(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152447
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】車両用アクティブサスペンション装置
(51)【国際特許分類】
B60G 17/015 20060101AFI20241018BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20241018BHJP
F16F 9/46 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B60G17/015 B
F16F15/02 B
F16F9/46
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066645
(22)【出願日】2023-04-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】715000027
【氏名又は名称】井尻 正裕
(72)【発明者】
【氏名】井尻 正裕
【テーマコード(参考)】
3D301
3J048
3J069
【Fターム(参考)】
3D301AA03
3D301AA04
3D301AA48
3D301AA69
3D301CA09
3D301DA08
3D301DA33
3D301DB39
3D301DB40
3D301EA14
3D301EA23
3D301EA43
3D301EA82
3D301EB02
3D301EC01
3D301EC05
3D301EC06
3J048AD01
3J048BE03
3J048EA15
3J069AA50
3J069EE35
(57)【要約】 (修正有)
【課題】油圧ポンプと複雑な管状の油圧配管が不要なアクティブサスペンションにおいて、小型で軽量な油圧制御装置を提供する。
【解決手段】車高または緩衝力を制御するアクティブサスペンションにおいて、アキュムレータを分離し、ショックアブソーバとアクチュエータを連結する連結カバと、アキュムレータと電磁弁に連通するアキュムレータ連通管と、前記ショックアブソーバと前記電磁弁に逆止弁を介して順方向と逆方向に連通するショックアブソーバ連通管と、前記アクチュエータと電磁弁に連通するアクチュエータ連通管と、各連通管を開閉制御する電磁弁とで構成し、前記電磁弁を制御して、前記各車軸の車高または緩衝力を制御し、前記電磁弁の弁部を前記連結カバの内部に形成する車両用アクティブサスペンション装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショックアブソーバとばねで構成するサスペンションをアクチュエータで車高を制御するアクティブサスペンションにおいて、
前記ショックアブソーバのロッドの往復動による油量調整のアキュムレータを分離し、
前記ショックアブソーバと前記アクチュエータを連結する連結カバと、
前記アキュムレータと電磁弁に連通するアキュムレータ連通管と、
前記ショックアブソーバと電磁弁に逆止弁を介して順方向と逆方向に連通するショックアブソーバ連通管と、
前記アクチュエータと電磁弁に連通するアクチュエータ連通管と、
前記すべての連通管を開閉制御する前記電磁弁とで構成する出力手段を各車軸に設け、前記アクティブサスペンションの制御装置にて前記電磁弁を制御して、前記各車軸の車高を制御する車両用アクティブサスペンション装置において、
前記電磁弁の弁部を前記連結カバの内部に形成することを特徴とする車両用アクティブサスペンション装置。
【請求項2】
前記連結カバの内部に形成した前記電磁弁の弁部において、スリーブに設けた前記各連通管の開口部によるスプールに対する付勢力と釣り合う位置と面積の略密閉空間を設け、前記各開口部と釣り合う前記略密閉空間とを連通する連通凹部をスプールおよび/またはスリーブに設けることを特徴とする請求項1に記載の車両用アクティブサスペンション装置。
【請求項3】
各車軸の車高昇降のオーバーラン、またはオーバーランと中間位置を検知する検出手段を設け、前記オーバーランの検出手段により前記電磁弁のソレノイド電源を直接制御する、または制御装置により制御することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用アクティブサスペンション装置。
【請求項4】
