(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152354
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】燃料電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04858 20160101AFI20241018BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20241018BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20241018BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20241018BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/00 A
H01M8/04313
H01M8/04537
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066499
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓也
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC05
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA58
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127DB99
5H127DC44
5H127FF04
(57)【要約】
【課題】燃料電池モジュール全体の残寿命が比較的短くなることを抑制する。
【解決手段】燃料電池スタックFCSと、燃料電池スタックFCSから供給される電力を蓄電する蓄電装置Bと、燃料電池スタックFCSの残寿命及び蓄電装置Bの残寿命に基づき、所定の充電範囲を変更する変更部11と、所定の充電範囲内を変動する蓄電装置Bの充電率SOCに応じて燃料電池スタックFCSの発電電力を制御する制御部11とを備えて燃料電池モジュールFCMを構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックから供給される電力を蓄電する蓄電装置と、
前記燃料電池スタックの残寿命及び前記蓄電装置の残寿命に基づき、所定の充電範囲を変更する変更部と、
前記所定の充電範囲内を変動する前記蓄電装置の充電率に応じて前記燃料電池スタックの発電電力を制御する制御部と、
を備える燃料電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池モジュールであって、
前記変更部は、
前記燃料電池スタックの残寿命と前記蓄電装置の残寿命とが互いに同じ場合、前記所定の充電範囲を第1充電範囲に変更し、
前記燃料電池スタックの残寿命が前記蓄電装置の残寿命より長い場合、前記所定の充電範囲を前記第1充電範囲より狭い第2充電範囲に変更し、
前記蓄電装置の残寿命が前記燃料電池スタックの残寿命より長い場合、前記所定の充電範囲を前記第1充電範囲より広い第3充電範囲に変更する
燃料電池モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池モジュールであって、
前記変更部は、
前記燃料電池スタックの残寿命と前記蓄電装置の残寿命とが互いに同じ場合、前記所定の充電範囲を第1充電範囲に変更するとともに、複数の第1目標発電電力を決定し、
前記燃料電池スタックの残寿命が前記蓄電装置の残寿命より長い場合、前記所定の充電範囲を前記第1充電範囲より狭い第2充電範囲に変更するとともに、前記複数の第1目標発電電力を決定し、
前記蓄電装置の残寿命が前記燃料電池スタックの残寿命より長い場合、前記所定の充電範囲を前記第1充電範囲より広い第3充電範囲に変更するとともに、前記複数の第1目標発電電力より少ない複数の第2目標発電電力を決定し、
前記制御部は、
前記燃料電池スタックの残寿命と前記蓄電装置の残寿命とが互いに同じ場合、前記複数の第1目標発電電力のうち、前記第1充電範囲内を変動する前記蓄電装置の充電率に対応する第1目標発電電力を選択し、その選択した第1目標発電電力に前記燃料電池スタックの発電電力を追従させ、
前記燃料電池スタックの残寿命が前記蓄電装置の残寿命より長い場合、前記複数の第1目標発電電力のうち、前記第2充電範囲内を変動する前記蓄電装置の充電率に対応する第1目標発電電力を選択し、その選択した第1目標発電電力に前記燃料電池スタックの発電電力を追従させ、
前記蓄電装置の残寿命が前記燃料電池スタックの残寿命より長い場合、前記複数の第2目標発電電力のうち、前記第3充電範囲内を変動する前記蓄電装置の充電率に対応する第2目標発電電力を選択し、その選択した第2目標発電電力に前記燃料電池スタックの発電電力を追従させる
燃料電池モジュール。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料電池モジュールであって、
前記変更部は、前記燃料電池スタックの残寿命と前記蓄電装置の残寿命との差に基づき、前記所定の充電範囲を変更する
燃料電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池モジュールとして、燃料電池スタックから供給される電力が蓄電される蓄電装置の能力を十分に発揮させるために、蓄電装置の劣化の進み具合に応じて蓄電装置の充電率(蓄電装置の満充電容量に対する残容量の割合[%])の変動範囲を狭めていくものがある。関連する技術として、特許文献1がある。
【0003】
しかしながら、上記燃料電池モジュールでは、蓄電装置の充電率の変動範囲が狭まっていくにつれて燃料電池スタックの電圧が変動する頻度が高くなるため、燃料電池スタックの残寿命が蓄電装置の残寿命より短くなり、燃料電池モジュール全体の残寿命が比較的短くなるおそれがある。
