(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152422
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】電動ハンマ
(51)【国際特許分類】
B25D 17/18 20060101AFI20241018BHJP
B25D 11/04 20060101ALI20241018BHJP
B25D 17/20 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B25D17/18
B25D11/04
B25D17/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066607
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】古澤 正規
【テーマコード(参考)】
2D058
【Fターム(参考)】
2D058AA15
2D058DA23
2D058DA25
(57)【要約】
【課題】外部の集塵機を用いることなく集塵を可能とする。
【解決手段】電動ハンマ1は、モータ6を内蔵する本体部2と、本体部2の下側に配置されて打撃軸線Lが上下方向に延びる打撃機構部3と、を含み、モータ6の駆動により打撃機構部3が作動して、打撃機構部3の下側に装着したビットBを打撃可能である。そして、モータ6の駆動に伴い回転する集塵ファン45と、ビットBの先端側に向けて開口する吸込口78と接続され、集塵ファン45の回転に伴って吸込口78に吸引力を発生させる集塵流路Rと、集塵流路R上に設けられて吸込口78から吸い込まれた粉塵を集塵するダストボックス60と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを内蔵する本体部と、打撃機構部とを含み、前記モータの駆動により前記打撃機構部が作動して、前記打撃機構部の打撃軸線上に装着したビットを打撃可能な電動ハンマであって、
前記モータの駆動に伴い回転する集塵ファンと、
前記ビットの先端側に向けて開口する吸込口を有し、前記集塵ファンの回転に伴って前記吸込口に吸引力を発生させる集塵流路と、
前記集塵流路上に設けられて前記吸込口から吸い込まれた粉塵を集塵する集塵部と、を備えることを特徴とする電動ハンマ。
【請求項2】
前記集塵部に至る前記集塵流路の一部は、前記本体部内に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動ハンマ。
【請求項3】
前記モータは、前記打撃軸線上に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動ハンマ。
【請求項4】
前記集塵部は、前記打撃軸線上で前記モータを挟んだ前記打撃機構部の反対側に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の電動ハンマ。
【請求項5】
前記集塵部は、フィルタ面が下向きとなるフィルタを有し、前記集塵部内では空気が前記フィルタを下から上へ通過することを特徴とする請求項4に記載の電動ハンマ。
【請求項6】
前記集塵ファンと、前記モータを冷却する冷却ファンとが、前記モータの回転軸の軸方向の両側にそれぞれ分かれて設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の電動ハンマ。
【請求項7】
前記集塵流路の他の一部は、前記吸込口から前記本体部に至る外部ホースで形成され、前記本体部には、前記本体部内に設けた前記集塵流路の前記一部と接続するための接続口が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の電動ハンマ。
【請求項8】
前記打撃軸線は、上下方向に延び、前記ビットは、前記打撃機構部の下側に装着されて、前記接続口は、下向きに開口していることを特徴とする請求項7に記載の電動ハンマ。
【請求項9】
前記集塵部は、前記本体部から着脱可能であることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の電動ハンマ。
【請求項10】
前記本体部への前記集塵部の装着状態を検出する検出手段と、前記モータの駆動を制御するコントローラとを有し、前記コントローラは、前記検出手段によって前記集塵部の装着状態が検出されない場合、前記モータを駆動させないことを特徴とする請求項9に記載の電動ハンマ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動ハンマに関する。
【背景技術】
【0002】
