(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152402
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】工具保持装置、工具ホルダ、タレット及び工具
(51)【国際特許分類】
B23B 29/12 20060101AFI20241018BHJP
B23B 29/24 20060101ALI20241018BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B23B29/12 Z
B23B29/24 Z
B23Q11/10 D
B23Q11/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066578
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】591033755
【氏名又は名称】エヌティーツール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 均
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寛之
【テーマコード(参考)】
3C011
3C046
【Fターム(参考)】
3C011EE02
3C011EE08
3C046MM07
3C046NN05
3C046NN27
(57)【要約】
【課題】工具を回転不能に保持する工具保持装置において、切り屑の除去効果、冷却効果及び潤滑効果を高めることができる技術を提供する。
【解決手段】工具保持装置100は、工具400と、工作機械に取り付けられるとともに、工具400を回転不能に保持する工具ホルダ202とにより構成される。工作機械から供給されるクーラントは、本体部材210の第1の本体部材通路214、工具400の第1の工具通路414を流れ、第1の噴射口414bから刃420に向けて噴射される。また、工作機械から供給されるクーラントは、本体部材210の第1の本体部材通路214、スリーブ220の第1のスリーブ通路224を介してポンプ400に送られる。ポンプ400により圧力が高められたクーラントは、スリーブ220の第2のスリーブ通路225、本体部材210の第2の本体部材通路215、工具400の第2の工具通路415を流れ、第2の噴射口415bから刃420に向けて噴射される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工する刃が取り付けられている工具と、工作機械に取り付けられととともに、前記工具を回転不能に保持する工具ホルダとにより構成される工具保持装置であって、
前記工具ホルダは、本体部と、回転部材と、ポンプと、を備え、
前記本体部は、工作機械に着脱自在に取り付けられ、本体部内周面と、前記本体部内周面により形成される本体部内側空間と、流入口と、第1の流出口と、第2の流出口と、前記流入口及び前記第1の流出口に連通している第1の本体部通路と、前記第2の流出口に連通している第2の本体部通路と、を有しており、前記本体部が工作機械に取り付けられた状態において、工作機械から供給されるクーラントが前記流入口に流入するように構成され、
前記回転部材は、前記本体部内側空間内に回転可能に配置されており、前記本体部が工作機械に取り付けられた状態において、前記回転部材が工作機械により回転駆動されるように構成され、
前記ポンプは、ポンプ回転部と、吸入口と、吐出口と、を有し、前記ポンプ回転部は、前記本体部内側空間内に、前記回転部材の回転に連動して回転可能に配置され、前記吸入口は、前記第1の本体部通路に連通し、前記吐出口は、前記第2の本体部通路に連通しており、前記吸入口から吸入したクーラントの圧力を、前記ポンプ回転部の回転数に対応する圧力に高め、圧力を高めたクーラントを前記吐出口から吐出するように構成され、
前記工具は、ワークを加工する刃と、クーラントを前記刃の方向に噴射する第1の噴射口及び第2の噴射口と、前記第1の噴射口に連通している第1の工具通路と、前記第2の噴射口に連通している第2の工具通路と、を有しており、前記工具が前記工具ホルダに取り付けられた状態において、前記第1の工具通路及び前記第2の工具通路が、前記第1の本体部通路及び前記第2の本体部通路に連通するように構成されていることを特徴とする工具保持装置。
【請求項2】
工作機械に取り付けられととともに、ワークを加工する刃が取り付けられている工具を回転不能に保持する工具ホルダであって、
本体部と、回転部材と、ポンプと、を備え、
前記本体部は、工作機械に着脱自在に取り付けられ、本体部内周面と、前記本体部内周面により形成される本体部内側空間と、流入口と、第1の流出口と、第2の流出口と、前記流入口及び前記第1の流出口に連通している第1の本体部通路と、前記第2の流出口に連通している第2の本体部通路と、を有しており、前記本体部が工作機械に取り付けられた状態において、工作機械から供給されるクーラントが前記流入口に流入するように構成され、
前記回転部材は、前記本体部内側空間内に回転可能に配置されており、前記本体部が工作機械に取り付けられた状態において、前記回転部材が工作機械により回転駆動されるように構成され、
前記ポンプは、ポンプ回転部と、吸入口と、吐出口と、を有し、前記ポンプ回転部は、前記本体部内側空間内に、前記回転部材の回転に連動して回転可能に配置され、前記吸入口は、前記第1の本体部通路に連通し、前記吐出口は、前記第2の本体部通路に連通しており、前記吸入口から吸入したクーラントの圧力を、前記ポンプ回転部の回転数に対応する圧力に高め、圧力を高めたクーラントを前記吐出口から吐出するように構成されていること特徴とする工具ホルダ。
【請求項3】
請求項2に記載の工具ホルダであって、
前記本体部は、本体部材と、スリーブと、キャップと、を有し、
