(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152300
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/502 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
H01R13/502 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066415
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原 純平
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE14
5E087FF08
5E087FF13
5E087GG16
5E087JJ05
5E087MM05
5E087QQ04
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】ハウジングに対する端子金具等の組付作業性の向上を図ることが可能なコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ10は、前後方向に延びる複数の第1キャビティ23Aおよび第1面30Aを有する第1ハウジング20Aと、第1キャビティ23Aに収容される第1端子金具80Aと、前後方向に延びる複数の第2キャビティ23Bおよび第2面30Bを有する第2ハウジング20Bと、第2キャビティ23Bに収容される第2端子金具80Bと、第1面30Aおよび第2面30Bが左右方向に並ぶ開き位置と第1面30Aおよび第2面30Bが左右方向に対面する閉じ位置とに変位可能となるように第1ハウジング20Aと第2ハウジング20Bとをつなぐヒンジ部21と、を備える。各第1キャビティ23Aおよび各第2キャビティ23Bは、開き位置で左右方向に並んで配置される。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びる複数の第1キャビティを有し、且つ前後方向と交差する方向を向く第1面を有している第1ハウジングと、
前記第1キャビティに収容される第1端子金具と、
前後方向に延びる複数の第2キャビティを有し、且つ前後方向と交差する方向を向く第2面を有している第2ハウジングと、
前記第2キャビティに収容される第2端子金具と、
前記第1ハウジングの前記第1面および前記第2ハウジングの前記第2面が左右方向に並ぶ開き位置と、前記第1ハウジングの前記第1面および前記第2ハウジングの前記第2面が左右方向に対面する閉じ位置と、に変位可能となるように前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとをつなぐヒンジ部と、を備え、
複数の前記第1キャビティおよび複数の前記第2キャビティは、それぞれ、前記開き位置において、左右方向に並んで配置される、コネクタ。
【請求項2】
前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングは、前記閉じ位置において、内側に前記第1端子金具および前記第2端子金具に接続された電線の端部を収容する電線収容空間を有し、且つ前記電線収容空間に連通して前記電線を引き出す電線引出口を開口させており、さらに、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの少なくとも一方は、前記閉じ位置において、前記電線収容空間に収容された前記電線の向きを前記電線引出口側に規制する壁部を有している、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ヒンジ部は、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングの左右方向中央側に設けられ、
前記壁部は、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングの後端部に設けられ、
前記電線引出口は、前記閉じ位置における前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングにおいて、前記ヒンジ部よりも後方で且つ前記壁部よりも前方に位置している、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングは、前記電線引出口の縁部に、前記閉じ位置において、前記電線に係止可能な係止突起を有している、請求項2または請求項3に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたコネクタは、電線(通信ケーブル)の端部に接続される端子金具(端子)と、端子金具を収容するハウジング(コネクタハウジング)と、を備えている。ハウジングは、前後方向に延びる複数のキャビティ(挿入孔)を有している。各キャビティは、ハウジングに左右方向に並んで設けられている。端子金具は、ハウジングのキャビティに収容される。電線は、ハウジングに収容された端子金具に対して圧着されて接続される。コネクタの先行技術としては、特許文献2および特許文献3に開示されたものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-179900号公報