ショックアブソーバとばねで構成するサスペンションの減衰力を変化させるセミアクティブサスペンションの前記ショックアブソーバのロッドの往復動による油量調整のアキュムレータを分離し、前記ショックアブソーバの上に設けた前記アキュムレータを連結する連結カバと、前記ショックアブソーバと前記アキュムレータに連通するアキュムレータ連通管と、前記ショックアブソーバの上部と下部を、直接または逆止弁を介して連通するバイパスと、前記バイパスを開閉制御または流量制御する電磁弁と、で構成し、前記アキュムレータ連通管と、前記バイパスの上部を、前記連結カバの内部に形成したセミアクティブサスペンションを各車軸に設け、前記セミアクティブサスペンションの制御装置にて前記電磁弁を制御して前記ショックアブソーバの減衰力を制御するセミアクティブサスペンションにおいて、前記電磁弁の弁部を前記連結カバの内部に形成することを特徴とする車両用セミアクティブサスペンション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のショックアブソーバの上に連結カバを備え、車高制御用の油圧アクチュエータの動力源をショックアブソーバとするアクティブサスペンション装置及び、ショックアブソーバの減衰力を電磁弁で制御するパッシブ要素のセミアクティブサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ばねとショックアブソーバで構成されるサスペンションは自動車の各車軸に設けられ、地面の凹凸などからの衝撃、加減速、コーナリングなどにより変動する各車軸に掛かる車重や慣性力等の作用力をばねが受け止め、作用力の変動等により発生する振動をショックアブソーバで減衰する。
振動を減衰するショックアブソーバは、弁が付いたピストンがロッドによりシリンダ内を往復動し、この時の動圧抵抗により衝撃エネルギを熱エネルギに変換する。
ショックアブソーバのシリンダ構造には、二重シリンダの間に設けたリザーバ室を有する複筒式と、フリーピストンにより分離されたガス室(高圧窒素ガス)を有する単筒式とがある。
ショックアブソーバ本体にピストンのロッドが沈み込み、ロッドの体積膨張分だけの作動油は、アキュムレータである前記リザーバ室またはガス室の圧縮ガスが収縮する。
本発明は、油圧アクチュエータによる車高制御を行うアクティブサスペンションと、路面からの入力に対し、あるいは積載荷重等による軸重の変動に対応した減衰力 を油圧回路で制御するセミアクティブサスペンションである。
【0003】
自転車やオートバイは、カーブ走行時に発生する横方向に働く遠心力に釣り合わせるために、旋回内側に車体を傾けて遠心力と重力の合力に適応する体勢が可能である。
体勢を傾けられない、自動車や船(タンカー等を除く)等は、接触面である地面あるいは海面より重心が上にあるので、カーブ走行時に遠心力により体勢が旋回外側に傾くので、本来好ましい旋回内側とは逆の方向に体勢が傾くので、乗員の姿勢の維持が困難になる等の不都合が生ずる。
これらの問題点を解決するために、自動車では車高調整を油圧で制御するアクティブサスペンションがあるが、油圧ポンプ、電磁弁、油圧配管等の油圧機器と電気制御が必要で、コストアップと、油圧ポンプを駆動するエネルギ消費の問題がある。
具体的には、従来のアクティブサスペンションは、油圧ポンプで発生した油圧を電磁弁で制御することにより、油圧シリンダをアクチュエータとして車高制御を行うので、油圧ポンプが1基の場合は、各車軸まで吐出用と戻り用の複雑で長い油圧配管が必要となる。
また、各車軸に油圧ポンプを設ける場合は、電気配線を伴う4基の油圧ポンプが必要となるので、両者とも、油圧ポンプと複雑な油圧配管等によるコストアップの問題がある。
更に、車高制御の油圧は、制御中は常に作り続けなくてはならず、油圧ポンプを駆動するモータ等の動力源と、車重により増減するが油圧ポンプを回す数kW程度のエネルギ消費を伴い、特に小型車には燃費を悪化させる大きな問題となる。
従って、現状では油圧によるアクティブサスペンションは、一部の高級車に搭載されている程度で、一般の自動車には搭載されていない。
バスやトラック等に、利用されている従来技術として、空気圧を利用したエアサスペンションがあり、エアスプリングによる振動吸収性により、乗り心地と輸送品質等が向上し、更に、空気圧の制御により車高を制御できるので、バスの乗客の乗り降り、トラックの荷物の積み下ろしが容易になる。
エアサスペンションは、動力源であるコンプレッサとエアタンクが必要であるので、一般の乗用車では、設置スペースの確保が問題となり、車高を大きく下げて走行する場合は、空気圧が低くなるので走行時に問題が発生する場合があり、頻繁に空気圧を変えると、エアサスペンションの寿命が縮まるおそれがある。
バス、トラック等のエアサスペンション、リーフスプリングサスペンションや、乗用車のサスペンションに置き換わる、油圧ポンプやコンプレッサ等の動力源を必要とせず、メンテナンス性がよく、信頼性が高く、安価で、省スペースのアクティブサスペンションが望まれる。
【0004】
