(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152376
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】マルチプレクサ、これを用いるスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置、及びマルチプレクサの制御方法
(51)【国際特許分類】
H01P 1/207 20060101AFI20241018BHJP
H01P 7/06 20060101ALI20241018BHJP
H01P 1/208 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01P1/207 Z
H01P7/06
H01P1/208 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066528
(22)【出願日】2023-04-14
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.WCDMA
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健一
(72)【発明者】
【氏名】岸 裕司
【テーマコード(参考)】
5J006
【Fターム(参考)】
5J006HC01
5J006JA01
5J006JA05
5J006LA11
5J006MA01
5J006NE11
5J006NE13
(57)【要約】
【課題】フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の測定、解析、試験に対応可能なマルチプレクサ、これを用いるスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置、及びマルチプレクサの制御方法を提供する。
【解決手段】マルチプレクサ10は、ハイブリッド18a1とハイブリッド19a1との間に並列に接続される2つのBPF20a1と、ハイブリッド18a1のポートP4に接続され、BPF20a1の通過帯域に隣接する通過帯域を有するBPF20b1と、を備えるとともに、BPF20a1及びハイブリッド18a1の通過帯域を、所定の周波数範囲内の互いにオーバーラップする帯域が形成される帯域の範囲内において可変する通過帯域可変手段40a、40b、40cを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポートP1(Input)、ポートP2(Through)、ポートP3(Couple)及びポートP4(Isolated)をそれぞれ有し、信号の分配または合成を行う回路網で構成される第1のハイブリッド(18a1)、及び第2のハイブリッド(19a1)と、
前記第1のハイブリッドと前記第2のハイブリッドとの間に並列に接続される2つの略同一特性のフィルタからなる第1のフィルタ(20a1)と、
前記第1のハイブリッドの前記ポートP4に接続され、前記第1のフィルタの通過帯域に隣接する通過帯域を有する第2のフィルタ(20b1)と、を備え、
前記第1のハイブリッドの前記ポートP1からの入力信号を2つの前記第1のフィルタに分配し、それぞれの通過帯域内であれば前記第1のフィルタを通過させ、前記第2のハイブリッドで合成されて前記第2のハイブリッドの前記ポートP3から出力する一方、
前記入力信号が前記第1のフィルタの通過帯域外であれば、反射され、前記第1のハイブリッドで合成されて前記ポートP4から前記第2のフィルタに出力するマルチプレクサであって、
前記第1のフィルタ、及び前記第2のフィルタの通過帯域を、所定の周波数範囲内の互いにオーバーラップする帯域が形成される帯域の範囲内において可変する通過帯域可変手段(40a、40b、40c)を有することを特徴とするマルチプレクサ。
【請求項2】
前記第1のハイブリッド、前記第2のハイブリッド、前記第1のフィルタ、及び前記第2のフィルタを有する構成を基本ユニットとし、複数の前記基本ユニットを、前の前記基本ユニットの前記第1のハイブリッドの前記ポートP4或いは前記第2のハイブリッドの前記ポートP3に後の前記基本ユニットの前記第1のハイブリッドの前記ポートP1が接続されるように順に連結して構成され、
前後の前記基本ユニットの前記第1のフィルタ及び前記第2のフィルタは、連続する帯域を通して互いにオーバーラップする帯域が形成されるように前記通過帯域を可変することを特徴とする請求項1に記載のマルチプレクサ。
【請求項3】
それぞれの前記基本ユニットの前記第1のフィルタ及び前記第2のフィルタは、帯域通過フィルタ、高域通過フィルタ、低域通過フィルタのうちのいずれか1種類、または、複数種類混在した構成を有する請求項2に記載のマルチプレクサ。
【請求項4】
前記第1のフィルタ、及び前記第2のフィルタは、導波管フィルタ(20)で構成され、
前記導波管フィルタは、
互いに直方体形状を有し、それぞれ長手方向の一側面(32a、32b)に長手方向の一端(33)から他端(34)にかけて導波路(35)となるべき溝(35a、35b)が形成される第1の導波管部(31a)、及び第2の導波管部(31b)を備え、前記第1の導波管部と前記第2の導波管部を前記一側面同士が向かい合うように対向配置した状態で前記溝による前記導波路が形成されるとともに、前記第1の導波管部の前記一側面と、前記第2の導波管部の前記一側面との間の隙間に応じて前記導波路の通過帯域が変化する導波管部(30)と、
前記通過帯域可変手段を構成し、所望の通過帯域が設定されるように前記導波管部における前記隙間を可変する隙間調整機構(43、43A)と、を有することを特徴とする請求項1に記載のマルチプレクサ。
【請求項5】
前記隙間調整機構(43A)は、
前記第1の導波管部を載置する第1のステージ部材(52a)と、
前記第2の導波管部を、前記第1の導波管部に対して対向配置された状態に載置する第2のステージ部材(52b)と、
前記第1のステージ部材及び前記第2のステージ部材を、前記第1の導波管部と前記第2の導波管部との前記隙間が変化するように、対称面に対して対称に移動可能に駆動する駆動手段(50a、50b)
を有することを特徴とする請求項4に記載のマルチプレクサ。
【請求項6】
前記導波管部は、前記所定の周波数範囲の被測定信号を前記導波路に入力し、互いにオーバーラップする複数の周波数帯のうちの、前記隙間に対応する通過帯域に合致するいずれか1つの前記帯域の周波数成分を出力することを特徴とする請求項5に記載のマルチプレクサ。
【請求項7】
所定の周波数範囲の被測定信号を、ローカル信号発生器(112)から出力されるローカル信号とともにミキサ(111)に与え、そのミキシング出力から所定の中間周波数帯の信号を抽出するフィルタ(113)を有する周波数変換部(100)と、前記中間周波数帯の信号を検波する検波器(120)とを有し、解析対象周波数に応じて前記ローカル信号の周波数を変化させて、前記被測定信号のスペクトラム特性を求めるスペクトラムアナライザ(1)において、
前記周波数変換部の前段に、前記請求項1に記載のマルチプレクサ(10A)を設けるとともに、
前記解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する前記通過帯域が設定されるように前記通過帯域可変手段を駆動制御する通過帯域可変制御手段(151)を有し、
前記解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する周波数成分を、前記マルチプレクサを通して測定することを特徴とするスペクトラムアナライザ。
【請求項8】
前記第1のハイブリッド、前記第2のハイブリッド、前記第1のフィルタ、及び前記第2のフィルタを有する構成を基本ユニットとし、
複数の前記基本ユニット(10-11、10-12)を組み合わせて前記マルチプレクサ(10A)が構成され、
それぞれの前記基本ユニットの前記第1のフィルタ及び前記第2のフィルタは、連続する帯域を通して互いにオーバーラップする帯域が形成されるように前記通過帯域を可変することを特徴とする請求項7に記載のスペクトラムアナライザ。
【請求項9】
所定の周波数範囲の被測定信号を、ローカル信号発生器(112)から出力されるローカル信号とともにミキサ(111D)に与え、そのミキシング出力から所定の中間周波数帯の信号を抽出するフィルタ(113D)を有する周波数変換部(100D)と、前記中間周波数帯の信号をADC(125)でデジタル信号に変換した後に当該信号の波形を解析する信号解析部(153D)とを有し、解析対象周波数に応じて前記ローカル信号の周波数を変化させて、前記被測定信号の波形を解析するシグナルアナライザ(2)において、
前記周波数変換部の前段に、前記請求項1に記載のマルチプレクサ(10A)を設けるとともに、
前記解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する前記通過帯域が設定されるように前記通過帯域可変手段を駆動制御する通過帯域可変制御手段(151D)を有し、
前記解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する周波数成分の信号を、前記マルチプレクサを通して解析することを特徴とするシグナルアナライザ。
【請求項10】
信号発生部(130)から出力される中間周波数帯の試験用信号を、ローカル信号発生器(112E)から出力されるローカル信号とともにミキサ(111E)に与え、所定の周波数範囲の信号に変換する周波数変換部(100E)を有し、被測定対象(DUT)を試験するための試験対象周波数に応じて前記ローカル信号の周波数を変化させて、前記周波数変換部による周波数変換後の信号を前記被測定対象の試験用信号として送出する信号発生装置(3)において、
前記周波数変換部の後段に、前記周波数変換後の信号が入力される前記請求項1に記載のマルチプレクサ(10E)を設けるとともに、
前記試験対象周波数のうちの一周波数帯に対応する前記通過帯域が設定されるように前記通過帯域可変手段を駆動制御する通過帯域可変制御手段(151E)を有し、
前記試験対象周波数のうちの前記マルチプレクサを通過する一周波数帯に対応する周波数成分の前記試験用信号を送出することを特徴とする信号発生装置。
【請求項11】
請求項1に記載のマルチプレクサ(10)を用いるスペクトラムアナライザ、またはシグナルアナライザ、若しくは信号発生装置におけるマルチプレクサの制御方法であって、
解析対象周波数、または試験対象周波数を設定する設定ステップ(S1、S11)と、
設定された前記解析対象周波数、または試験対象周波数に基づき、前記第1のフィルタ、及び前記第2のフィルタに対して選択されるべき前記通過帯域が設定されるように前記通過帯域可変手段を駆動制御する通過帯域可変制御ステップ(S3、S13)と、
前記通過帯域可変手段により設定された前記通過帯域を有する前記第1のフィルタ、及び前記第2のフィルタを通過する前記解析対象周波数、または試験対象周波数に対応する周波数成分を抽出するステップ(S4、S14)と、
を含むことを特徴とするマルチプレクサの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド間に一対のフィルタを配置した回路構造を基本とし、フィルタが通過帯域を可変する機能を有するマルチプレクサ、これを用いるスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置、及びマルチプレクサの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
入力信号から所望の通過帯域の信号成分を抽出するためのフィルタとしては、信号成分を導入、通過させる導波路が形成された導波管を用いた導波管フィルタがある。
【0003】
導波管フィルタの一例として、複数の空洞共振器が複数のアイリスを介して結合される誘導性アイリス結合導波管フィルタが従来から知られている(例えば、特許文献1等)。この誘導性アイリス結合導波管フィルタは、入力側と出力側に、それぞれ、誘導性の第1アイリスと第2アイリスとを配した構造を有している。
【0004】
また、導波管による複数の導波路が形成されたフィルタブロックを、指定された導波路の両端が第1の固定導波管ブロックの導波路と第2の固定導波管ブロックの導波路とに接続させる位置まで機械的に移動させるフィルタバンクの構造も知られている(例えば、特許文献2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-184831号公報
