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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152395
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/04 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
F02D41/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066559
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 護人
【テーマコード(参考)】
3G301
【Fターム(参考)】
3G301JA37
3G301MA11
3G301NE06
(57)【要約】
【課題】車両の振動周波数が共振周波数になるタイミングにおいて確実に燃料の噴射量を抑制することが可能な車両制御装置を提供する。
【解決手段】車両300の制御装置200は、車両300の加速度を検知する加速度センサ230と、燃料の噴射量を制御するプロセッサ210(制御部)と、を備える。プロセッサ210は、加速度センサ230により検出された加速度の振動に基づいて共振周波数(算出周波数)を算出し、算出周波数に基づいて、燃料の噴射量の抑制量を決定する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が共振する共振周波数において前記車両のエンジンにおける燃料の噴射を抑制する制御を実行する車両制御装置であって、
前記車両の加速度を検知する加速度センサと、
前記燃料の噴射量を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記加速度センサにより検出された前記加速度の振動に基づいて前記共振周波数を算出し、
算出された前記共振周波数を算出周波数とすると、前記算出周波数に基づいて、前記噴射量の抑制量を決定する、車両制御装置。
【請求項2】
前記共振周波数の基準値を基準周波数として記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、
前記算出周波数と前記基準周波数との差分の絶対値が所定の閾値よりも大きい場合に、前記算出周波数に基づいて、前記噴射量の抑制量を決定し、
前記絶対値が前記閾値以下の場合に、前記基準周波数に基づいて、前記噴射量の抑制量を決定する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記基準周波数に対応する前記噴射量の抑制量である基準抑制量を算出し、
前記絶対値が前記閾値よりも大きい場合に、前記算出周波数に基づいて前記基準抑制量を補正して補正抑制量を算出するとともに、前記補正抑制量を前記噴射量の抑制量に決定し、
前記絶対値が前記閾値以下の場合に、前記基準抑制量を前記噴射量の抑制量に決定する、請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記絶対値が前記閾値よりも大きい場合に、前記基準周波数に対応する前記噴射量の抑制タイミングが変更されること、および、前記基準周波数に対応する前記噴射量の抑制期間が縮小されることの少なくとも一方が行われるように、前記基準抑制量を補正する、請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記加速度センサは、前記車両の前後方向の加速度を検出する、請求項1~4のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記車両が路面状態の良好度に関する所定の条件を満たす路面を走行している際に、前記算出周波数を算出する、請求項1~4のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2005-263162号公報(特許文献1)には、アクセルペダルの操作量に応じて目標エンジン回転速度を演算により算出し、実際のエンジン回転速度を目標エンジン回転速度にゆるやかに接近させるように制御することにより、機械系の固有共振周波数による振動を抑制する車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-263162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1には記載されていないが、車両の共振周波数帯においてエンジンの燃料の噴射を抑制するなまし制御が知られている。
【0005】
しかしながら、車両の共振周波数は、車両の経年劣化や乗車人数等の要因によって変化し得る。そこで、車両の振動周波数が共振周波数になるタイミングにおいて確実に燃料の噴射量を抑制することが望まれている。
