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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152397
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】無人航空機飛行支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/18 20120101AFI20241018BHJP
   G08G 5/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G06Q50/18
G08G5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066561
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】常冨 博之
【テーマコード(参考)】
5H181
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5H181AA26
5H181BB04
5H181BB17
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF15
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181FF40
5H181MC19
5L049CC32
5L050CC32
(57)【要約】
【課題】点検対象を点検するために無人航空機を飛行させるに当たり、顧客情報や法令の変化、他企業や自治体が取得している諸情報を踏まえて飛行の可否を適切に判定する。
【解決手段】顧客データ、法令データ、設備データ、設備点検データ、を集約したデータサーバ20の諸データを参照して、少なくとも無人航空機の離陸地点と点検対象となる箇所を特定する情報に基づき、離陸箇所から点検対象となる箇所までの飛行経路や点検対象周辺の空域において、飛行が可能であるか、飛行不可の箇所又は条件により飛行可の箇所があるか否かを判定する。飛行経路上又は点検対象周辺の空域で飛行不可の箇所がある場合、又は、条件が未成就であると判定された箇所がある場合は、飛行不可の根拠を表示させ、飛行経路上及び点検対象周辺の空域での飛行が可能と判定された場合、又は、条件が成就していると判定された場合は、飛行経路を表示させる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人航空機を利用して点検対象を点検するために前記無人航空機を飛行させるための無人航空機飛行支援システムであって、
顧客の敷地上空の飛行承諾の有無を含む顧客データ、各種法令を集積する法令データ、各種設備の情報を集積する設備データ、前記各種設備の点検データを集積する設備点検データ、を集約したデータサーバを備え、
前記データサーバは、集約された諸データを参照して、少なくも前記無人航空機の離陸地点と前記点検対象となる箇所を特定する情報とに基づき、前記離陸地点から前記点検対象となる箇所までの飛行経路、及び、前記点検対象周辺の空域の飛行が可能であるか、前記飛行経路、及び、前記点検対象周辺の空域に、飛行不可の箇所又は条件により飛行可の箇所があるか否かを判定する飛行可否判定手段と、
前記飛行可否判定手段によって条件により飛行可と判定された箇所がある場合に、前記条件の成就の有無を判定する条件成就判定手段と、を備え、
前記飛行可否判定手段により前記飛行経路、又は、前記点検対象周辺の空域に、飛行不可の箇所があると判定された場合、又は、前記飛行可否判定手段によって条件により飛行可と判定され、且つ、前記条件成就判定手段により条件が未成就であると判定された箇所がある場合に、飛行不可としてその根拠を表示し、
前記飛行可否判定手段により前記飛行経路、及び、前記点検対象周辺の空域の飛行が可能であると判定され、又は、前記飛行可否判定手段によって条件により飛行可と判定された全ての箇所に対して、前記条件成就判定手段により条件が成就していると判定された場合に、飛行経路を表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする無人航空機飛行支援システム。
【請求項2】
前記飛行経路、又は、前記点検対象周辺の空域での飛行が飛行不可、許可・承認申請が必要な飛行、許可・承認申請が不要な飛行を予備的に判断する飛行可否予備判定手段と、
前記許可・承認申請が必要な飛行に対して、許可・承認の済否を予備判定する済否予備判定手段と、
を更に備え、
前記飛行可否判定手段は、前記飛行可否予備判定手段および前記済否予備判定手段による判定の後に実行されることを特徴とする請求項1記載の無人航空機飛行支援システム。
【請求項3】
前記飛行可否判定手段により前記飛行経路上の飛行、及び、前記点検対象周辺の空域での飛行が可能であると判定され、又は、前記飛行可否判定手段によって条件により飛行可と判定された全ての箇所に対して、前記条件成就判定手段により条件が成就していると判定された場合に、警告を発する条件があるか否かを判定する警告要否判定手段を更に有し、
前記警告要否判定手段により警告を発する条件があると判定された場合に、前記表示手段に警告情報をさらに表示させることを特徴とする請求項1記載の無人航空機飛行支援システム。
【請求項4】
前記警告を発する条件は、悪天候での飛行の場合、強風下での飛行の場合、又は樹木周辺での飛行の場合であることを特徴とする請求項3記載の無人航空機飛行支援システム。
【請求項5】
前記離陸箇所から前記点検対象となる箇所までの飛行経路は、前記離陸地点から最寄りの点検対象外となる配電線設備までの飛行経路と、前記点検対象外となる配電線設備から点検対象となる箇所までの配電線に沿った飛行経路と、からなることを特徴とする請求項1記載の無人航空機飛行支援システム。
