(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152364
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】漏電遮断器
(51)【国際特許分類】
H01H 83/02 20060101AFI20241018BHJP
H01H 83/04 20060101ALI20241018BHJP
H02H 7/26 20060101ALI20241018BHJP
H02H 3/05 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01H83/02 E
H01H83/04
H02H7/26 C
H02H3/05 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066511
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】田上 寛幸
【テーマコード(参考)】
5G030
5G142
【Fターム(参考)】
5G030FA02
5G030XX08
5G030YY13
5G142AA12
(57)【要約】
【課題】テスト回路の消費電流を抑制し、安定した漏電検出動作、引外し動作およびテスト動作を行うことができる漏電遮断器を得ること。
【解決手段】漏電遮断器1は、二次巻線6aおよび三次巻線6bを有する零相変流器6と、零相変流器6の二次巻線6aの出力電流に基づいて漏電を検出する漏電検出回路7と、漏電検出回路7の検出信号により主回路4に挿入された開閉部5を開路する引外し装置8と、零相変流器6の三次巻線6bにテスト電流Itを流すテスト回路20と、主回路4の交流電圧を降圧した直流電圧を漏電検出回路7、引外し装置8およびテスト回路20に供給する電源回路9と、を備える。テスト回路20は、直流パルスを生成する直流パルス生成回路15と、直流パルスを交流パルスに変換し、交流パルスを三次巻線6bにテスト電流Itとして流すH形ブリッジ回路14と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電路に挿入され、二次巻線およびテスト巻線を有する零相変流器と、
前記零相変流器の二次巻線の出力電流に基づいて漏電を検出する漏電検出回路と、
前記漏電検出回路の検出信号により前記交流電路に挿入された開閉部を開路する引外し装置と、
前記零相変流器の前記テスト巻線にテスト電流を流すテスト回路と、
前記交流電路の交流電圧を降圧した直流電圧を前記漏電検出回路、前記引外し装置および前記テスト回路に供給する電源回路と、を備え、
前記テスト回路は、
直流パルスを生成する直流パルス生成回路と、
前記直流パルスを交流パルスに変換し、前記交流パルスを前記テスト巻線に前記テスト電流として流す直流交流変換回路と、を備える
ことを特徴とする漏電遮断器。
【請求項2】
前記テスト電流を微分して前記テスト巻線に流す微分回路を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の漏電遮断器。
【請求項3】
前記直流交流変換回路は、H形ブリッジ回路である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の漏電遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配電系統等の交流電路に流れる漏洩電流を検出して交流電路を遮断し漏電事故を未然に防ぐための漏電遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の漏電遮断器は、交流電路に接続される主回路と、この主回路を開閉する開閉機構を備えた開閉部と、主回路に流れる漏洩電流を検出する零相変流器と、零相変流器が漏洩電流を検出したときに開閉部の開閉機構を引外して主回路を遮断する引外し装置と、零相変流器にテスト電流を流して漏電引外し機能の動作確認を行うためのテスト回路等を備えている。テスト回路は、零相変流器のテスト巻線、テストスイッチ、テスト抵抗などによって構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の漏電遮断器は、主回路の2相の交流電路から漏電検出回路および引外し装置の動作電源を得ている。