(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152333
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】無線通信システム、アクセスポイント装置、通信制御装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 36/18 20090101AFI20241018BHJP
H04W 40/22 20090101ALI20241018BHJP
H04W 76/15 20180101ALI20241018BHJP
【FI】
H04W36/18
H04W40/22
H04W76/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066462
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】390040187
【氏名又は名称】株式会社バッファロー
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】石川 裕基
(72)【発明者】
【氏名】湯川 英則
(72)【発明者】
【氏名】谷川 昌也
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA14
5K067AA33
5K067EE24
5K067JJ39
(57)【要約】
【課題】ローミングに係る通信切断時間を短縮できる無線通信システム、アクセスポイント装置、通信制御装置、及びプログラムを提供する。
【解決手段】互いに異なる少なくとも2つの第1、第2の周波数帯域を用いて無線端末30と通信可能なアクセスポイント装置20であって、自己宛のデータパケットに含められた無線端末30宛のデータパケットを受け入れると、当該受け入れたデータパケットを利用して無線端末30宛のデータパケットを再構成し、当該再構成したデータパケットを、第1,第2の周波数帯域のいずれか一方を用いて無線端末30宛に送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる少なくとも2つの第1、第2の周波数帯域を用いて無線端末と通信可能な第1のアクセスポイント装置と、
前記第1、第2の周波数帯域を用いて無線端末と通信可能な第2のアクセスポイント装置と、
無線端末と、を含む無線通信システムであって、
前記第2のアクセスポイント装置が、
第2のアクセスポイント装置宛のデータパケットに含められた前記無線端末宛のデータパケットを受け入れる受入手段と、
前記受け入れたデータパケットを利用して前記無線端末宛のデータパケットを再構成する再構成手段と、
当該再構成したデータパケットを、前記第1の周波数帯域を用いて前記無線端末宛に送信する送信手段と、を含み、
前記無線端末は、前記第1の周波数帯域とは異なる周波数帯域を用いて前記第1のアクセスポイント装置と通信を行うとともに、前記第1の周波数帯域を用いて前記第2のアクセスポイント装置と通信を行い、前記第2のアクセスポイント装置が再構成したデータパケットを、第2のアクセスポイント装置から受信する無線通信システム。
【請求項2】
互いに異なる少なくとも2つの第1、第2の周波数帯域を用いて無線端末と通信可能なアクセスポイント装置であって、
自己宛のデータパケットに含められた前記無線端末宛のデータパケットを受け入れる受入手段と、
前記受け入れたデータパケットを利用して前記無線端末宛のデータパケットを再構成する再構成手段と、
当該再構成したデータパケットを、前記第1,第2の周波数帯域のいずれか一方を用いて前記無線端末宛に送信する送信手段と、を含むアクセスポイント装置。
【請求項3】
請求項2に記載のアクセスポイント装置であって、
前記無線端末と、前記第1の周波数帯域を用いた通信経路を確立した後に、前記受入手段が自己宛のデータパケットに含められた前記無線端末宛のデータパケットの受け入れを開始し、
前記第1,第2の周波数帯域のいずれか一方を用いた通信を行っている間に、前記第1,第2の周波数帯域のいずれか他方を用いた通信経路を確立するアクセスポイント装置。
【請求項4】
互いに異なる少なくとも2つの第1、第2の周波数帯域を用いて無線端末と通信可能なアクセスポイント装置であって、
前記無線端末宛のデータパケットを受け入れる受入手段と、
前記受け入れたデータパケットの少なくとも一部を、他のアクセスポイント装置宛のデータパケットに含めて、当該他のアクセスポイント装置宛に送出して転送する転送手段と、
を含むアクセスポイント装置。
【請求項5】
請求項4に記載のアクセスポイント装置であって、
前記他のアクセスポイント装置から当該他のアクセスポイント装置の宛先の情報を受け入れて、前記転送手段が、前記受け入れたデータパケットの少なくとも一部を、他のアクセスポイント装置宛のデータパケットに含めて、当該他のアクセスポイント装置宛に送出して転送するアクセスポイント装置。
【請求項6】
互いに異なる少なくとも2つの第1、第2の周波数帯域を用いて無線端末と通信可能な第1のアクセスポイント装置と、前記第1、第2の周波数帯域を用いて無線端末と通信可能な第2のアクセスポイント装置と、に接続され、無線端末宛のデータパケットを受信して、前記第1または第2のアクセスポイント装置を介して無線端末へ送出する通信制御装置であって、
前記受け入れたデータパケットの少なくとも一部を、前記第1のアクセスポイント装置宛のデータパケットに含めて前記第1のアクセスポイント装置へ転送する第1転送手段と、
前記受け入れたデータパケットの少なくとも一部を、前記第2のアクセスポイント装置宛のデータパケットに含めて前記第2のアクセスポイント装置へ転送する第2転送手段と、
を含む通信制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の通信制御装置であって、
前記第2のアクセスポイント装置宛のデータパケットは、前記受け入れたデータパケットのうち、前記第1転送手段により前記第1のアクセスポイント装置宛のデータパケットに含めていないデータパケットを含む通信制御装置。
【請求項8】
互いに異なる少なくとも2つの第1、第2の周波数帯域を用いて無線端末と通信可能なアクセスポイント装置を、
自己宛のデータパケットに含められた前記無線端末宛のデータパケットを受け入れる受入手段と、