従来技術として、ショックアブソーバのロッドの伸縮による油量変動を吸収するアキュムレータを分離し、ショックアブソーバの上に電磁弁を備えた連結カバを介してアクチュエータおよび/ またはアキュムレータを連結し、前記連結カバを油圧マニホールドブロックとして全ての油圧回路を集約形成して管状の油圧配管を不要とし、各車軸で油圧回路を簡素な構造に完結するアクティブサスペンションがあり、その作用は、走行中の振動により伸縮するショックアブソーバのロッドの伸縮で発生する油圧を車高の昇降に利用するので、油圧ポンプもその駆動エネルギ消費も不要である車両用アクティブサスペンション装置(特許文献1)がある。
【0005】
シリンダの内側に摺動可能に嵌装されたピストンの移動によって前記シリンダの内側に生じる流体の流れを制御して減衰力を発生させる制御弁を備え、前記制御弁は、協働して流路の開閉部を形成する弁体及び弁座と、電流に対応して前記弁体を移動させる力を発生するアクチュエータと、前記弁体を前記アクチュエータによる移動方向に対向する方向に付勢するばね装置(60)と、を有する緩衝器において、ばね装置は、第一ばね部(60b)と第二ばね部(60c)とを有するばね部材(60)と、ばね部材(60)の所定以上のばね変位に対し第一ばね部(60b)のばね変位を規制する規制部と、を有する緩衝器(特許文献2)がある。
【0006】
懸架ばねSの併設下に上端が車輛の車体B側に連結されると共に下端が車輛の車軸A側に連結され、外部からの油圧Pの供給時にシリンダ反力を発生するように形成されてなるショックアブソーバにおいて、該ショックアブソーバ1が上端側部材とされるシリンダ体1aと、該シリンダ体1a内に出没自在に挿通されて下端側部材とされるピストンロッド体1bと、を有してなり、シリンダ体1aの上端にアキュムレータQが連設されてなると共に、シリンダ体1aの上端側外周にその外周側端が車体B側に接続されるゴムブッシュRが連設されるショックアブソーバ(特許文献3)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第7142824号公報
【特許文献2】国際公開第2019/008902号
【特許文献3】実願平3-91101号(実開平5-40636号)のCD-ROM
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
油圧ポンプと複雑な管状の油圧配管を不要にした特許文献1の車両用アクティブサスペンション装置において、電磁弁の小型化が困難なため周辺機器との干渉により、アクティブサスペンションの設計自由度が小さい問題点と、電磁弁によるコストアップの問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1は、ショックアブソーバとばねで構成するサスペンションをアクチュエータで車高を制御するアクティブサスペンションにおいて、前記ショックアブソーバのロッドの往復動による油量調整のアキュムレータを分離し、前記ショックアブソーバと前記アクチュエータを連結する連結カバと、前記アキュムレータと電磁弁に連通するアキュムレータ連通管と、前記ショックアブソーバと電磁弁に逆止弁を介して順方向と逆方向に連通するショックアブソーバ連通管と、前記アクチュエータと電磁弁に連通するアクチュエータ連通管と、前記すべての連通管を開閉制御する前記電磁弁とで構成する出力手段を各車軸に設け、前記アクティブサスペンションの制御装置にて前記電磁弁を制御して、前記各車軸の車高を制御する車両用アクティブサスペンション装置において、前記電磁弁の弁部を前記連結カバの内部に形成することを特徴とする車両用アクティブサスペンション装置である。
【0010】
請求項2は、前記連結カバの内部に形成した前記電磁弁の弁部において、スリーブに設けた前記各連通管の開口部によるスプールに対する付勢力と釣り合う位置と面積の略密閉空間を設け、前記各開口部と釣り合う前記略密閉空間とを連通する連通凹部をスプールおよび/またはスリーブに設けることを特徴とする請求項1に記載の車両用アクティブサスペンション装置である。
【0011】
請求項3は、各車軸の車高昇降のオーバーラン、またはオーバーランと中間位置を検知する検出手段を設け、前記オーバーランの検出手段により前記電磁弁のソレノイド電源を直接制御する、または制御装置により制御する請求項1または2に記載の車両用アクティブサスペンション装置である。
【0012】
請求項4は、ショックアブソーバとばねで構成するサスペンションの減衰力を変化させるセミアクティブサスペンションの前記ショックアブソーバのロッドの往復動による油量調整のアキュムレータを分離し、前記ショックアブソーバの上に設けた前記アキュムレータを連結する連結カバと、前記ショックアブソーバと前記アキュムレータに連通するアキュムレータ連通管と、前記ショックアブソーバの上部と下部を、直接または逆止弁を介して連通するバイパスと、前記バイパスを開閉制御または流量制御する電磁弁と、で構成し、前記アキュムレータ連通管と、前記バイパスの上部を、前記連結カバの内部に形成したセミアクティブサスペンションを各車軸に設け、前記セミアクティブサスペンションの制御装置にて前記電