【請求項6】
前記顧客の敷地上空の前記無人航空機の飛行回数又は飛行時間を集計する敷地上空飛行集計手段と、
前記敷地上空飛行集計手段により集計された飛行回数又は飛行時間に応じて顧客に報酬を還元する報酬還元手段と、
を更に具備することを特徴とする請求項1乃至3記載の無人航空機飛行支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、無人航空機(ドローン)を用いて配電設備などのインフラ設備を点検する場合の飛行を支援するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無人航空機(ドローン)を飛行させる場合、航空法を順守するために国土交通省に申請を行い、予め許可・承認を得て飛行させるようにしている。また、航空法以外の関係する法令(条例)等も遵守・対応するため、許可や届出等を行い、安全かつ第三者に迷惑をかけないように飛行させている。
しかし、実際に飛行させる場合には、飛行させる都度、その飛行範囲に法令等に抵触する場所がないか、国土交通省の提供するDIPS2.0「飛行計画通報」や法令に関する図面、現地の確認を行ったり、電話等での調整・確認を行ったりしているのが現状である。
【0003】
また、無人航空機とは別に、従来から送配電設備などを設置(占用)する際には、無人航空機の飛行と同様に、各種法令(条例)等に抵触しないように協議・交渉を行い、許可・承認を得て設置するようにしているが、それらの設備情報(送配電設備情報)は無人航空機飛行情報とリンクすることなく、それぞれ別個独立の情報として存在しているだけとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無人航空機を用いてインフラ等の設備の点検やメンテナンスを実施しようとする者は、無人航空機を飛行させる場所や範囲が膨大であったり、一定でなかったりするため、飛行させる前の法令等の確認や手続きに多くの時間を要していた。
にも拘わらず、同一設備(例えば、電柱)に設置した別のインフラ設備を別企業が点検する場合には、再度確認から交渉・申請などを行わなければならず、多くの時間と労力を必要とするものであった。
【0005】
また、無人航空機を一度飛行させた経路であっても、年月が経過すると、設備状況や周辺状況(周辺の建物など)に変化が生じ、無人航空機との離隔距離が変化する場合もある。さらに、法令情報やお客様の承諾情報なども時間の経過と共に変更されている場合も想定され、無人航空機を飛行させる都度、確認するのは煩わしいものであった。
また、飛行が可能となる場合であっても、点検対象となる箇所まで飛行させる過程で注意喚起(警告)を行うことが望ましい場合もあり、安全に無人飛行体を飛行させるためには、飛行の可否だけでは不十分な場合もある。
【0006】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、点検対象を点検するために無人航空機を飛行させるに当たり(無人航空機を離陸地点から点検対象となる箇所まで飛行させ、また、点検対象を点検するために点検対象周辺の空域を飛行させるに当たり)、顧客情報や法令の変化、他企業や自治体が取得している諸情報をも踏まえて飛行の可否を適切に判定することが可能な無人航空機飛行支援システムを提供することを主たる課題としている。
また、飛行が可能である場合においても、必要に応じて注意喚起を行うことで無人航空機の安全な飛行を支援することをも課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本願発明に係る無人航空機飛行支援システムは、無人航空機を利用して点検対象を点検するために無人航空機を飛行させるためのシステム、即ち、無人航空機を離陸地点から点検対象となる箇所まで飛行させ、また、点検対象を点検するために点検対象周辺の空域を飛行させるためのシステムであって、
顧客の敷地上空の飛行承諾の有無を含む顧客データ、各種法令を集積する法令データ、各種設備の情報を集積する設備データ、前記各種設備の点検データを集積する設備点検データ、を集約したデータサーバを備え、
前記データサーバは、集約された諸データを参照して、少なくも前記無人航空機の離陸地点と前記点検対象となる箇所を特定する情報とに基づき、前記離陸地点から前記点検対象となる箇所までの飛行経路、及び、前記点検対象周辺の空域の飛行が可能であるか、前記飛行経路、及び、前記点検対象周辺の空域に、飛行不可の箇所又は条件により飛行可の箇所があるか否かを判定する飛行可否判定手段と、
前記飛行可否判定手段によって条件により飛行可と判定された箇所がある場合に、前記条件の成就の有無を判定する条件成就判定手段と、を備え、
前記飛行可否判定手段により前記飛行経路、又は、前記点検対象周辺の空域に、飛行不可の箇所があると判定された場合、又は、前記飛行可否判定手段によって条件により飛行可と判定され、且つ、前記条件成就判定手段により条件が未成就であると判定された箇所がある場合に、飛行不可としてその根拠を表示し、
前記飛行可否判定手段により前記飛行経路、及び、前記点検対象周辺の空域の飛行が可能であると判定され、又は、前記飛行可否判定手段によって条件により飛行可と判定された全ての箇所に対して、前記条件成就判定手段により条件が成就していると判定された場合に、飛行経路を表示する表示手段と、
を具備することを特徴としている。
【0008】
