(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152390
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】X線撮影システム、X線撮影方法、X線撮影制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20241018BHJP
【FI】
A61B6/00 333
A61B6/00 320M
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066549
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】金森 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】三宅 信之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 良平
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA03
4C093CA35
4C093EA07
4C093EA12
4C093EB12
4C093EB13
4C093EB17
4C093EE30
4C093FA44
4C093FB20
4C093FC27
4C093FF25
4C093FH06
(57)【要約】
【課題】二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影と一般撮影とが可能なX線撮影システムにおいて、キャリブレーションを好適に実施できる。
【解決手段】
X線撮影システム(放射線撮影システム100)は、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影と一般撮影とが可能なX線撮影システムであって、エネルギーの異なる複数のX線を個別に照射可能なX線照射手段(放射線発生装置1)と、X線照射手段により照射されたX線に基づくX線画像を撮影する可搬型のX線検出手段(放射線検出器2)と、所定の条件下で、X線検出手段によるキャリブレーション画像の撮影に関する第1通知を行う制御手段(コンソール3;特に、制御部31)と、を備え、制御手段は、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影を行うごと、または、キャリブレーション画像の撮影が必要と判別された場合に、第1通知を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影と一般撮影とが可能なX線撮影システムであって、
エネルギーの異なる複数のX線を個別に照射可能なX線照射手段と、
前記X線照射手段により照射されたX線に基づくX線画像を撮影する可搬型のX線検出手段と、
所定の条件下で、前記X線検出手段によるキャリブレーション画像の撮影に関する第1通知を行う制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影を行うごと、または、前記キャリブレーション画像の撮影が必要と判別された場合に、前記第1通知を行うX線撮影システム。
【請求項2】
前記キャリブレーション画像は、前記X線照射手段と前記X線検出手段の間に被写体が無い状態で、前記X線検出手段により撮影される画像である請求項1に記載のX線撮影システム。
【請求項3】
前記キャリブレーション画像の撮影の要否を判別する第1判別手段を有し、
前記第1判別手段は、前記X線照射手段及び/または前記X線検出手段の状態の変化に基づいて前記キャリブレーション画像の撮影の要否を判別する請求項1に記載のX線撮影システム。
【請求項4】
前記状態の変化は、前回の前記キャリブレーション画像の撮影から被写体画像の撮影までの期間での変化である請求項3に記載のX線撮影システム。
【請求項5】
前記状態の変化は、前記X線照射手段と前記X線検出手段との距離の変化である請求項3に記載のX線撮影システム。
【請求項6】
前記状態の変化は、前記X線検出手段の撮影台からの着脱である請求項3に記載のX線撮影システム。
【請求項7】
前記第1判別手段が、前記キャリブレーション画像の撮影が不要と判別した場合、
前記制御手段は、前記前記第1通知を行わない請求項3に記載のX線撮影システム。
【請求項8】
前記キャリブレーション画像の撮影と、被写体画像の撮影の対応付けを変更可能である請求項1に記載のX線撮影システム。
【請求項9】
前記制御手段は、X線撮影を制御するX線撮影制御手段及び/または撮影台に設けられている通知手段に第1通知を実行させる請求項1に記載のX線撮影システム。
【請求項10】
撮影台に被写体が存在するかどうかを判別する第2判別手段を有し、
前記制御手段は更に、前記キャリブレーション画像の撮影時に撮影台に被写体が存在する場合にその旨の第2通知を行う請求項1に記載のX線撮影システム。
【請求項11】
前記第2判別手段は、カメラ、重力センサ、撮影画像、レーザーの少なくとも1つを用いて判別する請求項10に記載のX線撮影システム。
【請求項12】
前記制御手段は、前記第2通知において、前記キャリブレーション画像の撮影時に撮影台に被写体が存在する場合、被写体画像の撮影後に前記キャリブレーション画像の撮影を行ってもよい旨を通知する請求項10に記載のX線撮影システム。
【請求項13】
エネルギーの異なる複数のX線を個別に照射可能なX線照射手段と、前記X線照射手段により照射されたX線に基づくX線画像を撮影する可搬型のX線検出手段により、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影と一般撮影とを行うX線撮影システムにおける、X線撮影制御装置であって、
所定の条件下で、前記X線検出手段によるキャリブレーション画像の撮影に関する第1通知を行う制御手段を備え、
前記制御手段は、前記二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影を行うごとに通知を行う、または、前記キャリブレーション画像の撮影が必要と判別された場合に前記第1通知を行うX線撮影制御装置。
【請求項14】
エネルギーの異なる複数のX線を個別に照射可能なX線照射手段と、前記X線照射手段により照射されたX線に基づくX線画像を撮影する可搬型のX線検出手段により、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影と一般撮影とが可能なX線撮影システムを用いたX線撮影方法であって、
所定の条件下で、前記X線検出手段によるキャリブレーション画像の撮影に関する第1通知を行う制御ステップを備え、
前記制御ステップは、前記二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影を行うごとに通知を行う、または、前記キャリブレーション画像の撮影が必要と判別された場合に前記第1通知を行うX線撮影方法。
