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特開2024-152391溶接制御方法、溶接システム、および溶接制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152391
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】溶接制御方法、溶接システム、および溶接制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/127 20060101AFI20241018BHJP
   B23K 9/12 20060101ALI20241018BHJP
   B23K 9/095 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B23K9/127 508D
B23K9/12 350G
B23K9/095 510A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066550
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】河田 純一
(72)【発明者】
【氏名】矢野 猛
(57)【要約】
【課題】溶接画像を用いた溶接制御において、安定した溶接品質を維持する。
【解決手段】溶接中に取得した溶接画像に基づいて溶接条件を制御する溶接制御方法が、前記溶接画像に基づいて、少なくともギャップ幅を所定の時間間隔で取得する取得ステップと、前記ギャップ幅に基づいて、溶接進行方向に係る溶融池情報の目標値を決定する目標値決定ステップと、前記溶接進行方向に係る溶融池情報の算出値と前記目標値との間の差分値を算出する差分値算出ステップと、前記差分値に基づいて、溶接条件の設定値のうち少なくとも一つを補正する補正ステップとを有する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接中に取得した溶接画像に基づいて溶接条件を制御する溶接制御方法であって、
前記溶接画像に基づいて、少なくともギャップ幅を所定の時間間隔で取得する取得ステップと、
前記ギャップ幅に基づいて、溶接進行方向に係る溶融池情報の目標値を決定する目標値決定ステップと、
前記溶接進行方向に係る溶融池情報の算出値と前記目標値との間の差分値を算出する差分値算出ステップと、
前記差分値に基づいて、溶接条件の設定値のうち少なくとも一つを補正する補正ステップと、
を有する、溶接制御方法。
【請求項2】
前記溶接条件の設定値を前記ギャップ幅に基づいて変更させる変更ステップをさらに有し、
前記変更ステップにおいて変更する前記溶接条件の設定値は、溶接電流と、アーク電圧と、溶接速度と、オフセット値と、ウィービング振幅と、ウィービング端停止期間とのうち少なくとも一つであることを特徴とする、
請求項1に記載の溶接制御方法。
【請求項3】
前記変更ステップにおいて変更する前記溶接条件の設定値を、前記ギャップ幅と、ギャップ幅と前記溶接条件の設定値との間の関係を所定の標準項目ごとに記憶させたデータベースとに基づいて取得することを特徴とする、
請求項2に記載の溶接制御方法。
【請求項4】
前記補正ステップにおいて補正する前記溶接条件の設定値が、溶接速度を少なくとも含むことを特徴とする、請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の溶接制御方法。
【請求項5】
前記差分値を、所定の第1閾値に基づいて第1のリミッターにかけるステップをさらに有することを特徴とする、
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の溶接制御方法。
【請求項6】
前記補正ステップにおいて、前記差分値と所定の第1係数を乗じた項と、前記差分値の積分値と所定の第2係数を乗じた項とを少なくとも含む算出式に基づいて、前記溶接条件の設定値のうち少なくとも一つを補正する、
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の溶接制御方法。
【請求項7】
前記積分値を、所定の第2閾値に基づいて第2のリミッターにかけるステップをさらに有することを特徴とする、
請求項6に記載の溶接制御方法。
【請求項8】
前記補正ステップにおいて補正された溶接条件を、所定の第3閾値および第4閾値に基づいて第3のリミッターにかけるステップをさらに有し、
前記第3閾値は、前記溶接条件の設定値の下限を規定する値であり、
前記第4閾値は、前記溶接条件の設定値の上限を規定する値である、
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の溶接制御方法。
【請求項9】
前記溶接進行方向に係る溶融池情報の算出値を、撮像タイミングが前後する2以上の前記溶接画像についての2以上の溶融池情報の算出値の移動平均によって算出するステップをさらに含むことを特徴とする、
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の溶接制御方法。
【請求項10】
前記溶融池情報が、前記溶接画像における所定の位置と溶融池先端との間の距離と、溶融池面積とのうち少なくとも一方を含むことを特徴とする、
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の溶接制御方法。
【請求項11】
前記所定の位置は、ワイヤ先端位置またはアーク中心点であることを特徴とする、
請求項10に記載の溶接制御方法。
【請求項12】
前記溶接画像を入力データとし、少なくとも前記ギャップ幅と、前記溶接進行方向に係る溶融池情報とを算出するための特徴情報を出力する学習済みモデルに、前記溶接画像を入力して出力された前記特徴情報に基づいて、前記ギャップ幅と、前記溶接進行方向に係る溶融池情報とを取得することを特徴とする、
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の溶接制御方法。
【請求項13】
前記差分値が、前記第1閾値が規定する範囲から外れた値である場合に、
前記差分値を所定の値に設定する、
その差分値に基づく前記補正ステップを行わない、
範囲外である旨の信号を出力する、および、
ロボット制御装置の停止
のうちの1つを行うことを特徴とする、請求項5に記載の溶接制御方法。
【請求項14】
前記積分値が、前記第2閾値が規定する範囲から外れた値である場合に、
前記積分値を所定の値に設定する、
その積分値に基づく前記補正ステップを行わない、
範囲外である旨の信号を出力する、および、
ロボット制御装置の停止
のうちの1つを行うことを特徴とする、請求項7に記載の溶接制御方法。
【請求項15】
前記溶接条件の設定値が、前記第3閾値と前記第4閾値とが規定する範囲から外れた値である場合に、
前記溶接条件の設定値を所定の値に設定する、
その溶接条件の設定値へと補正する前記補正ステップを行わない、
範囲外である旨の信号を出力する、および、
ロボット制御装置の停止
のうち1つを行うことを特徴とする、請求項8に記載の溶接制御方法。
【請求項16】
溶接ロボットと、ロボット制御装置と、撮像装置とを少なくとも備える溶接システムであって、
前記撮像装置が、前記溶接ロボットが行う溶接中に溶接画像を撮像し、
前記ロボット制御装置が、
前記溶接画像に基づいて、少なくともギャップ幅を所定の時間間隔で取得し、
前記ギャップ幅に基づいて、溶接進行方向に係る溶融池情報の目標値を決定し、
前記溶接進行方向に係る溶融池情報の算出値と前記目標値との間の差分値を算出し、
