(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152381
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20241018BHJP
A01G 3/08 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B25F5/00 B
A01G3/08 503B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066536
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新山 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅浩
【テーマコード(参考)】
3C064
【Fターム(参考)】
3C064AA06
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA13
3C064BA18
3C064BB56
3C064CA03
3C064CA06
3C064CA29
3C064CA53
3C064CA73
3C064CB17
3C064CB63
3C064CB73
(57)【要約】
【課題】ユーザの意思に反して作業部が駆動されることを抑制することが可能な技術を提供する。
【解決手段】作業機は、作業部と、作業部を駆動するための原動機と、ユーザが操作するための操作機構を備える。操作機構は、ユーザが把持可能なグリップと、グリップに設けられ、作業部を駆動するためのトリガと、グリップに対して所定の方向に押し込み可能に設けられたロック部材と、ロック部材の押し込み操作に要する操作力を調整するための操作力調整機構を備える。ロック部材は、ロック部材の押し込み量が所定量未満である場合トリガをロックし、押し込み量が所定量以上である場合トリガをアンロックする。操作力調整機構は、ロック部材が押し込まれる過程において、押し込み量が所定量に達する前に操作力を第1の力まで増大させ、ロック部材が第1の力を受けてさらに押し込まれる場合操作力を第1の力よりも小さくする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業部と、
前記作業部を駆動するための原動機と、
ユーザが操作するための操作機構と、を備えており、
前記操作機構は、
前記ユーザが把持可能なグリップと、
前記グリップに設けられ、前記作業部を駆動するためのトリガと、
前記グリップに対して所定の方向に押し込み可能に設けられたロック部材と、
前記ロック部材の押し込み操作に要する操作力を調整するための操作力調整機構と、を備えており、
前記ロック部材は、前記ロック部材の押し込み量が所定量未満である場合、前記トリガをロックし、前記押し込み量が前記所定量以上である場合、前記トリガをアンロックし、
前記操作力調整機構は、前記ロック部材が押し込まれる過程において、前記押し込み量が前記所定量に達する前に、前記操作力を第1の力まで増大させ、
前記操作力調整機構は、前記ロック部材が前記第1の力を受けてさらに押し込まれる場合、前記操作力を前記第1の力よりも小さくする、作業機。
【請求項2】
作業部と、
前記作業部を駆動するための原動機と、
ユーザが操作するための操作機構と、を備えており、
前記操作機構は、
前記ユーザが把持可能なグリップと、
前記グリップに設けられ、前記作業部を駆動するためのトリガと、
前記グリップに対して所定の方向に押し込み可能に設けられたロック部材と、
前記ロック部材の押し込み操作に要する操作力を調整するための操作力調整機構と、を備えており、
前記ロック部材の押し込み量が所定量未満である場合、前記トリガへの操作に応じた前記作業部の駆動が禁止され、前記押し込み量が前記所定量以上である場合、前記トリガへの操作に応じた前記作業部の駆動が許容され、
前記操作力調整機構は、前記ロック部材が押し込まれる過程において、前記押し込み量が前記所定量に達する前に、前記操作力を第1の力まで増大させ、
前記操作力調整機構は、前記ロック部材が前記第1の力を受けてさらに押し込まれる場合、前記操作力を前記第1の力よりも小さくする、作業機。
【請求項3】
前記トリガは、前記ユーザが手のひらで前記ロック部材を押し込むように前記グリップを把持した時に、前記グリップを把持した手の指で操作可能な位置に配置される、請求項1または2の作業機。
【請求項4】
前記ロック部材が設けられている側から前記グリップを見た時、前記トリガは前記グリップに隠れた位置に配置される、請求項1から3の何れか一項の作業機。
【請求項5】
前記操作力調整機構は、
前記ロック部材が押し込まれる過程において、前記ロック部材に当接することにより、前記操作力を増大させるストッパ部を備えており、
前記ロック部材は、前記押し込み量が前記所定量に達するまでの間に、前記ストッパ部に当接し、前記ストッパ部を乗り越える、請求項1から4の何れか一項の作業機。
【請求項6】
前記ストッパ部には樹脂材料が用いられる、請求項5の作業機。
【請求項7】
前記原動機は、電動モータである、請求項1から6の何れか一項の作業機。
【請求項8】
前記操作力調整機構は、前記ロック部材が押し込まれる過程において、前記押し込み量が前記所定量の1/2に達する前に、前記操作力を前記第1の力まで増大させる、請求項1から7の何れか一項の作業機。
【請求項9】
前記第1の力は、20N以上である、請求項1から8の何れか一項の作業機。
【請求項10】
前記操作力調整機構は、前記ロック部材が前記第1の力を受けてさらに押し込まれる場合、前記操作力を前記第1の力よりも小さい第2の力まで減少させ、
前記第1の力と前記第2の力の差は、15N以上である、請求項1から9の何れか一項の作業機。
【請求項11】
前記操作力調整機構は、前記ロック部材が前記第1の力を受けてさらに押し込まれる場合、前記操作力を前記第1の力よりも小さい第2の力まで減少させ、
