(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152424
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】廃液の水分除去方法、廃液の水分除去方法に用いる保持体の処分方法及び廃液の水分除去方法における廃液にマイクロ波を照射して残った残留物の処分方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/26 20060101AFI20241018BHJP
G21F 9/08 20060101ALI20241018BHJP
G21F 9/06 20060101ALI20241018BHJP
B01D 1/00 20060101ALI20241018BHJP
C02F 1/30 20230101ALI20241018BHJP
【FI】
B01J20/26 D
G21F9/08 521C
G21F9/06 Z
B01D1/00 Z
C02F1/30
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066609
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000204000
【氏名又は名称】太平電業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】五嶋 智久
(72)【発明者】
【氏名】五十田 翔平
(72)【発明者】
【氏名】砂川 武義
【テーマコード(参考)】
4D037
4D076
4G066
【Fターム(参考)】
4D037AA11
4D037AB11
4D037BA16
4D037BB06
4D037CA01
4D076AA05
4D076AA24
4D076DA24
4D076FA02
4D076FA11
4D076FA15
4D076HA06
4G066AC02B
4G066AC11B
4G066BA01
4G066CA43
4G066EA13
(57)【要約】
【課題】廃液の水分を除去することにより廃棄コストを抑制できる、廃液の水分除去方法を提供する。
【解決手段】廃液を保持する保持体に前記廃液を保持させ、廃液を保持した保持体にマイクロ波を照射する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃液の水分除去方法であって、
前記廃液を保持する保持体に前記廃液を保持させる保持工程と、
前記廃液を保持した前記保持体にマイクロ波を照射する照射工程と、
を含むことを特徴とする、廃液の水分除去方法。
【請求項2】
請求項1に記載の廃液の水分除去方法であって、
前記保持体は、セルロース材であることを特徴とする、廃液の水分除去方法。
【請求項3】
請求項1に記載の廃液の水分除去方法であって、
前記保持体は、高分子吸水材であり、
前記高分子吸水材は、前記廃液の水分のみを保持し、水分以外の物質を高分子吸水材の外側で保持することを特徴とする、廃液の水分除去方法。
【請求項4】
請求項1に記載の廃液の水分除去方法であって、
前記保持体は、枠内に網目を有する網目体であり、前記網目で前記廃液を保持する、ことを特徴とする、廃液の水分除去方法。
【請求項5】
廃液の水分除去方法であって、
前記廃液に増粘剤を投入して前記廃液の粘性を高める粘性工程、
前記増粘剤の投入前よりも前記粘性が高まった前記廃液にマイクロ波を照射する照射工程と、
を含むことを特徴とする、廃液の水分除去方法。
【請求項6】
請求項5に記載の廃液の水分除去方法であって、
前記廃液は、ホウ砂を含有し、
前記粘性工程では、前記増粘剤としてグアガムを前記廃液に投入することを特徴とする、廃液の水分除去方法。
【請求項7】
請求項1に記載の廃液の水分除去方法における前記保持体の処分方法であって、
前記照射工程後に、前記保持体を燃焼させる燃焼工程と、
前記燃焼工程で出た燃えかすを水に含浸させ、灰と水溶液に分離する分離工程と、
を含むことを特徴とする、保持体の処分方法。
【請求項8】
請求項5に記載の廃液の水分除去方法における前記廃液にマイクロ波を照射して残った残留物の処分方法であって、
前記照射工程後に、前記残留物を燃焼させる燃焼工程と、
前記燃焼工程で出た燃えかすを水に含浸させ、灰と水溶液に分離する分離工程と、
を含むことを特徴とする、残留物の処分方法。
【請求項9】
請求項7に記載の保持体の処分方法であって、
前記廃液はポリビニルアルコールとホウ砂を含み、
前記分離工程では、前記燃焼工程で出た燃えかすを水に含浸させ、灰とホウ砂水溶液に分離することを特徴とする、保持体の処分方法。
【請求項10】
請求項8に記載の残留物の処分方法であって、
前記廃液はポリビニルアルコールとホウ砂を含み、