磁弁を制御して前記ショックアブソーバの減衰力を制御するセミアクティブサスペンションにおいて、前記電磁弁の弁部を前記連結カバの内部に形成することを特徴とする車両用セミアクティブサスペンション装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1は、ショックアブソーバとばねで構成するサスペンションをアクチュエータで車高を制御するアクティブサスペンションにおいて、前記ショックアブソーバのロッドの往復動による油量調整のアキュムレータを分離し、前記ショックアブソーバと前記アクチュエータを連結する連結カバと、前記アキュムレータと電磁弁に連通するアキュムレータ連通管と、前記ショックアブソーバと電磁弁に逆止弁を介して順方向と逆方向に連通するショックアブソーバ連通管と、前記アクチュエータと電磁弁に連通するアクチュエータ連通管と、前記すべての連通管を開閉制御する前記電磁弁とで構成する出力手段を各車軸に設け、前記アクティブサスペンションの制御装置にて前記電磁弁を制御して、前記各車軸の車高を制御する車両用アクティブサスペンション装置において、前記電磁弁の弁部を前記連結カバの内部に形成することを特徴とする車両用アクティブサスペンション装置である。
本発明により、前記電磁弁の弁部を前記連結カバの内部に形成することにより、連結カバと電磁弁からなる油圧制御装置が一体化するので、油圧制御装置が小型化して軽量化し、各連通管の油路の短縮による流路抵抗の減少、周辺機器との干渉の軽減と、更に、連結カバの断面形状を円形にできるので、連続鋳造等の丸棒からの切削加工により、安価で信頼性が高い油圧制御装置が製作可能となるので、コストダウンと同時に油圧制御装置の信頼性が向上する。
【0014】
請求項2は、前記連結カバの内部に形成した前記電磁弁の弁部において、スリーブに設けた前記各連通管の開口部によるスプールに対する付勢力と釣り合う位置と面積の略密閉空間を設け、前記各開口部と釣り合う前記略密閉空間とを連通する連通凹部をスプールおよび/またはスリーブに設けることを特徴とする請求項1に記載の車両用アクティブサスペンション装置である。
本発明により、スリーブに設けた前記各連通管の開口部のスプールに働く油圧による付勢力によりスプールの切換え時に摩擦力が発生するので、前記電磁弁の作動に必要なソレノイド部の出力が大きくなる問題点があるが、本発明のスリーブに設けた前記各連通管の開口部によるスプールに対する付勢力と釣り合う位置と面積の略密閉空間を設け、各前記開口部に対応する前記略密閉空間を連通する連通凹部をスプールおよび/またはスリーブに設けることにより、スプールに働く付勢力を釣り合わせることにより摺動抵抗が減少し、ソレノイドの出力を小さくできるので、ソレノイド部の小型化と、切換通電OFF時の逆起電力によるノイズが小さくなる利点がある。
【0015】
請求項3は、各車軸の車高昇降のオーバーラン、またはオーバーランと中間位置を検知する検出手段を設け、前記オーバーランの検出手段により前記電磁弁のソレノイド電源を直接制御する、または制御装置により制御することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用アクティブサスペンション装置である。
アクティブサスペンションは、各車軸の車高制御を行うために、アクチェータの伸縮量をシフトセンサセンサ等で測定して車高を制御するが、シフトセンサセンサ等は高価で大きなデータを処理する必要がある。
本発明では、各車軸の昇降のオーバーランを直接制御することにより、安価で簡素なシステムで車高のオーバーラン制御ができる。
また、オーバーランと中間位置を検知する検出手段により、安価で簡易的なシステムで車高の簡易的な制御ができるので、加速度計等による姿勢制御判断により各車軸を制御する場合は、車軸を管理する複雑な演算処理と制御手段を省略できる。
【0016】
請求項4は、ショックアブソーバとばねで構成するサスペンションの減衰力を変化させるセミアクティブサスペンションの前記ショックアブソーバのロッドの往復動による油量調整のアキュムレータを分離し、前記ショックアブソーバの上に設けた前記アキュムレータを連結する連結カバと、前記ショックアブソーバと前記アキュムレータに連通するアキュムレータ連通管と、前記ショックアブソーバの上部と下部を、直接または逆止弁を介して連通するバイパスと、前記バイパスを開閉制御または流量制御する電磁弁と、で構成し、前記アキュムレータ連通管と、前記バイパスの上部を、前記連結カバの内部に形成したセミアクティブサスペンションを各車軸に設け、前記セミアクティブサスペンションの制御装置にて前記電磁弁を制御して前記ショックアブソーバの減衰力を制御するセミアクティブサスペンションにおいて、前記電磁弁の弁部を前記連結カバの内部に形成することを特徴とする車両用セミアクティブサスペンション装置である。
