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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152359
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】音響装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/34 20060101AFI20241018BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20241018BHJP
   G10K 11/175 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H04R1/34 310
H04R1/02 101B
G10K11/175
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066506
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亮
【テーマコード(参考)】
5D017
5D018
5D061
【Fターム(参考)】
5D017AD12
5D018AF30
5D061FF01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】周囲への音漏れを抑止でき、中高音域の音圧を鮮明に聴取できる音響装置を提供する。
【解決手段】内部に音響装置10が収納されているヘッドレスト2であって、音響装置10は、エンクロージャ11を有し、エンクロージャ11の発音側壁部11aにスピーカ20が設置され、スピーカ20よりも前方に開口部30が形成されている。開口部30の開口面積は、スピーカ20の有効振動面積よりも大きい。スピーカ20からの中高音域の音圧(i)は耳Eに効果的に与えられ、スピーカ20からの低音域の音圧(ii)は、大きな面積の開口部30からの逆位相の音圧(iii)で打ち消される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その発音方向が聴取者の左右それぞれの耳に向けられた少なくとも2つのスピーカと、それぞれの前記スピーカの背部を覆うエンクロージャと、を有する音響装置において、
それぞれの前記スピーカよりも耳から離れた位置に、前記エンクロージャを開放する開口部が設けられ、
前記開口部の開口面積が、それぞれの前記スピーカの有効振動面積と同じがそれよりも大きい、ことを特徴とする音響装置。
【請求項2】
その発音方向が聴取者の左右それぞれの耳に向けられた少なくとも2つのスピーカと、それぞれの前記スピーカの背部を覆うエンクロージャと、を有する音響装置において、
それぞれの前記スピーカよりも耳から離れた位置に、前記エンクロージャを開放する開口部が設けられ、
前記開口部を閉鎖できる開閉部材が設けられている、ことを特徴とする音響装置。
【請求項3】
聴取者の顔の向く方向を前方としたときに、それぞれの前記開口部が、前記スピーカよりも前方に位置している請求項1または2記載の音響装置。
【請求項4】
前記開口部を閉鎖できる開閉部材が設けられている請求項1記載の音響装置。
【請求項5】
前記開口部よりも開口面積の小さいパスレフポートが設けられている請求項2または4記載の音響装置。
【請求項6】
前記バスレフポートが、前記スピーカユニットと前記開口部との間に設けられている請求項5記載の音響装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの座席に着席した聴取者に向けて音圧を与える音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、スピーカ装置が組み込まれた車両シート用ヘッドレストに関する発明が記載されている。図4図5に記載されたスピーカ装置は、筐体の両サイドアームに形成された空洞のそれぞれにスピーカが設けられている。筐体には、それぞれの空洞に連通して後方に延びる通路と、それぞれの通路を開放する出口とが設けられている。段落[0025]には、各通路と出口とで、ヘルムホルツ共鳴器原理を実施することができ、スピーカのカットオフ周波数よりも低い周波数において、より大きな音量で音を発することが可能である、と記載されている。
