(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152442
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】ダイヤモンド半導体装置、半導体モジュールおよびダイヤモンド半導体装置の駆動方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/12 20060101AFI20241018BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20241018BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652K
H01L29/78 652F
H01L29/78 652E
H01L29/78 658E
H01L29/78 301H
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066636
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】523020109
【氏名又は名称】株式会社Power Diamond Systems
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 康介
(72)【発明者】
【氏名】藤嶌 辰也
(72)【発明者】
【氏名】川原田 洋
【テーマコード(参考)】
5F140
【Fターム(参考)】
5F140AB05
5F140AC23
5F140BA04
5F140BB05
5F140BC12
5F140BD01
5F140BD05
5F140BD11
5F140BE09
5F140BF05
5F140BF42
5F140BF43
5F140BG27
5F140BH02
5F140BH05
5F140BH30
5F140BJ07
5F140BJ11
5F140BJ15
5F140BJ17
5F140CA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ダイヤモンド半導体装置の電気特性を改善するダイヤモンド半導体装置、半導体モジュール及びダイヤモンド半導体装置の駆動方法を提供する。
【解決手段】おもて面11側にゲート構造を有するダイヤモンド半導体装置100であって、ダイヤモンド基板10及びダイヤモンド基板10のおもて面11側に設けられ、積層構造のドープ領域20を有するダイヤモンド層15と、ダイヤモンド層15のおもて面側に設けられたゲート絶縁膜52と、ゲート絶縁膜52上に設けられたゲート電極110と、ダイヤモンド層のおもて面側に設けられたドレイン電極130と、ダイヤモンド層の裏面側に設けられたソース電極120と、を備える。ダイヤモンド半導体装置100は、ドープ領域20を積層構造とすることにより電界集中を緩和することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
おもて面側にゲート構造を有するダイヤモンド半導体装置であって、
ダイヤモンド層と、
前記ダイヤモンド層のおもて面側に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、
前記ダイヤモンド層のおもて面側に設けられたドレイン電極と、
前記ダイヤモンド層の裏面側に設けられたソース電極と、
を備える
ダイヤモンド半導体装置。
【請求項2】
前記ダイヤモンド層は、P型のダイヤモンド基板と、前記ダイヤモンド基板のおもて面側に設けられ、N型のドーパントを含むドープ領域とを有し、
前記ソース電極は、前記ダイヤモンド基板の裏面と接して設けられる
請求項1に記載のダイヤモンド半導体装置。
【請求項3】
前記ドープ領域は、
前記ダイヤモンド基板の上方に設けられた第1領域と、
前記第1領域と積層して設けられ、前記第1領域と異なるドープ濃度の第2領域と、
を有する
請求項2に記載のダイヤモンド半導体装置。
【請求項4】
前記ダイヤモンド層の深さ方向に延伸して設けられたゲートトレンチ部を備える
請求項1に記載のダイヤモンド半導体装置。
【請求項5】
前記ダイヤモンド層上に設けられたダイヤモンドのエピタキシャル層を備える
請求項1に記載のダイヤモンド半導体装置。
【請求項6】
前記エピタキシャル層の厚みは、1μm以下である
請求項5に記載のダイヤモンド半導体装置。
【請求項7】
前記エピタキシャル層の厚みは、200nm未満である
請求項6に記載のダイヤモンド半導体装置。
【請求項8】
前記エピタキシャル層と前記ゲート絶縁膜との間に設けられた終端層を備える
請求項5に記載のダイヤモンド半導体装置。