前記受け入れたデータパケットを利用して前記無線端末宛のデータパケットを再構成する再構成手段と、
当該再構成したデータパケットを、前記第1,第2の周波数帯域のいずれか一方を用いて前記無線端末宛に送信する送信手段と、
として機能させるプログラム。
【請求項9】
互いに異なる少なくとも2つの第1、第2の周波数帯域を用いて無線端末と通信可能なアクセスポイント装置を、
前記無線端末宛のデータパケットを受け入れる受入手段と、
前記受け入れたデータパケットの少なくとも一部を、他のアクセスポイント装置宛のデータパケットに含めて、当該他のアクセスポイント装置宛に送出して転送する転送手段と、
として機能させるプログラム。
【請求項10】
互いに異なる少なくとも2つの第1、第2の周波数帯域を用いて無線端末と通信可能な第1のアクセスポイント装置と、前記第1、第2の周波数帯域を用いて無線端末と通信可能な第2のアクセスポイント装置と、に接続され、無線端末宛のデータパケットを受信して、前記第1または第2のアクセスポイント装置を介して無線端末へ送出する通信制御装置を、
前記受け入れたデータパケットの少なくとも一部を、前記第1のアクセスポイント装置宛のデータパケットに含めて前記第1のアクセスポイント装置へ転送する第1転送手段と、
前記受け入れたデータパケットの少なくとも一部を、前記第2のアクセスポイント装置宛のデータパケットに含めて前記第2のアクセスポイント装置へ転送する第2転送手段と、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、アクセスポイント装置、通信制御装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
2つのアクセスポイントがそれぞれ形成するセルのオーバラップ領域に無線端末がある場合に、無線端末と各アクセスポイント間の「距離」を比較して接続先を決め、接続先のアクセスポイントを安定かつ確実に選択できるようにする技術(いわゆるローミング技術)が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらこのローミングにおいては、無線端末がアクセスポイント間で接続を切り替えるときには、再認証の処理が必要となるため、一時的な通信切断時間が発生しているのが実情である。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、ローミングに係るこの通信切断時間を短縮できる無線通信システム、アクセスポイント装置、通信制御装置、及びプログラムを提供することを、その目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来例の問題点を解決する本発明の一態様は、互いに異なる少なくとも2つの第1、第2の周波数帯域を用いて無線端末と通信可能な第1のアクセスポイント装置と、前記第1、第2の周波数帯域を用いて無線端末と通信可能な第2のアクセスポイント装置と、無線端末と、を含む無線通信システムであって、前記第2のアクセスポイント装置が、第2のアクセスポイント装置宛のデータパケットに含められた前記無線端末宛のデータパケットを受け入れる受入手段と、前記受け入れたデータパケットを利用して前記無線端末宛のデータパケットを再構成する再構成手段と、当該再構成したデータパケットを、前記第1の周波数帯域を用いて前記無線端末宛に送信する送信手段と、を含み、前記無線端末は、前記第1の周波数帯域とは異なる周波数帯域を用いて前記第1のアクセスポイント装置と通信を行うとともに、前記第1の周波数帯域を用いて前記第2のアクセスポイント装置と通信を行い、前記第2のアクセスポイント装置が再構成したデータパケットを、第2のアクセスポイント装置から受信することとしたものである。
【0007】
これにより、ローミングの処理の間も、端末装置との間で、ローミング元あるいはローミング先のアクセスポイント装置を介してのデータパケットの送受が可能となり、通信切断時間を短縮できる。
【0008】
また本発明のもう一つの態様は、互いに異なる少なくとも2つの第1、第2の周波数帯域を用いて無線端末と通信可能なアクセスポイント装置であって、自己宛のデータパケットに含められた前記無線端末宛のデータパケットを受け入れる受入手段と、前記受け入れたデータパケットを利用して前記無線端末宛のデータパケットを再構成する再構成手段と、当該再構成したデータパケットを、前記第1,第2の周波数帯域のいずれか一方を用いて前記無線端末宛に送信する送信手段と、を含むこととしたものである。
【0009】
この例でも、ローミングの処理の間も、端末装置との間で、ローミング元あるいはローミング先のアクセスポイント装置を介してのデータパケットの送受が可能となり、通信切断時間を短縮できる。
【0010】
ここで前記無線端末と、前記第1の周波数帯域を用いた通信経路を確立した後に、前記受入手段が自己宛のデータパケットに含められた前記無線端末宛のデータパケットの受け入れを開始し、前記第1,第2の周波数帯域のいずれか一方を用いた通信を行っている間に、前記第1,第2の周波数帯域のいずれか他方を用いた通信経路を確立することとしてもよい。
【0011】
これにより、端末装置との間で、ローミング元あるいはローミング先のアクセスポイント装置を介してのデータパケットの送受を行いつつ、ローミングの処理を継続でき、ローミングに係る通信切断時間を短縮できる。
【0012】
また本発明のもう一つの態様は、互いに異なる少なくとも2つの第1、第2の周波数帯域を用いて無線端末と通信可能なアクセスポイント装置であって、前記無線端末宛のデータパケットを受け入れる受入手段と、前記受け入れたデータパケットの少なくとも一部を、他のアクセスポイント装置宛のデータパケットに含めて、当該他のアクセスポイント装置宛に送出して転送する転送手段と、を含むこととしたものである。
【0013】
これによりローミングの処理の間も、端末装置との間で、ローミング元あるいはローミング先のアクセスポイント装置を介してのデータパケットの送受が可能となり、通信切断時間を短縮できる。
【0014】
ここで前記他のアクセスポイント装置から当該他のアクセスポイント装置の宛先の情報を受け入れて、前記転送手段が、前記受け入れたデータパケットの少なくとも一部を、他のアクセスポイント装置宛のデータパケットに含めて、当該他のアクセスポイント装置宛に送出して転送することとしてもよい。