前記第2の力は、5N以下である、請求項1から10の何れか一項の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業部と、前記作業部を駆動するための原動機と、ユーザが操作するための操作機構と、を備える作業機が開示される。前記操作機構は、前記ユーザが把持可能なグリップと、前記グリップに設けられ、前記作業部を駆動するためのトリガと、前記グリップに対して所定の方向に押し込み可能に設けられたロック部材を備える。前記ロック部材は、前記ロック部材の押し込み量が所定量未満である場合、前記トリガをロックし、前記押し込み量が前記所定量以上である場合、前記トリガをアンロックする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機の分野では、ユーザの意思に反して作業部が駆動されることを抑制することが望まれる。本明細書では、ユーザの意思に反して作業部が駆動されることを抑制することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する作業機は、作業部と、前記作業部を駆動するための原動機と、ユーザが操作するための操作機構と、を備える。前記操作機構は、前記ユーザが把持可能なグリップと、前記グリップに設けられ、前記作業部を駆動するためのトリガと、前記グリップに対して所定の方向に押し込み可能に設けられたロック部材と、前記ロック部材の押し込み操作に要する操作力を調整するための操作力調整機構と、を備える。前記ロック部材は、前記ロック部材の押し込み量が所定量未満である場合、前記トリガをロックし、前記押し込み量が前記所定量以上である場合、前記トリガをアンロックする。前記操作力調整機構は、前記ロック部材が押し込まれる過程において、前記押し込み量が前記所定量に達する前に、前記操作力を第1の力まで増大させる。前記操作力調整機構は、前記ロック部材が前記第1の力を受けてさらに押し込まれる場合、前記操作力を前記第1の力よりも小さくする。
【0006】
上記の構成によれば、トリガがアンロックされる位置までロック部材を押し込むためには、第1の力でロック部材を押し込む必要がある。第1の力を大きくすることで、ユーザの意思に反してトリガがアンロックされることが抑制される。その結果、ユーザの意思に反してトリガがオンとなることが抑制されるので、ユーザの意思に反して作業部が駆動されることを抑制できる。さらに上記の構成によれば、ロック部材が第1の力で押し込まれると、操作力が第1の力よりも小さくなる。即ち、ユーザの意思が確認された後は、操作力が比較的小さくなる。このため、ユーザが意図的にロック部材を押し込んでいる状況では、ユーザの操作負担を低減することができる。
【0007】
本明細書が開示する別の作業機は、作業部と、前記作業部を駆動するための原動機と、ユーザが操作するための操作機構と、を備える。前記操作機構は、前記ユーザが把持可能なグリップと、前記グリップに設けられ、前記作業部を駆動するためのトリガと、前記グリップに対して所定の方向に押し込み可能に設けられたロック部材と、前記ロック部材の押し込み操作に要する操作力を調整するための操作力調整機構と、を備える。前記ロック部材の押し込み量が所定量未満である場合、前記トリガへの操作に応じた前記作業部の駆動が禁止され、前記押し込み量が前記所定量以上である場合、前記トリガへの操作に応じた前記作業部の駆動が許容される。前記操作力調整機構は、前記ロック部材が押し込まれる過程において、前記押し込み量が前記所定量に達する前に、前記操作力を第1の力まで増大させる。前記操作力調整機構は、前記ロック部材が前記第1の力を受けてさらに押し込まれる場合、前記操作力を前記第1の力よりも小さくする。
【0008】
上記の構成によれば、トリガへの操作に応じた作業部の駆動が許容される位置までロック部材を押し込むためには、第1の力でロック部材を押し込む必要がある。第1の力を大きくすることで、ユーザの意思に反して作業部が駆動されることを抑制できる。さらに上記の構成によれば、ロック部材が第1の力で押し込まれると、操作力が第1の力よりも小さくなる。即ち、ユーザの意思が確認された後は、操作力が比較的小さくなる。このため、ユーザが意図的にロック部材を押し込んでいる状況では、ユーザの操作負担を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1に係る作業機(チェーンソー2)を前方右方上方から見た図である。
【
図2】実施例1に係るチェーンソー2の内部構造を左方から見た図である。
【
図3】実施例1に係るチェーンソー2が備える操作機構44を前方左方上方から見た図である。
【
図4】実施例1に係るチェーンソー2の、ロックレバー54の押し込み量θが0°である場合の操作機構44の様子を左方から見た図である。
【
図5】実施例1に係るチェーンソー2の、ロックレバー54の押し込み量θが第1押し込み量θ1である場合の操作機構44の様子を左方から見た図である。
【
図6】実施例1に係るチェーンソー2の、ロックレバー54の押し込み量θが切替押し込み量θsである場合の操作機構44の様子を左方から見た図である。
【
図7】実施例1に係るチェーンソー2の、ロックレバー54の押し込み量θが第3押し込み量θ3である場合の操作機構44の様子を左方から見た図である。
【
図8】実施例1に係るチェーンソー2における押し込み量θと操作力Fとの関係を近似的に描画したグラフである。
【
図9】実施例2に係る作業機の、ロックレバー54の押し込み量θが0°である場合の操作機構44の様子を左方から見た図である。
【
図10】実施例3に係る作業機の、ロックレバー54の押し込み量θが0°である場合の操作機構44の様子を左方から見た図である。
【
図11】変形例に係る作業機における押し込み量θと操作力Fとの関係を近似的に描画したグラフである。
【
図12】別の変形例に係る作業機における押し込み量θと操作力Fとの関係を近似的に描画したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の代表的かつ非限定的な具体例について、図面を参照して以下に詳細に説明する。この詳細な説明は、本発明の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。また、開示された追加的な特徴ならびに発明は、さらに改善された作業機を提供するために、他の特徴や発明とは別に、又は共に用いることができる。
【0011】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本発明を実施する際に必須のものではなく、特に本発明の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、以下の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、特許請求の範囲に記載されるものの様々な特徴は、本発明の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
【0012】