【特許文献2】特開2019-87862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
被測定信号から複数の周波数帯の信号を抽出するフィルタ部に特許文献1に記載されるような導波管フィルタや、特許文献2に記載されるような導波管ブロック切替機構を用い得るものとしてスペクトラムアナライザが知られている。
【0007】
スペクトラムアナライザに関しては、今日の5Gや各種の無線通信に係る通信技術の急速な進展を背景とし、今後さらに高度な通信技術を獲得すべく、例えば、ミリ波(200GHz~300GHz等)帯等のより高い周波数帯においてスプリアス成分からの影響があるかどうかを精度よく検出できることが求められている。同様の要求は、フィルタ部に上述した導波管フィルタや、導波管ブロック切替機構をフィルタ部に用い得るシグナルアナライザや、被測定対象(Device Under Test:DUT)の受信感度試験のための試験用信号を発生する信号発生装置に対しても高まりつつある。
【0008】
上述した要求に応えるべく、従来のスペクトラムアナライザでは、フィルタ部として、例えば、
図17に示すような構成を有するフィルタバンクを採用するものがあった。
図17において、各フィルタ91a、91b、91cは、それぞれ、2つのハイブリッド93、94(ハイブリッド93a1と94a1、93b1と94b1、93c1と94c1)を有するとともに、2つのハイブリッド93、94の間に、それぞれ、一対のフィルタ95a1、95b1、95c1を配置した構成を有する。ハイブリッド93、94としてブランチライン・カプラ(BLC)を用いたものは、BLCフィルタバンクと呼ばれる。
【0009】
BLCフィルタバンクを用いるスペクトラムアナライザでは、通過帯域の異なるフィルタを機械的に切り替える必要がなく、各フィルタ91a、91b、91cのフィルタ95a1、95b1、95c1を通過する信号を取り出すだけで所望の帯域の信号を取得することができる。
【0010】
しかしながら、BLCフィルタバンクは、元々、隣り合うフィルタ95a1、95b1、95c1間で通過帯域をオーバーラップさせるようにはなっていなかった。このため、信号の測定(または、解析、若しくはDUT試験)が行えなくなることを抑止すべく、オーバーラップを確保するためには、
図17に示すようなBLCフィルタバンクを複数設け、各BLCフィルタバンクをグループ間で切り替えて用いる必要があった。
【0011】
このため、
図17に示すようなBLCフィルタバンクを用いる従来のスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置では、フィルタ部を切り替えるための構成とその切替制御が複雑化し、簡単かつ安価な構成で、ミリ波等のより高い周波数帯を対象とする周波数成分の測定、解析、或いは試験に対応することは極めて困難であった。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の測定、解析、試験に対応可能なマルチプレクサ、これを用いるスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置、及びマルチプレクサの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係るマルチプレクサは、ポートP1(Input)、ポートP2(Through)、ポートP3(Couple)及びポートP4(Isolated)をそれぞれ有し、信号の分配または合成を行う回路網で構成される第1のハイブリッド(18a1)、及び第2のハイブリッド(19a1)と、前記第1のハイブリッドと前記第2のハイブリッドとの間に並列に接続される2つの略同一特性のフィルタからなる第1のフィルタ(20a1)と、前記第1のハイブリッドの前記ポートP4に接続され、前記第1のフィルタの通過帯域に隣接する通過帯域を有する第2のフィルタ(20b1)と、を備え、前記第1のハイブリッドの前記ポートP1からの入力信号を2つの前記第1のフィルタに分配し、それぞれの通過帯域内であれば前記第1のフィルタを通過させ、前記第2のハイブリッドで合成されて前記第2のハイブリッドの前記ポートP3から出力する一方、前記入力信号が前記第1のフィルタの通過帯域外であれば、反射され、前記第1のハイブリッドで合成されて前記ポートP4から前記第2のフィルタに出力するマルチプレクサであって、前記第1のフィルタ、及び前記第2のフィルタの通過帯域を、所定の周波数範囲内の互いにオーバーラップする帯域が形成される帯域の範囲内において可変する通過帯域可変手段(40a、40b、40c)を有することを特徴とする。
【0014】
この構成により、本発明の請求項1に係るマルチプレクサは、通過帯域可変手段により第1のフィルタと第2のフィルタの通過帯域を可変することにより、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易にしかも連続的に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の測定、解析、試験に対応可能となる。
【0015】
また、本発明の請求項2に係るマルチプレクサは、前記第1のハイブリッド、前記第2のハイブリッド、前記第1のフィルタ、及び前記第2のフィルタを有する構成を基本ユニットとし、複数の前記基本ユニットを、前の前記基本ユニットの前記第1のハイブリッドの前記ポートP4或いは前記第2のハイブリッドの前記ポートP3に後の前記基本ユニットの前記第1のハイブリッドの前記ポートP1が接続されるように順に連結して構成され、前後の前記基本ユニットの前記第1のフィルタ及び前記第2のフィルタは、連続する帯域を通して互いにオーバーラップする帯域が形成されるように前記通過帯域を可変する構成としてもよい。
【0016】
この構成により、本発明の請求項2に係るマルチプレクサは、複数の基本ユニットを組み合わせて拡張された所望の通過帯域に対応可能なフィルタ構造を簡単な構造により構築することができ、高周波信号の高精度の測定、解析、試験への対応も容易となる。
【0017】
また、本発明の請求項3に係るマルチプレクサは、それぞれの前記基本ユニットの前記第1のフィルタ及び前記第2のフィルタは、帯域通過フィルタ、高域通過フィルタ、低域通過フィルタのうちのいずれか1種類、または、複数種類混在した構成を有するものであってもよい。
【0018】
この構成により、本発明の請求項3に係るマルチプレクサは、ハイブリッドと、帯域通過フィルタ、高域通過フィルタ、低域通過フィルタのうちのいずれか1種類、または、複数種類混在させて、所望の仕様のフィルタ構造を容易に実現できる。
【0019】
また、本発明の請求項4に係るマルチプレクサにおいて、前記第1のフィルタ、及び前記第2のフィルタは、導波管フィルタ(20)で構成され、前記導波管フィルタは、互いに直方体形状を有し、それぞれ長手方向の一側面(32a、32b)に長手方向の一端(33)から他端(34)にかけて導波路(35)となるべき溝(35a、35b)が形成される第1の導波管部(31a)、及び第2の導波管部(31b)を備え、前記第1の導波管部と前記第2の導波管部を前記一側面同士が向かい合うように対向配置した状態で前記溝による前記導波路が形成されるとともに、前記第1の導波管部の前記一側面と、前記第2の導波管部の前記一側面との間の隙間に応じて前記導波路の通過帯域が変化する導波管部(30)と、前記通過帯域可変手段を構成し、所望の通過帯域が設定されるように前記導波管部における前記隙間を可変する隙間調整機構(43、43A)と、を有する構成であってもよい。
【0020】
この構成により、本発明の請求項4に係るマルチプレクサは、導波管フィルタの第1の導波管部と第2の導波管部の隙間を調整する隙間調整機構を用いて通過帯域可変手段を容易に実現できる。
【0021】
また、本発明の請求項5に係るマルチプレクサにおいて、前記隙間調整機構(43A)は、前記第1の導波管部を載置する第1のステージ部材(52a)と、前記第2の導波管部を、前記第1の導波管部に対して対向配置された状態に載置する第2のステージ部材(52b)と、前記第1のステージ部材及び前記第2のステージ部材を、前記第1の導波管部と前記第2の導波管部との前記隙間が変化するように、対称面に対して対称に移動可能に駆動する駆動手段(50a、50b)を有する構成としてもよい。
【0022】
この構成により、本発明の請求項5にマルチプレクサは、駆動手段によって第1のステージ部材及び第2のステージ部材を対称面に対して対称に動くように駆動することで、第1の導波管部と第2の導波管部間の隙間を容易にしかも連続的に可変できるとともに、通過帯域可変に際してフィルタ特性を向上させることができる。
【0023】
また、本発明の請求項6に係るマルチプレクサにおいて、前記導波管部は、前記所定の周波数範囲の被測定信号を前記導波路に入力し、互いにオーバーラップする複数の周波数帯のうちの、前記隙間に対応する通過帯域に合致するいずれか1つの前記帯域の周波数成分を出力する構成であってもよい。
【0024】
この構成により、本発明の請求項6にマルチプレクサは、隙間調整機構により隙間を可変することで、その隙間に応じて所定の周波数範囲内の複数の通過帯域のうちの所望の通過帯域を設定することができる。
【0025】
上記課題を解決するために、本発明の請求項7に係るスペクトラムアナライザは、所定の周波数範囲の被測定信号を、ローカル信号発生器(112)から出力されるローカル信号とともにミキサ(111)に与え、そのミキシング出力から所定の中間周波数帯の信号を抽出するフィルタ(113)を有する周波数変換部(100)と、前記中間周波数帯の信号を検波する検波器(120)とを有し、解析対象周波数に応じて前記ローカル信号の周波数を変化させて、前記被測定信号のスペクトラム特性を求めるスペクトラムアナライザ(1)において、前記周波数変換部の前段に、前記請求項1に記載のマルチプレクサ(10A)を設けるとともに、前記解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する前記通過帯域が設定されるように前記通過帯域可変手段を駆動制御する通過帯域可変制御手段(151)を有し、前記解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する周波数成分を、前記マルチプレクサを通して測定することを特徴とする。
【0026】
この構成により、本発明の請求項7に係るスペクトラムアナライザは、通過帯域可変手段により第1のフィルタと第2のフィルタの通過帯域を可変することにより、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易にしかも連続的に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の測定が可能となる。
【0027】
また、本発明の請求項8に係るスペクトラムアナライザは、前記第1のハイブリッド、前記第2のハイブリッド、前記第1のフィルタ、及び前記第2のフィルタを有する構成を基本ユニットとし、複数の前記基本ユニット(10-11、10-12)を組み合わせて前記マルチプレクサ(10A)が構成され、それぞれの前記基本ユニットの前記第1のフィルタ及び前記第2のフィルタは、連続する帯域を通して互いにオーバーラップする帯域が形成されるように前記通過帯域を可変する構成であってもよい。
【0028】
この構成により、本発明の請求項8に係るスペクトラムアナライザは、複数の基本ユニットを組み合わせて拡張された所望の通過帯域に対応可能なマルチプレクサのフィルタ構造を簡単な構造により構築することができ、高周波信号の高精度の測定、解析、試験への対応も容易となる。
【0029】
上記課題を解決するために、本発明の請求項9に係るシグナルアナライザは、所定の周波数範囲の被測定信号を、ローカル信号発生器(112)から出力されるローカル信号とともにミキサ(111D)に与え、そのミキシング出力から所定の中間周波数帯の信号を抽出するフィルタ(113D)を有する周波数変換部(100D)と、前記中間周波数帯の信号をADC(125)でデジタル信号に変換した後に当該信号の波形を解析する信号解析部(153D)とを有し、解析対象周波数に応じて前記ローカル信号の周波数を変化させて、前記被測定信号の波形を解析するシグナルアナライザ(2)において、前記周波数変換部の前段に、前記請求項1に記載のマルチプレクサ(10A)を設けるとともに、前記解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する前記通過帯域が設定されるように前記通過帯域可変手段を駆動制御する通過帯域可変制御手段(151D)を有し、前記解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する周波数成分の信号を、前記マルチプレクサを通して解析することを特徴とする。