前記本体部材は、筒状に形成され、本体部材内周面と、前記本体部材内周面により形成される本体部材内側空間と、前記流入口と、前記第1の流出口と、前記第2の流出口と、前記流入口及び前記第1の流出口に連通しているとともに、前記本体部材内周面に開口している第1の本体部材通路と、第2の流出口に連通しているとともに、前記本体部材内周面に開口している第2の本体部材通路と、を有し、
前記スリーブは、筒状に形成され、スリーブ外周面と、スリーブ内周面と、前記スリーブ内周面により形成されるスリーブ内側空間と、前記スリーブ外周面及び前記スリーブ内周面に開口している第1のスリーブ通路及び第2のスリーブ通路と、を有しており、前記本体部材内側空間内に、前記第1のスリーブ通路が前記第1の本体部材通路に連通し、前記第2のスリーブ通路が前記第2の本体部材通路に連通するように配置され、
前記キャップは、前記スリーブ内側空間の先端側を閉塞するように配置され、
前記回転部材は、前記本体部材内側空間内に回転可能に配置され、
前記ポンプは、前記ポンプ回転部が、前記スリーブ内側空間内で、前記回転部材と前記キャップの間に、前記回転部材の回転に連動して回転可能に配置され、前記吸入口が、前記第1のスリーブ通路に連通し、前記吐出口が前記第2のスリーブ通路に連通するように構成されていることを特徴とする工具ホルダ。
【請求項4】
第1の圧力を有するクーラントが流出する第1の流出口と、前記第1の圧力より高い第2の圧力を有するクーラントが流出する第2の流出口を有する工具ホルダに取り付けられる工具であって、
工具本体部と、前記工具本体部に取り付けられ、ワークを加工する刃と、を備え、
前記工具本体部は、クーラントを、前記工具本体部に取り付けられている前記刃の方向に噴射する第1の噴射口及び第2の噴射口と、第1の工具流入口と、第2の工具流入口と、前記第1の噴射口及び前記第1の工具流入口に連通している第1の工具通路と、前記第2の噴射口及び前記第2の工具流入口に連通している第2の工具通路と、を有し、
前記工具が工具ホルダに取り付けられた状態において、前記第1の工具通路及び前記第2の工具通路が、工具ホルダの第1の流出口及び第2の流出口に連通するように構成されていることを特徴とする工具。
【請求項5】
請求項4に記載の工具であって、
前記第1の噴射口は、クーラントを前記刃の逃げ面の方向に噴射するように構成され、
前記第2の噴射口は、クーラントを前記刃のすくい面の方向に噴射するように構成されていることを特徴とする工具。
【請求項6】
タレット中心線回りに回転可能であり、外周側に、工具保持装置が着脱自在に取り付け可能な複数の工具保持装置取り付け部が周方向に沿って設けられているタレットであって、
前記複数の工具保持装置取り付け部のうちの一つが、予め定められている加工位置に配置されるように前記タレットを回転させるタレット駆動機構と、
前記加工位置に配置された前記工具保持装置取り付け部に取り付けられている工具保持装置にクーラントを供給するクーラント供給機構と、
前記加工位置に配置された前記工具保持装置取付け部に取り付けられている工具保持装置の回転部を回転駆動する駆動機構と、を備え、
前記複数の工具保持装置取り付け部のうちの少なくとも1つに、請求項1に記載の工具保持装置が取り付けられていることを特徴とするタレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工具を回転不能に保持する工具ホルダ、当該工具ホルダを備える工具保持装置、当該工具ホルダに保持される工具、当該工具ホルダを備える複数の工具保持装置を着脱自在に取り付け可能なタレットに関する。
【背景技術】
【0002】
金属製のワークの切削加工等を行う工作機械では、ワークを加工する工具を保持する工具ホルダが用いられている。
工具ホルダとしては、回転工具ホルダ(「転削工具ホルダ」と呼ばれることもある)あるいは非回転工具ホルダ(「旋削工具ホルダ」と呼ばれることもある)が用いられる。回転工具ホルダは、固定されているワークを加工する工具(「転削工具」あるいは「回転工具」と呼ばれることもある)を回転可能に保持する。非回転工具ホルダは、回転しているワークを加工する工具(「旋削工具」あるいは「非回転工具」と呼ばれることもある)を回転不能に保持する。
工具を用いてワークを加工する際には、ワークと工具との潤滑、ワークや工具の冷却、加工により発生した切り屑(「切粉」と呼ばれることもある)の除去等のために、クーラント(「切削油」と呼ばれることもある)を工具の刃先等に供給する必要がある。
このため、工作機械から供給されるクーラントを工具の刃先等に噴射するクーラント供給機構が設けられた工具ホルダが用いられている。
ここで、クーラントの圧力を高めるポンプを有するクーラント供給機構が設けられている工具ホルダが、例えば、特開昭62-4550号公報(特許文献1)に開示されている。
さらに、工具を回転不能に保持する工具ホルダ(非回転工具ホルダ)において、長い連続的な切り屑が工具やワークに巻き付くのを防止することができるようにするために、改良された、ポンプを有するクーラント供給機構が提案されている。改良されたクーラント供給機構は、特開2023-32047号公報(特許文献2)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62-4550号公報
【特許文献1】特開2023-32047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に開示されている工具ホルダを用いることにより、工具を回転不能に保持する工具ホルダ(非回転工具ホルダ)における切り屑の除去効果を高めることができる。
一方、特許文献2に開示されている工具ホルダにおいて、冷却効果や潤滑効果を高めるために、クーラントの噴射量の増加が要望されている。
しかしながら、特許文献2に開示されている工具ホルダでは、ポンプから吐出されるクーラントの量を増加させるには限界がある。