また、テスト回路は、主回路の交流電圧から動作電源を得ており、この動作電源からテストスイッチ、テスト抵抗を通して零相変流器のテスト巻線に流すテスト電流を作成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、テスト電流は、内部制御電源の基準電圧をゼロレベルとする直流パルスであり、直流成分が主体であって交流成分が極めて少ない。従って、このテスト電流による零相変流器からの出力は、通常の正弦波の交流電流による零相変流器の出力と比べ非常に小さい。そのため、テスト動作させるためのテスト電流としては、非常に大きな電流が必要となり、電源回路の電源容量を上げるために、回路電流を大きくする必要があり、テスト回路の消費電流が大きくなってしまうという問題がある。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、テスト回路の消費電流を抑制し、安定した漏電検出動作、引外し動作およびテスト動作を行うことができる漏電遮断器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の漏電遮断器は、交流電路に挿入され、二次巻線およびテスト巻線を有する零相変流器と、零相変流器の二次巻線の出力電流に基づいて漏電を検出する漏電検出回路と、漏電検出回路の検出信号により交流電路に挿入された開閉部を開路する引外し装置と、零相変流器のテスト巻線にテスト電流を流すテスト回路と、交流電路の交流電圧を降圧した直流電圧を漏電検出回路、引外し装置およびテスト回路に供給する電源回路と、を備える。テスト回路は、直流パルスを生成する直流パルス生成回路と、直流パルスを交流パルスに変換し、交流パルスをテスト巻線にテスト電流として流す直流交流変換回路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示の漏電遮断器によれば、テスト回路の消費電流を抑制し、安定した漏電検出動作、引外し動作およびテスト動作を行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施の形態における漏電遮断器のテスト動作における各部の波形を示すタイムチャート
【
図3】実施の形態における漏電遮断器のテスト動作における各部の波形を示すタイムチャート
【
図4】実施の形態における漏電遮断器において、正側のテスト電流の流れる経路を説明するための図
【
図5】実施の形態における漏電遮断器において、負側のテスト電流の流れる経路を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態にかかる漏電遮断器について図面を用いて説明する。
【0011】
実施の形態.
図1は、実施の形態における漏電遮断器を示す回路図である。
図1に示すように、漏電遮断器1は、主回路4と、開閉部5と、零相変流器6と、漏電検出回路7と、引外し装置8と、電源回路9と、三相全波整流回路10と、微分回路16と、テスト電流駆動回路13を含む後述するテスト回路20と、を備えている。テスト回路20は、テスト巻線としての三次巻線6b、テスト電流駆動回路13、微分回路16、およびテストスイッチ17などから構成されている。
図1において、GRDはグランドを示している。
【0012】
主回路4は、電源側接続端子2と負荷側接続端子3とを接続するR相、S相、T相の各電路から構成されている。開閉部5は、R相、S相、T相の三相の主回路を開閉する開閉接点と、開閉接点を開閉駆動する開閉機構とを有する。零相変流器6は、主回路4の三相の導体が貫通されるよう、主回路4に挿入される。零相変流器6は、主回路4を流れる零相電流を検出し、検出した零相電流信号を二次巻線6aから出力する。零相変流器6に設けられた三次巻線6bは、テスト時に使用される。漏電検出回路7は、二次巻線6aから入力された零相電流信号に基づいて漏電または地絡事故の発生を検出する。引外し装置8は、引外しコイルを有し、漏電検出回路7の検出信号をトリガにして、開閉部5の開閉機構を引外し駆動して主回路4を遮断する。三相全波整流回路10は、主回路4の交流電力を直流電力に変換し電源回路9に供給する。電源回路9は、三相全波整流回路10から出力される直流電圧VDを直流制御電圧VSに降圧して、漏電検出回路7および引外し装置8に動作電源として供給する。
【0013】
漏電遮断器1は、電源側接続端子2と負荷側接続端子3とにより、漏電を検出すべき三相交流電路(図示せず)に接続される。
【0014】
