(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152288
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】自動車運搬用の多重連結型トレーラ
(51)【国際特許分類】
B60P 3/07 20060101AFI20241018BHJP
B60D 1/00 20060101ALI20241018BHJP
B62D 53/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B60P3/07 Z
B60D1/00 Z
B62D53/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066398
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000236551
【氏名又は名称】株式会社浜名ワークス
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森上 祐介
(72)【発明者】
【氏名】内山 裕二
(57)【要約】 (修正有)
【課題】連結台数を容易に増減して、連結した状態で後側から前向きに自動車を積載し、且つ、トラクタを離して、前側から前向きに降ろすことが出来る自動車運搬用の多重連結型トレーラを提供する。
【解決手段】トラクタ12の後端に1台以上が順次連結可能な多重連結型トレーラ10であって、その前端に設けられ、トラクタ12の後端又は他の多重連結型トレーラ10の後端の後部連結器26と連結可能の前部連結器24、後端に設けられ、他の多重連結型トレーラ10の前部連結器24と連結可能な後部連結器26と、後部道板、前部道板と、を有し、前部道板及び後部道板の、地上との間に自動車積み降し用の坂路をそれぞれ形成するときの路面との間の角度に等しい傾斜角度の前下り傾斜面34及び後下り傾斜面35とされたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1台又は複数台が順次連結された状態でトラクタの後端に連結可能な多重連結型トレーラであって、
左右の前輪及び左右の後輪からなる4輪を備え、且つ、上面が1台の自動車を載置可能の積載デッキを構成するトレーラボディと、
このトレーラボディの前端に設けられ、前記トラクタの後端又は他の多重連結型トレーラの後端の後部連結器と連結可能の前部連結器、及び、前記トレーラボディの後端に設けられ、他の多重連結型トレーラの前部連結器と連結可能な後部連結器と、
トレーラ走行時には前記積載デッキの下側に収納され、自動車の積み降ろし時に、後方に引き出されて、前記積載デッキの後端と地上との間に自動車積み降ろし用の坂路を形成する後部道板、及び、前方に引出されて、前記積載デッキの前端と地上との間に自動車積み降ろし用の坂路を形成する前部道板と、を有してなり、
前記前部道板は、前記積載デッキから前方に水平に引出され、その先端が、前側に連結される他の多重連結型トレーラの後端に係止されたとき、該前部道板から引出された前記積載デッキから該他の多重連結型トレーラの積載デッキに至る自動車移動路を形成可能に構成されていて、
前記積載デッキの上面は、前記後輪の後部ホイールハウス及び前記前輪の前部ホイールハウスの上端よりも0~50mm高く形成されていて、且つ、前記上面における前端から前部ホイールハウスまでの間の少なくとも前記前端側の一部において、及び、前記上面における後端から前記後部ホイールハウスまでの間の少なくとも前記後端側の一部において、前記前部道板及び前記後部道板の、地上との間に自動車積み降し用の坂路をそれぞれ形成するときの路面との間の角度に等しい傾斜角度の前下り傾斜面及び後下り傾斜面とされたことを特徴とする自動車運搬用の多重連結型トレーラ。
【請求項2】
請求項1において、
前記積載デッキの後端に、前記後部道板が後方に引き出され地上との間に自動車積み降ろし用の坂路を形成したとき、前記後部道板の基端が掛止めされる道板掛止めを設けてなり、