【0004】
また、他の燃料電池モジュールとして、燃料電池スタックの長寿命化を図るために、蓄電装置の充電率の変動範囲を比較的広くすることで燃料電池スタックの電圧変動回数を低減するものがある。
【0005】
しかしながら、上記他の燃料電池モジュールでは、蓄電装置の充電率の変動範囲が広くなるほど、蓄電装置の膨張収縮量が増加し、蓄電装置内部の結晶構造が崩れて蓄電装置の残寿命が短くなるおそれがある。また、上記他の燃料電池モジュールでは、蓄電装置の充電率の変動範囲が広くなるほど、蓄電装置に長期的に流れる電流が多くなり、寿命を規定する電流積算値に到達するまでの時間が短くなるおそれがある。また、上記他の燃料電池モジュールでは、蓄電装置の充電率の変動範囲が広くなるほど、蓄電装置に瞬間的に流れる電流が大きくなり、蓄電装置の発熱量増加に伴って蓄電装置の残寿命が短くなるおそれがある。そのため、上記他の燃料電池モジュールでは、蓄電装置の残寿命が燃料電池スタックの残寿命より短くなり、燃料電池モジュール全体の残寿命が比較的短くなるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一側面に係る目的は、燃料電池モジュール全体の残寿命が比較的短くなることを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一つの形態である燃料電池モジュールは、燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックから供給される電力を蓄電する蓄電装置と、前記燃料電池スタックの残寿命及び前記蓄電装置の残寿命に基づき、所定の充電範囲を変更する変更部と、前記所定の充電範囲内を変動する前記蓄電装置の充電率に応じて前記燃料電池スタックの発電電力を制御する制御部とを備える。
【0009】
これにより、燃料電池スタック及び蓄電装置の両方の残寿命を考慮して燃料電池スタックの発電を制御することができるため、燃料電池スタック及び蓄電装置のうちの一方の残寿命が他方の残寿命より短くなることを抑制することができ、燃料電池モジュール全体の残寿命が比較的短くなることを抑制することができる。
【0010】
また、前記変更部は、前記燃料電池スタックの残寿命と前記蓄電装置の残寿命とが互いに同じ場合、前記所定の充電範囲を第1充電範囲に変更し、前記燃料電池スタックの残寿命が前記蓄電装置の残寿命より長い場合、前記所定の充電範囲を前記第1充電範囲より狭い第2充電範囲に変更し、前記蓄電装置の残寿命が前記燃料電池スタックの残寿命より長い場合、前記所定の充電範囲を前記第1充電範囲より広い第3充電範囲に変更するように構成してもよい。
【0011】
また、前記変更部は、前記燃料電池スタックの残寿命と前記蓄電装置の残寿命とが互いに同じ場合、前記所定の充電範囲を第1充電範囲に変更するとともに、複数の第1目標発電電力を決定し、前記燃料電池スタックの残寿命が前記蓄電装置の残寿命より長い場合、前記所定の充電範囲を前記第1充電範囲より狭い第2充電範囲に変更するとともに、前記複数の第1目標発電電力を決定し、前記蓄電装置の残寿命が前記燃料電池スタックの残寿命より長い場合、前記所定の充電範囲を前記第1充電範囲より広い第3充電範囲に変更するとともに、前記複数の第1目標発電電力より少ない複数の第2目標発電電力を決定し、前記制御部は、前記燃料電池スタックの残寿命と前記蓄電装置の残寿命とが互いに同じ場合、前記複数の第1目標発電電力のうち、前記第1充電範囲内を変動する前記蓄電装置の充電率に対応する第1目標発電電力を選択し、その選択した第1目標発電電力に前記燃料電池スタックの発電電力を追従させ、前記燃料電池スタックの残寿命が前記蓄電装置の残寿命より長い場合、前記複数の第1目標発電電力のうち、前記第2充電範囲内を変動する前記蓄電装置の充電率に対応する第1目標発電電力を選択し、その選択した第1目標発電電力に前記燃料電池スタックの発電電力を追従させ、前記蓄電装置の残寿命が前記燃料電池スタックの残寿命より長い場合、前記複数の第2目標発電電力のうち、前記第3充電範囲内を変動する前記蓄電装置の充電率に対応する第2目標発電電力を選択し、その選択した第2目標発電電力に前記燃料電池スタックの発電電力を追従させるように構成してもよい。
【0012】
また、前記変更部は、前記燃料電池スタックの残寿命と前記蓄電装置の残寿命との差に基づき、前記所定の充電範囲を変更するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、燃料電池モジュール全体の残寿命が比較的短くなることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態の燃料電池モジュールの一例を示す図である。
【
図2】第1実施例における変更部及び制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図3】記憶部に記憶されているテーブルの一例を示す図である。
【
図4】蓄電装置の充電率と切替閾値と目標発電電力との関係を示す図である。
【
図5】第1実施例における変更部及び制御部の動作の変形例を示すフローチャートである。
【
図6】蓄電装置の充電率と切替閾値と目標発電電力との関係を示す図である。
【
図7】第2実施例における変更部及び制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0016】
図1は、実施形態の燃料電池モジュールの一例を示す図である。
【0017】
図1に示す燃料電池モジュールFCMは、例えば、フォークリフト、トーイングカー、または無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)などの車両に搭載され、その車両に搭載される負荷Loに電力を供給する。
【0018】
