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特開2024-152332ロータの製造装置及びロータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152332
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】ロータの製造装置及びロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20241018BHJP
   H02K 1/276 20220101ALI20241018BHJP
【FI】
H02K15/02 K
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066461
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】竹本 雅昭
【テーマコード(参考)】
5H615
5H622
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP02
5H615SS10
5H615SS44
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA10
5H622CB03
5H622CB05
5H622PP20
(57)【要約】
【課題】材料の歩留まりを向上できるロータの製造装置及びロータの製造方法を提供する。
【解決手段】製造装置20は、複数の磁石収容孔13を有するロータコア11と、磁石収容孔13に収容される磁石14と、磁石収容孔13に充填されるとともにロータコア11に磁石14を固定する熱可塑性の樹脂とを備えるロータの製造装置である。製造装置20は、ロータコア11の第1端面11aに当接され、磁石収容孔13の第1開口13aを塞ぐ第1型30と、ロータコア11の第1端面11aとは反対側の第2端面11bに当接される第2型40とを備えている。第2型40は、磁石収容孔13の第1開口13aとは反対側の第2開口13bに対して溶融状態の樹脂を導入する通路50と、通路50を加熱するヒータ60とを有している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁石収容孔を有するロータコアと、前記磁石収容孔に収容される磁石と、前記磁石収容孔に充填されるとともに前記ロータコアに前記磁石を固定する熱可塑性の樹脂と、を備えるロータの製造装置であって、
前記ロータコアの第1端面に当接され、前記磁石収容孔の第1開口を塞ぐ第1型と、
前記ロータコアの前記第1端面とは反対側の第2端面に当接される第2型と、を備え、
前記第2型は、前記磁石収容孔の前記第1開口とは反対側の第2開口に対して溶融状態の前記樹脂を導入する通路と、前記通路を加熱するヒータと、を有する、
ロータの製造装置。
【請求項2】
前記通路は、射出成形機のノズルに接続されるスプルー部と、前記スプルー部に接続されるランナ部と、を含み、
前記スプルー部は、前記ロータコアの軸線上に設けられており、
前記ランナ部は、前記スプルー部から前記ロータコアの径方向に沿って放射状に延びる複数のマニホルド部と、前記マニホルド部から前記ロータコアに向かって延びるノズル部と、を有しており、
前記ヒータは、複数の前記マニホルド部を加熱するマニホルド部用ヒータと、複数の前記マニホルド部にそれぞれ接続される複数の前記ノズル部をそれぞれ加熱する複数のノズル部用ヒータと、を有する、
請求項1に記載のロータの製造装置。
【請求項3】
前記ノズル部は、前記マニホルド部から前記軸線に沿って延びる上流部と、前記上流部の先端から複数の前記磁石収容孔に向けて分岐して延びる複数の下流部と、を有する、
請求項2に記載のロータの製造装置。
【請求項4】
前記第2型は、
前記スプルー部、複数の前記マニホルド部、前記ノズル部のうちの前記上流部、前記マニホルド部用ヒータ、及び複数の前記ノズル部用ヒータを有する第2型本体と、
前記第2型本体と前記第2端面との間に配置され、複数の前記下流部を有するプレート部と、を備える、
請求項3に記載のロータの製造装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のロータの製造装置を用いたロータの製造方法であって、
前記磁石収容孔に前記磁石を収容するとともに前記第1型と前記第2型とにより前記ロータコアの前記第1端面及び前記第2端面をそれぞれ当接させた状態で、前記通路を通じて前記第2開口に対して溶融状態の前記樹脂を導入することで前記磁石収容孔に前記樹脂を充填する充填工程と、
前記樹脂を冷却する冷却工程と、を備え、