本明細書及び/又は特許請求の範囲に記載された全ての特徴は、実施例及び/又は特許請求の範囲に記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびに特許請求の範囲に記載された特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびに特許請求の範囲に記載された特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
【0013】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記トリガは、前記ユーザが手のひらで前記ロック部材を押し込むように前記グリップを把持した時に、前記グリップを把持した手の指で操作可能な位置に配置されていてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、ユーザは、グリップを握りこむ動作によって、ロック部材とトリガのそれぞれに対して力を掛けることができる。このため、ロック部材とトリガの同時操作を意図するユーザにとって、ロック部材とトリガのそれぞれに対して力を掛けやすくなっている。
【0015】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記ロック部材が設けられている側から前記グリップを見た時、前記トリガは前記グリップに隠れた位置に配置されていてもよい。
【0016】
上記の構成では、ロック部材を押し込む方向と、トリガを押し込む方向が、略反対方向となる。これにより、ユーザがグリップを握らない限り、ロック部材とトリガが同時に操作されることは起こり得ない。従って、ユーザの意思に反して作業部が駆動されることをより効果的に抑制できる。
【0017】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記操作力調整機構は、前記ロック部材が押し込まれる過程において、前記ロック部材に当接することにより、前記操作力を増大させるストッパ部を備えてもよい。前記ロック部材は、前記押し込み量が前記所定量に達するまでの間に、前記ストッパ部に当接し、前記ストッパ部を乗り越えてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、トリガがアンロックされる位置(または、トリガへの操作に応じた作業部の駆動が許容される位置)までロック部材を押し込む過程において、ロック部材がストッパ部に当接することで、操作力が増大する。一方、トリガがアンロックされる位置(または、トリガへの操作に応じた作業部の駆動が許容される位置)までロック部材が押し込まれた状態では、ロック部材は既にストッパ部を乗り越えているため、操作力が比較的小さくなる。従って、上記の構成によれば、ユーザの意思に反して作業部が駆動されることを抑制できるとともに、ユーザが意図的にロック部材を押し込んでいる状況では、ユーザの操作負担を低減することができる。
【0019】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記ストッパ部には樹脂材料が用いられてもよい。
【0020】
グリップの内部には、任意の電装部品間を接続する導線が設けられることがある。仮にストッパ部に導電性の高い材料(例えば、金属材料)が用いられると、ストッパ部が、導線を意図しない箇所に導通させるおそれがある。上記の構成によれば、ストッパ部に樹脂材料、即ち、導電性の低い材料が用いられる。従って、導線が意図しない箇所に導通してしまうことを抑制できる。
【0021】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記原動機は、電動モータであってもよい。
【0022】
原動機が電動モータである場合、例えば原動機が内燃機関である場合と比べて、原動機の動作に伴う振動・騒音が小さい。このため、ユーザの意思に反して作業部が駆動された時に、ユーザがそのことに気づかない可能性がある。この状況は好ましくないため、ユーザの意思に反して作業部が駆動されることを抑制する必要性が特に高いと考えられる。従って、上記の構成によれば、ユーザの意思に反して原動機の動作が開始されることを抑制する効果が顕著に発揮される。
【0023】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記操作力調整機構は、前記ロック部材が押し込まれる過程において、前記押し込み量が前記所定量の1/2に達する前に、前記操作力を前記第1の力まで増大させてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、ロック部材の押し込み量が小さい段階から大きな操作力を発生させることができる。これにより、ユーザの意思に反して作業部が駆動されることをより効果的に抑制できる。
【0025】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記第1の力は、20N以上であってもよい。
【0026】
上記の構成によれば、トリガがアンロックされる位置(または、トリガへの操作に応じた作業部の駆動が許容される位置)までロック部材を押し込むためには、少なくとも20Nの操作力が必要となる。従って、ユーザの意思に反して作業部が駆動されることをより効果的に抑制できる。
【0027】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記操作力調整機構は、前記ロック部材が前記第1の力を受けてさらに押し込まれる場合、前記操作力を前記第1の力よりも小さい第2の力まで減少させてもよい。前記第1の力と前記第2の力の差は、15N以上であってもよい。
【0028】
上記の構成によれば、ロック部材が第1の力で押し込まれた後の操作力の減少幅が少なくとも15Nとなる。このため、ユーザが意図的にロック部材を押し込んでいる状況でのユーザの操作負担を、より効果的に低減することができる。
【0029】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記操作力調整機構は、前記ロック部材が前記第1の力を受けてさらに押し込まれる場合、前記操作力を前記第1の力よりも小さい第2の力まで減少させてもよい。前記第2の力は、5N以下であってもよい。
【0030】
上記の構成によれば、ロック部材が第1の力で押し込まれた後の操作力は、5Nまで低減される。このため、ユーザが意図的にロック部材を押し込んでいる状況でのユーザの操作負担を、より効果的に低減することができる。
【0031】
(実施例1)
