(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152303
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】レールキャップ
(51)【国際特許分類】
F16C 29/08 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
F16C29/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066418
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】水村 美典
(72)【発明者】
【氏名】小林 丈二
【テーマコード(参考)】
3J104
【Fターム(参考)】
3J104AA03
3J104AA23
3J104AA36
3J104AA65
3J104AA69
3J104AA72
3J104AA74
3J104AA76
3J104BA62
3J104CA13
3J104DA04
3J104DA18
(57)【要約】
【課題】取付穴への異物の侵入を適正に抑制するとともに、座ぐり穴からの取り外し作業の作業性に優れるレールキャップを提供すること。
【解決手段】座ぐり穴16に嵌め込まれて取付穴15を閉塞するレールキャップ20であって、金属材から構成される蓋部材20aと、樹脂材から構成されて蓋部材20aに組み付けられる嵌合部材20bと、を備え、蓋部材20aは、板状の円板部21と、円板部21の下面から突出する短円筒部22と、短円筒部22の上端部に設けられて短円筒部22の外周面が径方向内側に窪む溝部23と、短円筒部22の内周部よりも径方向内側に位置するように円板部21に設けられる薄肉部24と、を有し、嵌合部材20bは、該レールキャップ20が座ぐり穴16に嵌め込まれた状態において座ぐり穴16の内周面と面接触することになる外周面と、嵌合部材20bの上下方向に延びるスリット28と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直動案内軸受装置を構成する案内レールの取付穴の上部に設けられた座ぐり穴に嵌め込まれて該取付穴を閉塞するレールキャップであって、
金属材から構成される蓋部材と、樹脂材から構成されて前記蓋部材に組み付けられるリング状の嵌合部材と、を備え、
前記蓋部材は、板状の円板部と、前記円板部の下面から突出する前記円板部と同芯の短円筒部と、を備え、
前記短円筒部の上端部には、前記短円筒部の外周面が径方向内側に窪む溝部が形成され、
前記円板部には、下面が前記短円筒部の内側に形成される空間を構成し、前記短円筒部より径方向外側に延出するフランジ部よりも薄肉な薄肉部が設けられ、
前記嵌合部材は、前記蓋部材の溝部に取り付けられ、該レールキャップが前記座ぐり穴に嵌め込まれた状態において前記座ぐり穴の内周面と面接触することになる外周面と、該嵌合部材の上下方向に延びるスリットと、を有する、
レールキャップ。
【請求項2】
前記蓋部材の上端から前記溝部の下端までの上下方向の長さは、
前記蓋部材の上端から前記嵌合部材の外周面の上端までの上下方向の長さよりも大きく、且つ、該レールキャップの上下方向の長さよりも小さい、
請求項1に記載のレールキャップ。
【請求項3】
前記蓋部材の上端から前記嵌合部材の外周面の上端までの上下方向の長さは、
前記蓋部材の上端から前記溝部の下端までの上下方向の長さよりも大きく、且つ、該レールキャップの上下方向の長さよりも小さい、
請求項1に記載のレールキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールキャップの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、直線状の案内レールと、案内レールに相対移動可能に跨架されたスライダと、を備えて、案内レール及びスライダに形成された転動体転動溝間を循環する複数の転動体(例えば、ボール)を介して、スライダが案内レール上を軸方向に相対移動可能に構成される、直動案内軸受装置が提案されている。このような直動案内軸受装置は、案内レールに上面から下面まで貫通する取付穴が設けられ、取付穴にボルトを挿入し、ボルトのねじ軸を基台等のねじ孔に締め付けることによって基台等に取り付けられる。かかる取り付け後、取付穴を閉塞すべく、取付穴の上部に設けられた座ぐり穴には、例えば金属製のレールキャップが嵌め込まれる。これにより、直動案内軸受装置は、取付穴に異物が溜まるのを抑制している(特許文献1~2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-137140号公報