【請求項9】
前記終端層は、
C-H結合を含む第1終端領域と、
C-Si結合、C-Si-O結合、またはC-OH結合の少なくとも1つを含む第2終端領域と、
を有する
請求項8に記載のダイヤモンド半導体装置。
【請求項10】
前記エピタキシャル層の上方に設けられ、前記ドレイン電極と接するP型のドーパントを含むコンタクト領域を備える
請求項9に記載のダイヤモンド半導体装置。
【請求項11】
前記第1終端領域は、上面視で、前記ゲート電極と前記コンタクト領域との間に設けられ、
前記第2終端領域は、前記ゲート電極の下方に設けられる
請求項10に記載のダイヤモンド半導体装置。
【請求項12】
前記コンタクト領域は、前記ゲート電極と離間している
請求項10に記載のダイヤモンド半導体装置。
【請求項13】
上面視において、前記コンタクト領域と前記ゲート電極との離間距離は、0μmよりも大きく、100μm以下である
請求項12に記載のダイヤモンド半導体装置。
【請求項14】
前記エピタキシャル層と前記コンタクト領域との間に設けられ、前記コンタクト領域よりもドープ濃度が低いP型のドーパントを含む追加領域を備える
請求項11に記載のダイヤモンド半導体装置。
【請求項15】
おもて面側にゲート構造を有するダイヤモンド半導体装置であって、
ダイヤモンド基板と、前記ダイヤモンド基板上に設けられたドープ領域とを有するダイヤモンド層と、
前記ダイヤモンド層のおもて面側に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、
前記ダイヤモンド層のおもて面側に設けられたドレイン電極と、
前記ダイヤモンド基板と接するソース電極と、
を備える
ダイヤモンド半導体装置。
【請求項16】
前記ダイヤモンド層のおもて面から前記ダイヤモンド基板まで延伸して設けられたソーストレンチ部を備える
請求項15に記載のダイヤモンド半導体装置。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載のダイヤモンド半導体装置を備える半導体モジュール。
【請求項18】
前記ダイヤモンド半導体装置の前記ソース電極と接続されたソース端子と、
前記ダイヤモンド半導体装置の前記ドレイン電極と接続されたドレイン端子と、
を備える
請求項17に記載の半導体モジュール。
【請求項19】
おもて面側にゲート構造およびドレイン電極を備え、裏面側にソース電極を備えるダイヤモンド半導体装置の駆動方法であって、
ダイヤモンド層の裏面側に設けられた前記ソース電極にソース電圧を印加する段階と、
前記ダイヤモンド層のおもて面側に設けられた前記ドレイン電極にドレイン電圧を印加する段階と、
を備えるダイヤモンド半導体装置の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤモンド半導体装置、半導体モジュールおよびダイヤモンド半導体装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ダイヤモンド半導体基板の裏面側に「ドレイン電極9」が設けられた「ダイヤモンド電子素子」が記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
特許文献1 特開2017-092398号公報
【0003】
ダイヤモンド半導体装置の電気特性を改善することが好ましい。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様においては、おもて面側にゲート構造を有するダイヤモンド半導体装置であって、ダイヤモンド層と、前記ダイヤモンド層のおもて面側に設けられたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、前記ダイヤモンド層のおもて面側に設けられたドレイン電極と、前記ダイヤモンド層の裏面側に設けられたソース電極と、を備えるダイヤモンド半導体装置を提供する。
【0005】
本発明の第2の態様においては、おもて面側にゲート構造を有するダイヤモンド半導体装置であって、ダイヤモンド基板と、前記ダイヤモンド基板上に設けられたドープ領域とを有するダイヤモンド層と、前記ダイヤモンド層のおもて面側に設けられたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、前記ダイヤモンド層のおもて面側に設けられたドレイン電極と、前記ダイヤモンド基板と接するソース電極と、を備えるダイヤモンド半導体装置を提供する。
【0006】
本発明の第3の態様においては、上記いずれかのダイヤモンド半導体装置を備える半導体モジュールを提供する。
【0007】
