(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152361
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】液晶パネル及び3次元表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1339 20060101AFI20241018BHJP
G02F 1/1347 20060101ALI20241018BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G02F1/1339 500
G02F1/1347
G02F1/13 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066508
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】松本 博美
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 貴啓
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝
(72)【発明者】
【氏名】坂井 彰
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
【Fターム(参考)】
2H088EA07
2H088EA33
2H088JA09
2H088KA26
2H088KA27
2H088MA04
2H088MA17
2H189AA22
2H189AA32
2H189AA35
2H189DA04
2H189DA06
2H189DA07
2H189DA12
2H189DA31
2H189DA34
2H189DA38
2H189FA81
2H189HA04
2H189HA14
2H189JA07
2H189LA05
2H189LA20
2H189NA13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】額縁領域近傍の表示領域における白ムラ、及び、表示領域における縦のスジムラを抑制することができる液晶パネル、及び、上記液晶パネルを備える3次元表示装置を提供する。
【解決手段】表示領域と、額縁領域と、を備え、第1の基板と、上記第1の基板に対向して配置された第2の基板と、を有し、上記表示領域において、上記第1の基板と上記第2の基板との間には液晶層が配置され、上記額縁領域において、上記第1の基板と上記第2の基板との間にはシール部が配置され、上記第1の基板は、第1の支持基板と、第1の基板側絶縁層と、を上記液晶層側に向かって順に有し、上記第2の基板は、上記液晶層側に突出した突出部を有し、上記第1の基板側絶縁層は、上記液晶層側の表面が平坦である第1の厚み部分と、上記第1の厚み部分よりも上記液晶層側に突出し、かつ、上記突出部に対向して配置された第2の厚み部分と、を有する液晶パネル。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域と、前記表示領域の周囲に配置された額縁領域と、を備え、
第1の基板と、前記第1の基板に対向して配置された第2の基板と、を有し、
前記表示領域において、前記第1の基板と前記第2の基板との間には液晶層が配置され、
前記額縁領域において、前記第1の基板と前記第2の基板との間にはシール部が配置され、
前記第1の基板は、第1の支持基板と、第1の基板側絶縁層と、を前記液晶層側に向かって順に有し、
前記第2の基板は、前記液晶層側に突出した突出部を有し、
前記第1の基板側絶縁層は、前記液晶層側の表面が平坦である第1の厚み部分と、前記第1の厚み部分よりも前記液晶層側に突出し、かつ、前記突出部に対向して配置された第2の厚み部分と、を有することを特徴とする液晶パネル。
【請求項2】
前記第2の厚み部分は、円錐台状であることを特徴とする請求項1に記載の液晶パネル。
【請求項3】
前記第2の厚み部分の、前記第1の厚み部分よりも前記液晶層側に突出した部分の高さ、及び、前記突出部の高さの合計は、前記液晶層の厚さと等しいことを特徴とする請求項1に記載の液晶パネル。
【請求項4】
平面視において、前記突出部の前記第1の基板に対向する面全体は、前記第2の厚み部分の前記第2の基板に対向する面の内側に含まれることを特徴とする請求項1に記載の液晶パネル。
【請求項5】
前記第2の基板は、第2の支持基板と、第2の基板側絶縁層と、を前記液晶層側に向かって順に有することを特徴とする請求項1に記載の液晶パネル。
【請求項6】
前記第2の基板側絶縁層は、前記液晶層側の表面が平坦である第3の厚み部分と、前記第3の厚み部分よりも前記液晶層側に突出した第4の厚み部分と、を有し、
前記第4の厚み部分は、前記突出部であることを特徴とする請求項5に記載の液晶パネル。
【請求項7】
前記第1の基板は、更に、前記第1の基板側絶縁層の前記液晶層側に配置された第1の透明導電膜と、前記第1の透明導電膜の前記液晶層側に配置された第1の絶縁層と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の液晶パネル。
【請求項8】
前記第2の基板は、第2の支持基板と、前記第2の支持基板の前記液晶層側に配置された第2の透明導電膜と、前記第2の透明導電膜の前記液晶層側に配置された第2の絶縁層と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の液晶パネル。
【請求項9】
観察者側に向かって順に、
表示パネルと、
透過軸を有する偏光板と、
請求項1~8のいずれかに記載の液晶パネルと、
偏光メガネと、を備えることを特徴とする3次元表示装置。
【請求項10】
更に、前記偏光板と前記液晶パネルとの間に、λ/4位相差板を備え、
前記液晶パネルは、位相差をλ/2と0nmとの間で切り替え可能であり、
前記液晶パネルの遅相軸は、前記λ/4位相差板の遅相軸と直交することを特徴とする請求項9に記載の3次元表示装置。
【請求項11】
観察者側に向かって順に、
表示パネルと、
透過軸を有する偏光板と、
請求項1~8のいずれかに記載の液晶パネルからなる第1の液晶パネルと、
請求項1~8のいずれかに記載の液晶パネルからなる第2の液晶パネルと、
偏光メガネと、を備えることを特徴とする3次元表示装置。
【請求項12】
更に、前記偏光板と前記液晶パネルとの間に、λ/4位相差板を備え、
前記第1の液晶パネル及び前記第2の液晶パネルは、それぞれ、位相差をλ/4と0nmとの間で切り替え可能であり、
前記第1の液晶パネルの遅相軸は、前記λ/4位相差板の遅相軸と直交し、
前記第2の液晶パネルの遅相軸は、前記λ/4位相差板の遅相軸と直交することを特徴とする請求項11に記載の3次元表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、液晶パネル及び上記液晶パネルを備える3次元表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル等の光学素子は、画像を表示するために用いられる他、視野角の補償等を目的として用いられることもある。光学素子に関する技術として、例えば、特許文献1には、帯状シールを介して組み合わされる一対の電極基板と、これら電極基板間にて前記シールにより密封される液晶とを備えた液晶セルにおいて、前記一対の電極基板の各内表面の少なくとも一方に、前記シールに対向する位置にて溝が形成され、前記一対の電極基板が、前記シールを前記溝内に位置させて組み合わされている液晶セルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、液晶パネルを用いた3次元表示装置の開発が進められている。3次元表示方法の一つに、液晶パネルを2枚積層した表示装置において、背面側の液晶パネルに左目及び右目用画像を交互に表示し、観察面側の液晶パネルでそれぞれの画像の偏光状態を制御し、偏光メガネを使用して左目及び右目用画像を分離して視認させる方式が提案されている。観察面側の液晶パネルは、いわゆるアクティブリターダーとして機能する。このように、左目及び右目にそれぞれ別の画像を時分割で届けることで奥行きを感じさせる表示装置を、アクティブリターダー方式の3次元表示装置ともいう。
【0005】
図18は、比較形態に係る表示装置の表示ムラを示す写真である。比較形態の表示装置は、表示用液晶パネルと、当該表示用液晶パネルの観察面側に配置された液晶パネルと、を備える。観察面側に配置された液晶パネルは、一対の基板間にECB(Electrically Controlled Birefringene)モードの液晶層が挟持された液晶パネルであり、アクティブリターダーとして機能する。
【0006】
比較形態の表示装置では、
図18に示すように、額縁領域近傍の表示領域(より具体的には、シール部近傍の表示領域)に白ムラが発生する。また、比較形態の表示装置では、
図18に示すように、表示領域において20~30mmのピッチで縦のスジムラが発生する。
【0007】
上記特許文献1では、額縁領域近傍の表示領域における白ムラ、及び、表示領域における縦のスジムラを抑制する技術については検討されていない。
【0008】
本発明は上記現状に鑑みてなされたものであり、額縁領域近傍の表示領域における白ムラ、及び、表示領域における縦のスジムラを抑制することができる液晶パネル、及び、上記液晶パネルを備える3次元表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一実施形態は、表示領域と、上記表示領域の周囲に配置された額縁領域と、を備え、第1の基板と、上記第1の基板に対向して配置された第2の基板と、を有し、上記表示領域において、上記第1の基板と上記第2の基板との間には液晶層が配置され、上記額縁領域において、上記第1の基板と上記第2の基板との間にはシール部が配置され、上記第1の基板は、第1の支持基板と、第1の基板側絶縁層と、を上記液晶層側に向かって順に有し、上記第2の基板は、上記液晶層側に突出した突出部を有し、上記第1の基板側絶縁層は、上記液晶層側の表面が平坦である第1の厚み部分と、上記第1の厚み部分よりも上記液晶層側に突出し、かつ、上記突出部に対向して配置された第2の厚み部分と、を有する液晶パネル。
【0010】
(2)また、本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、上記第2の厚み部分は、円錐台状である、液晶パネル。
【0011】
(3)また、本発明のある実施形態は、上記(1)又は上記(2)の構成に加え、上記第2の厚み部分の、上記第1の厚み部分よりも上記液晶層側に突出した部分の高さ、及び、上記突出部の高さの合計は、上記液晶層の厚さと等しい、液晶パネル。
【0012】