【特許文献2】実開平4-15168号公報
【特許文献3】実開平3-20888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、キャビティがハウジングに4室設けられ、左右方向とともに上下方向にも並んで配置されている場合には、後方から端子金具を挿入する作業が立体的な作業になって、行いにくいという事情がある。
【0005】
そこで、本開示は、ハウジングに対する端子金具等の組付作業性の向上を図ることが可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、前後方向に延びる複数の第1キャビティを有し、且つ前後方向と交差する方向を向く第1面を有している第1ハウジングと、前記第1キャビティに収容される第1端子金具と、前後方向に延びる複数の第2キャビティを有し、且つ前後方向と交差する方向を向く第2面を有している第2ハウジングと、前記第2キャビティに収容される第2端子金具と、前記第1ハウジングの前記第1面および前記第2ハウジングの前記第2面が左右方向に並ぶ開き位置と、前記第1ハウジングの前記第1面および前記第2ハウジングの前記第2面が左右方向に対面する閉じ位置と、に変位可能となるように前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとをつなぐヒンジ部と、を備え、複数の前記第1キャビティおよび複数の前記第2キャビティは、それぞれ、前記開き位置において、左右方向に並んで配置される、コネクタである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ハウジングに対する端子金具等の組付作業性の向上を図ることが可能なコネクタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態1のコネクタの斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態1のコネクタを
図1とは異なる方向から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態1のコネクタにおける端子金具の斜視図である。
【
図4】
図4は、本実施形態1のコネクタにおける第1ハウジングの斜視図である。
【
図5】
図5は、本実施形態1のコネクタにおける第2ハウジングの斜視図である。
【
図6】
図6は、本実施形態1のコネクタにおいて、枠体に支持されたハウジングの斜視図である。
【
図7】
図7は、本実施形態1のコネクタにおいて、枠体に支持されたハウジングに端子金具が収容された状態を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、本実施形態1のコネクタにおいて、電線の前端部がハウジングに挿入され、各端子金具のバレル部に電線の芯線がそれぞれ設置された状態を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本実施形態1のコネクタにおいて、開き位置における第1ハウジングおよび第2ハウジングの正面図である。
【
図10】
図10は、本実施形態1のコネクタにおいて、電線の前端部が屈曲させられ、第1ハウジングおよび第2ハウジングが開き位置から閉じ位置に向かう途中の状態を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、本実施形態1のコネクタを電線引出口から電線が引き出される部分で切断した横断面図である。
【
図12】
図12は、本実施形態1のコネクタにおける電線引出口から電線が引き出される部分を下方から見た拡大底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)前後方向に延びる複数の第1キャビティを有し、且つ前後方向と交差する方向を向く第1面を有している第1ハウジングと、前記第1キャビティに収容される第1端子金具と、前後方向に延びる複数の第2キャビティを有し、且つ前後方向と交差する方向を向く第2面を有している第2ハウジングと、前記第2キャビティに収容される第2端子金具と、前記第1ハウジングの前記第1面および前記第2ハウジングの前記第2面が左右方向に並ぶ開き位置と、前記第1ハウジングの前記第1面および前記第2ハウジングの前記第2面が左右方向に対面する閉じ位置と、に変位可能となるように前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとをつなぐヒンジ部と、を備え、複数の前記第1キャビティおよび複数の前記第2キャビティは、それぞれ、前記開き位置において、左右方向に並んで配置される。