【0030】
この構成により、本発明の請求項9に係るシグナルアナライザは、通過帯域可変手段により第1のフィルタと第2のフィルタの通過帯域を可変することにより、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易にしかも連続的に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の解析が可能となる。
【0031】
上記課題を解決するために、本発明の請求項10に係る信号発生装置は、信号発生部(130)から出力される中間周波数帯の試験用信号を、ローカル信号発生器(112E)から出力されるローカル信号とともにミキサ(111E)に与え、所定の周波数範囲の信号に変換する周波数変換部(100E)を有し、被測定対象(DUT)を試験するための試験対象周波数に応じて前記ローカル信号の周波数を変化させて、前記周波数変換部による周波数変換後の信号を前記被測定対象の試験用信号として送出する信号発生装置(3)において、前記周波数変換部の後段に、前記周波数変換後の信号が入力される前記請求項1に記載のマルチプレクサ(10E)を設けるとともに、前記試験対象周波数のうちの一周波数帯に対応する前記通過帯域が設定されるように前記通過帯域可変手段を駆動制御する通過帯域可変制御手段(151E)を有し、前記試験対象周波数のうちの前記マルチプレクサを通過する一周波数帯に対応する周波数成分の前記試験用信号を送出することを特徴とする。
【0032】
この構成により、本発明の請求項10に係る信号発生装置は、通過帯域可変手段により第1のフィルタと第2のフィルタの通過帯域を可変することにより、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易にしかも連続的に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度のDUT試験に対応可能となる。
【0033】
上記課題を解決するために、本発明の請求項11に係るマルチプレクサの制御方法は、 請求項1に記載のマルチプレクサ(10)を用いるスペクトラムアナライザ、またはシグナルアナライザ、若しくは信号発生装置におけるマルチプレクサの制御方法であって、解析対象周波数、または試験対象周波数を設定する設定ステップ(S1、S11)と、設定された前記解析対象周波数、または試験対象周波数に基づき、前記第1のフィルタ、及び前記第2のフィルタに対して選択されるべき前記通過帯域が設定されるように前記通過帯域可変手段を駆動制御する通過帯域可変制御ステップ(S3、S13)と、前記通過帯域可変手段により設定された前記通過帯域を有する前記第1のフィルタ、及び前記第2のフィルタを通過する前記解析対象周波数、または試験対象周波数に対応する周波数成分を抽出するステップ(S4、S14)と、を含むことを特徴とする。
【0034】
この構成により、本発明の請求項11に係るマルチプレクサの制御方法は、スペクトラムアナライザ、またはシグナルアナライザ、若しくは信号発生装置において適用することで、通過帯域可変手段により第1のフィルタと第2のフィルタの通過帯域を可変することにより、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易にしかも連続的に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の測定、解析、試験に対応可能となる。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の測定、解析、試験に対応可能なマルチプレクサ、これを用いるスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置、及びマルチプレクサの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明に係るマルチプレクサの基本ユニットの構成図である。
【
図2】
図1に示す基本ユニットの構造を有するマルチプレクサにより抽出可能な周波数帯の分布を示す模式図である。
【
図3】
図1に示す基本ユニットの構造を有するマルチプレクサのフィルタを構成する導波管フィルタの分解斜視図である。
【
図4】
図3における導波管フィルタを構成する第1導波管部及び第2導波管部の内面側の構成を示す平面図であり、(a)は第1導波管部を示し、(b)は第2導波管部を示している。
【
図5】
図3における導波管フィルタの外観図であり、(a)は側面から見た図を示し、(b)、(c)、(d)は、それぞれ、第1導波管部と第2導波管部間が隙間G0のとき、隙間G1のとき、隙間G2のときの正面から見た図を示し、(e)は
図1における隙間調整部に対する変形例に係る隙間調整部の構成を示している。
【
図6】
図1に示した基本ユニットを用いた本発明に係るマルチプレクサの一構成例を示す図である。
【
図7】
図1に示す基本ユニットを用いた本発明に係るマルチプレクサの他の構成例を示す図である。
【
図8】
図1に示す基本ユニットを用いた本発明に係るマルチプレクサのさらに別の構成例を示す図である。
【
図9】
図1に示す基本ユニットを複数用いた
図6ないし
図8に示す構成以外の本発明の一実施形態に係るマルチプレクサの構成を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るマルチプレクサにおける通過帯域可変フィルタでの通過帯域可変制御に基づく通過帯域の分布を示す模式図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るマルチプレクサを用いるスペクトラムアナライザの一般的構成を示す図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係るマルチプレクサを用いるスペクトラムアナライザの信号測定制御動作を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の一実施形態に係るマルチプレクサを用いるシグナルアナライザの一般的構成を示す図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係るマルチプレクサを用いる信号発生装置の一般的構成を示す図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係るマルチプレクサを用いる信号発生装置におけるマルチプレクサの構成図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係るマルチプレクサを用いる信号発生装置における信号送出制御動作を示すフローチャートである。
【
図17】従来のスペクトラムアナライザに用いられるBLCフィルタバンクの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係るマルチプレクサ、これを用いるスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置、及びマルチプレクサの制御方法の実施形態について説明する。
【0038】
(概要)
本発明に係るマルチプレクサ10は、ポートP1(Input)、ポートP2(Through)、ポートP3(Couple)及びポートP4(Isolated)を有し、信号の分配または合成を行う回路網で構成されるハイブリッドと、フィルタを用いて構成され、所定の周波数範囲の信号を入力し、その入力信号に含まれる不要な電波、すなわち、スプリアス(Spurious)波を抑制しつつ所望の周波数帯(band:バンド)の周波数成分の信号のみを抽出して出力するものである。上記ハイブリッドとしては、例えば、ブランチライン・カプラ(Branch Line Coupler)が用いられ、フィルタとしては、帯域通過フィルタ(Band-Pass Filter:BPF)、高域通過フィルタ(High-Pass Filter:HPF)、低域通過フィルタ(Low-Pass Filter:LPF)等を用いることができる。
【0039】
本発明に係るマルチプレクサ10の基本ユニットの構成を
図1に示している。
図1に示すように、本発明に係るマルチプレクサ10は、ポートP1、ポートP2、ポートP3、ポートP4を有する入力側のハイブリッド18a1と、同構造を有する出力側のハイブリッド19a1と、ハイブリッド18a1とハイブリッド19a1との間に並列に接続される2つの略同一特性のフィルタからなるBPF20a1と、入力側のハイブリッド18a1のポートP4に接続されるBPF20b1と、を備えて構成されている。ここで、BPF20a1、及びBPF20b1は、通過帯域として、それぞれ、f1、f2の周波数帯が設定されているものとする。ハイブリッド18a1、ハイブリッド19a1は、それぞれ、本発明の第1のハイブリッド、第2のハイブリッドを構成する。また、BPF20a1、BPF20bは、それぞれ、本発明の第1のフィルタ、第2のフィルタを構成する。
【0040】
上述した基本ユニットの構造を有するマルチプレクサ10は、入力側のハイブリッド18a1のポートP1から所定の周波数範囲の被測定信号が入力されるようになっている。所定の周波数成分とは、例えば、100GHz以上1THz未満のサブテラヘルツ領域である。
【0041】
本発明に係るマルチプレクサ10において、入力側のハイブリッド18a1のポートP1から入力される信号はポートP2、P3から出力されて2つのBPF20a1に分配される。ここで分配された信号は、電力が等しく位相が90°ずれている。分配(入力)された信号がBPF20a1の通過帯域f1の信号である場合には、当該信号がそれぞれのBPF20a1を通過して出力側のハイプリッド19a1のポートP1およびポートP4に位相が90°ずれた状態で入力する。両者は出力側のハイブリッド19a1で合成されるが、その際ポートP2から出力される信号は位相が合計で180°ずれるので打ち消しあう。一方ポートP3から出力する信号は位相が揃うので強め合い、理想的には入力と同じ電力で出力される。ハイブリッド19a1のポートP2には、終端抵抗が接続されている。これは系が理想的でないため残存した信号が反射して悪影響を及ぼすのを防ぐためである。
【0042】
一方、入力側のハイブリッド18a1のポートP1から入力される信号がBPF20a1の通過帯域f1外の信号、例えば、周波数帯f2の信号である場合には、当該BPF20a1で反射され、入力側のハイブリッド18a1を入力時とは逆の方向に通過して(合成されて)ポートP4へと出力され、さらにBPF20b1に入力する。ここで、入力した信号がBPF20b1の通過帯域f2の信号であることにより、その入力した信号が当該BPF20b1を通過し、その出力端子から出力される。このように、基本ユニットの構造を有するマルチプレクサ10は、BPF20a1、20b1に設定されている通過帯域f1、f2の周波数成分の信号を抽出するようになっている。
【0043】
図1に示す基本ユニットの構造を有するマルチプレクサ10において、BPF20a1、BPF20b1は、通過帯域f1、f2を可変する通過帯域可変手段40a、40b、40cを有している。通過帯域可変手段は、後述する隙間調整部40及び隙間調整機構43(
図3参照)や、隙間調整部40A及び隙間調整機構43A(
図5(a)参照)によって実現し得るものである。これにより、基本ユニットの構造を有するマルチプレクサ10は、例えば、
図2に示すように、互いにオーバーラップする帯域を有しない周波数帯f1、f2の信号が混在して入力する状況下において、通過帯域可変手段40a、40b、40cによって、BPF20a1に対してはf1からf2を少し超えるまでの周波数帯を通過帯域として可変設定し、BPF20b1に対してはf2からf3を少し超えるまでの周波数帯を通過帯域(オーバーラップした帯域を有する通過帯域)として可変設定する通過帯域の流動的な運用が行えるものとなる。
【0044】
本発明に係る基本ユニットの構造を有するマルチプレクサ10における通過帯域可変手段40a、40b、40cを有するBPF20a1、20b1としては、例えば、
図3~
図5に示す構成を有する導波管フィルタ20を用いることができる。導波管フィルタ20については、後で詳しく説明する。
【0045】