したがって、飛行可否判定手段により、データサーバに集約された諸データを参照して、離陸地点から点検対象となる箇所までの飛行経路や点検対象周辺の空域での飛行が可能であるか、前記飛行経路上や点検対象周辺の空域に、飛行不可の箇所又は条件により飛行可の箇所があるか否かが判定され、また、条件成就判定手段により、条件により飛行可と判定された場合の条件の成就の有無が判定され、前記飛行経路上又は点検対象周辺の空域に飛行不可の箇所があると判定された場合や条件により飛行可である箇所がある場合に条件が未成就であると判定された場合には、飛行不可の根拠が表示され、前記飛行経路上又は点検対象周辺の空域の飛行が可能と判定され、又は、条件により飛行可である箇所がある場合に条件が成就していると判定された場合には、飛行経路が表示されるので、無人航空機の飛行の可否を判定するために、顧客データや法令データ、他企業が所有している情報や自治体が所有している情報を反映させることが可能となり、多くの労力を要する必要がなくなる。また、飛行不可の場合にその根拠が表示されるので、飛行不可の場合でも速やかに対応することが可能となる。
【0009】
なお、無人航空機の安全な飛行を一層支援するために、SNS検索(SNSを通じての情報収集)や検索エンジンによるキーワード検索等から、公開されている文書データや画像データをインターネット上から抽出し、その抽出した文書データや画像データをも参照して、離陸地点から点検対象となる箇所までの経路上の飛行の可否や、点検対象周辺の空域の飛行の可否を判定するようにしてもよい。
【0010】
以上の飛行可否判断を行うに当たり、飛行経路上の飛行が飛行不可、許可・承認申請が必要な飛行、許可・承認申請が不要な飛行を予備的に判断する飛行可否予備判定手段と、前記許可・承認申請が必要な飛行に対して、許可・承認の済否を予備判定する済否予備判定手段と、を更に設け、
前記飛行可否判定手段を、前記飛行可否予備判定手段および前記済否予備判定手段による判定の後に実行されるようにしてもよい(飛行可否予備判定手段および済否予備判定手段による判定を飛行可否判定手段による判定の前に実行させるようにしてもよい)。
許可・承認申請が必要となった場合に、許可・承認を得るまでに時間を要することから、速やかな対応するために、許可・承認を得ているか得ていないかを初めに確認することが時間的ロスを低減する上では好ましいためである。
【0011】
また、本発明に係る無人航空機飛行支援システムは、前記飛行可否判定手段により前記離陸箇所から前記点検対象となる箇所までの飛行経路上の飛行が可能であると判定され、又は、前記飛行可否判定手段によって条件により飛行可と判定された全ての箇所に対して、前記条件成就判定手段により条件が成就していると判定された場合に、警告を発する条件があるか否かを判定する警告要否判定手段を更に有し、
前記警告要否判定手段により警告を発する条件があると判定された場合に、前記表示手段に警告情報をさらに表示させるようにしてもよい。
【0012】
ここで、前記警告を発する条件は、悪天候での飛行、強風下での飛行、又は樹木周辺での飛行である場合とするとよい。
このような構成により、飛行は可能である場合でも、天候や強風、樹木の近接状態に応じて無人航空機の飛行の判断をより慎重に行わせることが可能となる。
【0013】
なお、前記離陸箇所から前記点検対象となる箇所までの飛行経路は、前記離陸地点から最寄りの点検対象外となる配電線設備までの飛行経路と、前記点検対象外となる配電線設備から点検対象となる箇所までの配電線に沿った飛行経路としてもよい。
このような飛行経路を設定すれば、離陸地点を配電線設備の近傍とすることで、飛行経路を配電線に沿った経路に固定できるため、飛行の可否判断に必要なデータの収集を配線線近傍に限定することが可能となり、データの収集が容易となる。
【0014】
また、無人航空機を顧客の敷地上空を飛行させる場合には、顧客の敷地上空の無人航空機の飛行回数又は飛行時間を集計する敷地上空飛行集計手段と、敷地上空飛行集計手段により集計された飛行回数又は飛行時間に応じて顧客に報酬を還元する報酬還元手段と、を更に具備するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、本願発明によれば、顧客データ、法令データ、各種設備データ、各種設備の点検データを一元管理したデータサーバにより、無人航空機の離陸箇所から点検対象となる箇所までの飛行経路上の飛行が可能であるか、離陸箇所から点検対象となる箇所までの飛行経路上に、飛行不可の箇所又は条件により飛行可の箇所があるか否かが判定され、飛行経路上に飛行不可の箇所があると判定された場合、又は、飛行させるに当たり条件が未成就であると判定された箇所がある場合には、飛行不可の根拠の表示を行い、飛行経路上の飛行が可能と判定され、又は、飛行させるに当たり条件が成就していると判定された場合には、飛行経路の表示を行うようにしたので、無人航空機を離陸地点から点検対象となる箇所までを飛行させ、また、点検対象を点検するために点検対象周辺の空域を飛行させるに当たり、顧客情報や法令の変化、他企業や自治体が取得している諸情報をも踏まえて飛行の可否を適切に短時間で判定することが可能となる。
また、飛行が可能である場合においても、必要に応じて注意喚起を行う機能を設けることで、無人航空機の飛行の判断をより慎重に行わせることが可能となり、無人航空機の安全な飛行を支援することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明に係る無人航空機設備点検飛行経路支援システムの実施形態を示す全体構成図である。
図2図2は、電力設備、通信設備としての電柱の登録データの例を示す表である。
図3図3は、本発明に係る無人航空機設備点検飛行経路支援システムでの処理の全体の概要を示したフローチャートである。
図4図4は、飛行カテゴリー決定フローによる飛行可否、許可・承認申請の要否を判定する動作処理例を示すフローチャートである。
図5図5は、図4において許可・承認申請が必要な飛行についての動作処理例を示すフローチャートである。
図6図6は、飛行可否判断基準・条件(飛行不可とする判断基準・条件と飛行可にするための判断基準・条件)を示す一覧表であり、特定飛行の場合と立入管理措置の場合を示す。
図7図7は、飛行可否判断基準・条件(飛行不可とする判断基準・条件と飛行可にするための判断基準・条件)を示す一覧表であり、その他の飛行禁止項目の場合を示す。