【0015】
また本発明のさらに別の態様は、互いに異なる少なくとも2つの第1、第2の周波数帯域を用いて無線端末と通信可能な第1のアクセスポイント装置と、前記第1、第2の周波数帯域を用いて無線端末と通信可能な第2のアクセスポイント装置と、に接続され、無線端末宛のデータパケットを受信して、前記第1または第2のアクセスポイント装置を介して無線端末へ送出する通信制御装置であって、前記受け入れたデータパケットの少なくとも一部を、前記第1のアクセスポイント装置宛のデータパケットに含めて前記第1のアクセスポイント装置へ転送する第1転送手段と、前記受け入れたデータパケットの少なくとも一部を、前記第2のアクセスポイント装置宛のデータパケットに含めて前記第2のアクセスポイント装置へ転送する第2転送手段と、を含むこととしたものである。
【0016】
これによってもローミングの処理の間も、端末装置との間で、ローミング元あるいはローミング先のアクセスポイント装置を介してのデータパケットの送受が可能となり、通信切断時間を短縮できる。
【0017】
ここで前記第2のアクセスポイント装置宛のデータパケットは、前記受け入れたデータパケットのうち、前記第1転送手段により前記第1のアクセスポイント装置宛のデータパケットに含めていないデータパケットを含むこととしてもよい。
【0018】
さらに本発明の別の態様は、プログラムであって、互いに異なる少なくとも2つの第1、第2の周波数帯域を用いて無線端末と通信可能なアクセスポイント装置を、自己宛のデータパケットに含められた前記無線端末宛のデータパケットを受け入れる受入手段と、前記受け入れたデータパケットを利用して前記無線端末宛のデータパケットを再構成する再構成手段と、当該再構成したデータパケットを、前記第1,第2の周波数帯域のいずれか一方を用いて前記無線端末宛に送信する送信手段と、として機能させることとしたものである。
【0019】
また本発明の別の態様は、プログラムであって、互いに異なる少なくとも2つの第1、第2の周波数帯域を用いて無線端末と通信可能なアクセスポイント装置を、前記無線端末宛のデータパケットを受け入れる受入手段と、前記受け入れたデータパケットの少なくとも一部を、他のアクセスポイント装置宛のデータパケットに含めて、当該他のアクセスポイント装置宛に送出して転送する転送手段と、として機能させることとしたものである。
【0020】
また本発明のもう一つの態様は、プログラムであって、互いに異なる少なくとも2つの第1、第2の周波数帯域を用いて無線端末と通信可能な第1のアクセスポイント装置と、前記第1、第2の周波数帯域を用いて無線端末と通信可能な第2のアクセスポイント装置と、に接続され、無線端末宛のデータパケットを受信して、前記第1または第2のアクセスポイント装置を介して無線端末へ送出する通信制御装置を、前記受け入れたデータパケットの少なくとも一部を、前記第1のアクセスポイント装置宛のデータパケットに含めて前記第1のアクセスポイント装置へ転送する第1転送手段と、前記受け入れたデータパケットの少なくとも一部を、前記第2のアクセスポイント装置宛のデータパケットに含めて前記第2のアクセスポイント装置へ転送する第2転送手段と、として機能させることとしたものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、ローミングの処理の間も、端末装置との間で、ローミング元あるいはローミング先のアクセスポイント装置を介してのデータパケットの送受が可能となり、通信切断時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態に係る無線通信システムの構成例を表すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るアクセスポイント装置の制御部の例を表す機能ブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて生成される転送データパケットの構造例を表す説明図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る無線通信システムの動作例を表す流れ図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る無線通信システムのもう一つの動作例を表す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係る無線通信システム1は、
図1に例示するように、ルータ10と、第1アクセスポイント装置20aと、第2アクセスポイント装置20bと、端末装置30とを含んで構成される。
【0024】
ルータ10は、本発明の通信制御装置を実現するもので、インターネット等の通信網(以下広域側ネットワークと呼ぶ)に接続されており、この広域側ネットワークを介して接続された他のルータ装置や、端末等との間でデータ(一般的にはパケット化されているため、以下、データパケットと呼ぶ)を送受する。またこのルータ10は、CPU等のプログラム制御デバイスを含んだ制御部11と、複数のポートを有するスイッチ部12を備え、このスイッチ部12の各ポートには第1,第2…のアクセスポイント装置20a,b…が、それぞれ通信可能に接続されている(以下では説明を簡単にするため、2つの、第1,第2のアクセスポイント装置20a,bが接続されているものとする)。
【0025】
ここでルータ10の制御部11は、予めルータ10にインストールされたプログラムに従って以下の動作を制御する。なお、このプログラムは、コンピュータ可読かつ非一時的な記録媒体に格納されて提供され、このルータ10にインストールされたものであってよい。
【0026】
ルータ10は、このプログラムに従って動作し、端末装置30が送出したデータパケットを、第1のアクセスポイント装置20aや、第2のアクセスポイント装置20bを介して受け入れて、当該データパケットの宛先に対して送出する。またルータ10は、広域側ネットワーク側から端末装置30宛のデータパケットを受け入れると、スイッチ部12を介して、現在端末装置30が通信している第1または第2のアクセスポイント装置20a,bのいずれかに対して当該データパケットを送出する。
【0027】