本発明により、前記電磁弁の弁部を前記連結カバの内部に形成することにより、連結カバと電磁弁からなる油圧制御装置が一体化するので、油圧制御装置が小型化して軽量化し、各連通管の油路の短縮による流路抵抗の減少、周辺機器との干渉の軽減と、更に、連結カバの断面形状を円形にできるので、連続鋳造等の丸棒からの切削加工により、安価で信頼性が高い油圧制御装置が製作可能となるので、コストダウンと同時に油圧制御装置の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の請求項1のアクティブサスペンションを、単軸モデルとして示す図である。
【
図2】
図1のアクティブサスペンションの概略構成図である。
【
図3】
図2のアクティブサスペンションの、油圧制御装置による車高制御(シフト変位)の説明図である。
【
図4】実施例1の、本発明の請求項1対応のアクティブサスペンションの概略断面図である。
【
図5】
図4の油圧制御装置5sの水平断面図である。
【
図6】本発明のアクティブサスペンションの、制御装置の概略構成図である。
【
図7】実施例2の、本発明のアクティブサスペンションの情報処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図8】前記実施例2の、右カーブ走行時の車高制御の説明図である。
【
図9】本発明の請求項2の、電磁弁のスプールに働く各ポートの付勢力の説明図である。
【
図10】本発明の請求項3対応の、出力手段の一例を示す制御装置の概略構成図である。
【
図11】実施例3の、本発明の請求項3対応のアクティブサスペンションの、実施形態の一例を示す概略構成図である。
【
図12】本発明の請求項4のセミアクティブサスペンションを、単軸モデルとして示す図である。
【
図13】
図12のセミアクティブサスペンションの一例を示す、事例(1)と事例(2)の概略構成図である。
【
図14】実施例4の、前記
図13の事例(1)の一例を示す概略断面図である。
【
図15】
図14の油圧制御装置の、水平断面図(L-L)である。
【
図16】本発明の請求項1(
図1)と本発明の請求項4(
図12)に対応した、フルアクティブサスペンションを単軸モデルとして示す図である。
【
図17】
図16のフルアクティブサスペンションの一例を示す、概略構成図である。
【
図18】実施例5の、
図16のフルアクティブサスペンションの一例を示す、概略断面図である。
【
図19】上図は、
図18の油圧制御装置の水平断面図(M-M)、下図は上図の(N-N)縦断面図である。
【
図20】下図は、
図19の油圧制御装置の水平断面図(M-M)、上図は、従来技術である特許文献1の同等の油圧制御装置の水平断面図である。
【
図21】実施例6の、本発明のフルアクティブサスペンションの、実施形態の一例を示す概略構成図である。
【
図22】
図21のフルアクティブサスペンションF1FLの、直進での、加速、慣性走行、減速時の車高制御の説明図である。
【
図23】
図21のフルアクティブサスペンションの、加速、慣性走行、減速時等の車高制御と緩衝力制御の説明図である。
【
図24】電磁弁を2個設けた、本発明の請求項4のセミアクティブサスペンションを単軸モデルとして示す図である。
【
図25】本発明の各アクティブサスペンションの組み合わせと車種例との相関図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
前記図面(
図1~25)に従って、本発明の車両用アクティブサスペンション装置の内容と実施例を、以下に説明する。
本発明の請求項1対応の車両用アクティブサスペンションを、単軸モデルを
図1に、概略構成図を
図2に示し、走行中に伸縮するショックアブソーバを往復動油圧ポンプとして作用させるので油圧ポンプが不要となり、各車軸の油圧回路が独立しているので、長い油圧配管も不要である。
油圧回路の作用を電磁弁51の切換えにより行い、油圧制御の作用は、車高制御の停止時を
図2にて、車高制御の昇降時を
図3にて説明する。
本発明の請求項1対応の車両用アクティブサスペンションの実施例1の、概略断面図を
図4に、油圧制御装置5sの、連結カバ16sである、連結カバ16sの水平断面図を
図5に示し、制御装置の概略構成図を
図6に示す。
実施例2の本発明のアクティブサスペンションの情報処理ルーチンの一例を示すフローチャートを
図7に示し、右カーブ走行時の車高制御の説明図を
図8に示す。
電磁弁のスプールに働く押圧力を釣り合わせて摺動抵抗を軽減し、スプール切換の円滑化によりソレノイド部を小型化できる、本発明の請求項2の作用説明図を
図9に示す。
アクチェータの伸縮量をシフトセンサセンサで測定する、または車軸の変位を車軸センサで測定する替わりに、本発明の請求項3のオーバーランの検出手段を設けた出力手段の一例を
図10に示し、実施形態の他の一例として、中間位置検出手段を追加して車高ストロークの特定ゾーンを検知できる概略構成図を