【0006】
本技術の目的は、車両の振動周波数が共振周波数になるタイミングにおいて確実に燃料の噴射量を抑制することが可能な車両制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一の局面に係る車両制御装置は、車両が共振する共振周波数において車両のエンジンにおける燃料の噴射を抑制する制御を実行する車両制御装置であって、車両の加速度を検出する加速度センサと、燃料の噴射量を制御する制御部と、を備える。制御部は、加速度センサにより検出された加速度の振動に基づいて共振周波数を算出し、算出された共振周波数を算出周波数とすると、算出周波数に基づいて、噴射量の抑制量を決定する。
【0008】
本開示の一の局面に係る車両制御装置では、上記のように、加速度センサにより検出された算出周波数(共振周波数)に基づいて噴射量の抑制量が決定される。これにより、車両の経年劣化等により共振周波数が変化していたとしても、加速度センサにより随時算出される共振周波数(算出周波数)を用いて噴射量を抑制することができる。その結果、車両の振動周波数が共振周波数になるタイミングにおいて確実に燃料の噴射量を抑制することができる。
【0009】
上記一の局面に係る車両制御装置は、好ましくは、共振周波数の基準値を基準周波数として記憶する記憶部をさらに備える。制御部は、算出周波数と基準周波数との差分の絶対値が所定の閾値よりも大きい場合に、算出周波数に基づいて、噴射量の抑制量を決定する。また、制御部は、上記絶対値が上記閾値以下の場合に、基準周波数に基づいて、噴射量の抑制量を決定する。このように構成すれば、基準周波数から共振周波数が比較的大きくずれた場合(上記絶対値が比較的大きい場合)でも、算出周波数に基づいて燃料噴射量の抑制量を決定することができる。また、基準周波数からの共振周波数のずれが比較的小さい場合(上記絶対値が比較的小さい場合)、記憶部に元々記憶されている基準周波数に基づいて燃料噴射量の抑制量を決定することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、制御部は、基準周波数に対応する噴射量の抑制量である基準抑制量を算出する。また、制御部は、上記絶対値が上記閾値よりも大きい場合に、算出周波数に基づいて基準抑制量を補正して補正抑制量を算出するとともに、補正抑制量を噴射量の抑制量に決定する。また、制御部は、上記絶対値が上記閾値以下の場合に、基準抑制量を噴射量の抑制量に決定する。このように構成すれば、基準周波数から共振周波数が比較的大きくずれた場合(上記絶対値が比較的大きい場合)でも、基準周波数に対応する基準抑制量が補正された補正抑制量に基づいて噴射量を抑制することができる。また、基準周波数からの共振周波数のずれが比較的小さい場合(上記絶対値が比較的小さい場合)、記憶部に元々記憶されている基準周波数に対応する基準抑制量に基づいて噴射量を抑制することができる。
【0011】
上記絶対値が上記閾値よりも大きい場合に補正抑制量を噴射量の抑制量に決定する車両制御装置において、好ましくは、制御部は、基準周波数に対応する噴射量の抑制タイミングが変更されること、および、基準周波数に対応する噴射量の抑制期間が縮小されることの少なくとも一方が行われるように、基準抑制量を補正する。このように構成すれば、噴射量の抑制タイミングが変更されること、および、噴射量の抑制期間が縮小されることの少なくとも一方により、基準抑制量を容易に補正することができる。
【0012】
上記一の局面に係る車両制御装置において、好ましくは、加速度センサは、車両の前後方向の加速度を検出する。このように構成すれば、車両のトルクにより車軸(クランクシャフト等)にねじりが生じることに起因して前後方向に共振が起きる場合に、燃料の噴射量を容易に抑制することができる。
【0013】
上記一の局面に係る車両制御装置において、好ましくは、制御部は、車両が路面状態の良好度に関する所定の条件を満たす路面を走行している際に、算出周波数を算出する。このように構成すれば、路面の凹凸等の外的要因が共振周波数(算出周波数)に影響を及ぼすのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本技術によれば、車両の振動周波数が共振周波数になるタイミングにおいて確実に燃料の噴射量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態による車両の構成を示す概略図である。
図2】車両における駆動系の共振伝達系を示す図である。
図3】車両全体の共振伝達系を示す図である。
図4】車両前後方向における加速度と時間との関係の一例を示す図である。
図5】第1実施形態による共振周波数の算出方法を示すフロー図である。
図6】第1実施形態による燃料噴射量を補正する方法を示すフロー図である。
図7】第1実施形態による燃料噴射量(噴射抑制量)および車両加速度を示す図である。