図8図8は、図6及び図7の飛行可否判断基準・条件に基づく飛行可否の二次判定以降の処理を説明するフローチャートである。
図9図9は、図8のステップ104の警告を発する条件を示す一覧表である。
図10図10は、既点検情報からの空白期間に応じて経路変更の有無を調整する経路調整手段を説明するフローチャートである。
図11図11は、無人航空機を顧客の敷地上空を通過させた場合の取り扱いを示すフローチャートである。
図12図12は、本発明に係る無人航空機設備点検飛行経路支援システムの他の実施形態を示す全体構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態について図面により説明する。
【0018】
図1において、本発明に係る無人航空機飛行支援システム1の概略構成が示されている。この無人航空機飛行支援システム1は、顧客の敷地上空を無人航空機を通過させるための飛行承諾や顧客の敷地内に電柱を設置する場合の占用承諾や、電柱敷地料を振り込む顧客の口座情報等を含む顧客データを集約した顧客データベース(顧客DB)11、各種法令データを集約した法令データベース(法令DB)12、各種設備のデータを集約した設備データベース13,15,17、各種設備の点検データを集約した設備点検データベース14,16,18、公開されている文書データや画像データを格納する文書・画像データベース(文書・画像DB)19を備え、これらデータベースからの諸データをネットワーク10を介してデータサーバ20に集約して一元管理するようにしている。
【0019】
ここで、設備データベースは、電柱その他の電力設備のデータを集約した電力設備データベース(電力設備DB)13、通信設備のデータを集約した通信設備データベース(通信設備DB)15、建造物を含む自治体設備のデータを集約した自治体設備データベース(自治体設備DB)17、を有している。
【0020】
また、設備点検データベースは、前記電力設備の点検データを集約した電力設備点検データベース(電力設備点検DB)14、前記通信設備の点検データを集約した通信設備点検データベース(通信設備点検DB)16と、前記自治体設備の点検データを集約した自治体設備点検データベース(自治体設備点検DB)18と、を有している。
【0021】
文書・画像データベース(文書・画像DB)19に格納される公開されている文書・画像は、SNS検索(SNSを通じての情報収集)や検索エンジンによるキーワード検索等から、公開されている文書データや画像データをインターネット上から抽出収集したもので、検索する都度、格納され、以前と同じ条件での検索であれば、抽出した文書データや画像データは最新のものに更新される。
【0022】
電力設備、通信設備、自治体設備のデータは、設備の大きさや所有区分などが含まれているもので、例えば、電柱であれば、図2に示されるように、その形状情報(地上高13m、地際径φ400、テーパー1/60)、名称(NTT 山口 5、中国電力NW 山口幹線 2)、位置(座標XXXXX、YYYYYY)等を含み、電線であれば、大きさ(○○mm2 幅1800mm)、取付高さ(12.0m)を含み、腕金であれば、大きさ(1800mm 70mm×70mm角)、取付高さ(11.85m)を含み、変圧器であれば、大きさ(φ300mm×800mm 2台)、取付高さ(9.5m)を含み、通信線であれば、大きさ(NTTデータによる)、取付高さ(5.0m)を含む。
【0023】
設備点検においては、「点検場所位置情報」や「設備名称ごと」などで点検する範囲を決めていることが多いことから、点検したい場所をスムーズに特定するためにはこれら設備データのパラメータが必要となる。
また大きさの表示があることで、当該設備を点検するために必要な飛行範囲が最大でどのくらい必要かを自動的に判断することができる。点検の精度(しっかり見る、ざっと見る、撮影だけするなど)によっては飛行する高度、設備に接近する距離が異なってくることから、それらを実行できるか否かを判断するためにも設備のパラメータが必要となる。
【0024】
上記設備データは、設備を共有している各企業で所有しているデータを集約するもので、電柱を例にすると、送配電会社、電話会社、CATV、自治体、公安委員会が有している電柱情報を集約し、これらのデータを共有する。また、これらデータは、システム内において、任意に定めた期間ごとに定期的にデータ照合等を実施し、更新されたデータを蓄積する。
【0025】
また、各種点検データは、
・設備の更新状況(大きさや規格の変更)
・設備周辺の建物の有無の変化(新築や解体など)や樹木の伸び具合(接近具合)
・顧客の敷地情報
などの変化を特定するもので、
「設備データ」や「お客さまデータ」、「周辺の接近物状況」を最新のものに更新するために用いられる。すなわち、設備周辺の状況や飛行範囲・経路をより最新のものにするために必要となる。
【0026】
そして、データサーバ20は、点検対象情報、即ち、点検場所(住所、座標、設備番号、点検範囲等)の情報、無人航空機の飛行高さ、飛行日時、点検(撮影)設備の種類等の情報が入力されると、無人航空機の離陸場所から点検場所(目的地)までの飛行経路を仮決定し(ステップ22)、無人航空機の離陸地点から点検場所までの飛行、及び、点検対象周辺の空域の飛行の可否を、集積された諸データに基づき判定する(ステップ24)。その結果、飛行が可能であれば、飛行経路を確定してその経路をデータサーバやこれに接続されている端末の画面に表示させ(ステップ26)、設備点検飛行を実施する(ステップ27)。また、飛行が不可能であれば、データサーバやこれに接続されている端末の画面に飛行不可の根拠を表示させる(ステップ28)。
【0027】
ステップ22の飛行経路の仮決定においては、無人航空機の離陸場所(無人航空機に搭載されたGPSから把握される飛行前の位置情報から割り出す)から点検する箇所(目的地)までの飛行経路を、離陸地点から点検対象外である直近の配電線設備までの直線経路と、この点検対象外の配電線設備から点検対象となる箇所までの電線(電柱)の上方を移動させる沿線経路とを組み合わせた経路として仮決定する。