三相全波整流回路10は、周知の6個の整流ダイオードで構成され、主回路4の三相交流電圧を整流して電源回路9に直流電圧VDを供給する。なお、三相全波整流回路10の交流側は、インピーダンス素子11を介して主回路4のR相、S相、T相の各電路に夫々接続されている。また、三相全波整流回路10の直流側の両端には、電圧抑制素子12が接続されている。
【0015】
電圧抑制素子12は、三相全波整流回路10の各相の正極側アーム、負極側アームを夫々構成する各2個の整流ダイオードの夫々に対し並列に接続されており、サージまたはインパルス等の過電圧によって発生する整流ダイオードに対する逆電圧を抑制して、三相全波整流回路10も含めた漏電遮断器1の内部回路全体を保護する。
【0016】
電源回路9は、三相全波整流回路10により全波整流された直流電圧VDが供給される。電源回路9は、直流電圧VDを直流制御電圧VS(例えば、DC40V)に降圧して漏電検出回路7に供給する。
【0017】
漏電検出回路7は、零相変流器6の二次巻線6aから入力された零相電流信号に基づいて漏電の発生を検出する。漏電検出回路7では、零相電流信号のピーク電圧値、あるいは零相信号の電圧幅を判別し、それらが閾値を超えたとき漏電発生と判断する。漏電検出回路7は、漏電発生を検出すると、電源回路9により降圧された直流制御電圧VSを引外し装置8に供給して、引外し装置8を駆動する。引外し装置8は、開閉部5の開閉機構を引外し駆動して主回路4を遮断する。
【0018】
次に、漏電引外し機能のテスト動作を行うテスト回路20について説明する。このテスト動作は、零相変流器6に設けられた三次巻線6bにテスト電流Itを通電することにより疑似的に漏電を発生させて、漏電引外しを行うものである。例えば、漏電遮断器1の感度電流が500mAで、三次巻線6bが100ターンであったとすると、テスト電流Itは、2倍程度の電流を流す必要があるので、
500(mA)×2/100(ターン)=10mA
となり、10mA程度の電流値に設定する必要がある。
【0019】
テスト回路20は、零相変流器6に設けられた三次巻線6bと、三次巻線6bにテスト電流Itを供給するテスト電流駆動回路13と、微分回路16と、テストスイッチ17と、を有する。テストスイッチ17は、手動によるオン操作でテスト電流駆動回路13からのテスト電流Itを三次巻線6bに通電する。微分回路16は、テスト電流Itの実効値を低く抑える機能を有する。
【0020】
テスト電流駆動回路13は、直流交流変換回路としてのH形ブリッジ回路14と、直流パルス生成回路15と、を備える。H形ブリッジ回路14は、H形ブリッジ回路14を構成する4つのトランジスタ14a~14dと、トランジスタ14eと、抵抗r1~r5と、を有する。トランジスタ14eおよび抵抗r1~r5によって、トランジスタ14a,14dと、トランジスタ14b,14cと、を排他的にオンオフ動作させる。H形ブリッジ回路14は、電源回路9によって降圧された直流制御電圧VSから、トランジスタ14a~14dのスイッチング動作によって、交流のテスト電流Itを発生させる。直流パルス生成回路15は、トランジスタ14a~14dをスイッチング動作させるための直流パルス電圧Vpを出力する。H形ブリッジ回路14は、別言すれば、直流パルス生成回路15の直流パルスを交流パルスに変換し、変換した交流パルスを三次巻線6bに対しスト電流として流す機能を有する。
【0021】
また、零相変流器6の三次巻線6bとH形ブリッジ回路14とを接続する経路には、微分回路16が設けられている。微分回路16は、抵抗16aとコンデンサ16bとの直列体として構成される。
【0022】
テスト操作は、テストスイッチ17をオンすることにより行なわれる。テストスイッチ17のオン時にのみ、テスト電流Itがテスト電流駆動回路13から零相変流器6の三次巻線6bに流れる。
【0023】
以上のように構成された漏電遮断器1は、漏電を検出すべき交流電路に漏電が発生して主回路4に漏洩電流が流れると、零相変流器6の二次巻線6aから零相電流信号が出力されて漏電検出回路7に入力される。漏電検出回路7は、入力された電流信号に基づいて漏電の発生を検出し、電源回路9によって降圧された直流制御電圧VSを引外し装置8に供給して引外し装置8を駆動する。これにより、引外し装置8は、開閉部5の開閉接点を引外して主回路4を遮断する。
【0024】
次に、漏電遮断器1の漏電テストの動作について説明する。
図2は、実施の形態における漏電遮断器1のテスト動作における各部の波形を示すタイムチャートである。