図11に示す。
本発明の請求項4対応の車両用セミアクティブサスペンションを、単軸モデルを
図12に、
図12とは異なる2例の油圧制御装置(P5a、P5b)の各概略構成図を
図13に示し、実施例3として、前記油圧制御装置(P5a)の一例の概略断面図を
図14に示し、
図14の油圧制御装置(P5a)の、水平断面図(L-L)を
図15に示す。
本発明の請求項1のアクティブサスペンションと、請求項4のセミアクティブサスペンションに対応した、車両用フルアクティブサスペンションの単軸モデルを
図16に、概略断面図を
図17に示す。
実施例5である車両用フルアクティブサスペンションの、概略断面図を
図18に、油圧制御装置の水平断面図(M-M)と、連結カバの縦断面図(N-N)を
図19に示す。
図20にて、本願発明の前記
図19の油圧制御装置の水平断面図(下図)と、従来の油圧制御装置の水平断面図(上図)を比較すると、本発明の効果である油圧制御装置の小型化、電磁弁のスリーブの本体ブロックの削減による油圧回路の簡素化等によるコストダウン効果が明白となる。
実施例5の、本発明のフルアクティブサスペンションの、実施形態の一例を
図21の概略構成図に示し、加速、慣性走行、減速時の車高制御の説明を
図22に示し、各運転状況における加速、慣性走行、減速時等の車高制御と緩衝力制御事例を
図23に示す。
電磁弁を2個設けることにより、緩衝力を最大8段階に制御することができる、本発明の請求項4のセミアクティブサスペンションを単軸モデルとして
図24に示す。
本願発明の請求項1(1)と請求項4(P1)による、各アクティブサスペンションの組み合わせと対応車種例を、
図25に示す。
【0019】
図1は、本発明の請求項1のアクティブサスペンションを、単軸モデルとして示す図である。
ショックアブソーバ2とばね13で構成するサスペンションをアクチュエータ4で車高を制御するアクティブサスペンション1において、前記ショックアブソーバ2のロッド23の往復動による油量調整のアキュムレータ3を分離し、前記ショックアブソーバ2と前記アクチュエータ4を連結する連結カバ16と、前記アキュムレータ3と電磁弁51に連通するアキュムレータ連通管56と、前記ショックアブソーバ2と電磁弁51に逆止弁52,53を介して順方向と逆方向に連通するショックアブソーバ連通管57と、前記アクチュエータ4と電磁弁51に連通するアクチュエータ連通管55と、前記すべての連通管を開閉制御する前記電磁弁51とで構成する出力手段を各車軸に設け、前記アクティブサスペンション1の制御装置6にて前記電磁弁51を制御して、前記各車軸の車高を制御する車両用アクティブサスペンション装置1において、前記電磁弁51の弁部を前記連結カバ16の内部に形成することを特徴とする車両用アクティブサスペンション装置である。
図1の単軸モデルから分かるように、連結カバ16から下の構成は通常のサスペンションであり、それに直列にアクチュエータ4が構成されているので、アクチュエータ4には車軸に掛かる車重や慣性力等による作用力Fとその反力である-Fが作用反作用として働いている。
本図の油圧制御装置5に示すように、電磁弁51のコイルが励磁されていない場合は、従来技術と同様に、走行中は作用力Fの変動によりばね13が伸縮し、この振動をショックアブソーバ2のロッド23の往復動に伴う制動力で緩衝する。
前記ロッド23の往復動により発生するショックアブソーバ2の作動油の増減は、逆止弁52、53を備えたショックアブソーバ連通管57、電磁弁51、アキュムレータ連通管56を介してアキュムレータ3の空気室の増減にて吸収される。
電磁弁51の切換えにより、車高の上昇(U)と車高の下降(D)が可能であり、この車高制御の油圧動力源は、車高の下降(D)時は、車軸に掛かる車重等の前記作用力Fによりアクチュエータ4のシリンダ41の作動油が、アキュムレータ3の内圧以上に加圧されるので、
図3(1)の油圧回路によりアクチュエータ4の作動油をアキュムレータ3に流出し、車高の上昇(U)時は、ショックアブソーバ2が
図3(2)の油圧回路により往復動油圧ポンプとして機能する。この車高の上昇(U)時は、静的にはアクチュエータ4の作動油はショックアブソーバ2に連通するので、本図に示すように、パスカルの原理により、ショックアブソーバ2のロッド23の断面積(As)とアクチュエータ4のシリンダ41の断面積(Aa)に応じた作用力(F)と((As/Aa)F)が発生し、このアクティブサスペンション1の作用(車高制御時のシフトとばね変位の関係)は、
図8で説明する。
このように、本発明のアクティブサスペンションは、ショックアブソーバをあたかも往復動油圧ポンプとして利用するので、従来技術の油圧ポンプとその回転駆動装置が不要となり、各車軸の油圧回路が本図に示すように、油圧マニホールドブロックのように連結カバ16の内部にて独立して完結するので、従来技術のように長い油圧配管が不要となるのでコストダウンとメンテナンス性向上の効果と、油圧ポンプを回すエネルギ消費が不要となる。