図1に示すように、本実施例の作業機は、チェーンソー2である。チェーンソー2は、本体4と、ガイドバー6と、ソーチェーン8と、を備える。ガイドバー6は、基端が本体4に取り付けられており、先端が本体4から突出する、細長い板状の部材である。ソーチェーン8は、相互に連結された複数のカッタ(図示せず)を備えており、ガイドバー6の周縁に沿って取り付けられている。本体4の下部には、再充電可能な電池パックBが、着脱可能に取り付けられている。電池パックBを本体4に対して前後方向にスライドさせることで、本体4に対する電池パックBの着脱が行われる。チェーンソー2は、電池パックBから供給される電力によって、ソーチェーン8をガイドバー6の周縁に沿って走行させることで、木材等の被切削物を切削する。本実施例では、ガイドバー6とソーチェーン8を総称して「作業部10」と呼ぶことがある。
【0032】
本明細書では、
図2に示すように、チェーンソー2を地面等の水平な載置面Sに載置した状態を基準として、前後上下左右方向を定める。具体的には、載置面Sに沿ってガイドバー6(
図1参照)の基端から先端に向かう方向を前方向とし、載置面Sに沿ってガイドバー6の先端から基端に向かう方向を後方向とする。そして、載置面Sからチェーンソー2に向かう方向を上方向とし、チェーンソー2から載置面Sに向かう方向を下方向とする。そして、前後方向および上下方向に直交する方向を左右方向とする。
【0033】
図1に示すように、本体4は、ハウジング12と、トップハンドル14と、サイドハンドル16と、ハンドガード18と、スプロケットカバー20と、を備える。ハウジング12は、左側ハウジング22と右側ハウジング24を備える。左側ハウジング22と右側ハウジング24は、ねじ(図示せず)等によって互いに固定されている。トップハンドル14は、ハウジング12の一部である。トップハンドル14は、本体4の上部に配置されており、ユーザが一方の手(右手)で把持可能である。サイドハンドル16は、ハウジング12の左部に取り付けられている。サイドハンドル16は、ユーザが他方の手(左手)で把持可能である。ハンドガード18は、ハウジング12の前部に取り付けられている。ハンドガード18は、トップハンドル14およびサイドハンドル16を把持するユーザの手を保護する保護具である。
【0034】
スプロケットカバー20は、右側ハウジング24に取り付けられる。スプロケットカバー20は、右側ハウジング24の右面に露出するスプロケット(図示せず)を覆っている。スプロケットには、ガイドバー6からソーチェーン8が架け渡される。スプロケットカバー20の右面には、右側ハウジング24に固定されたボルト24aと、ボルト24aに螺合されたナット24bが露出している。ガイドバー6とスプロケットカバー20は、ボルト24aとナット24bによって、右側ハウジング24に締結されている。
【0035】
図2に示すように、チェーンソー2は、制御ユニット26と、電動モータ28と、オイルタンク30と、オイルポンプ32をさらに備える。制御ユニット26と、電動モータ28と、オイルタンク30と、オイルポンプ32は、ハウジング12の内部に収容されている。
【0036】
制御ユニット26は、チェーンソー2が備える電装部品の動作を制御する。制御ユニット26は、例えば、スイッチング素子を備えるインバータ回路と、スイッチング素子の動作を制御する制御回路を備えている。制御ユニット26は、電池パックBから供給される電力を調整して電動モータ28に供給することで、電動モータ28を動作させることができる。
【0037】
電動モータ28は、例えばアウタロータ型のDCブラシレスモータである。電動モータ28は、ハウジング12に回転可能に支持される駆動シャフト34を回転させる。駆動シャフト34には、スプロケット(図示せず)が固定されている。電動モータ28が動作すると、駆動シャフト34とともにスプロケットが回転し、これによってソーチェーン8(
図1参照)がガイドバー6(
図1参照)の周縁に沿って走行する。
【0038】
ハンドガード18は、ハウジング12に対して、上方に引き起こした通常位置と、前方に押し倒した停止位置との間で回動可能である。ハンドガード18は、図示しないブレーキ機構に連結されている。ブレーキ機構は、ハンドガード18が停止位置にある場合に、駆動シャフト34の回転を機械的に制動することで、ソーチェーン8の回転を制動する。なお、
図1および
図2では、いずれも通常位置にある状態のハンドガード18が図示されている。
【0039】
オイルタンク30には、ソーチェーン8を潤滑するための潤滑油が貯留される。オイルタンク30には、潤滑油を補充するための補充用開口36が形成されている。補充用開口36には、キャップ38が着脱可能に取り付けられている。図示しないが、補充用開口36およびキャップ38は、左側ハウジング22の外部に露出している。
【0040】
オイルポンプ32は、電動モータ28の駆動シャフト34に連結している。オイルポンプ32は、駆動シャフト34の回転に連動して、導入管40を介してオイルタンク30の内部の潤滑油を吸い出すとともに、導出管42を介してガイドバー6(
図1参照)に向けて潤滑油を送り出す。
【0041】
(操作機構44について)
図3に示すように、チェーンソー2は、ユーザが操作可能な操作機構44をさらに備える。操作機構44は、グリップ46と、電源ボタン48と、トリガスイッチ50と、トリガレバー52と、ロックレバー54と、操作力調整機構56と、を備える。本実施例では、トップハンドル14が、グリップ46として機能する。
【0042】
電源ボタン48は、グリップ46の前部であって、グリップ46の上面に配置される。電源ボタン48は、制御ユニット26に電気的に接続される。電源ボタン48は、ユーザがチェーンソー2の電源のオン/オフを切替操作するためのボタンである。
【0043】
トリガスイッチ50は、グリップ46の前部に配置される。トリガスイッチ50は、制御ユニット26に電気的に接続される。トリガスイッチ50が押し込まれている場合、トリガスイッチ50は制御ユニット26に対してトリガオン信号を出力する。制御ユニット26は、トリガスイッチ50からトリガオン信号が出力されている間、電動モータ28を動作させる。一方、トリガスイッチ50が押し込まれていない場合、トリガスイッチ50は制御ユニット26に対してトリガオフ信号を出力する。制御ユニット26は、トリガスイッチ50からトリガオフ信号が出力されている間、電動モータ28を停止させる。
【0044】
トリガレバー52は、グリップ46の下部に配置される。トリガレバー52には、樹脂材料(例えば、ナイロン)が用いられる。トリガレバー52は、左右方向に沿って延びる第1回転軸58周りに回転可能に取り付けられる。第1回転軸58は、グリップ46に対して位置が固定されている。トリガレバー52は、部分的にグリップ46の外部に露出するトリガレバー本体60と、トリガレバー本体60から上方に突出したスイッチ押込部62と、を備える。