本開示は、回転不能に保持されている工具を用いてワークを加工する際において、切り屑の除去効果、冷却効果及び潤滑効果を高めることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の開示は、ワークを加工する刃が取り付けられている工具と、工作機械に取り付けられるとともに、工具を回転不能に保持する工具ホルダにより構成される工具保持装置に関する。
工具ホルダは、本体部、回転部材及びポンプを備えている。
本体部は、工作機械に着脱自在に取り付けられる。本体部は、本体部内周面、本体部内周面により形成される本体部内側空間、流入口、第1の流出口、第2の流出口、流入口及び第1の流出口に連通している第1の本体部通路、第2の流出口に連通している第2の本体部通路を有している。本開示では、本体部が工作機械に取り付けられた状態において、工作機械から供給されるクーラントが流入口に流入するように構成されている。
回転部材は、本体部の本体部内側空間内に回転可能に配置されている。本開示では、本体部が工作機械に取り付けられた状態において、回転部材が工作機械(例えば、工作機械に設けられている主軸)により回転駆動されるように構成されている。
ポンプは、ポンプ回転部、吸入口及び吐出口を有している。ポンプ回転部は、本体部の本体部内側空間内に、回転部材の回転に連動して回転可能に配置される。吸入口は、本体部の第1の本体部通路に連通している。吐出口は、本体部の第2の本体部通路に連通している。ポンプは、吸入口から吸入したクーラントの圧力を、ポンプ回転部の回転数に対応する圧力に高め、圧力を高めたクーラントを吐出口から吐出するように構成されている。
工具は、ワークを加工する刃、クーラントを刃の方向に噴射する第1の噴射口及び第2の噴射口、第1の噴射口に連通している第1の工具通路、第2の噴射口に連通している第2の工具通路を有している。例えば、工具は、刃が取り付けられる工具本体部により構成される。そして、工具本体部に、第1の噴射口、第2の噴射口、第1の工具通路及び第2の工具通路が形成される。本開示では、工具が工具ホルダに取り付けられた状態において、工具の第1の工具通路及び第2の工具通路が、工具ホルダの第1の本体部通路及び第2の本体部通路に連通するように構成されている。
本開示の工具保持装置を用いることにより、回転不能に保持されている工具を用いてワーク加工する際において、切り屑の除去効果、冷却効果及び潤滑効果を高めることができる。
第2の開示は、工作機械に取り付けられととともに、ワークを加工する刃が取り付けられている工具を回転不能に保持する工具ホルダに関する。
本開示の工具ホルダは、本体部、回転部材及びポンプを備えている。
本体部は、工作機械に着脱自在に取り付けられる。本体部は、本体部内周面、本体部内周面により形成される本体部内側空間、流入口、第1の流出口、第2の流出口、流入口及び第1の流出口に連通している第1の本体部通路、第2の流出口に連通している第2の本体部通路を有している。本開示では、本体部が工作機械に取り付けられた状態において、工作機械から供給されるクーラントが流入口に流入するように構成されている。
回転部材は、本体部の本体部内側空間内に回転可能に配置されている。本開示では、本体部が工作機械に取り付けられた状態において、回転部材が工作機械(例えば、工作機械に設けられている主軸)により回転駆動されるように構成されている。
ポンプは、ポンプ回転部、吸入口及び吐出口を有している。ポンプ回転部は、本体部の本体部内側空間内に、回転部材の回転に連動して回転可能に配置されている。吸入口は、本体部の第1の本体部通路に連通している。吐出口は、本体部の第2の本体部通路に連通している。ポンプは、吸入口から吸入したクーラントの圧力を、ポンプ回転部の回転数に対応する圧力に高め、圧力を高めたクーラントを吐出口から吐出するように構成されている。
本開示の工具ホルダを用いることにより、回転不能に保持されている工具を用いてワーク加工する際において、切り屑の除去効果、冷却効果及び潤滑効果を高めることができる。
本開示の工具ホルダの異なる形態では、本体部は、本体部材、スリーブ及びキャップにより構成されている。
本体部材は、筒状に形成されている。本体部材は、本体部材内周面、本体部材内周面により形成される本体部材内側空間、流入口、第1の流出口、第2の流出口、第1の本体部通路及び第2の本体部通路を有している。第1の本体部通路は、流入口及び第1の流出口に連通しているとともに、本体部材内周面に開口している。第2の本体部材通路は、第2の流出口に連通しているとともに、本体部材内周面に開口している。
スリーブは、筒状に形成されている。スリーブは、スリーブ外周面、スリーブ内周面、スリーブ内周面により形成されるスリーブ内側空間、第1のスリーブ通路及び第2のスリーブ通路を有している。第1のスリーブ通路及び第2のスリーブ通路は、スリーブ外周面及びスリーブ内周面に開口している。スリーブは、本体部材の本体部材内側空間内に、第1のスリーブ通路が本体部材の第1の本体部材通路に連通し、第2のスリーブ通路が本体部材の第2の本体部材通路に連通するように配置可能に構成されている。
キャップは、スリーブ内側空間の先端側を閉塞可能に構成されている。
回転部材は、本体部材の本体部材内側空間内に回転可能に配置されている。
ポンプは、ポンプ回転部が、スリーブ内側空間内で、回転部材とキャップの間に、回転部材の回転に連動して回転可能に配置されるように構成されている。また、ポンプは、スリーブ内側空間内において、吸入口が第1のスリーブ通路に連通し、吐出口が第2のスリーブ通路に連通するように構成されている。
本形態では、工具ホルダを容易に構成することができる。
第3の開示は、第1の圧力を有するクーラントが流出する第1の流出口と、第1の圧力より高い第2の圧力を有する第2のクーラントが流出する第2の流出口を有する工具ホルダに取り付けられる工具に関する。