前記道板掛止めは、後側に連結された他の多重連結型トレーラの積載デッキから前方に水平に引き出された前部道板の先端を掛止め可能に構成されたことを特徴とする自動車運搬用の多重連結型トレーラ。
【請求項3】
請求項1において、
前記後部道板は、前記後側傾斜面の後端と地上との間に設定されたときの水平面に対する傾斜角度βが、8°≦β≦11°となるように設定されていることを特徴とする自動車運搬用の多重連結型トレーラ。
【請求項4】
請求項1において、
前記後部道板は、先端が接地した状態で、平面視で前記後部連結器を間にして左右に離間した平行な一対の左道板及び右道板からなり、
側面視で、前記左道板及び右道板の間からの、前記後部連結器の上端の上方への突出量が、前記自動車の地上最低高よりも小さくなるように構成されたことを特徴とする自動車運搬用の多重連結型トレーラ。
【請求項5】
請求項1において、
前記前部道板は、先端が接地した状態で、平面視で前記前部連結器を間にして左右に離間した平行な一対の左道板及び右道板からなり、
側面視で、前記左道板及び右道板の間からの、前記前部連結器の上端の上方への突出量が、前記自動車の地上最低高よりも小さくなるように構成されたことを特徴とする自動車運搬用の多重連結型トレーラ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記トレーラボディは、少なくとも上面パネル、車体幅方向の左側面パネル及び右側面パネル、車体前後方向の前端パネル及び後端パネルからなる箱状体であって、
前記左側面パネル及び前記右側面パネルには、前記前部ホイールハウス及び前記後部ホイールハウスの間において、車体幅方向内側に凹部となり、且つ、上方に開放された左作業用スペース及び右作業用スペースが各々形成されていて、
これら左及び右作業用スペースの底面は、前記前輪及び前記後輪の車軸とほぼ等しい高さ位置に設けられた水平のステップパネルから構成され、このステップパネルの車体幅方向の奥行きは、前記前部ホイールハウス及び前記後部ホイールハウスの車体幅方向の厚さとほぼ等しくされたことを特徴とする自動車運搬用の多重連結型トレーラ。
【請求項7】
請求項6において、
前記トレーラボディは、前記上面パネルの下側に配置されたメインフレームに支持され、
前記メインフレームは、前記トレーラボディの車体幅方向中心線の車体幅方向両外側であって、前記車体幅方向中心線と、前記左側面パネルとの間の左サイドフレーム、及び前記右側面パネルとの間の右サイドフレームと、これら左サイドフレーム、右サイドフレームの前端に連結して設けられた前エンドフレーム及び後端に連結された後エンドフレームと、からなり、
前記左サイドフレーム及び、前記右サイドフレームの下側には、前記前輪のための前輪懸架フレーム及び前記後輪のための後輪懸架フレームが支持され、前記前輪懸架フレームはターンテーブルを介して、水平面内において一定範囲で揺動自在に支持され、
前記積載デッキには、平面視で、コンテナ車幅方向に、前記左サイドフレームと、左側の前記前輪及び前記後輪との中間位置に前後方向に通る左車輪踏み帯、及び前記右サイドフレームと右側の前記前輪及び前記後輪との中間位置に前後方向に通る右車輪踏み帯が設けられていることを特徴とする自動車運搬用の多重連結型トレーラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタの後端に連結されるトレーラ及びこのトラクタに連結されたトレーラの後端に連結可能な自動車運搬用の多重連結型トレーラに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車運搬用車両のドライバーは、単に車両を運転するのみならず、道板を経て、積載デッキ上に運搬する自動車を運転して載せたり、又、降ろしたりする作業をしている。
【0003】
又、多くの自動車運搬用車両においては、積載した自動車を固縛装置によって固定する作業及び車両を降ろす際に、この固縛装置を緩める作業が必要となっている。
【0004】
自動車運搬用車両は、工場での完成車を構内や港湾の新車モータープールに搬送するような場合は、1台の車両によってなるべく多くの自動車を運搬するために、積載デッキを3層デッキにしたものが多い。
【0005】