スイッチ部12は、データパケットの宛先となる端末装置30のMAC(メディア・アクセス・コントロール)アドレスを取得しており、第1,第2のアクセスポイント装置20a,bのうち、当該端末装置30が通信を行っているアクセスポイント装置20が接続されているスイッチ部12のポートを識別する情報と、この端末装置30のMACアドレスとを関連付けてMACアドレステーブルとして管理する。このような動作は一般的なネットワークスイッチの機能と同様であり、広く知られているので、その詳しい動作については説明を省略する。
【0028】
なお、ルータ10は、第1,第2のアクセスポイント装置20a,bのいずれかから、ある端末装置30についてのローミングが完了した旨の通知を受けると、当該通知を行った第1,第2のアクセスポイント装置20a,bのいずれか一方が接続されているスイッチ部12のポートを識別する情報と、当該ローミングが完了した端末装置30のMACアドレスとを関連付けてMACアドレステーブルに記録し、MACアドレステーブルを更新する。
【0029】
これにより、ローミングの完了後は、ローミング先となった第1または第2のアクセスポイント装置20aまたは20bを介して、端末装置30宛のデータパケットを送出可能となる。
【0030】
アクセスポイント装置20(以下、第1,第2のアクセスポイント装置20a,bを区別する必要のないときには、単にアクセスポイント装置20と表記する)は、それぞれ、制御部21と、記憶部22と、通信部23とを含んで構成される。
【0031】
制御部21は、CPUなどのプログラム制御デバイスであり、記憶部22に格納されたプログラムに従って動作する。本実施の形態の一例では、この制御部21は、一般的なアクセスポイント装置と同様に、ルータ10から端末装置30宛のデータパケットを受信し、当該データパケットを、無線にて端末装置30へ送出する。またこの制御部21は、端末装置30が送出したデータパケットを受信し、ルータ10へ送出する。
【0032】
制御部21は、さらに、通信可能に接続されているルータ10に、自己とは異なる他のアクセスポイント装置20が接続されているか否か(自己からブロードキャスト可能なネットワークに他のアクセスポイント装置20が接続されているか否か)を検出しており、接続されている場合にローミングの処理を実行する。この制御部21の動作については後に詳しく述べる。
【0033】
記憶部22は、メモリデバイス等であり、制御部21によって実行されるプログラムを保持する。このプログラムは、コンピュータ可読かつ非一時的な記録媒体に格納されて提供されて、この記憶部22に格納されたものであってよい。
【0034】
通信部23は、互いに異なる少なくとも2つの第1,第2の周波数帯域を用いた無線通信により、端末装置30との間で通信可能に接続される。またこの通信部23は、例えば有線または無線にてルータ10との間で通信可能に接続される。
【0035】
端末装置30は、例えばスマートフォンやPC(パーソナルコンピュータ)等、無線通信機能を有する情報処理装置である。本実施の形態の一例において端末装置30は、アクセスポイント装置20との間で、互いに異なる少なくとも2つの第1,第2の周波数帯域(例えば2.4GHz及び5GHz帯の各周波数帯域)を用いた無線通信により通信可能に接続される。
【0036】
またこの端末装置30は、ローミングを開始するか否かを決定し、ローミングを開始すると決定すると、ローミングの処理を実行する。具体的な例としてこの端末装置30は、通常の状態(ローミング中でないとき)には、いずれか一つのアクセスポイント装置20との間で、互いに異なる少なくとも2つの第1,第2の周波数帯域をそれぞれ用いて無線通信を行っている(いわゆるMulti Link Operation;MLO)。
【0037】
そして端末装置30は、当該MLOにて通信中のアクセスポイント装置20や、通信していないアクセスポイント装置20との間で送受する無線通信の信号強度の情報を得ておき、当該信号強度の情報に基づいて、ローミングの開始をするか否かを決定する。このローミングの開始の条件に関しては、既存のローミングに関する技術(802.11k,v,rなどに定められている技術)におけるものと同様としてよい。
【0038】
一例として端末装置30は、通信中のアクセスポイント装置20との間の無線通信の信号強度が低下し、通信していないアクセスポイント装置20(他のアクセスポイント装置20)との間での無線通信の信号強度が上昇するときに、ローミングを開始することとして、次の処理を行う。
【0039】
すなわち端末装置30は、ローミングの開始を決定すると、通信中のアクセスポイント装置20(ローミング元)とで行っている、複数の周波数帯域を用いた無線通信のうち、一部の周波数帯域の無線通信を中断(リンクを切断)して、他のアクセスポイント装置20(ローミング先)との間で、当該一部の周波数帯域での無線通信を開始(リンクを設定)する。そして端末装置30は、当該ローミング先となった他のアクセスポイント装置20に対してローミングの開始を要求する。
【0040】
端末装置30は、ローミングの開始後、通信中のアクセスポイント装置20との間の無線通信の信号強度がさらに低下し、リンクを設定したローミング先の他のアクセスポイント装置20との間の無線通信の信号強度よりも低くなったなどの所定の条件を満足することとなると、通信中のアクセスポイント装置20との間に設定されているリンクをすべて切断し(つまりすべての周波数帯域での無線通信を切断し)、ローミング先である他のアクセスポイント装置20との間で互いに異なる少なくとも2つの第1,第2の周波数帯域をそれぞれ用いて無線通信を開始する。これにより当該他のアクセスポイント装置20が、通信中のアクセスポイント装置20となってローミングが完了する。
【0041】
次に本実施の形態のアクセスポイント装置20の制御部21の動作例について説明する。この制御部21は、
図2に例示するように、データ通信処理部211と、ローミング処理部212と、転送データパケット生成部213と、データパケット再構成部214とを機能的に含んで構成される。
【0042】
データ通信処理部211は、端末装置30との間で、互いに異なる少なくとも2つの第1,第2の周波数帯域を用いた無線通信にてデータパケットを送受する。
【0043】