上記(1)の構成は、第1ハウジングおよび第2ハウジングを開き位置とし、左右方向に並んだ各第1キャビティおよび各第2キャビティに対し、第1端子金具および第2端子金具を挿入し、さらに第1端子金具および第2端子金具に電線を圧着等する作業を行うことができる。その後、第1ハウジングおよび第2ハウジングを閉じ位置とすることで、各第1キャビティおよび各第2キャビティを左右方向と上下方向とに並んだ状態とし、同時に第1端子金具および第2端子金具を左右方向と上下方向とに並んだ状態とすることができる。上記(1)の構成によれば、ハウジングに対する端子金具等の組付作業を平面的な状態で行うことができるから、作業性の面で有利である。また、第1ハウジングおよび第2ハウジングがヒンジ部を介してつながっているので、部品点数の増加を招くこともない。
【0010】
(2)上記(1)に記載のコネクタにおいて、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングは、前記閉じ位置において、内側に前記第1端子金具および前記第2端子金具に接続された電線の端部を収容する電線収容空間を有し、且つ前記電線収容空間に連通して前記電線を引き出す電線引出口を開口させており、さらに、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの少なくとも一方は、前記閉じ位置において、前記電線収容空間に収容された前記電線の向きを前記電線引出口側に規制する壁部を有していることが好ましい。
上記(2)の構成は、電線収容空間に収容された電線の端部を屈曲状態とし、電線引出口から電線を引き出すことができる。
【0011】
(3)上記(2)に記載のコネクタにおいて、前記ヒンジ部は、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングの左右方向中央側に設けられ、前記壁部は、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングの後端部に設けられ、前記電線引出口は、前記閉じ位置における前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングにおいて、前記ヒンジ部よりも後方で且つ前記壁部よりも前方に位置していることが好ましい。
上記(3)の構成は、第1ハウジングおよび第2ハウジングを開き位置とし、その状態で電線収容空間に配置された電線の端部を電線引出口側に屈曲させ、次いで第1ハウジングおよび第2ハウジングを閉じ位置とすることで、壁部によって屈曲方向が規制された電線を電線引出口から引き出すことができる。これにより、電線を屈曲させる作業と、第1ハウジングおよび第2ハウジングを開き位置から閉じ位置へと変位させる作業と、を連続して行うことができる。
【0012】
(4)上記(2)または(3)に記載のコネクタにおいて、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングは、前記電線引出口の縁部に、前記閉じ位置において、前記電線に係止可能な係止突起を有していることが好ましい。
上記(4)の構成は、第1ハウジングおよび第2ハウジングを閉じ位置とすることで、電線の動きを抑制できる構造を容易に実現できる。
【0013】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0014】
<実施形態1>
本開示の実施形態1のコネクタ10は、自動車の高速通信用として好適なコネクタであって、ハウジング20A,20Bと、ハウジング20A,20Bに収容される複数の端子金具80A,80Bと、を備えている。ハウジングは、
図1に示すように、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bによって構成される。端子金具80A,80Bは、
図7および
図8に示すように、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bの各々に収容される。本明細書では、第1ハウジング20Aに収容される端子金具を第1端子金具80Aと称し、第2ハウジング20Bに収容される端子金具を第2端子金具80Bと称する。ハウジング20A,20Bは、図示しない相手コネクタと嵌合可能とされている。なお、以下の説明において、前後方向については、ハウジング20A,20Bが相手ハウジングと嵌合する面側を前側とする。上下方向については、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bが後述する開き位置にあるときには
図9の上下方向を基準とし、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bが後述する閉じ位置にあるときには
図1の上下方向を基準とする。
図1,
図4,
図5および
図9において、前側は符号Xで表され、右側は符号Yで表され、上側は符号Zで表される。これらの方向の基準は、コネクタ10が図示しない車両等に搭載された状態における方向の基準とは必ずしも一致しない。
【0015】
(端子金具80A,80Bおよび電線90)
第1端子金具80Aおよび第2端子金具80Bは、互いに同一形状で且つ同じ大きさで形成されている。
図7および