【請求項15】
エネルギーの異なる複数のX線を個別に照射可能なX線照射手段と、前記X線照射手段により照射されたX線に基づくX線画像を撮影する可搬型のX線検出手段により、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影と一般撮影とを行うX線撮影システムにおける、X線撮影制御装置のコンピュータを、
所定の条件下で、前記X線検出手段によるキャリブレーション画像の撮影に関する第1通知を行う制御手段として機能させ、
前記制御手段は、前記二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影を行うごとに通知を行う、または、前記キャリブレーション画像の撮影が必要と判別された場合に前記第1通知を行うプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮影システム、X線撮影方法、X線撮影制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA;Dual-energy X-ray Absorptiometry。以下、DXA法とも称す)による骨密度測定などの画像撮影が行われている。DXA法による画像撮影では、放射線源と放射線検出器の位置関係を同一にして、被写体無しで撮影した画像(キャリブレーション画像)と被写体有りで撮影した画像が必要である(特許文献1)。
骨密度測定では、経時での骨量変化をみるため、非常に高い精度が必要である。また、骨密度測定では、同じ患者を何回撮影しても同じ結果が得られること(再現性)も求められる。
そのため、DXA法による画像撮影装置では、放射線源と放射線検出器の配置を機械的に固定することで、位置関係の変動を抑制している。
【0003】
よって、DXA法による画像撮影装置は、骨密度測定用などの専用装置であり、胸部X線撮影などの一般撮影とDXA法による画像撮影は、別々の装置で行われていた。
昨今、カセッテ型の放射線検出器(FPD;Flat Panel Detector。以下、FPDと称す)を用いたDXA法による画像撮影が提案されており、一般撮影とDXA法による画像撮影を、カセッテ型FPDを交換することで、同じ画像撮影装置を用いて行うことができるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、通常、一般撮影では、管球を移動させるため、放射線源と放射線検出器の位置関係が変わる。また、カセッテ型のFPDを使用するため、FPDの撮影台への出し入れにより、放射線源と放射線検出器の位置関係が変わる。
そのため、DXA撮影時に当初設定していた放射線源と放射線検出器の位置関係が変わると、再度その放射線源と放射線検出器の位置関係にmm単位で戻すことは難しいといった課題が生じる。
そこで、必要に応じてキャリブレーション画像を取り直す必要があるが、そのタイミングを技師が正確に把握するのが難しい。
その結果、キャリブレーション忘れに起因した再撮影が発生したり、正確な骨密度が算出できなかったりする課題が生じる。
【0006】
したがって、本発明の課題は、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影と一般撮影とが可能なX線撮影システムにおいて、キャリブレーションを好適に実施することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のX線撮影システムは、
二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影と一般撮影とが可能なX線撮影システムであって、
エネルギーの異なる複数のX線を個別に照射可能なX線照射手段と、
前記X線照射手段により照射されたX線に基づくX線画像を撮影する可搬型のX線検出手段と、
所定の条件下で、前記X線検出手段によるキャリブレーション画像の撮影に関する第1通知を行う制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影を行うごと、または、前記キャリブレーション画像の撮影が必要と判別された場合に、前記第1通知を行う。
【0008】
また、本発明のX線撮影制御装置は、
エネルギーの異なる複数のX線を個別に照射可能なX線照射手段と、前記X線照射手段により照射されたX線に基づくX線画像を撮影する可搬型のX線検出手段により、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影と一般撮影とを行うX線撮影システムにおける、X線撮影制御装置であって、
所定の条件下で、前記X線検出手段によるキャリブレーション画像の撮影に関する第1通知を行う制御手段を備え、
前記制御手段は、前記二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影を行うごとに通知を行う、または、前記キャリブレーション画像の撮影が必要と判別された場合に前記第1通知を行う。
【0009】
また、本発明のX線撮影方法は、
エネルギーの異なる複数のX線を個別に照射可能なX線照射手段と、前記X線照射手段により照射されたX線に基づくX線画像を撮影する可搬型のX線検出手段により、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影と一般撮影とが可能なX線撮影システムを用いたX線撮影方法であって、
所定の条件下で、前記X線検出手段によるキャリブレーション画像の撮影に関する第1通知を行う制御ステップを備え、
前記制御ステップは、前記二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影を行うごとに通知を行う、または、前記キャリブレーション画像の撮影が必要と判別された場合に前記第1通知を行う。
【0010】
また、本発明のプログラムは、
エネルギーの異なる複数のX線を個別に照射可能なX線照射手段と、前記X線照射手段により照射されたX線に基づくX線画像を撮影する可搬型のX線検出手段により、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影と一般撮影とを行うX線撮影システムにおける、X線撮影制御装置のコンピュータを、
所定の条件下で、前記X線検出手段によるキャリブレーション画像の撮影に関する第1通知を行う制御手段として機能させ、
前記制御手段は、前記二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影を行うごとに通知を行う、または、前記キャリブレーション画像の撮影が必要と判別された場合に前記第1通知を行う。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影と一般撮影とが可能なX線撮影システムにおいて、キャリブレーションを好適に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る放射線撮影システムを表すブロック図である。
