(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152351
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】相続シミュレーションプログラム及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20241018BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066496
(22)【出願日】2023-04-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)ウェブサイト「https://synergy-plus.group/sips/#feature」、令和4年8月25日 (2)月刊実務経営ニュース2022年9月号、第48,49頁
(71)【出願人】
【識別番号】516133250
【氏名又は名称】株式会社シナジープラス
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀島 淳一
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】所有者の資産を複数人が分割して相続する際に、シミュレーション結果に対して相続人各人の満足感を向上させる。
【解決手段】プロセッサ101に、被相続人の保有資産情報、各相続人の現在または生涯の収支に関する収支情報、および分配条件の入力を受け付ける入力ステップと、保有資産情報、収支情報、および分配条件に基づいて、各相続人の生涯収支の予測推移を計算する計算ステップと、分配条件に対する修正を受け付ける修正入力ステップと、該修正された分配条件に基づいて、各相続人の生涯収支の予測推移を再計算する再計算ステップと、計算ステップの計算結果と再計算ステップの計算結果とを関連付けて記憶する記憶ステップと、再計算ステップの計算結果を、計算ステップの計算結果と対比することができるように表示する表示ステップとを実行させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
被相続人の保有資産情報、各相続人の現在または生涯の収支に関する収支情報、および分配条件の入力を受け付ける入力ステップと、
前記保有資産情報、前記収支情報、および前記分配条件に基づいて、各相続人の生涯収支の予測推移を計算する計算ステップと、
前記分配条件に対する修正を受け付ける修正入力ステップと、
該修正された分配条件に基づいて、各相続人の生涯収支の予測推移を再計算する再計算ステップと、
前記計算ステップの計算結果と前記再計算ステップの計算結果とを関連付けて記憶する記憶ステップと、
前記再計算ステップの計算結果を、前記計算ステップの計算結果と対比することができるように表示する表示ステップと
を実行させるためのプログラム。
【請求項2】
前記計算または前記再計算の結果に基づいて、前記分配条件の修正に関するレコメンド情報を表示するレコメンドステップをコンピュータに実行させる、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記レコメンドステップにおいて、前記レコメンド情報に優先順位を付ける、
請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記計算または前記再計算の結果に基づいて、前記分配条件を修正し、該修正された分配条件を表示する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
1以上のプロセッサを備え、
当該1以上のプロセッサは、
被相続人の保有資産情報、各相続人の現在または生涯の収支に関する収支情報、および分配条件の入力を受け付ける入力ステップと、
前記保有資産情報、前記収支情報、および前記分配条件に基づいて、各相続人の生涯収支の予測推移を計算する計算ステップと、
前記分配条件に対する修正を受け付ける修正入力ステップと、
該修正された分配条件に基づいて、各相続人の生涯収支の予測推移を再計算する再計算ステップと、
前記計算ステップの計算結果と前記再計算ステップの計算結果とを関連付けて記憶する記憶ステップと、
前記再計算ステップの計算結果を、前記計算ステップの計算結果と対比することができるように表示する表示ステップと
を実行する、情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、資産相続のシミュレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
所有者が有する各資産に関する情報に基づいて、相続に関するシミュレーションを実行するシステムが提供されている。例えば特許文献1は、所有者が有する各資産に関する情報を収集し、各資産についての流動性または収益性を評価し、各資産より発生する相続税に対し、各資産の流動性または収益性に基づいて納税の可否を検討し、資産に関して、節税対策を行った場合と行わなかった場合それぞれについて、所有者の損益、収支、推定相続税額を算出する資産管理システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のシステムを使っても、所有者の資産を複数人が分割して相続する際に、シミュレーション結果に対して相続人全員の満足感を得ることは難しい。一般的に、相続や財産に対する考え方、生活環境、背景事情などが各人によって異なるからである。