(4)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)又は上記(3)の構成に加え、平面視において、上記突出部の上記第1の基板に対向する面全体は、上記第2の厚み部分の上記第2の基板に対向する面の内側に含まれる、液晶パネル。
【0013】
(5)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)又は上記(4)の構成に加え、上記第2の基板は、第2の支持基板と、第2の基板側絶縁層と、を上記液晶層側に向かって順に有する、液晶パネル。
【0014】
(6)また、本発明のある実施形態は、上記(5)の構成に加え、上記第2の基板側絶縁層は、上記液晶層側の表面が平坦である第3の厚み部分と、上記第3の厚み部分よりも上記液晶層側に突出した第4の厚み部分と、を有し、上記第4の厚み部分は、上記突出部である、液晶パネル。
【0015】
(7)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)、上記(5)又は上記(6)の構成に加え、上記第1の基板は、更に、上記第1の基板側絶縁層の上記液晶層側に配置された第1の透明導電膜と、上記第1の透明導電膜の上記液晶層側に配置された第1の絶縁層と、を備える、液晶パネル。
【0016】
(8)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)、上記(5)、上記(6)又は上記(7)の構成に加え、上記第2の基板は、第2の支持基板と、上記第2の支持基板の上記液晶層側に配置された第2の透明導電膜と、上記第2の透明導電膜の上記液晶層側に配置された第2の絶縁層と、を備える、液晶パネル。
【0017】
(9)また、本発明の他の一実施形態は、観察者側に向かって順に、表示パネルと、透過軸を有する偏光板と、上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)、上記(5)、上記(6)、上記(7)又は上記(8)のいずれかに記載の液晶パネルと、偏光メガネと、を備える、3次元表示装置。
【0018】
(10)また、本発明のある実施形態は、上記(9)の構成に加え、更に、上記偏光板と上記液晶パネルとの間に、λ/4位相差板を備え、上記液晶パネルは、位相差をλ/2と0nmとの間で切り替え可能であり、上記液晶パネルの遅相軸は、上記λ/4位相差板の遅相軸と直交する、3次元表示装置。
【0019】
(11)また、本発明の他の一実施形態は、観察者側に向かって順に、表示パネルと、透過軸を有する偏光板と、上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)、上記(5)、上記(6)、上記(7)又は上記(8)のいずれかに記載の液晶パネルからなる第1の液晶パネルと、上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)、上記(5)、上記(6)、上記(7)又は上記(8)のいずれかに記載の液晶パネルからなる第2の液晶パネルと、偏光メガネと、を備える、3次元表示装置。
【0020】
(12)また、本発明のある実施形態は、上記(11)の構成に加え、更に、上記偏光板と上記液晶パネルとの間に、λ/4位相差板を備え、上記第1の液晶パネル及び上記第2の液晶パネルは、それぞれ、位相差をλ/4と0nmとの間で切り替え可能であり、上記第1の液晶パネルの遅相軸は、上記λ/4位相差板の遅相軸と直交し、上記第2の液晶パネルの遅相軸は、上記λ/4位相差板の遅相軸と直交する、3次元表示装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、額縁領域近傍の表示領域における白ムラ、及び、表示領域における縦のスジムラを抑制することができる液晶パネル、及び、上記液晶パネルを備える3次元表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態1に係る液晶パネルの断面模式図である。
【
図2】比較形態のアクティブリターダーの断面模式図である。
【
図3】実施形態1の変形例1に係る液晶パネルの断面模式図である。
【
図4】実施形態1の変形例2に係る液晶パネルの断面模式図である。
【
図5】実施形態2に係る3次元表示装置の偏光状態について説明する分解模式図である。
【
図6】実施形態2に係る3次元表示装置の軸方位について説明する分解模式図である。
【
図7】実施形態2に係る3次元表示装置の一例を示す模式図である。
【
図8】実施形態2の変形例1に係る3次元表示装置の一例を示す模式図である。
【
図9】実施例1に係る液晶パネルの、非点灯黒表示状態を示す写真である。
【
図10】比較例1に係る液晶パネルの、非点灯黒表示状態を示す写真である。
【
図11】
図10において破線で囲まれた領域の拡大写真である。
【
図12】実施例1に係る液晶パネルのメインスペーサ及びサブスペーサを示す断面模式図である。
【
図13】比較例1に係る液晶パネルのメインスペーサ及びサブスペーサを示す断面模式図である。
【
図14】実施例1に係る液晶パネルの断面模式図の一例である。
【
図15】比較例1に係る液晶パネルの断面模式図の一例である。
【
図16】比較例1に係る液晶パネルの縦のスジムラを示す写真である。
【
図17】比較例1に係る液晶パネルが押圧された場合を示す断面模式図である。
【
図18】比較形態に係る表示装置の表示ムラを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に記載された内容に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。なお、以下の説明において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して適宜用い、その繰り返しの説明は適宜省略する。本発明の各態様は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよい。
【0024】
[用語の定義]
本明細書中、ある部材の観察面側とは、当該部材に対して観察者により近い側を意味し、ある部材の背面側とは、当該部材に対して観察者からより遠い側を意味する。
【0025】
本明細書中、方位とは、対象となる方向を液晶パネルの画面上に射影したときの方向を意味し、基準となる方位との間のなす角度(方位角)で表現される。角度(方位角)は、液晶パネルの画面を観察面側(正面)から見たときに、反時計回りを正の角度、時計回りを負の角度とする。また、角度(方位角)は、表示パネルを平面視した状態で測定された値を表す。
【0026】
本明細書中、2つの直線(軸及び方向を含む)が互いに直交するとは、特に断りのない限り、平面視した状態で直交することを意味する。2つの直線(軸及び方向を含む)が平行であるとは、特に断りのない限り、平面視した状態で平行であることを意味する。
【0027】
本明細書中、2つの軸(方向)が互いに直交するとは、両者のなす角度(絶対値)が90±3°の範囲内であることを指し、好ましくは90±1°の範囲内であり、より好ましくは90±0.5°の範囲内であり、特に好ましくは90°(完全に直交)である。また、2つの軸(方向)が平行であるとは、両者のなす角度(絶対値)が0±3°の範囲内であることを指し、好ましくは0±1°の範囲内であり、より好ましくは0±0.5°の範囲内であり、特に好ましくは0°(完全に平行)である。
【0028】
本明細書中、軸方位とは、特に断りのない限り偏光板の透過軸、位相差板の遅相軸の方位、又は、液晶層の遅相軸の方位を意味する。
【0029】
本明細書では、液晶パネルの遅相軸と平行な方向をx軸、それと直交する方向をy軸と定義する。「nx」は、x軸方向の屈折率であり、「ny」は、y軸方向の屈折率であり、「nz」は、厚み方向の屈折率である。屈折率は、特に断りのない限り、23℃、波長550nmの光に対する値を指す。ちなみに、波長550nmの光は、人間の視感度が最も高い波長の光である。
【0030】
本明細書中、面内位相差(Re)は、23℃、特に明記しなければ波長550nmにおける層(フィルム)の面内位相差をいう。Reは、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、Re=(nx-ny)×dによって求められる。本明細書中、特に断りのない限り、「位相差」は面内位相差を指す。
【0031】
本明細書において、+λ/4の位相差とは、遅相軸がx軸方向に平行であり、かつ、位相差の絶対値がλ/4であることをいう。-λ/4の位相差とは、遅相軸がy軸方向に平行であり、かつ、位相差の絶対値がλ/4であることをいう。位相差の絶対値がλ/4であるとは、位相差の絶対値が100nm以上、176nm以下であればよく、特に好ましくは137.5nmである。λ/2の位相差とは、240nm以上、310nm以下の位相差であればよく、特に好ましくは275nmの位相差である。
【0032】
本明細書中、λ/4位相差板は、位相差の絶対値がλ/4である位相差板をいう。本明細書中、λ/2位相差板は、位相差の絶対値がλ/2である位相差板をいう。
【0033】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に記載された内容に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。
【0034】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る液晶パネルの断面模式図である。
図1に示すように、本実施形態の液晶パネル10は、表示領域10AAと、表示領域10AAの周囲に配置された額縁領域10NAと、を備え、第1の基板110と、第1の基板110に対向して配置された第2の基板120と、を有する。表示領域10AAにおいて、第1の基板110と第2の基板120との間には液晶層130が配置される。額縁領域10NAにおいて、第1の基板110と第2の基板120との間にはシール部140が配置される。第1の基板110は、第1の支持基板111と、第1の基板側絶縁層110Xと、を液晶層130側に向かって順に有する。第2の基板120は、液晶層130側に突出した上記突出部としてのスペーサ120Aを有する。第1の基板側絶縁層110Xは、液晶層130側の表面が平坦である第1の厚み部分110XAと、第1の厚み部分110XAよりも液晶層130側に突出し、かつ、上記突出部としてのスペーサ120Aに対向して配置された第2の厚み部分110XBと、を有する。
【0035】