【特許文献2】特開2016-196905号公報
【特許文献3】実開平4-117914号公報
【特許文献4】特開2012-172750号公報
【特許文献5】特開2016-217508号公報
【特許文献6】特開2015-152021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のレールキャップは、一定の厚さで製作された短円柱状の形状を有するものがある。このレールキャップは、外径が座ぐり穴の内径よりも大きく、外周部が塑性変形または削られながら座ぐり穴に嵌入され、弾性力によって座ぐり穴の内周部に圧着されることによって抜け止めされる。しかしながら、レールキャップを座ぐり穴から取り外す際、レールキャップをドリル等の工具で破壊するため、レールキャップの取り外し作業に時間を要する。また、上記作業によって座ぐり穴が損傷することがあり、案内レールを再利用できなくなるおそれがあった。
【0005】
従来のレールキャップの中には、この問題を解決するための方法が提案されたものもある。例えば、上面の一部を薄肉とすることでドライバ等の工具で簡単に穴をあけることができ、その穴を利用してレールキャップを座ぐり穴から容易に取り外し可能な方法が提案されている(特許文献3を参照)。また、上面を反り返らせて、座ぐり穴の内周面にレールキャップを固定させる方法(特許文献4を参照)や、中央付近の厚さを最大として、一端を薄くすることによって、タガネ等の工具で叩くと他端が浮き上がりレールキャップを座ぐり穴から容易に取り外し可能な方法(特許文献5を参照)も提案されている。更には、内部側蓋部材と外部側蓋部材との間に形成された空間内に液状ゴムを注入し、空間を液状ゴムで満たし硬化させることによって、栓部材を繰り返しの取り付け及び取り外しを可能とする方法(特許文献6を参照)も提案されている。
【0006】
しかしながら、従来のレールキャップは、スライダが上側を通過した際、スライダに挟まれた異物によって、レールキャップの上面が押し込まれて変形して平滑な面を維持できないものがある。このようなレールキャップでは、レールキャップの上面の周縁部と座ぐり穴との隙間に異物がたまり、直動案内軸受装置の内部に異物が侵入するおそれがあった。また、レールキャップの上面に薄肉部がないことによって、レールキャップを取り外す際、穴あけが難しく、取り外しに時間を要するものもあった。このように、従来のレールキャップは、座ぐり穴からの取り外し作業の作業性と、座ぐり穴(取付穴)への異物の侵入を適正に抑制することと、の両立が困難であった。
【0007】
本発明は、上述した問題点に着目してなされたものであり、取付穴への異物の侵入を適正に抑制するとともに、座ぐり穴からの取り外し作業の作業性に優れるレールキャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の上記目的は、直動案内軸受装置に係る下記(1)~(3)の構成により達成される。
(1)
直動案内軸受装置を構成する案内レールの取付穴の上部に設けられた座ぐり穴に嵌め込まれて該取付穴を閉塞するレールキャップであって、
金属材から構成される蓋部材と、樹脂材から構成されて前記蓋部材に組み付けられるリング状の嵌合部材と、を備え、
前記蓋部材は、板状の円板部と、前記円板部の下面から突出する前記円板部と同芯の短円筒部と、を備え、
前記短円筒部の上端部には、前記短円筒部の外周面が径方向内側に窪む溝部が形成され、
前記円板部には、下面が前記短円筒部の内側に形成される空間を構成し、前記短円筒部より径方向外側に延出するフランジ部よりも薄肉な薄肉部が設けられ、
前記嵌合部材は、前記蓋部材の溝部に取り付けられ、該レールキャップが前記座ぐり穴に嵌め込まれた状態において前記座ぐり穴の内周面と面接触することになる外周面と、該嵌合部材の上下方向に延びるスリットと、を有する、
レールキャップ。
(2)
前記蓋部材の上端から前記溝部の下端までの上下方向の長さは、
前記蓋部材の上端から前記嵌合部材の外周面の上端までの上下方向の長さよりも大きく、且つ、該レールキャップの上下方向の長さよりも小さい、
(1)に記載の直動案内軸受装置。