【0003】
特許文献2にもヘッドレストに組み込まれたスピーカ装置に関する発明が記載されている。このスピーカ装置は、ヘッドレストの左右の側部にスピーカが収納されている。スピーカは使用者の耳に近接した箇所に配置されている。スピーカは、ウーファー用スピーカユニットとツイータ用スピーカユニットとを含んでいる。図4ないし図7に、ウーファー用スピーカユニットを収納するスピーカボックスが示されている。スピーカボックスは後壁と側壁および前壁を含んでいる。図8に示されるように、スピーカボックスの側壁には全周に沿って複数の開口が形成されている。それぞれの開口は幅が2mmないし4mm程度の細長形状である。段落[0015]には、スピーカボックスの前方に出力される音声と、側壁の開口部から出力される音声とが互いに打ち消し合うことにより、ヘッドレストから発生する音声の一部が側方や後方に伝わるのが防止され、スピーカの周辺への音漏れが防止できること、が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-203673号公報
【特許文献2】特開2009-260525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたスピーカ装置は、スピーカの後方に位置する通路と開口とによるヘルムホルツ共鳴管原理により、そのスピーカ装置が設けられた車両シートに着座した聴取者には低音を強調した音を届けることができる。しかしながら、スピーカ装置から低い周波数の音圧が周囲に漏れやすく、隣のシートや後ろのシートに着座している搭乗者にも低音の音圧が届くようになる。そのため、シート毎に個別のソース再生を行うシステムには不向きであり、シート毎の個別のソース再生を実現するためには、クロストークをキャンセリングするための特別なソフトウエアなどが必要になり、非常に高価なシステムを構成しなくてはならなくなる。
【0006】
特許文献2に記載されたスピーカ装置は、ウファー用スピーカユニットを収納するスピーカボックスの側壁に形成された開口部から出力される音声でスピーカから発せられる音声を打ち消そうとしているが、開口部は幅が2mmないし4mm程度の小さいものであるため、ウーファーからの低い周波数の音声を十分に打ち消すことはできず、低い周波数の音声がヘッドレストから周囲に回り込んで拡散するのを十分に防ぐことが難しい。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、着座している聴取者に音圧を与えることができ、しかも比較的低い周波数帯域の音圧の周囲への音漏れを防止する効果を高めることができる音響装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、その発音方向が聴取者の左右それぞれの耳に向けられた少なくとも2つのスピーカと、それぞれの前記スピーカの背部を覆うエンクロージャと、を有する音響装置において、
それぞれの前記スピーカよりも耳から離れた位置に、前記エンクロージャを開放する開口部が設けられ、
前記開口部の開口面積が、それぞれの前記スピーカの有効振動面積と同じがそれよりも大きい、ことを特徴とするものである。
【0009】
また本発明は、その発音方向が聴取者の左右それぞれの耳に向けられた少なくとも2つのスピーカと、それぞれの前記スピーカの背部を覆うエンクロージャと、を有する音響装置において、
それぞれの前記スピーカよりも耳から離れた位置に、前記エンクロージャを開放する開口部が設けられ、
前記開口部を閉鎖できる開閉部材が設けられている、ことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の音響装置は、聴取者の顔の向く方向を前方としたときに、それぞれの前記開口部が、前記スピーカよりも前方に位置していることが好ましい。
【0011】
本発明の音響装置は、前記開口部よりも開口面積の小さいパスレフポートが設けられているものとして構成できる。
【0012】
本発明の音響装置は、前記バスレフポートが、前記スピーカユニットと前記開口部との間に設けられているものとして構成できる。
【発明の効果】
【0013】