前記分離工程では、前記燃焼工程で出た燃えかすを水に含浸させ、灰とホウ砂水溶液に分離することを特徴とする、残留物の処分方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、廃液処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
清掃現場や工場或いは原子力発電所等から排出される廃液は、有害物質が含まれていることが多く適切に処理する必要がある。
【0003】
特許文献1には、廃液を小容量の廃液収容タンクに装填して、この廃液収容タンクの廃液を循環ポンプで吸い込んでメンブレンフィルターを装填した濾過フィルターを透過させ、濾過フィルターを透過させた濃縮液を廃液収容タンクへ戻して所定の濃度になるまで循環して濾過処理する廃液処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、廃液中の物質等を除去することができるが、濾過フィルターで回収した物質は水分を含んでいるため重量があって廃棄コストが高く、また、所定の濃度となった廃液も水の量が多いためこちらも廃棄コストが高くなる。
【0006】
そこで、この発明の目的は、廃液の水分を除去することにより廃棄コストを抑制できる、廃液の水分除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0008】
請求項1に記載の発明は、廃液の水分除去方法であって、前記廃液を保持する保持体に前記廃液を保持させる保持工程と、前記廃液を保持した前記保持体にマイクロ波を照射する照射工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の廃液の水分除去方法であって、前記保持体は、セルロース材であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の廃液の水分除去方法であって、前記保持体は、高分子吸水材であり、前記高分子吸水材は、前記廃液の水分のみを保持し、水分以外の物質を高分子吸水材の外側で保持することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の廃液の水分除去方法であって、前記保持体は、枠内に網目を有する網目体であり、前記網目で前記廃液を保持する、ことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、廃液の水分除去方法であって、前記廃液に増粘剤を投入して前記廃液の粘性を高める粘性工程、前記増粘剤の投入前よりも前記粘性が高まった前記廃液にマイクロ波を照射する照射工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の廃液の水分除去方法であって、前記廃液は、ホウ砂を含有し、前記粘性工程では、前記増粘剤としてグアガムを前記廃液に投入することを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の廃液の水分除去方法における前記保持体の処分方法であって、前記照射工程後に、前記保持体を燃焼させる燃焼工程と、前記燃焼工程で出た燃えかすを水に含浸させ、灰と水溶液に分離する分離工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項5に記載の廃液の水分除去方法における前記照射工程で前記廃液にマイクロ波を照射して残った残留物の処分方法であって、前記照射工程後に、前記残留物を燃焼させる燃焼工程と、前記燃焼工程で出た燃えかすを水に含浸させ、灰と水溶液に分離する分離工程と、を含むことを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の保持体の処分方法であって、前記廃液はポリビニルアルコールとホウ砂を含み、前記分離工程では、前記燃焼工程で出た燃えかすを水に含浸させ、灰とホウ砂水溶液に分離することを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項8に記載の残留物の処分方法であって、前記廃液はポリビニルアルコールとホウ砂を含み、前記分離工程では、前記燃焼工程で出た燃えかすを水に含浸させ、灰とホウ砂水溶液に分離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、保持体に保持させた廃液にマイクロ波を照射することにより、当該廃液中の水分を気化させて除去することができるため、廃棄コストを抑制できる。
【0019】
増粘剤により粘性を高めた廃液にマイクロ波を照射することにより、当該廃液中の水分を気化させて除去することができるため、廃棄コストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(A)は、廃液を保持させたセルロース材11にマイクロ波を照射している様子を示す図であり、(B)は、その後の様子を示す図である。
