(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152423
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】押圧具及び押圧具による貼着体の貼着方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/50 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
B29C65/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066608
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】314014184
【氏名又は名称】DNP田村プラスチック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】堀田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】服部 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 道敏
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AF01
4F211AG01
4F211AH17
4F211AR07
4F211AR12
4F211TA05
4F211TA13
4F211TC08
4F211TD11
4F211TJ16
4F211TJ22
4F211TQ06
(57)【要約】
【課題】容易に貼着体を貼着でき、且つ、貼着体の貼着時に気泡が残る恐れのない押圧具、及び押圧具による貼着体の貼着方法を提供する。
【解決手段】押圧具1は、対向面4と、ガイド面5とを有し、対向面4には、押圧部として略半球状の三つの突部を有し、前側に位置する突部を先行押圧部6、その他の突部を第二押圧部7,7とする。そして、押圧具1の先行押圧部6及び第二押圧部7,7で貼着体2を押圧しながらスライド方向へ移動させることによって、先行押圧範囲6aから第二押圧範囲7a,7aへと連続して、貼着体2の幅方向の全範囲が押圧されて、貼着体2が被貼着体3へと圧着し貼着される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状の貼着体と対向する対向面から前記貼着体側へ突出して設けられると共に、前記貼着体を短手方向の全範囲に亘って被貼着体側へ押圧可能な押圧部を有し、前記押圧部で前記貼着体を押圧しながら前記貼着体の長手方向の一方側となるスライド方向へ移動させることで、前記貼着体を前記被貼着体へ押圧可能な押圧具であって、
前記押圧部には、前記貼着体の一部を先行して前記被貼着体側へ押圧可能な先行押圧部が設けられており、
前記押圧部で前記貼着体を押圧しながら前記スライド方向へ移動させることで、前記先行押圧部により前記貼着体の前記一部を先行して前記被貼着体側へ押圧可能であると共に、前記先行押圧部による先行押圧範囲と連続して前記貼着体の前記全範囲を前記被貼着体側へ押圧可能であることを特徴とする押圧具。
【請求項2】
前記押圧部は、前記貼着体側へ突出して前記全範囲を押圧可能な複数の突起からなり、前記突起のうち1つが前記スライド方向の前側において前記貼着体側へ突出配置されて前記先行押圧部となっていることを特徴とする請求項1に記載の押圧具。
【請求項3】
前記押圧部は、前記貼着体側へ突出して前記全範囲を押圧可能な押圧面を有する突部からなり、前記突部の一部が前記スライド方向の前側において前記貼着体側へ突出して前記先行押圧部となっていることを特徴とする請求項1に記載の押圧具。
【請求項4】
長尺帯状の貼着体を被貼着体に貼着させる方法であって、
請求項1乃至3の何れかに記載の押圧具を用いて、前記押圧部で前記貼着体を押圧しながら前記スライド方向へ移動させて、前記先行押圧部により前記貼着体の前記一部を先行して前記被貼着体側へ押圧すると共に、前記先行押圧部による先行押圧範囲と連続して前記貼着体の前記全範囲を前記被貼着体側へ押圧して、前記貼着体を前記被貼着体へ圧着することを特徴とする貼着体の貼着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧具及び押圧具による貼着体の貼着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テープを自動車車体の窓枠のフレーム等の被貼着体へ貼着させる貼着方法として、フレームの表面形状に合わせた面部分を有する貼付ヘッドによってテープを圧接させると共に、伸長方向へ本体を移動させることでテープを圧着させる貼付装置がある。