本発明により、前記電磁弁の弁部を前記連結カバの内部に形成するので、
図4に示すように、スリーブを形成する電磁弁のボディが不要となり、連結カバと電磁弁からなる油圧制御装置が一体化するので、油圧制御装置が小型化して軽量化し、各連通管の油路の短縮による流路抵抗の減少、周辺機器との干渉が軽減するので、アクティブサスペンションの設計自由度が制約される問題点が軽減される。
更に、
図5に示すように、連結カバの断面形状を円形にできるので、連続鋳造等の丸棒からの切削加工により、安価で信頼性が高い油圧制御装置が製作可能となるので、コストダウンと同時に油圧制御装置の信頼性が向上する。
【0020】
図2は、
図1のアクティブサスペンションの概略構成図である。
油圧制御装置5を備えたアクティブサスペンション1を各車軸に設け、ショックアブソーバ2とアクチュエータ4を連結カバ16で連結し、電磁弁51の切換えにより、アクチュエータ4のロッド43が伸縮して各車軸の車高調整を行い、車高のシフト量はシフトセンサ71で測定する。
図2は車高制御の停止時で、電磁弁51のコイルに電圧が印加されていないので、ショックアブソーバ2のロッド23は、車軸連結部12を介して、車が走行中の地面の凹凸などからの衝撃や、加速、減速、コーナリングなどの慣性力を受けて、ばね13の変位が発生し、ショックアブソーバ2のロッド23がピストン22に設けた絞り弁24で圧縮された作動油は絞り弁24から噴出し、この時の動圧抵抗により衝撃エネルギを熱エネルギに変換するので作動油の温度は上昇する。
ショックアブソーバ2のロッド23がシリンダ21に沈み込み、ロッド23の往復動によるシリンダ21の作動油の増減は、ショックアブソーバ連通管57、電磁弁51、アキュムレータ連通管56を介してアキュムレータ3が吸収する。
油圧回路図の実線の矢印は、ばね13を圧縮し、ばね変位が(-)方向に変位するときの作動油の移動方向であり、油圧回路の破線の矢印は、ばね13が伸長し、ばね変位が(+)方向に変位するときの作動油の移動方向を示す。
ばね変位、シフト変位、共に(+)方向は車高が上昇する方向で、(-)方向は車高が下降する方向である。
電磁弁51(4ポート3位置方向制御弁)の油圧回路の切換えによる車高制御の詳細は
図3にて説明する。
【0021】
図3は、
図2のアクティブサスペンションの、油圧制御装置による車高制御(シフト変位)の説明図である。
上図(1)は、車高制御の4ポート3位置方向制御弁である電磁弁51の下降コイル(D)を励磁して車高下降中の油圧回路図で、下図(2)は、前記電磁弁51の上昇コイル(U)を励磁して車高上昇中の油圧回路図である。
図2と同様に、油圧回路図の実線の矢印は、ばね13を圧縮し、ばね変位が(-)方向に変位するときの作動油の移動方向であり、油圧回路の破線の矢印は、ばね13が伸長し、ばね変位が(+)方向に変位するときの作動油の移動方向を示す。
本図の上図(1)は、図示しない制御装置6からの出力により、電磁弁51のコイル(D)を励磁して油圧回路を車高制御の下降制御に切換えている。
アクチュエータ4のシリンダ41の作動油の圧力は前記作用力Fにより変動するが、単筒式でないアキュムレータ3の内圧より通常は高いので、実線と破線の矢印で示すように、アクチュエータ4の作動油は、アクチュエータ連通管55、電磁弁51、ショックアブソーバ連通管57の逆止弁53と逆止弁52、電磁弁51、アキュムレータ連通管56を経由して連続的にアキュムレータ3に移動するので、アクチュエータ4の作動油の減少により、シフト変位の(-)方向に移動して車高は連続的に下降する。
前記下降中は、ショックアブソーバ2のロッド23のシリンダ21への押し込み時は、ばね13が圧縮され、ばね変位が(-)方向に変位するので、ショックアブソーバ2の作動油の加圧により送り出された作動油は、ショックアブソーバ連通管57の逆止弁52、電磁弁51、アキュムレータ連通管56を経由してアキュムレータ3に送られるので、この車高の下降に寄与しない作動油が共通の油路を通過するので、車高制御の下降速度は少し低下する。
ショックアブソーバ2のシリンダ21からロッド23の伸長時は、ばね13が伸長し、ばね変位が(+)方向に変位するので、ショックアブソーバ2のロッド23のシリンダ21からの引き抜きによる作動油の減量分は、前記アクチュエータ4から送られ、アクチュエータ連通管55、電磁弁51、ショックアブソーバ連通管57の逆止弁53、を通った前記作動油の一部が充当されるので、アクチュエータ4からの作動油の流出が促進され、車高制御の下降速度は少し上昇する。このように、ショックアブソーバ2のロッド23の伸縮により下降速度が多少は変化するが、車高は連続下降するので、自車の停車中を含む任意のタイミングで車高の下降が可能である。