また、燃料電池モジュールFCMは、燃料電池スタックFCSと、燃料タンクHTと、インジェクタINJと、エアコンプレッサACPと、DCDCコンバータCNVと、蓄電装置Bと、温度検出部Stと、電流センサSifと、電圧センサSvfと、電流センサSibと、電圧センサSvbと、記憶部Strと、FCECU1とを備える。
【0019】
燃料電池スタックFCSは、互いに直列接続される複数の燃料電池セルにより構成され、燃料ガス(水素ガスなど)に含まれる水素と酸化剤ガス(空気など)に含まれる酸素との電気化学反応により電気を発生させる。
【0020】
燃料タンクHTは、燃料ガスの貯蔵容器である。燃料タンクHTに貯蔵された燃料ガスはインジェクタINJを介して燃料電池スタックFCSに供給される。
【0021】
インジェクタINJは、燃料電池スタックFCSに供給される燃料ガスの流量を調整する。
【0022】
エアコンプレッサACPは、エアコンプレッサACPや燃料電池モジュールFCMの周囲に存在する酸化剤ガスを圧縮し燃料電池スタックFCSに供給する。なお、酸化剤ガスの圧縮率は、燃料電池スタックFCSの下流に設けられる不図示のエア調圧弁の開度を調節することで制御される。
【0023】
DCDCコンバータCNVは、燃料電池スタックFCSから出力される電圧Vfを所定の電圧に変換する。また、DCDCコンバータCNVから出力される電力は、負荷LoやエアコンプレッサACPなどの各補機や蓄電装置Bなどに供給される。
【0024】
蓄電装置Bは、リチウムイオン電池またはリチウムイオンキャパシタなどにより構成され、DCDCコンバータCNVと負荷Loとの間に接続されている。
【0025】
DCDCコンバータCNVから出力される電力と、各補機にそれぞれ供給される電力の合計値との差に相当する供給電力が、燃料電池モジュールFCMの外部(例えば、負荷Loの動作を制御する車両側制御部)から要求される要求電力より大きい場合、その供給電力のうち、要求電力分の電力が負荷Loに供給されるとともに、残りの電力が蓄電装置Bに供給される。DCDCコンバータCNVから蓄電装置Bに電力が供給されると、蓄電装置Bが充電され蓄電装置Bの充電率SOC(蓄電装置Bの満充電容量に対する残容量の割合[%])が増加する。また、負荷Loから燃料電池モジュールFCMに供給される回生電力が蓄電装置Bに供給される場合においても、蓄電装置Bが充電され蓄電装置Bの充電率SOCが増加する。
【0026】
また、DCDCコンバータCNVから出力される電力と、各補機にそれぞれ供給される電力の合計値との差に相当する供給電力が、燃料電池モジュールFCMの外部から要求される要求電力より小さい場合、その供給電力が負荷Loに供給されるとともに、足りない分の電力が蓄電装置Bから負荷Loに供給される。蓄電装置Bから負荷Loに電力が供給されると、蓄電装置Bが放電され蓄電装置Bの充電率SOCが減少する。
【0027】
温度検出部Stは、サーミスタなどにより構成され、燃料電池スタックFCSの温度を検出し、その検出した温度をFCECU1に送る。なお、温度検出部Stは、燃料電池スタックFCSを構成する2以上の燃料電池セルのそれぞれの温度を検出し、それら検出した温度をFCECU1に送るように構成してもよい。このように構成される場合、FCECU1は、各温度の平均値と燃料電池スタックFCSを構成する燃料電池セルの数との乗算値を燃料電池スタックFCSの温度とする。
【0028】
電流センサSifは、シャント抵抗やホール素子などにより構成され、燃料電池スタックFCSからDCDCコンバータCNVに流れる電流Ifを検出し、その検出した電流IfをFCECU1に送る。
【0029】
電圧センサSvfは、分圧抵抗などにより構成され、燃料電池スタックFCSから出力される電圧Vfを検出し、その検出した電圧VfをFCECU1に送る。FCECU1は、電圧Vfと電流Ifとの乗算値を燃料電池スタックFCSの発電電力とする。
【0030】
電流センサSibは、シャント抵抗やホール素子などにより構成され、DCDCコンバータCNVから蓄電装置Bに流れる電流Ibまたは蓄電装置Bから負荷Loに流れる電流Ibを検出し、その検出した電流IbをFCECU1に送る。
【0031】
電圧センサSvbは、分圧抵抗などにより構成され、蓄電装置Bの電圧Vbを検出し、その検出した電圧VbをFCECU1に送る。FCECU1は、電圧Vbと蓄電装置Bの充電率SOCとの対応関係を示す情報や電流Ibの積算値などを用いて蓄電装置Bの充電率SOCを求める。
【0032】
記憶部Strは、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などにより構成され、後述する各種テーブルなどを記憶する。
【0033】
FCECU1は、マイクロコンピュータなどにより構成され、各補機の動作を制御することで燃料電池スタックFCSの発電電力を制御する。また、FCECU1は、変更部11と、制御部12とを備える。例えば、マイクロコンピュータが記憶部Strに記憶されているプログラムを実行することで変更部11及び制御部12が実現される。
【0034】
例えば、制御部12は、蓄電装置Bの充電率SOCと複数の切替閾値SOCthとの比較結果に応じて目標発電電力Ptを段階的に切り替えるとともに、PI(Proportional-Integral)制御などにより燃料電池スタックFCSの発電電力が目標発電電力Ptに追従するように、各補機の動作を制御する。なお、制御部12は、目標発電電力Ptが大きくなるほど燃料電池スタックFCSの発電電力が大きくなるように各補機の動作を制御し、目標発電電力Ptが小さくなるほど燃料電池スタックFCSの発電電力が小さくなるように各補機の動作を制御する。
【0035】
このように、蓄電装置Bの充電率SOCに応じて燃料電池スタックFCSの発電電力を段階的に変化させることにより、燃料電池スタックFCSの電圧が変動する頻度を抑えることができるため、燃料電池スタックFCSの劣化を抑制することができる。