図8に示すように、第1ハウジング20Aには、2つの第1端子金具80Aが収容される。第2ハウジング20Bにも、2つの第2端子金具80Bが収容される。
【0016】
端子金具80A,80Bは、導電性の金属板材を曲げ加工等して形成される。
図3に示すように、端子金具80A,80Bは、角筒状の接続部81と、接続部81の後方に連なるバレル部82と、を有している。接続部81には、相手コネクタに備わる図示しない相手端子金具が挿入されて電気的に接続される。また、接続部81には、ランス部83が形成されている。ランス部83は、接続部81の上壁の一部を外側に切り起こした突片部分であって、上下方向に弾性変形可能とされている。バレル部82は、
図10に示すように、電線90の後述する芯線93に圧着されて電気的に接続される。
【0017】
電線90は、
図8に示すように、4本の被覆電線91の外周をシース92で一括して包囲して構成される。例えば、4本の被覆電線91のうち、2本の被覆電線91は電源線として用いられ、別の2本の被覆電線91は信号線として用いられる。各被覆電線91は、撚り合わされることによってツイストペア線を構成する。
【0018】
被覆電線91は、導電性の芯線93と、芯線93の外周を包囲する合成樹脂製の絶縁被覆94と、によって構成される。シース92は、合成樹脂製であって筒状(管状)をなし、絶縁性および可撓性を有している。シース92の前端部は、皮剥ぎ等の処理によって、各被覆電線91の前端部を露出させている。
【0019】
各被覆電線91の前端部は、撚りが解かれ、後述する開き位置(
図8の状態)では左右方向に互いに離間して配置される。左右一側に位置する2本の被覆電線91は、前端部における絶縁被覆94の除去によって露出する芯線93を、第1端子金具80Aに接続させている。左右他側に位置する別の2本の被覆電線91は、前端部における絶縁被覆94の除去によって露出する芯線93を、第2端子金具80Bに接続させている。
【0020】
(ハウジング20A,20B)
ハウジング20A,20Bは、
図1および
図2に示すように、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bと、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bをつなぐヒンジ部21と、によって構成されている。第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bは、ヒンジ部21を介して、開き位置(
図6-
図9を参照)と閉じ位置(
図1,
図2,
図11,
図12を参照)とに開閉可能に変位する。以下、特に断りがない限り、方向の基準は、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bが開き位置にある状態を基準とする。
【0021】
第1ハウジング20Aは、
図4に示すように、平面視して前後方向に長い矩形状をなし、前端側に、扁平状の第1端子収容部22Aを有している。第1端子収容部22Aは、第1端子金具80Aの接続部81を収容可能な複数の第1キャビティ23Aを有している。各第1キャビティ23Aは、第1端子収容部22Aを前後方向に貫通し、左右方向に横並びで2つ配置されている。第1端子収容部22Aは、各第1キャビティ23Aを区画する上壁に、上方を向く平坦な第1面30Aを有している。各第1キャビティ23Aの上壁には、上下方向に貫通し、上端が第1面30Aに開口し、下端が第1キャビティ23Aに連通する係止孔24を有している。第1端子金具80Aは、第1キャビティ23Aに後方から挿入され、ランス部83を係止孔24に挿入して係止させることで、第1キャビティ23Aに抜け止めされる。
【0022】
第1ハウジング20Aは、第1端子収容部22Aよりも後方に、電線90の前端部を収容可能な第1電線収容空間25Aを有している。第1ハウジング20Aは、第1電線収容空間25Aの下面を区画する底壁部26に、この底壁部26を貫通する、前後一対の貫通孔27を有している。
図8に示すように、第1端子金具80Aの接続部81が第1キャビティ23Aに収容されたときに、第1端子金具80Aのバレル部82は第1電線収容空間25Aに配置される。
【0023】
図4に示すように、第1ハウジング20Aの左右両側の端部は、左右夫々の側壁部28,29として構成される。各側壁部28,29は、前端部で第1端子収容部22Aの左右側壁を構成し、第1端子収容部22Aよりも後方の部分で第1電線収容空間25Aの左右両側面を区画している。各側壁部28,29のうち、左右外側の端部(右端部)に配置される側壁部28には、一対の第1ロック部31Aおよび第1掛止部32Aが突出して形成されている。第1掛止部32Aは、側壁部28の上端縁から左右外側に張り出し、さらに後方に突出するフック形状をなしている。各第1ロック部31Aは、側壁部28の上端縁における第1端子収容部22A側の部位と第1電線収容空間25A側の部位とに、前後方向に間隔を置いて設けられている。各第1ロック部31Aは、側面視で門型形状をなし、側壁部28の上端縁から上方に突出している。
【0024】
第1ハウジング20Aは、底壁部26の後端縁における左右外側の部位から立ち上がる第1壁部33Aを有している。第1壁部33Aと側壁部28の前端縁とは互いに直角に連結されている。