【
図2】放射線発生装置と放射線検出器の構成例を示す概略図である。
【
図3】放射線撮影システムが備えるコンソールを表すブロック図である。
【
図6】キャリブ要否判断処理を表すフローチャートである。
【
図7】キャリブ要否判断処理を表すフローチャートである。
【
図8】キャリブ要否判断処理を表すフローチャートである。
【
図9】キャリブ要否判断処理を表すフローチャートである。
【
図12】正常な放射線プロファイル(複数回照射)の例である。
【
図13】異常な放射線プロファイル(複数回照射)の例である。
【
図14】高精度な放射線プロファイル(複数回照射)の例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態の放射線撮影システムについて、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施形態や図面に記載されたものに限定されるものではない。
本実施形態の放射線撮影システムは、一般撮影装置に、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法;Dual-energy X-ray Absorptiometry)による骨密度測定機能を加えたものであり、二重エネルギーX線吸収測定法による骨密度検査(X線撮影)だけでなく、一般撮影も実施できる。
ここで、一般撮影とは、放射線の照射により診断用途の二次元放射線撮影画像を得る撮影であり、1回の撮影で取得する二次元放射線撮影画像の枚数は1枚の場合もあれば複数枚の場合もあり、つまり、静止画撮影又は動画撮影(動態撮影)の何れも含む。一般撮影としては、例えば、胸部X線静止画撮影、胸部X線動態撮影、トモシンセシス、DES、長尺撮影などである。DXA法での骨密度検査において、一連の検査の中で、診断用途ではなく被写体の位置決めのために二次元放射線撮影画像を得ることができるシステムが存在するがここでの一般撮影には該当しない(ここでの一般撮影は単体で診断用途に用いることができる二次元放射線撮影を指すため)。
【0014】
まず、本実施形態に係る放射線撮影システム100の概略構成について説明する。
図1は放射線撮影システム100を表すブロック図である。
【0015】
本実施形態の放射線撮影システム100は、
図1に示すように、放射線発生装置1、放射線検出器2、コンソール3及びサーバー4などを備えている。
これらは、通信ネットワークNを介して互いに通信可能となっている。
【0016】
なお、放射線撮影システム100(X線撮影システム100)は、図示しない病院情報システム(Hospital Information System:HIS)や、放射線科情報システム(Radiology Information System:RIS)、画像保存通信システム(Picture Archiving and Communication System:PACS)、画像解析装置等と接続することが可能となっていてもよい。
【0017】
放射線発生装置1(X線照射手段)は、
図2に示すように、予め設定された照射条件(管電圧や管電流、照射時間、管電流時間積(mAs値)等)に応じた電圧を印加するジェネレーターや、ジェネレーターから電圧が印加されると、管電流に応じた線量の放射線(例えばX線)を生成する放射線源11、Kエッジフィルタ12、スリット13等を備えている。これらは、被写体Hに対向し、被写体H側から、スリット13、Kエッジフィルタ12、放射線源11という順に配置されている。
放射線発生装置1には、移動機構が設けられ、放射線検出器2から所定の距離離れた箇所で固定することができる。その移動機構には、センサが設けられ、移動距離を計測することができる。
【0018】
放射線源11(管球)は、撮影する放射線画像に応じた態様で放射線(例えばX線)を発生させるようになっている。
【0019】
Kエッジフィルタ12は、X線スペクトルのうち、中域レンジのX線を吸収させ、高エネルギーのX線と低エネルギーのX線のエネルギー分離をするためのフィルタである。つまり、Kエッジフィルタ12は、エネルギー分離手段として機能する。例えば、Kエッジフィルタ12には、Gd(ガドリニウム)やCu(銅)などが使われる。
【0020】
スリット13は、骨密度の精度に影響する散乱線成分をできるだけ少なくするためにX線の照射範囲を絞るための機構である。なお、骨密度は経時変化をみることから、非常に高い精度が要求されるため、散乱線成分をできるだけ少なくする必要がある。例えば、放射線源11(管球)に設けられたコリメータを使う方法や放射線源11に外付けでスリット機構をつける方法が挙げられる。
【0021】
なお、放射線発生装置1は、撮影室内に据え付けられたものであってもよいし、コンソール3等と共に回診車と呼ばれる移動体に組み込まれた構成となっていてもよい。
また、Kエッジフィルタ12及びスリット13は、放射線源11に外付けされていてもよい。例えば、放射線源11に、Kエッジフィルタ12及びスリット13の装填部を設けることが挙げられる。
【0022】
放射線検出器2(X線検出手段、FPD;Flat Panel Detector)は、図示を省略するが、放射線を受けることで線量に応じた電荷を発生させる放射線検出素子や電荷の蓄積・放出を行うスイッチ素子を備えた画素が二次元状(マトリクス状)に配列された基板や、各スイッチ素子のオン/オフを切り替える走査回路、各画素から放出された電荷の量を信号値として読み出す読み出し回路、読み出し回路が読み出した複数の信号値から放射線画像を生成する制御部、生成した放射線画像のデータ等を外部へ出力する出力部等を備えている。
そして、放射線検出器2は、放射線発生装置1から放射線が照射されるタイミングと同期して、照射された放射線に応じた放射線画像を生成する。放射線発生装置1から放射線が照射されるタイミングと放射線画像を生成するタイミングを同期させる為の照射画像生成同期タイミングは、放射線発生装置1が生成し、後述する通信ネットワークNを介して、放射線検出器2に送られる。放射線検出器2は照射画像生成同期タイミングに基づいて放射線画像を生成する。もしくは、照射画像生成同期タイミングを放射線検出器2が生成し、通信ネットワークNを介して放射線発生装置1に送り、放射線発生装置1は照射画像生成同期タイミングに基づいて放射線を照射するようにしてもよい。尚、通信ネットワークNとは別に照射画像生成同期タイミング用ケーブルを用いて照射画像生成同期タイミングを送信してもよい。また、通信ネットワークNと照射画像生成同期タイミング用ケーブルをまとめて1つのケーブル(通信ネットワーク・照射画像生成同期タイミング共通ケーブル)にしてもよい。
【0023】