【0045】
トリガレバー52が引き上げ操作されると、スイッチ押込部62によってトリガスイッチ50が押し込まれるので、制御ユニット26にはトリガオン信号が出力される。トリガレバー52の引き上げ操作が解除されると、トリガレバー52はトリガスイッチ50に設けられたバネ(図示せず)の付勢力によって押し戻される。従って、トリガレバー52が引き上げ操作されない状態では、トリガスイッチ50は押し込まれないので、制御ユニット26にはトリガオフ信号が出力される。
【0046】
ロックレバー54は、グリップ46の上部に配置される。ロックレバー54には、樹脂材料(例えば、ナイロン)が用いられる。ロックレバー54は、左右方向に沿って延びる第2回転軸64周りに回転可能に取り付けられる。第2回転軸64は、グリップ46に対して位置が固定されている。ロックレバー54は、ロックレバー本体66と、干渉部68と、バネ受け突起70と、コンタクト突起72(
図2参照)と、を備える。ロックレバー本体66は、第2回転軸64の近傍から上方に延びており、途中で折り返して、後方に延びている。ロックレバー本体66は、部分的にグリップ46の外部に露出している。また、干渉部68は、第2回転軸64の近傍から前方下方に延びており、途中で折り返して、後方下方に延びている。
【0047】
図4に示すように、コンタクト突起72は、ロックレバー本体66の後端下部に配置されている。コンタクト突起72は、下方に突出している。コンタクト突起72は、丸みを帯びた形状を有している。バネ受け突起70は、コンタクト突起72よりも前方に配置されている。バネ受け突起70は、下方に突出している。
【0048】
ロックレバー54は、操作力調整機構56によってグリップ46の外側に付勢されている。ロックレバー54が押し込み操作されていない状態では、ロックレバー54は、
図4に示す位置(「ゼロ位置」と呼ぶ。)に保持される。この状態では、干渉部68は、トリガレバー52がグリップ46の内側に移動する際に、トリガレバー52に機械的に干渉する位置にある。これにより、トリガレバー52の引き上げ操作が禁止される。即ち、トリガレバー52がロックされる。この状態から、ロックレバー54が押し込み操作されると、やがて、干渉部68がトリガレバー52に干渉しない位置まで移動する。具体的には、干渉部68が、トリガレバー本体60に規定された空洞部74(
図3参照)に退避可能な位置まで移動する。これにより、トリガレバー52の引き上げ操作が許容される。即ち、トリガレバー52がアンロックされる。
【0049】
本実施例では、ロックレバー54の押し込み量を、ゼロ位置からのロックレバー54の回転角度θで定義する。従って、
図4に示す状態でのロックレバー54の押し込み量θは0°である。
【0050】
(操作力調整機構56について)
操作力調整機構56は、ロックレバー54の押し込み操作に要する操作力Fを調整する。操作力Fは、ロックレバー54に対して、第2回転軸64の周方向に沿ってグリップ46の外側に作用する力ともいえる。操作力調整機構56は、ロックレバー54に第1操作力F1を付与する第1操作力付与機構76と、ロックレバー54に第2操作力F2を付与する第2操作力付与機構78と、を備える。本実施例では、操作力Fは、第1操作力F1と第2操作力F2の合計値に相当するとみなすことができる。
【0051】
第1操作力付与機構76は、第1コイルバネ80を備える。第1コイルバネ80の一端は、ロックレバー54のバネ受け突起70に取り付けられる。第1コイルバネ80の他端は、右側ハウジング24に設けられたバネ受け部82に受け入れられる。第1コイルバネ80は、ロックレバー54を、第2回転軸64の周方向に沿ってグリップ46の外側に向けて付勢する。ロックレバー54が押し込まれると、第1コイルバネ80は押し縮められる。第1操作力付与機構76は、第1コイルバネ80で生じる付勢力N1の少なくとも一部を、第1操作力F1としてロックレバー54に付与する。
【0052】
第2操作力付与機構78は、ガイド部材84と、コンタクト部材86と、第2コイルバネ88を備える。ガイド部材84には、樹脂材料(例えば、ナイロン)が用いられる。ガイド部材84は、ハウジング12に対して位置が固定されている。ガイド部材84は、左方が解放された箱状に形成されている。ガイド部材84は、ガイド部90と、バネ受け部92と、係止部94と、を備える。ガイド部90は、コンタクト部材86をスライド可能に受け入れる。本実施例では、コンタクト部材86がスライドする方向に関して、前方に向かう方向を「第1スライド方向」と呼び、後方に向かう方向を「第2スライド方向」と呼ぶ。
【0053】
第2コイルバネ88の一端は、バネ受け部92に受け入れられる。第2コイルバネ88の他端は、コンタクト部材86に受け入れられる。第2コイルバネ88は、バネ受け部92に対して、コンタクト部材86を第1スライド方向に付勢する。コンタクト部材86が第2スライド方向にスライドすると、第2コイルバネ88は押し縮められる。
【0054】
コンタクト部材86には、樹脂材料(例えば、ナイロン)が用いられる。コンタクト部材86は、ロックレバー54が押し込まれる過程においてロックレバー54に対して当接する当接面96を備える。当接面96は、第1当接面98と第2当接面100を備える。第1当接面98は、コンタクト部材86の前端上部に配置されている。第2当接面100は、第1当接面98に接続するとともに、コンタクト部材86の前端下部に配置されている。
【0055】
図3に示すように、ガイド部材84の係止部94は、コンタクト部材86の前方において、当接面96の右半分を覆うように配置される。係止部94は、コンタクト部材86が係止部94を越えて第1スライド方向に移動することを禁止する。係止部94は、ロックレバー54の右面よりも右方にオフセットされている。このため、ロックレバー54が押し込まれると、ロックレバー54は、係止部94に当接することなく、当接面96に当接する。
【0056】
図4に示すように、ロックレバー54がゼロ位置付近にある場合、ロックレバー54のコンタクト突起72は第1当接面98に当接しないので、第2操作力付与機構78はロックレバー54に干渉しない。この場合の第2操作力F2は、F2=0と表すことができる。
【0057】
図5に示すように、ロックレバー54がゼロ位置から押し込まれ、押し込み量θが第1押し込み量θ1に達すると、ロックレバー54のコンタクト突起72が第1当接面98に当接する。本実施例の第1押し込み量θ1は、0.5°である。
【0058】