本発明の第4の態様においては、おもて面側にゲート構造およびドレイン電極を備え、裏面側にソース電極を備えるダイヤモンド半導体装置の駆動方法であって、ダイヤモンド層の裏面側に設けられた前記ソース電極にソース電圧を印加する段階と、前記ダイヤモンド層のおもて面側に設けられた前記ドレイン電極にドレイン電圧を印加する段階と、を備えるダイヤモンド半導体装置の駆動方法を提供する。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ダイヤモンド半導体装置100の構成の一例を示す。
【
図2】ダイヤモンド半導体装置100の上面図の一例を示す。
【
図3】ダイヤモンド半導体装置100の変形例を示す。
【
図4】ダイヤモンド半導体装置100の変形例を示す。
【
図5】ダイヤモンド半導体装置100の変形例を示す。
【
図6】ダイヤモンド半導体装置100の変形例を示す。
【
図7】比較例のダイヤモンド半導体装置の電気特性を示す。
【
図8】ダイヤモンド半導体装置100の電気特性を示す。
【
図9】半導体モジュール200の構成の概要を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、ダイヤモンド半導体装置100の構成の一例を示す。ダイヤモンド半導体装置100は、ダイヤモンド層15を備える。ダイヤモンド層15は、ダイヤモンド基板10およびドープ領域20を有する。
【0012】
ダイヤモンド基板10は、ダイヤモンドで構成されるP型の基板である。ダイヤモンド基板10のドープ濃度は、1×1019cm-3以下であってよい。ダイヤモンド基板10は、P型のドーパントを含んでよいし、N型のドーパントを含んでよい。本例のダイヤモンド基板10はP+型であるがこれに限定されない。本例のダイヤモンド半導体装置100は、おもて面11側にゲート構造を有する。
【0013】
なお、本明細書においては、ダイヤモンド基板10の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」、「おもて」、「裏」の方向は重力方向、または、半導体装置の実装時における基板等への取り付け方向に限定されない。
【0014】
ドープ領域20は、ダイヤモンド基板10のおもて面11側に設けられる。ドープ領域20は、ダイヤモンド基板10上に設けられる。本例のドープ領域20は、N型のドーパントを含む。N型ドーパントは、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)またはアンチモン(Sb)などのV族元素であってよい。本例のN型ドーパントは窒素である。ドープ領域20のN型ドーパントのドープ濃度は、1×1015cm-3以上、1×1023cm-3以下であってよい。ここで、ドープ領域20は、意図せずに存在する不純物と、意図的にドーパントを注入したドーパントとを含んでよい。ドープ領域20のドープ濃度は、意図的に注入したドーパントの濃度であってよい。
【0015】
ドープ領域20は、ダイヤモンド基板10上にエピタキシャル成長された領域であってよい。ドープ領域20は、マイクロ波励起プラズマを用いた化学気相堆積法(PECVD:Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition)により形成されてよい。N型ドーパントは、エピタキシャル成長中に注入されてもよいし、ノンドープのダイヤモンド層をエピタキシャル成長した後にイオン注入等の他の方法で導入されてもよい。
【0016】
本例のドープ領域20は、第1領域21および第2領域22を有する。ドープ領域20を積層構造とすることによりダイヤモンド半導体装置100の電界集中を緩和することができる。
【0017】
第1領域21は、ダイヤモンド基板10の上方に設けられる。本例の第1領域21は、ダイヤモンド基板10の上面と接して設けられる。本例の第1領域21は、N型のドーパントを含む。第1領域21のN型ドーパントのドープ濃度は、1×1015cm-3以上、1×1022cm-3以下であってよい。第1領域21の厚みは、ダイヤモンド基板10の厚みよりも薄くてよい。
【0018】
第2領域22は、第1領域21と積層して設けられる。本例の第2領域22は、第1領域21の上方に設けられる。本例の第2領域22は、N型のドーパントを含む。第2領域22は、第1領域21と異なるドープ濃度を有する。第2領域22のN型ドーパントのドープ濃度は、1×1015cm-3以上、1×1022cm-3以下であってよい。第2領域22は、第1領域21のドープ濃度よりも大きくてもよいし、第1領域21のドープ濃度よりも小さくもよい。第2領域22の厚みは、第1領域21の厚みと同一であってよく、異なっていてもよい。
【0019】