この場合、自動車を載せたり、降ろしたりする作業、自動車を固縛装置によって固定したり、緩める作業をし、且つ、最上段のデッキにドライバーが昇り下りする必要があるが、高さが3m近くあるので、転落の危険があり、ドライバーは体力のある男性が適している。
【0006】
他方、高齢化が進み、人手不足のため、車両のドライバーとして女性や外国人を採用するようになってきているが、上記のような3m以上の高さの作業は拒否されるか、できないことが多い。
【0007】
更に、3層デッキの自動車運搬用車両は、1台の自動車を運搬するには、大きすぎるし、無駄が多くなる。
【0008】
他方、近年、高級乗用車を顧客に引渡す納車の際に、その1台のみを自動車運搬用トレーラに積載して顧客宅まで搬送することが多くなっている。この場合、例えば特許文献1に記載されるように、1台のトラックに後方から自動車を積み降ろしするようにした自動車運搬用車両を利用することが考えられるが、道板を通って自動車を後向きで降ろす運転操作は、道板の傾斜がきつく、且つ、後が見えにくいので、ドライバー、特に女性の多くは苦手であり、恐怖を感じてしまい、拒否されることとなるという問題点がある。
【0009】
また、多くの空港で見られるような、エアコンテナを積載した搬送台車を多数連結してトラクタで牽引する、いわゆるドーリがあるが、このドーリに対しては路面から自動車を積み降ろしすることは困難であり、また、1台の自動車を運搬するには適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、新車1台毎の納車に利用でき、また、一度に複数台の自動車を搬送するときは、同数の多重連結型トレーラを1列に連結して、自動車を列の後側から積載して、前側から前向きで降すことができ、更に、積載デッキの上面の高さ、及び、道板傾斜角度を最小限として自動車積み降ろしの際のドライバーの恐怖心を抑制できる多重連結型トレーラを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、1台又は複数台が順次連結された状態でトラクタの後端に連結可能な多重連結型トレーラであって、左右の前輪及び左右の後輪からなる4輪を備え、且つ、上面が1台の自動車を載置可能の積載デッキを構成するトレーラボディと、このトレーラボディの前端に設けられ、前記トラクタの後端又は他の多重連結型トレーラの後端の後部連結器と連結可能の前部連結器、及び、前記トレーラボディの後端に設けられ、他の多重連結型トレーラの前部連結器と連結可能な後部連結器と、トレーラ走行時には前記積載デッキの下側に収納され、自動車の積み降ろし時に、後方に引き出されて、前記積載デッキの後端と地上との間に自動車積み降ろし用の坂路を形成する後部道板、及び、前方に引出されて、前記積載デッキの前端と地上との間に自動車積み降ろし用の坂路を形成する前部道板と、を有してなり、前記前部道板は、前記積載デッキから前方に水平に引出され、その先端が、前側に連結される他の多重連結型トレーラの後端に係止されたとき、該前部道板から引出された前記積載デッキから該他の多重連結型トレーラの積載デッキに至る自動車移動路を形成可能に構成されていて、前記積載デッキの上面は、前記後輪の後部ホイールハウス及び前記前輪の前部ホイールハウスの上端よりも0~50mm高く形成されていて、且つ、前記上面における前端から前部ホイールハウスまでの間の少なくとも前記前端側の一部において、及び、前記上面における後端から前記後部ホイールハウスまでの間の少なくとも前記後端側の一部において、前記前部道板及び前記後部道板の、地上との間に自動車積み降し用の坂路をそれぞれ形成するときの路面との間の角度に等しい傾斜角度の前下り傾斜面及び後下り傾斜面とされたことを特徴とする自動車運搬用の多重連結型トレーラにより、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る多重連結型トレーラは、経験の少ないドライバーでも、容易に自動車を積み降ろしすることができ、また、1台のみの納車に利用できると共に、運搬する自動車の数に対応して連結台数を容易に増減して、連結した状態で後側から前向きに自動車を積載し、且つ、トラクタを離して、前側から前向きに降ろすことが出来、したがって短時間で効率的な自動車の積み降ろしを可能とするという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例1に係る多重連結型トレーラをトラクタに連結した状態を模式的に示す側面図
