(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152362
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】カラーフィルター及び液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20241018BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G02F1/1335 505
G02F1/1335 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066509
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】川平 雄一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】三枝 良輔
(72)【発明者】
【氏名】許 嘉能
(72)【発明者】
【氏名】坂井 彰
【テーマコード(参考)】
2H148
2H291
【Fターム(参考)】
2H148BD11
2H148BD14
2H148BF03
2H148BF04
2H148BG02
2H291FA02Y
2H291FA16Y
2H291FB04
2H291FC10
2H291HA15
2H291LA03
2H291LA21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外光反射が小さく視認性の高いカラーフィルター及び該カラーフィルターを備える液晶表示装置の提供
【解決手段】カラーフィルター1は、透明基板2上に透明ベースコート層3と遮光層4が積層され、色レジスト層5が積層されていない額縁部と、透明基板上に透明ベースコート層と色レジスト層が積層され、遮光層が積層されていない開口部とを有し、額縁部において透明基板側から入射する光の反射率が、遮光層側から入射する光の反射率よりも小さく、色レジスト層中の少なくとも一色の開口部において、透明基板側から入射する光の反射率が、色レジスト層側から入射する光の反射率よりも大きく、透明ベースコート層の屈折率をn
bc、膜厚をd
bc(nm)、カラーフィルターの開口率をAとしたときに、式(1)を満たす。
n
bc×d
bc<α×A
2+β×A+γ・・・(1)
ここで、A=開口部の面積/アクティブエリアの面積
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、前記透明基板上に積層された透明ベースコート層と、前記透明ベースコート層上に部分的に積層された遮光層と、前記遮光層上及び前記遮光層の無い領域の前記透明ベースコート層上に積層された色レジスト層と、前記遮光層上及び前記色レジスト層上に積層されたオーバーコート層を有するカラーフィルターであって、
前記カラーフィルターは、前記透明基板上に前記透明ベースコート層と前記遮光層が積層され、前記色レジスト層が積層されていない額縁部と、前記透明基板上に前記透明ベースコート層と前記色レジスト層が積層され、前記遮光層が積層されていない開口部とを有し、
前記額縁部において前記透明基板側から入射する光の反射率が、前記遮光層側から入射する光の反射率よりも小さく、
前記色レジスト層中の少なくとも一色の前記開口部において、前記透明基板側から入射する光の反射率が、前記色レジスト層側から入射する光の反射率よりも大きく、
前記透明ベースコート層の屈折率をnbc、膜厚をdbc(nm)、カラーフィルターの開口率をAとしたときに、下記式(1)を満たす、カラーフィルター。
nbc×dbc<α×A2+β×A+γ (1)
ここで、A、α、β、γはそれぞれ以下の式を満たす。
A=開口部の面積/アクティブエリアの面積
α=436.7×nbc-837.2
β=-315.8×nbc+523.7
γ=-358.3×nbc+771.8
【請求項2】
前記透明ベースコート層の屈折率が、1.71以上1.83以下である、請求項1に記載のカラーフィルター。
【請求項3】
前記透明ベースコート層が、シリコン酸窒化物又はシリコン窒化物を含有する、請求項1に記載のカラーフィルター。
【請求項4】