入力側のハイブリッド18a1と、出力側のハイブリッド19a1との間に、通過帯域可変手段40a、40b、40cを備えたBPF20a1、20b1を配置した基本ユニットの構造を有する本発明に係るマルチプレクサ10は、例えば、高周波信号に含まれる周波数成分の分布(スペクトラム)を測定するスペクトラムアナライザ(
図11参照)、上記周波数成分の波形を解析するシグナルアナライザ(
図13参照)、DUTの受信感度試験のための試験用信号を発生する信号発生装置(
図14参照)のフロントエンド回路101に用いることができる。
【0046】
本発明に係るマルチプレクサ10をスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置のフロントエンド回路101(
図11、
図13、
図14参照)に設けた構成によれば、マルチプレクサ10に備わる上述した通過帯域可変手段40a、40b、40cによる通過帯域可変機能を利用することで、複数のフィルタをスイッチ等によって切り替えることなく通過帯域を容易に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の測定、解析、DUT試験に対応可能となる。
【0047】
以下においては、上述した基本ユニットによって構成されるマルチプレクサ10に備わる通過帯域可変フィルタ(すなわち、通過帯域可変手段40a、40b、40cを有する導波管フィルタ20)の実施形態(
図3~
図5参照)、基本ユニットを組み合わせて用いるマルチプレクサ10Aの各種構成例(
図6~
図8参照)、マルチプレクサ10Aの一実施形態(
図9、
図10参照)、マルチプレクサ10Aを用いるスペクトラムアナライザ1の実施形態(
図11、
図12参照)、マルチプレクサ10Aを用いるシグナルアナライザ2の実施形態(
図13参照)、マルチプレクサ10Aをマルチプレクサ10Eとして用いる信号発生装置3の実施形態(
図14~
図16参照)について順に説明する。
【0048】
(マルチプレクサ10に備わる通過帯域可変フィルタ)
本発明に係るマルチプレクサ10は、
図1に示した基本ユニットとしての構造を有し、入力側のハイブリッド18a1と出力側のハイブリッド19a1との間に、BPF20a1、20b1等、通過帯域可変フィルタを配置して構成されている。通過帯域可変フィルタは、例えば、導波管フィルタ20によって実現可能である。
【0049】
マルチプレクサ10に通過帯域可変フィルタとして備わる導波管フィルタ20の構成について
図3~
図5を参照して説明する。
図3は、通過帯域可変フィルタとしての導波管フィルタ20の分解斜視図である。
図4は、
図3における導波管フィルタ20を構成する第1導波管部31a及び第2導波管部31bの内面側の構成を示す平面図であり、(a)は第1導波管部31aを示し、(b)は第2導波管部31bを示している。第1導波管部31a、第2導波管部31bは、それぞれ、本発明の第1の導波管部、第2の導波管部を構成する。
【0050】
マルチプレクサ10に備わる導波管フィルタ20(
図1におけるBPF20a1、20b1に相当)は、
図3に示すように、導波管部30と、隙間調整部40と、を有している。導波管部30は、一方向(Y方向)に長い全体として直方体形状の外観を有し、それぞれが同等の形状を有する第1導波管部31aと第2導波管部31bを組み合わせて構成されている。導波管部30は、方形導波管の標準規格、例えば、WR3、或いはWR3.4に適合する構造を有するものである。WR3、或いはWR3.4の規格に関しては、カットオフ周波数(BPFでの中心周波数)が173.5[GHz]、周波周波数範囲が220~325[GHz]、周波数帯が[J帯]、内径寸法が0.864×0.432[mm]という条件が規定されている。
【0051】
第1導波管部31aと第2導波管部31bは、それぞれ、
図4(a)、
図4(b)に示すような構造を有している。
図4(a)に示すように、第1導波管部31aは、導波管部30の直方体形状の構造を長手方向(Y方向)にほぼ二分する直方体形状を有し、もう一方の第2導波管部31b側に臨む一側面32aに、長手方向の一端部33から他端部34にかけて導波路35となるべき溝部35aが形成されている。第1導波管部31aの一側面32a、及び第2導波管部31bの一側面32b(
図4(b)参照)は、第1導波管部31aと第2導波管部31bを一側面32a、32b同士を向かい合わせて対向配置する構造において、隙間Gがないときには対称面(磁気壁)となり、隙間Gがあるときには両者の中心が対称面となる。
【0052】
第1導波管部31aにおいて、溝部35aは、一側面32aの表面上にX方向へ適宜な深さ、及びZ方向に適宜な高さh1で彫り込んで形成した断面矩形の溝である。溝部35aは、第1導波管部31aの内方中央部において均等な深さ、及び高さを有している。一方で、この例の溝部35aは、第1導波管部31aの内方中央部の一端(図に向かって左端)から一端部33の手前にかけて高さが次第に高くなるテーパー形状を有するとともに、内方中央部の他端(図に向かって右端)から他端部34の手前にかけても高さが次第に高くなるテーパー形状を有している。
図4においては、第1導波管部31aの上記テーパー形状を有するテーパー部35a1の長さをl1で示している。
【0053】
第1導波管部31aは、溝部35aの内方中央部の一部に、Y方向に沿って、所定の長さ(スタブ高さh2)を有しかつZ方向(短手方向)に所定の長さ(スタブ長l2)を有する分岐溝としての複数のスタブ溝36が、Y方向にキャビティ長l3に相当する所定の間隔ごとに形成されている。
【0054】
導波管構造について、電磁波の進行方向を「長さ」、導波管断面の長い方を「幅」、導波管断面の短い方を「高さ」と呼ぶものとすると、
図4に示す第1導波管部31a、第2導波管部31bにおけるキャビティとスタブの呼び方が違ってくる。
図4に示す第1導波管部31a、第2導波管部31bについては、キャビティに関しては進行方向がY方向であり、長さ、幅、高さは、それぞれ、Y方向、X方向、Z方向となり、スタブに関しては進行方向がZ方向であり、長さ、幅、高さは、それぞれ、Z方向、X方向、Y方向となる。
【0055】
第1導波管部31aの溝部35aに形成されるスタブ溝36は、任意の数とすることができ、各スタブ溝36のスタブ長l2、スタブ高さh2、間隔(キャビティ長l3)も個々のスタブ溝36ごとに任意の値とすることも可能である。
【0056】
導波管部30を構成するもう一方の第2導波管部31bも、
図4(b)に示すように、導波管部30の直方体形状の構造を長手方向にほぼ二分する直方体形状を有し、他方の第1導波管部31a側に臨む一側面32bに、長手方向(Y方向)の一端部33から他端部34にかけて導波路35となるべき溝部35bが形成されている。
【0057】
第2導波管部31bは、一側面32bにおける溝部35b、スタブ溝36の配置構造が、
図4(a)に示す第1導波管部31aの一側面32aにおける溝部35a、スタブ溝36の配置構造に対して正面から見たときの各要素の配置が左右逆転している以外は、第1導波管部31aの一側面32aにおける溝部35a、スタブ溝36の配置構造と同等のものである。
【0058】
第2導波管部31bの両端にかけても、第1導波管部31aの両端(一端部33、他端部34)にかけてのテーパー部35a1に相当するテーパー部35b1(
図4(b)参照)が設けられている。テーパー部35a1、テーパー部35b1は、両端のキャビティ断面の形状と開口面の断面の形状で決まり、両端に向かって高さ(Z方向)が次第に高くなる構造に限らず、両端に向かって高さが次第に低くなる構造もあり得る。同様の理由で、テーパー部35a1、テーパー部35b1は、高さのみならず、幅(X方向)についても両端にかけて徐々に変化する(広くなる、または狭くなる)ような構造となり得る。
【0059】
第1導波管部31a、第2導波管部31bは、例えば、アルミ製、銅製、或いは黄銅製のものである。またこれらの溝部35a、35bやスラブ溝36が形成される一側面32a、32b側全面に金メッキが施されることもある。
【0060】
図4に示す第1導波管部31a、及び第2導波管部31bは、一端部33同士、他端部34同士が互いに向き合い、それぞれの一側面32a、32b(隙間があるときは両者の中間面)を対称面(磁気壁)として両者を互いに対向して配置することによって、側面から見たときに
図5(a)に示すような外観構造を有するものとなる。
【0061】
導波管部30においては、第1導波管部31aの溝部35aと第2導波管部31bの溝部35bとが対向して
図5(a)に点線で示す導波路35を形成している。導波管部30は、例えば、導波路35の一端部33(
図4参照)側が入力ポート37として機能し、導波路35の他端部(
図4参照)34側が出力ポート38として機能する。導波管部30は、入力ポート37と出力ポート38によってそれぞれ他の導波管コンポーネントに連結して運用されるようになっている。導波管部30は、導波路35の両端近傍にテーパー部35a1、35b1を有しており、その長さは、導波管コンポーネントとの連結を考慮した適宜な長さに設定されている。
【0062】
第1導波管部31aと第2導波管部31bを対向配置したときの導波管部30(
図5(a)参照)を正面から見たときの外観構造は、
図5(b)、(c)、(d)に示すようなものとなる。
図5(b)は、第1導波管部31aと第2導波管部31bとが上述した対称面(32a、32b)同士が当接しており、第1導波管部31aと第2導波管部31bとの間に隙間Gがない(隙間=G0)ときの構造を示している。
図5(c)は、隙間Gが隙間G0より大きい隙間G1であるときの構造を示し、
図5(d)は、隙間Gが隙間G1よりさらに大きい隙間G2であるときの構造を示している。
図5(b)、(c)、(d)においては、図面(紙面)の手前側に延びる導波管部30の端部が入力ポート37を形成し、紙面の奥側へ向かって延びる導波管部30の端部が出力ポート38を形成している。
図5(b)、(c)、(d)においては、入力ポート37、出力ポート38を、便宜的に、符号37(38)として表している。
【0063】
本実施形態に係る基本ユニットとしてのマルチプレクサ10において、導波管部30は、第1導波管部31aと第2導波管部31bとの隙間Gの大きさに応じて周波数特性(通過帯域)が変化する性質を有している。例えば、
図5において、第1導波管部31aと第2導波管部31bの間に隙間Gがない(G=G0である)場合(
図5(b)参照)と、隙間GがG1である場合(
図5(c)参照)と、隙間GがG2である場合(
図5(d)参照)とでは、導波管部30は、隙間Gが大きくなるほど、すなわち、隙間GがG0からG2へと変化するにつれて、通過帯域が低い方へ変化する周波数特性を有している。一例として、
図5(b)、
図5(c)、
図5(d)においては、隙間G0、G1、G2に対応する通過帯域として、それぞれ、f1、f2、f3(f1>f2>f3)の周波数帯が設定されていることを前提としている。
【0064】
本実施形態に係る基本ユニットしてのマルチプレクサ10は、上述した隙間Gの可変制御に加え、導波路35に付随して形成するスタブ溝36(
図4参照)の形態(位置、深さ、形状等)によっても導波管部30のフィルタ特性を可変制御することができる構造となっている。例えば、本実施形態に係る基本ユニットとしてのマルチプレクサ10の導波管部30では、第1導波管部31a、第2導波管部31bに形成されるスタブ溝36のスタブ長l2が長いほどカットオフ周波数(BPFでの中心周波数)を低い帯域に設定可能である。
【0065】
本実施形態に係る基本ユニットで構成されるマルチプレクサ10に用いる導波管部30の実現方法については、例えば、第1導波管部31a、第2導波管部31bの隙間Gが「0(零)」のときに、スタブ溝36のスタブ長l2、スタブ高さh2等によって最も高い周波数帯を設計し、あとは隙間Gを大きくして周波数を下げられるような構造としてもよい。
【0066】
ここで再び
図3に戻り、本実施形態に係る基本ユニットとしてのマルチプレクサ10の隙間調整部40の構成について説明する。
【0067】
図3に示すマルチプレクサ10において、導波管部30は、上述したように、Y方向を長手方向、X方向を幅方向(短手方向)、Z方向を高さ方向とする全体として直方体形状の外観を有し、第1導波管部31aと第2導波管部31bは、隙間調整部40によって、両者間の隙間Gを可変制御可能な構成を有している。
【0068】
導波管部30の隙間調整部40は、例えば、