(3)
前記蓋部材の上端から前記嵌合部材の外周面の上端までの上下方向の長さは、
前記蓋部材の上端から前記溝部の下端までの上下方向の長さよりも大きく、且つ、該レールキャップの上下方向の長さよりも小さい、
(1)に記載のレールキャップ。
【発明の効果】
【0009】
上記(1)の構成のレールキャップによれば、蓋部材と嵌合部材とによって構成されることによって、取付穴への異物の侵入が適正に抑制される。また、円板部に薄肉部が設けられることによって、レールキャップを座ぐり穴から取り外すとき、薄肉部に穴をあけやすく取り外し作業が容易となる。また、座ぐり穴と面接触する嵌合部材が樹脂材から構成されることによって、レールキャップを座ぐり穴から取り外すとき、座ぐり穴(取付穴)の内周面が損傷し難くなり、案内レールの再利用が可能となる。このように、本構成のレールキャップは、取付穴への異物の侵入の適正な抑制と、座ぐり穴からの取り外し作業の優れた作業性と、の両立が可能である。
また、嵌合部材にスリットが設けられていることによって、嵌合部材の蓋部材へ取り付け作業が容易となる。
【0010】
上記(2)の構成のレールキャップによれば、嵌合部材と座ぐり穴との接触部分と、嵌合部材と蓋部材(即ち、溝部)との接触部分とが上下方向に一部重複している。これにより、レールキャップを座ぐり穴に嵌め込むとき、及び、レールキャップを座ぐり穴から取り外すときにおいても、嵌合部材が蓋部材から外れることが抑制される。換言すると、嵌合部材は、上記構成により蓋部材への優れた保持力を有している。
【0011】
上記(3)の構成のレールキャップによれば、嵌合部材と座ぐり穴との接触部分と、嵌合部材と蓋部材(即ち、溝部)との接触部分とが上下方向に重複していない。これにより、嵌合部材の変形が容易となり、レールキャップの座ぐり穴への嵌め込みが容易となる。また、嵌合部材の変形が容易となると、レールキャップを座ぐり穴に嵌め込むとき、嵌合部材の外周部が座ぐり穴によって削られること、ひいてはレールキャップの座ぐり穴への圧着力の低下が抑制される。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るレールキャップを含む直動案内軸受装置の一例を説明するための一部を破断した斜視図である。
【
図2A】本発明の第1実施形態に係るレールキャップの分解斜視図である。
【
図2B】
図2Aに示すレールキャップの変形例を示す分解斜視図である。
【
図3】
図2Aに示すレールキャップを案内レールの座ぐり穴に嵌め込んだ状態を示す概略断面図である。
【
図4】
図2Aに示すレールキャップの座ぐり穴からの取り外し工程を説明する第1概略断面図である。
【
図5】
図2Aに示すレールキャップの座ぐり穴からの取り外し工程を説明する第2概略断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係るレールキャップを案内レールの座ぐり穴に嵌め込んだ状態を示す概略断面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係るレールキャップを案内レールの座ぐり穴に嵌め込んだ状態を示す概略断面図である。
【
図8】
図7に示すレールキャップの各寸法を説明するための正面図である。
【
図9】本発明の第4実施形態に係るレールキャップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るレールキャップ20を含む直動案内軸受装置1の実施形態の一例を図面に基づいて説明する。直動案内軸受装置1としては、リニアガイドを例に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、以下に説明する実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば限定されるものではない。
【0015】
図1に示すように、直動案内軸受装置1は、直線状の案内レール10と、案内レール10を跨ぐように組み付けられ、複数の転動体B(ボール)を介してスライド自在に係合するスライダ30と、を備えている。
【0016】
案内レール10は、上面11と両側面とが交差する稜線部に、断面略1/4円弧状のレール側軌道面13が軸方向に形成され、両側面に、断面略半円形または断面ゴシックアーチ形状のレール側軌道面14が軸方向に形成されている。
【0017】
