(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152386
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】光ネットワーク管理装置及び光ネットワーク管理方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/079 20130101AFI20241018BHJP
H04B 10/2507 20130101ALI20241018BHJP
【FI】
H04B10/079 150
H04B10/2507
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066541
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】小田 祥一朗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 節生
(72)【発明者】
【氏名】田島 一幸
(72)【発明者】
【氏名】江藤 基比古
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA17
5K102AD01
5K102AH02
5K102AH26
5K102AH27
5K102KA01
5K102KA02
5K102KA05
5K102KA06
5K102MH05
5K102MH14
5K102MH21
5K102PB11
5K102PC11
5K102PH01
5K102PH11
5K102PH31
5K102PH47
5K102PH48
5K102PH49
5K102RD26
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】消費電力を抑えた光伝送装置を用いて光ネットワークの特性を推定する光ネットワーク管理装置及び光ネットワーク管理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】光ネットワーク管理装置は、電気的なデータ信号の入力に基づいて光送信器から送信され、光伝送路を経由して光伝送装置の受光器が受光する第1信号光の強度の波形を表す第1情報を収集する収集部と、前記データ信号と、前記光送信器と前記光伝送路と前記光伝送装置とを含む光ネットワークの特性を表す光ネットワークモデルとに基づいて、前記データ信号に応じた電界情報を算出することにより、前記第1信号光に相当する仮想的な第2信号光の強度の波形を表す第2情報を生成する生成部と、前記第1情報と前記第2情報に基づいて、前記光ネットワークモデルのパラメータを算出することにより、前記光ネットワークの前記特性を推定する推定部と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的なデータ信号の入力に基づいて光送信器から送信され、光伝送路を経由して光伝送装置の受光器が受光する第1信号光の強度の波形を表す第1情報を収集する収集部と、
前記データ信号と、前記光送信器と前記光伝送路と前記光伝送装置とを含む光ネットワークの特性を表す光ネットワークモデルとに基づいて、前記データ信号に応じた電界情報を算出することにより、前記第1信号光に相当する仮想的な第2信号光の強度の波形を表す第2情報を生成する生成部と、
前記第1情報と前記第2情報に基づいて、前記光ネットワークモデルのパラメータを算出することにより、前記光ネットワークの前記特性を推定する推定部と、
を有する光ネットワーク管理装置。
【請求項2】
前記第1情報と前記第2情報とを比較する比較部を有し、
前記推定部は、前記第1情報と前記第2情報との比較結果が閾値以下になるまで前記光ネットワークモデルのパラメータを更新することにより、前記光ネットワークの前記特性を推定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光ネットワーク管理装置。
【請求項3】
前記受光器は、前記光伝送装置の分波器で分波された後に前記光伝送装置の波長選択部に入力されて選択された波長の前記第1信号光を受光する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光ネットワーク管理装置。
【請求項4】
前記受光器は、前記光ネットワークにおいて最下流に配置された特定の光伝送装置に設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の光ネットワーク管理装置。
【請求項5】
前記光ネットワークモデルは、前記光送信器の特性を表す光送信器モデルと、前記光伝送路の特性を表す光伝送路モデルと、前記光伝送装置の特性を表す光伝送装置モデルとを含む、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光ネットワーク管理装置。
【請求項6】
前記推定部は、前記光送信器モデルのパラメータである第1パラメータを推定して確定した後に前記光伝送路モデルのパラメータである第2パラメータを推定し、前記第2パラメータを推定して確定した後に前記光伝送装置モデルのパラメータである第3パラメータを推定して確定することで、前記光ネットワークの前記特性を推定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の光ネットワーク管理装置。
【請求項7】
前記光伝送路モデルのパラメータは、偏波回転、偏波依存損失、ファイバ非線形性、偏波モード分散、波長分散、ファイバ損失、分散スロープのいずれかを含み、
前記生成部は、前記偏波回転、前記ファイバ非線形性、前記偏波モード分散、前記波長分散、前記偏波依存損失、前記ファイバ損失、前記分散スロープの少なくとも1つを選択して、前記第2情報を生成する、
ことを特徴とする請求項5に記載の光ネットワーク管理装置。
【請求項8】
前記光伝送装置モデルのパラメータは、偏波依存損失、光フィルタによる信号帯域狭窄、偏波モード分散、偏波回転のいずれかを含み、