図3に示すように、第1ステージ41と、第2ステージ42と、隙間調整機構43とにより構成されている。第1ステージ41は、ベース部41aと、ステージ主要部41bと、左右両側に設けられる側壁41c、41dと、を備え、ベース部41a、ステージ主要部41b、側壁41c、41dによって囲まれる第2ステージ収容部41eを形成している。ここでステージ主要部41bは、その上面41fが導波管部30の第1導波管部31aの底面部と同等の平面形状を有している。第1導波管部31aは、その下面部により、ステージ主要部41bの上面41fに固定されている。
【0069】
第2ステージ42は、その上面42aが導波管部30の第2導波管部31bの下面部と同等の平面形状を有している。第2ステージ42は、Y方向の長さが第1ステージ41の第2ステージ収容部41eを構成する側壁41c、41dの壁間の距離よりも若干短く、第2ステージ収容部41e内にY方向への移動が規制され、X方向への移動のみ許容されるように収容されている。
【0070】
ここで第2ステージ42は、第1ステージ41の第2ステージ収容部41e内に、長手方向(Y方向)に第1ステージ41のステージ主要部41bと平行を保った状態で、かつ、短手方向(X方向)へはその前後両方向(矢印A方向)に移動可能に収容されている。第2ステージ42は、第1ステージ41とは反対側の側面42bの中央部近傍位置に、X方向に貫通し、隙間調整機構43のネジ体51と螺合するネジ穴42cが形成されている。第2ステージ42の上面42aには、第2導波管部31bがその下面部により固定されている。
【0071】
隙間調整機構43は、固定状態に取り付けられるモータ50と、X方向へ延び、第2ステージ42の側面42bに形成されたネジ穴42cに螺合してモータ50により回転するネジ体51と、を有して構成されている。
【0072】
隙間調整機構43は、モータ50によってネジ体51を一方向またはその逆方向に回転駆動することにより、ネジ体51にネジ穴42cにより螺合する第2ステージ42を、X方向の前方または後方(矢印A方向)に移動させることができる。第2ステージ42の移動によって、第2ステージ42の上面42aに固定されている第2導波管部31bは、第1導波管部31aに対して、両者の対称面(一側面32a、32b)の平行を保ったまま矢印A方向に移動することになる。これにより、第1導波管部31aと第2導波管部31bは、両者の平行を維持したまま相手側との間の隙間Gの大きさを適宜に可変制御可能となる。
【0073】
本実施形態に係る基本ユニットとしてのマルチプレクサ10は、隙間調整機構43のネジ体51をモータ50により回転駆動し、導波管部30の第1導波管部31aと第2導波管部31bとの間の隙間Gを、例えば、G0、G1、G2となるように可変制御することで、1つの導波管構造体でありながら、例えば、f1~f2´までの周波数範囲内の各通過帯域を所望に応じて設定し得る導波管型BPF(
図2参照)の機能を実現できる。
【0074】
図3においては、隙間調整部40に関し、第1ステージ41を固定し、第2ステージ42を動かす構造を有する例を挙げているが、これに限らず、第1ステージ、及び第2ステージの両者を動かす構造を有する変形例に係る隙間調整部40Aを用いて構成されていてもよい。
【0075】
変形例に係る隙間調整部40Aの概略構成を
図5(e)に示している。
図5(e)に示すように、変形例に係る隙間調整部40Aは、導波管フィルタ20の第1導波管部31a、及び第2導波管部31bをそれぞれ対向配置された状態に載置する第1ステージ52a、及び第2ステージ52bと、第1ステージ52a及び第2ステージ52bを第1導波管部31aと第2導波管部31bとの隙間Gが変化するように、導波管部30の長手方向と直交する方向の前後に移動可能にネジ体51a、51bを回転駆動するモータ50a、及び50bと、を有し、第1ステージ52a、及び第2ステージ52bの一側面には、ネジ体51a、51bと螺合するネジ穴52a1、52b1がそれぞれ形成されている。
【0076】
上記構成を有する隙間調整部40Aを導波管フィルタ10に設けることで、導波管フィルタ10は、モータ50a、50bによって第1ステージ42a、第2ステージ42bを両者が近づく方向、或いは遠ざかる方向に同時に移動させる(対称面に対して対称に動かす)ことによって、第1導波管部41aと第2導波管部41b間の隙間Gを容易にかつ連続的に可変できる。また、第1ステージ42a、第2ステージ42bを対称面に対して対称に動かすことができる隙間調整部40Aを採用することで、導波管フィルタ20は、第1ステージ41を固定し、第2ステージ42を動かす隙間調整部40(
図3参照)を使用した場合に比べて、より良好なフィルタ特性を得られるようになる。
【0077】
上述したモータ50a、50bは、本発明の駆動手段を構成する。また、第1ステージ52a、第2ステージ52bは、それぞれ、本発明の第1のステージ部材、第2のステージ部材を構成する。
【0078】
上述したように、
図1に示す基本ユニットとしてのマルチプレクサ10は、
図3~
図5で説明した、隙間調整部40、若しくは隙間調整部40Aを備えた導波管フィルタ20をBPF20a1、20b1として用いることで、通過帯域を可変する構造を実現できる。
【0079】
さらに、本発明に係る通過帯域を可変する構造を有するマルチプレクサは、
図1に示す基本ユニットの構成に限らず、当該基本ユニット、或いは基本ユニットを変形したユニットを様々に組み合わせて所望のフィルタ特性を実現することも可能である。
【0080】
基本ユニットの組み合わせによるマルチプレクサ10-1、10-2、10-3の構成例を
図6~
図8に示している。マルチプレクサ10-1、10-2、10-3のいずれも上述した基本ユニットの構成、すなわち、BLC等の2つのハイブリッドの間にBPF、HPF(LPFも使用可)等のフィルタを配置した部分を含んで構成されている。
図6に示すマルチプレクサ10-1は、カットオフ周波数fc1(通過帯域はfc1より高い周波数)のHPFと、通過帯域f2のBPFで構成されている(ただし、f2<fc1とする)。マルチプレクサ10-1においては、Inputポートから入力した信号の周波数がHPFの通過帯域(fc1より高い)のとき、信号はHPFを通過し後段BLCのCoupleポートに現れるので、Output1ポートからはfout>fc1の周波数の信号が抽出される。Inputポートから入力した信号の周波数がfc1より低いとき、信号は反射されてHPF前段のIsolatedポートからBPF前段のInputポートを経てBPFに入力される。信号周波数がBPFの通過帯域内(f2)なら上と同様BPF後段のCoupleポートに現れ、Output2ポートからはfout=f2の信号が抽出される。さらに信号がf2より低いとき、BPF帯域外の信号は反射されて前段のIsolatedポートに出現する。従って、Output3ポートからはfout<f2の信号が抽出される。以上のように、マルチプレクサ10-1の構成によれば、入力信号は3つの周波数帯域に分割して抽出される。
【0081】
図7に示すマルチプレクサ10-2は、Inputポートから入力された信号を、4つのBPFで特徴づけられる通過帯域(f1,f2,f3,f4)で周波数を抽出し、それぞれのポートから出力するものである。
図7に示すように通過帯域f1,f2,f3,f4の4つのBPFと、カットオフ周波数fc1(通過帯域はfc1より大きい周波数)のHPFで構成され、f1<f2<fc1<f3<f4とする。Inputポートから入力した信号がfc1より高いときはHPFを通過し、更に信号がf4の帯域内ならf4のBPFを通過してOutput4から出力される。f4の帯域外なら反射され、そのうちf3の帯域内の信号がf3のBPFを通過してOutput3から出力される。入力信号がfc1より低いときも同様に、Output1からは帯域f1内の、Output2からは帯域f2内の信号が抽出され出力する。
【0082】
複数の基本ユニットの組み合わせの例としては、この他、
図8に示すマルチプレクサ10-3のように複数の基本ユニット(この例では2つ)をスイッチ等で切換える構成でもよい。ルチプレクサ10-3では、4つOutputポートからはそれぞれのBPFの通過帯域に応じた周波数の信号が抽出され出力される。この構成では、f1とf2およびf3とf4のオーバーラップは許されないが、別のユニットとのオーバーラップ(例えばf1とf3、f2とf4、f1とf4など)は許される。
【0083】
追加段落
図8に示す例では基本ユニットの切り替えのためにスイッチを用いたが、これに限らず、パワーデバイダー、方向性結合器等で分岐させる構成であってもよい。
【0084】
本発明においては、
図6~
図8に示す構成以外のマルチプレクサの構成とすることも可能である。いずれのものにおいても、例えば、第1のハイブリッド(
図1のハイブリッド18a1)、第2のハイブリッド(同、ハイブリッド19a1)、第1のフィルタ(同、BPF20a1)、及び第2のフィルタ(同、BPF20b1)を有する構成を基本ユニットとし、複数の基本ユニットを、前の基本ユニットの第1のハイブリッドのポートP4或いは第2のハイブリッドのポートP3に後の基本ユニットの第1のハイブリッドのポートP1が接続されるように順に連結して構成され、前後の基本ユニットの第1のフィルタ及び第2のフィルタは、連続する帯域を通して互いにオーバーラップする帯域が形成されるように通過帯域を可変する構成により実現できる。ここで、それぞれの基本ユニットの第1のフィルタ及び第2のフィルタは、BPF、HPF、LPFのうちのいずれか1種類、または、複数種類混在した構成とすることができる。
【0085】
次に、
図1に示すマルチプレクサ10(基本ユニット)を基本とする
図6~
図8に示す構成以外のマルチプレクサの一実施形態について
図9、
図10を参照して説明する。この実施形態は、隣り合う周波数範囲を選択し得る複数の基本ユニット(この例においては、2つの基本ユニット)を組み合わせて、基本ユニットが一つの場合の周波数範囲(
図2参照)に比べて広い周波数範囲(
図10(f)参照)を選択対象として運用可能なマルチプレクサ10Aに関するものである。このマルチプレクサ10Aは、例えば、スペクトラムアナライザ1(
図11参照)で用いることを前提としたものであり、
図9に示すように、基本ユニット(
図1参照)から成るマルチプレクサ10-11、10-12を備えた構成を有している。
【0086】
本発明の一実施形態に係るマルチプレクサ10Aにおいて、一方のマルチプレクサ10-11は、
図1について説明したように、ポートP1、ポートP2、ポートP3、ポートP4を有する入力側のハイブリッド18a1と、同構造を有する出力側のハイブリッド19a1と、ハイブリッド18a1とハイブリッド19a1との間に並列に接続される2つの略同一特性のフィルタからなるBPF20a1と、入力側のハイブリッド18a1のポートP4に接続されるBPF20b1と、を備えて構成されている。ここで、BPF20a1、及びBPF20b1には、初期設定(デフォルト)の通過帯域として、それぞれ、f1、f3の周波数帯(
図10(b)~(c)参照)が設定されているものとする。
【0087】
もう一方のマルチプレクサ10-12は、ポートP1、ポートP2、ポートP3、ポートP4を有する入力側のハイブリッド18a2と、同構造を有する出力側のハイブリッド19a2と、ハイブリッド18a2とハイブリッド19a2との間に並列に接続される2つの略同一特性のフィルタからなるBPF20a2と、入力側のハイブリッド18a2のポートP4に接続されるBPF20b2と、を備えて構成されている。ここで、BPF20a2、及びBPF20b2には、デフォルトの通過帯域として、それぞれ、f5、f7の周波数帯(
図10(d)~(e)参照)が設定されているものとする。
【0088】
マルチプレクサ10Aにおいて、マルチプレクサ10-11のハイブリッド18a1、19a1と、マルチプレクサ10-12のハイブリッド18a2、ハイブリッド19a2とは、それぞれ、同機能のものである。また、マルチプレクサ10-11のBPF20a1、BPF20b1と、マルチプレクサ10-12のBPF20a2、BPF20b2との違いは、対応可能なフィルタ特性(通過帯域)だけである。
【0089】
通過帯域については、マルチプレクサ10-11のBPF20a1、BPF20b1がデフォルトの設定において選択対象とするf1、f3の周波数帯域は、例えば、
図10(a)に示すように、互いにオーバーラップした帯域を有するものではない。同様に、マルチプレクサ10-12のBPF20a2、BPF20b2がデフォルトの設定において選択対象とするf5、f7の周波数帯域は、互いにオーバーラップした帯域を有していない。
【0090】