図8】第2実施形態による車両の構成を示す概略図である。
図9】第2実施形態による燃料噴射量を補正する方法を示すフロー図である。
図10】第2実施形態による燃料の噴射抑制量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る内燃機関の制御システムの全体構成を示す図である。図1を参照して、このシステムにおいて制御対象となる内燃機関は、エンジン1である。エンジン1は、走行のための動力源として車両300(たとえば、4輪自動車)に搭載される。第1実施形態では、エンジン1がコモンレール式の直列4気筒ディーゼルエンジンであるが、制御対象となるエンジンは、こうしたディーゼルエンジンに限られない。制御対象となるエンジンは、ガソリンエンジンであってもよいし、直列以外の気筒レイアウト(たとえばV型あるいは水平型)のエンジンであってもよい。また、気筒の数も任意に変更できる。
【0018】
エンジン1は、エンジン本体10と、エアクリーナ20と、インタークーラ25と、吸気絞り弁26と、吸気マニホールド28と、過給機30と、排気マニホールド50と、EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置60とを備える。そして、エンジン1は、制御装置200によって制御される。以下、エンジン1において、流路として機能する配管等に関しては、上流側の端を「第1端」、下流側の端を「第2端」と称する。なお、制御装置200は、本開示の「車両制御装置」の一例である。
【0019】
エンジン本体10は、燃焼エネルギーを運動エネルギーに変換することによって出力軸に動力を出力するように構成される。エンジン本体10の出力軸に出力される動力によって車両の駆動輪が駆動される。エンジン本体10は、燃焼室を有し、燃焼室で燃焼を行なうように構成される。エンジン本体10は、複数の気筒12と、コモンレール14と、複数のインジェクタ16とを含む。各気筒12内には、燃焼室が形成され、さらに、燃焼室で発生した燃焼エネルギーによって駆動されるようにピストン(図示せず)が設けられている。気筒12ごとにインジェクタ16が設けられ、各インジェクタ16はコモンレール14に接続されている。燃料タンク(図示せず)に貯留された燃料は、サプライポンプ(図示せず)により所定圧に加圧されてコモンレール14に供給される。コモンレール14に供給された燃料は、各インジェクタ16から所定のタイミングで燃焼室内に噴射される。
【0020】
エアクリーナ20は、第1吸気管22の途中に設けられ、第1吸気管22の第1端に設けられる吸気口(図示せず)から吸入される空気に含まれている異物を除去するように構成される。第1吸気管22の第2端は、過給機30のコンプレッサ32の入口に接続され、コンプレッサ32の出口には、第2吸気管24の第1端が接続される。コンプレッサ32は、第1吸気管22を通じて吸入される空気を過給して第2吸気管24に供給する。
【0021】
第2吸気管24の第2端はインタークーラ25を介して第3吸気管27の第1端に接続されている。インタークーラ25は、第2吸気管24から入力される空気を冷却して第3吸気管27へ出力するように構成される。インタークーラ25は、たとえば空冷式又は水冷式の熱交換器である。第3吸気管27の第2端は吸気マニホールド28に接続されている。第3吸気管27の途中には吸気絞り弁26が設けられており、さらに吸気絞り弁26よりも下流側(吸気マニホールド28側)に位置する接続部C1で、EGR通路62の第2端が第3吸気管27に接続されている。
【0022】
吸気絞り弁26は、バルブ、モータ、及び開度センサ(スロットルポジションセンサ)を含んで構成される。吸気絞り弁26の開度に応じて吸気マニホールド28へ供給される空気流量(より特定的には、新気量)が変化する。新気は、外部からエアクリーナ20を通じて取り込まれる空気である。吸気絞り弁26の開度は、制御装置200によって制御される。
【0023】
吸気マニホールド28は、エンジン本体10の各気筒12の吸気ポートに連結されている。一方、排気マニホールド50は、エンジン本体10の各気筒12の排気ポートに連結されている。排気マニホールド50には、第1排気管52の第1端が接続されている。第1排気管52の第2端は、過給機30のタービン36の入口に接続されている。各気筒12の排気ポートから排出される排気ガスは、排気マニホールド50に集められた後、第1排気管52を経由してタービン36に供給される。
【0024】
タービン36の出口には、第2排気管54の第1端が接続されている。第2排気管54の第2端には、排気浄化装置56の入口が接続されている。排気浄化装置56の例としては、DPF(Diesel Particulate Filter)、NOx触媒、DPNR(Diesel Particlulate-NOx Reduction)が挙げられる。排気浄化装置56の出口には、第3排気管58の第1端が接続されている。排気浄化装置56で浄化された排気ガスは、第3排気管58を通り、図示しないマフラー等を経由して車外に排出される。