前記生成部は、前記偏波依存損失、前記信号帯域狭窄、前記偏波モード分散、前記偏波回転の少なくとも1つを選択して、前記第2情報を生成する、
ことを特徴とする請求項5に記載の光ネットワーク管理装置。
【請求項9】
前記光ネットワークモデルは、前記光送信器の特性を表す光送信器モデルと、前記光伝送路の特性を表す光伝送路モデルと前記光伝送装置の特性を表す光伝送装置モデルとの複数の組合せと、を含み、
前記推定部は、前記光送信器の特性を表す光送信器モデルのパラメータである第1パラメータを推定して確定した後に、前記光伝送路モデルのパラメータである第2パラメータと、前記光伝送装置モデルのパラメータである第3パラメータを、前記組合せごとに前記光ネットワークの上流から下流にかけて段階的に推定して確定することで、前記光ネットワークの前記特性を推定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光ネットワーク管理装置。
【請求項10】
電気的なデータ信号の入力に基づいて光送信器から送信され、光伝送路を経由して光伝送装置の受光器が受光する第1信号光の強度の波形を表す第1情報を収集し、
前記データ信号と、前記光送信器と前記光伝送路と前記光伝送装置とを含む光ネットワークの特性を表す光ネットワークモデルとに基づいて、前記データ信号に応じた電界情報を算出することにより、前記第1信号光に相当する仮想的な第2信号光の強度の波形を表す第2情報を生成し、
前記第1情報と前記第2情報に基づいて、前記光ネットワークモデルのパラメータを算出することにより、前記光ネットワークの前記特性を推定する、
処理をコンピュータが実行する光ネットワーク管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は光ネットワーク管理装置及び光ネットワーク管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光送信器と光受信器との間には、光伝送路として、例えば数十kmから数千kmの光ファイバが延びている。光伝送路の途中にはROADM(Reconfigurable. Optical Add/Drop Multiplexer)装置といった中継ノード(以下、光伝送装置という)が配置されている。光伝送装置によって光伝送路は複数のスパン(区間)に分けられている(例えば特許文献1及び非特許文献1参照)。
【0003】
光送信器は、例えばDAC(Digital-to-Analog Converter)、ドライバアンプ、変調器及び光源(具体的にはレーザ光源)などを含んでいる。光受信器は、例えばデジタルコヒーレント受信器であって、90°ハイブリッド回路、フォトダイオード、光源及びADC(Analog to Digital Converter)などを含んでいる(例えば特許文献2参照)。
【0004】
光送信器や光伝送装置、光ファイバといった光ネットワークの構成要素には、構成要素特有の線形応答(例えば周波数特性)及び非線形応答(例えば信号電圧の飽和特性)の特性がある。これらの特性により、光ネットワークにおける信号光の品質が制限される。信号光の品質低下を補償するためには、線形応答及び非線形応答の特性を推定する必要がある。線形応答及び非線形応答は、光送信器や光伝送装置、光ファイバなどの個体、環境及びパラメータによって大きく相違する。そのため、例えば線形応答及び非線形応答のパラメータを推定し、品質低下を補償することが想定される(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-133725号公報
【特許文献2】特開2022-060607号公報
【特許文献3】国際公開第2021/199317号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】F.N.Hauske et al., “Optical Performance Monitoring in Digital Coherent Receivers”, IEEE Journal of Lightwave Technology, Vol 27, No. 16, pp.3623-3631, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、90°ハイブリッド回路、フォトダイオード、光源及びADCといった部品を含む光伝送装置によってパラメータを推定する場合、消費電力が増大する可能性がある。例えば、パラメータの推定には、上記部品を利用した電界情報の生成が求められるが、電界情報を生成する際にそれぞれの部品が電力を消費する。これにより、光伝送装置によってパラメータを推定する場合、消費電力が増大する可能性がある。
【0008】
そこで、1つの側面では、消費電力を抑えた光伝送装置を用いて光ネットワークの特性を推定する光ネットワーク管理装置及び光ネットワーク管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの実施態様では、光ネットワーク管理装置は、電気的なデータ信号の入力に基づいて光送信器から送信され、光伝送路を経由して光伝送装置の受光器が受光する第1信号光の強度の波形を表す第1情報を収集する収集部と、前記データ信号と、前記光送信器と前記光伝送路と前記光伝送装置とを含む光ネットワークの特性を表す光ネットワークモデルとに基づいて、前記データ信号に応じた電界情報を算出することにより、前記第1信号光に相当する仮想的な第2信号光の強度の波形を表す第2情報を生成する生成部と、前記第1情報と前記第2情報に基づいて、前記光ネットワークモデルのパラメータを算出することにより、前記光ネットワークの前記特性を推定する推定部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
消費電力を抑えた光伝送装置を用いて光ネットワークの特性を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】光ネットワーク管理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】変調部と光伝送装置とモデル部の一例を示すブロック図である。