【0036】
ところで、上述したように、燃料電池スタックFCSの長寿命化を図るために蓄電装置Bの充電率SOCの変動範囲を比較的広くする場合では、蓄電装置Bの電圧が変動する頻度が高くなることで蓄電装置Bが劣化するため、蓄電装置Bの残寿命Lbが燃料電池スタックFCSの残寿命Lfより短くなり、燃料電池モジュールFCM全体の残寿命が比較的短くなるおそれがある。また、蓄電装置Bの長寿命化を図るために蓄電装置Bの充電率SOCの変動範囲を狭くする場合では、燃料電池スタックFCSの電圧が変動する頻度が高くなることで燃料電池スタックFCSが劣化するため、燃料電池スタックFCSの残寿命Lfが蓄電装置Bの残寿命Lbより短くなり、燃料電池モジュールFCM全体の残寿命が比較的短くなるおそれがある。
【0037】
そこで、実施形態の変更部11は、燃料電池スタックFCSの残寿命Lf及び蓄電装置Bの残寿命Lbに基づき、所定の充電範囲を変更する。また、実施形態の制御部12は、所定の充電範囲内を変動する蓄電装置Bの充電率に応じて燃料電池スタックFCSの発電電力を制御する。
【0038】
これにより、燃料電池スタックFCS及び蓄電装置Bの両方の残寿命を考慮して燃料電池スタックFCSの発電電力を制御することができるため、燃料電池スタックFCS及び蓄電装置Bのうちの一方の残寿命が他方の残寿命より短くなることを抑制することができ、燃料電池モジュールFCM全体の残寿命が比較的短くなることを抑制することができる。
【0039】
<第1実施例>
図2は、第1実施例における変更部11及び制御部12の動作の一例を示すフローチャートである。なお、
図2に示すフローチャートは、例えば、FCECU1の制御周期毎に行われるものとする。また、
図3は、記憶部Strに予め記憶されているテーブルの一例を示す図である。また、
図4は、充電率SOCと切替閾値SOCthと目標発電電力Ptとの関係を示す図である。
【0040】
まず、変更部11は、燃料電池スタックFCSの残寿命Lfを推定する(ステップS101)。
【0041】
例えば、変更部11は、下記式1の計算結果を、現在における燃料電池スタックFCSの残寿命Lfとして推定する。なお、工場出荷時など燃料電池スタックFCSが劣化していないときの所定電力発電時の燃料電池スタックFCSの電圧をVf2とする。また、現在における所定電力発電時の燃料電池スタックFCSの電圧をVf1とする。また、燃料電池スタックFCSの寿命条件が満たされたとき(例えば、所定電力発電時の燃料電池スタックFCSの電圧が所定電圧以上になったとき)の所定電力発電時の燃料電池スタックFCSの電圧をVf0とする。また、100≦Lf≦0とし、Vf2>Vf1>Vf0とする。
【0042】
Lf=(Vf1-Vf0)/(Vf2-Vf0)×100 ・・・式1
【0043】
または、変更部11は、制御周期毎に、燃料電池スタックFCSの電圧が変動した回数の積算値を現在における累積電圧変動回数として算出するとともに、
図3(a)に示す燃料電池スタックFCSの累積電圧変動回数と燃料電池スタックFCSの残寿命Lfとの対応関係を示すテーブルT1を参照して、現在における累積電圧変動回数に対応する残寿命Lfを、現在における燃料電池スタックFCSの残寿命Lfとして推定する。なお、テーブルT1は、実験やシミュレーションなどにより予め求められているものとする。また、残寿命Lfを推定するためのパラメータとして、燃料電池スタックFCSの電圧や累積電圧変動回数に限定されない。
【0044】
次に、変更部11は、蓄電装置Bの残寿命Lbを推定する(ステップS102)。
【0045】
例えば、制御部12は、下記式2の計算結果を、現在における蓄電装置Bの残寿命Lbとして推定する。なお、工場出荷時など蓄電装置Bが劣化していないときの蓄電装置Bの満充電容量をCb2とする。また、現在における蓄電装置Bの満充電容量をCb1する。また、蓄電装置Bの寿命条件が満たされたとき(例えば、蓄電装置Bの満充電容量が工場出荷時の蓄電装置Bの満充電容量の8割程度まで低下したとき)の蓄電装置Bの満充電容量をCb0とする。また、100≦Lb≦0とし、Cb2>Cb1>Cb0とする。
【0046】
Lb=(Cb1-Cb0)/(Cb2-Cb0)×100 ・・・式2
【0047】
または、変更部11は、下記式3の計算結果を、現在における蓄電装置Bの残寿命Lbとして推定する。なお、工場出荷時など蓄電装置Bが劣化していないときの蓄電装置Bの内部抵抗値をRb0とする。また、現在における蓄電装置Bの内部抵抗値をRb1する。また、蓄電装置Bの寿命条件が満たされたとき(例えば、蓄電装置Bの内部抵抗値が工場出荷時の蓄電装置Bの内部抵抗値の1.5倍程度まで上昇したとき)の蓄電装置Bの内部抵抗値をRb2とする。また、100≦Lb≦0とし、Rb2>Rb1>Rb0とする。
【0048】
Lb=(Rb1-Rb0)/(Rb2-Rb0)×100 ・・・式3
【0049】
または、変更部11は、制御周期毎に、蓄電装置Bに流れる電流の積算値を現在の積算電流値として算出し、蓄電装置Bの充電率SOCの平均値を現在の充電率平均値として算出し、蓄電装置Bの温度の平均値を現在の温度平均値として算出するとともに、
図3(b)に示す蓄電装置Bの電流積算値と、蓄電装置Bの充電率平均値と、蓄電装置Bの温度平均値と、蓄電装置Bの残寿命Lbとの対応関係を示すテーブルT2を参照して、現在の電流積算値、現在の充電率平均値、及び現在の温度平均値にそれぞれ対応する残寿命Lbを、現在における蓄電装置Bの残寿命Lbとして推定する。なお、テーブルT2は、実験やシミュレーションなどにより予め求められているものとする。また、残寿命Lbを推定するためのパラメータとして、蓄電装置Bの満充電容量、内部抵抗値、電流積算値、充電率、及び温度に限定されない。
【0050】
なお、
図2に示すフローチャートにおいて、ステップS101とステップS102の順序を入れ替えてもよい。
【0051】