電動ハンマでは、ビットによる破砕作業等の際に発生する粉塵を集塵するために、特許文献1に開示のような集塵アタッチメントが用いられる。この集塵アタッチメントは、ビットに貫通されて下向きに開口しており、電動ハンマのハウジングに装着したホースホルダに、外部の集塵機と接続されるホースを保持させて、ホースの下端を集塵アタッチメントに接続するようにしている。この集塵アタッチメントによれば、集塵機の運転に伴い開口に吸引力が発生し、発生する粉塵を吸引しホースを介して集塵機に回収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の電動ハンマにおいては、集塵アタッチメントを使用する際には別途集塵機を用意して接続する必要があり、作業に時間と手間とがかかっていた。
【0005】
そこで、本開示は、外部の集塵機を用いることなく集塵が可能となる電動ハンマを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示は、モータを内蔵する本体部と、打撃機構部とを含み、モータの駆動により打撃機構部が作動して、打撃機構部の打撃軸線上に装着したビットを打撃可能な電動ハンマであって、
モータの駆動に伴い回転する集塵ファンと、
ビットの先端側に向けて開口する吸込口を有し、集塵ファンの回転に伴って吸込口に吸引力を発生させる集塵流路と、
集塵流路上に設けられて吸込口から吸い込まれた粉塵を集塵する集塵部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、外部の集塵機を用いることなく集塵部での集塵が可能となる。よって、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】ダストボックスを取り外した状態の本体部の拡大図である。
【
図3】接続口をキャップで閉塞した状態の本体部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態において、集塵部に至る集塵流路の一部は、本体部内に設けられていてもよい。
この構成によれば、電動ハンマの外部への集塵流路の露出部分が少なくなり、集塵流路を設けても作業の邪魔になりにくくなる。
本開示の一実施形態において、モータは、打撃軸線上に配置されていてもよい。
この構成によれば、打撃軸線からの重心のずれが抑えられ、全体のバランスが維持できる。
本開示の一実施形態において、集塵部は、打撃軸線上でモータを挟んだ打撃機構部の反対側に配置されていてもよい。
この構成によれば、集塵部を設けても打撃軸線からの重心のずれが抑えられ、全体のバランスが維持できる。
本開示の一実施形態において、集塵部は、フィルタ面が下向きとなるフィルタを有し、集塵部内では空気がフィルタを下から上へ通過するものであってもよい。
この構成によれば、フィルタ面で捕捉した粉塵がフィルタ面に付着しにくくなり、フィルタの目詰まりの進行を遅らせることができる。
本開示の一実施形態において、集塵ファンと、モータを冷却する冷却ファンとが、モータの回転軸の軸方向の両側にそれぞれ分かれて設けられていてもよい。
この構成によれば、集塵流路と、モータを冷却する空気の流路とが形成しやすくなる。
【0010】
本開示の一実施形態において、集塵流路の他の一部は、吸込口から本体部に至る外部ホースで形成され、本体部には、本体部内に設けた集塵流路の一部と接続するための接続口が設けられていてもよい。
この構成によれば、本体部内に設けた集塵流路の一部と外部ホースとの接続がしやすくなる。
本開示の一実施形態において、打撃軸線は、上下方向に延び、ビットは、打撃機構部の下側に装着されて、接続口は、下向きに開口していてもよい。
この構成によれば、接続口に接続した外部ホースを打撃機構部に沿って上下方向に引き回すことができ、外部ホースが作業の邪魔になりにくくなる。
本開示の一実施形態において、集塵部は、本体部から着脱可能であってもよい。
この構成によれば、集塵した粉塵の廃棄や、フィルタの交換や清掃といったメンテナンスがしやすくなる。
本開示の一実施形態において、本体部への集塵部の装着状態を検出する検出手段と、モータの駆動を制御するコントローラとを有し、コントローラは、検出手段によって集塵部の装着状態が検出されない場合、モータを駆動させないようにしてもよい。
この構成によれば、集塵部が装着されない状態での作業が規制され、集塵部による集塵が確実に行える。
【実施例0011】
以下、本開示の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、電動ハンマの一例を示す中央縦断面図、
図2は、ダストボックスを取り外した状態の本体部の拡大図である。