【0005】
この発明は、所有者の資産を複数人が分割して相続する際に、シミュレーション結果に対する相続人各人の満足感の向上に寄与する技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、コンピュータに、被相続人の保有資産情報、各相続人の現在または生涯の収支に関する収支情報、および分配条件の入力を受け付ける入力ステップと、前記保有資産情報、前記収支情報、および前記分配条件に基づいて、各相続人の生涯収支の予測推移を計算する計算ステップと、前記分配条件に対する修正を受け付ける修正入力ステップと、該修正された分配条件に基づいて、各相続人の生涯収支の予測推移を再計算する再計算ステップと、前記計算ステップの計算結果と前記再計算ステップの計算結果とを関連付けて記憶する記憶ステップと、前記再計算ステップの計算結果を、前記計算ステップの計算結果と対比することができるように表示する表示ステップとを実行させるためのプログラムを提供する。
【0007】
好ましい態様において、プログラムは、前記計算または前記再計算の結果に基づいて、前記分配条件の修正に関するレコメンド情報を表示するレコメンドステップをコンピュータに実行させる。この場合、前記レコメンドステップでは、前記レコメンド情報に優先順位を付けてもよい。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、計算ステップと再計算ステップとが繰り返され、最終結果に至るまでの過程が提示されるので、シミュレーション結果(最終的に提示される相続方法についての提案)に対する相続人の納得感が得られやすい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の一実施形態である相続シミュレーション装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】同実施形態の動作を示すフローチャートである。
【
図3】同実施形態における表示部の表示例を示す図である。
【
図4】同実施形態における表示部の表示例を示す図である。
【
図5】同実施形態における表示部の表示例を示す図である。
【
図6】同実施形態における表示部の表示例を示す図である。
【
図7】同実施形態における表示部の表示例を示す図である。
【
図8】同実施形態における表示部の表示例を示す図である。
【
図9】同実施形態における表示部の表示例を示す図である。
【
図10】同実施形態における表示部の表示例を示す図である。
【
図11】同実施形態の他の表示形式を示す図である。
【
図12】同実施形態の他の表示形式を示す図である。
【
図13】同実施形態の他の表示形式を示す図である。
【
図14】同実施形態の他の表示形式を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、この発明の一実施形態である相続シミュレーション装置100の構成を示すブロック図である。この相続シミュレーション装置100は、例えばパーソナルコンピュータであり、制御中枢としてのプロセッサ101と、記憶部102と、表示部103と、操作部104と、通信部105とを有する。
【0012】
記憶部102は、プロセッサによって実行されるコンピュータプログラムやコンピュータプログラムの実行に際して読み出される各種データを記憶したメモリであって、例えばデータRAM等の揮発性メモリと、HDD等の不揮発性記憶部とを有する。不揮発性記憶部には本実施形態による相続シミュレーションを実行するための相続シミュレーションプログラム等が記憶されている。プロセッサ101はこの相続シミュレーションプログラムを実行することにより相続シミュレーション装置として機能する。揮発性記憶部は、プロセッサ101によってワークエリアとして使用される。表示部103は、LCDディスプレイ等により構成されている。操作部104は、キーボード、マウス等の各種の操作子を含む。通信部105は、他の装置と通信を行うための手段である。
【0013】
本実施形態において、記憶部102内の相続シミュレーションプログラムは、プロセッサ101に、被相続人の保有資産情報、各相続人の現在または生涯の収支に関する収支情報、および分配条件の入力を受け付ける入力ステップと、保有資産情報、収支情報、および分配条件に基づいて、各相続人の生涯収支の予測推移を計算する計算ステップと、分配条件に対する修正を受け付ける修正入力ステップと、該修正された分配条件に基づいて、各相続人の生涯収支の予測推移を再計算する再計算ステップと、計算ステップの計算結果と再計算ステップの計算結果とを関連付けて記憶する記憶ステップと、再計算ステップの計算結果を、計算ステップの計算結果と対比することができるように表示する表示ステップとを実行させる相続シミュレーションプログラムである。この相続シミュレーションプログラムは、この通信部105を介してインターネット上のサーバからダウンロードされたものであってもよい。