本開示の工具は、ワークを加工する刃、刃が取り付けられる工具本体部を備えている。
工具本体部は、第1の噴射口、第2の噴射口、第1の流入口、第2の流入口、第1の工具通路及び第2の工具通路を有している。第1の噴射口及び第2の噴射口は、クーラントを、工具本体部に取り付けられている刃の方向に噴射するように構成されている。第1の工具通路は、第1の噴射口及び第1の流入口に連通している。第2の工具通路は、第2の噴射口及び第2の流入口に連通している。
そして、工具が工具ホルダに取り付けられた状態において、工具の第1の工具通路及び第2の工具通路が、工具ホルダの第1の流出口及び第2の流出口に連通するように構成されている。
本開示の工具を用いることにより、回転不能に保持されている工具を用いてワーク加工する際において、切り屑の除去効果、冷却効果及び潤滑効果を高めることができる。
第3の開示の工具の異なる形態では、第1の噴射口は、クーラントを刃の逃げ面の方向に噴射するように構成され、第2の噴射口は、クーラントを刃のすくい面の方向に噴射するように構成されている。
本形態では、切り屑の除去効果を高めながら、冷却効果及び潤滑効果を高めることができる。
第4の開示は、タレット中心線回りに回転可能であり、外周側に、工具保持装置が着脱自在に取り付け可能な複数の工具保持装置取り付け部が周方向に沿って設けられているタレットに関する。
本開示のタレットは、タレット駆動機構、クーラント供給機構及び駆動機構により構成されている。
タレット駆動機構は、複数の工具保持装置取り付け部のうちの一つが、予め定められている加工位置に配置されるようにタレットを回転させる。
クーラント供給機構は、加工位置に配置された工具保持装置取り付け部に取り付けられている工具保持装置にクーラントを供給する。
駆動機構は、加工位置に配置された工具保持装置取り付け部に取り付けられている工具保持装置の回転部を回転駆動する。
そして、複数の工具保持装置取り付け部のうちの少なくとも1つに、前述した工具保持装置が取り付けられている。
本開示のタレットを用いることにより、回転不能に保持されている工具を用いてワーク加工する工具保持装置が工具保持装置取り付け部に取り付けられているタレットにおいて、切り屑の除去効果、冷却効果及び潤滑効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0006】
本開示の工具保持装置、工具ホルダ、工具及びタレットを用いることにより、回転不能に保持されている工具を用いてワーク加工する際において、切り屑の除去効果、冷却効果及び潤滑効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】一実施形態の工具保持装置の要部の断面図である。
【
図3】一実施形態の工具ホルダの要部の断面図である。
【
図4】
図3を矢印IV-IV線方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示の実施形態を、図面を参照して説明する。
なお、以下では、工具ホルダ200の中心線P(回転部材230およびポンプ300のポンプ回転部の回転中心線)に沿った方向を「軸方向」といい、軸方向に沿って、回転部材230が配置されている側と反対側(
図2、
図3において、矢印X1側(左側))を「先端側」あるいは「軸方向第1側」といい、回転部材230が配置されている側(
図2、
図3において、矢印X2側(右側))を「後端側」あるいは「軸方向第2側」という。
【0009】
先ず、本開示のタレットの一実施形態を、
図1を参照して説明する。
図1は、一実施形態のタレット10の概要を説明する図である。
タレット10は、工作機械に設けられ、タレット中心線Pを中心に回転可能である。
タレット10の外周側には、複数の工具保持装置取り付け面11a~11cが、周方向に沿って設けられている。本実施形態では、工具保持装置取り付け面11a~11cは、等間隔に設けられている。
工具保持装置取り付け面11a~11cには、工具保持装置の被取り付け面が着脱自在に取り付けられる。本実施形態では、工具保持装置取り付け面11a~11cは、タレット中心線P回りに等間隔に延在する取り付け面中心線Q1~Q3の延在方向と交差する方向(好適には、直交する)方向に延在している。
図1では、工具保持装置取り付け面11aには、工具保持装置100を構成する工具ホルダ200の被取り付け面212aが着脱自在に取り付けられている。被取り付け面212aは、工具ホルダ200を構成する本体部材210の外周面部分である。工具ホルダ200は、刃420が取り付けられている工具400を回転不能に保持する。すなわち、工具ホルダ200は、非回転工具を保持する非回転工具ホルダとして構成されている。
工具保持装置取り付け面11bには、工具保持装置500を構成する工具ホルダの被取り付け面512aが取り付けられている。被取り付け面512aは、工具保持装置500を構成する工具ホルダの本体部材510の外周面部分である。工具保持装置500を構成する工具ホルダは、工具570を、取り付け面中心線Q2の延在方向と交差する(好適には、直交する)工具回転中心線q2回りに回転可能に保持する。すなわち、工具保持装置500を構成する工具ホルダは、回転する工具670を保持する回転工具ホルダとして構成されている。
工具保持装置取り付け面11cには、工具保持装置600を構成する工具ホルダの被取り付け面612aが取り付けられている。被取り付け面612aは、工具保持装置600を構成する工具ホルダの本体部材610の外周面部分である。工具保持装置600を構成する工具ホルダは、工具670を、取り付け面中心線Q3周りに回転可能に保持する。すなわち、工具保持装置600を構成する工具ホルダは、回転する工具670を保持する回転工具ホルダとして構成されている。