前記差分値に基づいて、溶接条件の設定値のうち少なくとも一つを補正する、
溶接システム。
【請求項17】
装置が備えるプロセッサに、
溶接中に取得した溶接画像に基づいて、少なくともギャップ幅を所定の時間間隔で取得する取得機能と、
前記ギャップ幅に基づいて、溶接進行方向に係る溶融池情報の目標値を決定する目標値決定機能と、
前記溶接進行方向に係る溶融池情報の算出値と前記目標値との間の差分値を算出する差分値算出機能と、
前記差分値に基づいて、溶接条件の設定値のうち少なくとも一つを補正する補正機能と、
を実現させる、溶接制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接画像を用いた溶接制御方法、溶接システム、および溶接制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
造船、橋梁、建築などの各製造分野の自動溶接において、横向や立向姿勢といった難姿勢での溶接や、ルートギャップや裏当て隙間や目違いが変わる溶接といった所謂「難しい溶接」であっても、良好なビード形状が得られ、溶接欠陥を生じないといった高い溶接品質を得ることが求められている。従来、難しい溶接であっても高い溶接品質を得る自動溶接技術として、視覚センサを用い、溶接画像に基づいて溶接制御する方法がある。
【0003】
特許文献1は、横向き溶接において溶接トーチを溶融池に対して適切な位置に維持することが可能な自動溶接システムを課題とし、その解決手段として、鉛直方向に並ぶ2つの被溶接部材間に形成された水平方向に延びる開先において、溶接進行方向を前方向とするとき、溶接トーチを前下方向と後上方向とに交互にウィービングさせながらアーク溶接を行う溶接ロボットと、アーク溶接により開先に生じたアーク及び溶融池を撮影するカメラと、カメラにより撮影されたカメラ画像中の溶融池の先端部の位置を検出する検出部と、アークと溶融池の先端部との距離が所定の範囲にある場合に、当該距離に基づいて溶接速度の補正量を決定する決定部と、を備える溶接システムを開示している。
【0004】
また、特許文献2では、ルートギャップや裏当て隙間や目違いが変わっても良好なビード形状とビード品質を安定して得ることを課題として、その解決手段として、視覚センサで撮影した被溶接部材の溶融池及びその近傍の画像からトーチ揺動の左右端部の画像を抽出し、抽出した左右端部の画像を合成して仮想溶融池画像を有する合成画像を作成し、仮想溶融池画像の左端点と右端点との間の距離を揺動幅特徴量として算出して開先幅変動に対するトーチ揺動パターンの追従(適応)制御を行っている。また、電極画像の先端中心点から仮想溶融池画像の左端点と右端点の中央点までの距離を揺動中心特徴量として算出し、算出した揺動中心特徴量を用いて開先中心線倣い制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-079444号公報
【特許文献2】特開2007-185700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、溶接条件、ウィービングの振り方、溶接姿勢、ルートギャップ、裏当て隙間や目違いが変わると、溶融池の挙動の変化が大きく、想定する状況に応じて、制御方法を変える必要がある。特許文献1は、横向姿勢用に溶接制御式が設けられているが、溶接姿勢、ウィービングの振り方やルートギャップなどが変わると、溶融池の形状が変わり、適切な溶接制御ができなくなるため、溶接品質に悪影響を及ぼす可能性がある。また、特許文献2は、ルートギャップ、裏当て隙間や目違いに関しては、適切な溶接制御が可能であるが、溶接姿勢が変われば、適切な溶接制御ができなくなる可能性が高い。
【0007】
このように、溶接条件、ウィービングの振り方(以降、ウィービング方法とも称する。)、溶接姿勢、ルートギャップ、裏当て隙間や目違いといった種々の状況が組み合わさった場合においても、安定した溶接品質が維持できるロバスト性の高い、制御方法が求められる。
【0008】
よって、本願発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、溶接画像を用いた溶接制御において、どのような状況においても安定した溶接品質を維持できるロバスト性の高い溶接制御方法、溶接システム、および溶接制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記の構成からなる。
(1) 溶接中に取得した溶接画像に基づいて溶接条件を制御する溶接制御方法であって、
前記溶接画像に基づいて、少なくともギャップ幅を所定の時間間隔で取得する取得ステップと、
前記ギャップ幅に基づいて、溶接進行方向に係る溶融池情報の目標値を決定する目標値決定ステップと、
前記溶接進行方向に係る溶融池情報の算出値と前記目標値との間の差分値を算出する差分値算出ステップと、
前記差分値に基づいて、溶接条件の設定値のうち少なくとも一つを補正する補正ステップと、
を有する、溶接制御方法。
【0010】
(2) 溶接ロボットと、ロボット制御装置と、撮像装置とを少なくとも備える溶接システムであって、
前記撮像装置が、前記溶接ロボットが行う溶接中に溶接画像を撮像し、
前記ロボット制御装置が、
前記溶接画像に基づいて、少なくともギャップ幅を所定の時間間隔で取得し、
前記ギャップ幅に基づいて、溶接進行方向に係る溶融池情報の目標値を決定し、
前記溶接進行方向に係る溶融池情報の算出値と前記目標値との間の差分値を算出し、
前記差分値に基づいて、溶接条件の設定値のうち少なくとも一つを補正する、
溶接システム。
【0011】
(3) 装置が備えるプロセッサに、
溶接中に取得した溶接画像に基づいて、少なくともギャップ幅を所定の時間間隔で取得する取得機能と、
前記ギャップ幅に基づいて、溶接進行方向に係る溶融池情報の目標値を決定する目標値決定機能と、
前記溶接進行方向に係る溶融池情報の算出値と前記目標値との間の差分値を算出する差分値算出機能と、
前記差分値に基づいて、溶接条件の設定値のうち少なくとも一つを補正する補正機能と、
を実現させる、溶接制御プログラム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、溶接画像を用いた溶接制御において、どのような状況においても安定した溶接品質を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る溶接システムの構成例を示す概略図である。
図2】本実施形態に係る溶接制御方法を例示するフローチャートである。
図3】本実施形態に係る撮像装置の配置位置を説明するための斜視図である。
図4】横向き姿勢の溶接の場合に、撮像装置にて撮像された溶接画像を例示する図である。
図5】本実施形態に係るデータ処理装置の構成例を示すブロック図である。
図6】教示作業に用いる画面の一例を示す説明図である。
図7】横向姿勢の溶接により得られる溶接画像の具体例と、その溶接画像内の溶接情報の例を示す説明図である。
図8】本実施形態に係るデータベースが有する情報内容を例示する概念図である。
図9】ピッチを例示する概念図である。
図10】オフセット量を例示する概念図である。
図11】本実施形態に係る溶接速度の補正処理を例示するフローチャートである。
図12】本実施形態に係る溶接条件の制御例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本願発明の一実施形態に係る溶接システムについて図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において、同じ構成要素については、同じ参照番号を付すことにより対応関係を示す。本発明に係る溶接システムは、可搬型溶接ロボットに好適であるが、本実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、6軸の溶接ロボット、台車などの駆動部を有する自動溶接装置の場合であってもよい。また、本実施形態では、一例として、横向姿勢の片面溶接を選択しているが、これに限定されるものではなく、施工方法、溶接姿勢は特に問わない。
