとするウェットエッチングやドライエッチングを行って、第1半透過膜101に透光部10のパターンを形成する。)を適用できる。
【0052】
以上の方法により、本実施形態の転写用マスク1を製造することができる。本実施形態の転写用マスク1は、第1半透過膜101、第2半透過膜102および遮光膜103を同じエッチャントでエッチングされる材料で形成することができる。なお、転写用マスク1の効果を損なわない範囲で、上述の説明以外の付加的な膜を形成しても構わない。
【0053】
(3)表示装置の製造方法
本発明は、有機EL等の表示装置の製造方法としても適用可能である。本実施形態の表示装置の製造方法は、例えば、本実施形態の転写用マスク1を準備する工程と、基板上に、露光光に対して感光する感光性樹脂膜(例えば、感光性ポリイミドからなる薄膜)を形成する工程と、露光装置を用いて転写用マスク1を透過させた露光光を、感光性樹脂膜に照射し、転写用パターンを露光転写する工程と、露光転写された感光性樹脂膜に対して、現像処理を行う工程と、を有する、表示装置の製造方法である。
【0054】
本実施形態の表示装置の製造方法において、転写用パターンを露光転写する工程では、現像処理後の感光性樹脂膜の開口部200の周囲に、断面の傾斜角θが30度以下(より好ましくは20度以下)である第1傾斜部201が形成され、かつ、柱状部202の周囲に、断面の傾斜角φが30度以下(より好ましくは20度以下)である第2傾斜部204が形成されるように、転写用パターンを露光転写することが好ましい。上述したように、転写用マスク1は、傾斜角θおよび傾斜角φを小さくするための構成を有しているため、露光装置や露光条件を適切に選択することで、傾斜角θおよび傾斜角φを30度以下(または20度以下)とすることが可能である。これにより、表示装置を製造する際の歩留まりをさらに向上させることができる。
【0055】
本実施形態の転写用マスク1は、傾斜角θを小さくするための構成として、透光部10と第2透過部30の間に、第2透過部30よりも透過率の高い第1透過部20を環状に設けた構成を用い、傾斜角φを小さくするための構成として、副パターン42とスリットパターン43の微細スリット構造をそれぞれ用いている。
傾斜角θを小さくするために、透光部10の外周に微細スリット構造を用いることを考えた場合、その副パターンとスリットパターンの幅は、副パターン42の幅D1およびスリットパターン43の幅D2よりも大幅に小さくする必要がある。また、第2透過部30を形成する薄膜の厚さ(第1半透過膜101と第2半透過膜102の合計の厚さ)は、遮光膜103に比べて薄く、ウェットエッチングによるパターニングの制御が難しい。これらの事情から、ウェットエッチングによって、そのような小さい線幅を精度よく形成することは困難である。このため、傾斜角θを小さくするための構成は、上述のように第1透過部20を設ける(例えば、第1半透過膜101のような透過率の高い薄膜を設ける)構成とする方がよい。
【0056】
一方、傾斜角φを小さくする構成として、第2透過部30と遮光部40の間に第2透過部30と遮光部40の間の透過率を有する第3の透過部を設けることを考えた場合、第3の透過部を形成するために、第2透過部30を形成する薄膜(第2半透過膜102)と遮光部40を形成する遮光膜103との間に第3の半透過膜を設ける必要が生じる。この場合、透光性基板100上の薄膜の積層構造がより複雑になり(4つの薄膜の積層構造)、転写用マスクを精度よく製造することが難しくなる。他方、傾斜角φを小さくする構成として設ける副パターン42の幅D1とスリットパターン43の幅D2は、比較的に大きくすることができ、ウェットエッチングでも遮光膜103に精度よく形成することができる。このため、傾斜角φを小さくするための構成は、副パターン42とスリットパターン43の微細スリット構造とする方がよい。
以上のように、本実施形態の転写用マスク1は、傾斜角θを小さくするための構成と傾斜角φを小さくするための構成を、それぞれに好適なものを使い分けることにより、PDLの傾斜角θおよび傾斜角φを高精度に制御することができる。
【0057】
(4)第1実施形態の変形例
上述の実施形態は、必要に応じて、以下に示す変形例のように変更することができる。以下、上述の実施形態と異なる要素についてのみ説明し、上述の実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
(4-1)第1実施形態の変形例1
図4は、本変形例1の転写用マスク2の断面模式図である。本変形例1の転写用マスク2も、上述の第1実施形態と同様に、透光性基板100上に転写用パターンを備えており、透光部10と、第1透過部20と、第2透過部30と、遮光部40と、を有している。したがって、本変形例1の転写用マスク2も、PDLを形成する際、第1傾斜部201の傾斜角θおよび第2傾斜部204の傾斜角φを小さくすることができる。
【0059】
図4に示すように、本変形例1の遮光部40は、例えば、透光性基板100上に第1半透過膜101が形成され、第1半透過膜101上に第2半透過膜102が形成され、第2半透過膜102上に遮光膜103が形成された構成を有している。また、本変形例1の第2透過部30は、例えば、透光性基板100上に第1半透過膜101が形成され、第1半透過膜101上に第2半透過膜102が形成された構成を有している。