【
図3】光ネットワーク管理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】光ネットワーク管理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】(a)は実施例に係る光伝送装置の一例を示すブロック図である。(b)は比較例に係る光伝送装置の一例を示すブロック図である。
【
図6】光ネットワーク管理装置の機能構成の他の一例を示すブロック図である。
【
図7】変調部と光伝送装置とモデル部の他の一例を示すブロック図である。
【
図8】(a)は光ファイバモデルにおける偏波回転の伝達関数である。(b)は光ファイバモデル及び光伝送装置モデルにおける偏波依存損失の伝達関数である。(c)は光伝送装置モデルにおけるフィルタリングの伝達関数である。
【
図9】光ネットワーク管理装置の動作の他の一例を示すフローチャートである。
【
図10】第1情報と光送信器モデルに基づく第2情報との比較の一例を説明する図である。
【
図11】第1情報と光ファイバモデルに基づく第2情報との比較の一例を説明する図である。
【
図12】第1情報と光伝送装置モデルに基づく第2情報との比較の一例を説明する図である。
【
図13】第1情報と光伝送装置モデルに基づく第2情報との比較の他の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本件を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1に示すように、光ネットワーク管理装置100は光ネットワークNWと接続されている。光ネットワーク管理装置100は光ネットワークNWを管理する。光ネットワークNWは光送信器200と複数の光ファイバ#1,#2,・・・と複数の光伝送装置#1,#2,・・・,#Nと光受信器300とを含んでいる。光ファイバ#1,#2などは光伝送路の一例である。光伝送装置#Nは特定の光伝送装置の一例である。
【0014】
光送信器200は光ネットワークNWの最上流に配置されている。光受信器300は光ネットワークNWの最下流に配置されている。光送信器200は光ファイバ#1を介して光伝送装置#1と接続されている。光伝送装置#1は光ファイバ#2を介して光伝送装置#2と接続されている。光伝送装置#2から光伝送装置#Nまでの接続形態については、光伝送装置#1と光伝送装置#2との接続形態と基本的に同様であるため、詳細な説明は省略する。光伝送装置#Nは光ファイバを介して光受信器300と接続されている。
【0015】
光送信器200は時系列なトレーニング信号を含む電気的な既知のデータ信号x(t)に応じた信号光(例えば波長多重信号光など)を送信する。より詳しくは、光送信器200にデータ信号x(t)が入力されると、光送信器200は後述する変調部210によってデータ信号x(t)に応じた信号光を生成して送信する。光送信器200から送信された信号光は、光ファイバ#1、光伝送装置#1、光ファイバ#2、光伝送装置#2、・・・、光伝送装置#Nを経由して光受信器300に導かれる。これにより、光受信器300は信号光を受信する。
【0016】
光ネットワーク管理装置100は、割当部110、選択部120、判定部130、設定部140、及びパラメータDB(Data Base)150を含んでいる。また、光ネットワーク管理装置100は、収集部160、モデル部170、比較部180、及び推定部190を含んでいる。
【0017】
割当部110は、オペレーション端末10から発信された光送信器200と光受信器300との接続要求を受け付ける。オペレーション端末10は例えばPC(Personal Computer)を含んでいる。割当部110は、接続要求を受け付けると、パラメータDB150を検索して、複数の波長の中から現時点で運用中ではない未割当の(又は空いている)波長を選択する。割当部110は、波長を選択すると、光送信器200から光受信器300へのデータ信号x(t)の送信にこの波長を割り当てる。割当部110は、波長の割り当てと併せて、データ信号x(t)の伝送経路を選択する。
【0018】
選択部120は、割当部110による波長の割り当てと伝送経路の選択の終了を検出すると、パラメータDB150を検索して、信号光の伝送に効率的な信号種を選択する。例えば、選択部120は、信号種として、64QAM(Quadrature Amplitude Modulation)やQPSK(Quadrature Phase-Shift Keying)といった光変調方式を選択する。また、選択部120は、信号種として、64Gbaudや128Gbaudといったボーレート(変調速度)を選択する。さらに、選択部120は、信号種として、200Gbpsや400Gbpsといったビットレート(伝送速度)を選択する。
【0019】
判定部130は選択部120による信号種の選択の終了を検出すると、パラメータDB150を検索して、選択した信号種に基づいて実際に伝送が可能であるか否かを判定する。伝送が不可能である場合、判定部130は選択部120及び割当部110を介してオペレーション端末10に伝送が不可能である旨を通知する。伝送が可能である場合、伝送条件を設定部140に通知する。判定部130が設定部140に通知する伝送条件は、割当部110が割り当てた波長及び選択した伝送経路、並びに選択部120が選択した信号種を含んでいる。設定部140は判定部130から通知された伝送条件を光伝送装置#1,#2,・・・,#Nに設定する。
【0020】
収集部160は信号光の強度の波形を表す情報を光伝送装置#Nから第1情報として収集する。すなわち、光送信器200から送信され、光ファイバ#1,#2,・・・や光伝送装置#1,#2,・・・,光伝送装置#N-1を経由した信号光の強度の波形を表す情報を収集部160は第1情報として収集する。
【0021】