コンタクト突起72と第1当接面98が当接した状態では、コンタクト突起72と第1当接面98との間で生じる反力の少なくとも一部が、第2操作力F2としてロックレバー54に付与される。この反力は、例えば、第2コイルバネ88で生じる付勢力N2や、ガイド部材84とコンタクト部材86の間で生じる摩擦力fに依存する。
【0059】
図5に示す状態からさらにロックレバー54が押し込まれると、これに伴って、ガイド部材84が第2スライド方向に押し込まれていく。そして、押し込み量θが第2押し込み量θ2に達すると、コンタクト突起72が第1当接面98を乗り越える。本実施例の第2押し込み量θ2は、2.0°である。
【0060】
図6に示すように、押し込み量θが第2押し込み量θ2以上となっている間は、ロックレバー54の後端部分が第2当接面100に当接する。この状態では、ロックレバー54の後端部分と第2当接面100との間で生じる反力の少なくとも一部が、第2操作力F2としてロックレバー54に付与される。ただし、この場合の第2操作力F2は、コンタクト突起72と第1当接面98が当接している場合の第2操作力F2と比較すると、非常に小さい。
【0061】
なお
図6に示す状態では、ロックレバー54は、トリガレバー52のロック/アンロックを切り替える位置にある。この時のロックレバー54の押し込み量θを「切替押し込み量θs」と定める。切替押し込み量θsは、第2押し込み量θ2の2倍以上の数値となるように設定される。即ち、第2押し込み量θ2は、切替押し込み量θsの1/2以下となる。本実施例の切替押し込み量θsは、7.0°である。
【0062】
図7に示すように、押し込み量θが第3押し込み量θ3に達すると、干渉部68の上端部がグリップ46の内側面に当接する。この状態では、ロックレバー54をそれ以上押し込むことが禁止される。従って、第3押し込み量θ3は、押し込み量θが取り得る最大値ともいえる。本実施例の第3押し込み量θ3は、10.0°である。
【0063】
(押し込み量θと操作力Fとの関係について)
操作力Fは、押し込み量θに対して
図8に示す通りに推移する。操作力Fは、押し込み量θが増加して第1押し込み量θ1に達する段階で急増し、押し込み量θが増加して第2押し込み量θ2に達する段階で急減する。これは、θ1≦θ<θ2である間、コンタクト突起72(
図4参照)が第1当接面98(
図4参照)に当接することで、操作力Fが著しく増加するためである。また、0≦θ<θ1、θ1≦θ<θ2、θ2≦θ<θ3のそれぞれの範囲内において、操作力Fは、押し込み量θが増えるにつれて徐々に増加する。これは、操作力Fが、第1コイルバネ80(
図4参照)で生じる付勢力N1や、第2コイルバネ88(
図4参照)で生じる付勢力N2に依存するためである。
【0064】
コンタクト突起72が第1当接面98を乗り越える直前、即ち押し込み量θが第2押し込み量θ2に達する直前における操作力Fを、第1の力P1とする。第1の力P1は、例えば20Nから40Nの範囲内であって、本実施例では30Nである。
【0065】
コンタクト突起72が第1当接面98を乗り越えた直後、即ち押し込み量θが第2押し込み量θ2に達した直後における操作力Fを、第2の力P2とする。第2の力P2は、例えば1Nから5Nの範囲内であって、本実施例では3Nである。また、第1の力P1と第2の力P2の差は、例えば15N以上であり、本実施例では27Nである。
【0066】
ユーザがロックレバー54を切替押し込み量θsまで押し込むためには、第1の力P1を上回るほどの大きな力が必要となる。これにより、ユーザの意思に反してトリガレバー52がアンロックされることが抑制される。一方、ロックレバー54が第1の力P1で押し込まれ、ユーザの意思が確認されると、操作力Fが第2の力P2まで低減される。その後、ユーザは、比較的小さな力によって、ロックレバー54の押し込みを維持することができる。
【0067】
(実施例2)
実施例2の作業機は、実施例1の作業機と略同様の構成を有する。以下では、両者の相違点についてのみ説明する。
【0068】
図9に示すように、第2操作力付与機構78は、ガイド部材84と、コンタクト部材86と、第2コイルバネ88を備える代わりに、板バネ102を備える。板バネ102は、ハウジング12に設けられたバネ支持部104に支持される。板バネ102は、ロックレバー54が押し込まれる過程においてロックレバー54に対して当接するストッパ部106を備える。ストッパ部106は、当接面96(
図4参照)と同様の機能を有する当接面108を備える。
【0069】
(実施例3)
実施例3の作業機は、実施例1の作業機と略同様の構成を有する。以下では、両者の相違点についてのみ説明する。
【0070】
図10に示すように、ロックレバー54は、実施例1とは異なり、干渉部68を備えていない。このため、トリガレバー52は、ロックレバー54の押し込み量θに関わらず、常にアンロックされている。
【0071】
操作機構44は、ロックレバー54の押し込み量θが切替押し込み量θsに達したか否かを検出するセンサ110(例えば、マイクロスイッチ)を備える。センサ110は、制御ユニット26に電気的に接続されており、制御ユニット26に対して検出結果を出力するように構成される。具体的には、押し込み量θが切替押し込み量θs未満である場合、センサ110は制御ユニット26に対してロックオン信号を出力する。押し込み量θが切替押し込み量θs以上である場合、センサ110は制御ユニット26に対してロックオフ信号を出力する。本実施例の制御ユニット26は、センサ110からロックオン信号が出力される場合、トリガスイッチ50からトリガオン信号が出力されていたとしても、電動モータ28(
図2参照)を動作させない。即ち、作業部10(
図1参照)を駆動させない。制御ユニット26は、センサ110からロックオフ信号が出力されている場合に限り、トリガスイッチ50からトリガオン信号が出力されることに応じて電動モータ28を動作させる。即ち、作業部10を駆動させる。
【0072】
本実施例では、押し込み量θが切替押し込み量θs未満である場合、トリガレバー52への操作に応じた作業部10(
図1参照)の駆動が禁止される。押し込み量θが切替押し込み量θs以上である場合、トリガレバー52への操作に応じた作業部10の駆動が許容される。
【0073】
(変形例)
操作機構44が設けられる作業機は、チェーンソー2以外であってもよい。例えば、作業機は、草刈機であってもよいし、ヘッジトリマであってもよい。
【0074】
作業機は、電動モータ28以外の原動機(例えば、エンジン)を備えてもよい。当該原動機は、トリガレバー52が操作されることに応じて、作業部10を駆動させてもよい。
【0075】
操作機構44は、トップハンドル14ではなくサイドハンドル16に設けられてもよい