タレット10は、タレット駆動機構(図示省略)により、工具保持装置取り付け面11a~11c(工具保持装置取り付け面11a~11cに取り付けられている工具保持装置100、500、600)のいずれかが、予め定められている加工位置に配置されるように、タレット中心線P回りに回転駆動される。
【0010】
本実施形態では、工具ホルダ200が、本発明の「工具を回転不能に保持する工具ホルダ」に対応する。
また、工具保持装置取り付け面11a~11cが、本開示の「工具保持装置取り付け部」に対応し、被取り付け面112a、512a、612aが、本開示の「被取り付け部」に対応する。
工具保持装置100(500、600)の被取り付け面212a(512a、612a)がタレット10の工具保持装置取り付け面11a~11cに取り付けられた状態が、本開示の「工具保持装置が工作機械に取り付けられた状態」に対応する。
【0011】
また、加工位置に配置された工具保持装置取り付け面に取り付けられている工具保持装置の回転部を回転駆動する駆動機構20が設けられている。駆動機構20としては、例えば、モータ等の駆動手段により構成される駆動機構が用いられる。
図1に示されている例では、加工位置に配置されている工具保持装置取り付け面11aに取り付けられている工具保持装置100の回転部は、回転部材230(後述する)である。
また、工具保持装置取り付け面11bに取り付けられている工具保持装置500の回転部は、回転軸530である。回転軸530が回転することによって、工具570が回転するように構成されている。
また、工具保持装置取り付け面11cに取り付けられている工具保持装置600の回転部は、回転軸630である。回転軸630が回転することによって、工具670が回転するように構成されている。
【0012】
また、加工位置に配置された工具保持装置取り付け面に取り付けられている工具保持装置にクーラントを供給するクーラント供給機構(図示省略)が設けられている。
図1に示されている工具保持装置100では、クーラント供給機構から供給されるクーラントは、そのまま噴射口414bから噴射されるとともに、ポンプ300で圧力が高められた後、噴射口415bから噴射される(後述する)。
【0013】
次に、本開示の工具保持装置の一実施形態を、
図2~
図5を参照して説明する。
図2は、一実施形態の工具保持装置100の断面図である。
図3は、
図2の要部を拡大した図である。
図4は、
図3を矢印IV-IV線方向から見た断面図である。
図5は、一実施形態の工具保持装置100を構成する工具400を示す図である。
なお、
図2、
図3に示されている工具ホルダ200は、本開示の工具ホルダの一実施形態を示している。また、
図5に示されている工具400は、本開示の工具の一実施形態を示している。
【0014】
一実施形態の工具保持装置100は、工具ホルダ200と工具400により構成されている。
工具ホルダ200は、工具400を回転不能に保持する非回転工具ホルダとして構成されている。
工具ホルダ200は、本体部、回転部材230、ポンプ300、工具400により構成されている。
【0015】
本体部は、本体部材210、スリーブ220、キャップ250により構成されている。
【0016】
本体部材210は、筒状に形成されている。本体部材210は、本体部材内周面211と本体部材外周面212を有している。本体部材内周面211によって本体部材内側空間213が形成される。
本実施形態では、本体部材内周面211は、本体部材内周面部分211a~211cを有している。本体部材内周面部分211aと211cは、円形の断面を有し、軸方向に延在している。本体部材内周面部分211cは、本体部材内周面部分211aより後端側に配置され、本体部材内周面部分211aの内径より小さい内径を有している。本体部材内周面部分211bは、径方向に延在し、本体部材内周面部分211aと211cを接続する段差面を形成している。本体部材内周面部分211aには、雌ネジが形成されている。
本体部材外周面212は、本体部材外周面部分212aを有している。本体部材外周面部分212aは、径方向に延在している。本体部材外周面部分212aは、タレット10の工具保持装置取り付け面11a~11cに着脱自在に取り付け可能に構成されている。
本体部材外周面部分212aが、本開示の「本体部外周面部分」あるい「被取り付け部」に対応する。
【0017】
また、本体部材210には、第1の本体部材通路214と第2の本体部材通路215が形成されている。
第1の本体部材通路214は、本体部材外周面212と本体部材内周面211に開口している。具体的には、第1の本体部材通路214は、本体部材外周面部分212aに形成されている流入口214aと本体部材内周面211に形成されている開口に連通している。
また、第1の本体部材通路214は、本体部材210に形成されている第1の流出口214bに開口している分岐通路214Aを有している。第1の流出口214bは、工具4000を保持する工具保持部(例えば、工具保持空間)を形成する壁面に形成されている。
第2の本体部材通路215は、本体部材内周面211の本体部材内周面部分111cに形成されている開口と第2の流出口215bに連通している。第2の流出口215bは、工具400を保持する工具保持部(例えば、工具保持空間)を形成する壁面に形成されている。
そして、本体部材外周面部分212aがタレット10の工具保持装置取り付け面11a~11cに取り付けられた状態(工具保持装置100あるいは工具ホルダ200が工作機械に取り付けられた状態)において、工作機械から供給されるクーラントが流入口214aに流入するように構成されている。
なお、後述するように、工具400は、工具400の工具本体部材410に形成されている第1の工具流入口414a及び第2の工具流入口415aが第1の流出口214b及び第2の流出口215bに連通するように、工具保持部に取り付けられる。
【0018】
