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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152396
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】移動量検知システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
G01B11/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066560
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000143031
【氏名又は名称】コーデンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】児山 周樹
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA07
2F065AA09
2F065AA12
2F065BB15
2F065BB28
2F065DD03
2F065FF04
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065MM03
2F065PP15
2F065QQ31
(57)【要約】
【課題】スケールの分解能と光学素子の分解能とを一致させる必要がなく、さらにはスケールの取付誤差や製造誤差による精度の低下が抑えられる移動量検知システムを提供する。
【解決手段】所定の移動方向に沿って動く移動体の移動量を検知するものであって、前記移動体の表面に付された、前記移動方向に沿って明暗が交互に切り替わる縞状パターンと、前記縞状パターンが通過する領域を一定の時間間隔で撮像して、その画像データを逐次出力する撮像装置と、前記画像データが示す撮像画像に映り込んだ前記縞状パターンのエッジを検出するエッジ検出部と、前記エッジ検出部が検出した前記縞状パターンのエッジの位置に基づいて前記移動体の移動量を算出する移動量算出部とを備える移動量検知システムである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の移動方向に沿って動く移動体の移動量を検知するものであって、
前記移動体の表面に付された、前記移動方向に沿って明暗が交互に切り替わる縞状パターンと、
前記縞状パターンが通過する領域を一定の時間間隔で撮像して、その画像データを逐次出力する撮像装置と、
前記画像データが示す撮像画像に映り込んだ前記縞状パターンのエッジを検出するエッジ検出部と、
前記エッジ検出部が検出した前記縞状パターンのエッジの位置に基づいて前記移動体の移動量を算出する移動量算出部とを備える移動量検知システム。
【請求項2】
前記縞状パターンが、前記撮像画像において明度が互いに異なる複数の暗領域と複数の明領域とが、前記移動方向に沿って交互に並んで形成されたものであり、
前記移動量算出部が、前記縞状パターンにおける、暗領域から明領域に切り替わる境界のエッジと、明領域から暗領域に切り替わる境界のエッジのいずれか一方のみのエッジ位置に基づいて前記移動体の移動量を算出する請求項1に記載の移動量検知システム。
【請求項3】
前記撮像装置が撮像する撮像領域内において、前記撮像領域の面積よりも小さい所定の面積を有する2つの検出領域が前記移動方向に沿って順に設定されており、
前記エッジ検出部が、前記2つの検出領域内に写り込む前記縞状パターンのエッジを検出し、
前記移動量算出部が、前記2つの検出領域のいずれかで検出された前記縞状パターンのエッジの位置に基づいて前記移動体の移動量を算出する請求項2に記載の移動量検知システム。
【請求項4】
前記2つの検出領域は、前記移動方向において互いの一部が重複するように設定されている請求項3に記載の移動量検知システム。
【請求項5】
前記2つの検出領域内には、前記移動方向に平行であって、かつ前記移動方向に直交する方向の座標が互いに異なる複数本のエッジ検出ラインがそれぞれ設定されており、
前記エッジ検出部が、前記2つの検出領域のそれぞれにおいて、前記複数のエッジ検出ライン毎に前記移動体のエッジを検出するとともに、該検出したエッジの個数が所定の数以上になった場合に前記縞状パターンのエッジの位置を確定する請求項4に記載の移動量検知システム。
【請求項6】
前記縞状パターンを構成する前記複数の暗領域は、前記移動方向における長さが互いに等しく、かつ前記移動方向に沿って一定間隔で並べられており、
前記移動方向において、前記2つの検出領域の一方の幅長さをd1、前記2つの検出領域の他方の幅長さをd2、前記2つの検出領域の合計幅長さをd3、前記各暗領域の幅長さをD1、前記複数の暗領域間のピッチをD2として、以下の関係式(1)及び(2)を満たす請求項3に記載の移動量検知システム。