点検対象となる箇所は、点検対象となる特定の設備が設置されている場所であっても、点検に必要な範囲であってもよく、また平面的(二次元的)に特定するものであっても、三次元的に特定するものであってもよい。
【0028】
ステップ24の飛行可否の判定においては、ステップ22で仮決定された飛行経路に対して、データサーバ20に集約された諸データに基づき、図3に示されるように、先ず、航空法で必要となる飛行許可・承認手続きの有無を確認するために、飛行カテゴリー決定フローによる飛行可否、申請要否を予め判定する(飛行不可であるか、許可・承認申請が必要な飛行であるか、許可・承認申請が不要な飛行であるかを予備判定する)(ステップ32)。
その結果、許可・承認申請が必要な飛行であると判定された場合に、現在の許可・承認状態、すなわち許可済または承認済であるか、未許可または未承認の状態であるかを判定し(ステップ34)、その上で、個別具体的な飛行可否判断要素・条件に基づき、飛行の可否を判定する(飛行不可であるか、飛行可であるか、条件により飛行可であるかを再判定する)(ステップ36)。
【0029】
その結果、飛行可であると判定された場合は、警告を発する条件の有無を判定する(ステップ38)。そして、警告を発する条件が無い場合には、警告を表示させずに飛行経路のみを表示させ(ステップ26a)、警告を発する条件が有る場合には、飛行経路を警告と共に表示させる(ステップ26b)。また、飛行不可の場合には、その根拠や理由を表示させる(ステップ28)。
【0030】
以下において、以上の処理を具体的に説明すると、先ず、飛行カテゴリー決定フローによる飛行可否、申請要否を予備判定は、図4に示されるように行われる。
すなわち、先ず「特定飛行」に該当する飛行を実施するか否かを判定し(ステップ52)、「特定飛行」に該当する飛行でないと判定された場合には、リスクが低く現行の航空法においてカテゴリーIの許可・承認申請が不要な飛行として飛行を許可する(ステップ54)。
【0031】
これに対して、「特定飛行」に該当する飛行を実施する場合であると判定された場合には、立入管理措置(第三者(無人航空機を飛行させる者及びこれを補助する者、飛行に関係する者以外の者)の立入りを制限する措置)を講じる必要があるか否かを判定し(ステップ56)、立入管理措置を講じることなく飛行させようとする場合には、第一種機体認証、及び、一等操縦者技術証明を有するか否かを判定する(ステップ58)。
【0032】
第一種機体認証、及び、一等操縦者技術証明を有していると判定された場合には、レベル4等の 第三者の上空を飛行するためリスクが高いカテゴリーIIIの飛行として、許可・承認申請を要請する(ステップ60)。これに対して、第一種機体認証、及び、一等操縦者技術証明を有していないと判定された場合には、飛行不可と判定する(ステップ62)。
【0033】
ステップ56において、立入管理措置を講じた上で飛行させようとする場合には、無人航空機の総重量が25kg未満であるか否かを判定し(ステップ64)、総重量が25kg未満でないと判定された場合(25kg以上であると判定された場合)には、現行の航空法において許可・承認を受ける必要がある比較的リスクが高いカテゴリーIIの飛行として、許可、承認を要請する(ステップ66)。
【0034】
これに対して、総重量が25kg未満であると判定された場合には、以下の(1)~(4)のいずれかに該当するか否かを判定する(ステップ68)。
(1)空港等の周辺の飛行である
(2)150m以上の上空の飛行である
(3)危険物の輸送に係る飛行である
(4)物件の投下に係る飛行である
そして、(1)~(4)のいずれかに該当する場合には、同様にカテゴリーIIの飛行として許可・承認申請を要請する(ステップ70)。
【0035】
これに対して、(1)~(4)のいずれにも該当しないと判定された場合には、ステップ72において、以下の(5)~(8)のいずれかに該当するか否かを判定する。
(5)人口集中地区の飛行である。
(6)夜間での飛行である。
(7)目視外での飛行である。
(8)人又は物件との距離が30m未満の飛行である。
上記(5)~(8)のいずれにも該当しないと判定された場合には、リスクが低く現行の航空法において許可・承認を要しないカテゴリーIの飛行として飛行を許可する(ステップ74)。
【0036】
これに対して、上記(5)~(8)のいずれかに該当すると判定された場合には、第二種機体認証以上、及び、二等操縦者技術証明以上を有しているか否かを判定する(ステップ76)。その結果、第二種機体認証以上、及び、二等操縦者技術証明以上を有していると判定された場合には、カテゴリーII の許可・承認申請が不要な飛行とし(ステップ78)、第二種機体認証以上、及び、二等操縦者技術証明以上を有していないと判定された場合には、許可・承認申請が必要なカテゴリーIIの飛行とする(ステップ80)。
【0037】
以上の飛行カテゴリー決定フローにより許可・承認申請が必要であると判定されると、図5に示されるように、許可・承認申請が必要な飛行に対して、チェックボックスにより申請状態(未申請か、申請済か、許可・承認済か)の選択が要求され(ステップ82)、いずれかが選択されると、許可・承認申請の実施の有無が判定される(ステップ84)。
【0038】
そして、許可・承認申請の実施が未だである場合には、自動で許可・承認申請が実行されるか、許可・承認申請を要請する表示がなされ(ステップ86)、この時点では飛行不可と決定される(ステップ88)。また、ステップ84で許可・承認申請の実施がされていると判定された場合には、許可・承認済であるか、未許可・未承認であるかが判定され(ステップ90)、未許可・未承認であれば、この時点で飛行不可と決定される(ステップ88)。
【0039】