ここで、マルチプレクサ10-11のBPF20a1、BPF20b1は、それぞれ、通過帯域可変手段40a-1、40b-1と通過帯域可変手段40c-1を有している。これら通過帯域可変手段40a-1、40b-1、40c-1の通過帯域可変機能により、マルチプレクサ10-11においては、導波管部30における隙間Gの大きさに応じて通過帯域を、例えば、
図10(b)、
図10(c)に示すように、f1→f1´(=f2)、f3→f3´(=f4)に変化させることが可能になっている。
【0091】
また、マルチプレクサ10-12のBPF20a2、BPF20b2は、それぞれ、通過帯域可変手段40a-2、40b-2と通過帯域可変手段40c-2を有している。これら通過帯域可変手段40a-2、40b-2、40c-2の通過帯域可変機能により、マルチプレクサ10-12においては、導波管部30における隙間Gの大きさに応じて通過帯域を、例えば、
図10(d)、
図10(e)に示すように、f5→f5´(=f6)、f7→f7´(=f8)に変化させることが可能になっている。
【0092】
よって、マルチプレクサ10-11、10-12を備えるマルチプレクサ10A全体では、
図10(f)に示すように、互いにオーナーラップする帯域ol1、ol2、ol3、ol4、ol5、ol6、ol7を有するf1~f8の8つの通過帯域を可変制御できるものとなる。
【0093】
(マルチプレクサ10Aを用いるスペクトラムアナライザ)
次に、本実施形態に係るマルチプレクサ10Aのスペクトラムアナライザ1への適用例について説明する。
図11は、マルチプレクサ10Aを用いるスペクトラムアナライザ1の一般的構成を示す図である。スペクトラムアナライザ1としては、ミリ波帯の信号解析機能を有するものを想定している。
【0094】
本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1は、周波数変換部100、検波器120、制御部150、操作部160、表示部161を有するとともに、周波数変換部100の前段に上述した構成を有するマルチプレクサ10Aを備えている。マルチプレクサ10Aは、入力ポート37がRF Inputたる被測定信号を入力可能であり、かつ、出力ポート38が周波数変換部100の入力側に対して出力信号を送出できるように配置されている(
図9参照)。
【0095】
周波数変換部100は、ミキサ111、ローカル信号発生器112、フィルタ113を具備して構成される。
【0096】
ミキサ111は、マルチプレクサ10Aから出力されるスプリアス波が抑制された各周波数成分の信号(RF周波数)と、ローカル信号発生器112から入力されるローカル信号とを混合することにより、被測定信号をRF周波数から中間周波数の信号(IF周波数)に変換して出力する周波数変換手段としての機能部である。
【0097】
ローカル信号発生器112は、局部発振信号源9から入力するローカル信号(基準信号)に基づき、ミキサ111に送出するためのローカル信号を発生する。
【0098】
フィルタ113は、ミキサ111によって周波数変換されたIF信号を入力し、入力されたIF信号の予め設定されたある帯域の周波数成分の信号のみを通過させ、検波器120へと入力させるフィルタ機能部である。
【0099】
検波器120は、フィルタ113を通過して入力するぞれぞれの帯域の信号(IF)の強度を検波する処理回路である。
【0100】
制御部150は、マルチプレクサ10を含むスペクトラムアナライザ1全体を統括的に制御する制御機能に加え、隙間可変制御部151、周波数掃引制御部152、スペクトラムデータ取得部153を有している。制御部150は、スペクトラムアナライザ1本体の制御部であってもよく、或いは、PC(パーソナル・コンピュータ)等の機器を別付けにした構成としてもよい。
【0101】
隙間可変制御部151は、通過帯域可変手段40a-1、40b-1、40c-1、及び通過帯域可変手段40a-2、40b-2、40c-2を対象に、それぞれ、マルチプレクサ10Aの隙間調整機構43A(
図5(e)参照)のモータ50a、50bを一方向、またはその逆方向に回転駆動することにより、マルチプレクサ10Aの第1導波管部31aと第2導波管部31b間の隙間Gを、例えば、G0からG2(
図5(b)、(c)、(d)参照)の範囲内で可変変調整する機能部である。隙間可変制御部151は、後述の隙間可変制御部151D、151Eとともに、本発明の通過帯域可変制御手段を構成している。
【0102】
周波数掃引制御部152は、局部発振信号源9から入力するローカル信号(基準信号)に基づき、ローカル信号発生器112がミキサ111に出力するローカル信号の周波数を指定された周波数範囲内で変化させる周波数掃引制御を実行する機能部である。
【0103】
スペクトラムデータ取得部153は、検波器120で検波された解析対象周波数範囲内の所望の周波数帯の信号成分の強度を含むスペクトラムデータを取得し、表示部161に対する表示制御等を行う部分である。
【0104】
操作部160は、各種キー、スイッチ、ボタン等の入力手段を有し、被測定信号の測定等に関する各種設定を行う際にユーザにより操作される。表示部161は、例えば液晶表示器などで構成され、被測定信号の測定に関わる設定画面や測定結果などを表示する機能部である。
【0105】
図11に示すスペクトラムアナライザ1において、ミリ波帯の被測定信号(入力信号)は、マルチプレクサ10Aを介して周波数変換部100のミキサ111に与えられ、ローカル信号発生器112から出力されるローカル信号とミキシングされ、そのミキシング出力からフィルタ113により所定の中間(IF)周波数帯の信号が抽出される。ローカル信号の周波数は、制御部150の周波数掃引制御部152により所望の解析対象周波数範囲に対応して掃引可変され、その所望の解析対象周波数範囲の信号成分が時間経過にともなって中間周波数帯の信号として抽出されてその信号の強度が検波器120で検出される。
【0106】
なお、ここでは説明を容易にするために、周波数変換部100の周波数変換処理(ヘテロダイン変換)を1回だけ行なう例を示しているが、ミリ波帯のような高い周波数の信号を正確に解析する場合には、周波数変換処理を複数回行なってデジタル処理が可能な中間周波数帯に変換することになる。
【0107】
制御部150において、スペクトラムデータ取得部153は、例えば、操作部160によって設定される解析対象周波数に応じて、検波器120により解析対象周波数毎に検出される信号強度をスペクトラムデータとして記憶し、当該スペクトラムデータを表示部161に表示させる。
【0108】
隙間可変制御部151は、予め設定された解析対象周波数に応じて、マルチプレクサ10Aの通過帯域可変手段40a-1、40b-1、40c-1、及び通過帯域可変手段40a-2、40b-2、40c-2を対象に、それぞれ、隙間調整機構43A(
図5(e)参照)のモータ50a、50bを回転駆動し、マルチプレクサ10Aの第1導波管部31aと第2導波管部31b間の隙間Gを、上記解析対象周波数範囲内の所望の通過帯域に対応する値となるように可変制御する。
【0109】
周波数掃引制御部152は、隙間可変制御部151による隙間Gの可変制御によってマルチプレクサ10Aに対して設定される通過帯域に対応する周波数の掃引制御を実施する。
【0110】
図11に示すスペクトラムアナライザ1の構成において、マルチプレクサ10Aの入力ポート37に対する入力信号(RF Input)としての被測定信号は、例えば、255~315GHzの周波数範囲の信号(fRF)であり、出力ポート38からの出力信号(IF Output)は、例えば、23~31GHzの周波数範囲の信号(fIF)である。すなわち、本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1は、例えば、携帯電話(5G、LTE、XG-PHS、W-CDMA、CDMA2000、GSMなど)や各種無線通信(WLAN、Bluetooth、GPS、ISDBTなど)から受信した受信信号を入力信号(RF Input)として取り込み、フロントエンド回路内のマルチプレクサ10Aによりスプリアス波を抑制したうえで所望の周波数成分のスペクトラム特性を測定することができるようになっている。
【0111】
次に、本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1の信号測定制御動作について
図12に示すフローチャートを参照して説明する。
【0112】
この例において、スペクトラムアナライザ1は、マルチプレクサ10Aを用い、被測定信号を入力ポート37からマルチプレクサ10Aに入力し、その被測定信号から、当該マルチプレクサ10Aによって、予め設定した所望の周波数帯、例えば、周波数帯f1、f2、f3、f4、f5、f6、f7、f8のいずれか1つの周波数帯の信号を順に抽出して出力ポート38へと出力し、そのスペクトラム特性の測定を行うものとする。
【0113】
上記測定を行うために、ユーザは、例えば、操作部160において、スペクトラムアナライザ1の掃引周波数範囲(解析対象周波数範囲)を設定する操作を行う(ステップS1)。ここで設定するパラメータとしては、例えば、周波数帯f1、f2、f3、f4、f5、f6、f7、f8のそれぞれの中心周波数と掃引周波数スパン、スタート周波数とストップ周波数、スタート周波数と掃引周波数スパンなどが挙げられる。
【0114】
次いで、制御部150は、ステップS1で設定された掃引周波数範囲に基づき、マルチプレクサ10に選択されるべき通過帯域(周波数帯f1、f2、f3、f4、f5、f6、f7、f8(
図10参照)のいずれか)とローカル周波数(LO)の設定条件(LO設定)を算出する(ステップS2)。
【0115】
引き続き、隙間可変制御部151は、マルチプレクサ10Aを構成するマルチプレクサ10-11、10-12のそれぞれの第1導波管部31aと第2導波管部31b間の隙間Gを、ステップS2で算出した通過帯域に対応する隙間G、例えば、G0、G1、G2(
図5(b)、(c)、(d)参照)のいずれかとなるように調整制御する(ステップS3)。その際、隙間可変制御部151は、通過帯域可変手段40a-1、40b-1、40c-1、及び通過帯域可変手段40a-2、40b-2、40c-2を対象に、それぞれ、隙間調整機構43Aのモータ50a、50bに対して算出された通過帯域に対応する制御信号(隙間調整制御信号)を送出し、当該モータ50a、50bを、隙間Gが算出された通過帯域に対応する値となるまで回転駆動する。また、ステップS3においては、周波数変換部100での周波数変換のために、ステップS2で算出されたLO設定に基づきローカル周波数を設定する制御も行われる。
【0116】
ステップS3での隙間Gの調整制御、及びローカル周波数設定の終了後、制御部150は、マルチプレクサ10Aの導波路35を通過する調整後の隙間Gに対応する周波数成分を出力ポート38から周波数変換部100に入力して周波数変換し、検波器120に入力する(ステップS4)。
【0117】
さらに制御部150は、検波器120を制御し、周波数変換部100による周波数変換後の周波数成分(マルチプレクサ10Aを通過した所望の周波数帯)の信号のスペクトラム特性の測定を実行させる(ステップS5)。ここで、スペクトラムデータ取得部153は、検波器120で検波された所望の周波数帯f1、f2、f3、f4、f5、f6、f7、f8のいずれかの信号成分の強度を含むスペクトラムデータを取得し、そのスペクトラムデータを表示部161に表示するスペクトラム表示制御を実施する。
【0118】
図12に示す一連の信号測定動作の実行中、ステップS2で選択されるべき通過帯域(周波数帯)が1つであった場合には、ステップS3での隙間Gの調整、ステップS4での周波数変換、ステップS5でのスペクトラム特性の測定の各処理を実行した後に信号測定動作を終了する。また、ステップS2で設定すべき通過帯域が複数あった場合には、それぞれの通過帯域に対応して上記ステップS3、S4、S5の各処理を繰り返し実施した後、信号測定動作を終了する。
【0119】
本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1の変形例としては、
図9に示すマルチプレクサ10Aに代えて、基本ユニットの構成を有するマルチプレクサ10(
図1参照)を用いる構成とすることもできる。また、隙間調整機構43Aに代えて隙間調整機構43(
図3参照)を用いてもよい。
【0120】
マルチプレクサ10を用いた変形例に係るスペクトラムアナライザ1においては、被測定信号をマルチプレクサ10に入力し、その被測定信号から、当該マルチプレクサ10によって、予め設定した所望の周波数帯、例えば、周波数帯f1、f2、f3、f4のいずれかの周波数帯の信号を抽出してそのスペクトラム特性の測定を行うことができる。変形例に係るスペクトラムアナライザ1において、基本的な測定動作は