前記充填工程では、前記ヒータにより前記通路内の前記樹脂を加熱する、
ロータの製造方法。
【請求項6】
前記通路は、射出成形機のノズルに接続されるスプルー部と、前記スプルー部に接続されるランナ部と、を含み、
前記スプルー部は、前記ロータコアの軸線上に設けられており、
前記ランナ部は、前記スプルー部から前記ロータコアの径方向に沿って放射状に延びる複数のマニホルド部と、前記マニホルド部から前記ロータコアに向かって延びるノズル部と、を有しており、
前記ヒータは、複数の前記マニホルド部を加熱するマニホルド部用ヒータと、複数の前記マニホルド部にそれぞれ接続される複数の前記ノズル部をそれぞれ加熱する複数のノズル部用ヒータと、を有しており、
前記充填工程に先立ち、当該充填工程において用いられる前記ロータコアとは別の前記ロータコアを用いて、前記第1型と前記第2型とにより前記ロータコアの前記第1端面及び前記第2端面をそれぞれ当接させた状態で、前記通路を通じて前記第2開口に対して溶融状態の前記樹脂を導入するとともに、複数の前記磁石収容孔における前記樹脂の充填状態に基づいて複数の前記ノズル部の各々における前記樹脂の流動性を測定する測定工程を備え、
前記充填工程では、前記測定工程において前記樹脂の流動性が低いと測定された前記ノズル部が、前記樹脂の流動性が高いと測定された前記ノズル部よりも高温になるように前記ノズル部用ヒータの各々を制御する、
請求項5に記載のロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータの製造装置及びロータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁石埋め込み型コアの樹脂充填装置が記載されている。特許文献1に記載の樹脂充填装置は、永久磁石が収容されたロータコアの複数の磁石挿入孔に熱可塑性の樹脂を充填することによって、ロータコアに対して永久磁石を固定する。樹脂充填装置は、互いに対向して配置されるとともに、ロータコアを間に挟むことでロータコアを固定する上型及び下型を有する。下型は、射出成形機のノズルが接続されるスプルー部を有する下型本体部と、下型本体部の上面に取り付けられるランナープレートとを有する。ランナープレートは、ランナー部と、ゲート部とを有する。ランナー部は、ランナープレートの下面に形成され、ロータコアの軸線上に位置する中央部分から放射状に延びる溝である。ゲート部は、各ランナー部の端部と磁石挿入孔とを接続する孔である。ランナー部と下型本体部の上面とによって、スプルー部とゲート部とを接続する通路が形成される。スプルー部、ランナー部、及びゲート部を通じて磁石挿入孔へと溶融状態の樹脂が充填された後、樹脂が冷却されて硬化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/147211号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の樹脂充填装置では、ゲート部及び上記通路の内部において硬化した樹脂が廃棄されることになるため、材料の歩留まりが悪いという問題がある。
なお、こうした樹脂を粉砕するとともにリサイクル材としてバージン材の樹脂に混合して再利用することが考えられる。しかしながら、バージン材に混合できるリサイクル材は最大30質量%程度であるため、この場合であっても材料の歩留まりが悪いという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのロータの製造装置は、複数の磁石収容孔を有するロータコアと、前記磁石収容孔に収容される磁石と、前記磁石収容孔に充填されるとともに前記ロータコアに前記磁石を固定する熱可塑性の樹脂と、を備えるロータの製造装置であって、前記ロータコアの第1端面に当接され、前記磁石収容孔の第1開口を塞ぐ第1型と、前記ロータコアの前記第1端面とは反対側の第2端面に当接される第2型と、を備え、前記第2型は、前記磁石収容孔の前記第1開口とは反対側の第2開口に対して溶融状態の前記樹脂を導入する通路と、前記通路を加熱するヒータと、を有する。
【0006】
また、上記課題を解決するためのロータの製造方法は、前記ロータの製造装置を用いたロータの製造方法であって、前記磁石収容孔に前記磁石を収容するとともに前記第1型と前記第2型とにより前記ロータコアの前記第1端面及び前記第2端面をそれぞれ当接させた状態で、前記通路を通じて前記第2開口に対して溶融状態の前記樹脂を導入することで前記磁石収容孔に前記樹脂を充填する充填工程と、前記樹脂を冷却する冷却工程と、を備え、前記充填工程では、前記ヒータにより前記通路内の前記樹脂を加熱する。
【0007】