例えば、特許文献1には、貼付部位の表面形状に略等しい仕上面36aを有する貼付面36を備えた貼付ヘッド20によって接着テープTPを圧接させて貼着させる接着テープ貼付装置10が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の貼付装置は、貼付面とフレーム体の表面形状とが実質的同一であり、貼付面はフレーム体に対して面で圧着しているため、接着テープとフレーム体の間の空気が逃げ道を防がれて気泡が残る恐れがあった。また、残った気泡によって接着不足となる恐れがあった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、容易に貼着体を貼着でき、且つ、貼着体の貼着時に気泡が残る恐れのない押圧具、及び押圧具による貼着体の貼着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、長尺帯状の貼着体と対向する対向面から貼着体側へ突出して設けられると共に、貼着体を短手方向の全範囲に亘って被貼着体側へ押圧可能な押圧部を有し、押圧部で貼着体を押圧しながら貼着体の長手方向の一方側となるスライド方向へ移動させることで、貼着体を被貼着体へ押圧可能な押圧具であって、押圧部には、貼着体の一部を先行して被貼着体側へ押圧可能な先行押圧部が設けられており、押圧部で貼着体を押圧しながらスライド方向へ移動させることで、先行押圧部により貼着体の一部を先行して被貼着体側へ押圧可能であると共に、先行押圧部による先行押圧範囲と連続して貼着体の全範囲を被貼着体側へ押圧可能であることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、押圧部は、貼着体側へ突出して全範囲を押圧可能な複数の突起からなり、突起のうち1つがスライド方向の前側において貼着体側へ突出配置されて先行押圧部となっていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、押圧部は、貼着体側へ突出して全範囲を押圧可能な押圧面を有する突部からなり、突部の一部がスライド方向の前側において貼着体側へ突出して先行押圧部となっていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、長尺帯状の貼着体を被貼着体に貼着させる方法であって、請求項1乃至3の何れかに記載の押圧具を用いて、押圧部で貼着体を押圧しながらスライド方向へ移動させて、先行押圧部により貼着体の一部を先行して被貼着体側へ押圧すると共に、先行押圧部による先行押圧範囲と連続して貼着体の全範囲を被貼着体側へ押圧して、貼着体を被貼着体へ圧着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の押圧具、及び押圧具による貼着体の貼着方法によれば、押圧具の押圧部で貼着体を押圧しながら押圧具のスライド方向へ移動させることによって、貼着体を被貼着体に圧着させる構成である。そして、押圧部で貼着体を押圧しながら押圧具のスライド方向へ移動させることで、スライド方向の前側に設けられている先行押圧部により貼着体の一部を先行して被貼着体側へ押圧すると共に、先行押圧部による先行押圧範囲と連続して貼着体の全範囲を被貼着体側へ押圧する。よって、貼着体と被貼着体との間に発生する気泡の逃げ道を塞ぐことなく、貼着体と被貼着体とを圧着して貼着作業を完了することができる。したがって、押圧具で貼着体を押圧しながらスライド方向へ移動させるという簡易な作業で、充分に貼着体を被貼着体へ圧着させて貼着させることが可能であると共に、作業の効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図8】押圧具の変形例1において押圧部による押圧範囲を示す参考図である。
【
図10】押圧具の変形例2において押圧部による押圧範囲を示す参考図である。
【
図12】押圧具の変形例3において押圧部による押圧範囲を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1及び2は、押圧具を示す図であって、
図1は、押圧具の押圧部を正面視した図、
図2は、押圧具の押圧部を側面視した図である。
図3及び4は、押圧具の使用状態を示す図であって、
図3は、斜視図、
図4は、側面図である。
図5は、押圧部による押圧範囲を示す参考図である。
尚、