このように、第2の厚み部分110XBがスペーサ120Aに対向して配置されることにより、第2の厚み部分110XBでスペーサ120Aを支えることが可能となるため、額縁領域10NA(具体的にはシール部140)近傍の表示領域10AAにおける基板内側の総厚が、額縁領域10NAから離れた箇所の表示領域10AAにおける基板内側の総厚よりも大きくなるのを抑え、液晶層130の厚み(セル厚ともいう)のムラを抑制することができる。その結果、例えば、本実施形態の液晶パネル10をアクティブリターダーとして用いる場合に、額縁領域10NA近傍の表示領域10AAにおける白ムラを抑制することができる。ここで、「基板内側」とは、第1の基板110が有する支持基板(例えば、ガラス基板)と、第2の基板120が有する支持基板(例えば、ガラス基板)との間の領域をいう。支持基板がガラス基板であるとき、「基板内側」を特に「ガラス基板内側」という。
【0036】
また、液晶層130側の表面が平坦な第1の厚み部分110XAを第1の支持基板111上に備えることにより、第1の支持基板111の製造時に発生する基板表面のうねりが液晶層130へ与える影響を低減することができる。その結果、液晶層130の厚みのムラを抑制することができ、本実施形態の液晶パネル10をアクティブリターダーとして用いる場合に、縦のスジムラを抑制することができる。
【0037】
ここで、比較形態のアクティブリターダーについて説明する。
図2は、比較形態のアクティブリターダーの断面模式図である。
図2に示すように、比較形態の液晶パネル10Rは、表示領域10AAと、表示領域10AAの周囲に配置された額縁領域10NAと、を備え、第1の基板110Rと、第1の基板110Rに対向して配置された第2の基板120と、を有する。表示領域10AAにおいて、第1の基板110Rと第2の基板120との間には液晶層130が配置され、額縁領域10NAおいて、第1の基板110Rと第2の基板120との間にはシール部140が配置されている。
【0038】
より具体的には、表示領域10AAにおいて、第1の基板110Rは、第1の支持基板111と、第1の透明導電膜112と、第1の絶縁層113と、を液晶層130側に向かって順に備える。表示領域10AAにおいて、第2の基板120は、第2の支持基板121と、第2の透明導電膜122と、第2の絶縁層123と、スペーサ120ARと、を液晶層130側に向かって順に備える。
【0039】
額縁領域10NAにおいて、第1の基板110Rは、第1の支持基板111と、第1の金属層114と、第1の透明導電膜112と、第1の絶縁層113と、をシール部140側に向かって順に備える。額縁領域10NAにおいて、第2の基板120は、第2の支持基板121と、第2の金属層124と、第2の透明導電膜122と、第2の絶縁層123と、をシール部140側に向かって順に備える。
【0040】
第1の基板110と液晶層130との間には第1の配向膜151が配置され、第2の基板120と液晶層130との間には第2の配向膜152が配置されている。
【0041】
第1の支持基板111及び第2の支持基板121はガラス基板であり、第1の支持基板111及び第2の支持基板121の厚みは、それぞれ、0.5mmである。第1の透明導電膜112の厚みは、70nmである。第1の絶縁層113の厚みは、530nmである。第2の透明導電膜122の厚みは、140nmである。第2の絶縁層123の厚みは、680nmである。第1の配向膜151及び第2の配向膜152の厚みは、それぞれ、90nmである。第1の金属層114及び第2の金属層124の厚みは、それぞれ、360nmである。液晶パネル10Rの最適なセル厚(液晶層130の厚み)は、約1.62μmである。
【0042】
表示領域10AAにおいて、第1の支持基板111と第2の支持基板121との間には、第1の透明導電膜112、第1の絶縁層113、第1の配向膜151、液晶層130、第2の配向膜152、第2の絶縁層123及び第2の絶縁層123が配置されている。したがって、表示領域10AAにおけるガラス基板内側の総厚、すなわち、表示領域10AAにおいて第1の支持基板111及び第2の支持基板121で挟持されたガラス基板内側の総厚は、3220nmである。
【0043】
額縁領域10NAにおいて、第1の支持基板111と第2の支持基板121との間には、第1の金属層114、第1の透明導電膜112、第1の絶縁層113、シール部140、第2の絶縁層123、第2の透明導電膜122及び第2の金属層124が配置されている。
【0044】
表示品位を考慮した場合、額縁領域10NAにおけるガラス基板内側の総厚は、表示領域10AAにおけるガラス基板内側の総厚と等しくなるべきである。コモン転移方式の電圧入力の場合、額縁領域10NAにおけるガラス基板内側の総厚の調整は、通常、シール用導電性ビーズとシール用スペーサで行う。
【0045】
比較形態の液晶パネル10Rの場合、本来であればシール部140の高さが1080nmになるような径のシール用導電性ビーズ(直径:1.51μm)とシール用スペーサ(直径1.08μm)とを使うべきである。しかしながら、市販品および材料メーカー開発品でのシール用導電性ビーズの最小径は3.0μmであり、その場合シール用スペーサ径は2.0μmとなる。シール部140の高さはシール用スペーサ径とほぼ等しくなることから、額縁領域10NAにおけるガラス基板内側の総厚は4140nmとなり、表示領域10AAにおけるガラス基板内側の総厚よりも920nm大きくなる。
【0046】
この総厚の差により、比較形態の液晶パネル10Rではシール部140が柱となり、シール部140近傍の表示領域10AAの高さが抑えられずセル厚が大きくなる。すなわち、シール部140近傍の表示領域10AAにおけるガラス基板内側の総厚が、額縁領域10NAから離れた箇所の表示領域10AAにおけるガラス基板内側の総厚よりも大きくなり、シール部140近傍の表示領域10AAでは所望のリタデーションが得られない。その結果、比較形態の液晶パネル10Rをアクティブリターダーとして用いる場合、シール部140近傍(額縁領域10NA近傍)の表示領域10AAにおいて表示ムラが視認される。アクティブリターダーとして用いられる比較形態の液晶パネル10Rの最適なセル厚は2.0μm以下(例えば、約1.62μm)と狭いため、セル厚の均一性が重要課題である。
【0047】
ここで、シール用スペーサ径の算出方法について説明する。最適なシール用スペーサの直径は、シール用導電性ビーズの直径に、シール用導電性ビーズの圧縮率を乗じた長さである。例えば、直径3.0μm、圧縮率が0.714であるシール用導電性ビーズを用いる場合、最適なシール用スペーサの直径は、下記(式S1)より2.14μmである。
最適なシール用スペーサの直径=3.0μm×0.714=2.14μm (式S1)
【0048】
市販のシール用スペーサのラインナップより、比較形態の液晶パネルでは直径2.0μmのシール用スペーサを用いている。
【0049】
また、比較形態の液晶パネル10Rを3Dアクティブリターダーとして用いた表示装置では、表示領域10AAにおいて縦のスジムラが発生する。ガラス基板製造時に発生するガラス基板のうねりが干渉することにより、セル厚が不均一になり、縦のスジムラが発生すると考えられる。
【0050】
上記特許文献1における絶縁層は、セル厚調整のための嵩上げ層である。当該絶縁層の厚みは均一であり、本実施形態の第1の基板側絶縁層110Xのような2つの厚みを有する絶縁層については開示されていない。また、特許文献1には、絶縁層のエッジ形状や、表面構造までは言及されていない。
【0051】
一方、本実施形態の液晶パネル10では、スペーサ120Aと対向する領域に、第1の厚み部分110XAよりも厚い第2の厚み部分110XBが配置されることにより、セル厚ムラを抑制することが可能となる。その結果、本実施形態の液晶パネル10をアクティブリターダーとして用いる場合に、額縁領域10NA近傍の表示領域10AAにおける白ムラを抑制することができる。また、本実施形態の液晶パネル10をアクティブリターダーとして用いる場合に、縦のスジムラを抑制することができる。以下、本実施形態の液晶パネル10について詳細に説明する。
【0052】
図1に示すように、実施形態の液晶パネル10は、表示領域10AAと、表示領域10AAの周囲に配置された額縁領域10NAと、を備え、第1の基板110と、第1の基板110に対向して配置された第2の基板120と、を有する。表示領域10AAにおいて、第1の基板110と第2の基板120との間には液晶層130が配置され、額縁領域10NAおいて、第1の基板110と第2の基板120との間にはシール部140が配置されている。ここで、ある部材が他の部材に対向して配置されるとは、例えば、平面視において、ある部材が他の部材と重畳することをいい、平面視において、ある部材の面積の90%以上、100%以下が、他の部材と重なることが好ましく、ある部材の面積の95%以上、100%以下が、他の部材と重なることがより好ましい。
【0053】
表示領域10AAにおいて、第1の基板110は、第1の支持基板111と、第1の基板側絶縁層110Xと、第1の透明導電膜112と、第1の絶縁層113と、を液晶層130側に向かって順に備える。表示領域10AAにおいて、第2の基板120は、第2の支持基板121と、第2の透明導電膜122と、第2の絶縁層123と、スペーサ120Aと、を液晶層130側に向かって順に備える。表示領域10AAは、位相差が変化し得る領域である。
【0054】
額縁領域10NAにおいて、第1の基板110は、第1の支持基板111と、第1の金属層114と、第1の透明導電膜112と、第1の絶縁層113と、をシール部140側に向かって順に備える。額縁領域10NAにおいて、第2の基板120は、第2の支持基板121と、第2の金属層124と、第2の透明導電膜122と、第2の絶縁層123と、をシール部140側に向かって順に備える。
【0055】
第1の基板110と液晶層130との間には第1の配向膜151が配置され、第2の基板120と液晶層130との間には第2の配向膜152が配置されている。
【0056】
第1の基板側絶縁層110Xは、液晶層130側の表面が平坦である第1の厚み部分110XAと、第1の厚み部分110XAよりも液晶層130側に突出し、かつ、上記突出部としてのスペーサ120Aに対向して配置された第2の厚み部分110XBと、を有する。
【0057】
第2の厚み部分110XBの形状は特に限定されないが、第2の厚み部分110XBは、例えば、円錐台状、円柱状、角錐台状、角柱状等である。第2の厚み部分110XBは、円錐台状であることが好ましい。ここで、第2の厚み部分110XBの形状とは、第2の厚み部分110XBの第1の厚み部分110XAよりも液晶層130側に突出した部分の形状をいう。
【0058】
第1の基板側絶縁層110Xは、単層であっても、複数の層の積層体であってもよいが、単層であることが好ましい。例えば、第1の基板側絶縁層110Xが2層で構成される場合として、次のような構成が挙げられる。すなわち、第1の厚み部分110XA、及び、第2の厚み部分110XBのうち第1の厚み部分110XAの延長線上に配置される部分が単一の層で構成され、第2の厚み部分110XBのうち第1の厚み部分110XAよりも液晶層130側に突出した部分が上記単一の層とは異なる層で構成されてもよい。