【0060】
本変形例1の転写用マスク2は、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、透光性基板100上に、第1半透過膜101、第2半透過膜102、遮光膜103の順に成膜してマスクブランクを準備する。成膜後、
図5(a)に示すように、遮光部40の形状に合わせて、遮光膜103をパターニングする(例えば、遮光部40のパターンを有するレジスト膜を遮光膜103上に設け、そのレジスト膜をマスクとし、第2半透過膜102との間で十分なエッチング選択性を有するエッチャントを用いたウェットエッチングやドライエッチングを行って、遮光部40のパターンを形成する。)。さらに、
図5(b)に示すように、第1透過部20および透光部10の形状に合わせて、第2半透過膜102をパターニングする(例えば、第1透過部20および透光部10のパターンを有するレジスト膜を遮光膜103および第2半透過膜102上に設け、そのレジスト膜をマスクとし、第1半透過膜101との間で十分なエッチング選択性を有するエッチャントを用いたウェットエッチングやドライエッチングを行って、第2半透過膜102に第1透過部20および透光部10のパターンを形成する。)。その後、透光部10の形状に合わせて、第1半透過膜101をパターニングする(例えば、透光部10のパターンを有するレジスト膜を遮光膜103、第2半透過膜102および第1半透過膜101上に設け、そのレジスト膜をマスクとするウェットエッチングやドライエッチングを行って、第1半透過膜101に透光部10のパターンを形成する。)ことで、
図4に示すような転写用マスク2を製造することができる。
【0061】
(4-2)第1実施形態の変形例2
図6は、本変形例2の転写用マスク3の断面模式図である。本変形例2の転写用マスク3も、上述の第1実施形態と同様に、透光性基板100上に転写用パターンを備えており、透光部10と、第1透過部20と、第2透過部30と、遮光部40と、を有している。したがって、本変形例2の転写用マスク3も、PDLを形成する際、第1傾斜部201の傾斜角θおよび第2傾斜部204の傾斜角φを小さくすることができる。
【0062】
図6に示すように、本変形例2の遮光部40は、例えば、透光性基板100上に第2半透過膜102が形成され、第2半透過膜102上にエッチングストッパ膜104が形成され、エッチングストッパ膜104上に遮光膜103が形成され、遮光膜103上に第1半透過膜101が形成された構成を有している。エッチングストッパ膜104は、遮光膜103および第2半透過膜102とエッチング選択性を有する材料からなる。エッチングストッパ膜104の光学特性は基本的に不問である。第2半透過膜102、エッチングストッパ膜104、遮光膜103および第1半透過膜101の積層構造で、遮光部40に求められる光学特性を満たすことができればよい。なお、本変形例2の転写用マスク3は、第1半透過膜101、第2半透過膜102および遮光膜103を同じエッチャントでエッチングされる材料で形成することができる。
【0063】
本変形例2の転写用マスク3は、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、透光性基板100上に、第2半透過膜102、エッチングストッパ膜104、遮光膜103の順に成膜してマスクブランクを準備する。成膜後、
図7(a)に示すように、遮光部40の形状に合わせて、遮光膜103およびエッチングストッパ膜104をパターニングする(例えば、遮光部40のパターンを有するレジスト膜を遮光膜103上に設け、そのレジスト膜をマスクとし、異なるエッチャントを用いたウェットエッチングやドライエッチングを行って、遮光膜103およびエッチングストッパ膜104のそれぞれに遮光部40のパターンを形成する。)。次に、
図7(b)に示すように、第1透過部20および透光部10の形状に合わせて、第2半透過膜102をパターニングする(例えば、第1透過部20および透光部10のパターンを有するレジスト膜を、遮光膜103および第2半透過膜102上に設け、そのレジスト膜をマスクとするウェットエッチングやドライエッチングを行って、第2半透過膜102に第1透過部20および透光部10のパターンを形成する。)。その後、透光性基板100、第2半透過膜102、および遮光膜103上に、第1半透過膜101を成膜し、透光部10の形状に合わせて、第1半透過膜101をパターニングする(例えば、透光部10のパターンを有するレジスト膜を第1半透過膜101上に設け、そのレジスト膜をマスクとするウェットエッチングやドライエッチングを行って、第1半透過膜101に透光部10のパターンを形成する。)ことで、
図6に示すような転写用マスク3を製造することができる。
【0064】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0065】
図8(a)および