電動ハンマ1は、上側に本体部2を、下側に打撃機構部3をそれぞれ有している。本体部2は、箱状の上ハウジング4を備えている。打撃機構部3は、上ハウジング4に連結される下ハウジング5を備えている。上ハウジング4内には、モータ6と、運動変換機構7とが設けられている。下ハウジング5は、打撃機構部3を保持する筒状で、打撃機構部3の打撃軸線L1は上下方向に延びている。
上ハウジング4の左右の側面には、左右外側へそれぞれ突出する一対のハンドル8A,8Bが設けられている。右側のハンドル8B内には、スイッチ9が内蔵され、ハンドル8Bの上側には、押し込み操作でスイッチ9をONさせるスイッチレバー10が上向きに設けられている。
【0012】
モータ6は、上ハウジング4内の上部に設けられている。モータ6は、ステータ11とロータ12とを備えている。モータ6は、ロータ12に設けた回転軸13の軸線L2が打撃軸線L1と直交して左右方向に延びる向きで配置されている。回転軸13は、上ハウジング4内に仕切形成されるモータハウジング14内で左右の軸受15A,15Bによって支持されている。左側の軸受15Aから突出する回転軸13の左端部には、ピニオン16が設けられている。
【0013】
運動変換機構7は、中間軸20と、クランクシャフト21と、コネクティングロッド22と、ピストン23とを備えている。中間軸20は、モータハウジング14の下側に結合されるギヤハウジング24内で、モータ6の左側下方で回転軸13と平行に支持されている。中間軸20には、第1ギヤ25が設けられている。第1ギヤ25は、回転軸13のピニオン16と噛合している。第1ギヤ25の右側で中間軸20には、第2ギヤ26が設けられている。
クランクシャフト21は、中間軸20より下方のギヤハウジング24内で中間軸20と平行に支持されている。クランクシャフト21は、第2ギヤ26と噛合する第3ギヤ27を有している。クランクシャフト21は、右側端面の偏心位置に偏心ピン28を備えている。コネクティングロッド22は、上端が偏心ピン28に連結され、下端がピストン23に連結されている。ピストン23は、下ハウジング5内で上下方向に支持されるシリンダ29内へ上下移動可能に収容されている。
【0014】
クランクシャフト21の右側には、同軸で第2クランクシャフト30が支持されている。第2クランクシャフト30は、偏心ピン28に係合して偏心ピン28の偏心運動に伴い回転可能となっている。第2クランクシャフト30は、クランクシャフト21の偏心ピン28と逆位相となる位置に第2偏心ピン31を有している。第2偏心ピン31には、シリンダ29の右側に配置される第2コネクティングロッド32の上端が連結されている。シリンダ29には、カウンタウエイト33が上下動可能に外装されている。第2コネクティングロッド32の下端は、カウンタウエイト33に連結されている。
【0015】
下ハウジング5の下側には、筒状のツールホルダ35が同軸で連結されている。ツールホルダ35には、ビットBが下方から挿入可能となっている。ツールホルダ35の下部には、ツールリテーナ36が設けられている。ツールリテーナ36は、ツールホルダ35に挿入されたビットBに係止してビットBの抜け止めを行う。
打撃機構部3は、ストライカ37と、インパクトボルト38とを備えている。ストライカ37は、ピストン23の下方で空気室39を介してシリンダ29の下部へ上下移動可能に収容されている。インパクトボルト38は、ストライカ37の下方でツールホルダ35内へ上下移動可能に収容されて、ビットBが押し込まれる上限位置で上端をシリンダ29内へ突出させる。
ここではシリンダ29と、ピストン23及びストライカ37と、ツールホルダ35と、インパクトボルト38とが打撃軸線L1上に同軸で配置されている。
【0016】
上ハウジング4において、回転軸13における軸受15Aよりも右側には、モータ6の冷却ファン40が設けられている。モータハウジング14内には、冷却ファン40の外周を右側から覆うバッフル部41が設けられている。モータハウジング14の左端面で軸受15Aの周りには、複数の通気口42,42・・が形成されている。上ハウジング4の後面には、モータハウジング14内に開口する複数の吸気口43,43・・が形成されている。上ハウジング4の左側面でモータハウジング14よりも下側には、複数の第1排気口44,44・・が形成されている。
モータハウジング14から突出する回転軸13の右端部には、集塵ファン45が設けられている。モータハウジング14の右側面には、集塵ファン45を右側から覆うファンカバー46が設けられている。ファンカバー46の上部には、筒状の空気入口47が上向きに設けられている。集塵ファン45の径方向外側でファンカバー46の下部には、複数の空気出口48,48が設けられている。上ハウジング4の右側面でハンドル8Bよりも下側には、複数の第2排気口49,49・・が形成されている。ギヤハウジング24の右側で上ハウジング4内には、コントローラ50が縦向きに収容されている。コントローラ50は、空気出口48と第2排気口49との間に配置されている。コントローラ50の下方で上ハウジング4の右側下部には、電源コード51が接続されている。コントローラ50は、電源コード51から電源を得て作動し、スイッチ9のON/OFFに従ってモータ6の駆動を制御する。