次に、変更部11は、燃料電池スタックFCSの残寿命Lfと蓄電装置Bの残寿命Lbとが互いに同じ場合(ステップS103:Yes)、所定の充電範囲を第1充電範囲に変更するとともに、燃料電池スタックFCSの発電電力を段階的に変化させるために複数の第1目標発電電力を決定する(ステップS104)。なお、変更部11は、残寿命Lfを中心とする所定幅内に残寿命Lbが含まれるとき、残寿命Lfと残寿命Lbとが互いに同じであると判断してもよい。または、変更部11は、残寿命Lbを中心とする所定幅内に残寿命Lfが含まれるとき、残寿命Lfと残寿命Lbとが互いに同じであると判断してもよい。
【0052】
例えば、変更部11は、残寿命Lfと残寿命Lbとが互いに同じ場合、
図4(a)に示すように、所定の充電範囲を第1充電範囲に変更するための切替閾値SOCthとして切替閾値SOCth11及び切替閾値SOCth16を設定するとともに、複数の第1目標発電電力を決定するための切替閾値SOCthとして切替閾値SOCth12~切替閾値SOCth15を設定する。なお、切替閾値SOCth11<切替閾値SOCth12<切替閾値SOCth13<切替閾値SOCth14<切替閾値SOCth15<切替閾値SOCth16とする。
【0053】
例えば、切替閾値SOCth11を40[%]とし、切替閾値SOCth12を44[%]とし、切替閾値SOCth13を48[%]とし、切替閾値SOCth14を52[%]とし、切替閾値SOCth15を56[%]とし、切替閾値SOCth16を60[%]とする場合、第1充電範囲は40[%]~60[%]になる。なお、複数の第1目標発電電力を目標発電電力Pt0~Pt3とし、目標発電電力Pt0<目標発電電力Pt1<目標発電電力Pt2<目標発電電力Pt3とする。
【0054】
このように、第1充電範囲が40[%]~60[%]に設定される場合、蓄電装置Bの充電率SOCが50[%]付近に保たれるように燃料電池スタックFCSの発電電力が制御されるため、負荷Loから蓄電装置Bに電力が供給されることや蓄電装置Bから負荷Loに電力が供給されることに余裕をもって対応することができる。
【0055】
次に、
図2に示すフローチャートにおいて、制御部12は、ステップS104で決定された複数の第1目標発電電力のうち、第1充電範囲内を変動する蓄電装置Bの充電率SOCに対応する第1目標発電電力を選択し、その選択した第1目標発電電力に燃料電池スタックFCSの発電電力が追従するように、各補機の動作を制御する(ステップS105)。
【0056】
図4(a)に示す例では、制御部12は、蓄電装置Bの充電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth12以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt3から目標発電電力Pt2に切り替える。すなわち、制御部12は、蓄電装置Bの充電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth12以上になると、目標発電電力Pt2を選択する。
【0057】
また、制御部12は、蓄電装置Bの充電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth14以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt2から目標発電電力Pt1に切り替える。すなわち、制御部12は、蓄電装置Bの充電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth14以上になると、目標発電電力Pt1を選択する。
【0058】
また、制御部12は、蓄電装置Bの充電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth16以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt1から目標発電電力Pt0に切り替える。すなわち、制御部12は、蓄電装置Bの充電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth16以上になると、目標発電電力Pt0を選択する。
【0059】
また、制御部12は、蓄電装置Bの放電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth15以下になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt0から目標発電電力Pt1に切り替える。すなわち、制御部12は、蓄電装置Bの放電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth15以下になると、目標発電電力Pt1を選択する。
【0060】
また、制御部12は、蓄電装置Bの放電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth13以下になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt1から目標発電電力Pt2に切り替える。すなわち、制御部12は、蓄電装置Bの放電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth13以下になると、目標発電電力Pt2を選択する。
【0061】
また、制御部12は、蓄電装置Bの放電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth11以下になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt2から目標発電電力Pt3に切り替える。すなわち、制御部12は、蓄電装置Bの放電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth11以下になると、目標発電電力Pt3を選択する。