d1=d2 (1)
D1<d1<D2<d3 (2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の方向に移動する物体の移動量を検知する移動量検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体の移動量(移動速度や回転速度等)を検知する移動量検知システムとしては、例えば回転するベルトコンベアの搬送速度を算出する光学式のエンコーダが知られている。この光学式のエンコーダは、特許文献1に示すように、所定位置にある対象物に対して光源から光を出射するともに、この対象物で反射した反射光を受光素子でセンシングできるようになっている。対象物には、光が反射しやすい反射部と光が反射しにくい非反射部からなる光反射パターン(いわゆるエンコーダスケールやコードホイール)が形成されている。反射型光センサは、反射部及び非反射部から反射光の明暗比を受光素子でセンシングすることで光反射パターンを読み取り、ベルトコンベアの搬送速度や回転量等の種々の情報を得ることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-038572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の光学式エンコーダを用いた移動量の算出方法では、エンコーダスケールの分解能と光学素子の分解能とを一致させる必要あり、そのため必要な分解能に応じて、エンコーダスケールや受光素子を新たに開発及び製造しなければならず、開発期間が長期化する上に、コストもかかるという問題がある。特に、成型、プレス、エッチング又は印刷等により作成されるエンコーダスリットの分解能には限界があり、受光素子はその分解能に合わせて作成されるため、検知できる分解能が制限されてしまう。
【0005】
また対象物へ取り付けた際に、その取付誤差により明暗比がずれてしまい、精度誤差を生じさせるという問題がある。このため、取付精度を厳密に管理する必要があり、また受光素子とエンコーダスケールとを近接させて配置させる必要があったりと、取付条件や配置間距離にも多くの制限が生じてしまう。また、スリット等により形成される光反射パターン自体にも、スリット毎に物理的な寸法誤差があり、明暗比やピッチのバラつきにより測定誤差が生じてしまう。
【0006】
本発明は上記した問題を一挙に解決すべくなされたものであり、スケールの分解能と光学素子の分解能とを一致させる必要がなく、さらにはスケールの取付誤差や製造誤差による精度の低下が抑えられる移動量検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る移動量検知システムは、所定の移動方向に沿って動く移動体の移動量を検知するものであって、前記移動体の表面に付された、前記移動方向に沿って明暗が交互に切り替わる縞状パターンと、前記縞状パターンが通過する領域を一定の時間間隔で撮像して、その画像データを逐次出力する撮像装置と、前記画像データが示す撮像画像に映り込んだ前記縞状パターンのエッジを検出するエッジ検出部と、前記エッジ検出部が検出した前記縞状パターンのエッジの位置に基づいて前記移動体の移動量を算出する移動量算出部とを備えることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、移動方向に沿って動く縞状パターンを撮影し、検出した縞状パターンのエッジ位置に基づいて移動体の移動量を算出するように構成しているので、撮像装置の撮像領域に縞状パターンが写り込んでいれば移動量を算出することができ、従来の光学式のエンコーダのように、エンコーダスケールの分解能と光学素子の分解能とを一致させる必要がない。しかも、エンコーダスケールのように物理的に分解能を制限されるということがないので、従来のような光学式エンコーダよりも細かな分解能を得ることができる。
また、従来の光学式エンコーダのように光学素子による明暗比により移動量を検出するものでないので、スケールの取付誤差や製造誤差に起因して明暗比がずれることによる測定精度の低下を小さくできる。
【0009】
前記移動量検知システムは、前記縞状パターンが、前記撮像画像において明度が互いに異なる複数の暗領域と複数の明領域とが、前記移動方向に沿って交互に並んで形成されたものであり、前記移動量算出部が、前記縞状パターンにおける、暗領域から明領域に切り替わる境界のエッジと、明領域から暗領域に切り替わる境界のエッジのいずれか一方のみのエッジ位置に基づいて前記移動体の移動量を算出するのが好ましい。
このようにすれば、明領域から暗領域に切り替わる境界のエッジの検出と、暗領域から明領域に切り替わる境界のエッジの検出とで互いの検出精度に差がある場合であっても、どちらか一方のエッジの位置のみを用いて移動量を算出するので、エッジの種類の違いによる検出精度の影響を受けることなく精度よく移動量を算出することができる。