【0017】
上ハウジング4の上面には、後述するダストボックス60の保持凹部55が凹設されている。保持凹部55は、上面を平面視四角形状に開口した有底凹部で、底面左側には、左側筒部56が左下向きに形成され、底面右側には、右側筒部57が下向きに形成されている。左側筒部56には、内部ホース58の上端が接続されている。右側筒部57には、ファンカバー46の空気入口47が下方から挿入されている。
内部ホース58は、上ハウジング4内の左側でギヤハウジング24の後方を迂回する格好で上下方向に収容されている。上ハウジング4の左側の下面には、筒状の接続口59が設けられている。内部ホース58の下端は、接続口59に接続されている。接続口59の下部は、上ハウジング4の下面から下向きに突出している。内部ホース58は、本開示の集塵流路の一部の一例である。
ダストボックス60は、平面視形状が保持凹部55の内形状に合致した四角箱状となっている。保持凹部55の左右の内側面には、係合溝61,61が前後方向に形成されている。ダストボックス60の左右の外側面には、係合溝61,61に係合する突条62,62が前後方向に形成されている。
【0018】
よって、ダストボックス60は、保持凹部55に上方から嵌合させると、係合溝61,61に突条62,62が係合して保持凹部55内に保持される。上面に設けた図示しない指掛け部を利用してダストボックス60を上方へ引き上げると、係合溝61,61から突条62,62が外れてダストボックス60を取り外すことができる。
保持凹部55の下側で右寄りには、検出スイッチ63が設けられている。検出スイッチ63は、プランジャ64を保持凹部55の底面から上向きに突出させている。ダストボックス60が保持凹部55に装着されると、プランジャ64が押し込まれて検出スイッチが63がONする。ON信号は、コントローラ50に入力される。検出スイッチ63は、本開示の検出手段の一例である。
【0019】
ダストボックス60は、内部に設けた仕切板65により、下側の集塵室66と、上側の通気室67とに仕切られている。集塵室66の下面左側には、保持凹部55への装着状態で左側筒部56と連通する入口68が形成されている。仕切板65の下側には、フィルタ保持部69が設けられて、フィルタ保持部69にフィルタ70が保持されている。フィルタ70は、左右或いは前後方向に折り畳んだ紙製で、フィルタ面71を下にして横向きに保持されている。フィルタ70の上側で仕切板65には、通気室67と連通する連通口72が形成されている。通気室67は、集塵室66の右側に回り込んでダストボックス60の底面に達している。通気室67の下端には、保持凹部55への装着状態でファンカバー46の空気入口47と連通する出口73が形成されている。ダストボックス60は、本開示の集塵部の一例である。
【0020】
上ハウジング4から突出する接続口59には、フレキシブルホース75の上端が差し込み接続されている。フレキシブルホース75は、下ハウジング5の下部に外装されたホースホルダ76によって、下ハウジング4に沿った上下方向に保持されている。フレキシブルホース75の下端には、集塵アタッチメント77が接続されている。集塵アタッチメント77は、下端が吸込口78として開口するカップ状で、ビットBが貫通可能となっている。集塵アタッチメント77の上面左側には、筒状のホース接続部79が上向きに突設されている。
この集塵アタッチメント77は、ツールホルダ35に装着したビットBを上方から貫通させ、ホース接続部79にフレキシブルホース75の下端をねじ込み接続することで装着される。フレキシブルホース75は、本開示の集塵流路の他の一部となる外部ホースの一例である。
こうして電動ハンマ1には、
図1に点線矢印で示す集塵流路Rが形成される。集塵流路Rでは、集塵アタッチメント77の吸込口78から吸い込まれた空気が、フレキシブルホース75及び内部ホース58を介して入口68からダストボックス60に入る。ダストボックス60では、集塵室66、フィルタ70、通気室67の順に通過して、出口73からファンカバー46に至る。そして、空気は、空気出口48から上ハウジング4内を通って第2排気口49から排出される。
【0021】
以上の如く構成された電動ハンマ1は、コンクリートの破砕作業等を行う際、集塵アタッチメント77の下端の吸込口78を作業面に接地或いは近接させた状態でスイッチレバー10を押し込み操作してスイッチ9をONさせる。すると、コントローラ50は、検出スイッチ63のON信号が得られているか、すなわちダストボックス60が保持凹部55に装着されているかを確認する。ここで検出スイッチ63のON信号が確認されなければ、コントローラ50はモータ6を駆動させない。