同構成及び同方法によれば、ヒータによって通路を加熱することができるので、通路内において硬化した樹脂を再び溶融させるとともに磁石収容孔へ充填できる。このため、通路内において硬化した樹脂を廃棄しなくて済む。したがって、材料の歩留まりを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係るロータの製造装置を用いて製造されるロータの斜視図である。
図2図2は、図1のロータの断面図である。
図3図3は、第1実施形態に係るロータの製造装置の断面図である。
図4図4は、図3のロータの製造装置の第2型の下面図である。
図5図5は、磁石収容孔内に樹脂が充填された状態を示す断面図である。
図6図6は、ロータコアから第2型を上方に離間させた状態を示す断面図である。
図7図7は、第2実施形態に係るロータの製造装置の断面図である。
図8図8は、図7のロータの製造装置の第2型の下面図である。
図9図9は、第3実施形態に係るロータの製造装置の断面図である。
図10図10は、図9のロータの製造装置をロータコアの第2端面から視た平面図である。
図11図11は、通路の変更例を示す下面図である。
図12図12は、従来のロータの製造装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図7を参照して、ロータの製造装置及びロータの製造方法の第1実施形態について説明する。
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態のロータの製造装置(以下、製造装置20)により製造される磁石埋込型モータのロータ10について説明する。
【0010】
<ロータ10>
図1及び図2に示すように、ロータ10は、複数の磁石収容孔13を有するロータコア11と、磁石収容孔13に収容される磁石14と、磁石収容孔13に充填されるとともに、ロータコア11に磁石14を固定する熱可塑性の樹脂16とを備えている。
【0011】
ロータコア11は、軸線Cを有する略円筒状であるとともに、電磁鋼板からなる複数枚の鉄心片12が積層された積層体からなる。
なお、以降において、ロータコア11の軸線方向を単に軸線方向とし、ロータコア11の径方向を単に径方向とし、ロータコア11の周方向を単に周方向として説明する。
【0012】
複数の磁石収容孔13は、周方向に互いに間隔をおいて設けられている。本実施形態では、磁石収容孔13の断面形状を模式的に略長方形状としている。中心孔11c及び各磁石収容孔13は、軸線方向に沿ってロータコア11を貫通している。
【0013】
磁石14は、軸線方向に沿って延在する直方体状である。
樹脂16は、液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer(LCP))である。
中心孔11cの内周面には、径方向において互いに対向する一対のキー部11dが突設されている。
【0014】
ロータコア11における磁石収容孔13よりも内周側の部分には、磁石14を冷却するための冷却媒体が流通される複数の冷却孔15が周方向に互いに間隔をおいて設けられている。各冷却孔15は、ロータコア11の周方向に沿って湾曲した断面円弧状をなしており、周方向において互いに隣り合う一対の磁石収容孔13の間に設けられている。各冷却孔15は、軸線方向に沿ってロータコア11を貫通している。
【0015】
次に、製造装置20について説明する。
図3に示すように、製造装置20は、第1型30と、第2型40と、制御部80とを備えている。
【0016】
<第1型30>
図3に示すように、第1型30は、ロータコア11の下方に配置されるものであり、第1型本体31と、第1型本体31の上面に配置される搬送プレート32と、搬送プレート32の上面に配置されるスペーサ34とを備える。
【0017】
搬送プレート32は、ロータコア11を搬送するものであり、正方形板状のプレート本体33とポスト部35とを有している。
ポスト部35は、円筒状であり、プレート本体33の中央部から上方に突出している。ポスト部35は、ロータコア11の中心孔11cに挿入される。ポスト部35の外周面には、ロータコア11の各キー部11dが挿入される一対のキー溝部(図示略)がポスト部35の軸線方向に沿って設けられている。ポスト部35のキー溝部に対してロータコア11のキー部11dが挿入されることで、プレート本体33に対するロータコア11の位相が決められる。
【0018】
ポスト部35の上端には、上方に突出する複数の係合ピン39が設けられている。係合ピン39は、周方向において互いに間隔をあけて設けられている。