第1ハウジング20Aは、左右内側の端部(左端部であって、ヒンジ部21側の端部)で且つ後端部に、電線90を引き出し可能な第1電線引出口34Aを有している。第1電線引出口34Aは、左右内側に配置される側壁部29の後端縁と、底壁部26の左右内側の端縁と、第1壁部33Aの左右内側の端縁と、によって区画されている。側壁部29の後端縁は、側面視湾曲状をなし、第1壁部33Aよりも前方に配置されている。底壁部26の左右内側の端縁は、前後方向に延びる直線形状をなし、側壁部29の左右外側に配置されている。第1ハウジング20Aは、底壁部26の左右内側の端縁に沿って延びるとともに上方に立ち上がるリブ状の第1係止突起35Aを有している。
図11に示すように、第1係止突起35Aは、閉じ位置において、電線90のシース92の外周面に食い込んで係止可能とされている。
【0025】
図4に示すように、第1ハウジング20Aは、後端縁に、第1壁部33Aの左右内側の端縁と第1係止突起35Aの前端縁とをつなぐ左右方向に沿った第1リブ36Aを有している。第1リブ36Aは、第1係止突起35Aと同じ高さで連続し、第1壁部33Aよりも低背に形成されている。
【0026】
第2ハウジング20Bは、
図5および
図8に示すように、各第1ロック部31Aと対応する部分に各第1ロック部31Aとは異形状の各第2ロック部31Bを有している。第2ハウジング20Bは、各第2ロック部31Bに対応する部位を除いて、第1ハウジング20Aと同様の形状である。すなわち、第2ハウジング20Bは、第1端子収容部22A、第1キャビティ23A、第1面30A、第1電線収容空間25A、第1電線引出口34A、第1掛止部32A、第1壁部33A、第1係止突起35Aおよび第1リブ36Aと対応する位置に各々と対応する形状で、それぞれ、
図5に示すように、第2端子収容部22B、第2キャビティ23B、第2面30B、第2電線収容空間25B、第2電線引出口34B、第2掛止部32B、第2壁部33B、第2係止突起35Bおよび第2リブ36Bを有している。第2面30Bは、第2端子収容部22Bにおける各第2キャビティ23Bを区画する上壁の上面であって、上方を向いて平坦に配置されている。第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bは、各第1ロック部31Aおよび各第2ロック部31Bを除いて、ヒンジ部21を介して線対称な形状になっている。
【0027】
図5に示すように、各第2ロック部31Bは、側壁部28の左右外側面の上端側に、前後方向に間隔を置いて、爪状に突設されている。
図1に示すように、各第2ロック部31Bは、閉じ位置において、各第1ロック部31Aの内側に嵌り込んで係止される。各第1ロック部31Aおよび各第2ロック部31Bが互いに係止されることにより、閉じ位置における第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bの閉じ状態を維持することが可能となっている。第1掛止部32Aおよび第2掛止部32Bは、閉じ位置において、左右方向に互いに並んで配置され、ハウジング20A,20Bを収容する図示しないアウタ部材に係止可能とされている。
【0028】
図2および
図4-
図6に示すように、ヒンジ部21は、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bの左右中央部(各々の左右内側の端部間)に、前後方向に沿って延びるように形成されている。ヒンジ部21は、少なくとも第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bの開閉方向に屈曲可能な可撓性を有している。ヒンジ部21は、例えば、断面U字形状をなし、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bの各々の側壁部29における上端縁から下向きに湾曲している。
【0029】
図9に示すように、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bが開き位置にあるときに、第1面30Aおよび第2面30Bは、ヒンジ部21を介して左右方向に連なるように並んで配置される。
図1に示すように、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bが閉じ位置にあるときに、第1面30Aおよび第2面30Bは、互いに対面して接触可能に配置される。全体として見ると、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bは、開き位置では左右方向に扁平な水平姿勢をとって配置され、閉じ位置では左右方向に重なる垂直姿勢をとって配置される。
第1ハウジング20Aと第2ハウジング20Bのいずれか一方がヒンジ部21を介して180度回転することにより、他方と重なる閉じ位置に至ることができる(
図9および
図10の矢印を参照)。なお、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bは、後述する枠体60(
