(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152284
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】欠陥検出方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20241018BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20241018BHJP
【FI】
G01N21/88 J
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066393
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000220435
【氏名又は名称】株式会社ファインシンター
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 淳一
(72)【発明者】
【氏名】大井 未来
【テーマコード(参考)】
2G024
2G051
【Fターム(参考)】
2G024AD06
2G024BA27
2G024CA01
2G024CA02
2G051AB03
2G051AC21
2G051CA04
2G051DA06
2G051DA13
2G051EA12
2G051EB01
(57)【要約】
【課題】製造した部品に欠陥が生じているか否かを簡便に判定する。
【解決手段】欠陥検出方法は、対象とする物体90の第1の面91について、基準位置Refmからの距離を測定する距離測定ステップと、測定した第1の面91の距離に基づいて、物体90の第1の面91とは異なる第2の面92の欠陥99の有無を判定する判定ステップと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象とする物体の第1の面について、基準位置からの距離を測定する距離測定ステップと、
測定した前記第1の面の前記距離に基づいて、前記物体の前記第1の面とは異なる第2の面の欠陥の有無を判定する判定ステップと、
を含む、欠陥検出方法。
【請求項2】
前記第1の面と前記第2の面とは交差している、請求項1に記載の欠陥検出方法。
【請求項3】
前記判定ステップは、欠陥が無い基準物体の第1の面と前記基準位置との間の基準距離と、測定した前記物体の前記第1の面の前記距離とを比較することにより、前記欠陥の有無を判定する、請求項1に記載の欠陥検出方法。
【請求項4】
前記距離測定ステップは、変位計または3Dカメラを用いて、前記物体の前記第1の面の前記距離を測定する、請求項1に記載の欠陥検出方法。
【請求項5】
前記物体は焼結体であり、前記欠陥はクラックまたは歪みである、請求項1から4のいずれか一項に記載の欠陥検出方法。
【請求項6】
対象とする物体の第1の面について、基準位置からの距離を測定する測定装置と、
測定した前記第1の面の前記距離に基づいて、前記物体の前記第1の面とは異なる第2の面の欠陥の有無を判定する演算装置と、
を備える、欠陥検出装置。
【請求項7】
前記測定装置は、変位計または3Dカメラである、請求項6に記載の欠陥検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造した部品の欠陥の有無を判定する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械や構造物を構成する部品(以下、機械部品または単に部品と呼ぶ)を工業的に大量に製造するうえで、製造されるいくつかの部品には、歪みやクラック(割れ)等の種々の欠陥が一定の割合で生じる。部品に生じているこのような欠陥が原因で機械や構造物に不具合が生じるおそれがあることから、部品の製造工場では、部品を製造した後の選別工程において、欠陥が生じている部品を判別して良品が選別されている。例えば特許文献1には、金属部品のクラックの有無を判定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの製造工場では、生産ラインにおいて製造した部品を、例えばベルトコンベア等の搬送機に載せて次々と搬送している。作業効率の観点から、良品を選別する工程は搬送中の部品に対して行うことが望まれている。特許文献1の方法では、検査対象とする部品に弾性波を検知するAE(Acoustic Emission)センサを取り付ける必要があり、搬送機に載せられて次々と搬送されてくる部品に対して特許文献1の方法を適用することは困難である。製造した部品に欠陥が生じているか否かを部品が搬送されている間に判定することができる、簡便な方法が求められている。