【0062】
次に、
図2に示すフローチャートにおいて、変更部11は、燃料電池スタックFCSの残寿命Lfが蓄電装置Bの残寿命Lbより長い場合(ステップS103:No、ステップS106:Yes)、所定の充電範囲を第1充電範囲より狭い第2充電範囲に変更するとともに、燃料電池スタックFCSの発電電力を段階的に変化させるために複数の第1目標発電電力を決定する(ステップS107)。
【0063】
例えば、変更部11は、燃料電池スタックFCSの残寿命Lfが蓄電装置Bの残寿命Lbより長い場合、
図4(b)に示すように、所定の充電範囲を第2充電範囲に変更するための切替閾値SOCthとして切替閾値SOCth21及び切替閾値SOCth26を設定するとともに、複数の第1目標発電電力を決定するための切替閾値SOCthとして切替閾値SOCth22~切替閾値SOCth25を設定する。なお、切替閾値SOCth21>切替閾値SOCth11とし、切替閾値SOCth26<切替閾値SOCth16とする。また、切替閾値SOCth21<切替閾値SOCth22<切替閾値SOCth23<切替閾値SOCth24<切替閾値SOCth25<切替閾値SOCth26とする。
【0064】
例えば、切替閾値SOCth21を45[%]とし、切替閾値SOCth22を47[%]とし、切替閾値SOCth23を49[%]とし、切替閾値SOCth24を51[%]とし、切替閾値SOCth25を53[%]とし、切替閾値SOCth26を55[%]とする場合、第2充電範囲は45[%]~55[%]になる。なお、複数の第1目標発電電力を目標発電電力Pt0~Pt3とする。
【0065】
次に、
図2に示すフローチャートにおいて、制御部12は、ステップS107で決定された複数の第1目標発電電力のうち、第2充電範囲内を変動する蓄電装置Bの充電率SOCに対応する第1目標発電電力を選択し、その選択した第1目標発電電力に燃料電池スタックFCSの発電電力が追従するように、各補機の動作を制御する(ステップS108)。
【0066】
図4(b)に示す例では、制御部12は、蓄電装置Bの充電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth22以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt3から目標発電電力Pt2に切り替える。すなわち、制御部12は、蓄電装置Bの充電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth22以上になると、目標発電電力Pt2を選択する。
【0067】
また、制御部12は、蓄電装置Bの充電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth24以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt2から目標発電電力Pt1に切り替える。すなわち、制御部12は、蓄電装置Bの充電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth24以上になると、目標発電電力Pt1を選択する。
【0068】
また、制御部12は、蓄電装置Bの充電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth26以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt1から目標発電電力Pt0に切り替える。すなわち、制御部12は、蓄電装置Bの充電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth26以上になると、目標発電電力Pt0を選択する。
【0069】
また、制御部12は、蓄電装置Bの放電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth25以下になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt0から目標発電電力Pt1に切り替える。すなわち、制御部12は、蓄電装置Bの放電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth25以下になると、目標発電電力Pt1を選択する。
【0070】
また、制御部12は、蓄電装置Bの放電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth23以下になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt1から目標発電電力Pt2に切り替える。すなわち、制御部12は、蓄電装置Bの放電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth23以下になると、目標発電電力Pt2を選択する。
【0071】
また、制御部12は、蓄電装置Bの放電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth21以下になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt2から目標発電電力Pt3に切り替える。すなわち、制御部12は、蓄電装置Bの放電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth21以下になると、目標発電電力Pt3を選択する。
【0072】
次に、
図2に示すフローチャートにおいて、変更部11は、蓄電装置Bの残寿命Lbが燃料電池スタックFCSの残寿命Lfより長い場合(ステップS103:No、ステップS106:No)、所定の充電範囲を第1充電範囲より広い第3充電範囲に変更するとともに、燃料電池スタックFCSの発電電力を段階的に変化させるために複数の第1目標発電電力を決定する(ステップS109)。