第1の本発明の音響装置は、スピーカから耳までの距離が短いため、中音域から高音域の音圧が耳に届きやすい。また、スピーカから出力される比較的低音域の音圧は、スピーカの有効振動面積よりも大きな開口面積の開口部から出力される反転した位相の音圧により打ち消されるため、周囲や他のシートへの音漏れを防止しやすい。第2の本発明の音響装置は、開口部を閉鎖できる開閉部材が設けられているため、周囲への音漏れの心配がないときは、開口部を閉鎖して、開口部によるキャンセリング効果を低減させて、より高音質の音声を聴取できるようになる。
【0014】
さらに、開口部をスピーカよりも前方へ位置させておくと、聴取者は、頭を前方へ移動させると開口部によるキャンセリング効果により聴取する音量が低下するなるため、なるべく頭を後方に位置させるようになる。その結果、車両のシートに着座している聴取者は、頭をヘッドレストに付ける姿勢を維持するようになり、走行中の安全性を確保しやすくなる。特に聴取者が幼児などの場合に安全性を確保しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】聴取者の頭部と本発明の音響装置の第1実施形態である音響装置を斜め前方から見た斜視図、
図2】第1実施形態の音響装置を図1に示されるII-II線で切断した部分平断面図、
図3】本発明の第2実施形態の音響装置を示す部分平断面図、
図4】本発明の第3実施形態の音響装置を示す部分平断面図、
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に、自動車の車室内に設けられた座席の一部を構成するシートバック1と、シートバック1の上に設置されたヘッドレスト2が示されている。ヘッドレスト2の内部に本発明の第1実施形態である音響装置10が2か所に設置されている。なお、本発明の音響装置は、自動車以外の列車などの乗り物に装備された座席のヘッドレストに設置されるものであってもよいし、家庭や劇場などに装備された座席のヘッドレストに設置されるものであってもよい。
【0017】
図1図2に、自動車の乗員である聴取者の頭部Hが図示されている。音響装置10は、Z1―Z2方向が前後方向であり、Z1方向が前方で、Z2方向が後方である。前方(Z1方向)は、聴取者の頭部Hの一部である顔Fが向く方向である。X1-X2方向は横方向であり、聴取者の左右の耳E,Eの並ぶ方向が横方向である。X1方向が左方向で、X2方向が右方向である。Y1-Y2方向は上下方向であり、Y1方向が上方で、Y2方向が下方である。Y1-Y2方向は、前後方向(Z1-Z2方向)と横方向(X1-X2方向)の双方に直交している。
【0018】
それぞれの音響装置10は、エンクロージャ11を有している。図1に示されるように、エンクロージャ11は、発音側壁部11aと背部側壁部11bおよび前側壁部11cと後側壁部11dを有し、さらに上側壁部11eと下側壁部11fを有している。発音側壁部11aは、上下方向(Y1-Y2方向)と平行で垂直に延びている。背部側壁部11bは発音側壁部11aと平行である。前側壁部11cと後側壁部11dは前後方向に向けられ、上側壁部11eと下側壁部11fは上下方向に向けられている。エンクロージャ11は、発音側壁部11aと背部側壁部11b、前側壁部11cと後側壁部11d、および上側壁部11eと下側壁部11fで囲まれた音響空間を形成している。
【0019】
ヘッドレスト2は、後方に位置する頭部受け部2aと、頭部受け部2aの左右両側部から斜め前方に延びる側方対向部2bとが一体化されている。2つの側方対向部2b,2bは、前方(Z1方向)に向かうにしたがって左右方向へ互いに開くように傾いている。音響装置10を構成するエンクロージャ11は、それぞれの側方対向部2b内に収納されている。図2に示されるように、エンクロージャ11の発音側壁部11aは側方対向部2bの表面に現れており、発音側壁部11aも前後方向(Z1-Z2方向)に対して傾いている。発音側壁部11aが前後方向に対して傾いている角度θは、0度以上で90度未満である。好ましくは0度以上で60度以下、さらに好ましくは0度以上で30度以下である。
【0020】