【
図2】(A)は、廃液を保持させた高分子吸水材21にマイクロ波を照射している様子を示す図であり、(B)は、その後の様子を示す図である。
【
図3】(A)は、廃液を保持させた網目体31にマイクロ波を照射している様子を示す図であり、(B)は、その後の様子を示す図であり、(C)、(D)は網目体31の変形例を示す図である。
【
図4】第1実施形態における廃液の水分除去方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】第2実施形態における廃液の水分除去方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】廃液の水分除去に用いた保持体等の処分方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】廃液(特にPVA及びホウ砂を含む廃液)の水分除去に用いた保持体等の処分方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
[1.第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。第1実施形態では、廃液を保持する保持体と、保持体にマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置(図示しない)を用いて、廃液の水分除去処理を行う。なお、マイクロ波の周波数は、500kHz~6GHzとすることができる。マイクロ波照射装置としては、市販の電子レンジを用いることもできる。
【0023】
[1.1.保持体:セルロースを材料とする吸水材(セルロース材)]
図1を用いて、保持体がペーパータオルなどのセルロース材11(「保持体」の一例)である場合について説明する。保持体がセルロース材11である場合、まず、廃液にセルロース材11を浸して、セルロース材11に廃液を保持(含浸)させる。次いで、
図1(A)に示すように、廃液を保持させたセルロース材11に対してマイクロ波照射装置を用いてマイクロ波を照射する。これにより、セルロース材11が保持していた廃液中の水分が気化するとともに、セルロース材11の表面には廃液中の物質10が乾燥した状態で残留する(
図1(B)参照)。なお、水分除去に用いたセルロース材11は二次廃棄物として処分する。
【0024】
[1.2.保持体:高分子吸水材]
次に、
図2を用いて、保持体が紙おむつ等の高分子吸水材21(「保持体」の一例)である場合について説明する。高分子吸水材21は、高分子吸水材の内側で廃液の水分を保持し、高分子吸水材の外側で廃液の水分以外の物質を保持する。保持体が高分子吸水材21である場合、まず、廃液に高分子吸水材21を浸して、高分子吸水材21に廃液を保持(含浸)させる。次いで、
図2(A)に示すように、廃液を保持させた高分子吸水材21に対してマイクロ波照射装置を用いてマイクロ波を照射する。これにより、高分子吸水材21の内側で保持していた廃液中の水分が気化するとともに、高分子吸水材21の外側には廃液中の物質10が乾燥した状態で残留する(
図2(B)参照)。なお、高分子吸水材21の外側に付着している物質10をエアで吹き飛ばすこと(エアパージすること)により、高分子吸水材21を再利用することができる。また、水分除去に用いた高分子吸水材21は吸水能力が低下したら二次廃棄物として処分する。高分子吸水材21はセルロース材11と異なり、給水能力が低下するまで繰り返し利用できる。
【0025】
[1.3.保持体:網目体(格子体)]
次に、
図3を用いて、保持体が網目体31(「保持体」の一例)である場合について説明する。
図3(A)に示すように、網目体31は、枠33と、枠33の内側に設けられる網目32を有する。網目32の目は廃液を保持することが可能な大きさであり、網目32が表面張力により廃液の水分を保持する。保持体が網目体31である場合、まず、廃液に網目体31を浸して、網目体31の網目32に廃液を保持(含浸)させる。次いで、廃液を保持させた網目体31に対してマイクロ波照射装置を用いてマイクロ波を照射する。これにより、網目体31の網目32で保持していた廃液中の水分が気化するとともに、網目32には廃液中の物質10が乾燥した状態で残留する(
図3(B)参照)。なお、網目32に付着している物質10をエアで吹き飛ばすこと(エアパージすること)により、網目体31を半永久的に再利用することができる。また、水分除去に用いた網目体31は二次廃棄物として処分する。
【0026】
なお、網目体31を複数組み合わせて使用することとしてもよい。例えば、
図3(C)に示すように、複数の網目体31を連結具41で連結してもよい。また、