具体的にこのデータ通信処理部211は、ローミング処理部212がローミングの処理を行っていない間、ルータ10から端末装置30宛のデータパケットを受信し、当該データパケットを、既に説明したように、少なくとも第1,第2の周波数帯域を用いた無線通信(MLO)にて端末装置30へ送出する。またこの間、データ通信処理部211は、端末装置30が送出したデータパケットを、上記少なくとも第1,第2の周波数帯域を用いた無線通信にて受信し、当該受信したデータパケットをルータ10へ送出する。
【0044】
またこのデータ通信処理部211は、端末装置30からの指示により、上記第1,第2…の各周波数帯域において無線通信のためのリンクを設定し、またこのリンクを切断する。既に述べたように、端末装置30は、ローミングを開始する際に、複数のアクセスポイント装置20との間で、それぞれ互いに異なる周波数帯域に係るリンクを設定してそれぞれとの間で無線通信を行うこととなる。
【0045】
データ通信処理部211は、端末装置30からローミングの開始が要求されると、その旨の情報をローミング処理部212に出力して、ローミングを開始する。
【0046】
アクセスポイント装置20のデータ通信処理部211は、ローミング処理部212がローミングの処理を行っている間は、ルータ10から端末装置30宛のデータパケットを受信すると、当該データパケットの少なくとも一部を、転送データパケット生成部213に出力するとともに、当該データパケットの少なくとも一部を、リンクが設定されている周波数帯域を用いた無線通信にて端末装置30へ送出する。なおデータ通信処理部211は、ルータ10から受信したデータパケットのうち転送データパケット生成部213に出力するデータパケットと無線通信にて端末装置30へ送出するデータパケットとを、互いに重複のないように振り分けてもよいし、一部を重複させて(つまり一部を複製して)振り分けてもよい。さらにデータ通信処理部211は、ルータ10から受信したデータパケットを全て複製し、転送データパケット生成部213へ出力するとともに、端末装置30へ送出することとしてもよい。この場合、全てのデータパケットが重複して転送データパケット生成部213に出力されるとともに、端末装置30へ送出されることとなる。
【0047】
ここで、データ通信処理部211は、ルータ10から受信した端末装置30宛のデータパケットのすべてが、転送データパケット生成部213に出力するデータパケットと、端末装置30へ送出するデータパケットとの少なくとも一方に含まれるようにデータパケットを送出する。また端末装置30が、どの周波数帯域のリンクを、どのアクセスポイント装置20との間で維持するかについては、予めローミング中にローミング先との間でリンクを設定する周波数帯域を定めておいてもよいし、ローミング先との間の信号強度等の所定の条件に基づいて、ローミング先との無線通信において、比較的強度の強い周波数帯域のリンクを設定するなどとしておいてもよい。
【0048】
またこのときデータ通信処理部211は、端末装置30が送出したデータパケットを、上記第1,第2…の周波数帯域のうちリンクが設定されている周波数帯域を用いた無線通信にて受信すると、当該受信したデータパケットをルータ10へ送出する。
【0049】
さらに、データ通信処理部211は、ローミング処理部212がローミングの処理を行っている間、転送データパケット生成部213から、ルータ10に接続されている他のアクセスポイント装置20宛のデータパケット(以下区別のため、転送データパケットと称する)が入力されると、当該データパケットを、ルータ10を介して、上記他のアクセスポイント装置20宛に送出する。
【0050】
さらにこのときデータ通信処理部211は、ルータ10に接続されている他のアクセスポイント装置20から、自己宛(自アクセスポイント装置20宛)のデータパケットを受信すると、当該自己宛のデータパケットが転送データパケットであるものとして、当該転送データパケットを、データパケット再構成部214に出力する。
【0051】
そしてデータパケット再構成部214が、ルータ10を介して広域側ネットワークに接続された他の情報処理装置宛のデータパケットを出力するときには、データ通信処理部211は、このデータパケットをルータ10へ出力する。またデータ通信処理部211は、データパケット再構成部214が、端末装置30宛のデータパケットを出力するときには、このデータパケットを、上記第1,第2の周波数帯域のうち上記いずれか一方の周波数帯域を用いた無線通信にて端末装置30へ送出する。
【0052】
ローミング処理部212は、データ通信処理部211からローミングの開始の要求があった旨の情報を受け入れると、ローミングの処理を開始し、ルータ10を介して互いに接続されているアクセスポイント装置20に対してローミングの開始をブロードキャスト(宛先を指定しない一斉通報)にて通知する。このブロードキャストはUDP(User Datagram Protocol)のブロードキャストを用いてよい。またこの通知には、ローミングの開始要求を行った端末装置30を特定する情報、例えば当該端末装置30のMACアドレスなどを含める。
【0053】
ローミングの開始要求を受けたローミング処理部212は、また、当該ローミングの開始要求を行った端末装置30が、このローミング処理部212を含むアクセスポイント装置20との間で、すべての周波数帯域でリンクを設定したとき(ローミングの終了時)には、ローミングが完了した旨の通知を、ルータ10及びルータ10を介して互いに接続されているアクセスポイント装置20に対してブロードキャストにて通知する。このブロードキャストにもUDPのブロードキャストを用いてよい。
【0054】
転送データパケット生成部213は、データ通信処理部211から入力されたデータパケットを複製し、ローミング先となっているアクセスポイント装置20宛の転送データパケットにカプセル化する。具体的にこの転送データパケット生成部213がデータ通信処理部211から受け入れるデータパケットは、
図3(a)に例示するように、本来の宛先のMACアドレス(A)を含むヘッダ部(H)と、ユーザデータを含むペイロード部(P)とを含んで構成される。ここで本来の宛先は、端末装置30またはルータ10を介して通信可能な広域側ネットワーク上の情報処理装置等である。
【0055】
転送データパケット生成部213は、このデータパケットをペイロード部(P′)に含む新たなデータパケット(
図3(b))を生成し、このペイロード部(P′)に、ローミング先であるアクセスポイント装置20のMACアドレス(A′)を含むヘッダ部(H′)を付して新たに転送データパケットを生成し、この生成した転送データパケットを、データ通信処理部211に出力する。