また、案内レール10には、上面11から下面12まで貫通する取付穴15が、軸方向に略等間隔で複数個所形成されている。取付穴15の上部には、取付穴15よりも大径の座ぐり穴16が、各取付穴15に対応して形成されている。なお、取付穴15には、案内レール10を基台等に取り付けるためのねじ17が挿通される(
図3参照)。
【0018】
スライダ30は、スライダ本体31と、スライダ本体31の軸方向両端部に取り付けられたエンドキャップ33と、各エンドキャップ33の更に軸方向端部に取り付けられたサイドシール34と、給脂用ニップル35と、を含んで構成される。
【0019】
スライダ本体31は、両袖部32を有する略C字状に形成されている。両袖部32の内側面には、案内レール10のレール側軌道面13、14に対向するスライダ側軌道面37を有するとともに、転動体戻し路38を有している。レール側軌道面13、14及びスライダ側軌道面37は、転動体Bを転動自在に案内するとともに、転動体Bを介してスライダ30に作用する荷重を支持している。
【0020】
エンドキャップ33は、略C字状に形成され、スライダ本体31のスライダ側軌道面37及び転動体戻し路38を連通させる湾曲路36を有している。つまり、レール側軌道面13、14、スライダ側軌道面37、転動体戻し路38、及び両端部の湾曲路36で、転動体循環路を形成している。転動体循環路内には、複数の転動体B(ボール)が転動自在に装填されている。なお、転動体Bとしては、ボールの代わりにローラ(ころ)が使用されてもよい。
【0021】
<第1実施形態>
次いで、本発明の第1実施形態に係るレールキャップ20について説明する。
図1及び
図3に示すように、レールキャップ20は、直動案内軸受装置1を構成し、案内レール10の座ぐり穴16に嵌め込まれて、取付穴15を閉塞する。
【0022】
レールキャップ20は、
図2A~
図5に示すように、真鍮、鉄鋼、ステンレス鋼、及びアルミ合金等の金属材から構成される蓋部材20aと、弾性力を有して合成樹脂等の樹脂材から構成される略C字状のリング状の嵌合部材20bと、から構成されている。
【0023】
特に
図2Aに示すように、蓋部材20aは、略正円状の板状の円板部21と、円板部21の下面から下方に突出する円板部21と同芯の短円筒部22と、が一体に構成され、短円筒部22の上端部(即ち、円板部21との境界部)に、短円筒部22の外周面が径方向内側に窪む溝部23が形成されている。円板部21の径は、座ぐり穴16の開口部の穴径よりもやや小さく構成され、短円筒部22の外径は、座ぐり穴16の穴径及び円板部21の径よりも小さく構成される。なお、短円筒部22は、上方から下方に向けて縮径するテーパ状に形成されていてもよい(
図2B参照)。
【0024】
円板部21には、下面が短円筒部22の内側に形成される空間を構成し、短円筒部22より径方向外側に延出するフランジ部25よりも薄肉な薄肉部24が設けられている(
図3参照)。
【0025】
同様に
図2Aに示すように、嵌合部材20bは、円周方向の一部にスリット28を有して略C字状のリング状に形成される。嵌合部材20bは、蓋部材20aの溝部23と上下方向の長さが等しく、溝部23に取り付けられる円筒状の取付部26と、取付部26の下側且つ径方向外側に位置して、座ぐり穴16の内周面と面接触する外周面を有する円筒状の嵌合部27と、が一体に構成されている。取付部26の外径は、座ぐり穴16の穴径よりも小さく構成され、嵌合部27の外径は、座ぐり穴16の穴径に対応するように構成されている。なお、嵌合部27は、上方から下方に向けて縮径するテーパ状に形成されていてもよい(
図2B参照)。
【0026】
嵌合部27の内径は、取付部26の内径よりも大きく、且つ、取付部26の外径よりも小さく構成されている。加えて、取付部26と嵌合部27とは同芯である。これにより、取付部26の下端面の径方向外側領域と、嵌合部27の上端面の径方向内側領域とが、上下方向に重なっている。
【0027】
レールキャップ20は、蓋部材20aと嵌合部材20bとが取り付けられることで完成される。具体的には、嵌合部材20bの取付部26を蓋部材20aの溝部23に嵌め込むように、嵌合部材20bを蓋部材20aの下側から取り付ける。なお、蓋部材20aへの嵌合部材20bの取り付け時おいて、嵌合部材20bが略C字状に形成されているため、嵌合部材20bは拡径する弾性変形が容易となっている。
【0028】