図6を参照)に支持されることによって、開き位置で180度開いた状態を維持できるようになっている。
【0030】
図1および
図11に示すように、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bの各底壁部26は、閉じ位置で壁面を左右方向に向けて配置される。端的には、各底壁部26は、閉じ位置でハウジング20A,20Bの左右の側壁部分を構成する。第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bの各側壁部28は、閉じ位置でハウジング20A,20Bの上壁部分を構成し、コネクタ10の左右中央部で互いに突き合わされるように配置される。
図2に示すように、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bの各側壁部29は、閉じ位置でハウジング20A,20Bの下壁部分を構成し、ヒンジ部21を介して下向きに湾曲するように配置される。
図1に示すように、第1端子収容部22Aおよび第2端子収容部22Bは、閉じ位置で第1面30Aおよび第2面30B(開き位置における上面)を対面状態で接触させつつ左右方向に並んで配置される。
【0031】
図11に示すように、第1電線収容空間25Aおよび第2電線収容空間25Bは、閉じ位置で互いに連通し、電線90のシース92の前端部を屈曲状態で挿通させる電線収容空間25A,25Bを構成する。第1電線引出口34Aおよび第2電線引出口34Bは、閉じ位置で互いに連通し、且つ電線収容空間25A,25Bにも上下方向に連通し、電線90のシース92をハウジング20A,20Bの下方に引き出し可能な電線引出口34A,34Bを構成する。電線引出口34A,34Bは、ハウジング20A,20Bの下面に開口する。
図12に示すように、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bの各々の側壁部29の後端縁は、閉じ位置において、全体としてヒンジ部21を介して底面視半円孤状をなし、電線90のシース92の外周面との間に距離を置いて配置される。
【0032】
第1壁部33Aおよび第2壁部33Bは、開き位置では電線収容空間25A,25Bを挟んだ左右方向の両側に離間して配置され(
図6を参照)、閉じ位置では左右方向に並んで互いに接触して配置される(
図2を参照)。第1壁部33Aおよび第2壁部33Bは、閉じ位置で屈曲状態にある電線90のシース92の前端部に後方から接触し、電線90の向きを規定する壁部33A,33Bを構成する。
図11および
図12に示すように、第1係止突起35Aおよび第2係止突起35Bは、閉じ位置において、電線引出口34A,34Bを挟んだ左右方向の両側に離間して配置され、電線90のシース92の外周面に左右両側から接触する、係止突起35A,35Bを構成する。第1キャビティ23Aおよび第2キャビティ23Bは、開き位置では左右方向に一列に並んで配置され(
図9を参照)、閉じ位置では左右方向および上下方向に並んで配置される(
図1を参照)、キャビティ23A,23Bを構成する。
【0033】
(コネクタ10の製造方法および作用)
ハウジング20A,20Bは、
図6に示すように、平面視矩形状の枠体60(ランナー)の内側に、支持部61(ゲート)を介して、開き位置における第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bを支持させた状態で、供給される。枠体60は、全体を図示しないキャリアの一部である。キャリアは、ハウジング20A,20Bを構成する合成樹脂材料からなり、複数の枠体60を左右方向に連続して並べて構成される。各ハウジング20A,20Bがキャリアにつながることで全体を図示しない長尺体が構成される。長尺体が図示しないリールから繰り出されて、図示しない別のリールに巻き取られることにより、両リール間に配置されたハウジング20A,20Bに端子金具80A,80Bを取り付けることが可能な状態になる(参考として、特開2020-179900号公報の第5図を参照)。つまり、ハウジング20A,20Bが両リール間で左右方向に沿って配置され、第1キャビティ23Aおよび第2キャビティ23Bの後方が開放される。
【0034】
図7に示すように、開き位置における第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bにそれぞれ第1端子金具80Aおよび第2端子金具80Bが取り付けられる。第1端子金具80Aおよび第2端子金具80Bは、それぞれ、第1キャビティ23Aおよび第2キャビティ23Bに後方から挿入され、詳細は図示しないが、ランス部83を係止孔24に係止させることで、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bに抜け止め状態に保持される。第1端子金具80Aおよび第2端子金具80Bは、それぞれ、第1キャビティ23Aおよび第2キャビティ23Bに接続部81を収容させ、第1電線収容空間25Aおよび第2電線収容空間25Bにバレル部82を配置させる。第1端子金具80Aおよび第2端子金具80Bの各バレル部82は、それぞれ対応する貫通孔27を臨む位置に配置される。