【0025】
過給機30は、エンジン本体10の吸気を過給するように構成される。過給機30は、吸気通路(より特定的には、第1吸気管22と第2吸気管24との間)に設けられたコンプレッサ32と、排気通路(より特定的には、第1排気管52と第2排気管54との間)に設けられたタービン36とを備えるターボチャージャである。この実施の形態では、可変ベーン式ターボチャージャを、過給機30として採用する。
【0026】
コンプレッサ32のハウジング内にはコンプレッサホイール34が設けられている。タービン36のハウジング内にはタービンホイール38が設けられている。コンプレッサホイール34とタービンホイール38とは、連結軸42により連結されて一体的に回転する。このため、コンプレッサホイール34は、タービンホイール38に供給される排気エネルギーによって回転駆動される。
【0027】
過給機30は、可変ベーン38aを備える。可変ベーン38aは、開閉動作によってタービン36内の排気ガスの流速を可変とする。可変ベーン38aの開閉動作は、制御装置200によって制御される。
【0028】
EGR装置60は、EGR通路62と、EGR通路62に設けられたEGR弁64と、EGRクーラ66と、バイパス通路68とを含む。EGR通路62は、エンジン本体10を経由せずに第3吸気管27と排気マニホールド50とを接続し、排気マニホールド50を流れる排気ガスの一部を第3吸気管27に還流させるように構成される。EGR弁64は、排気マニホールド50から第3吸気管27へ還流するEGRガス量を調整可能に構成される。
【0029】
EGR通路62において、EGR弁64よりも上流側(排気マニホールド50側)にはEGRクーラ66が設けられている。EGRクーラ66は、EGRガスを冷却するように構成される。EGRクーラ66は、たとえば水冷式又は空冷式の熱交換器である。バイパス通路68は、EGRクーラ66を経由しない還流路を形成する。
【0030】
エンジン1は、エアフローメータ102と、吸気圧センサ106と、回転数センサ108と、水温センサ110と、排気圧センサ118と、アクセルセンサ112と、大気圧センサ114と、外気温センサ116とをさらに備える。
【0031】
エアフローメータ102は、新気量を検出し、その検出値FIを制御装置200へ出力する。吸気圧センサ106は、過給圧(より特定的には、吸気マニホールド28に供給される吸気ガスの圧力)を検出し、その検出値Pbを制御装置200へ出力する。排気圧センサ118は、エンジン本体10の排気圧力(より特定的には、排気マニホールド50に排出される排気ガスの圧力)を検出し、その検出値P4を制御装置200へ出力する。
【0032】
回転数センサ108は、エンジン回転数(より特定的には、エンジン本体10の出力軸の回転速度)を検出し、その検出値NEを制御装置200へ出力する。水温センサ110は、エンジン冷却水温(より特定的には、エンジン本体10の冷却水の温度)を検出し、その検出値TEを制御装置200へ出力する。アクセルセンサ112は、アクセル開度(たとえば、アクセル操作部の操作量)を検出し、その検出値APを制御装置200へ出力する。アクセル開度は、車両のアクセルペダルの踏込量であってもよい。大気圧センサ114は大気圧を検出し、その検出値Paを制御装置200へ出力する。外気温センサ116は外気温を検出し、その検出値Taを制御装置200へ出力する。
【0033】
制御装置200はコンピュータであってもよい。制御装置200は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ210と、記憶装置220とを含む。記憶装置220は、プロセッサ210によって処理されるデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、格納された情報を保存可能に構成されるストレージとを含んでもよい。記憶装置220には、たとえば、プロセッサ210によって実行されるプログラム、及びプログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。この実施の形態では、記憶装置220に記憶されているプログラムを制御装置200が実行することで、制御装置200における各種制御が実行される。ただし、制御装置200における各種制御は、ソフトウェアによる実行に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。なお、プロセッサ210および記憶装置220は、それぞれ、本開示の「制御部」および「記憶部」の一例である。
【0034】