【0005】
本発明は、欠陥の有無を簡便に判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、例えば以下に示す態様を含む。
(項1)
対象とする物体の第1の面について、基準位置からの距離を測定する距離測定ステップと、
測定した前記第1の面の前記距離に基づいて、前記物体の前記第1の面とは異なる第2の面の欠陥の有無を判定する判定ステップと、
を含む、欠陥検出方法。
(項2)
前記第1の面と前記第2の面とは交差している、項1に記載の欠陥検出方法。
(項3)
前記判定ステップは、欠陥が無い基準物体の第1の面と前記基準位置との間の基準距離と、測定した前記物体の前記第1の面の前記距離とを比較することにより、前記欠陥の有無を判定する、項1または2に記載の欠陥検出方法。
(項4)
前記距離測定ステップは、変位計または3Dカメラを用いて、前記物体の前記第1の面の前記距離を測定する、項1から3のいずれか一項に記載の欠陥検出方法。
(項5)
前記物体は焼結体であり、前記欠陥はクラックまたは歪みである、項1から4のいずれか一項に記載の欠陥検出方法。
(項6)
対象とする物体の第1の面について、基準位置からの距離を測定する測定装置と、
測定した前記第1の面の前記距離に基づいて、前記物体の前記第1の面とは異なる第2の面の欠陥の有無を判定する演算装置と、
を備える、欠陥検出装置。
(項7)
前記測定装置は、変位計または3Dカメラである、項6に記載の欠陥検出装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、欠陥の有無を簡便に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る欠陥検出装置を使用する際の態様を説明するための図である。
【
図2】一実施形態に係る欠陥検出装置を使用する際の態様を説明するための図である。
【
図3】一実施形態に係る欠陥検出方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図4】実施例1において欠陥検出の対象とした歯車の全体を側面(端面)から見た写真である。
【
図5】実施例1において欠陥検出の対象とした
図4に示す歯車の歯を
図4に符号(A)~(C)で示すそれぞれの方向から見た写真である。
【
図6】実施例1において歯車のクラックまたは歪みの検出に用いた3Dカメラによる撮像画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明および図面において、同じ符号は同じまたは類似の構成要素を示すこととし、よって、同じまたは類似の構成要素に関する重複した説明を省略する。
【0010】
[欠陥検出の概要]
本発明では、欠陥を検出する対象とする物体(以下、対象物体と呼ぶ)の第1の面の距離に基づいて、対象物体の第1の面とは異なる第2の面の欠陥の有無を判定する。対象物体の第1の面には、第2の面に生じている欠陥の影響による変形が生じており、本発明では、欠陥により周辺に生じる変形などの影響を第1の面について測定することにより、第2の面における欠陥を検出する。
【0011】
欠陥の有無を判定する態様には、例えば次の2つの態様がある。以下に説明する本発明の一実施形態では、第1の態様に沿って欠陥の有無を判定する。
【0012】
第1の態様として、欠陥の有無の判定は、基準とする物体(以下、基準物体と呼ぶ)を用いて行うことができる。第1の態様では、対象物体の第1の面の距離と、基準物体の第1の面の距離(以下、基準距離と呼ぶ)とを比較することにより、対象物体の第1の面の距離の変化を検知し、検知したその変化に基づいて、対象物体の第2の面の欠陥の有無を判定する。基準距離は、基準物体を用いて予め測定しておくことが好ましい。
【0013】
基準物体は、設計上の形状が対象物体と同じ部品である。基準物体は、基準物体のどこにも欠陥が発生していないことを、例えば本発明とは異なる他の欠陥検出方法などにより予め確認しておくことが好ましい。
【0014】