一方、検出スイッチ63のON信号が確認されると、コントローラ50は、モータ6を駆動させてロータ12と共に回転軸13を回転させる。回転軸13の回転は、ピニオン16から第1ギヤ25、第2ギヤ26、第3ギヤ27で減速されてクランクシャフト21に伝わり、偏心ピン28を偏心運動させる。よって、コネクティングロッド22を介してピストン23が上下移動し、空気室39の空気バネの作用でストライカ37を連動させる。すると、上下移動するストライカ37が、インパクトボルト38を介してビットBを打撃する。
このとき、偏心ピン28と係合する第2クランクシャフト30が同時に回転し、第2偏心ピン31を偏心運動させせる。すると、第2コネクティングロッド32を介してカウンタウエイト33をシリンダ29に沿ってピストン23の上下動と逆向きに上下移動させる。よって、打撃時の振動が抑制可能となる。
【0022】
回転軸13の回転に伴い、冷却ファン40及び集塵ファン45が回転する。
冷却ファン40の回転により、上ハウジング4の吸気口43から外気が吸い込まれ、モータ6を通過することでモータ6が冷却される。モータ6を通過した空気は、モータハウジング14の通気口42から上ハウジング4内に出て下降し、第1排気口44から外部に排出される。
集塵ファン45の回転により、ファンカバー46内が負圧となり、集塵アタッチメント77の吸込口78に吸引力が発生する。すると、吸込口78から集塵アタッチメント77内に吸引された空気は、前述のように集塵流路Rを通って第2排気口49から上ハウジング4の外部に排出される。よって、空気と共に吸い込まれた粉塵は、ダストボックス60を通過する際にフィルタ70のフィルタ面71に捕捉されて集塵室66内に貯留する。このとき空気はフィルタ70を下から上に通過するので、フィルタ面71に捕捉された粉塵が集塵室66内に落下しやすくなる。特に、打撃時の振動も加わるため、粉塵の落下が促進されてフィルタ面71の目詰まりが生じにくくなる。
【0023】
そして、集塵流路Rでは、ファンカバー46の空気出口48から上ハウジング4の第2排気口49へ流れる空気の流路上にコントローラ50が位置している。よって、空気流がコントローラ50と接触してコントローラ50を冷却することができる。
ダストボックス60の粉塵を廃棄する際は、
図2のように保持凹部55からダストボックス60を取り外せば、入口68から集塵室66内の粉塵を廃棄することができる。
なお、集塵アタッチメント77及びフレキシブルホース75を装着せず、集塵が不要な作業を行う場合、
図3に示すように、接続口59の下端をキャップ80で閉塞することができる。このように接続口59を閉塞すれば、集塵ファン45が回転しても接続口59から異物を吸い込むことがなくなる。
【0024】
このように、上記実施例の電動ハンマ1は、モータ6を内蔵する本体部2と、打撃機構部3とを含み、モータ6の駆動により打撃機構部3が作動して、打撃機構部3の打撃軸線L1上に装着したビットBを打撃可能である。
そして、電動ハンマ1は、モータ6の駆動に伴い回転する集塵ファン45と、ビットBの先端側に向けて開口する吸込口78を有し、集塵ファン45の回転に伴って吸込口78に吸引力を発生させる集塵流路Rと、集塵流路R上に設けられて吸込口78から吸い込まれた粉塵を集塵するダストボックス60と、を備えている。
この構成によれば、外部の集塵機を用いることなくダストボックス60での集塵が可能となる。よって、作業性が向上する。
【0025】
ダストボックス60に至る集塵流路Rの一部は、内部ホース58として本体部2内に設けられている。
よって、電動ハンマ1の外部への集塵流路Rの露出部分が少なくなり、集塵流路Rを設けても作業の邪魔になりにくくなる。
モータ6は、打撃軸線L1上に配置されている。
よって、打撃軸線L1からの重心のずれが抑えられ、全体のバランスが維持できる。
ダストボックス60は、打撃軸線L1上でモータ6を挟んだ打撃機構部3の反対側(実施例では上側)に配置されている。
よって、ダストボックス60を設けても打撃軸線L1からの重心のずれが抑えられ、全体のバランスが維持できる。
【0026】
ダストボックス60は、フィルタ面71が下向きとなるフィルタ70を有し、ダストボックス60内では空気がフィルタ70を下から上へ通過する。
よって、フィルタ面71で捕捉した粉塵がフィルタ面71に付着しにくくなり、フィルタ70の目詰まりの進行を遅らせることができる。
集塵ファン45と、モータ6を冷却する冷却ファン40とが、モータ6の回転軸13の軸方向の両側にそれぞれ分かれて設けられている。
よって、集塵流路Rと、モータ6を冷却する空気の流路とが形成しやすくなる。