スリーブ220は、筒状に形成されている。スリーブ220は、スリーブ内周面221、スリーブ外周面222、スリーブ先端面220A及びスリーブ後端面220Bを有している。スリーブ内周面221によってスリーブ内側空間223が形成される。
本実施形態では、スリーブ内周面221は、スリーブ内周面部分221a~221cを有している。スリーブ内周面部分221aと221cは、円形の断面を有し、軸方向に延在している。スリーブ内周面部分221cは、スリーブ内周面部分221aより後端側に配置され、スリーブ内周面部分221aの内径より小さい内径を有している。スリーブ内周面部分221bは、径方向に延在し、スリーブ内周面部分221aと221cを接続する段差面を形成している。スリーブ内周面部分221aには、雌ネジが形成されている。
スリーブ外周面222は、スリーブ外周面部分222a~222cを有している。スリーブ外周面部分222aと222cは、円形の断面を有し、軸方向に延在している。スリーブ外周面部分222cは、スリーブ外周面部分222aより後端側に配置され、スリーブ外周面部分222aの外径より小さい外径を有している。スリーブ外周面部分222bは、径方向に延在し、スリーブ外周面部分222aと222cを接続する段差面を形成している。スリーブ外周面部分222aには、本体部材内周面部分211aに形成されている雌ネジにネジ結合可能な雄ネジが形成されている。
【0019】
スリーブ220は、本体部材内側空間213内に挿入された状態で、本体部材210に固定される。本実施形態では、スリーブ220を、スリーブ外周面部分222aに形成されている雄ネジを、本体部材内周面部分211aに形成されている雌ネジにネジ結合させた状態で、スリーブ外周面部分222bが本体部材内周面部分211bに当接する位置まで挿入することによって、スリーブ220を本体部材210に固定している。
スリーブ220を本体部材210に固定する方法は、これに限定されず、公知の種々の方法を用いることができる。
本実施形態では、本体部材内側空間213内の、スリーブ後端面220Bより後端側に、回転部材230(後述する)が配置される空間が形成される。
なお、本体部材210とスリーブ220の間には、Oリング等のシール部材216a~216cが配置される。
【0020】
また、スリーブ220は、第1のスリーブ通路224と第2のスリーブ通路225を有している。
第1のスリーブ通路224及び第2のスリーブ通路225は、スリーブ内周面221及びスリーブ外周面222に開口している。
第1のスリーブ通路224は、スリーブ220が本体部材210に固定されている状態で、本体部材210に形成されている第1の本体部材通路214及びポンプ300の吸入口301に連通するように構成されている。
第2のスリーブ通路225は、スリーブ220が本体部材210に固定されている状態で、本体部材210の第2の本体部材通路215及びポンプ300の吐出口302に連通するように構成されている。
なお、本実施形態では、ポンプ300の吸入口301と吐出口302(吸入口301に連通している第1のスリーブ通路224と吐出口302に連通している第2のスリーブ通路225)は、軸方向に沿って離間する位置に配置されている。
【0021】
キャップ250は、キャップ外周面252、キャップ先端面250Aおよびキャップ後端面250Bを有している。
キャップ外周面252は、キャップ外周面部分252a~252cを有している。キャップ外周面部分252a~252cは、円形の断面を有し、軸方向に延在している。キャップ外周面部分252cは、キャップ外周面部分252aより後端側に配置されている。キャップ外周面部分252bは、キャップ外周面部分252aと252cの間に配置されているとともに、キャップ外周面部分252aおよび252cの外径より大きい外径を有している。キャップ外周面部分252bには、スリーブ内周面部分221aに形成されている雌ネジにネジ結合可能な雄ネジが形成されている。
キャップ250は、スリーブ220の先端側に固定される。本実施形態では、キャップ外周面部分252bに形成されている雄ネジを、スリーブ内周面部分221aに形成されている雌ネジにネジ結合させることによって、キャップ250をスリーブ220に固定している。
なお、スリーブ220とキャップ250の間には、Oリング等のシール部材226aが配置される。
キャップ250をスリーブ220に固定する方法は、これに限定されず、公知の種々の方法を用いることができる。
【0022】
回転部材230は、本体部材内側空間213内に回転可能に配置されている。本実施形態では、回転部材230は、本体部材内側空間213の後端部(スリーブ後端面220Bより後端側)に、ベアリング(軸受け)233により回転可能に配置されている。これにより、回転部材230は、本体部材210に対して回転可能に配置される。
なお、工具ホルダ200の本体部材外周面部分212aが、タレット10の工具保持装置取り付け面11aに取り付けられた状態(工具保持装置100あるいは工具ホルダ200が工作機械に取り付けられた状態)において、工作機械に設けられている駆動機構20により回転部材230が回転駆動されるように構成されている。詳しくは、工具保持装置取り付け面11aが加工位置に配置された状態において、工具保持装置取り付け面11aに取り付けられている工具保持装置100(工具ホルダ200)の回転部材230が、駆動機構20により回転駆動される。
【0023】
ポンプ300は、キャップ250と回転部材230の間に配置されている。
ポンプ300は、スリーブ内側空間223内に回転可能に配置されているポンプ回転部310を有している。ポンプ300としては、ポンプ回転部を有する、公知の種々のポンプを用いることができる。本実施形態では、内接型ギヤポンプを用いている。
ポンプ300のポンプ回転部310は、一端側が回転部材230に連結されている。本実施形態では、ポンプ回転部310の後端部が、ノックピン240により回転部材230に連結されている。また、ポンプ回転部310の先端側が、キャップ250に、回転可能に支持されている。本実施形態では、ポンプ回転部310の先端部が、キャップ250のキャップ後端面250Bに形成されている凹部内に回転可能に支持されている。