【0059】
第1の基板側絶縁層110Xとしては、例えば、有機絶縁層を用いることができる。有機絶縁層としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ノボラック樹脂等の有機膜や、それらの積層体を用いることができる。
【0060】
第1の厚み部分110XAは、液晶層130側の表面が平坦である。このような態様とすることにより、第1の支持基板111の製造時に発生する基板表面のうねりが液晶層130へ与える影響を低減することができる。その結果、液晶層130の厚みのムラを抑制することができ、本実施形態の液晶パネル10をアクティブリターダーとして用いる場合に、縦のスジムラを抑制することができる。本明細書において、平坦であるとは、例えば、JIS B0601に準拠した十点平均粗さ(Rzjis)が0μm以上、0.2μm以下であることをいう。
【0061】
第1の厚み部分110XAは、表示領域10AAの面積の99.00%以上、99.99%以下を占めることが好ましく、99.50%以上、99.99%以下を占めることがより好ましく、99.94%以上、99.98%以下を占めることが更に好ましい。
【0062】
第1の厚み部分110XAは、表示領域10AAにおけるガラス基板内側の総厚と、額縁領域10NAにおけるガラス基板内側の総厚とが等しくなるよう設けられる。このような態様とすることにより、額縁領域10NA近傍の表示領域10AAにおけるセル厚と、額縁領域10NAから離れた箇所の表示領域10AAにおけるセル厚との差を抑えることが可能となる。その結果、本実施形態の液晶パネル10をアクティブリターダーとして用いる場合に、額縁領域10NA近傍の表示領域10AAにおける白ムラを抑制することができ、アクティブリターダーの性能を高められる。
【0063】
第2の厚み部分110XBは、第1の厚み部分110XAよりも液晶層130側に突出している。第2の厚み部分110XBの高さ110XBH(厚み)は、第1の厚み部分110XAの高さ110XAHの1.0倍を超え、2.5倍以下であることが好ましく、1.1倍以上、2.0倍以下であることがより好ましく、1.2倍以上、1.6倍以下であることが更に好ましい。
【0064】
例えば、第1の厚み部分110XAの高さ110XAHは、750nm以上、1050nm以下であり、第2の厚み部分110XBの高さ110XBHは、1100nm以上、1400nm以下であることが好ましく、第1の厚み部分110XAの高さ110XAHは、800nm以上、1000nm以下であり、第2の厚み部分110XBの高さ110XBHは、1150nm以上、1350nm以下であることがより好ましく、第1の厚み部分110XAの高さ110XAHは、850nm以上、950nm以下であり、第2の厚み部分110XBの高さ110XBHは、1200nm以上、1300nm以下であることがより好ましい。
【0065】
第1の厚み部分110XAの高さ110XAHとは、第1の厚み部分110XAの第1の支持基板111側の面から第2の基板120側の面までの距離をいう。第2の厚み部分110XBの高さ110XBHとは、第2の厚み部分110XBの第1の支持基板111側の面から第2の基板120側の面までの距離をいう。ここで、第1の基板110側の面とは、第1の基板110に最も近い面をいい、第2の基板120側の面とは、第2の基板120に最も近い面をいう。
【0066】
第2の厚み部分110XBは、上記突出部としてのスペーサ120Aに対向して配置される。平面視において、上記突出部としてのスペーサ120Aの第1の基板110に対向する面120AT全体は、第2の厚み部分110XBの第2の基板120に対向する面110XBTの内側に含まれることが好ましい。このような態様とすることにより、スペーサ120Aの第1の基板110に対向する面120ATに対して、第2の厚み部分110XBの面110XBTを網羅的に配置することが可能となり、更に効果的に、セル厚を規定することができる。ここで、面全体とは、実質的に面全体であればよく、例えば、面全体の90%以上、100%以下の面積であればよい。また、内側に含まれるとは、完全に一致する場合も含むものとする。
【0067】
第2の厚み部分110XBは、上記突出部としてのスペーサ120Aに当接することが好ましい。より具体的には、液晶パネル10に荷重が加わっていない通常の状態において、第2の厚み部分110XBの頂部(第2の基板120側の面110XBT)は、スペーサ120Aの頂部(第1の基板110側の面120AT)に当接することが好ましい。このような態様とすることにより、第1の基板110と第2の基板120との間の距離(セル厚)を規定することができる。このようなスペーサ120Aは、メインスペーサともいう。なお、本明細書において当接するとは、直接接している場合だけでなく、他の部材を介して接している場合も含む。
【0068】
第2の厚み部分110XBの、第1の厚み部分110XAよりも液晶層130側に突出した部分の高さ110XBH1、及び、上記突出部としてのスペーサ120Aの高さ120AHの合計は、液晶層130の厚さ(セル厚(例えば、1.62μm))と等しいことが好ましい。このような態様とすることにより、より効果的に、セル厚を規定することができる。ここで、突出した部分の高さ110XBH1とは、第2の厚み部分110XBの高さ110XBHと第1の厚み部分110XAの高さ110XAHとの差である。また、高さが等しいとは、実質的に等しいことを意味し、例えば、高さの差が0nm以上、30nm以下であることをいう。
【0069】
上述の通り、第2の基板120が有するスペーサ120Aは、メインスペーサである。スペーサ120Aは、第2の支持基板121上に設けられ、液晶層130側に突出している。スペーサ120Aは、液晶パネル10に荷重が加わっていない通常の状態において、第1の基板110と第2の基板120との間隔(液晶層130の厚み)を保持する機能を有する。液晶パネル10に荷重が加わっていない通常の状態において、スペーサ120Aは、第1の基板110(より具体的には、第2の厚み部分110XB)に当接する。
【0070】
上記突出部としてのスペーサ120Aは、液晶層130側に突出していればよい。スペーサ120Aの高さ120AHは特に限定されないが、例えば、0.1μm以上、3.0μm以下である。
【0071】
第2の基板120は、更に、液晶層130側に突出し、かつ、第2の厚み部分110XBに対向しない第2の突出部としてのサブスペーサ120Bを備えていてもよい。液晶パネル10に荷重が加わっていない通常の状態において、サブスペーサ120Bは、第1の基板110に当接しない。しかしながら、液晶パネル10に荷重が加わると、サブスペーサ120Bは第1の基板110に当接する。その結果、スペーサ120A及びサブスペーサ120Bの両方で第1の基板110及び第2の基板120を支持することができるため、耐荷重性を高めることができる。
【0072】
スペーサ120Aとサブスペーサ120Bとは、同じ形状及び大きさを有するものであっても、異なる形状及び大きさを有するものであってもよいが、同じ形状及び大きさを有するものであることが好ましい。このような態様とすることにより、容易にサブスペーサ120Bを設けることができる。具体的には、サブスペーサ120Bの高さは、スペーサ120Aと同じであることが好ましい。
【0073】
スペーサ120A及びサブスペーサ120Bは、感光性樹脂の硬化物を含むことが好ましい。感光性樹脂としては、例えば、紫外線反応性官能基を有する樹脂等が挙げられる。スペーサ120A及びサブスペーサ120Bは、感光性樹脂を含む組成物を第2の支持基板121上に塗布し、塗布された組成物を既知のフォトリソグラフィ法によってパターン化することで得られる。
【0074】
第1の基板110は、第1の基板側絶縁層110Xの液晶層130側に配置された第1の透明導電膜112と、第1の透明導電膜112の液晶層130側に配置された第1の絶縁層113と、を備える。このような態様とすることにより、第1の基板110と第2の基板120とのリークを抑えることができる。
【0075】
第2の基板120は、第2の支持基板121と、第2の支持基板121の液晶層130側に配置された第2の透明導電膜122と、第2の透明導電膜122の液晶層130側に配置された第2の絶縁層123と、を備える。このような態様とすることにより、第1の基板110と第2の基板120とのリークを抑えることができる。
【0076】
第1の支持基板111及び第2の支持基板121としては、例えば、ガラス基板、プラスチック基板等の絶縁基板が挙げられる。ガラス基板の材料としては、例えば、フロートガラス、ソーダガラス等のガラスが挙げられる。ブラスチック基板の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン等のプラスチックが挙げられる。
【0077】
第1の支持基板111及び第2の支持基板121の厚さは、それぞれ、特に限定されないが、例えば、0.1mm以上、1.0mm以下であることが好ましい。
【0078】
第1の透明導電膜112及び第2の透明導電膜122は、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等の透明導電材料、又は、それらの合金を含む。第1の透明導電膜112及び第2の透明導電膜122は、スパッタリング法等により単層又は複数層で成膜して形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングを行うことで形成することができる。
【0079】
第1の透明導電膜112の厚さは特に限定されないが、例えば、10nm以上、150nm以下であることが好ましい。第2の透明導電膜122の厚さは特に限定されないが、例えば、10nm以上、250nm以下であることが好ましい。
【0080】
第1の絶縁層113及び第2の絶縁層123としては、例えば、無機絶縁層、有機絶縁層、又は、上記有機絶縁層と無機絶縁層との積層体を用いることができる。無機絶縁層としては、例えば、窒化珪素(SiNx)、酸化珪素(SiO2)等の無機膜)や、それらの積層膜を用いることができる。有機絶縁層としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ノボラック樹脂等の有機膜や、それらの積層体を用いることができる。
【0081】
第1の絶縁層113の厚さは特に限定されないが、例えば、70nm以上、750nm以下であることが好ましい。第2の絶縁層123の厚さは特に限定されないが、例えば、70nm以上、900nm以下であることが好ましい。
【0082】
第1の絶縁層113及び第2の絶縁層123は、第1の基板110及び第2の基板120のリーク防止用絶縁層である。セル厚が比較的高い場合(例えば、2.0μm以上である場合)、第1の絶縁層113及び第2の絶縁層123の少なくとも一方は、配置されなくてもよい。