集塵流路Rの他の一部は、吸込口78から本体部2に至るフレキシブルホース75で形成され、本体部2には、本体部2内に設けた内部ホース58と接続するための接続口59が設けられている。
よって、内部ホース58とフレキシブルホース75との接続がしやすくなる。
打撃軸線L1は、上下方向に延び、ビットBは、打撃機構部3の下側に装着されて、接続口59は、下向きに開口している。
よって、接続口59に接続したフレキシブルホース75を打撃機構部3に沿って上下方向に引き回すことができ、フレキシブルホース75が作業の邪魔になりにくくなる。
【0027】
ダストボックス60は、本体部2から着脱可能である。
よって、集塵した粉塵の廃棄や、フィルタ70の交換や清掃といったメンテナンスがしやすくなる。
本体部2へのダストボックス60の装着状態を検出する検出スイッチ63と、モータ6の駆動を制御するコントローラ50とを有し、コントローラ50は、検出スイッチ63によってダストボックス60の装着状態が検出されない場合、モータ6を駆動させない。
よって、ダストボックス60が装着されない状態での作業が規制され、ダストボックス60による集塵が確実に行える。
【0028】
以下、本開示の変更例について説明する。
集塵流路の形態は、適宜変更できる。例えば、内部ホース及びフレキシブルホースは、上記実施例と左右逆に配置してもよいし、前側或いは後側に配置してもよい。集塵アタッチメントの形態も適宜変更できる。
内部ホースは、上ハウジング内のみでなく、下ハウジング内にまで延ばして設けてもよい。この場合、接続口も下ハウジングに設けられるため、フレキシブルホースが短くなる。
但し、本体部の内部に形成する集塵流路の一部は、内部ホースによるものに限らない。例えば、集塵流路の一部は、上ハウジング内に設けた壁部で仕切形成してもよい。壁部と内部ホースとを併用してもよい。
集塵部に至る集塵流路は、本体部の内部に一部を形成する場合に限らず、本体部の外部に形成してもよい。例えば、フレキシブルホースをさらに上方へ延ばして本体部の外部で引き回し、ダストボックスに直接接続してもよい。
【0029】
ダストボックスは、本体部へ上下方向に着脱される構造に限らない。ダストボックスは、本体部へ前後方向或いは左右方向に着脱可能としてもよい。ダストボックスの位置も、本体部の上部でなく、左右の側部や前後であってもよい。
ダストボックスの検出手段もダストボックスの位置に応じて変更できる。検出手段は、非接触式のセンサを用いてもよい。検出手段をなくしてダストボックスの有無にかかわらずスイッチのONでモータを駆動させてもよい。
ダストボックス内のフィルタは、横向きでなく縦向きであってもよい。フィルタの厚みや形状も適宜変更できる。集塵室と通気室とは、左右或いは前後に並べて形成してもよい。
集塵部は、着脱可能とせずに本体部へ一体に設けてもよい。この場合、集塵部の位置に粉塵廃棄用の開閉蓋を設ければよい。
【0030】
モータは、回転軸が左右方向を向く姿勢に限らず、回転軸が前後方向や上下方向を向く姿勢で配置してもよい。モータは、打撃軸線上になくてもよい。
冷却ファン及び集塵ファンは、回転軸の両端に分けずに何れか一方の端部に隣接させて設けてもよい。この場合、円板の表裏で冷却ファン用の羽根と集塵ファン用の羽根とが背中合わせで形成される構造としてもよい。
運動変換機構は、上記実施例に限らない。中間軸は、2本以上であったり、中間軸がないものであったりしてもよい。第2クランクシャフトやカウンタウエイト等の防振機構はなくてもよい。
電源は、上記実施例のように商用電源を用いるものに限らず、バッテリを用いてもよい。バッテリは、着脱可能であってもよいし、内蔵されるものであってもよい。
上記実施例では、本体部の下側に打撃機構部を配置して打撃軸線が上下方向に延びる電動ハンマを例示しているが、電動ハンマの形態はこれに限らない。例えば本体部の上側に打撃機構部が配置されて打撃軸線が前後方向に延びる形態や、本体部の前側に打撃機構部が配置されて打撃軸線が前後方向に延びる形態等であっても本開示は適用可能である。
1・・電動ハンマ、2・・本体部、3・・打撃機構部、4・・上ハウジング、5・・下ハウジング、6・・モータ、7・・運動変換機構、9・・スイッチ、13・・回転軸、23・・ピストン、29・・シリンダ、35・・ツールホルダ、37・・ストライカ、38・・インパクトボルト、40・・冷却ファン、43・・吸気口、45・・集塵ファン、50・・コントローラ、55・・保持凹部、58・・内部ホース、59・・接続口、60・・ダストボックス、63・・検出スイッチ、66・・集塵室、70・・フィルタ、71・・フィルタ面、75・・フレキシブルホース、77・・集塵アタッチメント、78・・吸込口、L1・・打撃軸線、L2・・回転軸の軸線、R・・集塵流路。