【0010】
また前記移動量検知システムは、前記撮像装置が撮像する撮像領域内において、前記撮像領域の面積よりも小さい所定の面積を有する2つの検出領域が前記移動方向に沿って順に設定されており、前記エッジ検出部が、前記2つの検出領域内に写り込む前記縞状パターンのエッジを検出し、前記移動量算出部が、前記2つの検出領域のいずれかで検出された前記縞状パターンのエッジの位置に基づいて前記移動体の移動量を算出するのが好ましい。
このようにすれば、撮像領域よりも面積が小さい検出領域における画像データのみを処理することで移動体の移動量を算出することができるので、撮像領域の全体を示す画像データを処理する場合に比べて処理するデータ量を低減することができる。その結果、エッジ検出部及び移動量算出部の処理速度を向上することができ、短い時間で移動体の移動量を算出することができる。
このように撮像領域よりも小さな検出領域を設定する場合には、撮像タイミングによっては、検出領域で縞状パターンが検出されない(すなわち、検出領域内にエッジが入らない)可能性が生じるが、検出領域を2つ設定することで、検出領域で縞状パターンが検出される可能性を高めることができ、移動体の移動量を常時算出することができる。
【0011】
またこの場合には、前記2つの検出領域は、前記移動方向において互いの一部が重複するように設定されているのが好ましい。
このように、2つの検出領域を移動方向において互いの一部が重複するように設定することで、2つの検出領域の少なくともどちらかにおいて、同じ輝度変化のエッジ(例えば、暗領域から明領域に切り替わる境界のエッジ)を常時検出することができるようになる。
つまり、2つの検出領域が互いに重複することなく設定されている場合(例えば、2つの検出領域が間隔をあけて設定されている場合や、2つの検出領域がぴったり横並びになるよう設定されている場合には、各検出領域と縞状パターンとが完全に平行である場合には常に同じ輝度変化のエッジを検出して移動量を検出する事が出来るものの、誤差に対する余裕度が少なくなってしまう。すなわち、図6に示すように、各検出領域と縞状パターンとが完全に平行でなく(すなわち傾いており)、縞状パターンのエッジが検出領域の境界線を跨いでしまう場合には、当該エッジはいずれの検出領域にもその全体が含まれなくなることで正しく検出されなくなってしまうことがある。
一方で、2つの検出領域を互いの一部を重複させるようにしておけば、図7に示すように、各検出領域と縞状パターンとが完全に平行でなく、縞状パターンのエッジがどちらか一方の検出領域の境界線を跨いでしまう場合にも、当該エッジはその全体が他方の検出領域内に入るため、当該他方の検出領域で検出される。
このように、2つの検出領域の一部を互いに重複させることで、実使用において発生する縞状パターンの傾きに対する余裕度を持つことができ、同じ輝度変化のエッジを検出して精度よく移動量を算出することができる。
【0012】
また前記移動量検知システムの態様としては、前記2つの検出領域内には、前記移動方向に平行であって、かつ前記移動方向に直交する方向の座標が互いに異なる複数本のエッジ検出ラインがそれぞれ設定されており、前記エッジ検出部が、前記2つの検出領域のそれぞれにおいて、前記複数のエッジ検出ライン毎に前記移動体のエッジを検出するとともに、該検出したエッジの個数が所定の数以上になった場合に前記縞状パターンのエッジの位置を確定するものが挙げられる。
またこのような態様においては、検出領域に対して縞状パターンが傾いており、縞状パターンが検出領域の境界に位置する場合には、複数本の検出ラインのいずれかでは縞状パターンのエッジを検出できなくため、前記した2つの検出領域を重複させることによる効果がより顕著になる。
【0013】
前記移動量検知システムは、前記縞状パターンを構成する前記複数の暗領域は、前記移動方向における長さが互いに等しく、かつ前記移動方向に沿って一定間隔で並べられており、前記移動方向において、前記2つの検出領域の一方の幅長さをd1、前記2つの検出領域の他方の幅長さをd2、前記2つの検出領域の合計幅長さをd3、前記各暗領域の幅長さをD1、前記複数の暗領域間のピッチをD2として、以下の関係式(1)及び(2)を満たすのが好ましい。
d1=d2 (1)
D1<d1<D2<d3 (2)
このような関係式(1)及び(2)を満たすように縞状パターン及び検出領域を設定することで、撮像タイミングが連続する複数の撮像画像において、暗領域から明領域に切り替わる境界のエッジと、明領域から暗領域に切り替わる境界のエッジのいずれか一方が、2つの検出領域の少なくとも一方に写り込み続けるよう構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