第2の態様として、欠陥の有無の判定は、基準物体を用いることなく行うことができる。第2の態様では、対象物体の第1の面の距離と、対象物体の第1の面の設計上の距離(以下、設計距離と呼ぶ)とを比較することにより、対象物体の第1の面の距離の変化を検知し、検知したその変化に基づいて、対象物体の第2の面の欠陥の有無を判定する。設計距離は、基準物体を用いて欠陥の有無を判定する第1の態様において
図2に示す基準距離Dに対応し、例えば対象物体の設計上の寸法と測定装置の設計上の配置とに基づいて予め算出しておくことができる。或いは、測定対象とする面の深度の情報を有する撮像画像を撮像し、その撮像画像中の或る基準とする深度を、設計距離に設定することができる。深度情報を有するこのような撮像画像は、例えば3Dカメラを用いて撮像することができる。
【0015】
本発明では、様々な部品を対象物体として欠陥を検出することができる。好ましくは、対象物体は焼結体である。焼結体は、素材となる粉末粒子間に空隙を含んでいる。本発明では、欠陥により周辺に影響が生じる限り、様々な欠陥を検出することができる。好ましくは、検出する欠陥はクラックまたは歪みである。
【0016】
[欠陥検出装置]
図1および
図2は、本発明の一実施形態に係る欠陥検出装置を使用する際の態様を説明するための図である。
図1は、欠陥検出装置10が対象物体90の第1の面91についての距離を測定する際の態様を示している。
図1の(B)は、(A)において一点鎖線で囲む部分の拡大図である。
図2は、欠陥検出装置10が基準物体90Rの第1の面91Rの基準距離Dを測定する際の態様を示している。
【0017】
<装置の構成>
図1および
図2に示すように、一実施形態に係る欠陥検出装置10は、測定装置11と演算装置12とを備える。測定装置11と演算装置12とは、有線または無線のネットワーク13を介してデータ通信可能に接続されている。任意の構成として、欠陥検出装置10は、例えばマウスやキーボード等の入力部14と、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示部15とを備えることができる。
【0018】
欠陥検出装置10は、例えばFA(Factory Automation)化された部品の製造工場内の生産ラインに配置される。欠陥検出装置10は、例えばベルトコンベア等の搬送機に載せられて次々と搬送されてくる複数の対象物体90のそれぞれについて、対象物体90の欠陥の有無を判定する。欠陥が生じていると判定されて良品ではないと判別された対象物体90は、例えば良品とは別の搬送ラインに載せ替えられて、以後、生産ラインにおいて良品とは区別して取り扱われる。本実施形態では、焼結により製造される金属製の歯車を、欠陥を検出する対象物体90とする。
【0019】
測定装置11は、測定対象とする物体について、基準位置Refmからの距離を測定する装置である。測定装置11により測定される距離や撮像画像のデータは、ネットワーク13を介して演算装置12に送信されて記録される。測定装置11は非接触式の測定装置であることが好ましい。測定装置11には、例えば種々の変位計や3Dカメラを用いることができる。変位計は、1次元の変位計であってもよいし、2次元または3次元の変位計であってもよい。例えば変位計にはレーザ変位計を用いることができる。3Dカメラの方式は、ステレオ方式であってもよいし、ToF(Time of Flight)方式であってもよい。基準位置Refmは、例えばレーザ変位計ではレーザが出射する側の面とすることができ、例えば3Dカメラでは撮像素子が配置されている面とすることができる。
【0020】
演算装置12は、欠陥99の有無を判定する装置である。演算装置12は、例えばパーソナルコンピュータ等の汎用計算機や、タブレット端末、スマートフォン等を用いて構成することができる。図示していないが、演算装置12は、ハードウェアの構成として、データ処理を行うCPU等のプロセッサと、プロセッサがデータ処理の作業領域に使用するメモリとをさらに備えている。欠陥検出装置10が例えばFA化された生産ラインに配置される場合、演算装置12は、例えばスレーブ装置とマスタ装置とのノードから構成される産業用ネットワークシステムのスレーブ装置とすることができる。
【0021】
<装置の動作>
図1に示すように、測定装置11は、対象物体90の第1の面91について、基準位置Refmからの距離を測定する。欠陥の有無の判定に基準物体を用いる第1の態様では、