【0015】
また、本実施形態では、後述するように、少なくとも、溶接中の溶融池を画像データに含めるように撮像し、溶融池、溶接ワイヤ、及びアークに係る特徴点を抽出する。この特徴点の抽出方法は特に問わないが、本実施形態においては、後述する学習装置を用いて特徴点を抽出する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る溶接システムの構成例を示す概略図である。溶接システム50は、可搬型溶接ロボット100、送給装置300、溶接電源400、シールドガス供給源500、ロボット制御装置600、撮像装置700、およびデータ処理装置800を含んで構成される。なお、上述したように本実施形態の特徴を6軸の溶接ロボット、台車などの駆動部を有する自動溶接装置などに適用する場合には、それらの構成に合わせて更なる構成が含まれてよい。また、溶接システム50を構成する各部位は、有線又は無線の各種通信方式により、通信可能に接続される。ここでの通信方式は、1つに限定するものではなく、複数の通信方式を組み合わせて接続されてよい。
【0017】
(ロボット制御装置)
ロボット制御装置600は、ロボット用制御ケーブル610によって可搬型溶接ロボット100と接続され、電源用制御ケーブル620によって溶接電源400と接続されている。ロボット制御装置600は、あらかじめ可搬型溶接ロボット100の動作パターン、溶接開始位置、溶接終了位置、施工条件、溶接条件等を定めたティーチングデータを保持するデータ保持部601を有し、このティーチングデータに基づいて可搬型溶接ロボット100及び溶接電源400に対して指令情報をコマンドとして送り、可搬型溶接ロボット100の動作及び溶接条件を制御する。
【0018】
また、ロボット制御装置600は、溶接前において、タッチセンシングなどのセンシングを行うことにより得られる検知データから開先形状情報を算出する開先形状情報算出部602と、該開先形状情報をもとに上記ティーチングデータの溶接条件を補正して取得する溶接条件取得部603と、を有してもよい。そして、開先形状情報算出部602と溶接条件取得部603により、制御部604が構成されている。制御部604は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成される。
【0019】
ロボット制御装置600は、センシングによって補正を行ったティーチングデータの溶接条件で溶接を開始する。撮像装置700は、溶接中の溶融池を画像データに含めるように撮像する。撮像された画像データを取得したデータ処理装置800が特徴点を抽出する。そしてロボット制御装置600は、各特徴点の情報から様々な処理の補正信号を指令情報(以降、コマンドとも称する。)として受信する(S1)。ロボット制御装置600は、それぞれ後述する、ギャップ処理(S2)、運棒処理(S3)、倣い・振幅処理(S4)、および速度処理(S5)等の制御を順次に実行する。ロボット制御装置600は、溶接中に受信した補正信号に応じて各制御の処理を行い、その後、各種制御条件のステータス更新の情報をデータ処理装置800へ出力する(S6)。上記の処理(S1~S6)を、目的とする溶接が終了するまで繰り返す(S7)。
【0020】
溶接電源400は、ロボット制御装置600からの指令により、消耗電極である溶接ワイヤ211及びワークWoに電力を供給することで、溶接ワイヤ211とワークWoとの間にアークを発生させる。溶接電源400からの電力は、パワーケーブル410を介して送給装置300に送られ、送給装置300からコンジットチューブ420を介して溶接トーチ(以下、「トーチ」と称する。)200に送られる。そして、溶接電源400からの電力は、トーチ200先端のコンタクトチップを介して、溶接ワイヤ211に供給される。なお、溶接作業時の電流は、直流又は交流であってもよく、また、その波形は特に問わない。よって、電流は、矩形波や三角波などのパルスであってもよい。
【0021】
また、溶接電源400は、例えば、パワーケーブル410がプラス電極としてトーチ200側に接続され、パワーケーブル430をマイナス電極としてワークWoに接続される。なお、これは逆極性で溶接を行う場合であり、正極性で溶接を行う場合はプラス電極のパワーケーブルがワークWo側に接続され、マイナス電極のパワーケーブルが、トーチ200側と接続されていればよい。
【0022】
(シールドガス供給源)
シールドガス供給源500は、シールドガスが封入された容器、バルブ等の付帯部材から構成される。シールドガス供給源500から、シールドガスがガスチューブ510を介して送給装置300へ送られる。送給装置300に送られたシールドガスは、コンジットチューブ420を介してトーチ200に送られる。トーチ200に送られたシールドガスは、トーチ200内を流れて、ノズル210にガイドされ、トーチ200の先端側から噴出する。本実施形態で用いるシールドガスとしては、例えば、アルゴン(Ar)や炭酸ガス(CO2)又はこれらの混合ガスを用いることができる。
【0023】
本実施形態に係るコンジットチューブ420は、チューブの外皮側にパワーケーブルとして機能するための導電路が形成され、チューブの内部に溶接ワイヤ211を保護する保護管が配置され、シールドガスの流路が形成されている。ただし、コンジットチューブ420は、これに限られるものではなく、例えば、トーチ200に溶接ワイヤ211を送給するための保護管を中心にして、電力供給用ケーブルやシールドガス供給用のホースを束ねたものを用いることもできる。また、例えば、溶接ワイヤ211及びシールドガスを送るチューブと、パワーケーブルとを個別に設置することもできる。
【0024】
(送給装置)
送給装置300は、溶接ワイヤ211を繰り出してトーチ200に送る。送給装置300により送られる溶接ワイヤ211は、特に限定されず、ワークWoの性質や溶接形態等によって選択され、例えば、ソリッドワイヤやフラックス入りワイヤが使用される。また、溶接ワイヤの線径は、特に問わないが、本実施形態において好ましい線径は、上限は1.6mmであり、下限は0.9mmである。
【0025】
また、本実施形態においては、ワークWoと溶接ワイヤ211間に電圧を印加し、溶接ワイヤ211がワークWoに接触したときに生じる電圧降下現象を利用して、図3に示した開先10の表面等をセンシングするタッチセンサを検知手段とする。検知手段は、本実施形態のタッチセンサに限られず、画像センサ、レーザセンサ等、又はこれら検知手段の組み合わせを用いてもよいが、装置構成の簡便性から本実施形態のタッチセンサを用いることが好ましい。
【0026】
(撮像装置)
撮像装置700(以降、「視覚センサ」や「カメラ」とも称する。)は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)を視覚センサとして備えるカメラにより構成される。撮像装置700の配置位置は特に問わず、撮像装置700は、可搬型溶接ロボット100に直接取り付けられてもよいし、また、監視カメラとして、周辺の特定の場所に固定されてもよい。可搬型溶接ロボット100に撮像装置700を直接取り付けた場合には、撮像装置700は、可搬型溶接ロボット100の動作に併せて、トーチ200の先端周辺を撮像するように移動する。撮像装置700を構成するカメラの台数は複数でもよい。例えば、機能や設置位置が異なる複数のカメラを用いて撮像装置700が構成されてもよい。