【0035】
第1キャビティ23Aおよび第2キャビティ23Bは、開き位置における第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bに一対ずつ左右方向に一列に並んで配置されており、左右方向と上下方向とに分かれて配置されていない。本実施形態1とは異なり、各キャビティがハウジングに左右方向と上下方向とに分かれて配置されている場合には、ハウジングに対して端子金具を立体的に組付ける必要があり、作業性の面で不利である。これに対し、本実施形態1の場合、ハウジング20A,20Bに各端子金具80A,80Bを平面的に組付けることができるので、各第1キャビティ23Aおよび各第2キャビティ23Bに対して各第1端子金具80Aおよび各第2端子金具80Bを自動機または手で把持しつつ容易に挿入することが可能となる。なお、端子金具80A,80Bは、端子金具80A,80Bのリールで挿入工程に供給され、切り離される。
【0036】
続いて、リールから繰り出された長尺体に備わるハウジング20A,20Bに対し、
図8に示すように、電線90の前端部が挿入される。電線90の前端部で露出する各被覆電線91の芯線93は、第1電線収容空間25Aおよび第2電線収容空間25Bに配置され、それぞれ対応する端子金具80A,80Bのバレル部82に載せられる。この状態で、図示しない圧着治具がバレル部82に対して上下方向から押し当てられる。具体的には、圧着治具の図示しないアンビルが貫通孔27を通してバレル部82に下方から接触し、圧着治具の図示しないクリンパが電線収容空間25A,25Bを通してバレル部82に上方から接触する。そして、クリンパが下降することによってバレル部82が芯線93に圧着される。これにより、端子金具80A,80Bが電線90の芯線93に電気的および機械的に接続される(
図10を参照)。
【0037】
上記のとおり、端子金具80A,80Bのバレル部82を被覆電線91の芯線93に圧着させる作業は、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bが開き位置にある状態で行われる。各バレル部82に載せられた各被覆電線91の芯線93は、左右方向に一列に並んで配置されており、左右方向と上下方向とに分れていない。本実施形態1と異なり、各バレル部が上下方向に並んで配置されている場合には、各バレル部に対して圧着治具を作用させることが困難になる。これに対し、本実施形態1の場合、左右方向に並んだ各バレル部82および各被覆電線91の芯線93に対して圧着治具を上下方向から支障なく作用させることができ、圧着作業を容易に行うことが可能となる。また、各端子金具80A,80Bが各キャビティ23A,23Bに収容された状態で、各電線90の圧着作業を一度に行うことができ、別工程で圧着作業を行う必要がない。
【0038】
続いて、各支持部61が切除され、ハウジング20A,20Bが枠体60から切り離される。このとき、
図9に示すように、電線90の前端部は、開き位置において、コネクタ10の左右中央部に配置されている。具体的には、電線90の前端部は、開き位置において、ヒンジ部21よりも後方において第1電線収容空間25Aおよび第2電線収容空間25Bに跨がるように配置されている。その状態で、
図10に示すように、電線90の前端部は、第1電線引出口34Aおよび第2電線引出口34Bが位置する側に屈曲させられる。さらに、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bがヒンジ部21を介して閉じ位置に向けて回動させられる。
図1に示すように、各第1ロック部31Aおよび第2ロック部31Bが互いに係止されることにより、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bが閉じ位置に保持される。
【0039】
図2に示すように、第1壁部33Aおよび第2壁部33Bは、電線90のシース92の前端部における後端側で湾曲した外周面の左右両側の部位に接触し、電線90の向きを電線引出口34A,34B側となる下側に規制する。
図11に示すように、第1係止突起35Aおよび第2係止突起35Bは、電線90のシース92の外周面における電線引出口34A,34Bに配置される部位に食い込んだ状態で接触する。これにより、電線90のシース92の前端部は、電線収容空間25A,25Bで屈曲した状態を維持できるようになっている。
【0040】
以上説明したように、本実施形態1によれば、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bを開き位置とし、左右方向に並んだ各第1キャビティ23Aおよび各第2キャビティ23Bに対し、各第1端子金具80Aおよび各第2端子金具80Bを挿入し、さらに各第1端子金具80Aおよび各第2端子金具80Bに電線90を圧着する作業を行うことができる。その後、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bを閉じ位置とすることで、各第1キャビティ23Aおよび各第2キャビティ23Bを左右方向とともに上下方向にも並んだ状態とし、同時に各第1端子金具80Aおよび各第2端子金具80Bを左右方向とともに上下方向にも並んだ状態とすることができる。