エピタキシャル層30は、ダイヤモンド層15上に設けられる。エピタキシャル層30は、ドープ領域20上に設けられてよく、ダイヤモンド基板10上にも設けられてよい。エピタキシャル層30は、ダイヤモンドで構成される。エピタキシャル層30は、ドープ領域20にゲートトレンチ部50を設けるためのトレンチが形成された後に形成されてよい。エピタキシャル層30は、ゲートトレンチ部50を設けるためのトレンチの側壁および底面に設けられてよい。エピタキシャル層30は、トレンチの底面において、ダイヤモンド基板10と接しているが、ドープ領域20と接していてもよい。
【0020】
エピタキシャル層30の厚みは、1μm以下であってよく、200nm未満であってよい。エピタキシャル層30の厚みは、0nmよりも大きくてよく、50nm以上であってよい。エピタキシャル層30の厚みを薄くすることで、ダイヤモンド半導体装置100のオン時に正孔がエピタキシャル層30を貫通する距離であるドリフト長が短くなり、ドリフト抵抗を低減して、オン抵抗を低減することができる。
【0021】
エピタキシャル層30は、N型のドーパントを含んでよい。N型のドーパントは、窒素であってよい。エピタキシャル層30のN型のドーパントのドープ濃度は、1×1018cm-3以下であってよい。エピタキシャル層30のN型のドーパントのドープ濃度を小さくすることにより、ダイヤモンド基板10からの正孔が、エピタキシャル層30を貫通して終端層40へと流れる際、エピタキシャル層30内のポテンシャル障壁が小さくなることで、オン抵抗を低減できる。
【0022】
終端層40は、エピタキシャル層30上に設けられる。本例の終端層40は、エピタキシャル層30とゲート絶縁膜52との間に設けられる。終端層40は、エピタキシャル層30に2次元正孔ガス(2DHG:2 Dimensional Hole Gas)を誘起する層であってよい。終端層40は、ノーマリーオフ特性を実現するために、ゲート電圧を印加していない場合、導電性がほとんどない層であってよい。終端層40は、水素終端した層であってよく、酸化シリコン終端した層であってよく、水素終端した領域と酸化シリコン終端した領域の両方を含んでよい。終端層40は水素ラジカル照射によって水素終端されてよく、二酸化珪素とダイヤモンドの高温雰囲気下での還元反応で酸化シリコン終端されてよい。
【0023】
終端層40は、C-H結合、C-O結合、C-Si結合、C-Si-O結合、C-F結合、C-OH結合、C-N結合、C-NH2結合の少なくとも1つを含んでよい。終端層40は、同一の結合を有してもよいし、領域毎に異なる結合を有してもよい。終端層40は、エピタキシャル層30とゲート絶縁膜52との間の全面において同一の結合を有してよい。終端層40は、エピタキシャル層30とゲート絶縁膜52との間の全面においてC-H結合を有してよい。後述する通り、終端層40は、ゲートトレンチ部50の下方とそれ以外で異なる結合を有してもよい。
【0024】
ゲート絶縁膜52は、ダイヤモンド層15のおもて面11側に設けられる。ゲート絶縁膜52は、エピタキシャル層30の上方に設けられてよく、終端層40上に設けられてよい。ゲート絶縁膜52は、ゲートトレンチ部50において、トレンチの側壁と底面に設けられてよい。ゲート絶縁膜52の厚みは、50nm以上であってよく、200nm以下であってよい。ゲート絶縁膜52の厚みは、例えば100nmである。
【0025】
ゲート絶縁膜52の材料は、酸化アルミニウム(Al2O3)であってよい。酸化アルミニウムの組成は、必ずしもAl:O=2:3となっていなくてもよい。ゲート絶縁膜52の材料は、酸化シリコン(SiO2)などの他の絶縁膜であってよい。ゲート絶縁膜52は、単層であってもよいし、異なる材料を積層した積層構造を有してもよい。本例のゲート絶縁膜52は、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法により形成された単層のAl2O3である。
【0026】
ゲートトレンチ部50は、ダイヤモンド層15の深さ方向に延伸して設けられる。ゲートトレンチ部50は、トレンチと、ゲート絶縁膜52と、ゲート電極110とを含む。ゲートトレンチ部50は、トレンチに設けられたエピタキシャル層30と終端層40とを含んでよい。ゲートトレンチ部50は、ドープ領域20の上面からダイヤモンド基板10まで延伸して設けられてよい。ゲートトレンチ部50の下端は、エピタキシャル層30の下端であってよい。ゲートトレンチ部50の下端は、ドープ領域20の下端よりも深くてよい。ゲートトレンチ部50の下端は、ダイヤモンド基板10と接して設けられてよい。ゲートトレンチ部50の下端は、ドープ領域20の下端よりも浅く、ダイヤモンド基板10と接しなくてもよい。
【0027】