【0083】
第1の金属層114及び第2の金属層124(以下、単に金属層ともいう)は、金属を含む層である。金属層としては、Mo/Al、Al、Cu等が挙げられる。金属層は、例えば、スパッタ法を用いて金属薄膜を設けた後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることにより形成される。
【0084】
第1の金属層114及び第2の金属層124の厚さは特に限定されないが、それぞれ、例えば、150nm以上、550nm以下であることが好ましい。
【0085】
液晶層130は、液晶材料を含んでおり、液晶層130に対して電圧を印加し、印加した電圧に応じて液晶材料中の液晶分子の配向状態を変化させることにより、光の透過量を制御するものである。液晶分子は、下記式で定義される誘電率異方性(Δε)が正の値を有するものであってもよく、負の値を有するものであってもよい。なお、正の誘電率異方性を有する液晶分子はポジ型液晶ともいい、負の誘電率異方性を有する液晶分子はネガ型液晶ともいう。なお、液晶分子の長軸方向が遅相軸の方向となる。また、液晶分子は、電圧が印加されていない状態(電圧無印加状態)で、ホモジニアス配向するものであり、電圧無印加状態における液晶分子の長軸の方向は、液晶分子の初期配向の方向ともいう。
Δε=(液晶分子の長軸方向の誘電率)-(液晶分子の短軸方向の誘電率) (L)
【0086】
アクティブリターダーは超高速の画像切り替えに追従したスイッチングを行う必要があるため、液晶層130のセル厚は薄いことが好ましい。液晶層130の厚みは、例えば、1.0μm以上、2.0μm以下であることが好ましい。
【0087】
このような薄いセル厚の液晶パネルの製造では、製造ばらつきを含めたセル厚のコントロールが困難となる場合がある。しかしながら、本実施形態では、スペーサ120Aの高さ120AHと、第2の厚み部分110XBの突出した部分の高さ110XBH1と、をあらかじめ測定しておくことにより、最適なセル厚が得られる第1の基板110と第2の基板120との組み合わせを選別して両者を貼り合わせることが可能となり、セル厚を容易にコントロールすることができる。
【0088】
シール部140は、例えば、硬化性樹脂の硬化物を含むことが好ましい。硬化性樹脂としては、例えば、紫外線反応性官能基及び熱反応性官能基の少なくとも一方の官能基を有する樹脂等が挙げられる。速やかに硬化反応が進行し、接着性が良好であることから、硬化性樹脂は、(メタ)アクリロイル基及び/又はエポキシ基を有することが好ましい。このような硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。なお、本明細書において(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルのことをいう。
【0089】
第1の配向膜151及び第2の配向膜152(以下、単に配向膜ともいう)は、液晶層130に含まれる液晶分子の配向を制御する機能を有し、液晶層130への印加電圧が閾値電圧未満(電圧無印加を含む)のときには、主に配向膜の働きによって液晶層130中の液晶分子の配向が制御される。
【0090】
配向膜の材料としては、ポリイミドを主鎖に有するポリマー、ポリアミック酸を主鎖に有するポリマー、ポリシロキサンを主鎖に有するポリマー等の液晶表示パネルの分野で一般的な材料を用いることができる。配向膜は配向膜材料を塗布することによって形成することができ、上記塗布方法は特に限定されず、例えば、フレキソ印刷、インクジェット塗布等を用いることができる。
【0091】
配向膜は、液晶化合物を膜面に対して略水平に配向させる水平配向膜であってもよいし、液晶分子を膜面に対して略垂直に配向させる垂直配向膜であってもよい。また、配向膜は、光官能基を有し、かつ配向処理として光配向処理が施された光配向膜であってもよいし、配向処理としてラビング処理が施されたラビング配向膜であってもよいし、配向処理が施されていない配向膜であってもよい。
【0092】
なお、配向膜に施される配向処理の方法としては、配向膜表面をローラー等で擦るラビング法が従来広く用いられてきた。これに対して、近年では、ラビング法に代わる配向処理の方法として、配向膜表面に光を照射する光配向法が広く展開されつつある。光配向法によれば、配向膜の表面に接触することなく配向処理を実施できるので、ラビング処理と異なり、配向処理中における汚れ、ごみ等の発生を抑制することができるという利点がある。
【0093】
第1の配向膜151及び第2の配向膜152の厚さは、それぞれ、特に限定されないが、例えば、10nm以上、300nm以下であることが好ましい。
【0094】
(実施形態1の変形例1)
図3は、実施形態1の変形例1に係る液晶パネルの断面模式図である。
図3に示すように、本変形例の液晶パネル10が備える第2の基板120は、第2の支持基板121と、第2の基板側絶縁層120Xと、を液晶層130側に向かって順に有していてもよい。このような態様とすることによっても、額縁領域10NA近傍の表示領域10AAにおける白ムラを抑制し、かつ、縦のスジムラを抑制することができる。
【0095】
第2の基板側絶縁層120Xは、単層であっても、複数の層の積層体であってもよいが、単層であることが好ましい。第2の基板側絶縁層120Xは、液晶層130側の表面が平坦であることが好ましい。
【0096】
第2の基板側絶縁層120Xとしては、例えば、有機絶縁層を用いることができる。有機絶縁層としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ノボラック樹脂等の有機膜や、それらの積層体を用いることができる。
【0097】
(実施形態1の変形例2)
図4は、実施形態1の変形例2に係る液晶パネルの断面模式図である。
図4に示すように、本変形例の第2の基板側絶縁層120Xは、液晶層130側の表面が平坦である第3の厚み部分120XAと、第3の厚み部分120XAよりも液晶層130側に突出した第4の厚み部分120XBと、を有し、第4の厚み部分120XBは、上記突出部である。このような態様とすることによっても、額縁領域10NA近傍の表示領域10AAにおける白ムラを抑制し、かつ、縦のスジムラを抑制することができる。
【0098】
本変形例の第4の厚み部分120XBは、上記突出部である。すなわち、第2の厚み部分110XBは、第4の厚み部分120XBに対向して配置される。また、第4の厚み部分120XBが、実施形態1におけるスペーサ120Aの役割を果たす。
【0099】
第2の基板側絶縁層120Xは、液晶層130側の表面が平坦である第3の厚み部分120XAと、第3の厚み部分120XAよりも液晶層130側に突出する第4の厚み部分120XBと、を有する。
【0100】
第4の厚み部分120XBの形状は特に限定されないが、第4の厚み部分120XBは、例えば、円錐台状、円柱状、角錐台状、角柱状等である。第4の厚み部分120XBは、円錐台状であることが好ましい。ここで、第4の厚み部分120XBの形状とは、第4の厚み部分120XBの第3の厚み部分120XAよりも液晶層130側に突出した部分の形状をいう。
【0101】
第2の基板側絶縁層120Xは、単層であっても、複数の層の積層体であってもよいが、単層であることが好ましい。例えば、第2の基板側絶縁層120Xが2層で構成される場合として、次のような構成が挙げられる。すなわち、第3の厚み部分120XA、及び、第4の厚み部分120XBのうち第3の厚み部分120XAの延長線上に配置される部分が単一の層で構成され、第4の厚み部分120XBのうち第3の厚み部分120XAよりも液晶層130側に突出した部分が上記単一の層とは異なる層で構成されてもよい。
【0102】
第2の基板側絶縁層120Xとしては、例えば、有機絶縁層を用いることができる。有機絶縁層としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ノボラック樹脂等の有機膜や、それらの積層体を用いることができる。
【0103】
第2の基板側絶縁層120Xとしては、第1の基板側絶縁層110Xと同様のものを用いることができる。
【0104】
第3の厚み部分120XAは、液晶層130側の表面が平坦である。このような態様とすることにより、第2の支持基板121の製造時に発生する基板表面のうねりが液晶層130へ与える影響を低減することができる。その結果、液晶層130の厚みのムラを抑制することができ、本実施形態の液晶パネル10をアクティブリターダーとして用いる場合に、縦のスジムラを抑制することができる。第3の厚み部分120XAは、第1の厚み部分110XAと同様である。
【0105】
第3の厚み部分120XAは、表示領域10AAにおけるガラス基板内側の総厚と、額縁領域10NAにおけるガラス基板内側の総厚とが等しくなるよう設けられる。このような態様とすることにより、額縁領域10NA近傍の表示領域10AAにおけるセル厚と、額縁領域10NAから離れた箇所の表示領域10AAにおけるセル厚との差を抑えることが可能となる。その結果、本実施形態の液晶パネル10をアクティブリターダーとして用いる場合に、額縁領域10NA近傍の表示領域10AAにおける白ムラを抑制することができ、アクティブリターダーの性能を高められる。第4の厚み部分120XBは、第2の厚み部分110XBと同様である。
【0106】
第4の厚み部分120XBは、第3の厚み部分120XAよりも液晶層130側に突出している。第4の厚み部分120XBの高さ120XBH(厚み)は、第3の厚み部分120XAの高さ120XAHの1.0倍を超え、3.5倍以下であることが好ましく、1.1倍以上、3.2倍以下であることがより好ましく、1.2倍以上、2.8倍以下であることが更に好ましい。
【0107】
例えば、第3の厚み部分120XAの高さ120XAHは、360nm以上、560nm以下であり、第4の厚み部分120XBの高さ120XBHは、1100nm以上、1400nm以下であることが好ましく、第3の厚み部分120XAの高さ120XAHは、410nm以上、510nm以下であり、第4の厚み部分120XBの高さ120XBHは、1150nm以上、1350nm以下であることがより好ましく、第3の厚み部分120XAの高さ120XAHは、450nm以上、470nm以下であり、第4の厚み部分120XBの高さ120XBHは、1200nm以上、1300nm以下であることがより好ましい。
【0108】
第3の厚み部分120XAの高さ120XAHとは、第3の厚み部分120XAの第2の支持基板121側の面から第1の基板110側の面までの距離をいう。第4の厚み部分120XBの高さ120XBHとは、第4の厚み部分120XBの第2の支持基板121側の面から第1の基板110側の面までの距離をいう。
【0109】