【0014】
図2は、プロセッサ101が記憶部102内の相続シミュレーションプログラムに従って実行する相続シミュレーション処理のフローチャートである。
【0015】
本実施形態では、操作部104の操作により様々な指示がプロセッサ101に入力される。1つは新規な条件での相続シミュレーションの実施の指示(以下、新規入力という)である。もう1つは過去実施された相続シミュレーションの条件を変更して行う相続シミュレーションの実施の指示(以下、条件変更という)である。さらにもう1つは相続シミュレーションプログラムの終了の指示である。
【0016】
さらにもう1つは表示切換の指示である。この表示切換の指示には、表示対象の切換指示と、表示形式の切換指示がある。前者の表示対象の切換指示は、過去実施された相続シミュレーションの条件および結果を示すファイルのうち表示対象とするものに関する切換指示である。後者の表示形式の切換指示は、表示する項目、数値表示またはグラフ表示等といった形式の切換指示である。
【0017】
図3~
図10は、相続シミュレーションの実行時における表示部103の表示例を示している。例えば
図9には、表示部103に表示された「金城太郎さん」、「配偶者LP改善」、「納税資金対策」、および「子供世帯LP」というタブが示されている。これらのタブは、過去実施された相続シミュレーションの条件および結果を示すファイルのファイル名に対応している。ユーザは、これらのタブのうち所望のファイルに対応したタブを指示することにより、表示対象のファイルを切り換えることができる。
【0018】
図9には、「標準表示形式」というタブの他、「特別表示形式1」、「特別表示形式2」等のタブが示されている。
図3~
図10には、標準表示形式での表示例が示されている。ユーザは、「特別表示形式1」等のタブを指示することにより、表示形式をその「特別表示形式1」等に切り換えることができる。
【0019】
プロセッサ101は、ステップS1において、操作部104の操作により入力された指示がいずれの指示であるかを判断する。
【0020】
新規入力が指示された場合、プロセッサ101は、被相続人の保有資産財産の情報、各相続人のライプフラン情報、および第1の分配条件を、操作部104を介してユーザから受け付ける入力ステップを実行する(ステップS11)。ここで、ライフプラン情報とは、年収推移の予測や支出推移の予測である。また、ユーザとは、相続シミュレーション装置100を操作している者であり、具体的には被相続人、相続人、税理士・司法書士・相続支援サービス業者等の第三者である。
【0021】
次にプロセッサ101は、ステップS11において取得した被相続人の保有資産財産の情報、各相続人のライプフラン情報、および第1の分配条件に基づいて、相続人各人について相続後から将来に渡る資産(の変動)について、所定のアルゴリズムに従って、シミュレーションを実行する(ステップS12;計算ステップ)。用いるアルゴリズム、アルゴリズムに入力するパラメータやデータは、任意のものを用いることができる。アルゴリズム、アルゴリズムに入力するパラメータやデータは、すべて記憶部102に記憶されていてもよいし、必要に応じて一部の情報や計算結果を外部のデータベースや演算装置(サーバ)から取得してもよい。
【0022】
次にプロセッサ101は、ユーザからファイル名の指定を受け付け、ステップS12において実施した相続シミュレーションの条件および結果を示す情報に、指定されたファイル名を付け、記憶部102に保存する(ステップS13)。
【0023】
次にプロセッサ101は、ステップS13において保存した相続シミュレーションの条件および結果を表示部103に表示する(ステップS14)。そして、処理をステップS1に戻す。
【0024】
操作部104の操作により条件変更が指示された場合、プロセッサ101は、修正入力を実行する(ステップS21)。この修正入力において、プロセッサ101は、記憶部102に記憶された相続シミュレーションに関するファイルのうちユーザによって指定されたファイル名のファイルの内容を表示部103に表示する。このファイルの内容には、ユーザが検証すべき第1の結果が含まれている。ユーザは、この第1の結果を検証することにより、第1の分配条件を第2の分配条件に補正し、操作部104により入力する。プロセッサ101は、この第2の分配条件を受付ける。
【0025】
次にプロセッサ101は、当該第2の分配条件を用いて、シミュレーションを再実行する(ステップS22;再計算ステップ)。
【0026】
次にプロセッサ101は、第2の分配条件と、その結果(第2の結果)を示す情報を含むファイルにユーザが指定したファイル名を付け、第1の結果(および第1の分配条件)を示す情報を含むファイルに紐づけて記憶部102に保存する(ステップS23;記憶ステップ)。
【0027】