コンタクト領域60は、エピタキシャル層30の上方に設けられる。コンタクト領域60は、ドレイン電極130と接して設けられてよい。コンタクト領域60は、P型のドーパントを含んでよい。P型ドーパントは、ボロン(B)、アルミニウム(Al)またはガリウム(Ga)などのIII族元素であってよい。P型ドーパントは、エピタキシャル成長中に注入されてもよいし、ノンドープのダイヤモンド層をエピタキシャル成長した後にイオン注入等の他の方法で導入されてもよい。コンタクト領域60の厚みは、エピタキシャル層30の厚みよりも大きくてよい。コンタクト領域60の厚みは、エピタキシャル層30の厚みよりも小さくてよい。
【0028】
ゲート電極110は、ダイヤモンド層15の上方に設けられる。本例のゲート電極110は、ゲート絶縁膜52上に設けられる。ゲート電極110は、ゲートトレンチ部50において、トレンチの側壁と底面に設けられてよい。ゲート電極110は、アルミニウム(Al)を有してよい。ゲート電極110は、上面視で、ゲート絶縁膜52の内側に設けられてよい。
【0029】
ソース電極120は、ダイヤモンド層15の裏面12側に設けられる。ソース電極120は、裏面12の全面に設けられてもよいし、一部に設けられてもよい。ソース電極120は、チタン(Ti)と金(Au)とを積層した積層膜であってよい。ソース電極120は、チタン(Ti)、白金(Pt)および金(Au)を積層した積層膜であってもよい。ソース電極120は、ダイヤモンド基板10の裏面12と接して設けられる。ダイヤモンド層15の裏面12側に設けられたソース電極120には、ソース電圧が印加されてよい。
【0030】
ドレイン電極130は、ダイヤモンド層15の上方に設けられる。ドレイン電極130は、ダイヤモンド層15のおもて面11側に設けられてよい。ドレイン電極130は、コンタクト領域60上に設けられてよい。ドレイン電極130は、上面視で、コンタクト領域60と同一の領域に設けられてもよいし、コンタクト領域60の内側に設けられてもよい。ドレイン電極130は、チタン(Ti)と金(Au)とを積層した積層膜であってよい。ドレイン電極130は、チタン(Ti)、白金(Pt)および金(Au)を積層した積層膜であってもよい。ダイヤモンド層15のおもて面11側に設けられたドレイン電極130には、ドレイン電圧が印加されてよい。
【0031】
なお、本例では、ダイヤモンド半導体装置100がP型チャネルの電界効果トランジスタである場合について説明したが、ダイヤモンド半導体装置100は、N型チャネルの電界効果トランジスタであってもよい。ダイヤモンド半導体装置100は、N型チャネルの電界効果トランジスタとして機能する場合、P型のドーパントをN型のドーパントに入れ替えてよく、N型のドーパントをP型のドーパントに入れ替えてよい。
【0032】
図2は、ダイヤモンド半導体装置100の上面図の一例を示す。ダイヤモンド半導体装置100の上面には、ゲート電極110およびドレイン電極130が設けられるが、ソース電極120が設けられていない。ソース電極120は、ダイヤモンド半導体装置100の下面に設けられる。ゲート電極110およびドレイン電極130は、ダイヤモンド半導体装置100の外部と接続するためのパッドを有してよい。ゲートトレンチ部50は、ドレイン電極130のうち対向した部分の間に設けられる。
【0033】
図3は、ダイヤモンド半導体装置100の変形例を示す。本例のダイヤモンド半導体装置100は、ゲート・ドレイン間を離間させている点で
図1のダイヤモンド半導体装置100と相違する。本例では、
図1のダイヤモンド半導体装置100と相違する点について特に説明する。
【0034】
本例のコンタクト領域60は、ゲート電極110と離間している。即ち、上面視において、コンタクト領域60とゲート電極110とが重ならずに離れている。上面視において、コンタクト領域60とゲート電極110との離間距離Lsは、0μmよりも大きく、100μm以下であってよい。コンタクト領域60とゲート電極110との離間距離Lsを大きくすることにより耐圧を向上しやすくなる。コンタクト領域60とゲート電極110との離間距離Lsは、ダイヤモンド半導体装置100が要求される耐圧に応じて決定されてよい。
【0035】
本例の終端層40は、第1終端領域41および第2終端領域42を含む。本例の終端層40は、他の例のダイヤモンド半導体装置100に適用されてよい。
【0036】
第1終端領域41は、2次元正孔ガスを誘起してよい。第1終端領域41は、C-H結合を含んでよい。第1終端領域41は、ゲート電極110の下方に設けられてよいし、ゲート電極110の下方には設けられなくてよい。本例の第1終端領域41は、ゲート電極110の下方に設けられる。第1終端領域41は、エピタキシャル層30の上方において、ゲート電極110とエピタキシャル層30との間に設けられてよい。第1終端領域41は、ゲートトレンチ部50において、トレンチの側壁と底面に設けられてよい。