【
図3】前部道板及び後部道板の収納状態を示す平面視図
【
図5】多重連結型トレーラにおける道板の収納状態及び引出し状態を示す底面図
【
図6A】多重連結型トレーラから前部道板を引き出して地上にセットした状態を模式的に示す側面図
【
図6B】多重連結型トレーラから後部道板を引き出して地上にセットした状態を模式的に示す側面図
【
図7】同多重連結型トレーラに自動車を積込む状態を模式的に示す側面図
【
図8】引出された道板により、前後に連結された2台の多重連結型トレーラ間に自動車移動路が形成された状態を模式的に示す側面図
【
図9】前部道板の前端を前側の多重連結型トレーラの後部道板掛けに掛止めして、自動車移動路を形成した状態を示す側断面図
【
図10】トレーラ前部連結器とトレーラのボギー台車との関係を模式的に示す平面図
【
図12】トレーラ前部連結器の要部を拡大して示す側面図
【
図13】トラクタ後部連結器及びトレーラ後部連結器を拡大して示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
[実施例1]
図1に示されるように、この実施例1に係る多重連結型トレーラ(以下トレーラ)10は、トラクタ12の後端又はトラクタ12の後端に連結されたトレーラ10の後端に連結可能であって、前輪20及び後輪22からなる4輪を備え、且つ、
図2に示されるように、上面が1台の自動車V(
図7参照)を積載可能な積載デッキ33を構成するトレーラボディ30を備えている。
【0017】
このトレーラボディ30の前端にはトラクタ12の後端又は他のトレーラ10の後端の後部連結器26に連結可能の前部連結器24が設けられ、また後端には他のトレーラ10の前部連結器24と連結可能な後部連結器26が設けられている。
【0018】
図3、
図4に示されるように、トレーラボディ30には、トレーラ走行時に積載デッキ33の下側に収納され、また、自動車Vの積み降ろし時に、トレーラボディ30から引き出されて用いられる前部道板60、及び、後部道板62とを有している。
【0019】
詳細には、前部道板60は、
図5に示されるように積載デッキ33下側に車体幅方向中心線30Aの左右両側に車体前後方向に長く、水平且つ平行に収納される左道板60Aと右道板60Bとから構成されている。
【0020】
また、後部道板62は、平面視で、前側の約半分が前部道板60の下側に重なり、且つ、後方に斜めに開いた状態で収納されている。
【0021】
収納状態での側面視は、
図4に示されるように、左右道板60A、60Bの前後端及び左右道板62A、62Bの前端には下向きに開いたフック部61とされ、後述の道板掛け止め63に上から引掛けることができるようにされている。
【0022】
使用時に左右道板60A、60Bは、
図6Aに示されるように、トレーラボディ30から前方に真直に引き出し、前端側を降して積載デッキ33の前端と地上との間に自動車積み降ろし用の坂路を形成し、後部道板62は、
図6Bに示されるように後方に引き出し(詳細後述)、後端側を降して積載デッキ33の後端と地上との間に自動車積み降ろし用の坂路を形成するように構成されている。
【0023】
前記引き出された前部道板60及び後部道板62の基端は、
図6A、
図6Bに示されるように、トレーラボディ30の前後端に設けられた道板掛止め63に上方から引掛けて、揺動可能に支持されるように構成されている。
【0024】
積載デッキ33の上面は、
図6A、
図6Bに示されるように、後輪22の後部ホイールハウス23及び前輪20の前部ホイールハウス21の上端と同一高さに形成されていて、且つ、上面における前端から前部ホイールハウス21までの間の少なくとも前端側の一部において、及び、上面における後端から後部ホイールハウス23までの間の少なくとも後端側の一部において、共に、傾斜角度αが9°≦α≦10°の前下り傾斜面34及び後下り傾斜面35とされている。