なお、放射線検出器2は、シンチレーター等を内蔵し、照射された放射線をシンチレーターで可視光等の他の波長の光に変換し、変換した光に応じた電荷を発生させるもの(いわゆる間接型)であってもよいし、シンチレーター等を介さずに放射線から直接電荷を発生させるもの(いわゆる直接型)であってもよい。
また、放射線検出器2は、可搬型(カセッテ型)であり、
図2のように、撮影台Sに装填される。撮影台Sには、センサが設けられており、放射線検出器2の着脱を検知することができる。センサが、放射線検出器2の着脱を検知した場合、着脱に関する情報は、通信ネットワークNを介して、コンソール3(制御部31)に送信される。
また、放射線検出器2は、本実施形態では、DXA法による撮影(以下、DXA撮影)対応である必要がある。例えば、後述するスリットでX線を絞りながら管球を移動させて撮影する(スロット撮影などと呼ぶ)場合、X線はパルス照射となるため、パルス照射に対応した制御(たとえばパルス照射の照射タイミングに同期して放射線画像を生成する制御)が可能なFPDである必要がある。
【0024】
また、
図2に示す、放射線源11と放射線検出器2の間の距離をSID(Source Image receptor Distance)と呼ぶ。正確には、Sourceは管球である放射線源11の焦点であり、Image receptorは放射線検出器2(FPD)の受像面なので、焦点-FPD間距離である。
放射線発生装置1に設けられた移動機構の移動情報を用いて、SIDは計測可能である。
【0025】
コンソール3(X線撮影制御手段)は、画像処理装置,電子機器をなすもので、PCや専用の装置等で構成されている。
また、コンソール3は、他のシステム(HISやRIS等)から取得した撮影オーダー情報やユーザーによる操作に基づいて、各種撮影条件(管電圧や管電流、照射時間、管電流時間積(mAs値)、フレームレート、被写体Hの体格、グリッドの有無等)を撮影装置等に設定することが可能となっている。
【0026】
本実施形態に係るコンソール3は、
図3に示すように、制御部31と、通信部32と、記憶部33と、表示部34と、操作部35と、を備えている。
各部31~35は、バスにより電気的に接続されている。
【0027】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成されている。
そして、制御部31のCPUは、記憶部33に記憶されている各種プログラムを読出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、コンソール3各部の動作を集中制御するようになっている。
制御部31は、所定の条件下で、X線検出手段によるキャリブレーション画像の撮影(キャリブレーション撮影)に関する第1通知を行う制御手段として機能する。制御部31は、制御手段として、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影を行うごと、または、キャリブレーション画像の撮影が必要と判別された場合に、第1通知を行う。また、制御部31は、制御手段として、キャリブレーション画像の撮影時に撮影台に被写体が存在する場合にその旨の第2通知を行う。キャリブレーション画像については、後述する。
また、制御部31は、キャリブレーション画像の撮影の要否を判別する第1判別手段として機能する。
また、制御部31は、撮影台に被写体が存在するかどうかを判別する第2判別手段として機能する。
なお、第1通知及び第2通知については、制御部31が、後述する通知手段である表示部34に行わせる。
【0028】
通信部32は、通信モジュール等で構成されている。
そして、通信部32は、通信ネットワークN(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等)を介して接続された他の装置等との間で各種信号や各種データを送受信するようになっている。
【0029】
記憶部33は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成されている。
また、記憶部33は、制御部31が実行する各種プログラムやプログラムの実行に必要なパラメータ等を記憶している。
【0030】
表示部34は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等の画像を表示する表示装置、発光するランプ(LED等)、音声を出力するスピーカー、振動する振動子等により構成されている。
なお、表示部34は、通知手段として機能する。
また、
図2に示すように、警告灯やスピーカーなどの通知手段Aを、撮影台Sに設けてもよい。
【0031】
操作部35は、カーソルキーや、数字入力キー、各種機能キー等を備えたキーボードや、マウス等のポインティングデバイス、表示装置の表面に積層されたタッチパネル等によって構成されている。
そして、操作部35は、ユーザーによってなされた操作に応じた制御信号を制御部31へ出力するようになっている。
【0032】
このように構成されたコンソール3の制御部31は、例えば撮影台Sに放射線検出器2が装填されたこと等を契機として、
図6~
図9に示すようなキャリブレーション要否判断処理を実行する機能を有している。
【0033】
サーバー4は、PCや専用の装置、クラウド上の仮想サーバー等で構成されている。
また、サーバー4は、データベース41を有している。
データベース41には、撮影方法に関する情報やFPDの個体情報が記憶されている。
なお、本実施形態においては、コンソール3等から独立したサーバー4にデータベース41が設けられていることとしたが、データベース41は、コンソール3内に設けられていてもよいし、放射線撮影システム100が備える他の装置内に設けられていてもよい。
また、放射線撮影システム100にPACS等の他のシステムが接続される場合には、他のシステム内に設けられたものであってもよい。
【0034】
放射線撮影システム100には、他に、被写体台Tに被写体Hが存在するかどうかを検知する検知装置5が備えられている。検知装置5は、例えば、カメラ、重力センサ、レーザーなどである。検知装置5がカメラの場合、被写体台Tをカメラで撮影する。コンソール3の制御部31は、その撮影画像を用いて、被写体Hが存在するか判断する。また、検知装置5が重力センサの場合、被写体台Tに重力センサを設ける。被写体台Tの移動を検知することで、被写体台Tに被写体Hが存在するか判断される。また、検知装置5がレーザーの場合、レーザー光の被写体Hからの反射光を検知する。反射光の検知結果より、被写体台Tに被写体Hが存在するか判断される。
【0035】
このように構成された本実施形態に係る放射線撮影システム100は、放射線発生装置1の放射線源と放射線検出器2とを間を空けて対向配置する。それらの間に配置された被写体Hへ放射線源から放射線を照射することにより、被写体Hの放射線画像を撮影することが可能である。
【0036】