【0037】
第2終端領域42は、C-Si結合、C-Si-O結合、またはC-OH結合の少なくとも1つを含んでよい。本例の第2終端領域42は、C-Si-O結合を含む。第2終端領域42は、ゲート電極110にゲート電圧を印加することによりオンオフの制御が可能な領域に設けられてよい。本例の第2終端領域42は、上面視で、ゲート電極110とコンタクト領域60との間に設けられる。
【0038】
第1終端領域41と第2終端領域42の境界の位置は、上面視で、ゲート電極110の端部の位置と一致してよい。但し、第1終端領域41と第2終端領域42の境界の位置は、ゲート電極110の下方であってもよいし、上面視でゲート電極110とコンタクト領域60との間であってもよい。
【0039】
本例のドープ領域20は、ノンドープ層23と、ドープ層24と、ドープ層25とを有する。本例のドープ領域20は、他の例のダイヤモンド半導体装置100に適用されてよい。
【0040】
ノンドープ層23は、ダイヤモンド基板10上に設けられる。ノンドープ層23は、ダイヤモンド基板10上にエピタキシャル成長した層であって、意図的にドーパントを注入していない層であってよい。ノンドープ層23は省略されてもよい。
【0041】
ドープ層24は、ノンドープ層23上に設けられる。ドープ層24は、ノンドープ層23とドープ層25との間に設けられる。ドープ層24は、N型のドーパントを含んでよい。ドープ層24は、窒素ドープにより形成してよい。ドープ層24の厚みは、ノンドープ層23の厚みと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0042】
ドープ層25は、ドープ層24上に設けられる。ドープ層25は、N型のドーパントを含んでよい。ドープ層25は、ドープ層24よりも高ドープ濃度であってよい。ドープ層25は、窒素ドープにより形成してよい。ドープ層25の厚みは、ノンドープ層23の厚みまたはドープ層24の厚みと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0043】
本例のドープ領域20は、裏面12側から順にドープ濃度が高濃度になるように設けられている。但し、ドープ領域20は、おもて面11側から順にドープ濃度が高濃度になるように設けられてよい。本例のドープ領域20は、3層の積層構造を有するが、4層以上であってよく、ドープ濃度を徐々に変化させてもよい。
【0044】
本例のダイヤモンド半導体装置100は、追加領域65を含む。追加領域65は、他の例のダイヤモンド半導体装置100に適用されてよい。
【0045】
追加領域65は、エピタキシャル層30とコンタクト領域60との間に設けられる。追加領域65は、P型のドーパントを含んでよい。追加領域65のドープ濃度は、コンタクト領域60のドープ濃度よりも低くてよい。本例の追加領域65は、P-型である。追加領域65の厚みは、コンタクト領域60の厚みと同一であってもよいし、異なっていてもよい。追加領域65の厚みは、コンタクト領域60の厚みよりも厚くてよい。追加領域65を設けることにより、ドレイン電極130をおもて面11側に設けたダイヤモンド半導体装置100の耐圧をさらに向上することができる。
【0046】
図4は、ダイヤモンド半導体装置100の変形例を示す。本例のダイヤモンド半導体装置100は、ドープ領域20が4つのドープ層を有する点で
図1のダイヤモンド半導体装置100と相違する。
【0047】
ドープ領域20は、ノンドープ層23と、ドープ層24と、ドープ層25と、ドープ層26とを有する。本例のドープ領域20は、ドープ層26を有する点で、
図3のドープ領域20と相違する。ノンドープ層23、ドープ層24およびドープ層25は、
図3のドープ領域20と同一であってよい。
【0048】
ドープ層26は、ドープ層25上に設けられる。ドープ層26は、P型のドーパントを含んでよい。ドープ層26は、P-型であってよい。ドープ層26のP型ドーパントのドープ濃度は、コンタクト領域60のP型ドーパントのドープ濃度よりも低くてよい。ダイヤモンド半導体装置100のオン時にドープ層26にも正孔が流れることによりオン抵抗を低減することができる。ドープ層26は、他の例のダイヤモンド半導体装置100に適用されてよい。
【0049】