【0025】
前下り傾斜面34及び後下り傾斜面35の傾斜角度αは、
図6A、
図6B及び
図7に示されるように、積載デッキ33の下側から引き出されて、先端が路面にセットされたときの前部道板60及び後部道板62の、路面との間の一般的に用いられている角度9.5°と等しくなるように、9°≦α≦10°に設定されている。
【0026】
このようにすると、前部道板60及び後部道板62から前下り傾斜面34及び後下り傾斜面35に至る坂路に凹凸が生じないので、自動車の積み降しを円滑にすることができる。
【0027】
図2に示されるように、積載デッキ33の上面には左右の車輪踏み帯44A、44Bが設けられ、自動車Vの車輪が載るようにされている。この左右の車輪踏み帯44A、44Bは積載デッキ33の上面を構成していて、前部及び後部ホイールハウス21、23の上端と同一高さに形成されてるが、これは上端よりも0~50mm高く形成してもよい。このようにすると、ホイールハウス21、23を強固にトレーラボディ30に結合できるとともに、積載デッキ33の高さを最小にして、トレーラ10上の自動車Vへの乗り降り及び固縛作業及びその解除作業を地上から容易にすることができる。
【0028】
0~50mmにおける0mmは、ホイールハウス21、23の上面を左右の車輪踏み帯44A、44Bとする場合、50mmは、ホイールハウス21、23の上に板材を貼り付ける場合の最大値である。
【0029】
後部道板62は、
図5に示されるように、平面視で後端側が車体幅方向に開いた斜めの状態で積載デッキ33の下側に収納されていて、後方に引き出されてから先端が接地した状態では、平面視で後部連結器26を間にして左右に離間した平行な一対の左道板62A及び右道板62Bからなる。
【0030】
また、側面視では、先端が接地した状態で、左道板62A及び右道板62Bの間からの、後部連結器26の上端の上方への突出量が、自動車Vの地上最低高よりも小さくなるように構成されている。これにより、自動車Vを積載デッキ33へ積み降ろしする場合、その下端面が後部連結器26と干渉することがない。
【0031】
一方、前部道板60は、先端が接地した状態で、平面視で、前部連結器24を間にして左右に離間した平行な一対の左道板60A及び右道板60Bの間からの前部連結器24の上端の上方への突出量が、自動車Vの地上最低高よりも小さくなるように構成されていて、これにより、積載デッキ33に自動車Vを積み降ろしする際の、自動車Vの底面と前部連結器24との干渉を防止することができる。
【0032】
更に、
図8、
図9に示されるように、前部道板60は、前方に水平に引出されたとき、その先端が、前側に連結される他の多重連結型トレーラ10の後端の道板掛止め63に係止可能とされ、道板基端が掛止されている積載デッキ33から、該他の多重連結型トレーラ10の積載デッキ33へ向けての水平の自動車移動路を形成可能に構成されている。
【0033】
トレーラボディ30は、
図2に示されるように、上面パネル32、車体幅方向の左側面パネル36A及び右側面パネル36B、車体前後方向の前端パネル37及び後端パネル38からなり、下側が開口された箱状体であって、後述のメインフレーム50により内側から支持固定されている。
【0034】
トレーラボディ30における左側面パネル36A及び右側面パネル36Bには、前部ホイールハウス21及び後部ホイールハウス23の間において、車体幅方向に凹部となり、上方に開放された左作業用スペース40A及び右作業用スペース40Bが形成されている。
【0035】
これら左右の作業用スペース40A、40Bの底面は、前輪20及び後輪22の車軸とほぼ等しい高さ位置に設けられた水平のステップパネル42から構成され、このステップパネル42の車体幅方向の奥行きは、前部ホイールハウス21及び後部ホイールハウス23の車体幅方向の厚さとほぼ等しくされている。
【0036】
上記のように、左右の作業用スペース40A、40B及びステップパネル42を構成すると、自動車積み降しの際の自動車Vへの乗降、固縛作業及びその解除作業が容易となる。
【0037】