スペーサ34には、ポスト部35が挿通される貫通孔34aが設けられている。貫通孔34aの内周面には、ポスト部35の上記一対のキー溝部に挿入されることでプレート本体33に対するスペーサ34の位置決めがされる一対の規制突起(図示略)が設けられている。
【0019】
スペーサ34の上面に対してロータコア11の第1端面11aが当接されることで、磁石収容孔13の第1開口13aが塞がれる。
<第2型40>
図3に示すように、第2型40は、ロータコア11の上方に配置されるものであり、軸線方向において第1型30に対して進退可能に設けられている。
【0020】
第2型40の下面40bには、係合ピン39が係合可能に構成された複数の係合穴49が設けられている。
第2型40は、ロータコア11の第1端面11aとは反対側の第2端面11bに当接された状態において、磁石収容孔13の第1開口13aとは反対側の第2開口13bに対して溶融状態の樹脂を導入する通路50と通路50を加熱するヒータ60とを有している。
【0021】
(流路50)
図3及び図4に示すように、通路50は、射出成形機88のノズル89(図3参照)に接続されるスプルー部51と、スプルー部51に接続されるランナ部52とを含んでいる。
【0022】
スプルー部51は、ロータコア11の軸線C上に設けられている。
ランナ部52は、スプルー部51の下端からロータコア11の径方向に沿って放射状に延びる複数のマニホルド部53と、マニホルド部53からロータコア11に向かって延びるノズル部54とを有している。
【0023】
図4に示すように、マニホルド部53及びノズル部54は、軸線Cを中心として回転対称に配置されている。
図3及び図4に示すように、ノズル部54は、マニホルド部53から軸線Cに沿って下方に延びる上流部55と、上流部55の先端、すなわち下端から複数(本実施形態では2つ)の磁石収容孔13に向けて分岐して延びる複数の下流部56とを有している。1つの下流部56が、1つの磁石収容孔13の第2開口13bに接続されている。下流部56は、第2型40の下面40bに開口する溝であり、軸線Cに直交する仮想平面に沿って延びている。下流部56は、ロータコア11の第2端面11bとにより上流部55と磁石収容孔13とを接続する通路を形成する。
【0024】
図4に示すように、下流部56は、マニホルド部53の延在方向に沿って延びる仮想線Vに対して、線対称に配置されている。
(ヒータ60)
図3に示すように、ヒータ60は、複数のマニホルド部53を加熱するマニホルド部用ヒータ63と、複数のマニホルド部53にそれぞれ接続される複数のノズル部54をそれぞれ加熱する複数のノズル部用ヒータ64とを有している。
【0025】
マニホルド部用ヒータ63は、スプルー部51及びマニホルド部53の外周側に配置されており、通電されることで発熱するヒータ線を有する。
ノズル部用ヒータ64は、ノズル部54のうちの上流部55の外周側に配置されており、通電されることで発熱する。
【0026】
ノズル部用ヒータ64は、ノズル部54の基端側の部分、すなわち上側の部分を加熱するノズル部用第1ヒータ65と、ノズル部54の先端側の部分、すなわち下側に配置されるノズル部用第2ヒータ66とを有している。
【0027】
<温度センサ70>
図3に示すように、温度センサ70は、第1温度センサ71と、第2温度センサ72と、第3温度センサ73とを有している。
【0028】
第1温度センサ71は、マニホルド部用ヒータ63の温度を検出する。
第2温度センサ72は、ノズル部用第1ヒータ65の温度を検出する。
第3温度センサ73は、ノズル部用第2ヒータ66の温度を検出する。
【0029】
温度センサ71~73は、例えば熱電対により構成されている。
<制御部80>
制御部80には、マニホルド部用ヒータ63、ノズル部用第1ヒータ65、ノズル部用第2ヒータ66、第1温度センサ71、第2温度センサ72、及び第3温度センサ73が電気的に接続されている。
【0030】
制御部80は、図示しない操作パネルによって、各ヒータ63,65,66毎に入力される設定温度となるように、各センサ71,72,73から検出される温度情報に基づいて各ヒータ63,65,66の通電制御を実行する。
【0031】
次に、ロータ10の製造方法について説明する。
ロータ10の製造方法は、測定工程、充填工程、及び冷却工程を備えている。
測定工程は、後述する充填工程に先立ち、当該充填工程において用いられるロータコア11とは別のロータコア11を用いて複数のノズル部の各々における樹脂の流動性を測定する工程である。
【0032】