制御装置200は、車両300の加速度を検出する加速度センサ230を備える。加速度センサ230により検出された車両300の加速度の検出結果は、制御装置200に送信される。なお、第1実施形態では、加速度センサ230は、プロセッサ210および記憶装置220を構成する1つの装置とは別個に設けられている。なお、加速度センサ230が上記装置内に設けられていてもよい。また、加速度センサ230は、車両300に複数設けられていてもよい。
【0035】
運転者は、アクセル操作部(たとえば、アクセルペダル)を操作してエンジン1を操作することができる。この実施の形態では、運転者が要求するエンジン1の運転のための燃料噴射量(以下、「要求噴射量」とも称する)を、制御装置200がアクセル開度(AP)およびエンジン回転数(NE)等に基づいて算出する。そして、制御装置200は、各気筒12のインジェクタ16を制御して、要求噴射量に相当する燃料をエンジン本体10の各燃焼室に噴射する。また、制御装置200は、要求噴射量に基づいて目標過給圧を決定し、過給圧(Pb)が目標過給圧に近づくように過給機30を制御する。すなわち、制御装置200(プロセッサ210)は、エンジン1における燃料噴射量を制御する。
【0036】
<車両における振動>
図2は、車両300における駆動系の共振伝達系の一例を示す図である。車両300の駆動系は、エンジン1と、デファレンシャルギア(以下、デフと称する)2と、ホイール3と、タイヤ4と、車体5とを含む。エンジン1(パワープラント6:図3参照)とデフ2とは、プロペラシャフト1aにより接続されている。デフ2とホイール3とは、ドライブシャフト2aにより接続されている。エンジン1が発生するトルクにより、デフ2やホイール3(タイヤ4)等が回転する。この際に、ねじり振動が生じ、駆動系に一次のねじり共振(車両300の前後方向における共振)が発生する場合がある。なお、タイヤ4は、前後剛性を確保するための第1部分4aと、スリップを減衰するための第2部分4bとを有する。
【0037】
図3は、車両300全体の共振伝達系の一例を示す図である。車両300は、車体5(図2参照)を構成するキャビン5aおよびフレーム5bと、タイヤ4とフレーム5bとを接続するサスペンション4c、キャビン5aとフレーム5bとを接続するサスペンション7とを含む。また、デフ2およびパワープラント6の各々は、スプリング8等を介してフレーム5bに接続されている。なお、パワープラント6は、エンジン1および図示しないトランスミッションを含む。
【0038】
車両300では、タイヤ4においてトルク変動が生じた場合に、サスペンション4c、ドライブシャフト2a、プロペラシャフト1a、および、サスペンション7等を通じて振動が生じる場合がある。また、エンジン1においてトルク変動が生じた場合に、パワープラント6およびデフ2の各々と、フレーム5bとの間において振動が生じる場合がある。これらに起因して、車両300の前後方向において、一次のねじり振動に起因する共振が発生する場合がある。
【0039】
なお、図3に示すように、加速度センサ230は、たとえばキャビン5aに設けられている。具体的には、加速度センサ230は、運転席または後部座席に設けられていてもよい。これにより、加速度センサ230によって車両300の乗員が感じる加速度を検出することが可能である。
【0040】
また、制御装置200の記憶装置220には、車両300における共振周波数(たとえば前後方向における共振周波数)の基準値(以下、基準周波数と称する)が記憶されている。基準周波数は、車両300の形状、重量、および、各種パラメータ値に基づいて、車両300ごとに予め想定された値であってもよい。また、基準周波数は、車両300の製造段階や走行試験等においてシミュレーション等により予め求められた値であってもよい。
【0041】
ここで、車両300の共振周波数は、車両300の上記パラメータのばらつきや経年劣化、ユーザによるタイヤ変更、乗車人数、積載重量、および、搭載オプション等により、基準周波数からずれ得る。
【0042】
また、制御装置200は、車両300の共振周波数においてエンジン1における燃料噴射量を抑制する制御を実行するように構成されている。これにより、共振中に多くの燃料が噴射されることに起因して共振が増大されるのを抑制することが可能である。
【0043】
しかしながら、上記のように車両の共振周波数が基準周波数からずれている場合、燃料噴射量を抑制する制御を適切なタイミングで実行することが困難になる。そこで、車両の振動周波数が共振周波数になるタイミングにおいて確実に燃料の噴射量を抑制することが望まれている。
【0044】
第1実施形態では、制御装置200(プロセッサ210)は、加速度センサ230により検出された加速度の振動に基づいて共振周波数を算出する。そして、プロセッサ210は、算出された共振周波数(以下、算出周波数と称する)に基づいて、燃料噴射量の抑制量を決定する。なお、以下では、上記加速度に基づいて燃料噴射量の抑制量を決定する制御を、ジャーク制御と称する場合がある。
【0045】