図2に示すように、測定装置11はさらに、基準物体90Rの第1の面91Rについて、基準位置Refmからの距離(基準距離D)を測定する。基準物体90Rを用いた基準距離Dの測定は予め行っておくことが好ましい。
【0022】
演算装置12は、対象物体90の第2の面92の欠陥99の有無を、測定装置11により測定された対象物体90の第1の面91の距離に基づいて判定する。好ましくは、演算装置12は、第2の面92の欠陥99の有無を、第1の面91の距離の変化Δdに基づいて判定する。
【0023】
以下、
図1および
図2を参照して、対象物体90の第2の面92の欠陥99の有無を、第1の面91の距離に基づいて判定することができる原理について説明する。
【0024】
測定装置11により測定される対象物体90の第1の面91の距離は、第2の面92の欠陥99の有無により変化する。
図1に示すように、第1の面91と第2の面92とは交差しており、対象物体90の第2の面92に欠陥99が生じている場合には、欠陥99の影響により第1の面91が変形する。測定装置11の測定方向(図中Y軸方向)に沿った第1の面91の変形の程度(寸法)をΔdで表すと、この場合に測定装置11が測定する対象物体90の第1の面91の距離はD-Δdとなる。
【0025】
これに対し、対象物体90の第2の面92に欠陥99が生じていない場合は、第1の面91は変形していない。この場合に測定装置11が測定する対象物体90の第1の面91の距離は、
図2に示す基準物体90Rの基準距離Dと同じまたは同程度となる。
【0026】
このように、演算装置12は、測定装置11により測定された対象物体90の第1の面91の距離に基づいて、欠陥99の有無を判定する。本実施形態では、演算装置12は、基準物体を用いる第1の態様に沿って欠陥99の有無を判定する。すなわち演算装置12は、基準物体90Rの第1の面91Rと基準位置Refmとの間の距離(基準距離D)と、測定した対象物体90の第1の面91の距離とを比較することにより、欠陥99の有無を判定する。
【0027】
なお、欠陥99が無いと演算装置12が判定する場合の距離の変化Δdの大きさは、検出しようとする欠陥99の種類や大きさ、対象物体90の種類や形状、製造工場の生産ラインに求められる歩留まりに応じて適宜設定することができる。
【0028】
[欠陥検出方法]
図3は、本発明の一実施形態に係る欠陥検出方法の手順を説明するためのフローチャートである。
図3に例示するフローチャートは、例えば製造工場の生産ラインにおいて、例えばベルトコンベア等の搬送機に載せられて次々と搬送されてくる複数の部品のそれぞれについて、欠陥の有無を判定する場合の手順である。
【0029】
ステップS1(基準距離測定ステップ)では、
図2に示すように、基準物体90Rの第1の面91Rについて、基準位置Refmからの基準距離Dを測定する。基準距離測定ステップは、最初に一度だけまたは予め行っておけばよい。
【0030】
ステップS2(距離測定ステップ)では、
図1に示すように、対象物体90の第1の面91について、基準位置Refmからの距離を測定する。
【0031】
ステップS3(判定ステップ)では、対象物体90の第2の面92の欠陥99の有無を、距離測定ステップにおいて測定した対象物体90の第1の面91の距離に基づいて判定する。本実施形態では、第1の態様に沿って欠陥99の有無を判定する。すなわち、基準距離測定ステップにおいて測定した基準物体90Rの第1の面91Rについての基準距離Dと、距離測定ステップにおいて測定した対象物体90の第1の面91の距離とを比較することにより、欠陥99の有無を判定する。
【0032】
ステップS4では、先のステップS2~S3において処理した対象物体90が最後の対象物体であるか否かを判定する。先の判定ステップにおいて処理した対象物体90が、搬送機に載せられて搬送されてくる最後の対象物体である場合(S4においてYes)は、欠陥検出方法の一例の手順を終了する。まだ最後の対象物体ではなく、複数の部品が搬送機に載せられて次々と搬送されてくる場合(S4においてNo)は、ステップS2~S4の処理を繰り返して実行する。ステップS4の判定は、例えば搬送機に設けられた各種のセンサからの信号に基づいて演算装置12が行ってもよいし、各種のセンサからの信号に基づいて、生産ライン上の他の制御装置が行ってもよい。
【0033】
このように、ステップS1~S4に示す、一実施形態に係る欠陥検出方法の一連の手順によると、搬送機に載せられて次々と搬送されてくる複数の部品のそれぞれについて、欠陥の有無を判定することができる。