そして、ステップ90で許可・承認済であると判定された場合、及び、ステップ88で飛行不可と決定された後は、以下述べる飛行可否の判断要素・条件に基づき、飛行可否(飛行不可であるか、飛行可であるか、条件により飛行可であるか)を二次判定(再判定)する(ステップ92)。
この飛行不可の二次判定(再判定)は、図6図7に示される個別具体的な判断基準(飛行不可とする判断基準・条件と、飛行可とするための判断基準・条件)に基づき、飛行の可否が判定される。以下、この判断基準について簡単に説明する。
【0040】
<特定飛行について>
特定飛行については、図6に示される判断基準・条件が用いられる。
(1)空港等の周辺の空域
(i) 飛行不可の判断基準・条件
空港等の周辺の空域にあっては、各空港の周辺の決められた高さ以上の高さでの飛行は飛行不可とする。
(ii) 飛行可にするための基準・条件
決められた高さ以上の高さでの飛行が必要な場合には、空港事務所長へ許可申請を行い、許可を得る必要がある。
【0041】
(2)緊急用務空域
(i) 飛行不可の判断基準・条件
緊急用務空域での飛行にあっては、原則飛行は不可である。
(ii) 飛行可にするための基準・条件
空港事務所長へ許可申請を行い、許可を得る必要がある。また、航空法第132条の92の適用を受けての飛行は可能である。
【0042】
(3)地表又は水面から150m以上の高さの空域
(i) 飛行不可の判断基準・条件
地表又は水面から150m以上の高さの空域は、原則飛行不可である。
(ii) 飛行可にするための基準・条件
空港事務所長へ許可申請をして許可が得られた場合は飛行可能である。
【0043】
(4)人口集中地区の上空
(i)飛行不可の判断基準・条件
夜間や目視外での人口集中地区の上空の飛行は原則不可である。
(ii) 飛行可にするための基準・条件
航空局長へ許可申請をして許可が得られた場合は飛行可能である。
【0044】
(5)夜間飛行
(i)飛行不可の判断基準・条件
夜間飛行は、原則不可である。
(ii) 飛行可にするための基準・条件
航空局長へ承認申請をして承認が得られた場合は飛行可能である。
【0045】
(6)目視外飛行
(i)飛行不可の判断基準・条件
操縦者と飛行予定地間に障害物が有る場合や、操縦者と飛行予定地間距離(本体-操縦者)が目視不可の距離以上である場合の目視外の飛行は不可である。
(ii) 飛行可にするための基準・条件
航空局長へ承認申請をして承認が得られた場合は飛行可能である。
【0046】
(7)人又は物件から30m以上の距離を確保できない飛行
(i)飛行不可の判断基準・条件
人又は物件から30m以上の距離が確保できない場合は飛行不可である。
(ii) 飛行可にするための基準・条件
航空局長へ承認申請をして承認が得られた場合は飛行可能である。
【0047】
(8)催し場所上空の飛行
(i)飛行不可の判断基準・条件
催し場所上空は原則飛行不可である。
(ii) 飛行可にするための基準・条件
航空局長へ承認申請をして承認が得られた場合は飛行可能である。
【0048】
(9)危険物の輸送
(i)飛行不可の判断基準・条件
危険物の輸送は原則飛行不可である。
(ii) 飛行可にするための基準・条件
航空局長へ承認申請をして承認が得られた場合は飛行可能である。
【0049】
(10)物件投下
(i)飛行不可の判断基準・条件
物件を投下する場合や機体が物件投下に対応していない場合は原則飛行不可である。
(ii) 飛行可にするための基準・条件
航空局長へ承認申請を行い、承認が得られた場合には、飛行可能である。
【0050】
<立入管理措置について>
立入管理措置については、図6に示される判断基準・条件が用いられる。
(i)飛行不可の判断基準・条件
第三者上空を飛行する場合には、立入管理装置が無い場合や、第一種機体認証及び一等操縦者技能証明が無い場合には、飛行不可である。
(ii) 飛行可にするための基準・条件
航空局長へ許可・承認申請を行い、許可・承認された場合、または、第一種機体認証及び一等操縦者技能証明を取得した場合には飛行可能である。
【0051】
<その他の法令等による判断基準・条件>
その他の法令等による判断基準・条件については、図7に示されるような判断基準・条件が用いられる。
【0052】
(1)小型無人機等飛行禁止法による規制
(i)飛行不可の判断基準・条件
国会議事堂、内閣総理大臣官邸、最高裁判所、皇居等、危機管理行政機関の庁舎、対象政党事務所、対象外国公館等、対象防衛関係施設、対象空港、対象原子力事業所、大会会場等、空港については、対象施設からの距離300m以内は飛行禁止である。
(ii) 飛行可にするための基準・条件
対象施設の管理者又はその同意を得た者による飛行、土地の所有者等が当該土地の上空において行う飛行、土地の所有者の同意を得た者が、同意を得た土地の上空において行う飛行、国又は地方公共団体の業務を実施するために行う飛行、の場合は飛行可である。
なお、対象防衛関係施設及び対象空港の敷地又は区域の上空(レッドゾーン)においては、土地の所有者若しくは占有者が当該土地の上空において行う飛行、国又は地方公共団体の業務を実施するために行う飛行であっても、対象施設の管理者の同意が必要である。
【0053】
(2)道路交通法による規制
(i)飛行不可の基準・条件
道路の上空における単なる飛行は、道路使用許可を必要としないが、道路における無人航空機の離発着を伴う場合には、道路上の飛行は原則禁止される。
(ii) 飛行可にするための基準・条件
道路交通法 に基づき道路使用許可申請を管轄警察署へ提出して許可された場合は飛行可能である。
【0054】
(3)道路法による規制
(i)飛行不可の判断基準・条件
道路の上空における単なる飛行は、道路使用許可を必要としないが、道路における無人航空機の離発着を伴う場合には、道路上の飛行は原則禁止される。
(ii) 飛行可にするための基準・条件
道路法に基づく道路占用許可申請を道路管理者へ提出して許可された場合には飛行可能である。
【0055】
(4)河川法による規制