【0073】
例えば、変更部11は、蓄電装置Bの残寿命Lbが燃料電池スタックFCSの残寿命Lfより長い場合、
図4(c)に示すように、所定の充電範囲を第3範囲に変更するための切替閾値SOCthとして切替閾値SOCth31及び切替閾値SOCth36を設定するとともに、複数の第1目標発電電力を決定するための切替閾値SOCthとして切替閾値SOCth32~切替閾値SOCth35を設定する。なお、切替閾値SOCth31<切替閾値SOCth11とし、切替閾値SOCth36>切替閾値SOCth16とする。また、切替閾値SOCth31<切替閾値SOCth32<切替閾値SOCth33<切替閾値SOCth34<切替閾値SOCth35<切替閾値SOCth36とする。
【0074】
例えば、切替閾値SOCth31を30[%]とし、切替閾値SOCth32を40[%]とし、切替閾値SOCth33を45[%]とし、切替閾値SOCth34を55[%]とし、切替閾値SOCth35を60[%]とし、切替閾値SOCth36を70[%]とする場合、第3充電範囲は30[%]~70[%]になる。なお、複数の第1目標発電電力を目標発電電力Pt0~Pt3とする。
【0075】
次に、
図2に示すフローチャートにおいて、制御部12は、ステップS109で決定された複数の第1目標発電電力のうち、第3充電範囲内を変動する蓄電装置Bの充電率SOCに対応する第1目標発電電力を選択し、その選択した第1目標発電電力に燃料電池スタックFCSの発電電力が追従するように、各補機の動作を制御する(ステップS110)。
【0076】
図4(c)に示す例では、制御部12は、蓄電装置Bの充電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth32以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt3から目標発電電力Pt2に切り替える。すなわち、制御部12は、蓄電装置Bの充電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth32以上になると、目標発電電力Pt2を選択する。
【0077】
また、制御部12は、蓄電装置Bの充電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth34以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt2から目標発電電力Pt1に切り替える。すなわち、制御部12は、蓄電装置Bの充電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth34以上になると、目標発電電力Pt1を選択する。
【0078】
また、制御部12は、蓄電装置Bの充電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth36以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt1から目標発電電力Pt0に切り替える。すなわち、制御部12は、蓄電装置Bの充電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth36以上になると、目標発電電力Pt0を選択する。
【0079】
また、制御部12は、蓄電装置Bの放電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth35以下になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt0から目標発電電力Pt1に切り替える。すなわち、制御部12は、蓄電装置Bの放電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth35以下になると、目標発電電力Pt1を選択する。
【0080】
また、制御部12は、蓄電装置Bの放電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth33以下になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt1から目標発電電力Pt2に切り替える。すなわち、制御部12は、蓄電装置Bの放電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth33以下になると、目標発電電力Pt2を選択する。
【0081】
また、制御部12は、蓄電装置Bの放電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth31以下になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt2から目標発電電力Pt3に切り替える。すなわち、制御部12は、蓄電装置Bの放電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth31以下になると、目標発電電力Pt3を選択する。
【0082】
このように、第1実施例の燃料電池モジュールFCMでは、残寿命Lfと残寿命Lbとが互いに同じ場合、所定の充電範囲を第1充電範囲に変更し、残寿命Lfが残寿命Lbより長い場合、所定の充電範囲を第1充電範囲より狭い第2充電範囲に変更し、残寿命Lbが残寿命Lfより長い場合、所定の充電範囲を第1充電範囲より広い第3充電範囲に変更する構成である。
【0083】
これにより、残寿命Lfが残寿命Lbより長い場合、蓄電装置Bの長寿命化を図るように燃料電池スタックFCSの発電電力を制御し、残寿命Lbが残寿命Lfより長い場合、燃料電池スタックFCSの長寿命化を図るように燃料電池スタックFCSの発電電力を制御することができるため、燃料電池スタックFCS及び蓄電装置Bのうちの一方の残寿命が他方の残寿命より短くなることを抑制することができ、燃料電池モジュールFCM全体の残寿命が比較的短くなることを抑制することができる。