かかる取り付け後、嵌合部材20bの弾性力によって溝部23の外周面と取付部26の内周面とが密着するように面接触し、溝部23と短円筒部22とによって構成される段差部分に取付部26の下端面の径方向内側領域が係止される。なお、嵌合部材20bの取付部26の内径が、蓋部材20aの溝部23の外径よりも小さければ、取付部26の溝部23への保持力が高まる。以上により、レールキャップ20が完成される。
【0029】
レールキャップ20を案内レール10の座ぐり穴16に嵌め込むには、座ぐり穴16の開口部に対応する位置にレールキャップ20を配置した後、レールキャップ20の上面に当て材(図示省略)をあてがい、この状態で当て材の上面を金槌等で少しずつ打ち込めばよい。これにより、レールキャップ20(即ち、嵌合部材20b)の嵌合部27が弾性変形しながら座ぐり穴16に嵌め込まれていく。
【0030】
この結果、円板部21、並びに、短円筒部22及び取付部26が座ぐり穴16と隙間を介して配置され、且つ嵌合部27の外周面と座ぐり穴16の内周面とが密着するように面接触して配置されて、取付穴15が閉塞される(
図3参照)。
【0031】
第1実施形態では、
図3に示すように、蓋部材20aの上端から溝部23の下端までの上下方向の長さL1は、蓋部材20aの上端から嵌合部材20bの嵌合部27(具体的には、座ぐり穴16の内周面と面接触する嵌合部27の外周面)の上端までの上下方向の長さL2よりも大きく、且つ、レールキャップ20の上下方向の長さL3よりも小さいように構成されている(即ち、L2<L1<L3)。
【0032】
つまり、嵌合部材20b(即ち、嵌合部27)と座ぐり穴16との接触部分と、嵌合部材20b(即ち、取付部26)と蓋部材20a(即ち、溝部23)との接触部分とが上下方向に一部(L1-L2分)重複している。これにより、上述したレールキャップ20を座ぐり穴16に嵌め込むとき、及び、後述するレールキャップ20を座ぐり穴16から取り外すときにおいても、嵌合部材20bが蓋部材20aから外れることが抑制される。換言すると、嵌合部材20bは、上記構成により蓋部材20aへの優れた保持力を有している。
【0033】
ところで、レールキャップが座ぐり穴に嵌め込まれた状態では、一般に、レールキャップと座ぐり穴との嵌合箇所に空気圧が掛かり、レールキャップが座ぐり穴から抜けるおそれがある。しかしながら、本発明の実施形態に係るレールキャップ20は、嵌合部材20bにスリット28が設けられていることによって、スリット28が空気の排出路となり、空気圧によるレールキャップ20の座ぐり穴16からの抜けが抑制される。
【0034】
ここで、レールキャップ20の座ぐり穴16からの取り外し工程について説明する。レールキャップ20を座ぐり穴16から取り外すには、治具2(本例では、マイナスドライバ)を薄肉部24の上面に配置した後、この状態で治具2の上面を金槌3等で少しずつ打ち込めばよい。これにより、治具2の先端は、薄肉部24を突き破り短円筒部22の筒孔内に進入する(
図4参照)。
【0035】
そして、治具2を傾けて、先端を円板部21(薄肉部24)の下面に引っ掛けた状態でレールキャップ20を持ち上げると、レールキャップ20が座ぐり穴16から取り外される(
図5参照)。以上、レールキャップ20の座ぐり穴16からの取り外し工程について説明した。
【0036】
このように、第1実施形態に係るレールキャップ20によれば、蓋部材20aと嵌合部材20bとによって構成されることによって、取付穴15への異物の侵入が適正に抑制される。また、円板部21に薄肉部24が設けられることによって、レールキャップ20を座ぐり穴16から取り外すとき、薄肉部24に穴をあけやすく取り外し作業が容易となる。また、座ぐり穴16と面接触する嵌合部材20bが樹脂材から構成されることによって、レールキャップ20を座ぐり穴16から取り外すとき、座ぐり穴16(取付穴15)の内周面が損傷し難くなり、案内レール10の再利用が可能となる。このように、第1実施形態に係るレールキャップ20は、取付穴15への異物の侵入の適正な抑制と、座ぐり穴16からの取り外し作業の優れた作業性と、の両立が可能である。
また、嵌合部材20bにスリット28が設けられていることによって、嵌合部材20bの蓋部材20aへの取り付け作業が容易となる。以上、本発明の第1実施形態に係るレールキャップ20について説明した。
【0037】
<第2実施形態>