【0027】
また、撮像装置700により撮像する方向も特に問わない。例えば、溶接が進行する方向を前方とした場合に、前方側を撮像するように配置してもよいし、側面側、後方側を撮像するように配置してもよい。したがって、撮像装置700による撮像範囲は、適宜決定すればよい。なお、トーチ200の干渉を抑制するために、前方側から撮像することが好ましく、本実施形態では、前方側からの撮像としている。撮像された画像情報はデータ処理装置800に送信されて、データ処理装置800側で利用される。このとき、データ処理装置800は、撮像された画像情報の中から、例えば、所定の間隔にて任意の画像を取り込み、後述する処理に利用してよい。ここでの取り込み方法や取り込み設定は、例えば、撮像装置700の構成や機能、データ処理装置800の性能などに応じて切り替えられてよい。
【0028】
本実施形態においては、可搬型溶接ロボット100に直接取り付け、固定した撮像装置700を用い、画像データに含めるオブジェクト(対象)として、少なくとも、ワークWo、溶接ワイヤ211、およびアークが含まれる撮像範囲となるように、溶接画像として動画像を撮像する。なお、溶接画像に係る各種撮像設定は、予め規定されていてもよいし、溶接システム50の動作条件に応じて切り替えられてもよい。撮像設定としては、例えば、フレームレート、画像のピクセル数、解像度、シャッタースピードなどが挙げられる。
【0029】
図3は、本実施形態に係る撮像装置700の配置位置を説明するための斜視図である。なお、トーチ200や開先の向きは、溶接の姿勢に応じて異なるため、図3に示す向きは一例である。本実施形態の場合、ワークWoは、突合せ継手である。ワークWoは、2枚の金属板であり、開先を隔てて突き合わされている。本実施形態では横向姿勢を例に挙げ、この場合に、上板側のワークをW1(以降、上板W1と称する。)、下板側のワークをW2(以降、下板W2と称する。)として説明する。また、突き合わされている2枚のワークW1,W2の裏面側には、セラミックス製の裏当て材14が取り付けられている。なお、裏当て材14として、メタル系の裏当て材を使用してもよく、裏当て材を設けない構成にしてもよい。したがって、裏当て材の材質は特に限定するものではなく、ワークWoの材質などに応じて異なってよい。突合せ継手では、開先に沿って一方向にアーク溶接が行われる。以下では、溶接が進行する方向を「溶接線方向」という。図3では、溶接が進行する方向を矢印で示している。このため、トーチ200は、撮像装置700の後方に位置している。
【0030】
図4は、横向き姿勢の溶接の場合に、撮像装置700にて撮像された溶接画像を例示する図である。図4の画像データは、X軸とY軸の2軸からなる座標平面における座標を有する。横向き姿勢の本実施形態では、X軸は溶接線方向を示し、Y軸はX軸に直交する方向を示す。撮像装置700は、アーク溶接中におけるワークWoの溶接位置を含む範囲の画像を撮像する。この撮像画像には、溶融池、溶接ワイヤ211およびアークが含まれる。
【0031】
本実施形態における撮像装置700の視覚センサは、例えば、1024×768ピクセルの静止画像を連続して撮像できる。換言すると、撮像装置700は、溶接画像を動画像として撮像可能である。撮像装置700にて撮像可能な静止画像の解像度は特に限定されるものではない。例えば、撮像装置700が複数のカメラから構成される場合に、複数のカメラそれぞれが異なる解像度の溶接画像を取得してもよい。また、後述する学習済みモデルに入力する前に、処理時間を短縮することを目的として撮像された溶接画像から任意の特徴領域を切り出すなどの前処理を行ってもよい。任意の特徴領域は、所定の領域が中心に位置するように配置された固定サイズの範囲であってもよい。また、任意の特徴領域のサイズは、溶接状況に応じて変更されてもよい。
【0032】
(データ処理装置)
図5は、本実施形態に係るデータ処理装置800の構成例を示すブロック図である。データ処理装置800は、例えばコンピュータで構成される。コンピュータは、本体810、入力部820、および表示部830を含んで構成される。本体810は、CPU811、GPU(Graphical Processing Unit)812、ROM813、RAM814、不揮発性記憶装置815、入出力インタフェース816、通信インタフェース817、映像出力インタフェース818、および算出部819を含んで構成される。CPU811、GPU812、ROM813、RAM814、不揮発性記憶装置815、入出力インタフェース816、通信インタフェース817、映像出力インタフェース818、および算出部819は、バスや信号線によって相互に通信可能に接続されている。
【0033】
不揮発性記憶装置815には、所定の学習データを用いてディープラーニングを実行する学習プログラム815A、学習プログラム815Aの実行を通じて生成される学習済みモデル815B、学習済みモデル815Bを用いて溶接に関する溶接情報を生成する情報生成プログラム815C、および、画像データ815Dが記憶されている。これらの他、不揮発性記憶装置815には、オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムもインストールされている。
【0034】
CPU811およびGPU812によるプログラムの実行により、データ処理装置800は各種の機能を実現する。本実施形態の場合、データ処理装置800は、機械学習により学習済みモデルを生成する機能と、学習済みモデルを利用して実際の溶接時の各種処理を行う機能を実現する。これの機能の内容については後述する。なお、学習済みモデルを生成する機能と、実際の溶接の実行時に学習済みモデルから出力される情報に基づいて制御処理を実行する機能に合わせてデータ処理装置800を分けてもよい。汎用性の観点から見ると、それぞれの機能に合わせて、データ処理装置800を分けることがより好ましい。GPU812は、学習プログラム815Aおよび情報生成プログラム815Cを実行する際の演算装置として使用される。ROM813には、CPU811に実行されるBIOS(Basic Input Output System)等が記憶されている。RAM814は、不揮発性記憶装置815から読み出されたプログラムの作業領域として使用される。
【0035】
入出力インタフェース816は、キーボード、マウス等で構成される入力部820に接続されている。入出力インタフェース816には、視覚センサである撮像装置700も接続されている。撮像装置700から出力された画像データが入出力インタフェース816を介してCPU811に与えられる。通信インタフェース817は、有線または無線通信用の通信モジュールである。映像出力インタフェース818は、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイで構成される表示部830に接続されており、CPU811から与えられた映像データに応じた映像信号を表示部830に出力する。算出部819は、CPU811やGPU812と連携して、例えば、本実施形態に係る溶接速度の制御に用いる幾何学量の算出などの各種処理を実行する。この幾何学量については後述する。
【0036】
(学習済みモデルの生成)
以下、本実施形態にて、画像データから抽出する特徴点および特徴点を抽出する学習済みモデルについて説明する。本実施形態における学習済みモデル815Bは、畳み込みニューラルネットワークにより構成されており、複数の畳み込み層、および複数のプーリング層などを含んでいる。なお、畳み込みニューラルネットワークの構成は上記に限定するものではなく、層数や構成が他の構成であってよい。