モデル部170は、光送信器200に入力されるデータ信号x(t)と、光ネットワークNWの特性(又は状態)を数式モデルで表現した伝達関数とに基づいて、データ信号x(t)に応じた電界情報を算出する。詳細は後述するが、伝達関数は様々なパラメータ(例えば偏波依存損失PDLや偏波回転の位相回転量θなど)を含んでいる。モデル部170は、電界情報を算出することにより、上記信号光に相当する仮想的な信号光の強度の波形を表す情報を第2情報として生成する。
【0022】
比較部180は、上述した第1情報と第2情報とを比較する。推定部190は第1情報と第2情報との比較結果が閾値以下になるまで伝達関数のパラメータを更新する。推定部190は、比較結果が閾値以下になると、更新を停止、閾値以下になった第2情報に基づいて、伝達関数のパラメータを推定する。推定部190は、パラメータを推定すると、推定したパラメータに基づいて、パラメータDB150を更新する。
【0023】
図2を参照して、第1実施形態に係る光送信器200、光伝送装置#N、及びモデル部170の詳細について説明する。なお、光伝送装置#1,#2の構成は基本的に光伝送装置#Nの構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0024】
図2に示すように、光送信器200は変調部210を含んでいる。変調部210は波形整形部211、DAC(Digital Analogue Converter)212、ドライバアンプ213、変調器214、及び光源215を含んでいる。波形整形部211は入力されたデータ信号x(t)の波形を整形して、DAC212に出力する。DAC212はデータ信号x(t)をデジタル形式からアナログ形式に変換して、ドライバアンプ213に出力する。
【0025】
ドライバアンプ213はデータ信号x(t)を増幅して変調器214に出力する。変調器214は光源215から出力されたレーザ光をデータ信号x(t)に基づいて変調することにより信号光を生成し、光ファイバ#1に送信する。これにより、信号光は光ファイバ#1などを経由して光伝送装置#Nに導かれる。
【0026】
光伝送装置#Nは、前段光アンプ410、デマルチプレクサ420、マルチプレクサ430、後段光アンプ440、分岐器450、波長選択部460、及び検波部470を含んでいる。検波部470はPD(Photodiode)471とADC(Analogue Digital Converter)472とを含んでいる。デマルチプレクサ420は分波器の一例である。PD471は受光器の一例である。
【0027】
光送信器200から送信された信号光は光ファイバ#1などを経由して光伝送装置#Nの前段光アンプ410に入力される。前段光アンプ410は信号光を増幅してデマルチプレクサ420に出力する。デマルチプレクサ420は信号光を分波して、一部の波長の信号光を分岐部に出力し、残りの波長の信号光をマルチプレクサ430に出力する。マルチプレクサ430はデマルチプレクサ420から出力された信号光と挿入部から出力された信号光を合波して後段光アンプ440に出力する。後段光アンプ440は信号光を増幅して分岐器450に出力する。
【0028】
分岐器450は信号光を分岐して波長選択部460に導く。なお、分岐器450は、例えば光カプラによって実現することができる。また、分岐器450に代えて、信号光を分波して波長選択部460に導く分波器を採用してもよい。波長選択部460は信号光に含まれる複数の波長のいずれかを選択し、選択した波長の信号光を検波部470に出力する。なお、波長選択部460は、例えば電子回路によって実現することができる。検波部470のPD471は信号光の強度の波形を表す情報を生成する。ADC472はPD471が生成した情報をアナログ形式からデジタル形式に変換する。デジタル形式に変換された情報は収集部160によって第1情報y(t)として収集される。
【0029】
光ネットワーク管理装置100が備えるモデル部170は、光ネットワークモデル(N-mdlと表記)171と生成部172とを含んでいる。光ネットワークモデル171は、光ネットワークNWの特性(又は状態)を数式モデルで表現した伝達関数Hnwを含んでいる。光ネットワークモデル171は伝達関数Hnwを用いて、光伝送装置#Nの出力信号を計算する。伝達関数Hnwは推定対象のパラメータを含んでいる。伝達関数Hnwは後述する各種の伝達関数Hmod,Hfiber1,Htrans1などを適宜選択することで事前に決定することができる。伝達関数Hnwは光ネットワークNWを構成する要素に対応付けることができる。
【0030】
光ネットワークモデル171は、データ信号x(t)と伝達関数Hnwとに基づいて、光送信器200から送信され、光ファイバ#1や光伝送装置#1などを経由して光伝送装置#Nから出力される信号光の電界情報を算出する。生成部172は、電界情報に基づいて、光伝送装置#Nから出力される信号光に相当する仮想的な信号光の強度の波形を表す情報を第2情報|Hnwx(t)|2として生成し、比較部180に出力する。これにより、比較部180は収集部160が収集した第1情報y(t)と生成部172から出力された第2情報|Hnwx(t)|2とを比較することができる。推定部190は、比較結果が閾値以下になると、閾値以下になった第2情報|Hnwx(t)|2に基づいて、光ネットワークモデル171の伝達関数Hnwのパラメータを算出して更新することで推定する。
【0031】
図3を参照して、光ネットワーク管理装置100のハードウェア構成について説明する。
【0032】
光ネットワーク管理装置100は、プロセッサとしてのCPU(Central Processing Unit)100Aと、メモリとしてのRAM(Random Access Memory)100B及びROM(Read Only Memory)100Cを含んでいる。光ネットワーク管理装置100は、ネットワークI/F(インタフェース)100D及びHDD(Hard Disk Drive)100Eを含んでいる。HDD(Hard Disk Drive)100Eに代えて、SSD(Solid State Drive)を採用してもよい。
【0033】
光ネットワーク管理装置100は、必要に応じて、入力I/F100F、出力I/F100G、入出力I/F100H、ドライブ装置100Iの少なくとも1つを含んでいてもよい。CPU100Aからドライブ装置100Iまでは、内部バス100Jによって互いに接続されている。すなわち、光ネットワーク管理装置100はコンピュータによって実現することができる。