図1乃至5における方向は、押圧具を基準に示し、押圧具の使用時におけるスライド方向を前側、押圧具において押圧部が設けられている方向を内側とする。また、図中の矢印は、押圧具の使用時におけるスライド方向を示す。
【0010】
押圧具1は、貼着体2を被貼着体3に貼着させるために用いられる器具であって、対向面4と、ガイド面5とを有する。貼着体2は、長尺帯状のテープであって、少なくとも一方の面に粘着面2aが設けられている。貼着体2として、例えばサイドバイザーを自動車の窓枠に固定するための両面テープがあげられる。被貼着体3は、貼着体2が貼り付けられるものであって、例えば自動車の窓枠に取り付けられるサイドバイザーがあげられる。
【0011】
対向面4は、押圧具1において、貼着体2の上から被貼着体3と対向する面である。対向面4は、
図1に示すように、押圧部として略半球状の三つの突起を有し、前側に位置する突起を先行押圧部6、その他の突起を第二押圧部7,7とする。
図4に示すように、押圧具1の先行押圧部6及び第二押圧部7,7で貼着体2を被貼着体3へ押圧すると、先行押圧部6及び第二押圧部7,7が貼着体2へと沈みこむため、貼着体2は被貼着体3に圧着される。また、先行押圧部6が第二押圧部7,7よりも前側に位置しているため、先行押圧部6は貼着体2の一部を先行して押圧する。ここで、押圧具1の先行押圧部6及び第二押圧部7,7で貼着体2を押圧しながらスライド方向へ移動させて形成される、先行押圧部6によって貼着体2が被貼着体3へと押圧される範囲を先行押圧範囲6a、第二押圧部7,7によって貼着体2が被貼着体3へと押圧される範囲を第二押圧範囲7a,7aとする。そして、
図2及び
図5に示すように、先行押圧範囲6aから第二押圧範囲7a,7aへと連続して、貼着体2の短手方向の全範囲が押圧されるように、先行押圧部6及び第二押圧部7,7は配置される。尚、ここでの連続とは、先行押圧範囲6aと第二押圧範囲7a,7aとの間に隙間がない状態を表す。また、先行押圧範囲6aと第二押圧範囲7a,7aとの一部分が重なっても良い。
【0012】
ガイド面5は、対向面4と直角をなすようにして設けられ、被貼着体3の上端部に当接させることによって押圧具1の位置決めを行う面である。また、押圧具1で貼着体2を押圧しながらスライド方向へ移動させる際、ガイド面5を被貼着体3の上端部に当接させながら押圧具1を移動させることで、押圧具1は、被貼着体3の上端部から一定の距離を押圧する。
【0013】
以下、押圧具1を用いて被貼着体3へ貼着体2を貼着させる手順について説明する。
まず、被貼着体3の表面に対して、粘着面2aが面するように貼着体2を配置する。次に、押圧具1の対向面4を貼着体2に対向させながら、先行押圧部6及び第二押圧部7,7を貼着体の後側端部に押し当てると共に、押圧具1のガイド面5を被貼着体3の上端部に当接させて位置を決める。そして、
図3に示すように、ガイド面5を被貼着体3の上端部に押し当てたまま、押圧具1の先行押圧部6及び第二押圧部7,7で貼着体2を押圧しながら貼着体2の前側端部まで移動させることによって、貼着作業を完了する。
【0014】
上記形態の押圧具1、及び押圧具1による貼着体2の貼着方法は、押圧具1の先行押圧部6及び第二押圧部7,7で貼着体2を押圧しながらスライド方向へ移動させることによって、貼着体2を被貼着体3に圧着させる構成である。そして、押圧具1の使用時、前側に設けられている先行押圧部6が、貼着体2の一部を先行して押圧すると共に、先行押圧部6による先行押圧範囲6aと連続して、第二押圧部7,7による第二押圧範囲7a,7aを形成することで、貼着体への押圧範囲が広がるように貼着体2の全範囲を押圧する。よって、先行押圧部6による一部の押圧から第二押圧部7,7による押圧へと押圧範囲が広がることで、貼着体2と被貼着体3との間に発生する気泡の逃げ道を塞ぐことなく、貼着体2と被貼着体3とを圧着して貼着作業を完了することができる。したがって、押圧具1で貼着体2を押圧しながらスライド方向へ移動させるという簡易な作業で、充分に貼着体2を被貼着体3へ圧着させて貼着させることが可能であると共に、作業の効率を向上することができる。
【0015】
図6及び7は、押圧具1の変形例1である押圧具1aを示す図であって、
図6は押圧部を正面視した図、
図7は押圧部を側面視した図である。
図8は、押圧具1aにおける押圧部による押圧範囲を示す図である。また、図中の矢印は、押圧具の使用時におけるスライド方向を示す。
尚、
図1乃至5に示した構成と同様の効果を示す構成については、
図1乃至5と同じ符号を付し、説明を省略する。
押圧具1aは、貼着体2側へ突出して貼着体2の短手方向の全範囲を押圧可能な押圧面11を有する突部10を備えている。