【0076】
操作力調整機構56は、第1操作力付与機構76を備えておらず、第2操作力付与機構78のみを備えてもよい。
【0077】
上記の実施例とは異なる方法で、トリガレバー52のロック/アンロックが切り替えられてもよい。例えば、トリガレバー52に電子ロックが設けられてもよく、ロックレバー54の押し込み量θに応じて電子ロックが作動して、トリガレバー52のロック/アンロックが切り替えられてもよい。
【0078】
操作機構44は、電源ボタン48を備えていなくてもよい。この場合、チェーンソー2に電池パックBが装着されている間、チェーンソー2の電源は常にオンとされてもよい。
【0079】
グリップ46におけるトリガレバー52とロックレバー54の位置関係は、適宜変更されてもよい。例えば、トリガレバー52とロックレバー54の両方が、グリップ46の上部に配置されてもよい。
【0080】
第2操作力付与機構78の位置は、適宜変更されてもよい。例えば、第2操作力付与機構78は、ロックレバー54の直下に配置されてもよい。
【0081】
ロックレバー54には、樹脂材料以外の材料(例えば、アルミニウム)が用いられてもよい。
【0082】
コンタクト部材86には、樹脂材料以外の材料(例えば、アルミニウム)が用いられてもよい。
【0083】
図11に示すように、第1押し込み量θ1、第2押し込み量θ2、第3押し込み量θ3、および切替押し込み量θsの数値は、適宜変更されてもよい。例えば、第2押し込み量θ2は、切替押し込み量θsの1/2を上回ってもよい。また、第1の力P1および第2の力P2の数値は、適宜変更されてもよい。第1の力P1は、
図8に示す場合よりも小さい値となっていてもよい。例えば、第1の力P1は、20N未満であってもよい。第2の力P2は、
図8に示す場合よりも大きい値となっていてもよい。例えば、第2の力P2は、5Nを上回ってもよい。
【0084】
図12に示すように、ロックレバー54を押し込む過程で、操作力Fの急増・急減によって形成される操作力ピークOPが、複数現れてもよい。操作力ピークOPのピーク値P1´、P1´´と、操作力ピークOPを越えた直後の値P2´、P2´´との間に、上記の実施例における第1の力P1と第2の力P2の間の関係が適用されてもよい。
【0085】
(対応関係)
1つまたはそれ以上の実施形態において、チェーンソー2(作業機の例)は、作業部10と、作業部10を駆動するための電動モータ28(原動機の例)と、ユーザが操作するための操作機構44と、を備える。操作機構44は、ユーザが把持可能なグリップ46と、グリップ46に設けられ、作業部10を駆動するためのトリガレバー52(トリガの例)と、グリップ46に対して下方向(所定の方向の例)に押し込み可能に設けられたロックレバー54(ロック部材の例)と、ロックレバー54の押し込み操作に要する操作力Fを調整するための操作力調整機構56と、を備える。ロックレバー54は、ロックレバー54の押し込み量θが切替押し込み量θs(所定量の例)未満である場合、トリガレバー52をロックし、押し込み量θが切替押し込み量θs以上である場合、トリガレバー52をアンロックする。操作力調整機構56は、ロックレバー54が押し込まれる過程において、押し込み量θが切替押し込み量θsに達する前に、操作力Fを第1の力P1まで増大させる。操作力調整機構56は、ロックレバー54が第1の力P1を受けてさらに押し込まれる場合、操作力Fを第1の力P1よりも小さくする。
【0086】
上記の構成によれば、トリガレバー52がアンロックされる位置までロックレバー54を押し込むためには、第1の力P1でロックレバー54を押し込む必要がある。第1の力P1を大きくすることで、ユーザの意思に反してトリガレバー52がアンロックされることが抑制される。その結果、ユーザの意思に反してトリガレバー52がオンとなることが抑制されるので、ユーザの意思に反して作業部10が駆動されることが抑制される。さらに上記の構成によれば、ロックレバー54が第1の力P1で押し込まれると、操作力Fが第1の力P1よりも小さくなる。即ち、ユーザの意思が確認された後は、操作力Fが比較的小さくなる。このため、ユーザが意図的にロックレバー54を押し込んでいる状況では、ユーザの操作負担を低減できる。
【0087】
1つまたはそれ以上の実施形態において、チェーンソー2(作業機の例)は、作業部10と、作業部10を駆動するための電動モータ28(原動機の例)と、ユーザが操作するための操作機構44と、を備える。操作機構44は、ユーザが把持可能なグリップ46と、グリップ46に設けられ、作業部10を駆動するためのトリガレバー52(トリガの例)と、グリップ46に対して下方向(所定の方向の例)に押し込み可能に設けられたロックレバー54(ロック部材の例)と、ロックレバー54の押し込み操作に要する操作力Fを調整するための操作力調整機構56と、を備える。ロックレバー54の押し込み量θが切替押し込み量θs(所定量の例)未満である場合、トリガレバー52への操作に応じた作業部10の駆動が禁止される。押し込み量θが切替押し込み量θs以上である場合、トリガレバー52への操作に応じた作業部10の駆動が許容される。操作力調整機構56は、ロックレバー54が押し込まれる過程において、押し込み量θが切替押し込み量θsに達する前に、操作力Fを第1の力P1まで増大させる。操作力調整機構56は、ロックレバー54が第1の力P1を受けてさらに押し込まれる場合、操作力Fを第1の力P1よりも小さくする。
【0088】
上記の構成によれば、トリガレバー52への操作に応じた作業部10の駆動が許容される位置までロックレバー54を押し込むためには、第1の力P1でロックレバー54を押し込む必要がある。第1の力P1を大きくすることで、ユーザの意思に反して作業部10が駆動されることが抑制される。さらに上記の構成によれば、ロックレバー54が第1の力P1で押し込まれると、操作力Fが第1の力P1よりも小さくなる。即ち、ユーザの意思が確認された後は、操作力Fが比較的小さくなる。このため、ユーザが意図的にロックレバー54を押し込んでいる状況では、ユーザの操作負担を低減できる。
【0089】
1つまたはそれ以上の実施形態において、トリガレバー52は、ユーザが手のひらでロックレバー54を押し込むようにグリップ46を把持した時に、グリップ46を把持した手の指で操作可能な位置に配置されている。
【0090】
上記の構成によれば、ユーザは、グリップ46を握りこむ動作によって、ロックレバー54とトリガレバー52のそれぞれに対して力を掛けることができる。このため、ロックレバー54とトリガレバー52の同時操作を意図するユーザにとって、ロックレバー54とトリガレバー52のそれぞれに対して力を掛けやすくなっている。