次いで、本発明の第2実施形態に係るレールキャップ120について説明する。第2実施形態に係るレールキャップ120は、第1実施形態に係るレールキャップ20と同様に、直動案内軸受装置1を構成し、案内レール10の座ぐり穴16に嵌め込まれて、取付穴15を閉塞する。
【0038】
第2実施形態に係るレールキャップ120と、第1実施形態に係るレールキャップ20との相違点は、「蓋部材の上端から溝部の下端までの上下方向の長さ、蓋部材の上端から嵌合部材の嵌合部の上端までの上下方向の長さ、及びレールキャップの上下方向の長さの関係性」についてのみである。以下、第2実施形態における各箇所の上下方向の長さの関係性について説明し、相違点以外の説明を省略する。
【0039】
第2実施形態では、
図6に示すように、蓋部材120aの上端から嵌合部材120bの嵌合部(具体的には、座ぐり穴16の内周面と面接触する嵌合部の外周面)の上端までの上下方向の長さL5は、蓋部材120aの上端から溝部123の下端までの上下方向の長さL4よりも大きく、且つ、レールキャップ120の上下方向の長さL6よりも小さいように構成されている(L4<L5<L6)。
【0040】
つまり、嵌合部材120b(即ち、嵌合部)と座ぐり穴16との接触部分と、嵌合部材120b(即ち、取付部)と蓋部材120a(即ち、溝部123)との接触部分とが上下方向に重複していない。これにより、嵌合部材120b(特に、嵌合部)の弾性変形が容易となり、レールキャップ120の座ぐり穴16への嵌め込みが容易となる。また、嵌合部材120bの弾性変形が容易となると、レールキャップ120を座ぐり穴16に嵌め込むとき、嵌合部27の外周部が座ぐり穴16によって削られること、ひいてはレールキャップ120の座ぐり穴16への圧着力の低下が抑制される。
【0041】
以上、第1実施形態との相違点である。レールキャップ120は、第1実施形態に係るレールキャップ20と同様の構成については、同様の作用・効果を奏し得る。以上、本発明の第2実施形態に係るレールキャップ120について説明した。
【0042】
<第3実施形態>
次いで、本発明の第3実施形態に係るレールキャップ40について説明する。第3実施形態に係るレールキャップ40は、第1実施形態に係るレールキャップ20及び第2実施形態に係るレールキャップ120とは異なり一の部材から構成される。具体的には、レールキャップ40は、真鍮、鉄鋼、ステンレス鋼、及びアルミ合金等の金属材から構成される。
【0043】
また、
図7に示すように、レールキャップ40は、円板部41と、円板部41の下面の周縁部から下方に突出する短円筒部42と、を備えている。円板部41には、下面が短円筒部42の内側に形成される空間を構成し、当該箇所を除く他の箇所よりも薄肉な薄肉部43が設けられている。
【0044】
ここで、円板部の外径をD、円板部の上端から短円筒部の下端までの上下方向の長さをT、薄肉部の直径をd、薄肉部の上下方向の長さ(即ち、板厚)をtとする(
図8参照)。レールキャップ40は、各寸法が以下の関係となるように構成される。
【0045】
T≒(1/4)D
d≒(1/2)D~(4/5)D
t≒(1/5)T~(1/3)T
【0046】
上記構成により、第1実施形態と同様の作用・効果を奏し得る。つまり、取付穴15への異物の侵入の適正な抑制と、座ぐり穴16からの取り外し作業の優れた作業性と、の両立がより適正に行われる。以上、本発明の第3実施形態に係るレールキャップについて説明した。
【0047】
<第4実施形態>
次いで、本発明の第4実施形態に係るレールキャップ140について説明する。第4実施形態に係るレールキャップ140は、円板部141と同芯の短円筒部142の外周面にローレット加工が施されている(
図9参照)。換言すると、短円筒部142は、外周面に凹凸形状を有している。これにより、レールキャップ140の変形が容易となり、レールキャップ140の座ぐり穴16への嵌め込みが容易となる。なお、他の構成については、第3実施形態と同様に構成されている。以上、本発明の第4実施形態に係るレールキャップ140について説明した。
【符号の説明】
【0048】
1 直動案内軸受装置
2 治具
3 金槌
10 案内レール
15 取付穴
16 座ぐり穴
20,120 レールキャップ
20a,120a 蓋部材
20b,120b 嵌合部材
21,121 円板部
22,122 短円筒部
23,123 溝部
24,124 薄肉部
25 フランジ部
26 取付部
27 嵌合部
28 スリット
30 スライダ
40 レールキャップ
41 円板部
42 短円筒部
43 薄肉部
B 転動体