次にプロセッサ101は、ステップS23において保存したファイルの内容を表示部103に表示する(ステップS24;表示ステップ)。この表示ステップであるステップS24において、プロセッサ101は、再計算ステップの計算結果を、計算ステップの計算結果と対比することができるように表示する。好ましい態様において、プロセッサ101は、計算ステップの結果を示す画面に遷移させるためのタブを、再計算ステップの結果を示す画面に表示する。他の好ましい態様において、プロセッサ101は、計算ステップの結果を示す画面と、計算ステップの結果を示す画面とを一つの画面内に並べて表示する。ステップS24の処理を終えると、プロセッサ101は、処理をステップS1に戻す。
【0028】
本実施形態では、一連のシミュレーションの結果(履歴)を紐づけて記憶する(ステップS23)。操作部104の操作により、そのような一連のシミュレーションのうちの任意の1つのシミュレーションのファイル名が指定された場合、プロセッサ101は、ユーザによって指定されたファイル名のファイルの内容を表示部103に表示する(ステップS31)。そして、プロセッサ101は、処理をステップS1に戻す。
【0029】
本実施形態において、ユーザは、満足できる結果が得られるまで、ステップS21~S24の処理を繰り返すことができる。そして、満足できる結果が得られ、ユーザが終了の指示を入力すると、プロセッサ101は、
図2に示す処理を終了させる。
【0030】
本実施形態によれば、従来のように、単に最終的なシミュレーション結果を示す場合に比べて、試行錯誤の過程が表示され、必要に応じて、各過程を確認できるので、相続人全員の満足感を得やすい。
【0031】
さらに詳述すると、相続に関しては幾つかの基準があり、いずれの基準に重きを置くかは各人各様である。従って、相続人全員の満足感を得るためには、それらの全ての基準を考慮する必要がある。
【0032】
例えばこの基準には次のようなものがある。
a.被相続人の願望(相続時における資産の額面の相続人間の公平性を重視したい、配偶者には不動産資産を多めに残したい等)
b.相続税を支払えない人(赤字)が出ないようにする。
c.相続人全員の将来キャッシュフローを最大化する。
d.法定割合の通り。
【0033】
本実施形態によれば、各相続人が、各々の基準に従ってシミュレーションの条件および結果を検討することが可能なので、相続人全員の満足感を得やすい。
【0034】
次に
図3~
図10を参照し、本実施形態の動作例を説明する。この動作例において、相談者は、妻と3人の子がいる男性である。
【0035】
まず、被相続人からの要望である第1基準に従い、不動産は長男と次男に相続させるという分配条件を設定し、シミュレーションを実施した結果、配偶者と三男の平均収支と生涯収支が赤字になるという第1の結果が得られた。ここで、
図3は分配条件を示す資産項目の一覧であり、ユーザが自由に編集することができる項目である。
図4はシミュレーション結果である。この例では、シミュレーション結果として、財産評価額と年間平均収支、生涯収支が示されている。
図3では、「金城太郎さん」というタブが表示部103に表示されている。このタブは、表示部103に表示されている相続シミュレーションの条件および結果を示すファイルのファイル名を示している。
【0036】
ユーザ(例えば本件システムを利用するライフプランナー)は、この第1の結果を検討したところ、まずは配偶者のライフプラン(LP)の改善が必要と判断し、自宅と軍用地を妻に相続させるという分配配準(第2の分配条件)を策定して入力してシミュレーションを再実行した(
図5参照)。その結果、妻のライフプランは改善されたものの、次男と三男の相続後の平均年間収支が赤字となるという結果(第2の結果)が得られた(
図6参照)。
図5では、「配偶者LP改善」というタブが表示部103に表示されている。このタブは、表示部103に表示されている相続シミュレーションの条件および結果を示すファイルのファイル名を示している。また、
図5では、「配偶者LP改善」というタブの左に、「金城太郎さん」というタブが表示されている。このタブは、「配偶者LP改善」というタブに対応したファイルに紐づけられた相続シミュレーションのファイルのファイル名を示している。ユーザは、このタブを指示することにより、「金城太郎さん」というファイル名のファイルを記憶部102から読み出して表示部103に表示させることができる。
【0037】
ユーザは、納税資金の確保に問題がある可能性を考え、一部の土地を売却して現金化するという条件(第3の分配条件)を策定して、再度シミュレーションを実行したところ(
図7参照)、残念ながら、次男と三男の相続後の平均年間収支が赤字という結果(第3の結果)は改善しなかった(
図8参照)。
【0038】
そこで、ユーザは、不動産資産の収益性が問題である可能性を考え、被相続人が保有する土地に賃貸マンションを建ててそこからの収益をえるというモデル(第4の分配条件)を策定し、シミュレーションを再度実行し(
図9参照)、その結果、全員の相続後平均年間収入が黒字になるという結果(第4の結果)を得た(
図10参照)。
ユーザはこの結果に満足してので、処理を終了した。
【0039】