放射線画像が静止画である場合(静止画撮影;一般撮影)には、1回の撮影操作につき放射線の照射及び放射線画像の生成を1回だけ行い、放射線画像が動画である場合(動態撮影;シリアル撮影)には、1回の撮影操作につきパルス状の放射線の照射及びフレーム画像の生成を短時間に複数回(例えば1秒間に15回)繰り返す。
【0037】
DXA法による撮影では、
図2に示す矢印のように、放射線源11を直線移動させることにより、スリット13により絞られた照射範囲ROI(region of interest)を被写体Hに対して移動させることで、スキャン撮影を行う。
【0038】
ここで、
図4及び
図5を用いて、DXA法について、説明する。
DXA法とは、2種類のエネルギー(高kV、低kV)の放射線を測定する部分にあてて、測定された放射線量(放射線画像)から、測定する部分の目的とする物理量を演算する方法である。例えば、DXA法では、骨部と他の軟部組織を区別し、目的とする物理量として骨部の厚さが演算され、測定される。DXA法では、被写体Hが撮影台Sに置かれていない状態でのキャリブレーション撮影(被写体無し撮影)と、被写体Hが撮影台Sに置かれた状態での被写体有り撮影が行われる。被写体無し撮影と被写体有り撮影のそれぞれにおいて、高エネルギーの放射線を用いた撮影と低エネルギーの放射線を用いた撮影が行われる。キャリブレーション撮影において、撮影された画像をキャリブレーション画像とする。
図4は、被写体無し撮影のイメージ図である。具体的には、
図4は、高エネルギーの放射線(high)を用いた撮影では、放射線検出器2において画像情報I
H0が検知され、低エネルギーの放射線(low)を用いた撮影では、放射線検出器2において画像情報I
L0が検知されるイメージ図である。
図5は、被写体有り撮影のイメージ図である。具体的には、
図5に示す被写体有り撮影においては、放射線が、被写体Hを透過する。被写体Hは、骨部HB、骨部以外の軟部組織HSで構成されている。
図5は、高エネルギーの放射線(high)を用いた撮影では、放射線検出器2において画像情報I
Hが検知され、低エネルギーの放射線(low)を用いた撮影では、放射線検出器2において画像情報I
Lが検知されるイメージ図である。
なお、
図4に示す被写体無し撮影と
図5に示す被写体有り撮影に用いる放射線のエネルギーは、高エネルギーの場合は放射線(high)、低エネルギーの場合は放射線(low)で同じである。
また、高エネルギーの放射線(high)を用いた撮影における骨部HBの線吸収係数μ
BH、低エネルギーの放射線(low)を用いた撮影における骨部HBの線吸収係数μ
BL、高エネルギーの放射線(high)を用いた撮影における軟部組織HSの線吸収係数μ
SH、及び低エネルギーの放射線(low)を用いた撮影における軟部組織HSの線吸収係数μ
SLは、既知である。
そして、骨部HBの厚さt
B及び軟部組織HSの厚さt
Sが、未知である。下記式を用いることで、未知の骨部HBの厚さt
B及び軟部組織HSの厚さt
Sを算出することができる。
式(1)は、画像情報I
L0と画像情報I
Lの関係を表す式である。
【数1】
式(2)は、画像情報I
H0と画像情報I
Hの関係を表す式である。
【数2】
式(3)は、式(1)及び式(2)を合わせ行列で表した式である。
【数3】
式(4)は、式(3)を解くことで、骨部HBの厚さt
B及び軟部組織HSの厚さt
Sを算出する式である。
【数4】
【0039】
DXA法では、高エネルギーと低エネルギーの2種類の異なるエネルギーのX線を照射し、骨と軟部組織の吸収率の差により骨密度を測定するため、例えば、往路では、放射線源11の管電圧を70kVとし、Kエッジフィルタ12をGdとし、スキャン撮影を行い、復路では、放射線源11の管電圧を110kVとし、Kエッジフィルタ12をCuとし、往復スキャン撮影を行う方法が挙げられる。
また、照射範囲ROIごとに、放射線源11の管電圧やKエッジフィルタ12を切り替えながら一方向スキャン撮影を行う方法でもよい。
また、照射範囲ROIごとに、放射線源11は、パルス照射を行う。これは、撮影範囲を1回で曝射すると散乱線の影響が大きくなり、骨密度の精度に影響が出るためである。そのため、スリットを使って照射範囲ROIを絞り、照射範囲ROIごとにパルス照射を行うことで、散乱線の影響を低減することができる。
また、放射線検出器2上での照射範囲ROIは、スリット13の幅やSIDで決定される。
【0040】
<キャリブレーション要否判断処理>
次に、
図6~
図9のフローチャートを用いて、キャリブレーション要否判断処理を説明する。キャリブレーション要否判断処理とは、実施される撮影がDXA撮影の場合、キャリブレーション撮影が必要であると判断する処理である。
図6に示すフローチャートは、DXA法によるX線撮影を行うごとにキャリブレーション画像の撮影を行うキャリブレーション要否判断処理の例である。
図7に示すフローチャートは、キャリブレーション画像の撮影が必要と判別された場合に、キャリブレーション画像の撮影を行うキャリブレーション要否判断処理の例である。
図8に示すフローチャートは、DXA法によるX線撮影を行うごとにキャリブレーション画像の撮影を行うキャリブレーション要否判断処理であり、キャリブレーション画像の撮影をDXA法によるX線撮影の後に実施する例である。
図9に示すフローチャートは、キャリブレーション画像の撮影が必要と判別された場合に、キャリブレーション画像の撮影を行うキャリブレーション要否判断処理であり、キャリブレーション画像の撮影をDXA法によるX線撮影の後に実施する例である。
【0041】
図6のフローチャートを用いて、キャリブレーション要否判断処理を説明する。
制御部31は、ユーザーが検査開始することを契機に、RIS等から取得した撮影オーダー情報から、実施される撮影がDXA撮影か否か判別する(ステップS1)。DXA撮影である場合(ステップS1;YES)、ステップS2に進み、DXA撮影でない場合(ステップS1;NO)、キャリブ要否判断処理を終了する。
次に、制御部31は、表示部34に、キャリブレーション撮影が必要であることを通知させる(ステップS2;第1通知ステップ)。
次に、制御部31は、被写体台Tに被写体Hが配置されているか否か判別する(ステップS3)。配置されている場合(ステップS3;YES)、ステップS4に進み、配置されていない場合(ステップS3;NO)、ステップS5に進む。
次に、制御部31は、表示部34に、キャリブレーション撮影を実行するうえで、被写体Hを被写体台Tに配置しない状態にする必要があることを通知させる(ステップS4;第2通知ステップ)。
次に、制御部31は、キャリブレーション撮影を実行する(ステップS5)。
次に、制御部31は、DXA撮影(被写体有り撮影)を実行する(ステップS6)。
次に、制御部31は、ステップS5及びステップS6で撮影された放射線画像を用いて、物理量の演算を行う(ステップS7)。そして、キャリブレーション要否判断処理は終了する。
【0042】
図7のフローチャートを用いて、キャリブレーション要否判断処理を説明する。