測定工程では、第1型30と第2型40とによりロータコア11の第1端面11a及び第2端面11bをそれぞれ当接させた状態で、通路50を通じて第2開口13bに対して溶融状態の樹脂を導入する。複数の磁石収容孔13における樹脂16の充填状態に基づいて複数のノズル部54の各々における樹脂の流動性が測定される。本実施形態では、複数のノズル部用ヒータ64の各々の設定温度を同一にした状態で、ロータコア11の磁石収容孔13の半分程度の高さまで樹脂を充填する。その後、各磁石収容孔13の充填状態を作業者が目視などで確認することで、他の磁石収容孔13に充填された樹脂16の量と比べて充填された樹脂16の量が少ない磁石収容孔13に接続されたノズル部54ほど樹脂の流動性が悪いノズル部54であると判断する。
【0033】
次に、図5に示すように、充填工程では、磁石収容孔13に磁石14を収容する。その後、第1型30と第2型40とによりロータコア11の第1端面11a及び第2端面11bをそれぞれ当接させた状態で、通路50を通じて第2開口13bに対して溶融状態の樹脂を導入することで磁石収容孔13に樹脂16が充填される。
【0034】
磁石収容孔13に樹脂16が充填される際に、ヒータ60により通路50内の樹脂が加熱される。各ノズル部用ヒータ64は、測定工程において予め決定しておいた各ノズル部用ヒータ64の設定温度になるように制御される。なお、上記測定工程後に、作業者により、図示しない操作パネルが操作されることで上記設定温度が設定される。このとき、測定工程において樹脂の流動性が低いと測定されたノズル部54が、樹脂の流動性が高いと測定されたノズル部54よりも高温になるようにノズル部用ヒータ64の各々が制御される。
【0035】
次に、冷却工程では、磁石収容孔13に充填された樹脂16を冷却する。このとき、ノズル部用第2ヒータ66の駆動が停止されることによって、上流部55の先端部分の樹脂16aが冷却される(図6参照)。これにより、上流部55の先端部分の樹脂16aが硬化することで通路50内の樹脂が堰き止められる。
【0036】
最後に、図6に示すように、第2型40を上方に移動させることで第1型30から離間させるとともに、第2型40内に残留する樹脂から磁石収容孔13内に収容された樹脂を切り離す。第2型40を第1型30から離間させた際に、下流部56内で硬化した樹脂16bがロータコア11の第2端面11bに固着する。第2端面11bに固着した樹脂16bは、後工程において除去される。
【0037】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図12に示すように、従来の製造装置90では、磁石収容孔13の第2開口13bに対して溶融状態の樹脂を導入する通路95を有する第2型91とともに、磁石収容孔13に樹脂16が充填された状態のロータコア11が冷却される。このとき、通路95にも樹脂16cが充填されているため、通路95の樹脂16cも冷却される。このため、磁石収容孔13への樹脂の充填のために第2型91を続けて使用する場合には、通路95で硬化した樹脂16cを廃棄することになる。
【0038】
この点、図5に示すように、製造装置20では、ヒータ60によって通路50を加熱することができるので、通路50内において硬化した樹脂を再び溶融させるとともに磁石収容孔13へ充填できる。このため、通路50内において硬化した樹脂を廃棄しなくて済む。
【0039】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1-1)第2型40は、磁石収容孔13の第1開口13aとは反対側の第2開口13bに対して溶融状態の樹脂を導入する通路50と、通路50を加熱するヒータ60とを有している。
【0040】
こうした構成によれば、上記作用を奏することから、材料の歩留まりを向上できる。
(1-2)ランナ部52は、スプルー部51からロータコア11の径方向に沿って放射状に延びる複数のマニホルド部53と、マニホルド部53からロータコア11に向かって延びるノズル部54とを有している。ヒータ60は、複数のマニホルド部53を加熱するマニホルド部用ヒータ63と、複数のマニホルド部53にそれぞれ接続される複数のノズル部54をそれぞれ加熱する複数のノズル部用ヒータ64とを有している。
【0041】
こうした構成によれば、射出成形機88のノズル89からスプルー部51に射出される樹脂が各マニホルド部53及び各ノズル部54を介して各磁石収容孔13の第2開口13bに導入される。このため、射出成形機88の構成を簡単にすることができる。
【0042】
また、ノズル部用ヒータ64がノズル部54毎に設けられているので、各ノズル部54内の樹脂を個別に加熱することが可能となる。これにより、各ノズル部54内の樹脂の加熱温度、ひいては樹脂の流動性の調整を個別に行うことができる。
【0043】
(1-3)ノズル部54は、マニホルド部53から軸線Cに沿って延びる上流部55と、上流部55の先端から複数の磁石収容孔13に向けて分岐して延びる複数の下流部56とを有している。