前記遮光層の屈折率が、1.76以上1.80以下である、請求項1に記載のカラーフィルター。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のカラーフィルターを有する、液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、カラーフィルター及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、表示のために液晶組成物を利用する表示装置であり、その代表的な表示方式は、カラーフィルターと対向基板との間に液晶組成物を封入した液晶パネルに対してバックライトから光を照射し、液晶組成物に電圧を印加して液晶分子の配向を変化させることにより、液晶パネルを透過する光の量を制御するものである。このような液晶表示装置は、薄型、軽量及び低消費電力といった特長を有することから、テレビジョン、スマートフォン、タブレット端末、カーナビゲーション等の電子機器に利用されている。
【0003】
液晶表示装置による表示は、外光の影響を受けやすく、外光反射により視認性が低下するという課題を有しており、外光反射は外光に最も近いカラーフィルターで主に発生する。
一般的なカラーフィルターは、透明基板と、透明基板上にパターン状に形成され、黒色色材及びバインダー樹脂を含有する遮光層(ブラックマトリクス)と、遮光層の開口部に形成された色レジスト層(カラーフィルター層)とを有する。外光反射の原因の一つは、遮光層の屈折率が透明基板の屈折率よりも高く、その屈折率差が大きいことにある。
そこで、透明基板と遮光層との間に、透明基板よりも屈折率が高く遮光層よりも屈折率が低い樹脂を含有する屈折率調整層を形成することが提案されている(特許文献1)。特許文献1によれば、屈折率が透明基板と遮光層の間となるよう調節された層を透明基板と遮光層との間に設けることで、光の干渉効果によって外光反射を低減することができるとともに、コントラストの低下を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようなカラーフィルターであっても外光反射の低減は充分であるとは言えず、より外光反射の少ないカラーフィルターが求められている。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、外光反射が小さく視認性の高いカラーフィルター及び該カラーフィルターを備える液晶表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一実施形態は、
透明基板と、上記透明基板上に積層された透明ベースコート層と、上記透明ベースコート層上に部分的に積層された遮光層と、上記遮光層上及び上記遮光層の無い領域の上記透明ベースコート層上に積層された色レジスト層と、上記遮光層上及び前記色レジスト層上に積層されたオーバーコート層を有するカラーフィルターであって、
上記カラーフィルターは、上記透明基板上に上記透明ベースコート層と上記遮光層が積層され、上記色レジスト層が積層されていない額縁部と、上記透明基板上に上記透明ベースコート層と上記色レジスト層が積層され、上記遮光層が積層されていない開口部とを有し、
上記額縁部において上記透明基板側から入射する光の反射率が、上記遮光層側から入射する光の反射率よりも小さく、
上記色レジスト層中の少なくとも一色の上記開口部において、上記透明基板側から入射する光の反射率が、上記色レジスト層側から入射する光の反射率よりも大きく、
上記透明ベースコート層の屈折率をnbc、膜厚をdbc(nm)、カラーフィルターの開口率をAとしたときに、下記式(1)を満たす、カラーフィルター。
nbc×dbc<α×A2+β×A+γ (1)
ここで、A、α、β、γはそれぞれ以下の式を満たす。
A=開口部の面積/アクティブエリアの面積
α=436.7×nbc-837.2
β=-315.8×nbc+523.7
γ=-358.3×nbc+771.8
【0008】
(2)また、本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、上記透明ベースコート層の屈折率が、1.71以上1.83以下である、カラーフィルター。
【0009】
(3)また、本発明のある実施形態は、上記(1)又は(2)の構成に加え、上記透明ベースコート層が、シリコン酸窒化物又はシリコン窒化物を含有する、カラーフィルター。
【0010】
(4)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、(2)又は(3)の構成に加え、上記遮光層の屈折率が、1.76以上1.80以下である、カラーフィルター。
【0011】
(5)本発明のある実施形態は、上記(1)、(2)、(3)又は(4)のカラーフィルターを有する、液晶表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外光反射が小さく視認性の高いカラーフィルター及び該カラーフィルターを備える液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るカラーフィルターの一例を模式的に表した断面図である。