図3は、実施の形態における漏電遮断器1のテスト動作における各部の波形を示すタイムチャートである。
図2は、漏電遮断器1に微分回路16が設けられていない場合のタイムチャートである。
図3は、漏電遮断器1に微分回路16が設けられている場合のタイムチャートである。
図4は、実施の形態における漏電遮断器において、正側のテスト電流Itの流れる経路を説明するための図である。
図5は、実施の形態における漏電遮断器において、負側のテスト電流Itの流れる経路を説明するための図である。
【0025】
図2、
図3において、VSは、電源回路9の出力である直流制御電圧VSに対応し、Vpは、直流パルス生成回路15の出力である直流パルス電圧Vpに対応し、Itは、零相変流器6の三次巻線6bに流れるテスト電流Itに対応し、Ieは、テスト電流駆動回路13の消費電流を実効値で示している。
【0026】
図2、
図3に示すように、直流パルス生成回路15からは、ハイとローとが予め設定された周期で繰り返される直流パルス電圧Vpが出力される。直流パルス生成回路15からハイの直流パルス電圧Vpが出力された期間は、トランジスタ14a,14d,14eがオンになり、トランジスタ14b,14cがオフとなり、正側のテスト電流Itが流れる。正側のテスト電流Itは、
図4に示すように、電源回路9→テストスイッチ17→トランジスタ14d→三次巻線6b→微分回路16→トランジスタ14aの順に流れる。
【0027】
一方、直流パルス生成回路15からローの直流パルス電圧Vpが出力された期間は、トランジスタ14a,14d,14eがオフになり、トランジスタ14b,14cがオンとなり、負側のテスト電流Itが流れる。負側のテスト電流Itは、
図5に示すように、電源回路9→テストスイッチ17→トランジスタ14c→微分回路16→三次巻線6b→トランジスタ14bの順に流れる。
【0028】
このように、実施の形態のテスト回路20は、正負の両方の極性を有する交流電流のテスト電流Itを流すことができる。
【0029】
次に、微分回路16の作用について説明する。
図3に示すように、微分回路16を設けることで、正および負のテスト電流Itの立ち上がり時には、直流制御電圧VSの電圧を微分回路16の抵抗16aの抵抗値で割ったピーク電流が流れ、その後、コンデンサ16bに電流がチャージされることで、テスト電流Itは緩やかに下がる。これにより、
図2に示す微分回路16がなしの場合に比べ、テスト電流駆動回路13を流れるテスト電流(消費電流)Itの実効値を低く抑えることができる。
図3には、消費電流の実効値Ieが、微分回路16がなしの場合の消費電流の実効値Ie1から微分回路16がありの場合の消費電流の実効値Ie2まで、ΔIeだけ削減されたことが示されている。
【0030】
なお、テスト電流Itの大きさを前述の10mAと設定する場合、例えば、直流制御電圧VSをDC40Vとすると、微分回路16の抵抗16aの抵抗値を2.7kΩ程度、コンデンサ16bの容量を2.2μF程度と設定すれば、ピーク電流が14.8mAとなり、テスト電流Itとして問題ない電流値となる。
【0031】
また、漏電テスト動作としては、漏電検出回路7が検出しうる検出閾値Icおよび検出幅Δtをテスト電流Itが超えれば漏電テスト動作が成立するため、なだらかに下がるテスト電流Itで問題はない。
【0032】
以上説明したように、実施の形態による漏電遮断器1によれば、テスト電流Itを交流電流とすることで、テスト回路の消費電流を抑制することができる。また、消費電流が抑制されることで、安定した漏電検出動作、引外し動作、およびテスト動作を行うことができる。また、微分回路16を介してテスト電流Itを三次巻線6bに流すことで、テスト回路20の消費電流をさらに抑制することができる。
【0033】
以上の実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 漏電遮断器、2 電源側接続端子、3 負荷側接続端子、4 主回路、5 開閉部、6 零相変流器、6a 二次巻線、6b 三次巻線、7 漏電検出回路、8 引外し装置、9 電源回路、10 三相全波整流回路、11 インピーダンス素子、12 電圧抑制素子、13 テスト電流駆動回路、14 H形ブリッジ回路、14a~14e トランジスタ、15 直流パルス生成回路、16 微分回路、16a,r1~r5 抵抗、16b コンデンサ、17 テストスイッチ、20 テスト回路。