これにより、ポンプ300のポンプ回転部310は、回転部材230の回転に連動して回転可能に配置される。
ポンプ300は、吸入口301と吐出口302を有している。吸入口301は、第1のスリーブ通路224を介して第1の本体部材通路214に連通されている。また、吐出口302は、第2のスリーブ通路225を介して第2の本体部材通路215に連通している。
ポンプ300は、吸入口301から吸入したクーラントの圧力を、ポンプ回転部310の回転数に対応する圧力に高め、圧力を高めたクーラントを吐出口302から吐出する。
【0024】
本実施形態では、本体部材210、スリーブ220、キャップ250により、本開示の「本体部」が構成される。
また、本体部材外周面212により、本開示の「本体部外周面」が構成され、本体部材内周面211とスリーブ内周面221により、本開示の「本体部内周面」が構成され、本体部材内側空間213とスリーブ内側空間223により、本開示の「本体部内側空間」が構成される。
また、第1の本体部材通路214(分岐通路214Aを含む)と第1のスリーブ通路224により、本開示の「第1の本体部通路」が構成され、第2の本体部材通路215と第2のスリーブ通路225により、本開示の「第2の本体部通路」が構成される。
また、スリーブ220、ポンプ回転部310、吸入口301および吐出口302によって、本開示の「ポンプ」が構成される。
【0025】
工具400は、ワークWを加工する刃420と、工具本体部材410により構成されている。
刃420は、工具本体部材410に取り付けられている。刃420は、すくい面422と逃げ面423を有している。また、すくい面422と逃げ面423が交わる稜線に切れ刃421が形成されている。
図5に示されている工具400では、逃げ面423は、第1逃げ面(「主逃げ面」あるいは「前逃げ面」と呼ばれている)と第2逃げ面(「副逃げ面」あるいは「後逃げ面」と呼ばれている)を有している。また、切れ刃421は、第1切れ刃(第1逃げ面とすくい面422が交わる稜線に形成される)と第2切れ刃(第2逃げ面とすくい面422が交わる稜線に形成される)を有している。勿論、工具本体部材410には、刃420以外の種々の形状の刃を取り付けることができる。
工具本体部材410には、第1の噴射口414b、第2の噴射口415b、第1の工具流入口414a、第2の工具流入口415a、第1の工具通路414及び第2の工具通路415が形成されている。
第1の噴射口414bは、クーラントを、刃420の逃げ面423の方向に噴射するように形成されている。また、第2の噴射口415bは、クーラントを、刃420のすくい面422の方向に噴射するように形成されている。本実施形態体では、
図2に示されているように、第1の工具通路414に2つの第1の噴射口414bが形成されている。一方の第1の噴射口414bは、第1逃げ面にクーラントを噴射し、他方の第1の噴射口414bは、第2逃げ面にクーラントを噴射する。
なお、第1の噴射口414b及び第2の噴射口415bの数は、1を含めて適宜設定可能である。また、第1の噴射口414b及び第2の噴射口415bの形状(噴射特性)や配置位置は、適宜変更可能である。例えば、第1の噴射口414b及び第2の噴射口415bから、同じ個所の方向にクーラントが噴射されるように構成することもできる。
第1の工具通路414は、第1の工具流入口414aと第1の噴射口414bに連通している。また、第2の工具通路415は、第2の工具流入口415aと第2の噴射口415bに連通している。
本実施形態では、工具400が工具ホルダ200の本体部材210に形成されている工具保持部(例えば、工具保持空間)に取り付けられた状態(工具40が工具ホルダ200に取り付けられた状態)において、第1の工具流入口414a及び第2の工具流入口415aが、工具ホルダ200(本体部材210)に形成されている第1の流出口214b及び第2の流出口215bに連通するように構成されている。すなわち、工具400が工具ホルダ200に取り付けられた状態において、第1の工具通路414及び第2の工具通路415が、工具ホルダ200の第1の本体部材通路214及び第2の本体部材通路215に連通するように構成されている。
なお、工具400と工具ホルダ200(本体部材210)の間に、楕円リング等のシール部材416a及び416bが配置される。
【0026】
本実施形態では、工作機械から供給されるクーラントは、流入口214a、第1の本体部通路(分岐通路214A)、第1の工具通路414を介して第1の噴射口414bに送られる。そして、クーラントは、第1の噴射口414bから刃420の逃げ面423の方向に噴射される。
すなわち、第1の噴射口414bから逃げ面423の方向に噴射されるクーラントの圧力は、第1の圧力(工作機械から供給されるクーラントの圧力に近い圧力)を有している。
また、工作機械から供給されるクーラントは、流入口214a、第1の本体部通路(第1の本体部材通路214、第1のスリーブ通路224)を介してポンプ300の吸入口301に送られる。ポンプ300は、吸入口301から吸入されたクーラントの圧力を、ポンプ回転部310の回転数に対応する圧力に高め、圧力を高めたクーラントを吐出口302から吐出する。吐出口302から吐出されたクーラントは、第2の本体部通路(第2のスリーブ通路225、第2の本体部材通路215)及び第2の工具通路415を介して第2の噴射口415bに送られる。そして、第2の噴射口415bから刃420のすくい面433の方向に噴射される。
すなわち、第2の噴射口415bから噴射されるクーラントの圧力は、第1の噴射口414bから噴射されるクーラントの圧力(第1の圧力)より高い圧力(第2の圧力)を有している。