【
図2】額縁部及び開口部の反射率測定における測定サンプルの断面図である。
【
図3】実施例にて作製したカラーフィルターを模式的に表した断面図である。
【
図4】実施例にて作製した液晶パネルを模式的に表した断面図である。
【
図5】実施例1にて作製したカラーフィルターの条件で透明ベースコート層の厚みを変更したときのカラーフィルターの内部反射率のグラフである。
【
図6】実施例2にて作製したカラーフィルターの条件で透明ベースコート層の厚みを変更したときのカラーフィルターの内部反射率のグラフである。
【
図7】実施例3にて作製したカラーフィルターの条件で透明ベースコート層の厚みを変更したときのカラーフィルターの内部反射率のグラフである。
【
図8】実施例4にて作製したカラーフィルターの条件で透明ベースコート層の厚みを変更したときのカラーフィルターの内部反射率のグラフである。
【
図9】実施例5にて作製したカラーフィルターの条件で透明ベースコート層の厚みを変更したときのカラーフィルターの内部反射率のグラフである。
【
図10】実施例6にて作製したカラーフィルターの条件で透明ベースコート層の厚みを変更したときのカラーフィルターの内部反射率のグラフである。
【
図11】実施例7にて作製したカラーフィルターの条件で透明ベースコート層の厚みを変更したときのカラーフィルターの内部反射率のグラフである。
【
図12】実施例8にて作製したカラーフィルターの条件で透明ベースコート層の厚みを変更したときのカラーフィルターの内部反射率のグラフである。
【
図13】実施例9にて作製したカラーフィルターの条件で透明ベースコート層の厚みを変更したときのカラーフィルターの内部反射率のグラフである。
【
図14】実施例10にて作製したカラーフィルターの条件で透明ベースコート層の厚みを変更したときのカラーフィルターの内部反射率のグラフである。
【
図15】実施例11にて作製したカラーフィルターの条件で透明ベースコート層の厚みを変更したときのカラーフィルターの内部反射率のグラフである。
【
図16】実施例12にて作製したカラーフィルターの条件で透明ベースコート層の厚みを変更したときのカラーフィルターの内部反射率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るカラーフィルター及び液晶表示装置について説明する。本発明は、以下の実施形態に記載された内容に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。
【0015】
図1に本発明の実施形態に係るカラーフィルターの一例を模式的に表した断面図を示す。本発明の実施形態に係るカラーフィルター1は、透明基板2上に透明ベースコート層3と部分的に積層された遮光層4が積層されており、更にパターニングによって遮光層の無い領域及び遮光層4上に赤色レジスト層51、緑色レジスト層52、青色レジスト層53等の色レジスト層5が積層された構造となっている。また、遮光層4及び色レジスト層5上に積層面を平坦化するためのオーバーコート層6が設けられている。更に、本発明の実施形態に係るカラーフィルターは、透明基板2上に透明ベースコート層3と遮光層4が積層され、色レジスト層5が積層されていない額縁部7と、透明基板2上に透明ベースコート層3と色レジスト層5が積層され、遮光層4が積層されていない開口部8とを有している。本発明の実施形態に係るカラーフィルターは、アクティブエリア(色レジスト層5が形成されている領域)の面積中における開口部8の割合、つまり、開口率と、透明ベースコート層3の屈折率及び膜厚を後述する式を満たすように設定することで、外光反射が小さく視認性の高いカラーフィルターとすることができる。
【0016】
本発明の実施形態に係るカラーフィルターは、上記額縁部において上記透明基板側から入射する光の反射率(以下、R1ともいう)が、上記遮光層側から入射する光の反射率(以下、R2ともいう)よりも小さく、上記色レジスト層中の少なくとも一色の上記開口部において、上記透明基板側から入射する光の反射率(以下、R3ともいう)が、上記色レジスト層側から入射する光の反射率(以下、R4ともいう)よりも大きい。
図1の額縁部7において、透明基板2側から入射する光の反射率R1を遮光層4側から入射する光の反射率R2より小さくする一方、
図1のいずれかのサブピクセル中の開口部8において、透明基板2側から入射する光の反射率R3を遮光層4側から入射する光の反射率R4より大きくする、つまり、R1<R2、かつ、R3>R4とすることで、視認性の高いカラーフィルターとすることができる。なお、本明細書において反射率とは波長550nmの光の反射率を指す。また、以下カラーフィルターにおいて透明基板の遮光層が積層されていない面方向を基板側、遮光層が積層している面方向を膜面側ともいう。