【0034】
入力I/F100Fには入力装置710が接続される。入力装置710としては例えばキーボードやマウス、タッチパネルなどがある。出力I/F100Gには表示装置720が接続される。表示装置720としては例えば液晶ディスプレイなどがある。入出力I/F100Hには半導体メモリ730が接続される。半導体メモリ730としては、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリやフラッシュメモリなどがある。入出力I/F100Hは半導体メモリ730に記憶された光ネットワーク管理プログラムを読み取る。入力I/F100F及び入出力I/F100Hは例えばUSBポートを備えている。出力I/F100Gは例えばディスプレイポートを備えている。
【0035】
ドライブ装置100Iには可搬型記録媒体740が挿入される。可搬型記録媒体740としては、例えばCD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)といったリムーバブルディスクがある。ドライブ装置100Iは可搬型記録媒体740に記録された光ネットワーク管理プログラムを読み込む。ネットワークI/F100Dは例えばLANポートや通信回路などを備えている。通信回路は有線通信回路と無線通信回路のいずれか一方又は両方を含んでいる。ネットワークI/F100Dは光送信器200や光伝送装置#1,#2,・・・,#Nと接続されている。
【0036】
RAM100BにはROM100C、HDD100E、半導体メモリ730の少なくとも1つに記憶された光ネットワーク管理プログラムがCPU100Aによって一時的に格納される。RAM100Bには可搬型記録媒体740に記録された光ネットワーク管理プログラムがCPU100Aによって一時的に格納される。格納された光ネットワーク管理プログラムをCPU100Aが実行することにより、CPU100Aは後述する各種の機能を実現し、また、後述する各種の処理を含む光ネットワーク管理方法を実行する。なお、光ネットワーク管理プログラムは後述するフローチャートに応じたものとすればよい。
【0037】
図4を参照して、第1実施形態に係る光ネットワーク管理装置100の動作について説明する。
【0038】
図4に示すように、まず、収集部160は第1情報を収集する(ステップS1)。より詳しくは、収集部160は光伝送装置#Nが生成した情報を第1情報として収集する。第1情報を収集すると、推定部190はパラメータ初期値を設定する(ステップS2)。より詳しくは、推定部190は光ネットワークNWの設計で決定した数値をパラメータ初期値として光ネットワークモデル171に設定する。
【0039】
パラメータ初期値を設定すると、モデル部170は第2情報を生成する(ステップS3)。より詳しくは、光ネットワークモデル171がデータ信号x(t)に基づいて電界情報を生成し、生成部172が電界情報に基づいて第2情報を生成する。第2情報を生成すると、比較部180は収集部160が収集した第1情報と生成部172が生成した第2情報とを比較し(ステップS4)、閾値以下であるか否かを判断する(ステップS5)。すなわち、比較部180による判定は以下の判定式によって表すことができる。
<判定式>
第1情報y(t)-第2情報|Hnw x(t)|2≦閾値Zth
【0040】
第1情報y(t)-第2情報|Hnw x(t)|2との比較結果である差分が閾値Zthより大きい場合(ステップS5:NO)、推定部190は伝達関数Hnwのパラメータを更新し(ステップS6)、モデル部170にステップS3の処理の実行を要求する。これにより、モデル部170は更新後のパラメータを含む伝達関数Hnwを用いて改めて第2情報を生成し、比較部180が第1情報と第2情報とを比較する。このように、光ネットワーク管理装置100は第1情報と第2情報の差分に閾値より大きな乖離がある場合、閾値以下になるまでパラメータを更新する処理を繰り返して、この乖離を十分に抑える。
【0041】
そして、第1情報y(t)-第2情報|Hnw x(t)|2との比較結果である差分が閾値Zth以下である場合(ステップS5:YES)、推定部190は処理を終了する。すなわち、最後に更新されたパラメータであれば、第1情報と第2情報との乖離が十分に抑えられたと認定することができる。このように、推定部190は光ネットワークモデル171の伝達関数Hnwに含まれるパラメータを更新することで、光ネットワークモデル171のパラメータを推定することができる。
【0042】
この結果、
図5(a)に示すように、第1実施形態に係る光伝送装置#Nであれば、1つのPD471と1つのADC472を含む簡易な検波部470によって光ネットワークモデル171のパラメータを推定することができる。例えば、
図5(b)に示すように、比較例に係る光伝送装置#Pにデジタルコヒーレント受信型のチャネルモニタ480とパラメータ推定回路490を設けた場合、光伝送装置#Nの消費電力は増大する。これは、チャネルモニタ480が4つのPD481とADC482と90°ハイブリッド回路483と光源484とを部品として含むためである。
【0043】
例えば、4つのPD481は信号光のX偏波のI成分及びQ成分、Y偏波のI成分とQ成分に用いられ、それぞれ電力を消費する。また、90°ハイブリッド回路483と光源484もそれぞれ電力を消費する。このため、このようなチャネルモニタ480を光伝送装置#Pに設けると、単一のPD471を含む検波部470を備える光伝送装置#Nに比べて消費電力が増大する。言い換えれば、光伝送装置#Nは、光伝送装置#Pに比べて、部品点数が少なく消費電力を抑えることができる。また、光伝送装置#Nは、光伝送装置#Pに比べて、部品点数が少ないため、光伝送装置#Nの製造コストを低減することができる。このように、第1実施形態に係る光ネットワーク管理装置100は、消費電力を抑えた光伝送装置#Nを用いて光ネットワークモデル171のパラメータを更新することにより、光ネットワークNWの特性を推定することができる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、
