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特開2024-152323粒子破砕特性を有する材料による地盤造成方法
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  • 特開-粒子破砕特性を有する材料による地盤造成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152323
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】粒子破砕特性を有する材料による地盤造成方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/046 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
E02D3/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066448
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107272
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 敬二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109140
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 研一
(72)【発明者】
【氏名】江守 辰哉
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】上野 一彦
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043CA15
2D043CA20
2D043EA02
2D043EA10
(57)【要約】
【課題】砂等の混合材料が不要で、軽石等の粒子破砕特性を有する材料を単独で使用しより簡便に有効利用できる、粒子破砕特性を有する材料による地盤造成方法を提供する。
【解決手段】この地盤造成方法は、軽石等を地盤造成位置に投入し敷き均しを行う第1工程S01と、軽石等について転圧により締め固めを行う第2工程S02と、軽石等による地盤をほぐす第3工程S03と、締め固めおよびほぐしによる軽石等の粒度分布を評価する第4工程S04と、粒度分布が不十分と評価されたとき第2工程乃至第4工程を粒度分布が十分と評価されるまで繰り返す第5工程と、軽石等による地盤について転圧により締め固めを行う第6工程S05と、締め固め後の軽石等による地盤について品質の確認を行う第7工程S06と、品質が不十分であるとき第3工程乃至第7工程を品質が十分になるまで繰り返す第8工程と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子破砕特性を有する材料を用いて地盤を造成する方法であって、
粒子破砕特性を有する材料を地盤造成位置に投入し敷き均しを行う第1工程と、
前記粒子破砕特性を有する材料について転圧により締め固めを行う第2工程と、
前記粒子破砕特性を有する材料による地盤をほぐす第3工程と、
前記ほぐされた粒子破砕特性を有する材料から採取された試料について粒度試験または画像分析を実施し、前記締め固めおよび前記ほぐしによる前記粒子破砕特性を有する材料の粒度分布を評価する第4工程と、
前記粒度分布が不十分と評価されたとき前記第2工程乃至前記第4工程を前記粒度分布が十分と評価されるまで繰り返す第5工程と、
前記粒子破砕特性を有する材料による地盤について転圧により締め固めを行う第6工程と、
前記締め固め後の粒子破砕特性を有する材料による地盤について品質の確認を行う第7工程と、
前記品質が不十分であるとき前記第3工程乃至前記第7工程を前記品質が十分になるまで繰り返す第8工程と、を含む、粒子破砕特性を有する材料による地盤造成方法。
【請求項2】
前記第4工程における粒度分布の評価を前記粒度試験または前記画像分析から得られた均等係数、または、均等係数および曲率係数に基づいて行う、請求項1に記載の地盤造成方法。
【請求項3】
前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程および前記第6工程を、汎用の建設機械を用いて行う、請求項1に記載の地盤造成方法。
【請求項4】
前記品質確認を、前記粒子破砕特性を有する材料による地盤のコーン指数または締固め度に基づいて行う、請求項1に記載の地盤造成方法。
【請求項5】
前記粒子破砕特性を有する材料は、海底地盤の噴火に伴って発生した軽石、脆弱岩ずりまたは人工石材である請求項1に記載の地盤造成方法。
【請求項6】