制御部31は、ユーザーが検査開始することを契機に、RIS等から取得した撮影オーダー情報から、実施される撮影がDXA撮影か否か判別する(ステップS11)。DXA撮影である場合(ステップS11;YES)、ステップS12に進み、DXA撮影でない場合(ステップS11;NO)、キャリブレーション要否判断処理を終了する。
次に、制御部31は、前回のキャリブレーション撮影時からSIDが変化したか否か判別する(ステップS12)。SIDが変化していない場合(ステップS12;YES)、ステップS13に進み、SIDが変化した場合(ステップS12;NO)、ステップS14に進む。
次に、制御部31は、前回のキャリブレーション撮影時からFPDが着脱されたか否か判別する(ステップS13)。FPDが着脱されていない場合(ステップS13;YES)、ステップS18に進み、FPDが着脱された場合(ステップS13;NO)、ステップS14に進む。
次に、制御部31は、表示部34に、キャリブレーション撮影が必要であることを通知させる(ステップS14;第1通知ステップ)。
次に、制御部31は、被写体台Tに被写体Hが配置されているか否か判別する(ステップS15)。配置されている場合(ステップS15;YES)、ステップS16に進み、配置されていない場合(ステップS15;NO)、ステップS17に進む。
次に、制御部31は、表示部34に、キャリブレーション撮影を実行するうえで、被写体Hを被写体台Tに配置しない状態にする必要があることを通知させる(ステップS16;第2通知ステップ)。
次に、制御部31は、キャリブレーション撮影を実行する(ステップS17)。
次に、制御部31は、DXA撮影(被写体有り撮影)を実行する(ステップS18)。
次に、制御部31は、前回のキャリブレーション撮影又はステップS17、及びステップS18で撮影された放射線画像を用いて、物理量の演算を行う(ステップS19)。そして、キャリブ要否判断処理は終了する。
なお、上記フローでは、前回のキャリブレーション撮影時からSIDが変化したか否か、前回のキャリブレーション撮影時からFPDが着脱されたか否か、を判別しているが、これらに限定されない。放射線源11と放射線検出器2の位置関係に影響を与えるような、前回のキャリブレーション撮影時から被写体画像の撮影までの期間における各種状態の変化が、判別される情報に含まれる。
【0043】
図8のフローチャートを用いて、キャリブレーション要否判断処理を説明する。
ステップS21~S24は、
図6のステップS1~S4と同様であるため、説明を省略する。
次に、制御部31は、DXA撮影(被写体有り撮影)を実行する(ステップS25)。
次に、制御部31は、ステップS25で撮影された放射線画像と仮のキャリブレーション画像を対応付け、暫定の物理量の演算を行う(ステップS26)。
次に、制御部31は、キャリブレーション撮影を実行する(ステップS27)。
次に、制御部31は、ステップS25及びステップS27で撮影された放射線画像を用いて、物理量の演算を行う(ステップS28)。そして、キャリブレーション要否判断処理は終了する。
【0044】
図9のフローチャートを用いて、キャリブレーション要否判断処理を説明する。
ステップS31~S36は、
図7のステップS11~S16と同様であるため、説明を省略する。
次に、制御部31は、DXA撮影(被写体有り撮影)を実行する(ステップS37)。
次に、制御部31は、ステップS37で撮影された放射線画像と仮のキャリブレーション画像を対応付け、暫定の物理量の演算を行う(ステップS38)。
次に、制御部31は、キャリブレーション撮影を実行する(ステップS39)。
次に、制御部31は、ステップS37及びステップS39で撮影された放射線画像を用いて、物理量の演算を行う(ステップS310)。そして、キャリブレーション要否判断処理は終了する。
また、ステップS31、S32、S33において、制御部31がYESと判断した場合、制御部31は、DXA撮影(被写体有り撮影)を実行する(ステップS311)。
次に、制御部31は、前回のキャリブレーション撮影及びステップS311で撮影された放射線画像を用いて、物理量の演算を行う(ステップS312)。そして、キャリブレーション要否判断処理は終了する。
【0045】
一般的には、
図6や
図7のように、キャリブレーション撮影を実施する場合、キャリブレーション撮影の後に、被写体有り撮影を行う。
しかし、被写体有り撮影をキャリブレーション撮影の前に行いたい場合も存在する。この場合、被写体有り撮影後に、即座に骨密度などの演算ができない。
このため、被写体有り撮影をキャリブレーション撮影の前に行いたい場合、
図8や
図9のように、被写体有り撮影後に、被写体有り画像と仮のキャリブレーション画像を対応付けて演算することで、暫定の演算結果を得ることができ、キャリブレーション撮影前に被写体有り撮影が正しく撮影できたか否か確認でき、被写体有り撮影が正しく撮影できていないにもかかわらず、患者を帰らせてしまうリスクを軽減できる。そして、後程、キャリブレーション撮影を行い、被写体有り画像と対応付け直し、演算することで、正規な演算結果を得ることができる。
上記の仮のキャリブレーション画像は、ある標準値を用いるか、患者の体重等から算出した計算値、他の検査の値を用いることができる。
なお、上記
図6~
図9に示す処理において、制御部31は、コンソール3の表示部34に通知させているが、撮影室内に設けられた表示部に通知させた方が望ましい。一般的には、コンソール3は、撮影室の外にある操作室に配置されている。撮影室内に設けられた表示部とは、例えば、放射線発生装置1に附属の表示部や、通信ネットワークNに接続されて撮影室の中に配置された表示用モニタなどが挙げられる。放射線発生装置1に附属の表示部とは、例えば、放射線源11に附属された表示部が挙げられる。通信ネットワークNに接続されて撮影室の中に配置された表示用モニタは、例えば、SIDを変化させる操作によって配置が変化する部分(放射線源11など)や被写体台T(撮影台)に配置されるのが望ましい。
【0046】
<キャリブレーション撮影の工夫例>
次に、キャリブレーション撮影の工夫例について説明する。
例えば、制御部31が、キャリブレーション撮影時にX線プロファイルの異常を確認することで、放射線発生装置1(放射線源11、Kエッジフィルタ12、スリット13)や放射線検出器2の設定の異常を検知できる。
以降の説明では、放射線プロファイルは、
図2の照射範囲ROIの紙面に向かって平行なある直線上で検知された信号値のプロファイルを例として説明する。放射線プロファイルの横軸がある直線上の位置で、縦軸が検知された信号値である。
図10は、正常な放射線プロファイルP1の例である。放射線源11から放射線検出器2の照射範囲ROIに均一に放射線が照射される状態が正常な状態なので、放射線プロファイルP1では、信号値の最大値が一定となる。
一方で、
図11は、異常な放射線プロファイルP2、P3、P4の例である。放射線プロファイルP2、P4では、信号値の最大値が一定とならない。放射線プロファイルP2では、