ドープ層26の厚みは、ノンドープ層23、ドープ層24およびドープ層25の厚みよりも薄くてよい。ドープ層26の厚みは、エピタキシャル層30の厚みよりも厚くてよい。ドープ層26の厚みは、ノンドープ層23、ドープ層24およびドープ層25の厚みと同一であってよいし、異なっていてよい。ドープ層26の厚みは、ノンドープ層23、ドープ層24およびドープ層25の厚みよりも厚くてよい。ドープ層26の厚みは、コンタクト領域60の厚みと同一であってもよいし、異なっていてもよい。ドープ層26の厚みは、コンタクト領域60の厚みよりも厚くてよい。
【0050】
図5は、ダイヤモンド半導体装置100の変形例を示す。本例のダイヤモンド半導体装置100は、ゲートトレンチ部50においてゲート電極110を選択的に設けている点で、
図1のダイヤモンド半導体装置100と相違する。
【0051】
ゲート電極110は、ゲート電極110aおよびゲート電極110bを有する。ゲート電極110aおよびゲート電極110bは、ゲートトレンチ部50において、分離して設けられる。本例では、ゲートトレンチ部50の側壁に設けられたゲート電極110aが、対向する側壁に設けられたゲート電極110bと分離して設けられる。但し、ゲート電極110aおよびゲート電極110bは、ゲートトレンチ部50の外部において同一のゲートパッドに接続されてよい。
【0052】
本例では、ゲートトレンチ部50のトレンチの底面でゲート電極110を省略したが、エピタキシャル層30の上方のその他の位置でゲート電極110を省略してよい。ゲートトレンチ部50のトレンチの側壁でゲート電極110を省略してもよいし、おもて面11の上方でゲート電極110を省略してもよい。
【0053】
本例のダイヤモンド半導体装置100は、ゲート電極110を選択的に設けることで、ゲート電極110の面積を減らして寄生容量を低減することができる。本例のゲート電極110は、他の例のダイヤモンド半導体装置100に適用されてよい。
【0054】
図6は、ダイヤモンド半導体装置100の変形例を示す。本例のソース電極120は、ダイヤモンド層15の上方に設けられる。
【0055】
本例のダイヤモンド半導体装置100は、ダイヤモンド層15のおもて面11側にゲート電極110、ソース電極120およびドレイン電極130を備える。ダイヤモンド半導体装置100がオンすると、ソース電極120からダイヤモンド基板10に正孔が流れ、エピタキシャル層30を貫通して、終端層40、コンタクト領域60の順に正孔が流れた後にドレイン電極130に流れる。
【0056】
ソーストレンチ部70は、ダイヤモンド層15のおもて面11からダイヤモンド基板10まで延伸して設けられる。ソーストレンチ部70の下端は、ダイヤモンド基板10と接して設けられてよい。
【0057】
ソース電極120は、ソーストレンチ部70に設けられてよい。ソース電極120は、ダイヤモンド基板10と接してよい。ソース電極120と、ダイヤモンド層15および/またはエピタキシャル層30と接する領域には、チタンカーバイド(TiC)層が設けられてよい。ソース電極120とドープ領域20との間には、エピタキシャル層30が設けられてもよいし、設けられなくてもよい。
【0058】
第3終端領域43は、上面視でドレイン電極130とソース電極120との間に設けられてよい。第3終端領域43は、上面視でコンタクト領域60とソース電極120との間に設けられてよい。第3終端領域43は、コンタクト領域60とソース電極120との間で正孔が流れないように終端された層であってよい。第3終端領域43は、C-H結合、C-O結合、C-Si結合、C-Si-O結合、C-F結合、C-OH結合、C-N結合、C-NH2結合の少なくとも1つを含んでよい。第3終端領域43は、酸素終端され、ソース電極120と、ドレイン電極130およびコンタクト領域60とが電気的に絶縁された領域であってよい。
【0059】
ダイヤモンド半導体装置100は、ダイヤモンド基板10を共通にして、おもて面11側に他の素子を備えてよい。ダイヤモンド基板10を共通化することで、複数の素子間で基板電位を共通の値に設定することができる。ダイヤモンド半導体装置100は、ダイヤモンド基板10を共通にして、他の電界効果トランジスタが設けられてよいし、ダイオードなどの他の素子が設けられてもよい。ダイヤモンド半導体装置100は、ダイヤモンド基板10を共通にして、窒化ガリウム(GaN)または炭化珪素(SiC)などのダイヤモンド以外のエピタキシャル層が設けられてもよい。
【0060】
なお、本例のダイヤモンド半導体装置100は、ノンドープ層23、ドープ層24およびドープ層25の3層のドープ領域20を有するが、他の変形例で開示したドープ領域20を適宜適用してもよい。
【0061】
図7は、比較例のダイヤモンド半導体装置の電気特性を示す。縦軸はゲート幅で規格化したドレイン電流密度I
D[mA/mm]と単位面積で規格化したドレイン電流密度I
D[A/cm
2]を示し、横軸はソース・ドレイン間電圧V