図12に示すフローチャートに沿って実現することができる。
【0121】
(マルチプレクサ10Aを用いるシグナルアナライザ2)
上記実施形態に係るマルチプレクサ10A(
図9参照)は、
図11に示したスペクトラムアナライザ1に限らず、例えば、シグナルアナライザ2にも適用可能である。
【0122】
図13は、マルチプレクサ10Aを用いるシグナルアナライザ2の一般的構成を示す図である。シグナルアナライザ2は、周波数変換部100D、アナログデジタル変換器(Analog to Digital Converter:ADC)125、制御部150D、操作部160、表示部161を有するとともに、周波数変換部100Dの前段に上述した構成を有するマルチプレクサ10Aを備えている。マルチプレクサ10Aは、入力ポート37がRF Inputたる被測定信号を入力可能であり、かつ、出力ポート38が周波数変換部100Dの入力側に対して出力信号を送出できるように配置されている(
図9参照)。
【0123】
周波数変換部100Dは、ミキサ111D、ローカル信号発生器112D、フィルタ113Dを具備して構成される。
【0124】
ミキサ111Dは、マルチプレクサ10Aから出力されるスプリアス波が抑制された各周波数成分の信号(RF周波数)と、ローカル信号発生器112Dから入力されるローカル信号とを混合することにより、被測定信号をRF周波数から中間周波数の信号(IF周波数)に変換して出力する。
【0125】
ローカル信号発生器112Dは、局部発振信号源9から入力するローカル信号(基準信号)に基づき、ミキサ111Dに送出するためのローカル信号を発生する。
【0126】
フィルタ113Dは、ミキサ111Dによって周波数変換されたIF信号を入力し、入力されたIF信号の予め設定されたある帯域の周波数成分の信号のみを通過させ、ADC125へと入力させるフィルタ機能部である。
【0127】
ADC125は、マルチプレクサ10Aを通過し、周波数変換部100Dで周波数変換された信号(被測定信号)をアナログ信号からデジタル信号の変換する機能部である。
【0128】
制御部150Dは、隙間可変制御部151D、周波数制御部152D、信号解析部153Dを有している。隙間可変制御部151Dは、スペクトラムアナライザ1(
図7参照)の制御部150に設けられるものと同等のものである。
【0129】
周波数制御部152Dは、周波数変換部100Dでの被測定信号の周波数変換に際して指定された解析対象周波数範囲の信号を受信できるようにローカル周波数を設定する制御を行う。周波数変換部100Dを構成するローカル信号発生器112Dは、受信するRF周波数に応じてローカル周波数を可変することができる構成を有している。このため、周波数制御部152Dは、ローカル信号発生器112Dを駆動制御し、ローカル周波数を掃引制御する構成であってもよい。
【0130】
信号解析部153Dは、ADC125によりデジタル信号の変換された信号(被測定信号)の波形を解析する処理、具体的には、上記デジタル信号をスペクトラム等の波形表示を行うための波形解析データを生成する処理を実行する。
【0131】
上記構成を有するシグナルアナライザ2の信号解析処理については、
図11に示すスペクトラムアナライザ1の信号測定動作(
図12参照)と比較して、ステップS3までは同じ流れで推移する。その後の信号解析動作として、シグナルアナライザ2は、ステップS3での隙間Gの調整制御、及びローカル周波数設定の終了後、制御部150Eは、マルチプレクサ10Aの導波路35を通過する調整後の隙間Gに対応する周波数成分を出力ポート38から周波数変換部100に入力して周波数変換し、ADC125に入力する。ADC125では、周波数変換後の信号をアナログ信号からデジタル信号に変換して信号解析部153Dに入力する。信号解析部153Dは、ADC125から入力するデジタル信号から、当該デジタル信号をスペクトラム等の波形表示を行うための波形解析データを生成する。制御部150Dは、信号解析部153Dにより生成された波形解析データを表示部161に表示する等の信号解析のための制御を行う。
【0132】
本実施形態に係るシグナルアナライザ2においても、
図9に示すマルチプレクサ10Aに代えて、基本ユニットの構成を有するマルチプレクサ10(
図1参照)を用いる構成とし得ることはいうまでもない。また、隙間調整機構43Aに代えて隙間調整機構43(
図3参照)を用いてもよい。
【0133】
(マルチプレクサ10Eを用いる信号発生装置3)
上記変形例に係るマルチプレクサ10A(
図9参照)は、
図11に示したスペクトラムアナライザ1、
図13に示したシグナルアナライザ2の他、例えば、DUTの受信感度試験を行う信号発生装置3にも適用可能である。
【0134】
図14は、マルチプレクサ10Eとして上述したマルチプレクサ10Aを用いる信号発生装置3の一般的構成を示す図である。信号発生装置3としては、DUTに対するミリ波帯の信号の受信感度試験を行う試験用信号を発生する試験用信号発生装置を想定している。
【0135】
本実施形態に係る信号発生装置3は、周波数変換部100E、信号発生部130、制御部150E、操作部160、表示部161の他、周波数変換部100Eの後段に設けられるマルチプレクサ10Eを備えている。周波数変換部100Eは、ミキサ111E、ローカル信号発生器112E、フィルタ113Eにより構成され、制御部150Eは、隙間可変制御部151E、周波数制御部152E、信号発生制御部153Eを備えて構成される。
【0136】
信号発生装置3において、周波数変換部100Eは、信号発生制御部153Eの制御下で信号発生部130から出力される中間周波数帯の試験用信号を、ローカル信号発生器112Eから出力されるローカル信号とともにミキサ111Eに与え、ミリ波帯の信号に変換する処理を行う。その際、周波数変換部100Eは、DUTを試験するために例えば操作部160にて設定される試験対象周波数に応じてローカル信号の周波数を周波数制御部152Eにより変化させつつ、周波数変換後の信号を後段へと送出する。
【0137】
周波数変換部100Eの後段に設けられるマルチプレクサ10Eとしては、上述したマルチプレクサ10(
図1参照)、マルチプレクサ10A(
図9参照)等が適用可能であるが、ここでは特に、マルチプレクサ10A(
図9参照)を用いる構成を前提に説明する。
【0138】
すなわち、信号発生装置3において、マルチプレクサ10Eは、
図14に示すように、入力ポート37が周波数変換部100Eの出力側に接続され、出力ポート38が試験用信号の入力側(試験用信号をRF Outputとして外部へ送信する側)に接続されるように配置されている。信号発生装置3におけるマルチプレクサ10Eの構成を
図15に示している。
図15に示すように、マルチプレクサ10Eは、信号の入出力経路が、上述したスペクトラムアナライザ1やシグナルアナライザ2に実装されるマルチプレクサ10A(
図9参照)とは逆(周波数変換部100Eからの信号が入力ポート37に入力され、出力ポート38からRF output側へ出力される)になっている。このように、マルチプレクサ10Eにおいては、入力ポート37に周波数変換部100E側からRF周波数(例えば、周波数帯f1、f2、f3、f4、f5、f6、f7、f8)に変換された信号(信号発生部130から入力する試験用信号)が入力し、該入力信号が、該マルチプレクサ10Eを経由してPF Outputたる試験用信号として送出されるようになっている。
【0139】
DUTの試験に際しての信号発生装置3の試験用信号の送信制御動作について
図16に示すフローチャートを参照して説明する。
【0140】
DUTの試験を行うべく、ユーザは、例えば、操作部160において、周波数、すなわち、試験対象周波数を設定する操作を行う(ステップS11)。ここで設定するパラメータとしては、例えば、周波数帯f1、f2、f3、f4、f5、f6、f7、f8のそれぞれの中心周波数や、スタート周波数とストップ周波数などが挙げられる。
【0141】
次いで、制御部150Eは、ステップS11で設定された試験対象周波数範囲に基づき、マルチプレクサ10に選択されるべき通過帯域(周波数帯f1、f2、f3、f4、f5、f6、f7、f8のいずれか)とLO設定を算出する(ステップS12)。
【0142】
引き続き、隙間可変制御部151は、マルチプレクサ10Eの第1導波管部31aと第2導波管部31b間の隙間Gを、ステップS12で算出した通過帯域に対応する隙間G、例えば、G0、G1、G2(
図3(b)、(c)、(d)参照)のいずれかとなるように調整制御する(ステップS13)。その際、隙間可変制御部151は、通過帯域可変手段40a-1、40b-1、40c-1、及び通過帯域可変手段40a-2、40b-2、40c-2を対象に、それぞれ、隙間調整機構43Aのモータ50a、50bに対して算出された通過帯域に対応する制御信号(隙間調整制御信号)を送出し、当該モータ50a、50bを、隙間Gが算出された通過帯域に対応する値となるまで回転駆動する。また、ステップS13においては、周波数変換部100Eでの周波数変換のために、ステップS12で算出されたLO設定に基づきローカル周波数を設定する制御も行われる。
【0143】
ステップS13での隙間Gの調整制御、及びローカル周波数設定の終了後、制御部150Eは、マルチプレクサ10Eの導波路35を通過する調整後の隙間Gに対応する周波数成分を出力ポート38から図示しないRF送出部に出力する(ステップS14)。
【0144】
さらに制御部150Eは、RF送出部を駆動制御し、マルチプレクサ10Eの出力ポート38から入力する周波数成分の信号を試験用信号として送出する(ステップS15)。
【0145】
本実施形態に係る信号発生装置3においても、
図9に示すマルチプレクサ10Aに代えて、基本ユニットの構成を有するマルチプレクサ10(
図1参照)を用いる構成とし得ることはいうまでもない。また、通過帯域可変手段40a-1、40b-1、40c-1、及び通過帯域可変手段40a-2、40b-2、40c-2として、隙間調整機構43Aに代えて隙間調整機構43(
図3参照)を用いてもよい。
【0146】
上述したように、本実施形態に係るマルチプレクサ10は、ポートP1(Input)、ポートP2(Through)、ポートP3(Couple)及びポートP4(Isolated)をそれぞれ有し、信号の分配または合成を行う回路網で構成されるハイブリッド18a1、19a1と、ハイブリッド18a1とハイブリッド19a1との間に並列に接続される2つの略同一特性のフィルタからなるBPF20a1と、ハイブリッド18a1のポートP4に接続され、BPF20a1の通過帯域に隣接する通過帯域を有するBPF20b1と、を備え、ハイブリッド18a1のポートP1からの入力信号を2つのBPF20a1に分配し、それぞれの通過帯域内であればBPF20a1を通過させ、ハイブリッド19a1で合成されてハイブリッド19a1のポートP3から出力する一方、入力信号がBPF20a1のフィルタの通過帯域外であれば、反射され、ハイブリッド18a1で合成されてポートP4からBPF20b1に出力するものであって、BPF20a1、20b1の通過帯域を、所定の周波数範囲内の互いにオーバーラップする帯域が形成される帯域の範囲内において可変する通過帯域可変手段40a、40b、40cを有する構成である。
【0147】
この構成により、本実施形態に係るマルチプレクサ10は、通過帯域可変手段40a、40b、40cによりBPF20a1、20b1の通過帯域を可変することにより、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易にしかも連続的に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の測定、解析、試験に対応可能となる。
【0148】
また、本実施形態に係るマルチプレクサ10は、ハイブリッド18a1、19a1、BPF20a1、及びBPF20b1を有する構成を基本ユニットとし、複数の基本ユニットを、前の基本ユニットのハイブリッド18a1のポートP4或いはハイブリッド19a1のポートP3に後の基本ユニットのハイブリッド18a1のポートP1が接続されるように順に連結して構成され、前後の基本ユニットのBPF20a1、20b1は、連続する帯域を通して互いにオーバーラップする帯域が形成されるように通過帯域を可変する構成である。
【0149】