図2の放射線検出器2の照射範囲ROIの紙面右側から左側(又は左側から右側)に向かって、信号値が徐々に大きくなっている。放射線プロファイルP4では、信号値が波打っている。また、放射線プロファイルP3では、信号値に乱れが生じている。
上記のような異常な放射線プロファイルP2、P3、P4は、例えば、放射線源11、Kエッジフィルタ12、スリット13が放射線照射軸上に並んでいない場合などで発生する。
【0047】
また、制御部31が、キャリブレーション撮影時に、スキャン撮影における放射線源11の速度精度及び線量変動、放射線検出器2のスジムラ/ゲインムラを検知できる。
スキャン撮影において、照射範囲ROIごとに検出される放射線プロファイルは同じ形であり、かつ、放射線プロファイルは互いにある位置において重なっている必要がある。なぜなら、照射範囲ROIごとに検出される放射線プロファイルを結合するからである。
図12は、正常な放射線プロファイルP5、P6、P7(複数回照射)の例である。一方で、
図13は、異常な放射線プロファイルP8、P9、P10(複数回照射)の例である。
図12及び
図13では、各プロファイルをずらして示しているが、実際には、各プロファイルの下限値が揃った状態で並んだ状態となる。
スキャン撮影において放射線源11の速度が大きすぎる場合、
図13のように、各プロファイルに重なった部分が無く、結合することができない。
また、スキャン撮影において放射線源11の線量が位置によって変動する場合、各プロファイルの形が異なり、正しく結合することができない。
また、放射線検出器2に不具合(例えば、ある場所において検出能が低い)があれば、各プロファイルの形が異なり、正しく結合することができない。不具合箇所が、ムラとなって生じる。
【0048】
また、上記の通り、スキャン撮影において、照射範囲ROIごとに検出される放射線プロファイルは同じ形であり、かつ、放射線プロファイルは互いにある位置において重なっている必要があるが、重なり部分を大きくすることで、キャリブレーション画像の精度向上が図れる。
具体的には、
図14のように、
図12と比較して、重なり部分が大きくとられている。
【0049】
また、制御部31が、患者情報に基づき、キャリブレーション撮影の撮影条件を決定してもよい。被写体有り撮影において、撮影条件は、被写体(大)、被写体(中)、被写体(小)で区分けされ、体格が大きいほど高い線量とする前提において、キャリブレーション撮影においても、被写体有り撮影の撮影条件と合わせることで、高精度な測定結果が得られる。つまり、キャリブレーション撮影と被写体有り撮影の撮影条件が同じである方が、後から換算して計算するより、高精度となる。
【0050】
また、
図6~
図9のステップS1、S11、S21、S31において、DXA撮影であると判定した場合、制御部31は、表示部34にDXA検査画面を表示するが、その際、DXA検査画面に被写体無し撮影用オートポジショニングボタンを表示してもよい。被写体無し撮影用オートポジショニングボタンがユーザーにより押下されると、キャリブレーション撮影用のホームポジションに、放射線発生装置1が移動する。
これにより、ユーザー(技師)の手間削減、ワークフローの効率化ができる。
【0051】
<その他>
また、キャリブレーション画像の撮影後、放射線発生装置1および/又は放射線検出器2の状態の変化を抑制する抑制手段を有してもよい。具体的には、抑制手段は、放射線検出器2を撮影台Sから着脱すること、SIDを変更することを抑制する手段である。
抑制手段とは、例えば、キャリブレーション画像の撮影が完了したら、SIDが変更できないように放射線源11をSID方向に距離を変更できないように電磁ロックをかけ、SID方向に距離を変更する場合は、ユーザーが意図的に電磁ロックを解除するためのアクション(例えば、コンソール3の操作)を実行しないとならないようにすることである。他の例としては、例えば、キャリブレーション画像の撮影が完了したら、ブッキーからFPDの着脱がしにくいようにFPD着脱の挿入口に電磁ロックをかけ、FPD着脱をする場合は、ユーザーが意図的に電磁ロックを解除するためのアクション(例えば、コンソール3の操作)を実行しないとならないようにすることである。
【0052】
なお、第1通知ステップや第2通知ステップでは、制御部31は、表示部34に、キャリブレーション撮影が必要であることを通知するだけでなく、DXA撮影(被写体有り撮影)後にキャリブレーション撮影をしてもよいことを通知させるようにしてもよい。
また、第2通知ステップでは、制御部31は、被写体有り撮影を禁止した上で、表示部34に、通知させるようにしてもよい。具体的には、放射線撮影システム100に備えられた、検知装置5により、被写体Hの存在が確認できている間は、制御部31は、キャリブレーション撮影を禁止したうえで、通知を行う。これにより、ユーザーが誤って、被写体Hが撮影台S上にある状態で、キャリブレーション撮影をすることを防止できる。
【0053】
また、
図7や
図9のフローチャートでは、SID変化、FPD着脱の判別ステップがあるが、これに限られない。
例えば、管球の角度情報(+パネル角度)が適切かどうかを判別してもよい。前回撮影の状態次第で管球が傾いているケースも考えられるが、このようにすることで、所定の角度以外で撮影が開始され、無駄な撮影になってしまうことを防止することができる。
また、制御部31は、管電圧kVや管電流、管電流時間積mAs値を放射線発生装置1の持つスペック以上の高精度で制御する必要がある場合がある。そのため、放射線源11に線量計を備えるか、放射線発生装置1から線量情報を送信するかの手段を用いる。その手段を用いて、線量情報をコンソール3に入力し、線量のバラつきによる画像上の信号値バラつきを補正してもよい。放射線発生装置1はDXA撮影で求める精度で照射することができない場合が多いが、このようにすることで、同一線量で照射したのと同等の効果が得られる。なお、線量計に変わるものとして、放射線発生装置1が出力する線量情報を元にしてもよい。
また、制御部31は、管球(放射線源11)又はコリメータに取り付けた可視光カメラおよび/又は測距センサ(測距カメラ)によって、SSD(Source Skin Distance;管球焦点から被写体Hの表面までの距離)を導出してもよい。例えば、制御部31は、放射線発生装置1のメカ的配置情報から取得したSIDからSSDを引いて体厚を出し、散乱線補正(体厚が大きい場合は、線量を増やす必要があり、その結果、散乱線も増えるため、補正がより必要)に利用してもよい。また、SSDを、撮影条件の自動導出に使用しても良い。
【0054】
<効果>