第2の厚み部分110XBは、上記突出部としての第4の厚み部分120XBに対向して配置される。平面視において、第4の厚み部分120XBの第1の基板110に対向する面120XBT全体は、第2の厚み部分110XBの第2の基板120に対向する面110XBT全体と重なることが好ましい。このような態様とすることにより、スペーサ120Aの第1の基板110に対向する面120ATに対して、第2の厚み部分110XBの面110XBTを網羅的に配置することが可能となり、更に効果的に、セル厚を規定することができる。
【0110】
第2の厚み部分110XBは、上記突出部としての第4の厚み部分120XBに当接することが好ましい。より具体的には、液晶パネル10に荷重が加わっていない通常の状態において、第2の厚み部分110XBの頂部(第2の基板120側の面110XBT)は、第4の厚み部分120XBの頂部(第1の基板110側の面120XBT)に当接することが好ましい。このような態様とすることにより、第1の基板110と第2の基板120との間の距離(セル厚)を規定することができる。このような第4の厚み部分120XBは、メインスペーサとして機能する。
【0111】
第2の厚み部分110XBの、第1の厚み部分110XAよりも液晶層130側に突出した部分の高さ110XBH1、及び、第4の厚み部分120XBの、第3の厚み部分120XAよりも液晶層130側に突出した部分の高さ120XBH1の合計は、液晶層130の厚さ(セル厚(例えば、1.62μm))と等しいことが好ましい。このような態様とすることにより、より効果的に、セル厚を規定することができる。ここで、突出した部分の高さ120XBH1とは、第4の厚み部分120XBの高さ120XBHと第3の厚み部分120XAの高さ120XAHとの差である。
【0112】
本変形例の第1の基板110と第2の基板120とは同じ構造とすることが可能であるため、製造工程やマスク枚数を削減することができる。本変形例の液晶パネル10はサブスペーサを有さないため、液晶パネルの表面に圧力がかかりにくい用途において好ましく用いられる。
【0113】
(実施形態2)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1と重複する内容については説明を省略する。本実施形態では、上記実施形態1の液晶パネルを備える3次元表示装置について説明する。
【0114】
図5は、実施形態2に係る3次元表示装置の偏光状態について説明する分解模式図である。
図5に示すように、本実施形態の3次元表示装置1は、観察者U側に向かって順に、表示パネル20と、液晶パネル10と、偏光メガネ2と、を有する。液晶パネル10は、アクティブリターダーとして機能する。表示パネル20は、メインパネルともいう。偏光メガネ2は、3Dメガネともいう。
【0115】
表示パネル20は、画像20Aを表示する。画像20Aは、右目用画像20AR及び左目用画像20ALを含む。表示パネル20は、右目用画像20AR及び左目用画像20ALを所定の時間で切り替えて順次表示する機能を有する。
【0116】
液晶パネル10は、表示パネル20の画像切り替えと同期した光学スイッチング素子であり、右目用画像20AR及び左目用画像20ALの偏光状態を異ならせる機能を有する。例えば、右目用画像20ARが液晶パネル10へ入射する場合、右目用画像20ARを右円偏光及び左円偏光の一方に変換し、左目用画像20ALが液晶パネル10へ入射する場合、左目用画像20ALを右円偏光及び左円偏光の他方に変換する機能を有する。
【0117】
偏光メガネ2は、右目用画像20ARの偏光光が右目側を透過し、左目用画像20ALの偏光光が左目側を透過するように設計されている。このような態様とすることにより、観察者は3D表示を得ることができる。
【0118】
図6は、実施形態2に係る3次元表示装置の軸方位について説明する分解模式図である。
図6を用いて本実施形態の3次元表示装置1についてより詳細に説明する。本実施形態の3次元表示装置1は、観察者U側に向かって順に、表示パネル20と、透過軸1PAを有する偏光板1Pと、液晶パネル10と、偏光メガネ2と、を備える。このような態様とすることにより、縁領域近傍の表示領域における白ムラ、及び、表示領域における縦のスジムラを抑制しつつ、3次元表示を実現することができる。
【0119】
偏光メガネ2は、観察者Uの右目URに対応する右目用のレンズ2Rと左目ULに対応する左目用のレンズ2Lと、を備える。右目用のレンズ2Rは、右目用の位相差板2RXと、右目用の透過軸2RPAを有する右目用の偏光板2RPと、を備える。左目用のレンズ2Lは、左目用の位相差板2LXと、左目用の透過軸2LPAを有する左目用の偏光板2LPと、を備える。なお、本明細書における偏光板は、特に断りの無い限り、直線偏光板を意味する。
【0120】
右目用の透過軸2RPA及び左目用の透過軸2LPAは互いに平行である。透過軸1PAは、右目用の透過軸2RPA及び左目用の透過軸2LPAと直交する。右目用の位相差板2RX及び左目用の位相差板2LXの一方は-λ/4位相差板であり、他方は+λ/4位相差板である。具体的には、透過軸1PAは表示パネル20の上下方向に配置され、右目用の透過軸2RPA及び左目用の透過軸2LPAは表示パネル20の左右方向に配置され、右目用の位相差板2RXは+λ/4位相差板であり、左目用の位相差板2LXは-λ/4位相差板である。
【0121】
液晶パネル10の遅相軸10Aと透過軸1PAとのなす角は、40°以上、50°以下であることが好ましく、43°以上、47°以下であることがより好ましく、45°であることが特に好ましい。
【0122】
表示パネル20は、右目用画像20AR及び左目用画像20ALを含む画像20Aを表示する。表示パネル20からの画像20Aは、偏光板1Pを通過することにより、上下方向の直線偏光となり液晶パネル10へと出射される。表示パネル20は、右目用画像20AR及び左目用画像20ALを所定の時間で切り替えて順次表示する。
【0123】
液晶パネル10は、当該液晶パネル10へ入射する光に対して、表示パネル20に表示される画像20Aが右目用画像20ARである場合は右目用の位相差板2RXと同じ位相差(例えば、+λ/4)を付与し、表示パネル20に表示される画像20Aが左目用画像20ALである場合は左目用の位相差板2LXと同じ位相差(例えば、-λ/4)を付与する。このように、液晶パネル10の位相差は、+λ/4と-λ/4とで切り替わる。
【0124】
液晶パネル10の位相差が+λ/4である場合、観察者Uの左目ULには、表示パネル20から出射された画像20A(具体的には、右目用画像20AR)に対して、液晶パネル10により+λ/4の位相差が付与され、かつ、左目用の位相差板2LXにより-λ/4の位相差が付与された光が入射する。すなわち、位相差の変化の合計は、(+λ/4)+(-λ/4)=0となる。透過軸1PAと左目用の透過軸2LPAとは直交しているので、表示パネル20からの光(右目用画像20AR)は左目用の偏光板2LPを透過することができず、左目用のレンズ2Lは非透過となる。一方、観察者Uの右目URには、表示パネル20から出射された画像20A(具体的には、右目用画像20AR)に対して、液晶パネル10により+λ/4の位相差が付与され、かつ、右目用の位相差板2RXにより+λ/4の位相差が付与された光が入射する。すなわち、位相差の変化の合計は、(+λ/4)+(+λ/4)=+λ/2となる。透過軸1PAと右目用の透過軸2RPAとは直交しているので、表示パネル20からの光(右目用画像20AR)は右目用の偏光板2RPを透過することができ、右目用のレンズ2Rは透過となる。
【0125】
同様に、液晶パネル10の位相差が-λ/4である場合、観察者Uの左目ULには、表示パネル20から出射された画像20A(具体的には、左目用画像20AL)に対して、液晶パネル10により-λ/4の位相差が付与され、かつ、左目用の位相差板2LXにより-λ/4の位相差が付与された光が入射する。すなわち、位相差の変化の合計は、(-λ/4)+(-λ/4)=-λ/2となる。透過軸1PAと左目用の透過軸2LPAとは直交しているので、表示パネル20からの光(左目用画像20AL)は左目用の偏光板2LPを透過することができ、左目用のレンズ2Lは透過となる。一方、観察者Uの右目URには、表示パネル20から出射された画像20A(具体的には、左目用画像20AL)に対して、液晶パネル10により-λ/4の位相差が付与され、かつ、右目用の位相差板2RXにより+λ/4の位相差が付与された光が入射する。すなわち、位相差の変化の合計は、(-λ/4)+(+λ/4)=0となる。透過軸1PAと右目用の透過軸2RPAとは直交しているので、表示パネル20からの光(左目用画像20AL)は右目用の偏光板2RPを透過することができず、右目用のレンズ2Rは非透過となる。
【0126】
表示パネル20は、液晶層及びカラーフィルタ層を有する液晶表示パネルであってもよい。この場合、3次元表示装置1は、表示パネル20の液晶パネル10と反対側にバックライト30を備える。バックライト30は、表示パネル20に向かってバックライト光30Aを出射する機能を有する。表示パネル20の観察者Uと反対側にバックライト30を備える。
【0127】
図7は、実施形態2に係る3次元表示装置の一例を示す模式図である。
図7に示すように、本実施形態の3次元表示装置1は、偏光板1Pと液晶パネル10との間に、λ/4位相差板160を備えてもよい。液晶パネル10は、位相差をλ/2と0nmとの間で切り替え可能であり、液晶パネル10の遅相軸10Aは、λ/4位相差板160の遅相軸160Aと直交する。すなわち、λ/4位相差板160は-λ/4の位相差を付与する。なお、液晶パネルの遅相軸とは、液晶パネルが備える液晶層の遅相軸である。
【0128】
例えば、電圧無印加状態の液晶パネル10の位相差がλ/2である場合、表示パネル20から出射した光は、λ/4位相差板160及び液晶パネル10を透過してλ/4の位相差が付与される。その結果、左目用のレンズ2Lは非透過となり、右目用のレンズ2Rは透過となる。一方、電圧印加状態の液晶パネル10の位相差が0nmである場合、表示パネル20から出射した光は、λ/4位相差板160及び液晶パネル10を透過して-λ/4の位相差が付与される。その結果、左目用のレンズ2Lは透過となり、右目用のレンズ2Rは非透過となる。
【0129】
より具体的には、印加電圧がLowの状態(電圧無印加状態)でλ/2の位相差を持つように設計された液晶パネル10はx軸方向に遅相軸を有する。したがって、液晶パネル10ではnx>nyの関係が成り立つことから、液晶パネル10の位相差は(nx-ny)×厚み=+λ/2となる。
【0130】
一方、y軸方向に遅相軸を有するλ/4位相差板160は、x軸方向に進相軸を有するλ/4位相差板であるともいえる。したがって、λ/4位相差板160ではnx<nyの関係が成り立つことから、λ/4位相差板160の位相差は(nx-ny)×厚み=-λ/4となる。