前記地盤は、埋立地盤または盛土地盤である請求項1乃至5のいずれかに記載の地盤造成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子破砕特性を有する材料を用いて地盤を造成する地盤造成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、海底火山の噴火によって多量の軽石が噴出し、潮流や風の影響によって日本各地の港湾や沿岸に漂着し、漂着した多量の軽石による、漁船のエンジンの破損、旅客船の運航停止、養殖魚介類の死滅、水質環境の悪化などの経済上、環境上の問題が生じている。かかる軽石対策の一環として、浮遊している軽石を直接揚土・回収し、埋立材として利用する方法が提案されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】内閣府沖縄総合事務局「軽石の埋立処分に関する技術検討委員会」資料(試験結果)http://www.ogb.go.jp/kaiken/minato/pumice
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者等は、日本国内の港湾等の複数地点A~Dで採取された軽石について物理特性を調査したが、その結果を以下に示す。また、かかる軽石の粒度試験により得た粒径加積曲線を図1に示す。粒径加積曲線から得られる次式(1)の均等係数Ucは、粒径加積曲線の傾度を表し、大きいほど粒径範囲が広い粒子から構成されていることを意味する。軽石は、脆い粒子破砕性材料であり、均等係数Uc=3.60で、10以下であり、粒径幅の狭い、単一粒径に近く、締固めには不適な材料である。
均等係数Uc=D60/D10 (1)
ただし、D60:粒径加積曲線で通過質量百分率が60%に相当する粒径
10:粒径加積曲線で通過質量百分率が10%に相当する粒径
【0005】
軽石(粒子破砕性材料)の物理特性
・土粒子密度ρs = 2.07mg/m
・かさ密度ρd = 0.6~0.8mg/m
・礫質土(均等係数Uc=3.60)
【0006】
海底地盤の噴火に伴って発生した軽石の特徴は、上記調査から以下の通りである。
(a)非常に多孔質であり、一般的な地盤材料と比較して軽量である。
(b)非常に多孔質であり、比較的脆い材料であり、粒子破砕特性を有する。
(c)粒径幅の狭い、単一粒径に近い礫材料である。
【0007】
軽石を有効利用するため盛土材や埋立材等の地盤材料として使用する場合、軽石は、上記材料特性(a)~(c)を有するため、以下の問題点がある。
(1)軽石は、粒径幅が狭く、単一粒径に近いため、締固めに向かない材料である。一般に締固め効率の良い地盤材料の指標として、均等係数Uc(Uc≧10)と曲率係数Uc'(1<Uc'<3)が用いられる。しかし、港湾に漂着した軽石の均等係数はUc=3.60と粒径幅の狭い材料であり、軽石単体では締固めによる地盤の密実化(強度の確保)を見込むことができない。このため、従来、軽石に砂材料を混合することで粒径幅を広げ、締固め効率を向上させた材料に改質することで地盤材料としての締固め品質を確保している。
【0008】
(2)軽石と砂の混合材料とする場合、混合する砂材料の調達が困難になることがある。軽石に混合する砂材料は、混合後の粒径幅を広くすることができる材料である必要があるため、条件を満たすことのできる砂材料の確保が必要である。また、従来工法では地盤強度を確保するためには、軽石:砂材料=1:1(容積比)で混合する必要があるため、相当量の砂材料が必要となるとともに、砂材料の必要分だけ軽石の利用量が減ってしまう。
【0009】
(3)混合材料とする場合、作業に係るコストや手間が大きい。施工に先立って軽石と砂材料を混合する必要があるので、混合機械や作業・仮置きヤードの確保が必要となる。
【0010】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、砂等の混合材料が不要で、軽石等の粒子破砕性の材料を単独で使用しより簡便に有効利用できる、粒子破砕特性を有する材料による地盤造成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための粒子破砕特性を有する材料による地盤造成方法は、粒子破砕特性を有する材料を用いて地盤を造成する方法であって、
粒子破砕特性を有する材料を地盤造成位置に投入し敷き均しを行う第1工程と、
前記粒子破砕特性を有する材料について転圧により締め固めを行う第2工程と、
前記軽石による地盤をほぐす第3工程と、
前記ほぐされた軽石から採取された試料について粒度試験または画像分析を実施し、前記締め固めおよび前記ほぐしによる前記軽石の粒度分布を評価する第4工程と、
前記粒度分布が不十分と評価されたとき前記第2工程乃至前記第4工程を前記粒度分布が十分と評価されるまで繰り返す第5工程と、
前記軽石による地盤について転圧により締め固めを行う第6工程と、
前記締め固め後の軽石による地盤について品質の確認を行う第7工程と、
前記品質が不十分であるとき前記第3工程乃至前記第7工程を前記品質が十分になるまで繰り返す第8工程と、を含む。
【0012】