以上のことから、X線撮影システム(放射線撮影システム100)は、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影と一般撮影とが可能なX線撮影システムであって、エネルギーの異なる複数のX線を個別に照射可能なX線照射手段(放射線発生装置1)と、X線照射手段により照射されたX線に基づくX線画像を撮影する可搬型のX線検出手段(放射線検出器2)と、所定の条件下で、X線検出手段によるキャリブレーション画像の撮影に関する第1通知を行う制御手段(コンソール3;特に、制御部31)と、を備え、制御手段は、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影を行うごと、または、キャリブレーション画像の撮影が必要と判別された場合に、第1通知を行うことで、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影と一般撮影とが可能なX線撮影システムにおいて、キャリブレーションを好適に実施できる。
【0055】
また、X線撮影システム(放射線撮影システム100)は、キャリブレーション画像の撮影の要否を判別する第1判別手段(制御部31)を有し、第1判別手段は、X線照射手段及び/またはX線検出手段の状態の変化に基づいてキャリブレーション画像の撮影の要否を判別することで、X線照射手段及び/またはX線検出手段の状態がDXA法による撮影に適さない状態となることを防止できる。
【0056】
また、キャリブレーション画像の撮影と、被写体画像の撮影の対応付けを変更可能であることで、被写体有り画像の撮影を先に実施した場合に、後程、キャリブレーション画像を対応付け直すことができる。
【0057】
また、X線撮影システム(放射線撮影システム100)は、撮影台に被写体が存在するかどうかを判別する第2判別手段(制御部31)を有し、制御手段は更に、キャリブレーション画像の撮影時に撮影台に被写体が存在する場合にその旨の第2通知を行うことで、キャリブレーション画像の撮影に適さない状態での撮影を防止できる。
【0058】
また、X線撮影制御装置(コンソール3)は、エネルギーの異なる複数のX線を個別に照射可能なX線照射手段(放射線発生装置1)と、X線照射手段により照射されたX線に基づくX線画像を撮影する可搬型のX線検出手段(放射線検出器2)により、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影と一般撮影とを行うX線撮影システムにおける、X線撮影制御装置(コンソール3)であって、所定の条件下で、X線検出手段によるキャリブレーション画像の撮影に関する第1通知を行う制御手段を備え、制御手段は、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影を行うごとに通知を行う、または、キャリブレーション画像の撮影が必要と判別された場合に第1通知を行うことで、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影と一般撮影とが可能なX線撮影システムにおいて、キャリブレーションを好適に実施できる。
【0059】
また、X線撮影方法は、エネルギーの異なる複数のX線を個別に照射可能なX線照射手段(放射線発生装置1)と、X線照射手段により照射されたX線に基づくX線画像を撮影する可搬型のX線検出手段(放射線検出器2)により、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影と一般撮影とが可能なX線撮影システム(放射線撮影システム100)を用いたX線撮影方法であって、所定の条件下で、X線検出手段によるキャリブレーション画像の撮影に関する第1通知を行う制御ステップを備え、制御ステップは、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影を行うごとに通知を行う、または、キャリブレーション画像の撮影が必要と判別された場合に第1通知を行うことで、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影と一般撮影とが可能なX線撮影システムにおいて、キャリブレーションを好適に実施できる。
【0060】
また、プログラムは、エネルギーの異なる複数のX線を個別に照射可能なX線照射手段(放射線発生装置1)と、X線照射手段により照射されたX線に基づくX線画像を撮影する可搬型のX線検出手段(放射線検出器2)により、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影と一般撮影とを行うX線撮影システム(放射線撮影システム100)における、X線撮影制御装置(コンソール3)のコンピュータを、所定の条件下で、X線検出手段によるキャリブレーション画像の撮影に関する第1通知を行う制御手段(制御部31)として機能させ、制御手段は、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影を行うごとに通知を行う、または、キャリブレーション画像の撮影が必要と判別された場合に第1通知を行うことで、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影と一般撮影とが可能なX線撮影システムにおいて、キャリブレーションを好適に実施できる。
【0061】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0062】
例えば、上記実施形態においては、上記撮影時処理を実行する機能をコンソール3が有することとしたが、この撮影時処理を実行する機能又はその一部を実行する機能を、放射線撮影システム100が備える他の装置又は放射線撮影システム100に接続される他のシステムに備えるようにしてもよい。
【0063】
また、上記、二重エネルギーX線吸収測定法によるX線撮影と一般撮影とが可能なX線撮影システムとしているが、この2つ以外の撮影機能を搭載していてもよい。また、例えば、撮影装置は、透視装置で実現するDXA撮影装置でもよい。
【0064】
また、以上の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体として半導体メモリーやハードディスクを使用した例を開示したが、この例に限定されない。
その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリー、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。
また、通信回線を介して本発明に係るプログラムのデータを提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も本発明に適用される。
【符号の説明】
【0065】
100 放射線撮影システム(X線撮影システム)
1 放射線発生装置(X線照射手段)
2 放射線検出器(X線検出手段)
3 コンソール(X線撮影制御装置)
31 制御部(制御手段、第1判別手段、第2判別手段)
32 通信部
33 記憶部
34 表示部(通知手段)
35 操作部
4 サーバー
41 データベース
N 通信ネットワーク
A 通知手段