このようにした本発明によれば、スケールの分解能と光学素子の分解能とを一致させる必要がなく、さらにはスケールの取付誤差や製造誤差による精度の低下が抑えられる移動量検知システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態における移動量検知システムの構成を模式的に示す斜視図。
図2】同実施形態における画像処理装置の機能ブロック図。
図3】実施形態における撮像領域内のエッジ検出ラインを説明する図。
図4】同実施形態における撮像領域と縞状パターンの構成を説明するための図。
図5】同実施形態における移動量の算出方法を説明する図。
図6】本発明の移動量検知システムの効果を説明する図。
図7】本発明の移動量検知システムの効果を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施形態に係る移動量検知システム100について図面を参照して説明する。
【0017】
本実施形態に係る移動量検知システム100は、例えばベルトコンベア等の搬送機構に取付けられ、所定の移動方向に搬送される搬送ベルト(以下、移動体Oともいう)の移動量を検知するためのものである。具体的にこの移動量検知システム100は、図1に示すように、移動体Oが通過する領域を撮像する撮像装置1と、撮像装置1が撮像した画像を処理して移動体Oの移動量を検知する画像処理装置2とを備えている。以下、各部について説明する。
【0018】
撮像装置1は、移動体Oが通過する所定の領域(以下、撮像領域R0ともいう)を一定の時間間隔t(例えば、t=500[μs])で撮像し、その画像データを逐次出力するものである。当該画像データは、少なくとも撮像した画像を示す情報と、撮像した時間に関する情報、撮像された順番を示すフレーム番号に関する情報とを含んでいる。具体的に撮像装置1は、筐体と、筐体の内部に収容され、複数の撮像素子が縦横マトリクス状に面状に敷設されたエリアセンサ(図示しない)と、エリアセンサの前段に配置された光学系(図示しない)と、撮像された画像を示す画像データを出力する出力部(図示しない)とを備えている。撮像領域R0は矩形状をなしており、その2組の対向する辺の一方が、移動体Oの移動方向と平行になるように設定されている。すなわち複数の撮像素子が並ぶ縦横の一方が移動方向と平行であり、他方が移動方向に直交している。なお、本実施形態ではエリアセンサとして128×128画素を有するCMOSイメージセンサを用い、撮像領域R0の大きさを10×10mmとしている。
【0019】
画像処理装置2は、撮像装置1の出力部から出力された画像データを受け付けてこれを処理することにより、撮像領域R0内に映り込む移動体Oの移動量を算出するものである。
【0020】
しかして、本実施形態の移動量検知システム100では、移動体O(搬送ベルト)の表面には、移動方向に沿って明暗が交互に切り替わる縞状パターン3が付されており、画像処理装置2は、撮像画像に写り込む縞状パターン3を検出することで、移動体Oの移動量の算出するよう構成されている。
【0021】
図1及び図4に示すように、この縞状パターン3は、明度が所定値以下である複数の暗領域31と、当該暗領域31よりも明るい(明度が大きい)複数の明領域32とが、移動方向に沿って交互に並んで形成されたものである。具体的にこの暗領域31は、移動方向に交差する方向(ここでは直交する方向)に延びる矩形状(ここでは細線状)の黒色の領域である。複数の暗領域31はいずれも同一形状であり、移動方向に沿って一定間隔で設けられている。明領域32は、複数の暗領域31の間の隙間に形成される領域であり、暗領域31と同様に、移動方向に交差する方向(ここでは直交する方向)に延びる矩形状(ここでは細線状)の領域であり、移動方向に沿って所定の一定間隔で複数設けられている。なお暗領域31と明領域32は、撮像画像において明度(又は輝度)が互いに異なるものであれば、どのような色であってもよい。
【0022】
ここで画像処理装置2について説明する。
画像処理装置2は、図2に示すように、画像データ受付部21と、エッジ検出部22と、移動量算出部23としての機能を少なくとも発揮する。ここでは各機能部は、例えばFPGA(Field Programable Gate Array)等の再構成可能なハードウェア回路によって実現される。以下に各機能部を説明する。
【0023】
画像データ受付部21は、撮像装置1の出力部が出力した画像データを受け付け、これをエッジ検出部22に送信するものである。
【0024】
エッジ検出部22は、画像データ受付部21から受け付けた画像データを逐次処理し、当該画像データが示す画像内に含まれる縞状パターン3のエッジ(より具体的には、暗領域31と明領域32の境界)を検出する。そして、エッジ検出部22は、検出したエッジの位置を示すエッジ位置データを生成し、これらを移動量算出部23に逐次出力する。なおエッジ位置データが示すエッジ位置は、撮像画像の例えば左上隅画素の中心を原点(0,0)、右下隅画素の中心を原点(127,127)とする画像座標系における位置である。エッジ検出部22は、撮像装置1が撮像する度に、すなわち、画像データ受付部21が画像データを受け付ける毎に、当該画像内に含まれる縞状パターン3の全てのエッジを検出する。