このように本実施形態によれば、各人の基準に従ってシミュレーションの条件および結果を検討することが可能なので、仮に他のシステムを用いて得られた最終的なシミュレーション結果と同一の結果だったとしても、検討内容を振り返ることができるので、相続人の満足感・納得感が向上すると期待される。この結果、相続人の間の人間関係の悪化その他相続時のトラブルの発生の低減・抑制に寄与する。換言すると、揉めない相続が実現できる。
【0040】
次に本実施形態における特別表示形式について説明する。ユーザが特別表示形式1を指示すると、プロセッサ101は、その時点で表示対象となっている相続シミュレーションのファイルに基づいて、
図11に例示する画面を表示部103に表示する。
【0041】
図11に示す画面の左側には、収益性を横軸、流動性を縦軸とする2次元平面内に相続対象となる各財産のポジションが円によって示される。
図11の画面の右側には、各財産の評価額のランキングが示されている。この
図11に示された情報は、ユーザが分配条件の修正の要否や具体的内容を検討するに際して参考となりうるレコメンド情報である。ユーザは、このレコメンド情報に基づいて、各財産を相続するのが得策か否かを判断することができる。また、評価額ランキングには、各財産の評価額の順位が示されている。この順位は、各財産を相続する優先順位として利用可能である。
【0042】
ユーザが特別表示形式2を指示すると、プロセッサ101は、その時点で表示対象となっている相続シミュレーションのファイルに基づいて、
図12に示す画面を表示部103に表示する。これは各相続人の支出収入を平均年間収支グラフとしてあらわしたものである。
【0043】
ユーザが特別表示形式3を指示すると、プロセッサ101は、その時点で表示対象となっている相続シミュレーションのファイルに基づいて、
図13に示す画面を表示部103に表示する。これはシミュレーション結果を相続時の資産の評価額としてあらわしたものである。
【0044】
ユーザが特別表示形式4を指示すると、プロセッサ101は、その時点で表示対象となっている相続シミュレーションのファイルに基づいて、
図14に示す画面を表示部103に表示する。これは資産の内訳をあらわしたものである。
【0045】
このように本実施形態では、シミュレーション結果を各種の表示形式で表示することができるので、ユーザが分配条件の修正を検討する作業が容易になるという利点がある。
【0046】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
【0047】
(1)上述した各種の基準に対応付けて、分配条件の雛形を予め記憶しておき、ユーザが選択した基準に対応した分配条件の雛形を設定して相続シミュレーションを実行してもよい。この場合、設定された分配条件をユーザが修正できるようにしてもよい。
【0048】
(2)上記実施形態では、ユーザは必要に応じてレコメンド情報(そのシミュレーション結果)参照することができるが、修正の内容(どのような項目やパラメータをどのような値に修正するのか)を決定するのは、あくまでユーザであった。しかし、プロセッサ101が、シミュレーション結果に対して、自動的に、1以上の修正方法や修正の方向性(修正項目や修正値)候補を提示し、ユーザが一の修正方針を指定すると、該選択された修正方針に従って再計算を行ってよい。いわば修正作業を自動的に行う。
こうすれば、簿記、会計、税金、その他相続に関係する知識が乏しいユーザであっても、簡単に妥当なシミュレーションの再計算の結果を得ることができる。自動的に修正内容を決定するのは、予め所定のアルゴリズムや基準(例えば相続時点での見かけ情報の資産の公平性を重視するのか、資産の流動性を重視するのか、将来の資産の増加量を重視するのかなど)を予め決定しあるいはユーザによって指定しておき、この基準に従って算出することができる。あるいは、入力あるいは修正された内容とそのシミュレーション結果の妥当性とを学習させた学習モデルを構築し、この学習モデルを用いて、提案すべき修正内容を決定してもよい。
【0049】
(3)上記実施形態の相続シミュレーションプログラムは、サーバ-クライアントシステムのサーバに実行させてもよい。すなわち、サーバは、複数のクライアントからの指示に従って、上記実施形態の相続シミュレーションプログラムを実行し、その結果を示す表示情報を各クライアントに提供するのである。
要するに、本発明に係る情報処理システムにおいて、被相続人の保有資産情報、各相続人の現在または生涯の収支に関する収支情報、および分配条件の入力を受け付ける入力ステップと、前記保有資産情報、前記収支情報、および前記分配条件に基づいて、各相続人の生涯収支の予測推移を計算する計算ステップと、前記分配条件に対する修正を受け付ける修正入力ステップと、該修正された分配条件に基づいて、各相続人の生涯収支の予測推移を再計算する再計算ステップと、前記計算ステップの計算結果と前記再計算ステップの計算結果とを関連付けて記憶する記憶ステップと、前記再計算ステップの計算結果を、前記計算ステップの計算結果と対比することができるように表示する表示ステップとが1以上のノードにおいて実行されればよい。
【符号の説明】
【0050】
101……プロセッサ、102……記憶部、103……表示部、104……操作部、105……通信部,100……相続シミュレーション装置。