図3(D)に示すように、複数の網目体31を枠33の部分を接着させて組み合わせてもよい。これにより、一度に多くの廃水に対して水分を除去することができる。
【0027】
[1.4.廃液の水分除去方法の流れ]
次に、
図4のフローチャートを用いて、第1実施形態に係る廃液の水分除去方法の流れについて説明する。
【0028】
まず、廃液が入った容器に保持体を含浸させ、保持体に廃液を保持させる(ステップS1(「保持工程」の一例))。
【0029】
次に、保持体にマイクロ波を照射する(ステップS2(「照射工程」の一例))。
【0030】
なお、保持体の種類によって、マイクロ波を照射するだけでは充分に水分を気化させることができない場合は、マイクロ波を照射する前又は後に、熱風などの風を保持体に吹き付けて乾燥させる乾燥工程を入れてもよい。乾燥機のように、保持体に熱風を吹き付けつつ、乾燥室内の空気中の水分量が飽和水蒸気量に近づくことによる乾燥効率の低下を防ぐため、湿った空気を外部へ排気するなど、適宜換気することとしても良い。
【0031】
以上説明したように、第1実施形態における廃液の水分除去方法によれば、保持体に保持させた廃液にマイクロ波を照射することにより、当該廃液中の水分を気化させて除去することができるため、廃棄コストを抑制できる。
【0032】
[2.第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、廃液に増粘剤(例えば、グアガム等の増粘性多糖類、片栗粉など廃液の粘性を高めるもの)を投入して廃液の粘性を高め、粘性が高まった廃液にマイクロ波照射装置を用いてマイクロ波を照射することにより、廃液の水分除去処理を行う。なお、マイクロ波の周波数は、500kHz~6GHzとすることができる。マイクロ波照射装置としては、市販の電子レンジを用いることもできる。
【0033】
[2.1.廃液:ホウ砂を含有する溶解液]
まず、一例として、廃液が、原子力発電所で用いられるブロックアイスを溶解してできた、ホウ砂を含有する溶解液である場合について説明する。ブロックアイスは、一部の原子炉において異常時に原子炉格納容器に充満する高温水蒸気を凝縮するために設置されるアイスコンデンサに収納されている。ブロックアイスは、特許第3876241号公報に開示されているように、例えば、本体が中性子の吸収を促進するためホウ砂(Na2B4O7・10H2O)を含有する氷にて構成され、その外周にブロックアイス本体の昇華を阻止あるいは抑制するための水溶性高分子ポリビニルアルコール(PVA)が貼着されている。アイスコンデンサが設置されている原子炉を廃止する場合には、アイスコンデンサに収納されたブロックアイスを適切に廃棄する必要がある。ここでは、このホウ砂を含有する溶解液中の水分を除去することとする。
【0034】
具体的には、ホウ砂を含有する溶解液(更にPVAを含む場合がある)に増粘剤を投入して粘性を高める。増粘剤を投入する量は、廃液にとろみがつく程度で良いし、また、廃液がゲル化する程度でも良い。そして、増粘剤の投入前よりも粘性が高まった溶解液にマイクロ波を照射することにより、溶解液中の水分だけを気化させることができ、残留物は廃棄物として処理することができる。なお、この場合、二次廃棄物は投入した増粘剤だけとなる。
【0035】
[2.2.廃液:その他の粘性を高めることが可能な廃液]
ホウ砂を含有する溶解液以外にも、増粘剤を投入することで粘性を高めることが可能な廃液に対して増粘剤を投入して廃液の粘性を高めて、マイクロ波を照射することとしてもよい。なお、水分除去に用いた増粘剤は残留物と一緒に廃棄物となる。
【0036】
[2.3.廃液の水分除去方法の流れ]
次に、
図5のフローチャートを用いて、第2実施形態に係る廃液の水分除去方法の流れについて説明する。
【0037】
まず、廃液が入った容器に増粘剤を投入して、廃液の粘性を高める(ステップS11(「粘性工程」の一例))。
【0038】
次に、粘性が高まった廃液にマイクロ波を照射する(ステップS12(「照射工程」の一例))。
【0039】
なお、マイクロ波を照射するだけでは充分に水分を気化させることができない場合は、マイクロ波を照射する前又は後に、熱風などの風を保持体に吹き付けて乾燥させる乾燥工程を入れてもよい。
【0040】
以上説明したように、第2実施形態における廃液の水分除去方法によれば、増粘剤により粘性が高まった廃液にマイクロ波を照射することにより、当該廃液中の水分を気化させて除去することができるため、廃棄コストを抑制できる。
【0041】
[3.保持体等の処分方法]
次に、第1実施形態で説明した保持体(セルロース材11、高分子吸水材21)、又は、粘性を高めた廃液を乾燥させて残った残留物(これらを纏めて「保持体等」という)の処分方法について説明する。
【0042】