この軽石による地盤造成方法によれば、軽石は粒径幅が狭く単一粒径に近いため締め固めに向いていないが、軽石の粒子破砕特性に着目し、軽石による地盤を締め固めた後に攪拌してほぐすことで、施工に伴う粒子破砕によって砂分や細粒分を増やして幅広い粒径を持つように粒度分布調整でき、締め固めに適した材料に改質できる。これにより、軽石による地盤の締め固め品質を確保できるとともに締め固め効率を向上できる。また、工程の途中に破砕後の軽石の粒度評価工程を組み込むことで締め固め材料としての適否を確認できる。また、軽石のみを使用して地盤の造成ができるので、砂等の他の混合材料が不要であり、他材料の調達の問題がなく、また、混合に伴う施工コストが発生しない。さらに、地盤造成の施工場所において各工程が実施されるので、混合作業ヤードや仮置きヤードを必要とせず、また、軽石の搬入作業のみで、他の運搬作業が不要である。
【0013】
上記軽石による地盤造成方法において、前記第4工程における粒度分布の評価を前記粒度試験または前記画像分析から得られた均等係数Uc、または、均等係数Ucおよび曲率係数Uc'に基づいて行うことが好ましい。
【0014】
また、前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程および前記第6工程を、汎用の建設機械を用いて行うことができるので、特別な機械は不要であり、施工コストが嵩むことがない。
【0015】
また、前記品質確認を前記軽石による地盤のコーン指数または締固め度に基づいて行うことが好ましい。
【0016】
また、前記粒子破砕特性を有する材料は、海底地盤の噴火に伴って発生した軽石、脆弱岩ずりまたは人工石材であることが好ましい。
【0017】
また、前記地盤は、埋立地盤または盛土地盤であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の粒子破砕特性を有する材料による地盤造成方法によれば、砂等の混合材料が不要で、粒子破砕特性を有する材料を単独で使用しより簡便に有効利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】港湾等の複数箇所で採取した軽石の粒度試験による粒径加算曲線を示す図である。
図2】本実施形態による、軽石を用いて地盤を造成する方法の各工程を説明するためのフローチャートである。。
図3】軽石について均等係数Ucとコーン指数qcとの関係を示すグラフである。
図4】軽石についてほぐし無しの締め固め試験の結果を示す粒径加算曲線(a)およびほぐし有りの締め固め試験の結果を示す粒径加算曲線(b)である。
図5図2のほぐし(撹拌)工程がある場合の軽石の粒子破砕状態の変化を概略的に示す模式図(a)~(d)である。
図6】ほぐし(撹拌)工程がない場合の軽石の粒子破砕状態の変化を概略的に示す模式図(a)~(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。図2は本実施形態による、軽石を用いて地盤を造成する方法の各工程を説明するためのフローチャートである。
【0021】
本実施形態による軽石を用いた地盤造成方法の工程S01~S06を図2のフローチャートを参照して説明する。
【0022】
まず、埋立または盛土を行う対象場所に軽石をバックホウやブルドーザにより投入し敷均しを行う(S01)。ここで、軽石は、たとえば、海底地盤の噴火に伴って発生し港湾等に漂着した多数の軽石を収集したものを使用する。
【0023】
次に、敷き均した軽石について締固め機械により転圧を行うことで締め固めを行う(S02)。かかる締め固めにより軽石が粒子破砕される。
【0024】
次に、締め固めた軽石による地盤をバックホウやスタビライザーにより攪拌し、ほぐしを行う(S03)。これにより、地盤が掻きまわされ、地盤骨格が破壊される。このほぐし(攪拌)工程により軽石の粒子間の間隙が大きくなる。
【0025】
次に、ほぐされた軽石から試料を採取し、試料について粒度試験を実施し粒度分布を確認し、締め固めおよびほぐしによる軽石の粒度分布を評価する(S04)。締め固め工程S02とほぐし工程S03との施工に伴う粒子破砕による粒度分布の調整効果を確認する。軽石の粒度分布の調整評価は、たとえば、粒度試験により得た均等係数Uc(上記式(1))に基づいて行い、均等係数Ucが閾値以上となったときに粒度分布が良好であると判断する。均等係数Ucの閾値は、事前の室内試験で決定し設定することが好ましいが、事前の試験が難しい場合等は、暫定的にUc≧10に設定してもよい。
【0026】
なお、粒度分布の確認方法は、土の粒度試験(JIS A 1111)に基づいて行うことができるが、土の画像分析によって行ってもよく、この場合、本出願人が先に特開2021-67468号公報において提案した土質特性推定方法・装置を用いることができる。
【0027】