【0025】
撮像領域R0内には、図3に示すように、移動方向(x軸方向)に平行であって、且つ移動方向に直交する方向(y軸方向)の座標が異なる複数本(ここでは7本)のエッジ検出ラインL1~L7が設定されている。エッジ検出部22は、各エッジ検出ラインL1~L7毎に縞状パターンのエッジを個別に検出し、検出したエッジの個数が所定の数以上(例えば4つ以上)になった場合に、その検出した複数の個別のエッジ位置に基づいて、縞状パターンのエッジの位置E(x、y)を確定する。
具体的にエッジ検出部22は、複数本(例えば4本以上)のエッジ検出ラインで縞状パターンのエッジを検出すると、当該検出した複数のエッジ位置に基づき、最小二乗法により一次の近似直線をまず算出する。そしてエッジ検出部は、算出した近似直線に基づき、予め設定されたy座標(例えばy=64)に対応するx座標位置を算出し、これをエッジ位置E(x、y)として確定する。
【0026】
なお、各エッジ検出ラインにおいて個別のエッジ位置を算出するにあたっては、画像データが示す画像の輝度の勾配計算に基づいてエッジ位置を算出する。この際に平滑化処理(移動平均、ガウシアン)、メディアン及びプリューウィットフィルタ、ソーベルフィルタ等のフィルタ処理や、サブピクセル処理等を行ってもよい。
【0027】
移動量算出部23は、エッジ検出部22から受け付けた複数のエッジ位置データに基づいて、移動体Oの移動量及び移動速度を算出する。この移動量算出部23は、エッジ検出部22が画像データを処理する度に、すなわちエッジ検出部22が縞状パターン3のエッジ位置を検出しこれを出力する度に、移動体Oの移動量及び移動速度を算出する。具体的にこの移動量算出部23は、撮像タイミングが連続する2フレームの撮像画像内に写り込む同一のエッジの異なるエッジ位置データを比較することで、移動体Oの移動量及び移動速度を算出する。移動量算出部23は、撮像装置1が撮像する度に、すなわち、画像データ受付部21が画像データを受け付ける毎に、移動体Oの移動量及び移動速度を算出し、これを図示しないディスプレイ等に出力する。
【0028】
ここで、移動量及び移動速度の算出に用いられる縞状パターン3のエッジとしては、暗領域31から明領域32に切り替わる境界のエッジ、明領域32から暗領域31に切り替わる境界のエッジ、又はその両方のいずれであってもよい。検出精度を向上する観点からは、移動量算出部23は、同一種のエッジのみ(例えば、暗領域31から明領域32に切り替わる境界のエッジのみ)を用いて移動量及び移動速度を算出するのが好ましい。
【0029】
そして本実施形態の移動量検知システム100では、図4に示すように、撮像領域R0内において、所定の面積を有する2つの検出領域(第1検出領域R1と第2検出領域R2)が移動方向に沿って上流側(以下、単に上流側という)から順に設定されている。この2つの検出領域R1、R2は互いに同じ大きさ及び形状をなしており、いずれもその面積が撮像領域R0よりも小さい。2つの検出領域R1、R2はいずれも矩形状をなし、対向する1組の短辺が移動方向に平行であり、対向する1組の長辺が移動方向に直交するように設定されている。そしてこの2つの検出領域R1、R2は、移動方向において撮像領域R0の中心に対して左右対称となり、かつ移動方向において隙間なく(ここでは互いの領域が重複するように)設定されている。各検出領域R1,R2には、前述した複数本のエッジ検出ラインL1~L7がそれぞれ設定されている。
【0030】
そしてこの実施形態ではエッジ検出部22は、第1検出領域R1と第2検出領域R2の両方で縞状パターン3のエッジを常時検出し続け、検出した縞状パターン3のエッジ位置を示すエッジ位置データを移動量算出部23に出力する。エッジ検出部22は第1検出領域R1と第2検出領域R2の両方で、同一種のエッジのみ(例えば、暗領域31から明領域32に切り替わる境界のエッジのみ)を検出する。
【0031】
そして移動量算出部23は、第1検出領域R1と第2検出領域R2のいずれかで検出された縞状パターン3のエッジに基づき移動体Oの移動量及び移動速度を算出する。例えば、図5に示すように、時刻t=T1において、第2検出領域R2で縞状パターン3のエッジ(明→暗)H1を検出し、時刻t=T2において、第2検出領域R2で縞状パターン3のエッジ(明→暗)H2を検出し、かつ第1検出領域R1で縞状パターン3のエッジ(明→暗)H2’を検出し、時刻t=T3において、第1検出領域R1で縞状パターン3のエッジ(明→暗)H3を検出し、これらのエッジ位置データを移動量算出部23に出力する。そして移動量算出部23は、t=T2の撮像画像から検出されたエッジ位置データを受け取ると、当該撮像画像とその1つ前のフレームの撮像画像(t=T1)で第2検出領域R2で検出された縞状パターン3の2つのエッジ(H2とH1)の差に基づいて、移動体Oの移動量及び移動速度を算出する。そして移動量算出部23は、t=T3の撮像画像から検出されたエッジ位置データを受け取ると、当該撮像画像とその1つ前のフレームの撮像画像(t=T2)で第2検出領域R2で検出された縞状パターン3の2つのエッジ(H3、H2’)の差に基づいて、移動体Oの移動量及び移動速度を算出する。