図6乃至
図13を参照して、第2実施形態に係る光ネットワーク管理装置100について説明する。
【0045】
図6に示すように、第2実施形態に係る収集部161は、第1実施形態と異なり、光送信器201、及び光伝送装置#1,#2,・・・,#Nの全てから第1情報を収集する。詳細は後述するが、収集部161が、光送信器201、及び光伝送装置#1,#2,・・・,#Nの全てから第1情報を収集して、段階的にパラメータを更新することで、第1実施形態の場合と比べて、パラメータの推定精度が向上する。
【0046】
図7を参照して、第2実施形態に係る光送信器201及びモデル部170の詳細について説明する。なお、第2実施形態に係る光伝送装置#Nの構成は基本的に第1実施形態に係る光伝送装置#Nの構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0047】
図7に示すように、第2実施形態に係る光送信器201は、第1実施形態で説明した変調部210に加え、分岐器220と波長選択部230と検波部240とをさらに含んでいる。分岐器220は信号光を分岐して波長選択部230に導く。なお、分岐器220は、例えば光カプラによって実現することができる。
【0048】
波長選択部230は信号光に含まれる複数の波長のいずれかを選択し、選択した波長の信号光を検波部240に出力する。検波部240は信号光の強度の波形を表す情報を生成し、生成した情報をアナログ形式からデジタル形式に変換する。なお、検波部240は、検波部470と同様に、PDとADCによって実現することができる。
【0049】
光ネットワーク管理装置100のモデル部170は、光送信器モデル(M-mdlと表記)173、複数の光ファイバモデル(F-mdlと表記)#1,#2・・・、複数の光伝送装置モデル(T-mdlと表記)#1,#2・・・,#N、及び第1実施形態で説明した生成部172を含んでいる。光ファイバモデル#1,#2・・・は光伝送路モデルの一例である。
【0050】
光送信器モデル173と光ファイバモデル#1,#2・・・と光伝送装置モデル#1,#2・・・,#Nは光ネットワークモデル171に含まれる。光送信器モデル173と複数の光ファイバモデル#1,#2・・・、と光伝送装置モデル#1,#2・・・,#Nの順序は光送信器201と複数の光ファイバ#1,#2・・・、と光伝送装置#1,#2・・・,#Nの配置関係と対応する。すなわち、光ネットワークモデル171は、光送信器モデル173と、光ファイバモデル#1と光伝送装置モデル#1との第1組合せ、光ファイバモデル#2と光伝送装置モデル#2との第2組合せ、・・・、光ファイバモデル#Nと光伝送装置モデル#Nとの第N組合せを含んでいる。
【0051】
光送信器モデル173は、光送信器201の特性(又は状態)を数式モデルで表現した伝達関数Hmodを含んでいる。光送信器モデル173は伝達関数Hmodを用いて、光送信器201の出力信号を計算する。伝達関数Hmodは推定対象のパラメータを含んでいる。例えば、伝達関数Hmodはデータ信号x(t)に対する遅延量Δτをパラメータとして含んでいる。伝達関数Hmodが含むパラメータは、例えば特開2022-060607を参照することができる。
【0052】
光ファイバモデル#1は、光ファイバ#1の特性(又は状態)を数式モデルで表現した伝達関数H
fiber1を含んでいる。光ファイバモデル#1は伝達関数H
fiber1を用いて、光ファイバ#1の出力信号を計算する。後述する光ファイバモデル#2以降については、基本的に、光ファイバモデル#1の場合と同様であるため、詳細な説明は省略する。
図8(a)及び(b)に示すように、伝達関数H
fiber1は伝達関数H
PRや伝達関数H
PDLを選択的に採用することができる。例えば、
図8(a)に示すように、偏波回転の伝達関数H
PRは偏波回転の位相回転量θを推定対象のパラメータとして含んでいる。また、
図8(b)に示すように、偏波依存損失の伝達関数H
PDLは偏波依存損失PDLを推定対象のパラメータとして含んでいる。
【0053】
その他、図示しないが、伝達関数Hfiber1に、ファイバ非線形性に関する伝達関数HNL、偏波モード分散に関する伝達関数HPMD、波長分散に関する伝達関数HCDなど既知の伝達関数を選択的に含めてもよい。既知の伝達関数としては、例えばファイバ損失の伝達関数や分散スロープの伝達関数などがある。伝達関数HNL、伝達関数HPMD、伝達関数HCDはいずれも推定対象のパラメータを含んでいる。伝達関数HPRや伝達関数HPDLなど、光ファイバモデルで用いる既知の伝達関数の全部を選択して採用すれば、パラメータの推定精度が向上する。一方、光ファイバモデルで用いる伝達関数の一部を選択して採用すれば、パラメータの計算量が低減することができ、処理負荷が抑制されることで消費電力が低減する。この場合、伝達関数の残部は事前に決定した設計値を採用すればよい。
【0054】
光伝送装置モデル#1は、光伝送装置#1の特性(又は状態)を数式モデルで表現した伝達関数H
trans1を含んでいる。光伝送装置モデル#1は伝達関数H
trans1を用いて、光伝送装置#1の出力信号を計算する。後述する光伝送装置モデル#2以降については、基本的に、光伝送装置モデル#1の場合と同様であるため、詳細な説明は省略する。
図8(b)及び(c)に示すように、伝達関数H
trans1は伝達関数H
PDLや伝達関数H
filteringを選択的に採用することができる。伝達関数H
trans1に偏波モード分散に関する伝達関数H
PMDや偏波回転に関する伝達関数H
PRを含めてもよい。例えば、
図8(c)に示すように、光フィルタによる信号帯域狭窄(以下、フィルタリングという)の伝達関数H
filteringはフィルタリングの周波数ωを推定対象のパラメータとして含んでいる。伝達関数H
PDLや伝達関数H
filteringの両方を選択して採用すれば、パラメータの推定精度が向上する。一方、伝達関数H
PDLを単独で選択して採用すれば、パラメータの計算量が低減することができ、消費電力が低減する。この場合、伝達関数H