【0037】
学習済みモデル815Bは、撮像装置700から出力される溶接画像を入力データとし、少なくともギャップ幅と、溶接進行方向に係る溶融池情報とを算出するための特徴情報を出力する。本実施形態において、学習済みモデル815Bに入力される撮像画像には、少なくとも、オブジェクト(対象)として、溶融池、溶接ワイヤ、及びアークが映り込んでいる。撮像画像を学習済みモデル815Bに入力することにより、これら各オブジェクト、または複数のオブジェクト間から得られる特徴点が抽出される。データ処理装置800は、抽出された特徴点に基づいて、後述するギャップ幅や溶融池情報などの情報を幾何学量として、リアルタイムで取得する。なお、ここでいう溶融池情報の幾何学量の例としては、溶接線方向における溶接ワイヤと溶融池先端間の距離、溶融池の幅または溶融池の面積などが挙げられる。例えば、溶融池情報は、溶接画像における所定の位置と溶融池先端との間の距離と、溶融池面積とのうち少なくとも一方を含む。所定の位置は、ワイヤ先端位置またはアーク中心点であってよい。
【0038】
本実施形態では、溶接情報に係る特徴点として、溶接ワイヤ211の先端(以降、ワイヤ先端とも称する。)、アークの中心点(以降、アーク中心とも称する。)、溶接進行方向に対する溶融池の左右(横向き姿勢の場合は上下となる。)の先端の位置、および溶接進行方向に対する溶融池の左右(横向き姿勢の場合は上下となる。)の端部の位置を使用する。教師データとして用いる特徴点の入力は、教示作業を支援する操作画面の指示に従い、オペレータが溶接画像上の特定の位置を指定することで行われる。したがって、教師データは、溶接画像とオペレータにて指定された溶接情報としての座標情報となる特徴点とを対として構成される。学習処理では、学習モデルから出力される溶接情報と、教師データに含まれる溶接情報とを比較し、その誤差をフィードバックすることでパラメータを調整する。この処理を繰り返すことで、機械学習が進み、学習済みモデル815Bが生成される。
【0039】
図6は、教示作業に用いる画面の一例を示す説明図である。図6に示す画面の溶接画像には、溶融池15、溶接ワイヤ211、およびアーク16が含まれている。図6では、溶融池15を網掛けで示す。図7は、横向姿勢の溶接により得られる溶接画像の具体例と、その溶接画像内の溶接情報の例を示す説明図である。ここでは説明を容易にするために、溶接画像上に、特徴点にて示す座標に相当する位置を描画して示している。なお、上述のとおり画像は座標を持ち、X軸とY軸の2軸からなる座標平面となる。なお、図6および図7に関する説明において、「上端」、「下端」は、画像における上下を示しているに過ぎず、溶接の姿勢と画像の向きに応じて、「右端」、「左端」などに置き換えてよい。
【0040】
本実施形態では、撮像装置700は、溶接線方向とX軸方向とが平行になるように設置させるため、本実施形態においては、X軸方向は溶接線方向と言い換えてもよい。また、Y軸方向はX軸の垂直方向であり、言い換えれば、溶接線の垂直方向である開先幅方向となるから、Y軸方向は開先幅方向と言い換えてもよい。なお、本実施形態の可搬型ロボットが動くX軸は溶接線方向となるので、可搬型ロボットが動くX軸と溶接画像上のX軸も方向が同じとなり、Y軸方向も可搬型ロボットが動くY軸と溶接画像上のY軸方向も同じであると言える。
【0041】
本実施形態の場合、図6に示すように、特徴点として、アーク中心の座標位置P(ArcX,ArcY)、ワイヤ先端の座標位置P(WireX,WireY)、溶融池先端下の座標位置PLD(Pool_Lead_Dx,Pool_Lead_Dy)、溶融池先端上の座標位置PLU(Pool_Lead_Ux,Pool_Lead_Uy)、溶融池下端の座標位置P(Pool_Dy)、溶融池上端の座標位置P(Pool_Uy)が、オペレータにより教示される。特徴点の入力は、画面上の特定の位置をオペレータが指示することで実行される。溶接ワイヤ211とアークの境界を与える座標は、ワイヤ先端の位置座標の一例である。また、溶融池先端下と、溶融池先端上と、溶融池下端と、溶融池上端は、溶融池15の挙動に関する特徴点の一例である。例えば、溶融池下端と溶融池上端の特徴点が分かると、溶融池15の幅を算出することができる。
【0042】
(幾何学量データ)
本実施形態では、ロボット制御装置600またはデータ処理装置800が、予め定めたいずれかの溶融池先端上の位置とワイヤ先端の位置のX方向の差(以降、「LeadX」と称する)と、溶融池先端上と溶融池先端下の差(以降、「LeadW」と称する)の2つの値を少なくとも算出する。本実施形態において、このように、特徴点に基づいて算出される数値データを幾何学量データとも称する。なお、この幾何学量データをデータ処理装置800が算出し、幾何学量データを予め定めた時間の間隔でロボット制御装置600に送信し、ロボット制御装置が溶接制御を行う。なお、溶融池先端位置は、溶融池先端上と溶融池先端下の差の位置に関わらず、用途に応じて、溶融池先端上または溶融池先端下の位置を採用してもよい。また、ロボット制御装置600およびデータ処理装置800は一体化されてよい。矛盾の生じない範囲で、ロボット制御装置600が行うとした処理を、データ処理装置800が代わりに行ってもよく、データ処理装置800が行うとした処理を、ロボット制御装置600が代わりに行ってもよい。
【0043】
<溶接制御方法>
(ギャップ処理S2)
図2は、本実施形態に係る溶接制御方法を例示するフローチャートである。ロボット制御装置600は、データ処理装置800から予め定めた時間の間隔で、前述の幾何学量データを含む情報を受信する。この受信のことを、以降、コマンド受信とも称する。ロボット制御装置600は、コマンド受信を行うと、ギャップ処理S2において、受信したLeadWの幾何学量データに応じて、溶接条件を変更する。ここで、本実施形態においてはLeadWの幾何学量データをギャップ処理S2におけるギャップの値として取り扱う。なお、ギャップの値は、本実施形態において、単位をmmとしている。LeadWの幾何学量データに応じた溶接条件の変更方法は特に問わないが、本実施形態では、図8に示されるように、溶接モードごとに、ギャップ値に対応する溶接条件を予め定めたデータベースを用意しておき、データベースにと受信したLeadWの幾何学量データに基づいて、溶接条件を変更すればよい。なお、ここでいう溶接モードは、例えば、ワイヤ種、シールドガス種、傾斜角、ピッチなどの固定の条件を指す。この固定の条件については、図8において標準項目とも称する。なお、データベースは、ロボット制御装置600が備える記憶装置に記憶されていてよい。
【0044】
図8は、本実施形態に係るデータベースが有する情報内容を例示する概念図である。図8を参照して、標準項目である固定条件がワイヤA、傾斜角α=45°、ピッチp=3.0mmである場合を例示する。溶接中にロボット制御装置600がLeadWの幾何学量データから9mmというギャップの値を受信したとき、ロボット制御装置600は溶接条件を、溶接電流a1、アーク電圧b1、溶接速度c1、オフセット量d1、ウィービング振幅e1、端停止時間(下端側)f1、端停止時間(上端側)g1に変更する。この溶接速度c1が、図12における後述の基準溶接速度(基準WeldSpeed)に対応する。端停止時間(下端側)f1、端停止時間(上端側)g1を、合わせてウィービング端停止期間とも称する。
【0045】
なお、標準項目である固定条件の傾斜角およびピッチ、ならびに変更する溶接条件のオフセット量は、本実施形態に用いた可搬型溶接ロボット特有の項目であり、6軸ロボットを適用した場合には別の項目になる。図8に示した固定条件の種類や、固定条件に応じてデータベース上であらかじめ定められた制御項目の種類は一例であり、行いたい溶接の種類などに応じて当業者が適宜設定してよい。