【0032】
そしてこの実施形態では、第1検出領域R1と第2検出領域R2の少なくとも一方で、連続する2フレームの撮像画像において縞状パターン3の同一のエッジが常時検出され、しかも検出されるエッジが常に同種類(明→暗、又は暗→明のいずれか)となるように、2つの検出領域R1、R2は次の関係式(1)及び(2)を満たすように設定されている。
【0033】
d1=d2 (1)
D1<d1<D2<d3 (2)
ここで、d1は第1検出領域R1の幅長さ、d2は第2検出領域R2の幅長さ、d3は第1検出領域R1と第2検出領域R2の合計幅長さ、D1は縞状パターン3の暗領域31の幅長さ、D2は縞状パターン3の暗領域31のピッチ長さである(いずれも移動方向に沿った長さである)。
【0034】
このように構成した本実施形態の移動量検知システム100によれば、移動方向に沿って動く縞状パターン3を撮影し、検出した縞状パターン3のエッジ位置に基づいて移動体Oの移動量を算出するように構成しているので、撮像装置1の撮像領域R0に縞状パターン3が写り込んでいれば移動量を算出することができ、従来の光学式のエンコーダのように、エンコーダスケールの分解能と光学素子の分解能とを一致させる必要がない。また、従来の光学式エンコーダのように光学素子による明暗比により移動量を検出するものでないので、スケールの取付誤差や製造誤差に起因して明暗比がずれることによる測定精度の低下を小さくできる。
【0035】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、他の実施形態の移動量検知システム100の画像処理装置2は、CPU、メモリ、A/Dコンバータ及びD/Aコンバータ等を有する所謂コンピュータであり、メモリに格納された所定のプログラムに従ってCPUや周辺機器が協働することにより、画像データ受付部21、エッジ検出部22、及び移動量算出部23としての機能を発揮するものであってもよい。また、これらの機能の一部がFPGA等の再構成可能なハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0036】
また上記実施形態では、撮像領域R0内において、撮像領域R0よりも面積が小さい2つの検出領域R1、R2が設定されていたがこれに限らない。他の実施形態では、撮像領域R0よりも面積が小さい検出領域が1つだけ設定されていてもよいし、撮像領域R0の全体が検出領域として設定されていてもよい。
【0037】
また前記実施形態では、2つの検出領域R1、R2は互いに重複するように設定されていたがこれに限らない。他の実施形態では、2つの検出領域R1、R2は重複することなく、かつ移動方向において隙間(間隔)なく設定されていてもよい。また他の実施形態では、2つの検出領域R1、R2は互いに重複しないように、例えば移動方向において離間するように設定されていてもよい。
【0038】
また他の実施形態の移動量検知システム100では、縞状パターン3は、撮像画像において明暗が交互に切り替わるようにされたものであれば、任意の態様であってよい。例えば、暗領域31と明領域32は、色分けにより明暗を分けるようにしてもよく、どちらか一方の領域をスリットにより形成することで明暗を分けるようにしてもよい。また縞状パターン3は、移動体Oそのものに付されなくてもよく、移動体Oとともに移動するスケール等に付されていてもよい。
【0039】
また他の実施形態の移動量検知システム100は、搬送ベルトの移動量及び移動速度を検出するものに限らず、任意の移動体Oの移動量及び移動速度を検出するように構成されてよい。またこの移動量検知システム100は、所謂エンコーダとして用いられてもよい。
【0040】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0041】
100・・・移動量検知システム
1 ・・・撮像装置
2 ・・・画像処理装置
21 ・・・画像データ受付部
22 ・・・エッジ検出部
23 ・・・移動量算出部
3 ・・・縞状パターン
31 ・・・暗領域
32 ・・・明領域
O ・・・移動体
R0 ・・・撮像領域
R1 ・・・第1対象領域
R2 ・・・第2対象領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7