【0056】
なお、データ通信処理部211から入力されたデータパケットのサイズが、ペイロード部に含めることのできるデータのサイズを超えている場合は、データ通信処理部211から入力されたデータパケットを後に再構成可能に分割し、複数の転送データパケットにカプセル化してもよい。一例として転送データパケット生成部213は、データ通信処理部211から入力されたデータパケットのペイロード部(P)を抽出し、複数のペイロード部P1,P2に分割する。そして転送データパケット生成部213は、各ペイロード部P1,P2に本来の宛先のMACアドレス(A)を含むヘッダ部(H)を付して分割されたデータパケットを構成する。転送データパケット生成部213はこの分割されたデータパケットをそれぞれペイロード部(P1′,P2′)に含み、それぞれにローミング先であるアクセスポイント装置20のMACアドレス(A′)を含むヘッダ部(H′)を付した新たな複数の転送データパケット(この転送データパケットのペイロード部に含めることのできるデータのサイズ以下となるようにペイロード部(P)の分割を行う)を生成し(
図3(c))、これらの生成した転送データパケットをデータ通信処理部211に出力することとしてもよい。
【0057】
データパケット再構成部214は、他のアクセスポイント装置20から受け入れた自己(アクセスポイント装置20自身)宛の転送データパケットからそのペイロード部P′を抽出し、当該ペイロード部P′に含まれている、転送データパケットにカプセル化されていた本来の宛先(例えば端末装置30など)宛のデータパケットを取り出して、データ通信処理部211へ出力する。
【0058】
[動作]
本実施の形態の無線通信システム1の一例は、基本的に上述の構成を備えてなり、次のように動作する。なお、以下の例では、当初は第1のアクセスポイント装置20aと端末装置30との間でMLOによる無線通信が行われており、その後、端末装置30が第2のアクセスポイント装置20bへローミングする場合を例として説明する。
【0059】
この例では
図4に例示するように、当初は、端末装置30が、第1のアクセスポイント装置20aとの間で、複数(以下では説明を簡易にするため、第1,第2の2つの周波数帯域とする)の周波数帯域のそれぞれに第1、第2のリンクL1,L2を設定して無線通信を行っているものとする(S11,S12)。
【0060】
すなわち、このとき第1のアクセスポイント装置20は、ルータ10から端末装置30宛のデータパケットD1,D2…を受信すると、当該データパケットD1,D2…を、第1,第2の周波数帯域のそれぞれに設定された第1、第2のリンクL1,L2を介して端末装置30へ送出する。ここで第1のアクセスポイント装置20は、各データパケットD1,D2…を、第1、第2のリンクL1,L2のそれぞれを介して送出してもよい。この場合、端末装置30は、第1、第2のリンクL1,L2を介して各データパケットを重複して受信することとなる。
【0061】
また別の例では、第1のアクセスポイント装置20aは、ルータ10から受信した端末装置30宛のデータパケットD1,D2…を、順次、第1、第2のリンクL1,L2のいずれかに振り分けて、振り分けたリンクを介して送出してもよい。例えば第1のアクセスポイント装置20aが、奇数番目のデータパケットD1,D3…を第1のリンクL1を介して、偶数番目のデータパケットD2,D4…を第2のリンクL2を介して送出することとすれば、端末装置30は、第1,第2のリンクL1,L2のそれぞれを介して各データパケットを受信することとなる。
【0062】
さらにこのステップS11,S12では、第1のアクセスポイント装置20aは、端末装置30が送出したデータパケットを、第1,第2の周波数帯域のいずれかに対応する第1,第2のリンクL1,L2を介して受信し、当該受信したデータパケットをルータ10へ送出している。
【0063】
その後、端末装置30が第2のアクセスポイント装置20bへのローミングを開始することを決定すると、端末装置30は、例えば第1のアクセスポイント装置20aとの間の第1,第2の周波数帯域のいずれか一方、例えば第1の周波数帯域での第1のリンクL1を切断し(S13)、第2のアクセスポイント装置20bとの間で、各周波数帯域での無線通信経路に対応する複数のリンクIDの発行を要求(ローミングの開始を要求)する。そしてこの端末装置30は、まずは第2のアクセスポイント装置20bとの間で(ステップS13で切断したリンクに対応する)第1の周波数帯域に対応する第1のリンクL1′を設定する(S14)。この処理は認証処理を含むものであるが、広く知られたものであるので、詳細な説明は省略する。
【0064】
このステップS13からS14の間、端末装置30は、第1のアクセスポイント装置20aとの間で、第2の周波数帯域に係る第2のリンクL2での無線通信を継続している。
【0065】
リンクの設定を受けた第2のアクセスポイント装置20bは、ルータ10を介して互いに接続されている第1のアクセスポイント装置20aに対してローミングの開始を通知する(S15)。この通知には、第2のアクセスポイント装置20bのMACアドレスと、ローミングを要求した端末装置30のMACアドレスとを含む。
【0066】
第1のアクセスポイント装置20aは、この通知を受けて、少なくとも一部のデータパケットを第2のアクセスポイント装置20bへ転送する処理を開始する。また第2のアクセスポイント装置20bは、端末装置30から受信したデータパケットを、第1のアクセスポイント装置20aへ転送する処理を開始する。
【0067】
すなわち第1のアクセスポイント装置20aは、ルータ10から受信した端末装置30宛のデータパケットの少なくとも一部、例えばもともと切断された第1のリンクL1を介して送出することとしていたデータパケットを、第2のアクセスポイント装置20b宛のデータパケットにカプセル化して、転送データパケットを生成し、第2のアクセスポイント装置20b宛に送出する(S16)。
【0068】
この間第1のアクセスポイント装置20aは、ルータ10から受信した端末装置30宛のデータパケットのうち、少なくとも転送データパケットにカプセル化していないデータパケットを含む、ルータ10から受信したデータパケットの少なくとも一部を、第2のリンクL2を介して端末装置30へ送出する(S17)。
【0069】