この構成により、本実施形態に係るマルチプレクサ10は、複数の基本ユニットを組み合わせて拡張された所望の通過帯域に対応可能なフィルタ構造を簡単な構造により構築することができ、高周波信号の高精度の測定、解析、試験への対応も容易となる。
【0150】
また、本実施形態に係るマルチプレクサ10は、それぞれの基本ユニットのBPF20a1、20b1の相当するフィルタは、BPF、HPF、LPFのうちのいずれか1種類、または、複数種類混在した構成を有するものである。
【0151】
この構成により、本実施形態に係るマルチプレクサ10は、ハイブリッドと、BPF、HPF、LPFのうちのいずれか1種類、または、複数種類混在させて、所望の仕様のフィルタ構造を容易に実現できる。
【0152】
また、本実施形態に係るマルチプレクサ10において、BPF20a1、20b1は、導波管フィルタ20で構成され、導波管フィルタ20は、互いに直方体形状を有し、それぞれ長手方向の一側面32a、32bに長手方向の一端部33から他端部34にかけて導波路35となるべき溝35a、35bが形成される第1導波管部31a、及び第2導波管部31bを備え、第1導波管部31aと第2導波管部31bを一側面32a、32b同士が向かい合うように対向配置した状態で溝35a、35bによる導波路35が形成されるとともに、第1導波管部31aの一側面32aと、第2導波管部31bの一側面32bとの間の隙間Gに応じて導波路35の通過帯域が変化する導波管部30と、通過帯域可変手段40a、40b、40cを構成し、所望の通過帯域が設定されるように導波管部30における隙間Gを可変する隙間調整機構43、43Aと、を有する構成である。
【0153】
この構成により、本実施形態に係るマルチプレクサ10は、導波管フィルタ20の第1導波管部31aと第2導波管部31bの隙間Gを調整する隙間調整機構43、43Aを用いて通過帯域可変手段40a、40b、40cを容易に実現できる。
【0154】
また、本実施形態に係るマルチプレクサ10において、隙間調整機構43Aは、第1導波管部31aを載置する第1ステージ52aと、第2導波管部31bを、第1導波管部31aに対して対向配置された状態に載置する第2ステージ52bと、第1ステージ52a及び第2ステージ52bを、第1導波管部31aと第2導波管部31bとの隙間Gが変化するように、対称面に対して対称に移動可能に駆動するモータ50a、50bを有する構成である。
【0155】
この構成により、本実施形態に係るマルチプレクサ10は、モータ50a、50bによって第1ステージ52a及び第2ステージ52bを対称面に対して対称に動くように駆動することで、第1導波管部31aと第2導波管部31b間の隙間Gを容易にしかも連続的に可変できるとともに、通過帯域可変に際してフィルタ特性を向上させることができる。
【0156】
また、本実施形態に係るマルチプレクサ10において、導波管部30は、所定の周波数範囲の被測定信号を導波路35に入力し、互いにオーバーラップする複数の周波数帯のうちの、隙間Gに対応する通過帯域に合致するいずれか1つの帯域の周波数成分を出力する構成を有している。
【0157】
この構成により、本実施形態に係るマルチプレクサ10は、隙間調整機構43、43Aにより隙間Gを可変することで、その隙間Gに応じて所定の周波数範囲内の複数の通過帯域のうちの所望の通過帯域を設定することができる。
【0158】
また、本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1は、所定の周波数範囲の被測定信号を、ローカル信号発生器112から出力されるローカル信号とともにミキサ111に与え、そのミキシング出力から所定の中間周波数帯の信号を抽出するフィルタ113を有する周波数変換部100と、中間周波数帯の信号を検波する検波器120とを有し、解析対象周波数に応じてローカル信号の周波数を変化させて、被測定信号のスペクトラム特性を求めるスペクトラムアナライザ1において、周波数変換部100の前段に、上述した構成を有するマルチプレクサ10Aを設けるとともに、解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する通過帯域が設定されるように通過帯域可変手段40a、40b、40cを駆動制御する隙間可変制御部151を有し、解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する周波数成分を、マルチプレクサ10Aを通して測定する構成を有している。
【0159】
この構成により、本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1は、通過帯域可変手段40a、40b、40cによりマルチプレクサ10AのBPF18a1、19a1通過帯域を可変することにより、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易にしかも連続的に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の測定が可能となる。
【0160】
また、本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1は、ハイブリッド18a1、19a1、BPF20a1、及びBPF20b1を有する構成を基本ユニットとし、複数の基本ユニット10-11、10-12を組み合わせてマルチプレクサ10Aが構成され、それぞれの基本ユニットのBPF18a1、19a1は、連続する帯域を通して互いにオーバーラップする帯域が形成されるように前記通過帯域を可変する構成である。
【0161】
この構成により、本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1は、複数の基本ユニットを組み合わせて拡張された所望の通過帯域に対応可能なマルチプレクサフィルタ構造を簡単な構造により構築することができ、高周波信号の高精度の測定、解析、試験への対応も容易となる。
【0162】
また、本実施形態に係るシグナルアナライザ3は、所定の周波数範囲の被測定信号を、ローカル信号発生器112から出力されるローカル信号とともにミキサ111Dに与え、そのミキシング出力から所定の中間周波数帯の信号を抽出するフィルタ113Dを有する周波数変換部100Dと、中間周波数帯の信号をADC125でデジタル信号に変換した後に当該信号の波形を解析する信号解析部153Dとを有し、解析対象周波数に応じてローカル信号の周波数を変化させて、被測定信号の波形を解析するシグナルアナライザ2において、周波数変換部100Dの前段に、上述した構成を有するマルチプレクサ10Aを設けるとともに、解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する通過帯域が設定されるように通過帯域可変手段40a、40b、40cを駆動制御する隙間可変制御部151Dを有し、解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する周波数成分の信号を、マルチプレクサ10Aを通して解析する構成である。
【0163】
この構成により、本実施形態に係るシグナルアナライザ2は、通過帯域可変手段40a、40b、40cによりBPF18a1、19a1の通過帯域を可変することにより、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易にしかも連続的に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の解析が可能となる。
【0164】
また、本実施形態に係る信号発生装置3は、信号発生部130から出力される中間周波数帯の試験用信号を、ローカル信号発生器112Eから出力されるローカル信号とともにミキサ111Eに与え、所定の周波数範囲の信号に変換する周波数変換部100Eを有し、DUTを試験するための試験対象周波数に応じてローカル信号の周波数を変化させて、周波数変換部100Eによる周波数変換後の信号を被測定対象の試験用信号として送出する信号発生装置3において、周波数変換部100Eの後段に、周波数変換後の信号が入力される上述した構成を有するマルチプレクサ10Eを設けるとともに、試験対象周波数のうちの一周波数帯に対応する通過帯域が設定されるように通過帯域可変手段40a、40b、40cを駆動制御する隙間可変制御部151Eを有し、試験対象周波数のうちのマルチプレクサ10Eを通過する一周波数帯に対応する周波数成分の試験用信号を送出する構成を有している。
【0165】
この構成により、本実施形態に係る信号発生装置3は、通過帯域可変手段40a、40b、40cによりBPF18a1、19a1の通過帯域を可変することにより、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易にしかも連続的に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度のDUT試験に対応可能となる。
【0166】
また、本実施形態に係るマルチプレクサの制御方法は、上述した構成を有するマルチプレクサ10を用いるスペクトラムアナライザ1、またはシグナルアナライザ2、若しくは信号発生装置3におけるマルチプレクサの制御方法であって、解析対象周波数、または試験対象周波数を設定する設定ステップ(S1、S11)と、設定された解析対象周波数、または試験対象周波数に基づき、BPF18a1、19a1に対して選択されるべき通過帯域が設定されるように通過帯域可変手段40a、40b、40cを駆動制御する通過帯域可変制御ステップ(S3、S13)と、通過帯域可変手段40a、40b、40cにより設定された通過帯域を有するBPF18a1、19a1を通過する解析対象周波数、または試験対象周波数に対応する周波数成分を抽出するステップ(S4、S14)と、を含む構成である。
【0167】
この構成により、本実施形態に係るマルチプレクサの制御方法は、スペクトラムアナライザ1、またはシグナルアナライザ2、若しくは信号発生装置3において適用することで、通過帯域可変手段40a、40b、40cによりBPF18a1、19a1の通過帯域を可変することにより、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易にしかも連続的に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の測定、解析、試験に対応可能となる。
【0168】
本発明に係るマルチプレクサ10、10A、これを用いるスペクトラムアナライザ1、シグナルアナライザ2、信号発生装置3、及びマルチプレクサの制御方法については、上述した実施形態に記載の構成に限らず、種々の変形、或いは応用が可能なものである。
【産業上の利用可能性】
【0169】
以上のように、本発明は、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の測定、解析、試験に対応可能であるという効果を奏し、マルチプレクサ、これを用いるスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置、及びマルチプレクサの制御方法全般に有用である。
【符号の説明】
【0170】
1 スペクトラムアナライザ
2 シグナルアナライザ
3 信号発生装置
9 局部発振信号源
10、10-11、10-12、10A、10E マルチプレクサ
18a1 ハイブリッド(第1のハイブリッド)
19a1 ハイブリッド(第2のハイブリッド)
20a1 BPF(第1のフィルタ)
20b1 BPF(第2のフィルタ)
20 導波管フィルタ
30 導波管部
31a 第1導波管部(第1の導波管部)
31b 第2導波管部(第2の導波管部)
32a、32b 一側面
33 一端部(一端)
34 他端部(他端)
35 導波路
40、40A 隙間調整部
40a、40b、40c 通過帯域可変手段
41 第1ステージ
42 第2ステージ
43、43A 隙間調整機構
50、50a、50b モータ(駆動手段)
52a 第1ステージ(第1のステージ部材)
52b 第2ステージ(第2のステージ部材)
100、100D、100E 周波数変換部
111、111D、111E ミキサ
112、112D、112E ローカル信号発生器
113、113D、113E フィルタ
120 検波器
125 アナログデジタル変換器(ADC)
130 信号発生部
150、150D、150E 制御部
151、151D、151E 隙間可変制御部(通過帯域可変制御手段)
152 周波数掃引制御部
152D、152E 周波数制御部
153 スペクトラムデータ取得部
153D 信号解析部
153E 信号発生制御部
160 操作部
161 表示部