図6に示すように、押圧面11は略五角形状であって、前側に突出した一部分が先行押圧部6となる。また、先行押圧部6は、
図7に示すように、後側から前側へと対向面4側へ下り傾斜が設けられている。そして、押圧面11において、先行押圧部6の後端から後側に向けて徐々に貼着体2の短手方向に広がるようにして第二押圧部7,7が形成されている。
図8に示すように、押圧具1aによって貼着体2が押圧される範囲は、先行押圧部6による先行押圧範囲6aと、第二押圧部7,7による第二押圧範囲7aとの合計の範囲である。
【0016】
図9は、押圧具1の変形例2である押圧具1bを示す正面図である。
図10は、押圧具1bにおける押圧部による押圧範囲を示す図である。また、図中の矢印は、押圧具の使用時におけるスライド方向を示す。
押圧具1bは、略台形状の押圧面11を有する突部10を備えている。押圧面11は、下側に偏って前側に突出した一部分が先行押圧部6となる。押圧面11において、先行押圧部6の後端から、後側に向けて徐々に貼着体2の短手方向上側に広がるようにして第二押圧部7が形成されている。また、先行押圧部6は、後側から前側へと対向面4側に下り傾斜が設けられている。
図10に示すように、押圧具1bによって貼着体2が押圧される範囲は、先行押圧部6による先行押圧範囲6aと、第二押圧部7,7による第二押圧範囲7aとの合計の範囲である。
【0017】
図11は、押圧具1の変形例3である押圧具1cを示す正面図である。
図12は、押圧具1cにおける押圧部による押圧範囲を示す図である。また、図中の矢印は、押圧具の使用時におけるスライド方向を示す。
押圧具1cは、菱形形状の押圧面11を有する突部10を備え、押圧面11において、前側と後側とに夫々突出した一部分が先行押圧部6,6、その他の中央部分が第二押圧部7である。また、前側に配置されている先行押圧部6は後側から前側へと対向面4側に下り傾斜が、後側に配置されている先行押圧部6は前側から後側へと対向面4側に下り傾斜が設けられている。
図12に示すように、押圧具1cによって貼着体2が押圧される範囲は、先行押圧部6による先行押圧範囲6aと、第二押圧部7,7による第二押圧範囲7aとの合計の範囲である。
【0018】
押圧具1の変形例である押圧具1a,1b,1cによれば、先行押圧部6及び第二押圧部7が一体となった押圧面11を設ける構造であるため、製造コストが削減される。また、押圧具1cによれば、前後夫々に先行押圧部6が設けられているため、前後方向どちらに対しても押圧具1cを移動させて用いることが可能である。
【0019】
以上は、本発明を図示例に基づいて説明したものであり、その技術範囲はこれに限定されるものではない。
例えば、実施例では押圧具で貼着体を被貼着体へ押圧しながら前側をスライド方向として押圧具を移動させることによって、貼着体を被貼着体に貼着させる構成を説明したが、本発明の押圧具、及び押圧具による貼着体の貼着方法は、押圧部の位置を適宜変更することによって、任意の方向に対して使用することが可能である。
また、実施例において、略半球状の突起による押圧部としているが、突起の先端部のみが略半球状に形成されていても良い。
また、押圧部が複数の突起からなる場合、夫々の突起が異なる形状で構成されていても良い。
また、押圧部は、貼着体を押圧することが可能であれば、形状や大きさは任意に決められる。尚、先行押圧部は、スライド方向への前側及び/又は後側へ向かうにつれて対向面側へ向かう下り傾斜が設けられているとより良いが、下り傾斜は省略しても良い。
また、貼着体の短手方向全範囲を押圧可能であれば、第二押圧部の数は適宜変更することが可能である。
また、実施例において、先行押圧部の押圧範囲と連続して、第二押圧部の第二押圧範囲を形成し、貼着体への押圧範囲が広がるような構成となっているが、第二押圧部による第二押圧範囲を更に広げるように、別途新たな押圧部を設けても良い。
また、先行押圧部と第二押圧部とは一体に設けられていても、別体で設けられていても良い。
また、先行押圧部は、被貼着体への押圧を貼着体の一部から行うことができれば、実施例の形状に限定されず、押圧具の前方へ向けて先細りとなる形状や円弧状の突片によって設けても良い。
また、被貼着体は貼着体を貼着するものであれば、どのようなものでも良く、車両においてもサイドバイザー以外にも、種々の内外装品であっても良い。
【符号の説明】
【0020】
1・・押圧具、2・・貼着体、2a・・粘着面、3・・被貼着体、4・・対向面、5・・ガイド面、6・・先行押圧部(押圧部)、6a・・先行押圧範囲、7・・第二押圧部(押圧部)、7a・・第二押圧範囲、10・・突部、11・・押圧面。