一方、第2のアクセスポイント装置20bは、第1のアクセスポイント装置20aから受信した転送データパケットのペイロード部を抽出し、抽出したデータからもとのデータパケット(カプセル化したデータパケット)を再構成し、端末装置30との間に設定された第1のリンクL1′を介して端末装置30へ送出する(S18)。
【0070】
この間、端末装置30から、広域側ネットワーク上の情報処理装置宛のデータパケットは、第1のアクセスポイント装置20aとの間に設定された第2のリンクL2または、第2のアクセスポイント装置20bとの間に設定された第1のリンクL1′のいずれかを介して送出される。このデータパケットを第1のアクセスポイント装置20aが受信したときには、第1のアクセスポイント装置20aは、当該データパケットをルータ10へ送出する。
【0071】
一方、この端末装置30から、広域側ネットワーク上の情報処理装置宛のデータパケットを第1のリンクL1′を介して受信した第2のアクセスポイント装置20bは、この受信したデータパケットを、第1のアクセスポイント装置20a宛のデータパケットにカプセル化して転送データパケットを生成する。そして第2のアクセスポイント装置20bは、当該生成した転送データパケットを第1のアクセスポイント装置20aに対して送出する。
【0072】
第1のアクセスポイント装置20aは、第2のアクセスポイント装置20bから受信した転送データパケットのペイロード部を抽出し、抽出したデータからもとのデータパケット(カプセル化したデータパケット)を再構成し、ルータ10へ送出する。
【0073】
本実施の形態のこの例によると、このローミングの処理の間、ルータ10のスイッチ部12は、端末装置30宛のデータパケットを送出するべきポートを切り替える必要がなく、当初から継続して第1のアクセスポイント装置20aが接続されたポートを介して第1のアクセスポイント装置20aに出力すればよく、また端末装置30から送出されたデータパケットは、必ず第1のアクセスポイント装置20aから受信されることとなっている。このためルータ10は、スイッチ部20におけるMACアドレステーブルを更新することなく、第1,第2のアクセスポイント装置20a,bの双方を介した端末装置30との通信を行うことが可能となる。
【0074】
その後、端末装置30は、第2アクセスポイント装置20bとの間で、第1,第2の周波数帯域のいずれか他方、ここでの例では第2の周波数帯域に係る第2のリンクL2′での通信を開始することとし、第1のアクセスポイント装置20aとの間の第2の周波数帯域での第2のリンクL2を切断し(S19)、第2のアクセスポイント装置20bとの間で第2の周波数帯域に係る第2のリンクL2′を設定して通信可能とする(S20)。
【0075】
これより、第2のアクセスポイント装置20bがローミングが完了した旨の通知を、ルータ10及びルータ10を介して互いに接続されているアクセスポイント装置20に対してUDPブロードキャストにて通知する(S21)。
【0076】
そしてこのときルータ10が、第2のアクセスポイント装置20bが接続されているスイッチ部12のポートを識別する情報と、当該ローミングが完了した端末装置30のMACアドレスとを関連付けてMACアドレステーブルに記録し、MACアドレステーブルを更新する。
【0077】
従って、以降は、端末装置30は、第2のアクセスポイント装置20bとの間で、第1,第2の周波数帯域のそれぞれに第1、第2のリンクL1′,L2′を設定して無線通信を行うこととなる(S22,S23)。
【0078】
すなわち、このとき第2のアクセスポイント装置20bは、ルータ10から端末装置30宛のデータパケットを受信すると、当該データパケットを、第1,第2の周波数帯域のそれぞれに設定された第1、第2のリンクL1′,L2′を介して端末装置30へ送出する。
【0079】
この動作は、ステップS11,S12における第1のアクセスポイント装置20aでの動作と同様のものであるので、ここでの繰り返しての説明を省略する。
【0080】
[変形例]
ここまでの説明では、端末装置30のローミングの間、通信中の(ローミング元の)アクセスポイント装置20が端末装置30宛のデータパケットを、他の(ローミング先の)アクセスポイント装置20へ転送することとしていた。しかしながら本実施の形態はこの例に限られず、ルータ10がデータパケットの転送処理を行ってもよい。
【0081】
この例でも、
図5に例示するように、当初は、端末装置30が、第1のアクセスポイント装置20aとの間で、第1,第2の2つの周波数帯域のそれぞれに第1、第2のリンクL1,L2を設定して無線通信を行っている(S11,S12)。
【0082】
そして端末装置30が第2のアクセスポイント装置20bへのローミングを開始することを決定すると、端末装置30は、第1のアクセスポイント装置20aとの間の第1,第2の周波数帯域のいずれか一方に係るリンク、例えば第1のアクセスポイント装置20aとの間の第1の周波数帯域での第1のリンクL1を切断し(S13)、第2のアクセスポイント装置20bとの間で、各周波数帯域での無線通信経路に対応する複数のリンクIDの発行を要求(ローミングの開始を要求)し、まずは第2のアクセスポイント装置20bとの間で(ステップS13で切断したリンクに対応する)第1の周波数帯域に対応する第1のリンクL1′を設定する(S14)。
【0083】
この例でも、これらステップS13からS14の間、端末装置30は、第1のアクセスポイント装置20aとの間で、第2の周波数帯域に係る第2のリンクL2での無線通信を継続している。
【0084】
そしてこの例では、リンクの設定を受けた第2のアクセスポイント装置20bは、ルータ10に対してローミングの開始をブロードキャストにて通知する(S31)。この通知には、第2のアクセスポイント装置20bのMACアドレスと、ローミングを要求した端末装置30のMACアドレスとを含む。
【0085】
本実施の形態のこの例では、ルータ10の制御部11が、先に説明した例のアクセスポイント装置20における転送データパケット生成部213と、データパケット再構成部214としての機能を実現する。
【0086】
すなわちこの例のルータ10は、ローミングの開始が通知されると、端末装置30宛のデータパケットの少なくとも一部を、第1のアクセスポイント装置20a宛の転送データパケットにカプセル化する。この処理は、転送データパケット生成部213の動作として説明したものと同様であるので、繰り返しての説明は省略する。