エンクロージャ11の発音側壁部11aに保持穴11gが形成されており、この保持穴11gにスピーカ20が保持されている。図2に示されるα方向がスピーカ20の発音方向であり、β方向が背部方向である。エンクロージャ11はスピーカ20を背部から覆う音響空間を形成している。図2に示されるように、スピーカ20は保持穴11gに固定されるフレーム21を有している。フレーム21には磁気回路22と振動板23とが支持されている。振動板23の中心部はダンパーを介してフレーム21に支持され、振動板23の外周部はエッジ部材を介してフレーム21に支持されている。ダンパーとエッジ部材によって振動板23が発音方向αへ向けて振動可能である。振動板23にはボビンとボビンに巻かれたボイスコイルが設けられており、ボイスコイルが磁気回路22に形成された磁気ギャップ内に位置している。ボイスコイルにボイス電流が流れると、ボイスコイルに作用する電磁力により振動板23が振動し音圧が生成される。発音方向αへ向けて聴取すべき音圧が与えられ、背部方向βには発音方向αと位相が逆の音圧が与えられる。振動板23および振動板23の外周部に接続されているエッジ部材を、α―β方向と直交する平面に投影した投影像の面積がスピーカの有効振動面積である。
【0021】
エンクロージャ11の発音側壁部11aには、保持穴11gよりも前方に開口部30が形成されている。図1に示されるように開口部30は円形の領域を占めており、この領域内に、上下方向(Y1-Y2方向)に細長いスリット31とスリット31を区分する複数のリブ32が形成されている。開口部30に位置するスリットの面積の総和が開口部30の開口面積である。開口部30の開口面積は、スピーカ20の有効振動面積と同じ、または有効振動面積よりも大きい。
【0022】
本明細書での開口部は、複数の小穴の集合体であってもよい。スリットや小穴が形成されている領域は円形に限られず、長円形や四角形であってもよい。開口部は、その領域内で、スリットや穴の面積の総和が、スリットや小穴が形成されていない部分(リブ32など)の面積の総和と同じか、またはそれ以上であることが必要である。また、開口部は円形や四角形の範囲全体が開放された大きな穴であってもよい。
【0023】
図2に示されるように、スピーカ20の有効振動面積の中心から聴取者の耳Eまでの距離をL1、開口部30の領域の中心(図心)から聴取者の耳Eまでの距離をL2とすると、L2はL1よりも長く、L2はL1の2倍以上である。スピーカ20は発音方向αが耳Eに向けられている。開口部30は、耳Eよりも前方に位置している。スピーカ20と開口部30は、エンクロージャ11の同じ発音側壁部11aに設けられ、発音側壁部11aは、前後方向(Z1-Z2方向)に対して開き角度θを有している。そのため、スピーカ20が耳Eの近くに位置し、開口部30は、耳Eよりも前方で耳Eから遠い位置となる。
【0024】
次に、前記音響装置10の動作を説明する。
図1に示されるように、一対の音響装置10は、ヘッドレスト2のそれぞれの側方対向部2bに設けられており、音響装置10が、左右の耳Eのそれぞれに対向し、2つの音響装置10からそれぞれの耳Eに音圧が与えられる。図2には、左側の音響装置10から左の耳Eに与えられる音圧の伝搬状態が模式的に示されている。スピーカ20から発音方向αへ与えられる音圧と、スピーカ20から背部方向βに与えられる音圧とは移動が逆であるため、スピーカ20から耳Eに直接に与えられる音圧と、開口部30から斜め前方に与えられる音圧とが逆位相になる。
【0025】
スピーカ20から発音方向αへ出力される音圧のうち、中高音域の音圧(i)は直進性にすぐれ、しかもスピーカ20から耳Eまでの距離が短いので、中高音域の音声を耳で十分な音量で鮮明に聴き取ることができる。スピーカ20から発音方向αへ出力される低音域の音圧(ii)は、波長が長いために広い範囲に及び、この音圧(ii)が、開口部30から出力される逆位相の音圧(iii)で打ち消される。開口部30の開口面積がスピーカ20の振動有効面積よりも大きいため、逆位相の音圧(iii)が広い範囲に及び、スピーカ20から発せられる低音域の音圧が効果的に打ち消される。
【0026】
実施形態の音響装置10では、以下の効果を期待できる。