【0034】
以上、一実施形態に係る欠陥検出装置および欠陥検出方法によると、欠陥の有無を簡便に判定することができる。一実施形態に係る欠陥検出装置および欠陥検出方法によると、製造した部品に欠陥が生じているか否かを部品が搬送されている間に判定することができ、例えばベルトコンベア等の搬送機に載せられて次々と搬送されてくる複数の部品のそれぞれについて、欠陥の有無を判定することができる。これにより、良品を選別する工程の作業効率が向上する。選別工程の作業効率が向上すると、マシンサイクルタイムが向上する。よって、一実施形態に係る欠陥検出装置および欠陥検出方法は、特許文献1等の他の従来の検査方法と比較して、部品の製造に要する時間をより短縮することが可能となる。また、一実施形態に係る欠陥検出装置および欠陥検出方法では、測定装置11により距離を測定することにより、欠陥の有無を判定する。測定装置11には例えばレーザ変位計や3Dカメラを用いることができる。これにより、特許文献1等の他の従来の検査方法と比較して、欠陥の有無をより高速に判定することが可能となる。
【0035】
[その他の形態]
以上、本発明を特定の実施形態によって説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
【0036】
上記した実施形態では、演算装置12は、基準物体90Rを用いる第1の態様に沿って欠陥99の有無を判定しているが、演算装置12が欠陥99の有無を判定する方法はこれに制限されない。演算装置12は、欠陥99の有無を、対象物体90の第1の面91の距離に基づいて判定することができればよい。
【0037】
例えば演算装置12は、基準物体90Rを用いない第2の態様に沿って欠陥99の有無を判定することもできる。すなわち演算装置12は、対象物体90の第1の面91の距離と、対象物体90の第1の面91の設計上の距離(設計距離)とを比較することにより、欠陥99の有無を判定することもできる。設計距離は、対象物体90の設計上の寸法と、例えばベルトコンベア等の搬送機に対する測定装置11の設計上の配置とに基づいて、予め算出しておくことができる。言い換えると、
図2に示す基準距離Dは、対象物体90の設計上の寸法と、搬送機に対する測定装置11の設計上の配置とに基づいて、基準物体90Rを用いることなく予め算出しておくことができる。或いは、測定対象とする面の深度の情報を有する撮像画像を撮像し、その撮像画像中の或る基準とする深度を、
図2に示す基準距離Dとして設定することができる。
【0038】
上記した実施形態では、図示する対象物体90の第1の面91は平面であるが、対象物体90の第1の面91は平坦な面に制限されない。欠陥検出装置10は、対象物体90の第1の面91の距離を測定してその変化を検知することができればよく、対象物体90の第1の面91は、平坦な面に限られず曲面でもよいし、表面に窪みや盛り上がり(例えば凹凸)が生じていてもよい。
【0039】
上記した実施形態では、焼結により製造される金属製の歯車を、欠陥を検出する対象物体90としているが、焼結により製造される対象物体90は例示する歯車に限定されず、例えばブレーキパッド等であってもよい。このような焼結体の製造に用いる素材は、金属または合金の粉末粒子に制限されず、例えば樹脂や繊維を含んでいてもよい。
【0040】
上記実施形態では、測定装置11は、対象物体90の第1の面91について距離(距離)を測定しているが、測定装置11が距離を測定する面上の測定位置の数は、少なくとも面上の1か所であればよい。測定装置11は、面上の複数の測定位置について距離を測定してもよい。この場合、欠陥99の有無の判定は、面上の複数の測定位置について測定された、対象物体90の第1の面91の複数の距離に基づいて行うことができる。
【0041】
以下に本発明の実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【実施例0042】
実施例1では、歯車を対象物体として、歯車の歯に生じているクラックまたは歪みを検出することを試みた。歯車は、複数の種類の金属および合金の粉末粒子を混合して焼結することにより製造した。クラックまたは歪みの検出は、本発明に係る欠陥検出方法により、3Dカメラを用いて、基準物体を用いない第2の態様に沿って行った。設計距離には、3Dカメラによる撮像画像中の或る基準とする深度を設定した。本発明に係る欠陥検出方法により、3Dカメラによる撮像画像を用いてクラックまたは歪みの検出を試みた後、本発明とは異なる他の欠陥検出方法により、同じ歯車の歯について欠陥の有無を確認した。その後、それぞれの方法により得られる判定結果を突き合せて、本発明に係る欠陥検出方法の妥当性を検証した。