【0046】
図9は、ピッチを例示する概念図である。ピッチとは、図9に示すように、1ウィービングに進む距離を指し、可搬型溶接ロボットのウィービング方法を決定する際に必要な設定値である。このため、ピッチは固定条件としておくことが好ましい。一般的には、このピッチpの設定値に基づいて、溶接速度、振幅、端停止時間等の他のウィービング条件が決定される。また、オフセット量は、ウィービングの振り方を変更させるための条件となる。ウィービングの1周期中におけるあらかじめ定めた少なくとも1点の方向及び距離を「オフセット量」として変更することによって、種々の軌跡のウィービングを行うことができる。図10は、オフセット量を例示する概念図である。例えば、図10のようにA2の位置をA2’の位置へと変更することによって、特殊な軌跡のウィービングを実現することができる。このとき、オフセット量は図10におけるxの値となる。また、ウィービングが図のように斜め振りタイプの軌跡を描く場合は、傾斜角αを予め固定条件として設定し、その傾斜角α及びその他の設定値に対応したオフセット量xを抽出するとよい。
【0047】
(運棒処理S3)
図2を再び参照する。運棒処理S3では、ロボット制御装置600がコマンド受信した情報またはギャップ処理S2などの前処理の情報に基づいて、運棒の方法を決定する。運棒は、ウィービングとも呼ばれる。本実施形態においては、ギャップ処理S2で決定したオフセット量、ウィービング振幅、端停止時間(下端側)、端停止時間(上端側)などの条件によって、ロボット制御装置600がウィービング方法を決定する。
【0048】
(倣い・振幅処理S4)
倣い・振幅処理S4では、ロボット制御装置600がコマンド受信した情報または前処理の情報に基づいて、溶接線倣いおよび幅倣いを行う。倣いの方法は限定するものではないが、本実施形態においては、LeadWの中央位置を溶接中心位置とし、溶接中心位置と溶融池先端上の位置の差、および溶接中心位置と溶融池先端下の位置の差に基づいて算出される溶接中心位置からのズレ方向(本実施形態における横向き姿勢を例にすると、下方向にズレているか、もしくは上方向にズレているかを判断する)とズレ量に応じて、溶接線の倣い制御を行う。また、LeadWの値に応じて、振幅の補正量を算出することで、幅倣い制御を行う。
【0049】
(速度処理S5)
本願発明では、ギャップに応じて設定した条件に対し、さらに補正を行う。この補正処理により、制御の精度がさらに向上し、溶接条件、ウィービング方法、溶接姿勢、ルートギャップ、裏当て隙間や目違いといった種々の状況が組み合わさった場合においても、安定した溶接品質を維持できる。言い換えると、どのような状況においても安定した溶接品質が維持できるロバスト性の高い溶接制御法を実現することができる。補正する条件は、溶接速度、溶接電流、アーク電圧、突出し長さなどのいずれか一つであれば良いが、制御の容易性と精度の観点から、少なくとも、溶接速度を補正することが好ましい。本実施形態においては、溶接速度を補正する場合(速度処理S5)について説明を行う。
【0050】
図11は、本実施形態に係る溶接速度の補正処理を例示するフローチャートである。本実施形態において、図2に示した速度処理S5は、コマンド受信によって得られるギャップ幅の値と、溶接進行方向に係る溶融池情報の一つであるLeadXとを用いて、溶接速度の補正量を算出する。なお、本実施形態の速度処理S5においては、ギャップ幅の値としてLeadWを用いる。また、溶接進行方向に係る溶融池情報として、本実施形態ではLeadXを用いているが、例えば、溶融池面積などの他の幾何学量データを用いてもよい。
【0051】
(LeadXの目標値の決定)
ステップS501においてロボット制御装置600は、コマンド受信したLeadWに基づいて、LeadXの目標値R_LeadXを決定する。例えば、LeadWが7.0mm以下の場合はR_LeadXを値1に、LeadWが7.0mmより大きく8.0mm以下の場合は、R_LeadXを値2に、LeadWが8.0mmより大きく9.0mm以下の場合はR_LeadXを値3にするように、予め定めておく。ここでいう7.0mm、8.0mm、および9.0mmは、所定の閾値である。すなわちロボット制御装置600は、ギャップ幅LeadWと、所定の閾値とに基づいて、溶接進行方向に係る溶融池情報の目標値R_LeadXを決定する。なお、LeadWとR_LeadXとの間の対応関係を定義したテーブルをロボット制御装置600にあらかじめ保存しておき、ロボット制御装置600は、このテーブルを参照してギャップ幅LeadWから目標値R_LeadXを決定してもよい。
【0052】
(差分値の算出)
ステップS502からS505においてロボット制御装置600は、コマンド受信したリアルタイムのLeadXと目標値R_LeadXとの間の差分値LeadX_Subを算出する。すなわち、本実施形態における溶接進行方向に係る溶融池情報の算出値は、LeadXや、後述のNew_LeadXなどである。ロボット制御装置600は、溶接進行方向に係る溶融池情報の算出値と目標値との間の差分値を算出する。
【0053】
なお、外乱などの影響で、想定外の値で補正がなされると、制御が適切に行われない可能性がある。このような外乱の影響を回避するため、ロボット制御装置600はステップS502からS504において、現行のLeadXの値と過去のLeadXの値との移動平均を適用してもよい。
【0054】
本実施形態においては、式2に示されるように、移動平均値である「New_LeadX」を採用し、「New_LeadX」と「R_LeadX」の差分「LeadX_Sub」を算出している。なお、「New_LeadX」として算出された値は、新たに、「Now_LeadX」が受信される前に、「Old_LeadX」として退避しておき、次の移動平均値の算出に用いられる。
【0055】
New_LeadX=Now_LeadX*(1-k)+Old_LeadX*k (式1)
(kは0~1の変数)
【0056】
LeadX_Sub=New_LeadX-R_LeadX (式2)
【0057】
すなわちロボット制御装置600は、溶接進行方向に係る溶融池情報の算出値New_LeadXを、撮像タイミングが前後する2以上の溶接画像についての2以上の溶融池情報の算出値Now_LeadXおよびOld_LeadXの移動平均によって算出してよい。
【0058】
(第1のリミッターの適用)
制御の安定化の観点から、差分値LeadX_Subに対してリミッターをかけることが好ましい。差分値LeadX_Subが制限範囲を超えた場合、差分値LeadX_Subとして制限範囲の最大値または最小値の値を用いる。例えば差分値LeadX_Subの制限範囲が+αmm~-αmmであり、αは任意の閾値であると仮定する。このαを所定の第1閾値とも称する。差分値LeadX_Subが+側で制限範囲を超える場合は、差分値LeadX_Subの値を固定値であるαmmとし、差分値LeadX_Subが-側で制限範囲を超える場合は差分値LeadX_Subの値を固定値である-αmmとする。図11のステップS506およびS507は、この第1のリミッターの適用処理を示しており、ロボット制御装置600が当該処理を行う。
【0059】
なお、差分値LeadX_Subが、第1閾値αが規定する範囲+αmm~-αmmから外れた値である場合、ロボット制御装置600は、以下の4つの処理のうちの1つを行ってもよい。
・差分値を所定の値(例えば上限値や下限値)に設定する。
・その差分値に基づく補正ステップを行わない。
・範囲外である旨の信号を出力する。