図8(b)は、本発明の他の実施形態に係る、遮光部40を模式的に示す平面図である。例えば、上述の実施形態では、副パターン42が、主パターン41を囲むように環状に設けられている場合について説明したが、副パターン42は、
図8(a)に示すように、一部が繋がっていなくてもよいし、
図8(b)に示すように、一部が主パターン41と繋がっていてもよい。このような場合でも、PDLの柱状部202の周囲に位置する第2傾斜部204の傾斜角φを小さくすることが可能である。
【実施例0066】
次に、本発明に係る実施例を説明する。これらの実施例は本発明の一例であって、本発明はこれらの実施例により限定されない。
【0067】
(1)実施例1
以下の条件により、転写用マスク1を用いて、基板上の感光性ポリイミド膜に対する露光転写でPDLを形成した際の第1傾斜部201の傾斜角θを、シミュレーションにより算出した。その結果を
図9に示す。
第1透過部20の透過率T1:30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%
第2透過部30の透過率T2:30%
透過率T1と透過率T2との差ΔT:0%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%
第1透過部20の幅D:0~5.0μm
露光装置の開口数(NA):0.11
露光光:i線
【0068】
図9に示すように、実質的に第1透過部20を設けていない状態(差ΔTが0%)の傾斜角θと比べて、第1透過部20を設けた状態(差ΔTが5%、10%、15%、20%)では、傾斜角θが小さくなることを確認した。特に、差ΔTが10%以上で、幅Dが1.5μm以上の時に、実質的に第1透過部20を設けていない状態と比べて、傾斜角θを5度以上小さくできることを確認した。
【0069】
(2)実施例2
また、以下の条件により、転写用マスク1を用いてPDLを形成した際の第1傾斜部201の傾斜角θを、シミュレーションにより算出した。その結果を
図10に示す。
第1透過部20の透過率T1:30%、35%、40%、45%、50%
第2透過部30の透過率T2:30%
透過率T1と透過率T2との差ΔT:0%、5%、10%、15%、20%
第1透過部20の幅D:0~5.0μm
露光装置の開口数(NA):0.1
露光光:g線-h線-i線を含む複合光
【0070】
図10に示すように、実質的に第1透過部20を設けていない状態(差ΔTが0%)の傾斜角θと比べて、第1透過部20を設けた状態(差ΔTが5%、10%、15%、20%)では、傾斜角θが小さくなることを確認した。特に、差ΔTが10%以上で、幅Dが1.5μm以上の時に、実質的に第1透過部20を設けていない状態と比べて、傾斜角θを5度以上小さくできることを確認した。
【0071】
(3)実施例3
以下の遮光部40を設けた転写用マスク1を用いて、実施例2と同様の露光条件でPDLを形成した際の第2傾斜部204の傾斜角φを、シミュレーションにより算出した。その結果、傾斜角φは、17.2度であった。
副パターン42の線幅D1:0.9μm
スリットパターン43の線幅D2:0.9μm
スリットパターン43の透過率:30%
露光装置の開口数(NA):0.1
露光光:g線-h線-i線を含む複合光
【0072】
同様に、以下の条件でのシミュレーションによって、第2傾斜部204の傾斜角φを算出した。その結果、傾斜角φは、19.3度であった。
副パターン42の線幅D1:0.6μm
スリットパターン43の線幅D2:0.8μm
スリットパターン43の透過率:30%
露光装置の開口数(NA):0.1
露光光:g線-h線-i線を含む複合光
【0073】
一方、比較のために、副パターン42およびスリットパターン43を備えない遮光部(主パターン41のみを備える)を設けた転写用マスクを用いて、実施例2と同様の露光条件でPDLを形成した際の第2傾斜部204の傾斜角φを、シミュレーションにより算出した。その結果、傾斜角φは、28.8度であった。
【0074】
以上より、主パターン41、副パターン42およびスリットパターン43を備える遮光部40を設けることで、第2傾斜部204の傾斜角φを小さくできることを確認した。
【0075】
(4)実施例1および実施例2のまとめ
実施例1および実施例2の結果から、特に、傾斜角θを30度以下とすることができた条件、傾斜角θを25度以下とすることができた条件、および、傾斜角θを20度以下とすることができた条件をピックアップして、
図11にまとめた。
図11に示す破線は、ピックアップした条件のうち、差ΔTが10%、15%、20%のそれぞれにおいて、最も幅Dが小さい条件の3点を直線で近似したものである。
【0076】
図11に示すように、差ΔTが10%、15%、20%のそれぞれにおいて、最も幅Dが小さい条件の3点を直線で近似した結果、その式は、D=-3.14×ΔT/100+2.32であった。したがって、第1透過部20の幅Dと、透過率T1と透過率T2との差ΔTを、D≧-3.14×ΔT/100+2.32の関係を満たすようにすることで、第1傾斜部201の傾斜角θをより小さく(例えば、30度以下に)することができることを確認した。