【0043】
図4および
図5は、実施例1において欠陥検出の対象とした歯車の写真である。
図4は歯車の全体を側面(端面)から見た写真である。
図5(A)は
図4に示す歯車の歯の歯先を
図4に符号(A)で示す方向から見た写真である。同様に、
図5(B)および(C)はそれぞれ、
図4に示す歯の歯面を
図4に符号(B)および(C)で示すそれぞれの方向から見た写真である。
図6は、実施例1において歯車のクラックまたは歪みの検出に用いた3Dカメラによる撮像画像である。
図6に示す撮像画像には、測定対象とする面の深度(深さ情報すなわち距離)が色分けして示されている。
【0044】
本実施例では、3Dカメラによる撮像画像の深度の色分けは、或る深度を基準として、その基準とする深度からのずれの大きさに応じて行った。設計距離として設定する基準とする深度の位置は、歯車の歯の側面(端面)とし、欠陥の有無の判定に用いる許容可能な深度のずれの大きさ(Δd)は±0.025mmとした。
【0045】
これにより
図6では、設計距離として歯の側面(端面)の深度を基準とし、その基準とする深度からの盛り上がりまたは窪みが0.025mm以下の領域が、第1の色で着色されており、その基準とする深度からの盛り上がりまたは窪みが0.025mmを超える領域が、第1の色とは異なる第2の色または第3の色で着色されている。歯の側面(端面)に着目して説明すると、歯の側面の領域のうち、第1の色で着色されている領域は、設計距離からのずれの大きさが0.025mm以下の領域であり、第2の色または第3の色で着色されている領域は、設計距離からのずれの大きさが0.025mmを超える領域である。
図6において、第2の色は基準とする深度からの盛り上がりを意味し、第3の色は基準とする深度からの窪みを意味している。
【0046】
なお、本実施例においてクラックまたは歪みを検出しようとする対象の領域は、歯車全体のうち、主に第1の色で着色されている、歯車の外周に設けられている歯の領域である。歯車の内周に第2の色または第3の色で着色されている環状の領域は、本実施例ではクラックまたは歪みを検出しようとする対象の領域ではない。なお、クラックまたは歪みを検出しようとする対象の領域(検査領域)は、設計距離が同一の面ごとに設定されており、検査領域は第1の色で着色されている領域に制限されない。
【0047】
図4~
図6を参照して、本発明に係る欠陥検出方法の妥当性を検証した。
図4および
図5の(A)~(C)に示すように、目視による検査では、歯の側面(端面)にも歯先にも歯面にも、クラックおよび歪みを確認することはできなかった。これに対し本発明に係る欠陥検出方法によると、第2の色で着色されて
図6に×印で示すように、基準とする深度から0.050mmを超える盛り上がりを有する領域が、15番目の歯の側面(端面)に存在することが確認された。本発明に係る欠陥検出方法によると、この15番目の歯の側面(端面)に接続するいずれかの面において、クラックまたは歪みと思われる何らかの欠陥が存在することが示唆された。
【0048】
一方で、本発明とは異なる他の欠陥検出方法として、超音波探傷法による試験および磁粉探傷法による試験によると、どちらの試験においても、15番目の歯の歯先においてクラックが発生していることが確認された。発生が確認されたクラックの位置は、
図5(A)の写真に破線で囲む位置であった。これにより、15番目の歯では、歯先に発生したクラックの影響により、歯先の面に接続する歯の側面(端面)において、目視による方法では確認することができない僅かな盛り上がりが生じていたことが確認された。
【0049】
以上、本実施例によると、本発明に係る欠陥検出方法による判定結果は、他の欠陥検出方法である超音波探傷法や磁粉探傷法による確認結果と対応しており、妥当性を有することが確認された。焼結により製造した部品は、素材となる粉末粒子間に空隙を含んでおり、
図5(A)に例示するように、目視による方法ではそのような粉末粒子間の空隙とクラックとを正確に判別することが困難であった。これに対し本発明に係る欠陥検出方法によれば、目視による検査では確認することができなかったクラックの有無を判別することができた。