【0084】
図5は、第1実施例における変更部11及び制御部12の動作の変形例を示すフローチャートである。なお、
図5に示すフローチャートは、例えば、FCECU1の制御周期毎に行われるものとする。また、
図5に示すステップS101~ステップS108は、
図2に示すステップS101~ステップS108と同様であるため、その説明を省略する。
【0085】
図5に示すフローチャートにおいて、変更部11は、蓄電装置Bの残寿命Lbが燃料電池スタックFCSの残寿命Lfより長い場合(ステップS103:No、ステップS106:No)、所定の充電範囲を第3充電範囲に変更するとともに、燃料電池スタックFCSの発電電力を段階的に変化させるために複数の第1目標発電電力より少ない複数の第2目標発電電力を決定する(ステップS109´)。
【0086】
例えば、変更部11は、蓄電装置Bの残寿命Lbが燃料電池スタックFCSの残寿命Lfより長い場合、
図6に示すように、所定の充電範囲を第3充電範囲に変更し、かつ、複数の第2目標発電電力を決定するための切替閾値SOCthとして切替閾値SOCth31及び切替閾値SOCth36を設定する。
【0087】
例えば、切替閾値SOCth31を30[%]とし、切替閾値SOCth36を70[%]とする場合、第3充電範囲は30[%]~70[%]になる。なお、複数の第2目標発電電力を目標発電電力Pt0及び目標発電電力Pt3とする。
【0088】
次に、
図5に示すフローチャートにおいて、制御部12は、ステップS109´で決定された複数の第2目標発電電力のうち、第3充電範囲内を変動する蓄電装置Bの充電率SOCに対応する第2目標発電電力を選択し、その選択した第2目標発電電力に燃料電池スタックFCSの発電電力が追従するように、各補機の動作を制御する(ステップS110´)。
【0089】
図6に示す例では、制御部12は、蓄電装置Bの充電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth36以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt3から目標発電電力Pt0に切り替える。すなわち、制御部12は、蓄電装置Bの充電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth36以上になると、目標発電電力Pt0を選択する。
【0090】
また、制御部12は、蓄電装置Bの放電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth31以下になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt0から目標発電電力Pt3に切り替える。すなわち、制御部12は、蓄電装置Bの放電時において、充電率SOCが切替閾値SOCth31以下になると、目標発電電力Pt3を選択する。
【0091】
このように構成しても、燃料電池スタックFCS及び蓄電装置Bのうちの一方の残寿命が他方の残寿命より短くなることを抑制することができるため、燃料電池モジュールFCM全体の残寿命が比較的短くなることを抑制することができる。
【0092】
<第2実施例>
図7は、第2実施例における変更部11及び制御部12の動作の一例を示すフローチャートである。なお、第2実施例における燃料電池モジュールFCMの構成は、
図1に示す第1実施例の燃料電池モジュールFCMの構成と同様とする。また、
図7に示すフローチャートは、例えば、FCECU1の制御周期毎に行われるものとする。また、
図7に示すステップS101及びステップS102は、
図2に示すステップS101及びステップS102と同様であるため、その説明を省略する。
【0093】
図7に示すフローチャートにおいて、変更部11は、残寿命Lf及び残寿命Lbを推定した後(ステップS101、S102)、残寿命Lfと残寿命Lbとの差ΔLを算出する(ステップS111)。
【0094】
次に、変更部11は、差ΔLに基づき、所定の充電範囲を変更するとともに、燃料電池スタックFCSの発電電力を段階的に変化させるために複数の目標発電電力(複数の第1目標発電電力または複数の第2目標発電電力)を決定する(ステップS112)。
【0095】
例えば、変更部11は、残寿命Lfから残寿命Lbを減算した差ΔLが正の値で、かつ、その差ΔLが大きいほど、所定の充電範囲を狭くし、残寿命Lfから残寿命Lbを減算した差ΔLが負の値で、かつ、その差ΔLが大きいほど、所定の充電範囲を広くする。
【0096】
次に、制御部12は、ステップS112で決定された複数の目標発電電力のうち、所定の充電範囲内を変動する蓄電装置Bの充電率SOCに対応する目標発電電力を選択し、その選択した目標発電電力に燃料電池スタックFCSの発電電力が追従するように、各補機の動作を制御する(ステップS113)。
【0097】
このように構成しても、燃料電池スタックFCS及び蓄電装置Bのうちの一方の残寿命が他方の残寿命より短くなることを抑制することができるため、燃料電池モジュールFCM全体の残寿命が比較的短くなることを抑制することができる。
【0098】
また、第2実施例によれば、所定の充電範囲を線形的に変化させることができる。
【0099】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【符号の説明】
【0100】
FCM 燃料電池モジュール
Lo 負荷
FCS 燃料電池スタック
HT 燃料タンク
INJ インジェクタ
ACP エアコンプレッサ
CNV DCDCコンバータ
B 蓄電装置
St 温度検出部
Sif 電流センサ
Svf 電圧センサ
Sib 電流センサ
Svb 電圧センサ
Str 記憶部
1 FCECU
11 変更部
12 制御部