次に、たとえば、軽石の均等係数Ucが閾値未満の場合、軽石の粒度分布調整が不十分と評価され(S04のNo)、締め固め工程S02とほぐし工程S03と粒度分布評価工程S04とを粒度分布調整が十分と評価されるまで繰り返す。なお、締め固め工程S02とほぐし工程S03とは、2~3回程度のサイクルによって要求品質を満たすことができる。
【0028】
次に、たとえば、軽石の均等係数Ucが閾値以上となった場合、軽石の粒度分布調整が十分と評価され(S04のYes)、軽石による地盤について締固め機械により転圧を行うことで締め固めを行う(S05)。
【0029】
次に、締め固め後の軽石による地盤について品質の確認を行う(S06)。たとえば、通常の締固め管理と同様に、地盤強度に関連する締固め度やコーン指数に基づいて品質の確認を行うことができる。たとえば、コーン貫入試験(JIS A 1228)を行い、得られたコーン指数が目標値を満たさない場合、軽石による地盤の品質が不十分と評価され(S06のNo)、工程S03~工程S06を品質が十分と評価されるまで繰り返す。
【0030】
次に、軽石による地盤の品質が十分と評価された場合(S06のYes)、軽石による埋立または盛土の地盤造成施工が完了する。なお、必要に応じて、図2の各工程S01~S06を繰り返すことで、目的の厚みを有する軽石地盤を造成できる。
【0031】
図3は、軽石について均等係数Ucとコーン指数qcとの関係を示すグラフである。図3から、軽石は、均等係数Ucが大きくなると、コーン指数qcも大きくなることがわかり、図2の締め固め工程S02とほぐし工程S03とにより軽石の粒度分布を調整し均等係数Ucを大きくすることで軽石がよく締め固められて軽石による地盤強度を大きくできる。
【0032】
次に、図2のほぐし(攪拌)工程S03の作用効果を確認するために締め固め試験を行った。この締め固め試験について図4を参照して説明する。ほぐし無しの締め固め試験では、採取した軽石試料を容器に詰めた後、締め固めエネルギー1000,2000,3000J/mでそれぞれ締め固めてから粒度試験をJIS A 1111に基づいて行った。ほぐし有りの締め固め試験では、軽石試料を容器に詰めた後、1000J/mで締め固めてから粒度試験をJIS A 1111に基づいて行い、また、1000J/mで締め固め→解体(ほぐしに相当)→1000J/mで締め固め→粒度試験を同様に順に行い、さらに、1000J/mで締め固め→解体(ほぐしに相当)→1000J/mで締め固め→解体(ほぐしに相当)→1000J/mで締め固め→粒度試験を同様に順に行い、累計の締め固めエネルギーが1000,2000,3000J/mとなるようにした。
【0033】
図4は、軽石についてほぐし無しの締め固め試験の結果を示す粒径加算曲線)およびほぐし有りの締め固め試験の結果を示す粒径加算曲線(b)である。図4(a)の数字1000,2000,3000は、各締め固めエネルギーJ/mを表し、図4(b)の数字1000,2000,3000は、累計の締め固めエネルギーJ/mを表す。
【0034】
図4(b)のほぐし有りの累計締め固めエネルギー2000J/mの粒径加算曲線を図4(a)のほぐし無しの締め固めエネルギー2000J/mの粒径加算曲線と比較すると、ほぐし有りの場合の均等係数Ucが10.6、ほぐし無しの場合の均等係数Ucが8.9で、ほぐし有りの方が大きい。また、図4(b)のほぐし有りの累計締め固めエネルギー3000J/mの粒径加算曲線を図4(a)のほぐし無しの締め固めエネルギー3000J/mの粒径加算曲線と比較すると、ほぐし有りの場合の均等係数Ucが16.4、ほぐし無しの場合の均等係数Ucが10.9で、ほぐし有りの方がいっそう大きくなり、締固めエネルギーの増大に伴って均等係数Ucが大きくなる。
【0035】
図4(a)から、ほぐし(撹拌)工程がない場合、締固めエネルギーを増大させても均等係数Uc=10程度で収束してしまうのに対し、図4(b)から、ほぐし(撹拌)工程がある場合、締固めエネルギーの増大に伴って均等係数Ucを大きくできることがわかる。このように、締固めエネルギーの増大のみでは、軽石の粒子破砕が収束してしまい、締固めに適した粒度分布にならないのに対し、軽石についてほぐし(撹拌)工程を加えることで均等係数Ucを大きくでき、軽石が締固めに適した粒度分布になる。
【0036】
図5は、図2のほぐし(撹拌)工程がある場合の軽石の粒子破砕状態の変化を概略的に示す模式図(a)~(d)である。図6は、ほぐし(撹拌)工程がない場合の軽石の粒子破砕状態の変化を概略的に示す模式図(a)~(c)である。
【0037】
図5(a)の軽石地盤10は、図1の投入・敷均し工程S01後の状態であり単一粒径に近い状態であるが、締め固め工程S02により図5(b)のように粒子破砕されて、砂分や細粒分を増やして幅広い粒径に粒度分布調整をする。次に、ほぐし工程S03により軽石地盤が攪拌されると、図5(c)のように、大きい径の粒子が地表面付近に移動するとともに粒子間の間隙が増大し、大きな粒径の粒子の間隙に小さな粒径の粒子が入り込む状態になる。この状態で再び締め固め工程S05を行うことで、図5(d)のように軽石地盤10Aが良好に締め固められ、密実な構造に形成される。この場合、締め固め工程S02により厚みd1だけ軽石地盤10を圧縮できるが、次の締め固め工程S05により厚みd1よりもかなり大きい厚みd2(d2>d1)だけ軽石地盤10を圧縮でき、密実な構造の軽石地盤10Aを形成できる。