(1)開口部30の開口面積がスピーカ20の有効振動面積よりも大きく、開口部30は耳Eから前方に離れた位置にあるため、耳Eよりも前方において、開口部30によるキャンセリングがより有効に働くことになる。聴取者は頭部Hを後方に移動させ頭部受け部2aに密着しているときにスピーカ20からの音圧を鮮明に聴くことができるが、頭部Hを頭部受け部2aから離して前方(Z1方向)へ移動させると、耳Eがスピーカ20から遠ざかって中高音域の音圧(i)が耳Eに届きにくくなり、さらに開口部30からの逆位相の音圧(iii)のキャンセリング効果により、耳Eに届く音量が低減する。そのため、聴取者は頭部受け部2aに頭部Hを密着させた姿勢を維持するようになる。よって、車両の座席に音響装置10を設置すると、搭乗者の安全性を確保しやすくなる。特に聴取者が幼児の場合には、頭部Hをヘッドレスト2から浮かせるのを抑制でき、走行中の安全性を確保しやすい。中高音域の音圧は直進性に優れ、スピーカ20から耳Eまでの距離が短いので、幼児向けの中高音域の多い音声を耳Eで鮮明に聴くことができる。また、大人の聴取者の場合には、頭部Hをヘッドレスト2に密着させた姿勢としていると、高音域であるカーナビゲーションの案内音声や、各種警告音などを確実に聴くことができるようになる。
【0027】
(2)開口部30は開口面積が大きく、スピーカ20よりも前方に位置しているため、スピーカ20からの音圧が前方において効果的に打ち消される。そのため、図2において(a)で示されるように、ヘッドレスト2の前方や上方へ回折して広がろうとする低音域の音圧(ii)を、開口部30からの逆位相の音圧(iii)で効果的に打ち消すことができる。そのため、ヘッドレスト2から離れた周囲への音漏れを防止しやすくなり、他の座席で同様の音響装置を使用して個別に音楽を聴取しているときに、他の座席の搭乗者へ低音域の音漏れ及ぶのを防止しやすい。
【0028】
図3に本発明の第2実施形態の音響装置110が示されている。この音響装置110は、開口部30のスリット31を開閉する、言い換えると開口部30を閉鎖し開放する開閉部材33が設けられている。開閉部材33は手動で動作させることができ、または電動で動作させることもできる。音響装置110は、開閉部材33以外の構成が第1実施形態の音響装置10と同じである。この音響装置110を使用する際に、他の座席に搭乗者が座っており、他の座席の搭乗者への音漏れを低減したい場合には、開口部30を開放させた状態で音声の再生を行う。また、一人で搭乗しているときなど、周囲への音漏れの抑制が不要なときは、開閉部材33を操作させて開口部30を閉鎖する。その結果、スピーカ20からの音声を、開口部30からの音圧で打ち消すことなく聴取することができる。
【0029】
図4に本発明の第3実施形態の音響装置210が示されている。この音響装置210は、第2実施形態の音響装置110と同様に開口部30を閉鎖し開放する開閉部材33が設けられている。エンクロージャ11の発音側壁部11aに、バスレフポート15が開口している。バスレフポート15には、エンクロージャ11の内部に延びる共鳴管16が一体化されている。バスレフポート15は、スピーカ20と開口部30との間に位置している。バスレフポート15の開口面積は、開口部30の開口面積よりも小さく、スピーカ20の振動有効面積よりも小さい。
【0030】
音響装置210を使用する際に、周囲への低音域の音漏れを抑制する必要があるときは、開閉部材33を動作させて開口部30を開放させる。このときの動作は、前記音響装置10,110と同じであり、開口部30から出力される逆位相の音圧で、スピーカ20からの主に低音域の音圧を打ち消すことができる。開口部30を開放させた状態では、エンクロージャ11の内部空間が開口部30を経て外気と連通しているため、バスレフポート15を有していてもヘルムホルツ共鳴効果はほとんど発揮しない。他の座席に搭乗者が着座していないときなど、周囲への音漏れが気にならないときは、開閉部材33を動作させて開口部30を閉鎖状態とする。このとき、エンクロージャ11の内部空間は実質的に密閉状態となり、バスレフポート15の存在によりヘルムホルツ共鳴効果を発揮でき、低音を強調した音声を耳Eに与えることができる。
【0031】
前記各実施形態では、それぞれのエンクロージャ11に1つのスピーカ20が設置されているが、エンクロージャ11に、前記スピーカ20と併設してツイータ用など他のスピーカを設置してもよい。
【符号の説明】
【0032】
2 ヘッドレスト
10,110,210 音響装置
11 エンクロージャ
11a 発音側壁部
11g 保持穴
15 バスレフポート
20 スピーカ
23 振動板
30 開口部
33 開閉部材
図1
図2
図3
図4