【0131】
以上より、電圧無印加状態における液晶パネル10及びλ/4位相差板160の位相差の合計値は、
(+λ/2)+(-λ/4)=+λ/4となる。符号が+であるため、遅相軸はx軸方向に平行で、位相差の絶対値はλ/4である。
【0132】
ここまでは液晶パネル10への印加電圧がLowの状態を説明したが、印加電圧がHighの状態(電圧印加状態)では、液晶パネル10の位相差は0になる(完全に0になることは無いが、説明を簡単にするため、ここでは0とする)。したがって、電圧印加状態における液晶パネル10及びλ/4位相差板160の位相差の合計値は、
(0)+(-λ/4)=-λ/4となる。符号が-であるため、遅相軸はy軸方向に平行で、位相差の絶対値はλ/4である。
【0133】
(実施形態2の変形例1)
図8は、実施形態2の変形例1に係る3次元表示装置の一例を示す模式図である。
図8に示すように、本実施形態の3次元表示装置1は、観察者U側に向かって順に、表示パネル20と、透過軸1PAを有する偏光板1Pと、第1の液晶パネル11と、第2の液晶パネル12と、偏光メガネ2と、を備える。このような態様とすることによっても、縁領域近傍の表示領域における白ムラ、及び、表示領域における縦のスジムラを抑制しつつ、3次元表示を実現することができる。
【0134】
本変形例の3次元表示装置1は、液晶パネルの枚数が異なること以外は、実施形態2の3次元表示装置1と同様である。すなわち、実施形態2の3次元表示装置1は、1つの液晶パネル10を備え、当該液晶パネル10は、位相差をλ/2と0nmとの間で切り替え可能である。一方、本変形例の3次元表示装置1は、2つの液晶パネル11及び12を備え、液晶パネル11及び12は、それぞれ、位相差をλ/4と0nmとの間で切り替え可能である。このように、本変形例では、上記実施形態2における液晶パネル10の位相差が、2つの液晶パネル11及び12に分けられている。
【0135】
本変形例の3次元表示装置1は、偏光板1Pと液晶パネル10との間に、λ/4位相差板160を備えてもよい。第1の液晶パネル11及び第2の液晶パネル12は、それぞれ、位相差をλ/4と0nmとの間で切り替え可能であり、第1の液晶パネル11の遅相軸11Aは、λ/4位相差板160の遅相軸160Aと直交し、第2の液晶パネル12の遅相軸12Aは、λ/4位相差板160の遅相軸160Aと直交する。すなわち、λ/4位相差板160は-λ/4の位相差を付与する。なお、液晶パネル10の遅相軸10Aとは、液晶パネル10が備える液晶層130の遅相軸である。
【0136】
例えば、電圧無印加状態の第1の液晶パネル11の位相差がλ/4であり、電圧無印加状態の第2の液晶パネル12の位相差がλ/4である場合、表示パネル20から出射した光は、λ/4位相差板160、第1の液晶パネル11及び第2の液晶パネル12を透過してλ/4の位相差が付与される。その結果、左目用のレンズ2Lは非透過となり、右目用のレンズ2Rは透過となる。一方、電圧印加状態の第1の液晶パネル11の位相差が0nmであり、電圧印加状態の第2の液晶パネル12の位相差が0nmである場合、表示パネル20から出射した光は、λ/4位相差板160、第1の液晶パネル11及び第2の液晶パネル12を透過して-λ/4の位相差が付与される。その結果、左目用のレンズ2Lは透過となり、右目用のレンズ2Rは非透過となる。
【0137】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明の効果を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0138】
(実施例1)
上記実施形態1に対応する液晶パネル10を作製した。まず、第1の基板110を次のように作製した。0.5mm厚のガラス基板(第1の支持基板111)上に、二つの厚みを持つセル厚調整用絶縁層(第1の基板側絶縁層110X)、第1の透明導電膜112、上下リーク防止用絶縁層(第1の絶縁層113)を形成した。
【0139】
セル厚調整用絶縁層(第1の基板側絶縁層110X)の材料は透明有機膜であり、2つの厚み(第1の厚み部分110XA及び第2の厚み部分110XB)を有していた。具体的には、第1の支持基板111と第1の透明導電膜112との間に、セル厚調整用絶縁層として、920nmの平坦な有機絶縁層を設けて第1の厚み部分110XAを形成した。更に、厚み920nmの第1の厚み部分110XA上であって、かつ、基板主面を平面視したときにメインスペーサ(スペーサ120A)と同一箇所になる位置に、高さ300nmの円錐台を設けることにより、第2の厚み部分110XBを形成した。すなわち、第1の厚み部分110XAの高さ110XAHは920nmであり、第2の厚み部分110XBの高さ110XBHは1220nmであり、突出した部分の高さ110XBH1は300nmであった。円錐台上面(第2の厚み部分110XBの第2の基板120に対向する面110XBT)の直径は、第2の基板120が備えるメインスペーサの頂部(スペーサ120Aの第1の基板110側の面120AT)の直径より大きい20μmであった。
【0140】
第1の透明導電膜112の材料はIZOとし、厚みは70nmとした。上下リーク防止用絶縁層(第1の絶縁層113)の材料はSiNとし、厚みは530nmとした。
【0141】
画面サイズは27型、有効表示領域は横581.8176mm、縦333.7992mmであり、上下中央で透明電極膜(第1の透明導電膜112)が分割された2セグメントの電極構造とした。
【0142】
第2の基板120は、次のようにして作製した。0.5mm厚のガラス基板(第2の支持基板121)上に、第2の透明導電膜122、上下リーク防止用絶縁層(第2の絶縁層123)、スペーサ(メインスペーサである120A、及び、サブスペーサ120B)を形成した。
【0143】
第2の透明導電膜122の材料はIZOとし、厚みは140nmとした。上下リーク防止用絶縁層(第2の絶縁層123)の材料はSiNとし、厚みは680nmとした。
【0144】
メインスペーサであるスペーサ120Aは円柱状であり、スペーサ120Aの底面(スペーサ120Aの第1の基板110側の面120AT及び第2の支持基板121側の面)の直径は15.3μmであり、高さ120AHは1.32μmであった。サブスペーサ120Bは四角柱状であり、底面の縦の長さは15μmであり、横の長さは40μmであり、高さ1.32μmであった。スペーサ120A及びサブスペーサ120Bは、いずれも、透明有機膜で形成した。
【0145】
以上のようにして作製した第1の基板110の第1の絶縁層113側の表面に配向膜材料を塗布して第1の配向膜151を形成し、第2の基板120のスペーサ120A側の表面に配向膜材料を塗布して第2の配向膜152を形成した。その後、第2の基板120の額縁領域10NAにシール樹脂を描画した。更に、第1の配向膜151上に液晶材料を滴下して、第1の配向膜151と第2の配向膜152とが対向するように第1の基板110と第2の基板120とを貼り合わせた。その後、UV露光及び加熱を行うことによりシール樹脂を硬化し、シール部140を形成した。液晶層の厚さ(セル厚)は1.62μmであった。
【0146】
配向膜材料は水平配向用のポリイミドを含んでいた。第1の配向膜151及び第2の配向膜152の厚みは、それぞれ、90nmであった。第1の配向膜151及び第2の配向膜152には、アンチパラレルのラビング処理を行った。液晶材料の誘電異方性は正であり、Δnは0.16であった。
【0147】
第1の基板110が有する上側基板用入力用端子(第1の金属層114)からシール部140に含まれるシール用導電性ビーズを伝導して第2の基板120の信号を入力する。そのため、シール樹脂には、第1の基板110及び第2の基板120を導通するためのシール用導電性ビーズ(直径3μm)とシール部140の柱の役目となるシール用スペーサ(直径2μm)が含まれており、それらが均一に混ぜられていた。シール樹脂の仕上がりの高さ、すなわち、シール部140の高さは、2000nmであった。第1の金属層114及び第2の金属層124の厚さは、それぞれ、360nmであった。
【0148】
実施例1では、第2の厚み部分110XBの、第1の厚み部分110XAよりも液晶層130側に突出した部分の高さ110XBH1(300nm)、及び、上記突出部としてのスペーサ120Aの高さ120AH(1.32μm)の合計は、液晶層130の厚さ(1.62μm)と等しかった。
【0149】
平面視において、スペーサ120Aの第1の基板110に対向する面120AT全体は、第2の厚み部分110XBの第2の基板120に対向する面110XBTの内側に含まれていた。
【0150】
(比較例1)
上記比較形態に係る液晶パネル10Rを作製した。具体的には、第1の基板110に第1の基板側絶縁層110Xを設けず、メインスペーサであるスペーサ120ARの高さを1.62μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の液晶パネル10Rを作製した。
【0151】
(実施例1及び比較例1に係る液晶パネルの白ムラ評価)
実施例1の液晶パネル10及び比較例1の液晶パネル10Rについて、非点灯黒表示状態を比較した。
図9は、実施例1に係る液晶パネルの、非点灯黒表示状態を示す写真である。
図10は、比較例1に係る液晶パネルの、非点灯黒表示状態を示す写真である。
図11は、
図10において破線で囲まれた領域の拡大写真である。
【0152】
図9に示すように、実施例1の液晶パネル10では、額縁領域10NA(シール部140)近傍の表示領域10AAにおける白ムラが抑制されていた。実施例1の液晶パネル10では、シール部140近傍、セル中央のどちらにおいても、最適なセル厚(1.62μm)がとなっているため、均一な黒表示を実現することができたと考えられる。なお、
図9に示す破線の内側は、額縁領域10NAであり、金属層が配置されているため光が透過せず黒くなった。
【0153】
一方、比較例1の液晶パネル10Rでは、
図11において一点鎖線で示すように、額縁領域10NA(シール部140)近傍の表示領域10AAにおいて白ムラが発生していた。比較例1の液晶パネル10Rでは、セル中央の最適なセル厚が1.62μmであるのに対して、シール部140近傍のセル厚が約2.0μmであったため、シール部140近傍のリタデーションは所望のリタデーションより高くなり、白ムラが発生したと考えられる。このように、比較例1の額縁領域10NA近傍では、3Dアクティブリターダーの表示性能に必要なリタデーションが得られず、当該部分は表示に使用することができない。なお、
図11に示す破線の内側は、額縁領域10NAであり、金属層が配置されているため光が透過せず黒くなった。
【0154】
(実施例1及び比較例1に係る液晶パネルの製造工程の評価)
図12は、実施例1に係る液晶パネルのメインスペーサ及びサブスペーサを示す断面模式図である。