filteringは事前に決定した設計値を採用すればよい。
【0055】
図9乃至
図13を参照して、第2実施形態に係る光ネットワーク管理装置100の動作について説明する。なお、
図4を参照して説明したフローチャートと同一の処理には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0056】
まず、
図9に示すように、第1実施形態で説明したステップS2の処理が終了すると、モデル部170は光送信器モデル173に基づく第2情報を生成する(ステップS11)。より詳しくは、
図10(併せて
図7参照)に示すように、光送信器モデル173がデータ信号x(t)に基づいて光送信器201から出力される信号光に相当する仮想的な信号光の電界情報を生成し、生成部172が電界情報に基づいて第2情報を生成する。
【0057】
第2情報を生成すると、比較部180は収集部161が光送信器201から収集した第1情報と生成部172が生成した第2情報とを比較し(ステップS12)、第1閾値以下であるか否かを判断する(ステップS13)。すなわち、比較部180による判定は以下の判定式(1)によって表すことができる。
<判定式(1)>
第1情報y(t)-第2情報|Hmod x(t)|2≦第1閾値Zth1
【0058】
第1情報y(t)-第2情報|Hmod x(t)|2との比較結果である差分が第1閾値Zth1より大きい場合(ステップS13:NO)、推定部190は伝達関数Hmodのパラメータである第1パラメータを更新し(ステップS14)、モデル部170にステップS11の処理の実行を要求する。これにより、モデル部170は更新後のパラメータを含む伝達関数Hmodを用いて改めて第2情報を生成し、比較部180が第1情報と第2情報とを比較する。このように、光ネットワーク管理装置100は第1情報と第2情報の差分に第1閾値より大きな乖離がある場合、第1閾値以下になるまでパラメータを更新する処理を繰り返して、この乖離を十分に抑える。
【0059】
そして、第1情報y(t)-第2情報|Hmod x(t)|2との比較結果である差分が第1閾値Zth1以下である場合(ステップS13:YES)、推定部190は第1パラメータを確定する(ステップS15)。以下、第1パラメータが確定した伝達関数Hmodを伝達関数Hmod_fixとして説明する。このように、最後に更新された第1パラメータであれば、第1情報と第2情報との乖離が十分に抑えられたと認定することができる。推定部190は光送信器モデル173の伝達関数に含まれる第1パラメータを更新することで、光送信器モデル173の第1パラメータを推定して確定することができる。
【0060】
第1パラメータを確定すると、モデル部170は変数iに番号「1」を設定する(ステップS16)。変数iは光ファイバ及び光伝送装置の識別番号に相当する。変数iに番号「1」が設定された場合、モデル部170は光ファイバ#1と光伝送装置#1を後続の処理対象に決定する。変数iに番号「N」が設定された場合、モデル部170は光ファイバ#N(不図示)と光伝送装置#Nを後続の処理対象に決定する。
【0061】
変数iに番号「1」を設定すると、モデル部170は光ファイバモデル#1に基づく第2情報を生成する(ステップS17)。より詳しくは、
図11(併せて
図7参照)に示すように、光送信器モデル173から出力された電界情報に基づいて光ファイバモデル#1が光ファイバ#1から出力される信号光に相当する仮想的な信号光の電界情報を生成する。そして、生成部172がこの電界情報に基づいて第2情報を生成する。
【0062】
第2情報を生成すると、比較部180は収集部161が光伝送装置#1から収集した第1情報と生成部172が生成した第2情報とを比較し(ステップS18)、第2閾値以下であるか否かを判断する(ステップS19)。すなわち、比較部180による判定は以下の判定式(2)によって表すことができる。なお、光伝送装置#1から光ファイバ#1に関する第1情報を収集する場合、光伝送装置#1において、上述した分岐器450、波長選択部460、検波部470を前段光アンプ410の直前に配置すればよい。
<判定式(2)>
第1情報y(t)-第2情報|Hfiber1 Hmod_fix x(t)|2≦第2閾値Zth2
【0063】
第1情報y(t)-第2情報|Hfiber1 Hmod_fix x(t)|2との比較結果である差分が第2閾値Zth2より大きい場合(ステップS19:NO)、推定部190は伝達関数Hfiber1のパラメータである第2パラメータを更新し(ステップS20)、モデル部170にステップS17の処理の実行を要求する。これにより、モデル部170は更新後のパラメータを含む伝達関数Hfiber1を用いて改めて第2情報を生成し、比較部180が第1情報と第2情報とを比較する。このように、光ネットワーク管理装置100は第1情報と第2情報の差分に第2閾値より大きな乖離がある場合、第2閾値以下になるまでパラメータを更新する処理を繰り返して、この乖離を十分に抑える。
【0064】
そして、第1情報y(t)-第2情報|Hfiber1 Hmod_fix x(t)|2との比較結果である差分が第2閾値Zth2以下である場合(ステップS19:YES)、推定部190は第2パラメータを確定する(ステップS21)。以下、第2パラメータが確定した伝達関数Hfiber1を伝達関数Hfiber1_fixとして説明する。このように、最後に更新された第2パラメータであれば、第1情報と第2情報との乖離が十分に抑えられたと認定することができる。推定部190は光ファイバモデル#1の伝達関数に含まれる第2パラメータを更新することで、光ファイバモデル#1の第2パラメータを推定して確定することができる。
【0065】
第2パラメータを確定すると、モデル部170は光伝送装置モデル#1に基づく第2情報を生成する(ステップS22)。より詳しくは、
図12(併せて
図7参照)に示すように、光ファイバモデル#1から出力された電界情報に基づいて光伝送装置モデル#1が光伝送装置#1から出力される信号光に相当する仮想的な信号光の電界情報を生成する。そして、生成部172がこの電界情報に基づいて第2情報を生成する。