【0017】
上記反射率は、例えば以下の方法で測定することができる。
図2に額縁部及び開口部の反射率測定における測定サンプルの例の断面図を示した。測定サンプルは、透明基板2、透明ベースコート層3、遮光層4、色レジスト層5、オーバーコート層6からなるカラーフィルター1の下に黒色アクリル板11がマッチングオイル10とフォトスペーサー9を介して配置された構成となっている。カラーフィルターの下にマッチングオイル10と黒色アクリル板11を配置することにより、机等のカラーフィルターの設置場所からの反射の影響を排除することができる。上記構成となるように作製した測定サンプルについて顕微分光装置(OSP-SP200、オリンパス社製又はその同等品)を用いて、カラーフィルターの額縁部と開口部の反射率を測定する。なお、測定はカラーフィルターの透明基板2が光源側となる面(基板側)と、オーバーコート層6が光源側となる面(膜面側)のそれぞれについて行う。また、マッチングオイルは屈折率が約1.5となるものを選択し、具体的にはグリセリン等が挙げられる。
【0018】
本発明の実施形態に係るカラーフィルターは、上記透明ベースコート層の屈折率をnbc、膜厚をdbc(nm)、カラーフィルター基板の開口率をAとしたときに、下記式(1)を満たす。
nbc×dbc<α×A2+β×A+γ (1)
ここで、A、α、β、γはそれぞれ以下の式を満たす。
A=開口部の面積/アクティブエリアの面積
α=436.7×nbc-837.2
β=-315.8×nbc+523.7
γ=-358.3×nbc+771.8
なお、本明細書においてアクティブエリアとは、色レジスト層が積層された部分、つまり、カラーフィルター全体から額縁部を除いた部分のことを指す。また、本明細書中において屈折率とは波長550nmの光の屈折率のことを指す。
【0019】
従来提案されている特許文献1のようなカラーフィルターは、透明基板と遮光層の間に屈折率が透明基板と遮光層の間である材料からなる屈折率調整層を設け、その膜厚を1/4波長となるようにすることで、反射した光が干渉して反射光を抑えるものである。このような構造のカラーフィルターは、透明基板/屈折率調整層/遮光層の構造となる部分、つまり、額縁部においては反射光を低減することができるものの、遮光層の代わりに色レジスト層が積層されている開口部では屈折率調整層の存在によって逆に反射率が高くなってしまう場合があり、カラーフィルター全体としての外光反射が期待するほど低減されないという問題があった。この問題を解決するためには、屈折率調整層をパターニングし、開口部を避けて屈折率調整層を形成することが考えられるが、技術的に難度が高く生産性も低下するという問題があった。本発明の実施形態に係るカラーフィルターでは、カラーフィルターの開口率と透明ベースコート層の屈折率及び膜厚を上記式(1)を満たすように調節することで、透明ベースコート層が開口部に存在する場合であっても外光反射が小さく視認性の高いカラーフィルターとすることができる。
【0020】
本発明の実施形態に係るカラーフィルターは、上記式(1)の右辺と左辺の差、つまり、(α×A2+β×A+γ)-(nbc×dbc)が0nmより大きいことが好ましい。上記式(1)の右辺と左辺の差が上記範囲であることで、より外光反射を抑えることができる。上記式(1)の右辺と左辺の差は、20nm以上であることがより好ましく、40nm以上であることが更に好ましい。上記式(1)の右辺と左辺の差の上限は特に限定されないが、上記開口率と上記ベースコート層の屈折率及び膜厚の設計的制約から140nm程度である。
【0021】
上記開口率は35%以上であることが好ましい。上記開口率が35%以上であることで、より明るく消費電力の低い液晶表示装置とすることができる。上記開口率は45%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましい。上記開口率の上限は特に限定されないが、製造技術上70%程度である。
【0022】
上記透明基板は特に限定されず、液晶表示装置の分野において従来公知のものを用いることができ、例えば、ガラス等の無機基板や透明樹脂等の樹脂基板等が挙げられる。
【0023】
上記透明ベースコート層は、上記透明基板と上記遮光層との屈折率差を調整して外光反射を低減する役割を有する。上記透明ベースコート層は、上記透明基板と上記遮光層又は上記色レジスト層の間に介在する層を指し、異なる材料で構成される複数の層で構成されてもよい。上記透明ベースコート層の材料は、透明であり上記式(1)を満たすものを適宜選択する。上記式(1)を満たしやすい材料としては、例えば、シリコン酸窒化物、シリコン窒化物、酸化アルミニウム等が挙げられる。なかでも、より外光反射を抑えられることから、上記透明ベースコート層はシリコン酸窒化物又はシリコン窒化物を含有することが好ましい。なお、ここで透明とは、単膜の透過率が可視波長域(380nm~780nm)において80%以上であることを意味する。