図13は、比較例1に係る液晶パネルのメインスペーサ及びサブスペーサを示す断面模式図である。
図12に示すように、実施例1の液晶パネル10は、メインスペーサであるスペーサ120Aとサブスペーサ120Bの高さが同じであるため、メインスペーサとサブスペーサとを一括で形成することが可能であった。一方、比較例1の液晶パネル10Rは、
図13に示すように、メインスペーサであるスペーサ120ARとサブスペーサ120Bの高さが異なるため、スペーサ120AR及びサブスペーサ120Bを形成するためには、スペーサ120ARを形成する工程及びサブスペーサ120Bを形成する工程の2段階の工程に分ける、もしくは、ハーフ露光を利用してスペーサ120AR及びサブスペーサ120Bを一括で形成する必要がある。
【0155】
通常の液晶パネル用途においてスペーサの高さは2.0~3.0μmに設定される。一方、アクティブリターダーとして用いられる比較例1の液晶パネル10Rではスペーサ120ARの高さは1.62μm、サブスペーサ120Bの高さは1.32μmに設定される。スペーサ120AR及びサブスペーサ120Bの高さは通常の液晶パネルのスペーサより低い。そのため、比較例1のスペーサ120AR及びサブスペーサ120Bを形成する工程には高い精度が求められ、当該工程の難易度は高いと考えられる。
【0156】
(実施例1及び比較例1に係る液晶パネルの縦のスジムラの評価)
図14は、実施例1に係る液晶パネルの断面模式図の一例である。
図15は、比較例1に係る液晶パネルの断面模式図の一例である。
図16は、比較例1に係る液晶パネルの縦のスジムラを示す写真である。
【0157】
実施例1の液晶パネル10では縦のスジムラは確認されなかった。一方、比較例1の液晶パネル10Rでは、
図16に示すように、表示領域10AA内に、約20~30mmピッチの縦のスジムラが発生した。
【0158】
図14及び
図15に示すように、ガラス基板である第1の支持基板111及び第2の支持基板121は、ガラス製造のプロセスの中で高精度に平坦化されてはいるものの、第1の支持基板111及び第2の支持基板121には高さ0.1μm以下で5~30mmピッチのうねりが生じる。
【0159】
比較例1の液晶パネル10Rでは、
図15に示すように、第1の支持基板111と第2の支持基板121を構成するガラス基板のうねりが干渉し、液晶層130のセル厚の大小が生じてリタデーションの差が発生してスジ状のムラが視認されたと考えられる。すなわち、ガラス基板のうねりの干渉により、面内のセル厚が不均一になり、約20~30mm程度のスジムラとして視認されたと考えられる。
【0160】
一方、実施例1の液晶パネル10では、第1の支持基板111上に第1の基板側絶縁層110Xを備えるため、
図14に示すように、第1の基板110の表面が平坦化されてガラス基板のうねりが干渉することが抑制され、スジ状のムラが抑制されたと考えられる。
【0161】
(実施例1及び比較例1に係る液晶パネルの押圧に対する評価)
実施例1の液晶パネル10の表面を指で押しても、光漏れは生じにくかった。実施例1の液晶パネル10は第1の基板側絶縁層110Xを備え、第1の基板側絶縁層110Xは第2の厚み部分110XBを有する。そのため、液晶パネル10の表面を指で押しても、表示領域10AAに対応して配置されている第1の厚み部分110XAの領域にまでスペーサ120Aの先端が接触しにくい。その結果、第1の配向膜151に傷が付きにくく、配向膜の傷に起因する光漏れが発生しにくかったと考えられる。
【0162】
図17は、比較例1に係る液晶パネルが押圧された場合を示す断面模式図である。比較例1の液晶パネル10Rの表面を指で押すと、表示不良(具体的には光漏れ)が生じた。比較例1の液晶パネル10Rの表面を指で押すことにより、スペーサ120ARが表示領域10AAにはみ出したり、スペーサ120ARの先端が表示領域10AAに位置する第1の配向膜151を削ったりして、液晶分子が狙い通りに配向せずに表示不良が発生したと考えられる。なお、
図17では、比較形態に係る液晶パネル10Rでは図示されていないセル厚調整用絶縁層110Zが図示されている。セル厚調整用絶縁層110Zは、凹凸のない平坦な形状を有する層であった。
【0163】
(実施例2)
実施形態1の変形例1に対応する実施例2の液晶パネル10を作製した。具体的には、第1の厚み部分110XAの高さを460nmとし、第2の厚み部分110XBの高さを760nmとし、かつ、第2の支持基板121と第2の透明導電膜122との間に厚さ460nmの第2の基板側絶縁層120Xを設けたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の液晶パネル10を作製した。
【0164】
第1の基板側絶縁層110Xは、次のように作製した。第1の支持基板111と第1の透明導電膜112との間に、セル厚調整用絶縁層として、460nmの平坦な有機絶縁層を設けて第1の厚み部分110XAを形成した。更に、厚み460nmの第1の厚み部分110XA上であって、かつ、基板主面を平面視したときにメインスペーサ(スペーサ120A)と同一箇所になる位置に、高さ300nmの円錐台を設けることにより、第2の厚み部分110XBを形成した。すなわち、第1の厚み部分110XAの高さ110XAHは460nmであり、第2の厚み部分110XBの高さ110XBHは760nmであり、突出した部分の高さ110XBH1は300nmであった。また、第2の支持基板121と第2の透明導電膜122との間に、セル厚調整用絶縁層として、460nmの平坦な有機絶縁層を設けて第2の基板側絶縁層120Xとした。
【0165】
実施例2では、第2の厚み部分110XBの、第1の厚み部分110XAよりも液晶層130側に突出した部分の高さ110XBH1(300nm)、及び、上記突出部としてのスペーサ120Aの高さ120AH(1.32μm)の合計は、液晶層130の厚さ(1.62μm)と等しかった。
【0166】
平面視において、スペーサ120Aの第1の基板110に対向する面120AT全体は、第2の厚み部分110XBの第2の基板120に対向する面110XBTの内側に含まれていた。
【0167】
実施例2の液晶パネル10では、縦のスジムラが実施例1よりも抑制されていた。実施例2では、第2の基板120側にもセル厚調整用絶縁層を設けることにより、第1の基板110及び第2の基板120の両方について、ガラス基板のうねりを平坦化することが可能となり、ガラス基板のうねりに起因する縦のスジムラを実施例1より抑制することができたと考えられる。
【0168】
(実施例3)
実施形態1の変形例2に対応する実施例3の液晶パネル10を作製した。具体的には、第1の基板側絶縁層110X及び第2の基板側絶縁層120Xの構成を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の液晶パネル10を作製した。
【0169】
第1の基板側絶縁層110Xは、次のように作製した。第1の支持基板111と第1の透明導電膜112との間に、セル厚調整用絶縁層として、460nmの平坦な有機絶縁層を設けて第1の厚み部分110XAを形成した。更に、厚み460nmの第1の厚み部分110XA上に、高さ810nmの円錐台を設けることにより、第2の厚み部分110XBを形成した。すなわち、第1の厚み部分110XAの高さ110XAHは460nmであり、第2の厚み部分110XBの高さ110XBHは1270nmであり、突出した部分の高さ110XBH1は810nmであった。
【0170】
また、第2の支持基板121と第2の透明導電膜122との間に、第1の基板側絶縁層110Xと同様にして第2の基板側絶縁層120Xを設けた。すなわち、第3の厚み部分120XAの高さ120XAHは460nmであり、第4の厚み部分120XBの高さ120XBHは1270nmであり、突出した部分の高さ120XBH1は810nmであった。
【0171】
第1の基板110及び第2の基板120を平面視したときに、第2の基板120のセル厚調整用絶縁層である第2の基板側絶縁層120Xが有する第4の厚み部分120XBと、第1の基板110のセル厚調整用絶縁層である第1の基板側絶縁層110Xが有する第2の厚み部分110XBと、が重なり合うよう、第1の基板110及び第2の基板120を貼り合わせた。本実施形態では、第4の厚み部分120XB(より具体的には、第2の凸部120XB2)が、実施例1におけるスペーサ120Aの役割を果たしていた。
【0172】
実施例3では、第2の厚み部分110XBの、第1の厚み部分110XAよりも液晶層130側に突出した部分の高さ110XBH1(810nm)、及び、第4の厚み部分120XBの、第3の厚み部分120XAよりも液晶層130側に突出した部分の高さ120XBH1(810nm)の合計は、液晶層130の厚さ(1.62μm)と等しかった。
【0173】
平面視において、第4の厚み部分120XBの第1の基板110に対向する面120XBT全体は、第2の厚み部分110XBの第2の基板120に対向する面110XBT全体と重なっていた。
【0174】
実施例2と同様に、実施例3の液晶パネル10では、縦のスジムラが実施例1よりも抑制されていた。実施例3では、第2の基板120側にもセル厚調整用絶縁層を設けることにより、第1の基板110及び第2の基板120の両方について、ガラス基板のうねりを平坦化することが可能となり、ガラス基板のうねりに起因する縦のスジムラを実施例1より抑制することができたと考えられる。
【0175】
また、実施例3の液晶パネル10は、第1の基板110と第2の基板120とが同じ構造を有するため、実施例2によりも製造工程やマスク枚数を削減することができた。
【符号の説明】
【0176】
1:3次元表示装置
1P、2LP、2RP:偏光板
1PA、2LPA、2RPA:透過軸
2:偏光メガネ
2L、2R:レンズ
2LX、2RX:位相差板
10、10R、11、12:液晶パネル
10A、11A、12A、160A:遅相軸
10AA:表示領域
10NA:額縁領域
20:表示パネル
20A:画像
20AL:左目用画像
20AR:右目用画像
30:バックライト
30A:バックライト光
110、110R、120:基板
110X:第1の基板側絶縁層
110XA:第1の厚み部分
110XAH、110XBH、110XBH1、120AH、120XAH、120XBH、120XBH1:高さ
110XB:第2の厚み部分
110XBT、120AT、120XBT:面
110Z:セル厚調整用絶縁層
120XA:第3の厚み部分
120XB:第4の厚み部分
111、121:支持基板
112、122:透明導電膜
113、123:絶縁層
114、124:金属層
120A、120AR:スペーサ
120B:サブスペーサ
120X:第2の基板側絶縁層
130:液晶層
140:シール部
151、152:配向膜
160:λ/4位相差板
U:観察者
UL:左目
UR:右目