【0044】
ノズル部54毎にノズル部用ヒータ64が設けられている場合、ヒータ60を含むノズル部54の外径が大きくなる。このため、ロータコア11の外径が小さい場合には、ノズル部54同士が干渉するためにノズル部54を配置することが難しくなる。
【0045】
この点、上記構成によれば、ノズル部54が1つの上流部55と複数の磁石収容孔13に向けて分岐して延びる複数の下流部56とを有するので、磁石収容孔13の数に対してノズル部54の数を減らすことができる。これにより、ロータコア11の外径が小さい場合であっても、ノズル部54を配置することができる。
【0046】
(1-4)充填工程では、ヒータ60により通路50内の樹脂を加熱する。
こうした方法によれば、効果(1)と同様な効果を奏することができる。
(1-5)充填工程では、測定工程において樹脂の流動性が低いと測定されたノズル部54が、樹脂の流動性が高いと測定されたノズル部54よりも高温になるようにノズル部用ヒータ64の各々を制御する。
【0047】
こうした方法によれば、樹脂の流動性が低いノズル部54を樹脂の流動性が高いノズル部54よりも高温になるようにノズル部用ヒータ64の各々が制御される。このため、流動性が低いノズル部54内の樹脂の流動性を高めることができるので、磁石収容孔13に充填される樹脂の圧力が磁石収容孔13毎にばらつくことを抑制できる。これにより、樹脂の充填によってロータコア11に作用する応力が磁石収容孔13毎にばらつくことを抑制できる。
【0048】
<第2実施形態>
次に、図7及び図8を参照して、第2実施形態について説明する。
本実施形態では、1つの磁石収容孔13に対して1つのノズル部が設けられている点が第1実施形態と相違している。すなわち、本実施形態のノズル部は、第1実施形態において例示した下流部56を有していない。
【0049】
以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
なお、以降において、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付すとともに、対応する構成については、第1実施形態の符号「**」に対して「100」を加算した符号「1**」を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0050】
図7に示すように、ノズル部154は、マニホルド部153から軸線Cに沿って下方に延びるとともに、第2型140の下面140bに開口している。
図8に示すように、ノズル部154は、第2型140の下面140bのうち軸線方向において磁石収容孔13と重なる領域に開口している。
【0051】
本実施形態によれば、第1実施形態の作用効果(1-1)、(1-2)、(1-4)、及び(1-5)と同様な作用効果を奏することができる。
<第3実施形態>
次に、図9及び図10を参照して、第3実施形態について説明する。
【0052】
本実施形態では、第2型が、第2型本体と、第2型本体とロータコア11との間に配置されるプレート部とを有する点が第1実施形態と相違している。
以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0053】
なお、以降において、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付すとともに、対応する構成については、第1実施形態の符号「**」に対して「200」を加算した符号「2**」を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0054】
図9に示すように、第2型240は、第2型本体241とプレート部242とを有している。第2型本体241は、スプルー部251、複数のマニホルド部253、ノズル部254のうちの上流部255、マニホルド部用ヒータ263、及び複数のノズル部用ヒータ264を有している。上流部255は、マニホルド部253から軸線Cに沿って下方に延びるとともに、第2型本体241の下面241bに開口している。上流部255は、軸線方向において冷却孔15と重なる位置に設けられている(図10参照)。プレート部242は、第2型本体241とロータコア11の第2端面11bとの間に配置されるとともに、複数の下流部256を有している。本実施形態では、2つの下流部256が、1つの上流部255に接続されている。
【0055】