図5に示されるように、トレーラボディ30を内側から支持固定するためのメインフレーム50は、トレーラボディ30の車体幅方向中心線30Aの車体幅方向両外側であって、車体幅方向中心線30Aと左側面パネル36Aとの間の左サイドフレーム50A、及び、右側面パネル34Bとの間の右サイドフレーム50Bと、これら左サイドフレーム50A、右サイドフレーム50Bの前端に連結された前エンドフレーム52及び後端に連結された後エンドフレーム53とから構成されている。又、左サイドフレーム50A及び右サイドフレーム50Bの下側には、前輪20を支持する前輪懸架フレーム54及び後輪22を支持する後輪懸架フレーム55が固定支持され、前輪懸架フレーム54は、ターンテーブル25を介して水平面内において一定範囲で揺動自在に支持されている。
【0038】
又、
図2に示されるように、積載デッキ33上には、平面視で、トレーラ車幅方向に、左サイドフレーム50Aと、左側の前輪20及び後輪22との中間位置に前後方向に通る左車輪踏み帯44A及び、右サイドフレーム50Bと、右側の前輪20及び後輪22との中間位置に前後方向に通る右車輪踏み帯44Bがそれぞれ設けられている。
【0039】
次に、
図10乃至
図13を参照して前部連結器24、後部連結器26及び前輪20を支持するボギー台車70の概略について説明する。これらは、公知であり、同様の他の構成であってもよい。
【0040】
図10に示されるように、前部連結器24は、前輪20を支持するボギー台車70の台車枠70Bと一体の梶棒70Aの先端に取付けられている。
【0041】
ボギー台車70は、トレーラボディ30によりターンテーブル25を介して水平面内で回転自在に支持された台車枠70B及びこの台車枠70Bに水平面内で横方向に延在して配置された車軸70Dとを有している。前輪20はトーションバー70Eを介して、車軸70Dの近傍位置で台車枠70Bの車体幅方向両側面に支持されている。
【0042】
前部連結器24は、トラクタ12の後部連結器26、又は他のトレーラの後端の後部連結器26に連結可能とされている。この連結は、トラクタ12又はトレーラ10の後端から後方に延在する、ヒッチボール80(
図11~
図13参照)における直角に屈曲した支持部材82の上端のボール81に、上方から前部連結器24の先端のボールカプラ24Aにおける下向きのボール受け穴24B(説明後述)を嵌合することによりなされる。
【0043】
前部連結器24、後部連結器26は、例えば、
図12、
図13に拡大して示されるボールカプラ24A、ヒッチボール80からなるドイツ国KNOTT社製のボールカップリングにより構成される。
【0044】
ボールカプラ24Aは、その下向きのボール受け穴24B内に、ヒッチボール80のボール81を下から挿入した状態でハンドル24Cを
図12において矢符Cの方向に押下げ
るとボール81がロックされて連結状態となり、また矢符Uの方向に押し上げるとボール81が開放されて連結状態が解除されるようになっている。
【符号の説明】
【0045】
10…多重連結型トレーラ
12…トラクタ
20…前輪
21…前部ホイールハウス
22…後輪
23…後部ホイールハウス
24…前部連結器
24A…ボールカプラ
24B…ボール受け穴
24C…ハンドル
25…ターンテーブル
26…後部連結器
30…トレーラボディ
30A…車体幅方向中心線
32…上面パネル
33…積載デッキ
34…前下り傾斜面
35…後下り傾斜面
36A…左側面パネル
36B…右側面パネル
37…前端パネル
38…後端パネル
40A…左作業用スペース
40B…右作業用スペース
42…ステップパネル
44A…左車輪踏み帯
44B…右車輪踏み帯
50…メインフレーム
50A…左サイドフレーム
50B…右サイドフレーム
51…車体幅方向中心線
52…前エンドフレーム
53…後エンドフレーム
54…前輪懸架フレーム
55…後輪懸架フレーム
56…ターンテーブル
60…前部道板
60A…左道板
60B…右道板
61…フック部
62…後部道板
62A…左道板
62B…右道板
63…道板掛止め
70…ボギー台車
70A…梶棒
70B…台車枠
70D…車軸
70E…トーションバー
80…ヒッチボール
81…ボール
82…支持部材
V…自動車