・ロボット制御装置600の停止。
【0060】
ステップS508においてロボット制御装置600は、差分値LeadX_Subの積分値LeadX_Intを計算する。
【0061】
(第2のリミッターの適用)
制御の安定化の観点から、積分値LeadX_Intに対してもリミッターをかけることが好ましい。積分値LeadX_Intが制限範囲を超えた場合、積分値LeadX_Intとして制限範囲の最大値または最小値の値を用いる。例えば積分値LeadX_Intの制限範囲が+βmm~-βmmであり、βは任意の値であると仮定する。このβを所定の第2閾値とも称する。積分値LeadX_Intが+側で制限範囲を超える場合は、積分値LeadX_Intの値を固定値であるβmmとし、積分値LeadX_Intが-側で制限範囲を超える場合は積分値LeadX_Intの値を固定値である-βmmとする。図11のステップS509およびS510は、この第2のリミッターの適用処理を示しており、ロボット制御装置600が当該処理を行う。
【0062】
なお、積分値LeadX_Intが、第2閾値βが規定する範囲+βmm~-βmmから外れた値である場合、ロボット制御装置600は、以下の4つの処理のうちの1つを行ってもよい。
・積分値を所定の値(例えば上限値や下限値)に設定する。
・その積分値に基づく補正ステップを行わない。
・範囲外である旨の信号を出力する。
・ロボット制御装置600の停止。
【0063】
(PI制御)
溶接速度を制御する補正量をLeadX_Speedと表記する。LeadX_Speedの単位はmm/minである。LeadX_Speedは、式3に示されるように、差分値LeadX_Subに任意の第1係数Kpを乗じた項と、積分値LeadX_Intに任意の第2係数Kiを乗じた項とを含むPI制御で算出されることが好ましい。ロボット制御装置600は、補正量LeadX_Speedを算出する(S511)。
【0064】
LeadX_Speed=LeadX_Sub*Kp+LeadX_Int*Ki (式3)
【0065】
(補正後の溶接速度値条件)
ロボット制御装置600は、式4に示すとおり、ギャップに応じて設定した溶接速度条件である基準WeldSpeedに、LeadX_Speedを加算することにより、補正後の溶接速度の値WeldSpeedを算出する(S512)。
【0066】
WeldSpeed=基準WeldSpeed+LeadX_Speed (式4)
【0067】
(第3のリミッターの適用)
なお、補正後の溶接速度の値WeldSpeedについても、制御の安定化の観点から、リミッターをかけることが好ましい。WeldSpeedが制限範囲を超えた場合、ロボット制御装置600はWeldSpeedを制限範囲の最大値または最小値の値とする。図11のステップS513およびS514は、この制限値の適用処理を示しており、ロボット制御装置600が当該処理を行う。
【0068】
例えば、式5および式6のように、基準WeldSpeedに係数を乗じることで、上限値と下限値とを決めても良い。
【0069】
下限値=基準WeldSpeed*M1 (式5)
上限値=基準WeldSpeed*M2 (式6)
【0070】
M1およびM2は、M1≦M2を満たす任意の係数である。基準WeldSpeed*M1が、溶接条件の設定値の下限を規定する第3閾値である。基準WeldSpeed*M2が、溶接条件の設定値の上限を規定する第4閾値である。
【0071】
なお、溶接条件の設定値が、第3閾値と第4閾値とが規定する範囲から外れた値である場合、ロボット制御装置600は、以下の4つの処理のうちの1つを行ってもよい。
・溶接条件の設定値を所定の値(例えば上限値や下限値)に設定する。
・その溶接条件の設定値へと補正する前記補正ステップを行わない。
・範囲外である旨の信号を出力する。
・ロボット制御装置600の停止。
【0072】
そしてロボット制御装置600は、溶接速度の条件を、算出された値である値WeldSpeedに変更する。すなわち、ロボット制御装置600は、差分値LeadX_Subに基づいて、溶接条件の設定値のうち少なくとも一つである溶接速度を補正する。
【0073】
(ステータス更新S6)
上述の処理によって、変更した溶接条件に応じて、ロボット制御装置600は可搬型溶接ロボット100および溶接電源400に指令値を送信する。以上のように、図2のステップS1からS6までの処理を溶接が終了するまで繰り返す。
【0074】
図12は、本実施形態に係る溶接条件の制御例を示すグラフである。グラフの横軸はウィービング回数を示している。ウィービング回数は、ウィービングの1周期分を1回とカウントする。即ち、ウィービング周期に応じた時間間隔でデータを取得している。本実施形態では、所定の時間間隔としてウィービング回数を採用しているが、これに限るものではなく、例えば、予め定めた時間ごとにデータを所得してもよい。グラフには、基準溶接速度(基準WeldSpeed)と、上記のステップS5による補正後の溶接速度(WeldSpeed)と、LeadWと、LeadXと、R_LeadXと、New_LeadXとが記載されている。また、図12では、基準溶接速度と補正後の溶接速度はグラフの左側縦軸,LeadWとLeadXとR_LeadXとNew_LeadXはグラフの右側縦軸にて示す。
【0075】
グラフに見られるように、ステップS2においてLeadWの値に基づいてデータベースから決定した基準溶接速度(基準WeldSpeed)を、ステップS5の処理を行うことにより、溶接速度WeldSpeedへと補正している。
【0076】
ギャップに相当するLeadWの値は、時間の経過と共に増大傾向が見られる。ステップS501で決定された目標値R_LeadXの値は、LeadWの値に基づいて変動している。
【0077】
LeadWの値が増加するにつれて、瞬時値であるLeadXの値は上下動が激しくなっているのがグラフから見てとれる。しかし、ステップS503においてLeadXに対して移動平均を適用し、フィルターをかけたNew_LeadXの値は、上下動が比較的抑えられており、制御に用いる数値として、より安定している。このより安定したNew_LeadXと目標値R_LeadXの差分値LeadX_Subに基づいて、補正後のWeldSpeedがステップS512で決定されている。
【0078】
以上のとおり、本明細書には次の事項が開示されている。
【0079】
(1) 溶接中に取得した溶接画像に基づいて溶接条件を制御する溶接制御方法であって、
前記溶接画像に基づいて、少なくともギャップ幅を所定の時間間隔で取得する取得ステップと、
前記ギャップ幅に基づいて、溶接進行方向に係る溶融池情報の目標値を決定する目標値決定ステップと、
前記溶接進行方向に係る溶融池情報の算出値と前記目標値との間の差分値を算出する差分値算出ステップと、
前記差分値に基づいて、溶接条件の設定値のうち少なくとも一つを補正する補正ステップと、
を有する、溶接制御方法。
この溶接制御方法によれば、溶接画像を用いた溶接制御において、どのような状況においても安定した溶接品質が維持できる。
【0080】
(2) 前記溶接条件の設定値を前記ギャップ幅に基づいて変更させる変更ステップをさらに有し、
前記変更ステップにおいて変更する前記溶接条件の設定値は、溶接電流と、アーク電圧と、溶接速度と、オフセット値と、ウィービング振幅と、ウィービング端停止期間とのうち少なくとも一つであることを特徴とする、
(1)に記載の溶接制御方法。
この溶接制御方法によれば、溶接電流と、アーク電圧と、溶接速度と、オフセット値と、ウィービング振幅と、ウィービング端停止期間とのうち少なくとも一つを変更した上で、さらに補正ステップを行うことにより、より安定した溶接品質が維持できる。
【0081】