【0066】
第2情報を生成すると、比較部180は収集部161が光伝送装置#1から収集した第1情報と生成部172が生成した第2情報とを比較し(ステップS23)、第3閾値以下であるか否かを判断する(ステップS24)。すなわち、比較部180による判定は以下の判定式(3)によって表すことができる。
<判定式(3)>
第1情報y(t)-第2情報|Htrans1 Hfiber1_fix Hmod_fix x(t)|2≦第3閾値Zth3
【0067】
第1情報y(t)-第2情報|Htrans1 Hfiber1_fix Hmod_fix x(t)|2との比較結果である差分が第3閾値Zth3より大きい場合(ステップS24:NO)、推定部190は伝達関数Htrans1のパラメータである第3パラメータを更新し(ステップS25)、モデル部170にステップS22の処理の実行を要求する。これにより、モデル部170は更新後の第3パラメータを含む伝達関数Htrans1を用いて改めて第2情報を生成し、比較部180が第1情報と第2情報とを比較する。このように、光ネットワーク管理装置100は第1情報と第2情報の差分に第3閾値より大きな乖離がある場合、第3閾値以下になるまでパラメータを更新する処理を繰り返して、この乖離を十分に抑える。
【0068】
そして、第1情報y(t)-第2情報|Htrans1 Hfiber1_fix Hmod_fix x(t)|2との比較結果である差分が第3閾値Zth3以下である場合(ステップS24:YES)、推定部190は第3パラメータを確定する(ステップS26)。以下、第3パラメータが確定した伝達関数Htrans1を伝達関数Htrans1_fixとして説明する。このように、最後に更新された第3パラメータであれば、第1情報と第2情報との乖離が十分に抑えられたと認定することができる。推定部190は光伝送装置モデル#1の伝達関数に含まれる第3パラメータを更新することで、光伝送装置モデル#1の第3パラメータを推定して確定することができる。
【0069】
第3パラメータを確定すると、モデル部170は変数iが番号「N」であるか否かを判断する(ステップS27)。変数iが番号「N」でない場合(ステップS27:NO)、モデル部170は変数iをインクリメントし(ステップS28)、ステップS17の処理を実行する。これにより、モデル部170は光ファイバ#2と光伝送装置#2についても同様にステップS17からS26までの処理を実行する。そして、変数iが番号「N」である場合(ステップS27:YES)、処理を終了する。
【0070】
すなわち、
図13(併せて
図7参照)に示すように、収集部161が光伝送装置#Nから収集した第1情報と生成部172が生成した第2情報とを比較部180が比較し、第N閾値以下であるか否かを判断する。この場合、比較部180による判定は以下の判定式(4)によって表すことができる。
<判定式(4)>
第1情報y(t)-第2情報|H
transN ・・・H
trans1_fix H
fiber1_fix H
mod_fix x(t)|
2≦第N閾値Z
thN
【0071】
第1情報y(t)-第2情報|HtransN ・・・Htrans1_fix Hfiber1_fix Hmod_fix x(t)|2との比較結果である差分が第N閾値ZthN以下である場合、推定部190は第Nパラメータを確定し、処理を終了する。
【0072】
以上説明したように、第2実施形態に係る光ネットワーク管理装置100は、光ネットワークNWの上流に配置された光送信器201から下流に配置された光伝送装置#Nにかけて、段階的にパラメータを更新する。より詳しくは、第2実施形態に係る光ネットワーク管理装置100は、光送信器モデルのパラメータを推定して確定した後に、光ファイバモデルのパラメータと光伝送装置モデルのパラメータを、光ファイバモデルと光伝送装置モデルの組合せごとに光ネットワークNWの上流から下流にかけて段階的に推定して確定する。これにより、パラメータ更新の収束性が確保され、第1実施形態で説明した光ネットワークモデル171の一括更新に比べて、パラメータの推定精度が向上する。すなわち、Nスパン目の受信波形を単独で用いて、Nスパンそれぞれのパラメータを求める第1実施形態よりパラメータの推定精度が向上する。このように、第2実施形態によれば、光ネットワークNWの規模が増大して、パラメータの数が増加しても、光ネットワーク管理装置100はパラメータを精度良く推定して、光ネットワークNWの特性を推定することができる。
【0073】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明に係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0074】
例えば、光ネットワークNWの実際の運用では、光ネットワークNWの運用管理者が指定した既知のデータ信号x(t)と、光ネットワークNWを利用する顧客によって生成された未知のデータ信号が混在する場合がある。この場合、例えば光伝送装置#Nは既知のデータ信号x(t)と未知のデータ信号の両方に基づいて情報を生成するため、収集部160はこの情報を第1情報として収集する。一方で、光ネットワーク管理装置100はデータ信号x(t)単独で第2情報を生成する。これにより、第1情報と第2情報との比較精度が低下する可能性がある。
【0075】
このため、光ネットワーク管理装置100は第1情報と第2情報とを比較する前に第1情報と第2情報との相関をとり、第1情報から既知のデータ信号x(t)を抽出し、抽出したデータ信号x(t)の情報と第2情報とを比較する。これにより、光ネットワークNWの実際の運用でも、パラメータを更新して、光ネットワークNWの特性を推定することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 オペレーション端末
100 光ネットワーク管理装置
160,161 収集部
170 モデル部
172 生成部
180 比較部
190 推定部
200,201 光送信器
300 光受信器
NW 光ネットワーク