(i)飛行不可の判断基準・条件
河川や河川関係敷地を管理している管理者により飛行が禁止されている場合には飛行不可である。
(ii) 飛行可にするための基準・条件
事前調整を行い、許可が得られた場合には飛行可能である。
【0056】
(5)自然公園法による規制
(i)飛行不可の判断基準・条件
自然公園上の飛行は、自然公園法及び県立自然公園条例に基づく許可申請や届出は不要であるが、野生生物の生態に悪影響を及ぼさないよう独自規制がある場合には、飛行は禁止される。
【0057】
(6)国有林野の管理経営に関する法律による規制
(i)飛行不可の判断基準・条件
国有林野内で無人航空機を飛行操縦させる場合は飛行不可である。
(ii) 飛行可にするための基準・条件
入林を予定する国有林を管轄する森林管理署等に「入林届」の提出があれば、飛行可である。
【0058】
(7)港則法、海上交通安全法による規制
(i)飛行不可の判断基準・条件
海上(船上)での離着陸がある場合や対象海域(瀬戸内海、伊勢湾、東京湾)では原則飛行不可である。
【0059】
(8)都市公園法による規制
(i)飛行不可の判断基準・条件
各公園管理者ホームページ(HP)や各自治体条例内に飛行禁止公園名がある公園では、原則飛行不可である。
(ii) 飛行可にするための基準・条件
条例に基づく許可申請をして許可された場合には飛行可能である。
【0060】
(9)文化財保護法による規制
(i)飛行不可の判断基準・条件
独自規制がある文化財の上空は飛行不可である。
【0061】
(10)地方公共団体が定める条例による規制
(i)飛行不可の判断基準・条件
独自規制がある場合には飛行不可である。
【0062】
(11)民法による規制
(i)飛行不可の判断基準・条件
第三者の土地の上空は事前承諾が無い場合や離着陸を伴う場合には、原則飛行不可である。
【0063】
(12)許可・承認を得た際の飛行マニュアルによる規制
(i)飛行不可の判断基準・条件
許可・承認を得た際の飛行マニュアルにおいて、所定の場所的制限、高さ的制限、時間的制限がある場合には、飛行不可である。例えば、学校の上空の飛行に対して「飛行日が休校日でない」場合、病院の上空の飛行に対して「診療日・時間中である」場合、神社仏閣の上空の飛行に対して「拝観日・時間中である」場合、観光施設の上空の飛行に対して「営業日・時間中である」場合、高速道路の上空の飛行に対して「通行止でない」場合、鉄道上空の飛行に対して、運行ダイヤ内である(運休中でない)場合、電波塔・無線設備上空の飛行に対して「設備に応じた離隔距離以上離れての飛行でない」場合には、飛行不可である。
(ii) 飛行可にするための基準・条件
これに対して、許可・承認書に添付された飛行マニュアルに飛行禁止又は飛行不可の記載がなければ飛行可である。
【0064】
(13)ドクターヘリ(離発着地点)周辺での規制
(i)飛行不可の判断基準・条件
ドクターヘリ(離発着地点)周辺での飛行については、ドクターヘリの飛行計画があれば飛行不可である。
(ii) 飛行可にするための基準・条件
ドクターヘリの飛行計画と当該無人航空機の飛行計画が重複しなければ、飛行可である。
【0065】
(14)補助者が増員できない場合の飛行の規制
(i)飛行不可の判断基準・条件
補助者による立入制限や看板やコーンによる立入管理区画の明示ができない場合(第3者の立入制限ができない場合)には、飛行不可である
【0066】
以上のような飛行可否の判断基準・条件を用いた飛行可否(飛行不可であるか、飛行可であるか、条件により飛行可であるか)の二次判定(再判定)においては、図8に示されるように、前記(i)の飛行不可とする判断基準・条件により飛行不可であるか否かを判定し(ステップ100)、飛行不可であると判定された場合には、その飛行不可の案件について、前記(ii)の飛行可にするための基準・条件を満たしているか否かを判定する(ステップ102)。
その結果、ステップ102でも飛行不可であると判定された場合には、飛行不可の根拠を表示する。飛行不可の根拠としては、例えば、抵触する法令名や、飛行するために必要な申請・手続きの提示、承諾が必要なお客さま名等が表示される。
【0067】
これに対して、ステップ100で飛行可であると判定された場合、又は、ステップ102で条件により飛行可であると判定された場合には、警告を発する条件に該当するか否かを判定する(ステップ104)。この警告を発する条件の有無は、図9に示される条件下での飛行の有無を判定するもので、警告を発する条件下での飛行となるのは、悪天候での飛行、強風下での飛行、樹木周辺での飛行に該当する場合である。
【0068】
悪天候での飛行は、例えば、雨・霧の予報がある場合であり、強風下での飛行は、例えば、機体の耐風性能以上の風が吹く予報がある場合であり(飛行マニュアル記載の風速以上の風が吹く予報がある場合であり)、樹木周辺での飛行は、例えば、樹木が飛行経路上に所定距離以内にある場合や他企業の点検実施から1ヶ月以上経過している場合である(1ヶ月以上経過していると、樹木の成長により飛行経路と干渉する可能性があるためである)。
ただし、悪天候や強風下での飛行でも、許可・承認書に添付された飛行マニュアルに記載がなければ警告を発さずに飛行可とする。また、樹木周辺での飛行も、他の企業での点検結果により接近樹木が伐採されている場合には警告を発さずに飛行可とする。
【0069】
図9で示す条件に基づき警告を発する条件を満たしていない場合には、警告は発せずに飛行経路のみを表示させる(ステップ26a)が、警告を発する条件を満たしている場合には、飛行経路と共に警告を表示される(ステップ26b)。例えば、「14:00~16:00 雨予報有 降り始めたら飛行中止せよ」とか、「電柱○○号付近 樹木接近の恐れあり 接近前に樹木状況確認せよ」とかの警告を表示させる。
【0070】