(3) 前記変更ステップにおいて変更する前記溶接条件の設定値を、前記ギャップ幅と、ギャップ幅と前記溶接条件の設定値との間の関係を所定の標準項目ごとに記憶させたデータベースとに基づいて取得することを特徴とする、
(2)に記載の溶接制御方法。
この溶接制御方法によれば、データベースを参照して、溶接条件の設定値を容易に変更することができる。
【0082】
(4) 前記補正ステップにおいて補正する前記溶接条件の設定値が、溶接速度を少なくとも含むことを特徴とする、(1)から(3)のうちいずれか一項に記載の溶接制御方法。
この溶接制御方法によれば、比較的容易な制御により溶接の精度を良くすることができる。
【0083】
(5) 前記差分値を、所定の第1閾値に基づいて第1のリミッターにかけるステップをさらに有することを特徴とする、
(1)から(3)のうちいずれか一項に記載の溶接制御方法。
この溶接制御方法によれば、差分値が極端な値になるような場合であっても、制御を安定化させることができる。
【0084】
(6) 前記補正ステップにおいて、前記差分値と所定の第1係数を乗じた項と、前記差分値の積分値と所定の第2係数を乗じた項とを少なくとも含む算出式に基づいて、前記溶接条件の設定値のうち少なくとも一つを補正する、
(1)から(3)のうちいずれか一項に記載の溶接制御方法。
この溶接制御方法によれば、PI制御を安定して行うことができる。
【0085】
(7) 前記積分値を、所定の第2閾値に基づいて第2のリミッターにかけるステップをさらに有することを特徴とする、
(6)に記載の溶接制御方法。
この溶接制御方法によれば、積分値が極端な値になるような場合であっても、制御を安定化させることができる。
【0086】
(8) 前記補正ステップにおいて補正された溶接条件を、所定の第3閾値および第4閾値に基づいて第3のリミッターにかけるステップをさらに有し、
前記第3閾値は、前記溶接条件の設定値の下限を規定する値であり、
前記第4閾値は、前記溶接条件の設定値の上限を規定する値である、
(1)から(3)のうちいずれか一項に記載の溶接制御方法。
この溶接制御方法によれば、補正された溶接条件が極端な値になるような場合であっても、制御を安定化させることができる。
【0087】
(9) 前記溶接進行方向に係る溶融池情報の算出値を、撮像タイミングが前後する2以上の前記溶接画像についての2以上の溶融池情報の算出値の移動平均によって算出するステップをさらに含むことを特徴とする、
(1)から(3)のうちいずれか一項に記載の溶接制御方法。
この溶接制御方法によれば、外乱の影響を回避することができる。
【0088】
(10) 前記溶融池情報が、前記溶接画像における所定の位置と溶融池先端との間の距離と、溶融池面積とのうち少なくとも一方を含むことを特徴とする、
(1)から(3)のうちいずれか一項に記載の溶接制御方法。
この溶接制御方法によれば、これらの溶融値情報に基づいて適切に溶接制御を行うことができる。
【0089】
(11) 前記所定の位置は、ワイヤ先端位置またはアーク中心点であることを特徴とする、(10)に記載の溶接制御方法。
この溶接制御方法によれば、ワイヤ先端位置またはアーク中心点に基づく溶融値情報に基づいて適切に溶接制御を行うことができる。
【0090】
(12) 前記溶接画像を入力データとし、少なくとも前記ギャップ幅と、前記溶接進行方向に係る溶融池情報とを算出するための特徴情報を出力する学習済みモデルに、前記溶接画像を入力して出力された前記特徴情報に基づいて、前記ギャップ幅と、前記溶接進行方向に係る溶融池情報とを取得することを特徴とする、
(1)から(3)のうちいずれか一項に記載の溶接制御方法。
この溶接制御方法によれば、学習済みモデルを活用して、溶接画像からギャップ幅と溶融池情報とを取得することができる。
【0091】
(13) 前記差分値が、前記第1閾値が規定する範囲から外れた値である場合に、
前記差分値を所定の値に設定する、
その差分値に基づく前記補正ステップを行わない、
範囲外である旨の信号を出力する、および、
ロボット制御装置の停止
のうちの1つを行うことを特徴とする、(5)に記載の溶接制御方法。
この溶接制御方法によれば、差分値が極端な値になった場合を検知して、適切な溶接制御を行うことができる。
【0092】
(14) 前記積分値が、前記第2閾値が規定する範囲から外れた値である場合に、
前記積分値を所定の値に設定する、
その積分値に基づく前記補正ステップを行わない、
範囲外である旨の信号を出力する、および、
ロボット制御装置の停止
のうちの1つを行うことを特徴とする、(7)に記載の溶接制御方法。
この溶接制御方法によれば、積分値が極端な値になった場合を検知して、適切な溶接制御を行うことができる。
【0093】
(15) 前記溶接条件の設定値が、前記第3閾値と前記第4閾値とが規定する範囲から外れた値である場合に、
前記溶接条件の設定値を所定の値に設定する、
その溶接条件の設定値へと補正する前記補正ステップを行わない、
範囲外である旨の信号を出力する、および、
ロボット制御装置の停止
のうち1つを行うことを特徴とする、(8)に記載の溶接制御方法。
この溶接制御方法によれば、溶接条件の設定値が極端な値になった場合を検知して、適切な溶接制御を行うことができる。
【0094】
(16) 溶接ロボットと、ロボット制御装置と、撮像装置とを少なくとも備える溶接システムであって、
前記撮像装置が、前記溶接ロボットが行う溶接中に溶接画像を撮像し、
前記ロボット制御装置が、
前記溶接画像に基づいて、少なくともギャップ幅を所定の時間間隔で取得し、
前記ギャップ幅に基づいて、溶接進行方向に係る溶融池情報の目標値を決定し、
前記溶接進行方向に係る溶融池情報の算出値と前記目標値との間の差分値を算出し、
前記差分値に基づいて、溶接条件の設定値のうち少なくとも一つを補正する、
溶接システム。
この溶接システムによれば、溶接画像を用いた溶接制御において、どのような状況においても安定した溶接品質が維持できる。
【0095】
(17) 装置が備えるプロセッサに、
溶接中に取得した溶接画像に基づいて、少なくともギャップ幅を所定の時間間隔で取得する取得機能と、
前記ギャップ幅に基づいて、溶接進行方向に係る溶融池情報の目標値を決定する目標値決定機能と、
前記溶接進行方向に係る溶融池情報の算出値と前記目標値との間の差分値を算出する差分値算出機能と、
前記差分値に基づいて、溶接条件の設定値のうち少なくとも一つを補正する補正機能と、
を実現させる、溶接制御プログラム。
この溶接制御プログラムによれば、溶接画像を用いた溶接制御において、どのような状況においても安定した溶接品質が維持できる。
【符号の説明】
【0096】
10 開先
14 裏当て材
15 溶融池
16 アーク
50 溶接システム
100 可搬型溶接ロボット
200 トーチ
210 ノズル
211 溶接ワイヤ
300 送給装置
400 溶接電源
410 パワーケーブル
420 コンジットチューブ
430 パワーケーブル
500 シールドガス供給源
510 ガスチューブ
600 ロボット制御装置
601 データ保持部
602 開先形状情報算出部
603 溶接条件取得部
604 制御部
610 ロボット用制御ケーブル
620 電源用制御ケーブル
700 撮像装置
800 データ処理装置
810 本体
815 不揮発性記憶装置
815A 学習プログラム
815B 学習済みモデル
815C 情報生成プログラム
815D 画像データ
816 入出力インタフェース
817 通信インタフェース
818 映像出力インタフェース
819 算出部
820 入力部
830 表示部
図1
図2
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図12