【0038】
これに対し、図6(a)~(c)のように、ほぐし(撹拌)工程がない場合、軽石地盤10について締め固め工程を連続して行っても、粒子破砕は地表面近くでのみ生じ、軽石の粒子間の間隙が大きくならず、大きな粒径の粒子の間隙に小さな粒径の粒子が入り込むことがないので、締め固めの効果を十分に得ることができない。図6(c)のように2回の締め固め工程の後の軽石地盤は厚みd3だけ圧縮できるが、ほぐし(撹拌)工程がある場合の図5(d)と比べて、d3<d2であり、圧縮量は少なく、密実な構造の軽石地盤を形成できない。
【0039】
なお、図5(a)~(d)の締め固め工程S02,S05において締め固めエネルギーをそれぞれ、たとえば、1000J/m,2000J/mとし、累計の締め固めエネルギーが3000J/mである場合の軽石地盤10Aの粒径加算曲線は、図4(b)の累計の締め固めエネルギー3000J/mの場合に近似し、均等係数Ucが大きくなる。一方、図6(a)~(c)の2回の締め固め工程による累計の締め固めエネルギーが3000J/mである場合の図6(c)の軽石地盤の粒径加算曲線は、図4(a)の累計の締め固めエネルギー3000J/mの場合に近似し、均等係数Uc=10程度で大きくならない。
【0040】
以上のように、実施形態による軽石を用いた地盤造成方法によれば、軽石の粒子破砕特性に着目し、締め固め工程とほぐし工程との施工によって、軽石による地盤について幅広い粒径に粒度分布調整し均等係数を大きくでき、締め固めに適した材料に改質できる。これにより、軽石地盤の締め固め品質を確保できるとともに締め固め効率を向上できる。また、締固めエネルギーの増大(施工機械の大型化、転圧回数の増加等)では粒子破砕が収束し、効率よく粒子破砕による均等係数の増加を見込めないという従来技術の問題を解消できる。また、工程の途中に破砕後の軽石の粒度評価工程を組み込むことで、均等係数Ucに基づいて締め固め材料としての適否を確認でき、さらに、粒度分布確認によって最適な粒度分布となったところで締め固めを行うことができるので、軽石の破砕過多による細粒化を防止できる。
【0041】
また、軽石のみを使用して地盤の締固め度やコーン指数等の要求品質を満足できるので、砂等の他の混合材料が不要であり、他材料の調達の問題が生じなく、また、混合に伴う施工コストが発生しない。また、埋立や盛土の施工場所において各工程を実施できるので、混合作業ヤードや仮置きヤードを必要とせず、また、軽石の搬入作業のみで、他の運搬作業が不要である。さらに、各工程に必要なバックホウやブルドーザや締固め機械やスタビライザーは、一般の土の締め固め工等に使用される汎用の建設機械であり、破砕機や混合機などの粒度分布調整のためだけに導入する特別な機械が不要であり、コスト的にきわめて有利である。
【0042】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、本実施形態では、軽石を利用して埋立地盤または盛土地盤を造成したが、本発明はこれに限定されず、他の地盤の造成に適用できることはもちろんである。
【0043】
また、図2の粒度分布評価工程S04において均等係数Ucと次の式(2)による曲率係数Uc'とに基づいて粒度分布を評価するようにしてもよい。曲率係数Uc'は、粒径加積曲線の滑らかさを示すものである。粒度分布評価の判断基準は、たとえば、Uc'(1<Uc'<3)である。
曲率係数Uc'=D30 /(D10・D60) (2)
ただし、D30:粒径加積曲線で通過質量百分率が30%に相当する粒径
60:粒径加積曲線で通過質量百分率が60%に相当する粒径
10:粒径加積曲線で通過質量百分率が10%に相当する粒径
【0044】
また、軽石は上述のような物理特性を有する粒子破砕性材料であり、本発明はすべての軽石の他、たとえば脆弱岩ずりや人工石材等の粒子破砕特性を有する地盤材料に適用できる。なお、本明細書において、粒子破砕特性を有する材料とは、地盤工学の分野で一般に経験する応力範囲(0.1~数MPa)でシリカ系の土粒子に比べて粒子破砕を起こしやすい土材料をいう(参考文献:北村良介「破砕土の力学特性と破砕性地盤の工学的諸問題」「土と基礎 」48-10(513)、土質工学会編、2000年10月)。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、海底地盤の噴火に伴って発生した軽石等を用いて地盤造成が比較的低コストで可能であるので、港湾や沿岸に漂着した多量の軽石を盛土材や埋立材等の地盤材料として有効利用でき、また、他材料との混合が不要である。これにより、軽石対策として多量の軽石の処分が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6