具体的には、図4に示すように、加速度センサ230により取得された車両300の前後方向における加速度のデータ(波形)に基づき、加速度の振動の周波数のデータが取得される。たとえば、プロセッサ210は、加速度のピークに対応する時間t1と、次のピークに対応する時間t2との間の時間(t2-t1)である周期Tに基づいて、共振周波数(=1/T)を算出する。なお、共振周波数の算出方法は上記の例に限られない。たとえば、連続する複数の周期Tの平均値に基づいて共振周波数を算出してもよい。
【0046】
また、第1実施形態では、プロセッサ210は、車両300が路面状態の良好度に関する所定の条件を満たす路面を走行している際に、算出周波数(共振周波数)を算出する。所定の条件を満たす路面とは、具体的には、荒さ(凹凸具合)が一定以下である路面を意味する。路面の荒さ(凹凸具合)は、たとえば、重力方向の加速度を検出する加速度センサ(図示せず)の検出値に基づいて判定されてもよい。また、路面の荒さ(凹凸具合)は、記憶装置220に予め記憶されている各地点の路面の荒さ(凹凸具合)の情報と、GPS等に基づく車両300の位置情報とに基づいて判定されてもよい。
【0047】
また、プロセッサ210は、車両300の振動が抑制される条件での走行が行われている際に、算出周波数(共振周波数)を算出する。たとえば、プロセッサ210は、車両300が一定時間以上曲がることなく直進している期間での加速度のデータに基づいて、算出周波数を算出してもよい。また、プロセッサ210は、車両300の速度(加速度)が一定時間以上急激に変化していない期間での加速度のデータに基づいて、算出周波数を算出してもよい。
【0048】
上記のような場合に算出周波数が算出されることによって、外的な要因による振動が抑制された状態で振動周波数を算出することが可能である。その結果、正確な共振周波数の情報を取得することが可能である。
【0049】
また、プロセッサ210は、図4に示す加速度の波形の振幅が閾値以上の場合に、算出周波数を算出してもよい。これにより、車両300が共振していないのに共振周波数が算出されてしまうのを抑制することが可能である。
【0050】
また、プロセッサ210は、図4に示す周期Tに基づく周波数(算出周波数)と、記憶装置220に記憶されている基準周波数との差が閾値以下の場合に、算出周波数を共振周波数であると判定してもよい。これにより、非共振状態における周波数が共振周波数であると誤認されるのを抑制することが可能である。
【0051】
<制御装置によるジャーク制御の方法>
次に、図5図7を参照して、制御装置200(プロセッサ210)によるジャーク制御の方法を説明する。
【0052】
図5は、加速度センサ230の検出値に基づいて算出周波数を算出する方法を示す。ステップS1において、プロセッサ210は、車両300が路面状態の良好度に関する所定の条件を満たす路面を走行しているか否かを判定する。上記のように、プロセッサ210は、路面の状態が一定以上良好か(整備されているか)否かを判定する。路面状態が所定の条件を満たす場合(S1においてYes)、処理はステップS2に進む。路面状態が所定の条件を満たさない場合(S1においてNo)、処理は終了する。
【0053】
ステップS2において、プロセッサ210は、車両300の振動が抑制される条件で車両300が走行しているか否かを判定する。上記のように、プロセッサ210は、一定時間以上車両300が直進しており、かつ、一定時間以上車両300が急加速または急減速していない場合に、振動が抑制された走行が行われていると判定する。車両300の振動が抑制される条件で車両300が走行している場合(S2においてYes)、処理はステップS3に進む。車両300の振動が抑制される条件で車両300が走行していない場合(S2においてNo)、処理は終了する。
【0054】
ステップS3において、プロセッサ210は、加速度センサ230の検出値に基づき共振周波数(算出周波数)を算出する。具体的には、上記のように、プロセッサ210は、検出された加速度の振動の周期T(図4参照)に基づき車両300の周波数を算出する。プロセッサ210は、算出された周波数を共振周波数(算出周波数)として記憶装置220に記憶する。
【0055】
なお、図5に示す制御フローは、プロセッサ210により所定の周期ごとに繰り返し実行されてもよい。
【0056】
図6は、図5の制御フローにより算出された算出周波数に基づいてジャーク制御を実行するための制御フローである。なお、図6に示す制御は、たとえば、車両300の始動時(加速開始時)(図7(a)の時間Ts参照)等において車両300の加速度(トルク)が急激に変化する際に行われる。なお、図7は、算出周波数に基づいた補正を行った場合(実線)と、基準周波数に基づいて補正を行った場合の、燃料噴射抑制量(燃料噴射量)および車両300の前後方向における加速度を示すシミュレーション結果である。
【0057】