図9及び図10に示すように、下流部256は、上流部255の先端、すなわち下端から複数の磁石収容孔13に向けて分岐して延びる複数の第1部分257と、第1部分257からロータコア11に向かって延びる第2部分258とを有している。第1部分257は、直線状に延びるとともに、プレート部242の上面242aに開口する溝である(図9参照)。第2部分258は、軸線方向においてプレート部242を貫通する孔であり、軸線方向において磁石収容孔13と重なる位置に設けられている。第1部分257と第2型本体241の下面241bとによって、上流部255と第2部分258とを接続する通路が形成されている。
【0056】
本実施形態によれば、第1実施形態の作用効果(1-1)~(1-5)に加えて、以下の作用効果を奏することができる。
(3-1)第2型240は、スプルー部251、複数のマニホルド部253、ノズル部254のうちの上流部255、マニホルド部用ヒータ263、及び複数のノズル部用ヒータ264を有する第2型本体241を備える。また、第2型240は、第2型本体241と第2端面11bとの間に配置され、複数の下流部256を有するプレート部242を備える。
【0057】
こうした構成によれば、ノズル部254を構成する下流部256の配置が異なるプレート部242に交換することができる。これにより、磁石収容孔13の配置が異なる複数のロータコア11に対して共通の第2型本体241を用いることができる。
【0058】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0059】
・各実施形態では、測定工程を行うようにしたが、これに限られない。測定工程を省略することもできる。
・第3実施形態では、下流部256の第1部分257をプレート部242を貫通する孔とするとともに、第2部分258をプレート部242の下面に開口する溝とすることもできる。この場合、下流部256を、ロータコア11の冷却孔15と軸線方向において重ならない位置に設ければよい。
【0060】
・下流部56,256は、3つ以上の磁石収容孔13と接続されていてもよい。例えば図11に示すように、下流部356が、上流部355の先端から分岐して延びる2つの第1分岐部357と、第1分岐部357の先端から複数の磁石収容孔13に向けて分岐して延びる複数の第2分岐部358とを有していてもよい。
【0061】
・ノズル部用ヒータ64は、ノズル部用第1ヒータ65及びノズル部用第2ヒータ66のいずれか一方によって構成されていてもよいし、ノズル部用第1ヒータ65及びノズル部用第2ヒータ66を1つのノズル部用ヒータによって構成することもできる。
【0062】
・ノズル部用ヒータ64は、複数のノズル部54,154,254毎に各別に設けられていなくてもよい。例えば、2つ以上のノズル部54,154,254に対して共通のノズル部用ヒータを設けるようにしてもよい。
【0063】
・各実施形態では、1つのマニホルド部用ヒータ63によって、複数のマニホルド部53がそれぞれ加熱されるようにしたが、これに限られない。マニホルド部用ヒータを、複数のマニホルド部53,153,253毎に各別に設けるようにしてもよい。
【0064】
・各実施形態では、マニホルド部用ヒータ63及び複数のノズル部用ヒータ64をそれぞれ設けるようにしたが、これに限られない。例えば、第2型40の全体を加熱するヒータによって、通路50を加熱してもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…ロータ
11…ロータコア
11a…第1端面
11b…第2端面
11c…中心孔
11d…キー部
12…鉄心片
13…磁石収容孔
13a…第1開口
13b…第2開口
14…磁石
15…冷却孔
16,16a,16b,16c…樹脂
20…ロータの製造装置
30…第1型
31…第1型本体
32…搬送プレート
33…プレート本体
34…スペーサ
34a…貫通孔
35…ポスト部
39…係合ピン
40,140,240…第2型
40b,140b,240b…下面
49…係合孔
50…通路
51,251…スプルー部
52…ランナ部
53,153,253…マニホルド部
54,154,254…ノズル部
55,255,355…上流部
56,256,356…下流部
60…ヒータ
63,263…マニホルド部用ヒータ
64,264…ノズル部用ヒータ
65…ノズル部用第1ヒータ
66…ノズル部用第2ヒータ
70…温度センサ
71…第1温度センサ
72…第2温度センサ
73…第3温度センサ
80…制御部
88…射出成形機
89…ノズル
90…製造装置
91…第2型
95…通路
241…第2型本体
241b…下面
242…プレート部
242a…上面
257…第1部分
258…第2部分
357…第1分岐部
358…第2分岐部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12