【0087】
またルータ10は、この処理において端末装置30宛のデータパケットの少なくとも一部であって、上記第1のアクセスポイント装置20a宛の転送データパケットにカプセル化していないデータパケットを含むデータパケットを、第2のアクセスポイント装置20b宛の転送データパケットにカプセル化する。
【0088】
ルータ10は、第1のアクセスポイント装置20a宛の転送データパケットを第1のアクセスポイント装置20aに送出し(S32)、また第2のアクセスポイント装置20b宛の転送データパケットを第2のアクセスポイント装置20bに送出する(S33)。これらの処理を行うルータ10の制御部11が本発明の一態様に係る第1転送手段及び第2転送手段を実現する。
【0089】
この例でも、ルータ10は、端末装置30宛のデータパケットD1,D2…を、第1,第2のアクセスポイント装置20a,b宛の転送データパケットにそれぞれカプセル化して送出してもよい。この例では、端末装置30は、第1のアクセスポイント装置20aの第2のリンクL2と、第2のアクセスポイント装置20bの第1のリンクL1′とを介して各データパケットを重複して受信することとなる。
【0090】
またルータ10は、端末装置30宛のデータパケットD1,D2…を、順次、第1,第2のアクセスポイント装置20a,b宛のいずれかに振り分けて、振り分けたアクセスポイント装置20宛の転送データパケットにカプセル化して送出してもよい。この場合、第2のアクセスポイント装置20b宛の転送データパケットには、端末装置30宛のデータパケットのうち、第1のアクセスポイント装置20a宛の転送データパケットに含めていないデータパケットが含まれることとなる。具体的な例としてルータ10は、奇数番目のデータパケットD1,D3…を第1のアクセスポイント装置20a宛の転送データパケットにカプセル化して送出し、偶数番目のデータパケットD2,D4…を第2のアクセスポイント装置20b宛の転送データパケットにカプセル化して送出してもよい。この例では、端末装置30は、第1,第2のアクセスポイント装置20a,bのそれぞれを介して各データパケットを受信することとなる。
【0091】
そして第1のアクセスポイント装置20aは、ルータ10から受信した転送データパケットのペイロード部を抽出し、抽出したデータからもとのデータパケット(カプセル化したデータパケット)を再構成し、端末装置30との間に設定された第2のリンクL2を介して端末装置30へ送出する(S34)。
【0092】
また第2のアクセスポイント装置20bは、ルータ10から受信した転送データパケットのペイロード部を抽出し、抽出したデータからもとのデータパケット(カプセル化したデータパケット)を再構成し、端末装置30との間に設定された第1のリンクL1′を介して端末装置30へ送出する(S35)。
【0093】
この間、端末装置30から、広域側ネットワーク上の情報処理装置宛のデータパケットは、第1のアクセスポイント装置20aとの間に設定された第2のリンクL2または、第2のアクセスポイント装置20bとの間に設定された第1のリンクL1′のいずれかを介して送出される。そして第1のアクセスポイント装置20aは、端末装置30から受信したデータパケットをルータ10宛の転送データパケットにカプセル化してルータ10宛に送出する。また第2のアクセスポイント装置20bは、端末装置30から受信したデータパケットをルータ10宛の転送データパケットにカプセル化してルータ10宛に送出する。
【0094】
ルータ10では、自己宛の転送データパケットを受信すると、そのペイロード部を抽出し、抽出したデータからもとのデータパケット(カプセル化したデータパケット)を再構成し、広域側ネットワークを介して送出する。
【0095】
本実施の形態のこの例でも、このローミングの処理の間、ルータ10側のスイッチ部12では、端末装置30宛のデータパケットを送出するべきポートを切り替える必要なく、第1,第2のアクセスポイント装置20a,bの双方を介した端末装置30との通信を行うことが可能となる。
【0096】
その後、端末装置30が、第1,第2の周波数帯域のいずれか他方に係るリンク(ここでの例では第2の周波数帯域の第2のリンク)である、第2アクセスポイント装置20bとの間で第2の周波数帯域に係る第2のリンクL2′での通信を開始することとし、第1のアクセスポイント装置20aとの間の第2の周波数帯域での第2のリンクL2を切断し(S19)、第2のアクセスポイント装置20bとの間で第2の周波数帯域に係る第2のリンクL2′を設定して通信可能とする(S20)。
【0097】
これより、第2のアクセスポイント装置20bがローミングが完了した旨の通知を、ルータ10及びルータ10を介して互いに接続されているアクセスポイント装置20に対してUDPブロードキャストにて通知する(S36)。
【0098】
そしてルータ10は、第2のアクセスポイント装置20bが接続されているスイッチ部12のポートを識別する情報と、当該ローミングが完了した端末装置30のMACアドレスとを関連付けてMACアドレステーブルに記録し、MACアドレステーブルを更新する。
【0099】
従って、以降は、ルータ10は端末装置30宛のデータパケットを、専ら第2のアクセスポイント装置20bに対して通常通りに(転送データパケットとしてカプセル化することなく)送出することとなり、端末装置30は、第2のアクセスポイント装置20bとの間で、第1,第2の周波数帯域のそれぞれに第1、第2のリンクL1′,L2′を設定して無線通信を行うこととなる(S22,S23)。
【0100】
[実施の形態の効果]
本実施の形態によると、再認証等、ローミングの処理の間も、ローミング元あるいはローミング先のアクセスポイント装置を介してのデータパケットの送受が可能となっており、通信切断時間を短縮できる。また、この間、ルータ側のスイッチデバイスにおいて、MACアドレステーブル等を頻繁に更新する必要なく、複数のアクセスポイント装置を介した、一つの端末装置宛の通信を可能としている。
【符号の説明】
【0101】
1 無線通信システム、10 ルータ、11 制御部、12 スイッチ部、20 アクセスポイント装置、21 制御部、22 記憶部、23 通信部、30 端末装置、211 データ通信処理部、212 ローミング処理部、213 転送データパケット生成部、214 データパケット再構成部。