ステップS11において、プロセッサ210は、車両300が共振しているか否かを判定する。たとえば、プロセッサ210は、加速度センサ230による加速度の変化率や加速度の振動波形の振幅等が閾値以上となった(振動が一定以上大きくなった)場合に、車両300が共振していると判定してもよい。上記閾値は、ユーザが振動を感知できる程度の値であってもよい。車両300が共振していると判定された場合(S11においてYes)、処理はステップS12に進む。車両300が共振していないと判定された場合(S11においてNo)、処理は終了する。
【0058】
ステップS12において、プロセッサ210は、図5に示すステップS3において算出されている共進周波数(算出周波数)に基づき、車両300が共振しているか否かを判定する。具体的には、プロセッサ210は、ステップS11において共振が生じていると判定された際の車両300の振動周波数(=1/T、図4参照)が算出周波数に近い場合に、車両300が算出周波数で共振していると判定する。たとえば、算出された振動周波数が算出周波数の±10Hzの範囲内である場合に、車両300が算出周波数で共振していると判定する。なお、±10Hzという閾値は一例であって、±10Hz以外の閾値が設けられていてもよい。車両300が算出周波数で共振していると判定された場合(S12においてYes)、処理はステップS13に進む。算出周波数で共振していないと判定された場合(S12においてNo)、処理は終了する。
【0059】
ステップS13において、プロセッサ210は、アクセルセンサ112(図1参照)の検出値(アクセル開度)に基づき、燃料噴射量の基準値(ジャーク制御前の燃料噴射量、図7(b)の一点鎖線参照)を算出する。具体的には、プロセッサ210は、アクセル開度に加えて、回転数センサ108(図1参照)の検出値(エンジン回転数)に基づいて燃料噴射量の基準値を算出する。
【0060】
ステップS14において、プロセッサ210は、算出周波数に基づき、燃料噴射量の補正量(抑制量)(図7(a)の実線参照)を算出する。
【0061】
なお、図7(a)の破線は、基準周波数に基づいて燃料噴射量を補正する際の補正量(基準抑制量)の一例である。この場合、共進周波数のばらつきを考慮して、燃料噴射の抑制期間が比較的長く設定される。これに対し、算出周波数に基づいて燃料噴射量を補正する場合、基準周波数に対応する燃料噴射の抑制期間(ピーク幅)が縮小補正されることにより、基準抑制量が補正される。
【0062】
ステップS15において、プロセッサ210は、ステップS14において算出された補正量に基づく補正後の燃料噴射量(図7(b)の実線参照)を算出する。図7(b)に示すように、算出周波数に基づく補正後の燃料噴射量は、基準周波数に基づいて補正された場合の燃料噴射量(図7(b)の破線参照)に比べて、時間Ts以降の値が比較的高くなっていることが確認された(図7(b)の実線参照)。また、図7(c)に示すように、算出周波数に基づく補正後の前後方向における加速度は、基準周波数に基づいて補正された場合の前後方向における加速度(図7(c)の破線参照)に比べて、時間Ts以降の値が比較的高くなっていることが確認された(図7(c)の実線参照)。したがって、共進周波数における燃料噴射量を低減させながら、車両300の加速度が過度に低下するのが抑制されていることが確認された。
【0063】
上記のように、第1実施形態では、プロセッサ210は、算出周波数に基づいて、燃料噴射量の抑制量を決定する。これにより、車両300の加速度に基づいて実際の共振周波数を算出することができる。その結果、既知の共進周波数(基準周波数)のデータを用いて燃料噴射量を抑制する場合に比べて、より正確な共進周波数のデータを用いて燃料噴射量を抑制することができる。その結果、車両300の振動周波数が共振周波数になる正確なタイミングにおいて燃料噴射量を抑制することができる。
【0064】
また、共振周波数のばらつきを考慮して燃料噴射量が抑制される期間に余裕を持たせる(長くする)必要性が少なくなる。その結果、燃料噴射量を抑制する必要がない期間において燃料噴射量が低減されるのを抑制することができる。
【0065】
[第2実施形態]
次に、図8図10を参照して、本開示の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、基準周波数と算出周波数との差分に基づいて、燃料噴射量を抑制する制御(ジャーク制御)が実行される。上記第1実施形態と同一の構成については、同じ符号を付すとともに繰り返しの説明は行わないものとする。
【0066】
車両310は、制御装置400を備える。車両310のその他の構成は、上記第1実施形態における車両300と同一である。なお、制御装置は400は、本開示の「車両制御装置」の一例である。
【0067】
制御装置400は、プロセッサ410と、記憶装置420とを含む。なお、プロセッサ410および記憶装置420は、それぞれ、本開示の「制御部」および「記憶部」の一例である。