【0091】
1つまたはそれ以上の実施形態において、ロックレバー54が設けられている側からグリップ46を見た時、トリガレバー52はグリップ46に隠れた位置に配置されている。
【0092】
上記の構成では、ロックレバー54を押し込む方向と、トリガレバー52を押し込む方向が、略反対方向となる。これにより、ユーザがグリップ46を握らない限り、ロックレバー54とトリガレバー52が同時に操作されることは起こり得ない。従って、ユーザの意思に反して作業部10が駆動されることをより効果的に抑制できる。
【0093】
1つまたはそれ以上の実施形態において、操作力調整機構56は、ロックレバー54が押し込まれる過程において、ロックレバー54に当接することにより、操作力Fを増大させるコンタクト部材86(具体的には、第1当接面98)を備える。あるいは、操作力調整機構56は、ストッパ部106を備える。ロックレバー54は、押し込み量θが切替押し込み量θsに達するまでの間に、コンタクト部材86(または、ストッパ部106)に当接し、コンタクト部材86(または、ストッパ部106)を乗り越える。
【0094】
上記の構成によれば、トリガレバー52がアンロックされる位置(または、トリガレバー52への操作に応じた作業部10の駆動が許容される位置)までロックレバー54を押し込む過程において、ロックレバー54がコンタクト部材86(または、ストッパ部106)に当接することで、操作力Fが増大する。一方、トリガレバー52がアンロックされる位置(または、トリガレバー52への操作に応じた作業部10の駆動が許容される位置)までロックレバー54が押し込まれた状態では、ロックレバー54は既にコンタクト部材86(または、ストッパ部106)を乗り越えているため、操作力Fが比較的小さくなる。従って、上記の構成によれば、ユーザの意思に反して作業部10が駆動されることを抑制できるとともに、ユーザが意図的にロックレバー54を押し込んでいる状況では、ユーザの操作負担を低減できる。
【0095】
1つまたはそれ以上の実施形態において、ロックレバー54には樹脂材料が用いられる。コンタクト部材86には樹脂材料が用いられる。
【0096】
グリップ46の内部には、任意の電装部品間を接続する導線が設けられることがある。仮にコンタクト部材86に導電性の高い材料(例えば、金属材料)が用いられると、コンタクト部材86が、導線を意図しない箇所に導通させるおそれがある。上記の構成によれば、コンタクト部材86に樹脂材料、即ち、導電性の低い材料が用いられる。従って、導線が意図しない箇所に導通してしまうことを抑制できる。
【0097】
1つまたはそれ以上の実施形態において、原動機は、電動モータ28である。
【0098】
電動モータ28は、例えば内燃機関と比べて、動作に伴う振動・騒音が小さい。このため、ユーザの意思に反して作業部10が駆動された時に、ユーザがそのことに気づかない可能性がある。この状況は好ましくないため、ユーザの意思に反して作業部10が駆動されることを抑制する必要性が特に高いと考えられる。従って、上記の構成によれば、ユーザの意思に反して電動モータ28の動作が開始されることを抑制する効果が顕著に発揮される。
【0099】
1つまたはそれ以上の実施形態において、操作力調整機構56は、ロックレバー54が押し込まれる過程において、押し込み量θが切替押し込み量θsの1/2に達する前に、操作力Fを第1の力P1まで増大させる。
【0100】
上記の構成によれば、ロックレバー54の押し込み量θが小さい段階から大きな操作力Fを発生させることができる。これにより、ユーザの意思に反して作業部10が駆動されることをより効果的に抑制できる。
【0101】
1つまたはそれ以上の実施形態において、第1の力P1は、20N以上である。
【0102】
上記の構成によれば、トリガレバー52がアンロックされる位置(または、トリガレバー52への操作に応じた作業部10の駆動が許容される位置)までロックレバー54を押し込むためには、少なくとも20Nの操作力Fが必要となる。従って、ユーザの意思に反して作業部10が駆動されることをより効果的に抑制できる。
【0103】
1つまたはそれ以上の実施形態において、操作力調整機構56は、ロックレバー54が第1の力P1を受けてさらに押し込まれる場合、操作力Fを第1の力P1よりも小さい第2の力P2まで減少させる。第1の力P1と第2の力P2の差は、15N以上である。
【0104】
上記の構成によれば、ロックレバー54が第1の力P1で押し込まれた後の操作力Fの減少幅が少なくとも15Nとなる。このため、ユーザが意図的にロックレバー54を押し込んでいる状況でのユーザの操作負担を、より効果的に低減することができる。
【0105】
1つまたはそれ以上の実施形態において、操作力調整機構56は、ロックレバー54が第1の力P1を受けてさらに押し込まれる場合、操作力Fを第1の力P1よりも小さい第2の力P2まで減少させる。第2の力P2は、5N以下である。
【0106】
上記の構成によれば、ロックレバー54が第1の力P1で押し込まれた後の操作力Fは、5Nまで低減される。このため、ユーザが意図的にロックレバー54を押し込んでいる状況でのユーザの操作負担を、より効果的に低減することができる。
【符号の説明】
【0107】
2 :チェーンソー
4 :本体
6 :ガイドバー
8 :ソーチェーン
10 :作業部
12 :ハウジング
14 :トップハンドル
16 :サイドハンドル
18 :ハンドガード
20 :スプロケットカバー
22 :左側ハウジング
24 :右側ハウジング
24a :ボルト
24b :ナット
26 :制御ユニット
28 :電動モータ
30 :オイルタンク
32 :オイルポンプ
34 :駆動シャフト
36 :補充用開口
38 :キャップ
40 :導入管
42 :導出管
44 :操作機構
46 :グリップ
48 :電源ボタン
50 :トリガスイッチ
52 :トリガレバー
54 :ロックレバー
56 :操作力調整機構
58 :第1回転軸
60 :トリガレバー本体
62 :スイッチ押込部
64 :第2回転軸
66 :ロックレバー本体
68 :干渉部
70 :バネ受け突起
72 :コンタクト突起
74 :空洞部
76 :第1操作力付与機構
78 :第2操作力付与機構
80 :第1コイルバネ
82 :バネ受け部
84 :ガイド部材
86 :コンタクト部材
88 :第2コイルバネ
90 :ガイド部
92 :バネ受け部
94 :係止部
96 :当接面
98 :第1当接面
100 :第2当接面
102 :板バネ
104 :バネ支持部
106 :ストッパ部
108 :当接面
110 :センサ
B :電池パック
S :載置面