本実施形態1の場合、左右方向に並んだ第1キャビティ23Aおよび第2キャビティ23Bに第1端子金具80Aおよび第2端子金具80Bを平面的に挿入でき、電線90の圧着作業を行うことができるので、ハウジング20A,20Bに対する端子金具80A,80Bや電線90の組付作業性の向上を図ることができる。しかも、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bがヒンジ部21を介してつながっているので、部品点数の増加を招くこともない。
【0041】
また、本実施形態1の場合、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bが閉じ位置にあるときに、壁部33A,33Bが電線90のシース92の外周面に後方から接触し、且つ係止突起35A,35Bが電線90のシース92の外周面に食い込み状態で接触する。このため、本実施形態1の構成は、電線収容空間25A,25Bに収容された電線90の前端部の屈曲状態を維持しつつ、電線引出口34A,34Bから電線90を引き出すことができる。特に、本実施形態1の構成は、電線90を屈曲させる作業と、第1ハウジング20Aおよび第2ハウジング20Bを開き位置から閉じ位置へと変位させる作業と、を一連の作業で連続して行うことができる。また、係止突起35A,35Bが閉じ位置で電線90の動きを抑制するため、電線90を電線引出口34A,34Bに位置決め状態に留め置くことができる。また、本実施形態1の場合、キャリアから各端子金具80A,80Bを切り離すことなく、各キャビティ23A,23Bに各端子金具80A,80Bを挿入可能であり、且つ、そのまま各端子金具80A,80Bに電線90を圧着する作業を行うことができるので、作業性の面で一段と優れる。
【0042】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された上記実施形態1はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態1の場合、第1端子金具および第2端子金具は、互いに同一形状で且つ同じ大きさで形成されていた。これに対し、他の実施形態によれば、第1端子金具および第2端子金具は、互いに異なる形状であっても良く、また互いに異なる大きさであっても良い。
上記実施形態1の場合、第1キャビティおよび第2キャビティは、第1ハウジングおよび第2ハウジングにそれぞれ2つずつ横並びで設けられていた。これに対し、他の実施形態によれば、第1キャビティおよび第2キャビティは、第1ハウジングおよび第2ハウジングにそれぞれ1つだけ設けられるだけでも良く、あるいは3つ以上が横並びで設けられていても良い。
上記実施形態1の場合、壁部は、第1ハウジングに設けられる第1壁部と、第2ハウジングに設けられる第2壁部と、によって構成されていた。これに対し、他の実施形態によれば、壁部は、第1壁部と第2壁部のいずれか一方で構成されていても良い。
上記実施形態1の場合、電線は、高速通信用の電線として構成されていた。これに対し、他の実施形態によれば、電線は、高速通信用ではない一般電線であっても良い。例えば、電線は、互いに撚り合わされていない複数本の被服電線のみで構成されていても良い。
上記実施形態1の場合、第1ハウジングおよび第2ハウジングは、枠体に支持されることによって開き位置の状態を維持していた。これに対し、他の実施形態によれば、第1ハウジングおよび第2ハウジングは、枠体を介さず、例えば、支持台等に載せられて開き位置を維持する構成であっても良い。
上記実施形態1の場合、第1面および第2面は、キャビティを区画する壁に形成されていた。これに対し、他の実施形態によれば、第1面および第2面は、ハウジングの壁の一部または全部を貫通する部分に開口面として構成されていても良い。
【符号の説明】
【0043】
10…コネクタ
20A…第1ハウジング(ハウジング)
20B…第2ハウジング(ハウジング)
21…ヒンジ部
22A…第1端子収容部
22B…第2端子収容部
23A…第1キャビティ(キャビティ)
23B…第2キャビティ(キャビティ)
24…係止孔
25A…第1電線収容空間(電線収容空間)
25B…第2電線収容空間(電線収容空間)
26…底壁部
27…貫通孔
28…(左右外側の端部に配置される)側壁部
29…(左右内側の端部に配置される)側壁部
30A…第1面
30B…第2面
31A…第1ロック部
31B…第2ロック部
32A…第1掛止部
32B…第2掛止部
33A…第1壁部(壁部)
33B…第2壁部(壁部)
34A…第1電線引出口(電線引出口)
34B…第2電線引出口(電線引出口)
35A…第1係止突起(係止突起)
35B…第2係止突起(係止突起)
60…枠体
61…支持部
80A…第1端子金具(端子金具)
80B…第2端子金具(端子金具)
81…接続部
82…バレル部
83…ランス部
90…電線
91…被覆電線
92…シース
93…芯線
94…絶縁被覆