図4のステップS2では、保持体にマイクロ波を照射して廃液の水分を除去するが、セルロース材11であれば1、2回、高分子吸水材21であれば10回程度で、保持体がボロボロになって吸水能力が低下するため、これを適切に処分する必要がある。また、
図5のステップS12において、粘性が高まった廃液にマイクロ波を照射して乾燥させることにより残った残留物も適切に処分する必要がある。ここでは、
図6を用いて、廃液の水分除去に用いた保持体(特に、セルロース材11と高分子吸水材21)、又は、粘性を高めた廃液を乾燥させて残った残留物の処分方法について説明する。
【0043】
まず、保持体等を、1気圧の酸素雰囲気下でマイクロ波を照射して燃焼させる(ステップS21(「燃焼工程」の一例))。例えば、保持体等は、
図4のステップS2にてマイクロ波を照射して物質10が乾燥した状態で残留しているセルロース材11、高分子吸水材21、又は、
図5のステップS12にて粘性を高めた廃液にマイクロ波を照射して残った残留物(増粘剤等)である。ステップS21において保持体を燃焼させた場合、セルロース材11又は高分子吸水材21等の有機物が燃えてできた灰と、無機物と、を含む燃えかすが残る。また、ステップS21において粘性を高めた廃液にマイクロ波を照射して残った残留物を燃焼させた場合、増粘剤等の有機物が燃えてできた灰と、無機物と、を含む燃えかすが残る。つまり、ステップS21において、有機物は灰になり、無機物は灰にならない。
【0044】
次に、ステップS21により残った燃えかすを水に含浸させ、灰と無機物の水溶液に分離する(ステップS22(「分離工程」の一例))。このとき、分離しやすいように燃えかすを粉末にしてから水に含浸させても良い。分離の方法としては、ろ過や、遠心分離による方法を採用することができる。なお、灰と無機物の水溶液に分離することで処分がしやすくなり、水溶液は既存のエバポレータで焚いて濃縮することもできる。あるいは、水溶液にマイクロ波を照射して水分を除去すれば、無機物だけを取り出して処分することができる。
【0045】
なお、
図4のステップS2の工程と、
図6のステップS21の工程を同一の装置で行うこととしても良い。
【0046】
次に、
図7を用いて、保持体が保持する廃液、又は、粘性を高めた廃液が、第2実施形態で説明したポリビニルアルコール(PVA)及びホウ砂を含む廃液である場合の、保持体等の処分方法について説明する。
【0047】
まず、PVAとホウ砂(ホウ素化合物を含む)を含む保持体等を、1気圧の酸素雰囲気下でマイクロ波を照射して燃焼させる(ステップS31(「燃焼工程」の一例))。例えば、保持体等は、
図4のステップS2にてマイクロ波を照射してPVAとホウ砂が乾燥した状態で残留しているセルロース材11、高分子吸水材21、又は、
図5のステップS12にて粘性を高めた廃液にマイクロ波を照射して残った残留物(増粘剤、PVA、ホウ砂)である。ステップS31において保持体を燃焼させた場合、セルロース材11又は高分子吸水材21とPVAが燃えてできた灰と、ホウ砂と、を含む燃えかすが残る。また、ステップS31において粘性を高めた廃液にマイクロ波を照射して残った残留物を燃焼させた場合、増粘剤とPVAが燃えてできた灰と、ホウ砂と、を含む燃えかすが残る。なお、セルロース材11又は高分子吸水材21、PVA、増粘剤は有機物のため灰になり、ホウ砂は無機物のため灰にならない。
【0048】
次に、ステップS31により残った燃えかすを水に含浸させ、灰とホウ砂水溶液に分離する(ステップS32(「分離工程」の一例))。このとき、分離しやすいように燃えかすを粉末にしてから水に含浸させても良い。分離の方法としては、ろ過や、遠心分離による方法を採用することができる。なお、ホウ砂は親水性が高いため、灰とホウ砂水溶液に分離しやすい。灰とホウ砂水溶液に分離することで処分がしやすくなり、ホウ砂水溶液は既存のエバポレータで焚いて濃縮することもできる。あるいは、ホウ砂水溶液にマイクロ波を照射して水分を除去すれば、ホウ砂だけを取り出して処分することができる。
【0049】
なお、
図4のステップS2の工程と、
図7のステップS31の工程を同一の装置で行うこととしても良い。
【0050】
以上、第1実施形態及び第2実施形態で説明した水分除去において用いた廃棄が必要となる二次廃棄物の量は、セルロース材11、高分子吸水材21、増粘剤、網目体31となると考えられる。また、セルロース材11、高分子吸水材21、網目体31などの保持体を劣化するまで繰り返し水分除去に使用する場合、保持体に残留した物質10をエアで吹き飛ばすためのエアパージ用施設が必要になるが、増粘剤を用いる第2実施形態における水分除去方法によればエアパージ用施設が不要であり、簡易に水分を除去することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 :物質
11 :セルロース材
21 :高分子吸水材
31 :網目体
32 :網目
33 :枠
41 :連結具