DS[V]を示す。本例の各曲線は、ゲート・ソース間電圧V
GSを-40Vから20Vまで徐々に変化させたものである。
【0062】
おもて面側にソース電極を設け、裏面12側にドレイン電極を設ける場合、正孔の流れは、おもて面のソース電極からコンタクト層を通り、おもて面またはトレンチ側壁の終端層のチャネルを通り、トレンチ底部のエピタキシャル層を貫通して、ダイヤモンド基板を通り、裏面のドレイン電極へと流れる。この際、トレンチ底部のエピタキシャル層がおもて面側のソース電極およびコンタクト層から離れた位置に存在するので、トレンチ底部のエピタキシャル層の反転層形成が薄くなる。反転層が薄く形成されると、正孔がエピタキシャル層を貫通する際のドリフト抵抗が高くなり、オン抵抗が高くなる。そのため、比較例のダイヤモンド半導体装置においては、高いドレイン電圧を印加してもピンチオフせず、飽和領域が見られない。
【0063】
図8は、ダイヤモンド半導体装置100の電気特性を示す。縦軸はゲート幅で規格化したドレイン電流密度I
D[mA/mm]と単位面積で規格化したドレイン電流密度I
D[A/cm
2]を示し、横軸はソース・ドレイン間電圧V
DS[V]を示す。本例の各曲線は、ゲート・ソース間電圧V
GSを-40Vから20Vまで徐々に変化させたものである。
【0064】
ダイヤモンド半導体装置100は、裏面12側にソース電極120を備え、おもて面11側にドレイン電極130を備える。この場合、電流の流れが比較例のダイヤモンド半導体装置とは逆となり、トレンチ底部のエピタキシャル層30の位置は、接地される裏面12側のソース電極120およびダイヤモンド基板10から近くなり、比較例の場合と比較して、トレンチ底部のエピタキシャル層30に反転層が厚く形成される。反転層が厚く形成されると、ダイヤモンド基板10からエピタキシャル層30を貫通して終端層40のチャネルと接続するドリフト抵抗が低くなり、オン抵抗が低くなる。そのため、本例のダイヤモンド半導体装置100においては、コンタクト領域60付近の終端層40のチャネルでピンチオフして飽和特性が見られる。即ち、ダイヤモンド半導体装置100のIV波形は線形領域と飽和領域を有する。このように、ダイヤモンド半導体装置100は、裏面12側にソース電極120を備えることで、静特性を改善することができる。
【0065】
図9は、半導体モジュール200の構成の概要を示す。半導体モジュール200は、ダイヤモンド半導体装置100を備える。半導体モジュール200は、ゲート端子210と、ソース端子220と、ドレイン端子230とを備える。ゲート端子210、ソース端子220およびドレイン端子230は、半導体モジュール200の外部と電気的に接続するための外部接続端子であってよい。
【0066】
ゲート端子210は、ダイヤモンド半導体装置100のゲート電極110と接続される。ソース端子220は、ダイヤモンド半導体装置100のソース電極120と接続される。ドレイン端子230は、ダイヤモンド半導体装置100のドレイン電極130と接続される。ダイヤモンド半導体装置100は、ソース電極120を下向きにして半導体モジュール200の絶縁基板上に設けられてよい。ソース電極120は、絶縁基板上の金属配線を介してソース端子220と電気的に接続されてよい。
【0067】
半導体モジュール200は、単一のダイヤモンド半導体装置100を有してよく、複数のダイヤモンド半導体装置100を有してよい。半導体モジュール200は、インバータ回路を有してよい。半導体モジュール200は、P型チャネルのダイヤモンド半導体装置100と、N型チャネルの半導体素子を組み合わせたインバータ回路を有してよい。N型チャネルの半導体素子は、N型チャネルのダイヤモンド半導体装置100であってよく、GaNまたはSiCなどのその他の半導体素子であってよい。
【0068】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0069】
10・・・ダイヤモンド基板、11・・・おもて面、12・・・裏面、15・・・ダイヤモンド層、20・・・ドープ領域、21・・・第1領域、22・・・第2領域、23・・・ノンドープ層、24・・・ドープ層、25・・・ドープ層、26・・・ドープ層、30・・・エピタキシャル層、40・・・終端層、41・・・第1終端領域、42・・・第2終端領域、43・・・第3終端領域、50・・・ゲートトレンチ部、52・・・ゲート絶縁膜、60・・・コンタクト領域、65・・・追加領域、70・・・ソーストレンチ部、110・・・ゲート電極、120・・・ソース電極、130・・・ドレイン電極、100・・・ダイヤモンド半導体装置、200・・・半導体モジュール、210・・・ゲート端子、220・・・ソース端子、230・・・ドレイン端子