したがって、無人航空機を用いて設備点検を行う場合には、点検対象となる箇所(点検場所や点検範囲)を指定すると共に、飛行高さや飛行日時、点検設備の種類を特定すれば、仮に決定された飛行経路(離陸地点から点検対象外である直近の配電線設備までの直線経路と、この点検対象外の配電線設備から点検対象設備までの電線(電柱)に沿った沿線経路)に対して、データサーバ20によって顧客情報や、各種法令に基づく規制、設備データやその点検情報、公開されている文書データや画像データを踏まえて、離陸地点から点検対象となる箇所(目的地)までの飛行や点検対象周辺での飛行の可否が判断され、飛行が可能である場合でも、天候、風速、樹木との離間距離等を踏まえて警告の要否が判定され、飛行経路が必要に応じて警告と共に表示されるので、無人航空機の安全な飛行を支援することが可能となる。
【0071】
また、本システムでは、SNS検索(SNSを通じての情報収集)や検索エンジンによるキーワード検索等から、公開されている文書データや画像データをインターネット上から抽出し、その抽出した文書データや画像データをも参照して(文書・画像データベース19に蓄積された情報をも参照して)、飛行開始位置(離陸地点)から点検対象となる箇所(目的地)までの経路上の飛行や点検対象周辺の空域の飛行の可否を判定しているので、公開情報に即した判定も行われることになり、無人航空機の安全な飛行を一層支援することが可能となる。
【0072】
なお、顧客データや法令データ、設備データや設備点検データを定期的にアップデートすることで、データサーバは、最新の顧客データや法令データ、設備データや設備点検データに基づき、飛行の可否が判定されるので、飛行経路や飛行可否の判断基準も見直され、設備情報に変更がある場合には、法令更新によって飛行不可となる場合も生じることになる。
【0073】
以上の無人航空機飛行支援システムにおいて、データサーバ20は、図10に示されるように、前回の点検情報の更新からの空白期間が所定期間以上あるか否かを判定し(ステップ110)、所定期間未満であれば、経路更新を行わないようにし(ステップ112)、前回の点検情報の更新から空白期間が所定期間以上あると判定された場合には、樹木の伸長や建設中の建造物の形状を予測演算し、無人航空機と樹木や建造物との離隔情報の変化を予測して、予告警報を表示させるようにしてもよい(ステップ114)。
【0074】
さらに、データサーバ20は、所定の顧客に対して、顧客の敷地上空の無人航空機の飛行回数又は飛行時間に応じて、顧客に報酬を還元させる機能を持たせるようにしてもよい。
すなわち、報酬還元対象となる顧客に対して、図11に示されるように、無人航空機が顧客の敷地上空を通過したか否かを判定し(ステップ120)、通過しない場合には報酬の支払いを行わず(スッテプ122)、顧客の敷地上空を通過した場合には、通過した時が日中であったか夜間であったかを判定し(ステップ124)、日中であれば、所定期間(例えば、1ヶ月間)の日中に通過した回数をカウントし(ステップ126)、その回数に昼の単価を乗じて、所定期間の日中分の支払額を決定し(ステップ128)、また、夜間であれば、所定期間の夜間に通過した回数をカウントし(ステップ130)、その回数に夜間の単価を乗じて、所定期間の夜間分の支払額を決定し(ステップ132)、双方の支払い額を合計してその期間の支払い合計金額を決定し、その合計金額の支払いを指示するようにしてもよい(ステップ134)。なお、通過回数の代わりに、敷地上空にいた飛行時間で支払額を決定するようにしてもよい。
【0075】
以上は、離陸地点から点検対象となる箇所まで経路上や点検対象周辺の空域での飛行可否等を飛行前に確認する構成であったが、上記システムを、無人航空機が飛行している最中に、目的地までの飛行や点検対象周辺の空域での飛行の可否をリアルタイムで判定する場合に利用することも可能である。
この場合には、図12に示されるように、無人航空機Aの位置情報をネットワーク10を介してデータサーバ20に送り、その位置情報で特定される位置から目的地(点検対象となる箇所)までの経路や点検対象周辺の空域で同様の処理を行うようにしてもよい。
【0076】
無人航空機Aの位置情報を得る手段は、無人航空機Aを操縦機(コントローラ)Bで操縦している場合には、無人航空機Aの位置情報を操縦機Bに常時送信し、この操縦機Bからネットワーク10を介してデータサーバ20へ送るようにしても、無人航空機Aから自身の位置情報をネットワーク10を介してデータサーバ20に送るようにしてもよい。
なお、他の構成は図1で示す構成と同様であるので、同一箇所に同一符号を付して説明を省略する。
【0077】
このような構成においては、操縦機Bの画面に前記実施形態と同様に飛行可であれば、飛行経路と必要に応じて警告を表示させ、飛行不可であれば、飛行不可の根拠を表示させる。また、飛行が可の状態から飛行不可となった場合には、「飛行不可・戻れ」と表示させ、無人航空機Aを飛行可の範囲へ自動制御で戻すようにしても、または、飛行不可となった場所で停止させるようにしてもよい。
【0078】
なお、以上までの例においては、電力設備を点検する場合を例示したが、無人航空機を用いて、道路、鉄道、公園等のインフラ設備の点検が必要となる場合に、同様のシステムを利用してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 無人航空機飛行支援システム
2 無人航空機
11 顧客データベース(顧客DB)
12 法令データベース(法令DB)
13 電力設備データベース(電力設備DB)
14 電力設備点検データベース(電力設備点検DB)
15 通信設備データベース(通信設備DB)
16 通信設備点検データベース(通信設備点検DB)
17 自治体設備データベース(自治体設備DB)
18 自治体設備点検データベース(自治体設備点検DB)
19 文書・画像データベース(文書・画像DB)
20 データサーバ
A 無人航空機
B 操縦機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12