【0068】
<制御装置によるジャーク制御の方法>
次に、図9および図10を参照して、制御装置400(プロセッサ410)によるジャーク制御の方法を説明する。なお、上記第1実施形態におけるフロー図(図6参照)と同じ処理については、同じ符号を付すとともに説明を簡略化する。
【0069】
ステップS11において、プロセッサ410は、車両310が共振しているか否かを判定する。車両310が共振していると判定された場合(S11においてYes)、処理はステップS112に進む。車両310が共振していないと判定された場合(S11においてNo)、処理は終了する。
【0070】
ステップS112において、プロセッサ410は、記憶装置420に記憶されている共振周波数(基準周波数)で車両310が共振しているか否かを判定する。具体的には、プロセッサ410は、両310の振動周波数(1/T)が基準周波数に近い場合に、車両310が基準周波数で共振していると判定する。車両310が基準周波数で共振していると判定された場合(S112においてYes)、処理はステップS13に進む。車両310が基準周波数で共振していないと判定された場合(S112においてNo)、処理は終了する。
【0071】
ステップS13の後のステップS114において、プロセッサ410は、基準周波数に基づき、燃料噴射量の補正量(基準抑制量)(図10(a)の破線参照)を算出する。なお、図10(a)の破線は、基準抑制量の一例を示している。
【0072】
ステップS115において、プロセッサ410は、補正後の燃料噴射量を算出する。ステップS114の直後に行われるステップS115では、プロセッサ410は、基準抑制量に基づいて燃料噴射量を算出する。
【0073】
ステップS116において、プロセッサ410は、算出周波数に基づいて基準抑制量を補正済みか否かを判定する。算出周波数に基づいて基準抑制量を補正済みの場合(S116においてYes)、処理は終了する。算出周波数に基づいて基準抑制量が補正されていない場合(S116においてNo)、ステップS117に進む。
【0074】
ステップS117において、プロセッサ410は、基準周波数と算出周波数との差分の絶対値が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する。上記差分が上記所定の閾値よりも大きい場合(S117においてYes)、処理はステップS118に進む。上記差分が上記所定の閾値以下の場合(S117においてNo)、処理は終了する。
【0075】
ステップS118において、プロセッサ410は、算出周波数(または上記差分)に基づき上記基準抑制量を補正し、補正抑制量を算出する。補正抑制量は、たとえば図10に示す実線のようになる。すなわち、燃料噴射が抑制されるタイミング(抑制量がピークとなる時間)が変更(遅延)されている。なお、抑制量の補正は図10に示す例に限られない。次に、処理はステップS115に戻る。これにより、算出周波数に基づく燃料噴射量のフィードバック補正が行われる。
【0076】
ステップS118の直後のステップS115では、プロセッサ410は、補正抑制量に基づいて燃料噴射量を算出する。その後、ステップS116において算出周波数に基づいて基準抑制量が補正済みであると判定され(S116においてYes)、処理は終了する。
【0077】
なお、その他の構成については上記第1実施形態と同様であるので、繰り返しの説明は行わないものとする。
【0078】
上記第1実施形態では、燃料の噴射量が抑制される期間が縮小される例を示したが、本開示はこれに限られない。上記第1実施形態においても、上記第2実施形態と同様に、燃料の噴射量が抑制されるタイミングをずらす補正が行われてもよい。また、上記第2実施形態において、上記第1実施形態と同様に、燃料の噴射量が抑制される期間が縮小される補正が行われてもよい。
【0079】
上記第1および第2実施形態では、車両(300、310)の前後方向の加速度を検出する加速度センサ230の検出値に基づいてジャーク制御が行われる例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、車両(300、310)の左右方向および重力方向等の加速度を検出する加速度センサの検出値に基づいてジャーク制御を行ってもよい。
【0080】
なお、上記実施形態に記載されている構成、および、上記の各種変形例は、任意に組み合わされて実施されてもよい。
【0081】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
1 エンジン,200、400 車両制御装置,210、410 プロセッサ(制御部),220、420 記憶装置(記憶部),230 加速度センサ,300、310 車両。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10