【0024】
上記透明ベースコート層の屈折率は、上記式(1)を満たしていれば特に限定されないが、より外光反射を抑えられることから、1.71以上であることが好ましく、1.83以下であることが好ましい。このような屈折率を有する透明ベースコート層の材料としては、例えば、シリコン酸窒化物、シリコン窒化物等が挙げられる。
【0025】
上記透明ベースコート層の厚みは上記式(1)を満たすように適宜調節されるが、より外光反射を抑えられることから、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、30nm以上であることが更に好ましく、80nm以下であることが好ましく50nm以下であることがより好ましい。
【0026】
上記遮光層は、フォトレジスト(感光性樹脂)を露光した後、現像することによって、隣接する複数の色レジスト層同士を区分するパターンに形成された層である。上記遮光層は、例えば、フォトリソグラフィにより格子状に形成されたブラックマトリクス(BM)であってもよい。フォトレジストは、ポジ型であってもよいし、ネガ型であってもよい。
【0027】
上記遮光層の材料は、上記R1~R4の関係を満たせば特に限定されず、顔料を含有する樹脂等が挙げられる。上記顔料としては、例えば、カーボン系黒色顔料、チタン系黒色顔料等が挙げられる。なかでも、上記R1~R4の関係を満たしやすいことからチタン系黒色顔料が好ましい。また、樹脂としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。なかでも、上記R1~R4の関係を満たしやすいことからアクリル樹脂が好ましい。
【0028】
上記遮光層の屈折率は、上記R1~R4の関係を満たせば特に限定されず、例えば、1.76以上であることが好ましく、1.80以下であることが好ましい。
【0029】
上記色レジスト層の材料としては、例えば、顔料を含有する樹脂(カラーレジスト)等が挙げられる。上記色レジスト層の色の組み合わせは、赤色、緑色、及び、青色の組み合わせに限定されず、例えば、赤色、緑色、青色、及び、黄色の組み合わせであってもよい。
【0030】
上記オーバーコート層は、色レジスト層中の不純物が他の層に溶出することを防止するとともに、遮光層及び色レジスト層によって生じる凹凸を平坦化する役割を有する。オーバーコート層の材料としては、透明樹脂が好適であり、具体的にはアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0031】
上記オーバーコート層の屈折率は、上記R1~R4の関係を満たせば特に限定されず、例えば、1.40以上であることが好ましく、1.60以下であることが好ましい。
【0032】
上記透明ベースコート層の厚みは特に限定されないが、斜め視での混色リスクがより軽減されることから、1.0μm以上であることが好ましく、2.0μm以下であることが好ましい。
【0033】
本発明の実施形態に係るカラーフィルターを用いることで、外光反射が小さく視認性の高い液晶表示装置を得ることができる。
このような本発明の実施形態に係るカラーフィルターを有する液晶表示装置もまた、本発明の一実施形態である。
本発明の実施形態に係る液晶表示装置としては、例えば、カラーフィルターと、カラーフィルターと対向する対向基板と、カラーフィルターと対向基板との間に配置された液晶層を有する液晶表示装置が挙げられる。
【0034】
上記カラーフィルターは本発明の実施形態に係るカラーフィルターと同様のものを用いることができる。
【0035】
上記対向基板は、カラーフィルターと対向して配置され、カラーフィルターと対向基板との間に液晶層を保持するものであれば特に限定されず、例えば、液晶表示装置の分野において従来公知のアクティブマトリックス基板を用いてもよい。
【0036】
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
(1)カラーフィルターの作製
透明基板として厚み0.5mmのガラス基板(屈折率(550nm):1.55)を用意した。次いで、ガラス基板上に透明ベースコート層としてSiON(屈折率(550nm):1.71)をCVD(Chemical Vapor Deposition)装置によって40nm積層した。その後、開口率35%(A=0.35)のカラーフィルター用マスクを用いて遮光層と色レジスト層を形成し、遮光層及び色レジスト層上にオーバーコート層を形成してカラーフィルターを作製した。作製したカラーフィルターを模式的に表した断面図を