ポンプ300のポンプ回転部310の回転数は、第2の噴射口415bから噴射されるクーラントの圧力(第2の圧力)が、加工時に発生する切り屑を分断することができる圧力となる所定回転数に設定される。
第2の噴射口415bから噴射される高圧(第2の圧力)のクーラントによって、加工時に発生する切り屑を分断することができる。これにより、長い連続的な切り屑が工具400やワークWに巻き付くのを防止することができる。すなわち、切り屑の除去効果を高めることができる。
また、第1の噴射口414bから、低圧(第1の圧力)のクーラントが噴射される。これにより、工具400の刃420に向けて噴射されるクーラントの量を増加させることができる。すなわち、第2の噴射口415bから噴射されるクーラントの量では不足する分を、第1の噴射口414bから噴射されるクーラントの量で補うことができる。これにより、冷却効果及び潤滑効果を高めることができる。
【0027】
回転しない工具(非回転工具)400を用いてワークWを加工する際の動作の一例を以下に説明する。
工作機械に、ワークWを取り付ける。
工具保持装置の中から、加工に必要な工具400を保持している工具保持装置100を、タレット10の工具保持装置取り付け面11aに取り付ける。
工具保持装置取り付け面11aが加工位置に配置されるように、タレット10を回転させる。
ワークWの回転数および位置を制御することによって、工具保持装置100の工具ホルダ200に保持されている工具400を用いてワークWを加工する。
この時、ポンプ300のポンプ回転部310に連結されている回転部材230は、所定回転数に設定される。これにより、工具400の第2の噴射口415bから、加工により発生する切り屑を分断することができる高圧(第2の圧力)を有するクーラントが、工具400の刃420のすくい面422やワークWの加工部等に噴射される。また、第2の第1の噴射口414bから、低圧(第1の圧力)を有するクーラントが、工具400の刃420の逃げ面423やワークWの加工部等に噴射される。
【0028】
以上のように、本実施形態の工具保持装置100を用いることにより、回転不能に保持されている工具400を用いてワークWを加工する際における、切り屑の削除効果、冷却効果及び潤滑効果を高めることができる。
なお、本実施形態の工具ホルダ200、工具400あるいはタレット10を用いる場合にも、同様の効果を有する。
また、工具保持装置(工具ホルダ)の回転軸を回転駆動させる駆動機構により、ポンプ回転部310を回転させているため、ポンプ回転部310を回転させる駆動源を別途設ける必要がない。
【0029】
本開示は、実施形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
本開示は、工具を保持する工具保持機構としては、種々の構成の工具保持機構を用いることができる。
工具ホルダの本体部を工作機械に着脱自在に取り付ける方法としては、種々の方法をいることができる。
工作機械から供給されるクーラントを第1の本体部通路に通す方法としては、種々の方法を用いることができる。
ポンプとしては、ポンプ回転部、吸入口および吐出口を有する、公知の種々の構成のポンプを用いることができる。
回転部材を本体部内側空間内に回転可能に配置する方法としては、種々の方法を用いることができる。
回転部材とポンプ回転部を連結する方法としては、種々の方法を用いることができる。
本体部材、スリーブ、キャップ、回転部材の形状や構成は、実施形態で説明した形状や構成に限定されず、種々変更可能である。
第1の噴射口414b及び第2の噴射口415bの形状、数や配置位置は、適宜設定可能である。
実施形態では、本体部を、本体部材、スリーブおよびキャップにより構成したが、これに限定されない。例えば、本体部材、スリーブおよびキャップを一体化した1つの部材により本体部を構成することもできる。また、本体部材とスリーブを一体化した部材とキャップにより本体部を構成し、あるいは、スリーブとキャップを一体化した部材と本体部材により本体部を構成することもできる。
実施形態で説明した構成は、単独で用いることもできるし、適宜選択した複数を組み合わせて用いることもできる。
【符号の説明】
【0030】
10 タレット
11a~11c 工具保持装置取り付け面(工具保持装置取り付け部)
20 駆動機構
100、500、600 工具保持装置
200 工具ホルダ(非回転工具ホルダ)
210、510、610 本体部材
211 本体部材内周面
211a~211c 本体部材内周面部分
212 本体部材外周面
212a、512a、612a 本体部材外周面部分(被取り付け部)
213 本体部材内側空間
214 第1の本体部材通路
214A 分岐通路
214a 流入口
214b 第1の流出口
215 第2の本体部材通路
215b 第2の流出口
216a~216c Oリング(シール部材)
220 スリーブ
220A スリーブ先端面
220B スリーブ後端面
221 スリーブ内周面
221a~121c スリーブ内周面部分
222 スリーブ外周面
222a~122c スリーブ外周面部分
223 スリーブ内側空間
224 第1のスリーブ通路
225 第2のスリーブ通路
226a Oリング(シール部材)
230、530、630 回転部材
233 ベアリング(軸受)
240 ノックピン
250 キャップ
250A キャップ先端面
250B キャップ後端面
252 キャップ外周面
252a~152c キャップ外周面部分
300 ポンプ
301 吸入口
302 吐出口
310 ポンプ回転部
400、570、670 工具
410 工具本体部材
414 第1の工具通路
414a 第1の工具流入口
414b 第1の噴射口
415 第2の工具通路
415a 第2の工具流入口
415b 第2の噴射口
416a、416b 楕円リング(シール部材)
420 刃
421 切れ刃
422 すくい面
423 逃げ面
W ワーク