図3に示した。遮光層の樹脂Aは、50重量部のチタンブラック材料を50重量部のアクリル樹脂に加えて混錬したものであり、550nmの波長における屈折率が1.76である。また、色レジスト層を構成する各色のレジスト層は、波長550nmにおける屈折率がそれぞれ1.64(赤色レジスト層)、1.59(緑色レジスト層)、1・52(青色レジスト層)のものを用い、開口部における厚みを2.0μmとした。オーバーコート層はアクリル樹脂(屈折率(550nm):1.49)を用い、厚み1.5μmとした。
【0038】
(2)カラーフィルターのミクロ反射率の測定
得られたカラーフィルターを用いて
図2に示すような構成を有する測定サンプルを作製した。黒色アクリル板11は550nmにおける屈折率が1.49のものを用いた。マッチングオイル10はグリセリンを用いた。フォトスペーサー9の高さ(厚み)は3.05μmとした。次いで、得られた測定サンプルの額縁部と開口部について顕微分光装置(OSP-SP200、オリンパス社製)を用いて、ミクロ反射率を測定した。なお、開口部の反射率については色レジスト層の各色について測定した。その後、カラーフィルター1の膜面側が光源側となるように測定サンプルを作製し、同様の方法で額縁部と開口部のミクロ反射率を測定した。結果を表1に示した。
【0039】
(3)カラーフィルターの内部反射率の測定
透明基板が光源側である測定サンプルについて、分光測色計(CM-2600d、コニカミノルタ社製)を用いてSCI(Specular Component Include、正反射光を含む)の条件で、カラーフィルターの反射率を測定した。次いで、カラーフィルターの代わりにガラス基板のみを用いた測定サンプルを作製し、カラーフィルターと同様の方法で反射率を測定した。この反射率をガラス基板の表面反射率とし、カラーフィルターの反射率からガラス基板の表面反射率を差し引くことでカラーフィルターの内部反射率とした。結果を表1に示した。
なお、分光測色計を用いた反射率の測定では、正反射成分を含まないSCE反射率と、正反射成分を含むSCI反射率の2種類が得られる場合があるが、本明細書においてはSCI反射率を用いた。
【0040】
(4)液晶パネルの内部反射率の測定
「(1)カラーフィルターの作製」と同様の方法で作製したカラーフィルターを有する通常FFSモード液晶パネルを作製した。作製した液晶パネルを模式的に表した断面図を
図4に示した。液晶パネルはカラーフィルター1の基板側に偏光板12、ITO13が積層され、膜面側にフォトスペーサー9、液晶層14、TFT基板15、偏光板12が積層された構成となっている。ITO13は、帯電防止及び電磁波遮蔽用の透明電極である。得られた液晶パネルについて、分光測色系(CM-2600d、コニカミノルタ社製)を用いてSCI(Specular Component Include、正反射光を含む)の条件で液晶パネルの反射率を測定した。得られた反射率から「(3)カラーフィルターの内部反射率の測定」の際に得られたガラス基板の表面反射率を差し引くことでカラーフィルターの内部反射率とした。
【0041】
(実施例2~12、比較例1~7)
カラーフィルターの開口率、透明ベースコート層の構成、遮光層の材料を表1、2の通りとした以外は実施例1と同様にしてカラーフィルター及び液晶パネルを作製し、カラーフィルターのミクロ反射率、カラーフィルターの内部反射率及び液晶パネルの内部反射率を測定した。なお、遮光層の樹脂Bは、50重量部のカーボンブラック材料を50重量部のエポキシアクリレート樹脂に加えて混錬したものであり、550nmの波長における屈折率が1.80である。
【0042】
また、各実施例の開口率、ベースコート層の種類、遮光層の種類及び厚みの条件で、ベースコート層の厚みを変更した際のカラーフィルターの内部反射率を測定したグラフを
図5~16に示す。横軸はn
bc×d
bc、縦軸はカラーフィルターの内部反射率であり、各グラフの破線上の数値は、透明ベースコート層がないときのカラーフィルターの内部反射率と同一になるn
bc×d
bcを表している。
【0043】
【0044】
【符号の説明】
【0045】
1 :カラーフィルター
2 :透明基板
3 :透明ベースコート層
4 :遮光層
5 :色レジスト層
51:赤色レジスト層
52:緑色レジスト層
53:青色レジスト層
6 :オーバーコート層
7 :額縁部
8 :開口部
9 :フォトスペーサー
10:マッチングオイル
11:黒色アクリル板
12:偏光板
13:ITO
14:液晶層
15:TFT基板