本図の下図(2)は、図示しない制御装置6からの出力により、電磁弁51の上昇コイル(U)を励磁して油圧回路を車高制御の上昇制御に切換えている。
ばね13の圧縮時は、ばね変位が(-)方向に変位するので、ショックアブソーバ2のロッド23のシリンダ21への押し込みによる作動油の加圧により送り出された作動油は、
図1で説明したパスカルの原理により図の実線矢印で示すように、ショックアブソーバ連通管57の逆止弁52、電磁弁51、アクチュエータ連通管55を経由してアクチュエータ4に送られるので、ばね13の圧縮時は、車高が上昇する。
ばね13の伸長時は、ばね変位が(+)方向に変位するので、ショックアブソーバ2のロッド23のシリンダ21からの引き抜きによる作動油の減圧により、図の破線矢印に示すように、アキュムレータ3から、アキュムレータ連通管56、電磁弁51、ショックアブソーバ連通管57の逆止弁53、を経由して作動油が補充されるので、ばね13の伸長時は、上昇は停止し。車高は保持される。
従って、アクティブサスペンション1は、路面からの振動等によるショックアブソーバ2のロッド23の往復動により作動油を加圧して車高を上昇させるので、伸縮するショックアブソーバ2が、あたかも往復動油圧ポンプのように作用し、車高制御は間欠的に上昇する。
【実施例0022】
図4は、実施例1の、本発明の請求項1対応のアクティブサスペンション1sの概略断面図である。
図4は、ショックアブソーバ2sとばね13sで構成するサスペンションをアクチュエータ4sで車高を制御するアクティブサスペンション1sにおいて、前記ショックアブソーバ2sのロッド23sの往復動による油量調整のアキュムレータ3sを分離し、前記ショックアブソーバ2sと前記アクチュエータ3sを連結する連結カバ16sと、前記アキュムレータ3sと電磁弁51sに連通するアキュムレータ連通管56sと、前記ショックアブソーバ2sと電磁弁51sに逆止弁52s,53sを介して順方向と逆方向に連通するショックアブソーバ連通管57sと、前記アクチュエータ4sと電磁弁51sに連通するアクチュエータ連通管55sと、前記すべての連通管を開閉制御する前記電磁弁51sとで構成する出力手段1sを各車軸に設け、前記アクティブサスペンション1sの制御装置にて前記電磁弁51sを制御して、前記各車軸の車高を制御する車両用アクティブサスペンション装置において、前記電磁弁51sの弁部であるスリーブ510とスプール511を前記連結カバ16sの内部に形成することを特徴とする車両用アクティブサスペンション装置である。
図4のアクティブサスペンション1sのアキュムレータ3sは、従来と同様のショックアブソーバ2sのロッド23sの往復動に伴う作動油増減の調整と、アクチュエータ4sのシフト制御に伴う作動油の待避調整も行うので、作動油の容量は従来のショックアブソーバのアキュムレータより大きくなる。
アクチュエータ4sのシリンダ41sとアキュムレータシリンダ31とで形成する複筒式のアキュムレータ3sのリング状のフリーピストン32は、アクティブサスペンション1sが垂直に近い設置状態の場合は省略できる。
作動油の温度上昇は、主にショックアブソーバ2sで発生し、昇温した作動油の多くはアキュムレータ3sとの間を頻繁に往復するので、作動油の放熱性は良好である。
電磁弁51sの図示しない電源用可撓性ケーブルは、車体連結部上11sと連結カバ16sとの間に設けたケーブルベア(登録商標)等を介して図示しない制御装置6に接続する。
このケーブルベア(登録商標)181の剛性が高い場合は、昇降する連結カバ16sを含むアクティブサスペンション本体の回り止めを兼ねることもできる。
作用の説明は、
図3での説明と重複するので省略する。
本図は、油圧装置の理解が容易なように、アクチュエータ4sの外側に複筒式のアキュムレータ3sを設けているが、実施例5(
図18)のフルアクティブサスペンションF1gに示すように、ショックアブソーバ2sの外側に復筒式のアクチュエータ4gを設けることで、電磁弁51gの昇降移動による可撓性ケーブルが不要となる利点がある。
【0023】
図5は、
図4の断面(K-K)である、油圧制御装置5sの水平断面図である。
電磁弁51sの弁部であるスプール511を内包するスリーブ510は連結カバ16sの内部に形成されているので、コンパクトな油圧制御装置5sとなる。
図の二点鎖線で示すように、従来技術である特許文献1では、連結カバに電磁弁を設けるので、電磁弁が連結カバより突出するので、アクティブサスペンションの設置の設計自由度が小さい問題点がある。
本発明により、前記電磁弁の弁部を前記連結カバの内部に形成するので、連結カバと電磁弁からなる油圧制御装置が一体化するので、スリーブを形成する電磁弁のボディが不要となるので、油圧制御装置が小型化して軽量化し、各連通管の油路の短縮による流路抵抗の減少、周辺機器との干渉の軽減、連結カバの断面形状を円形にして連続鋳造等の丸棒からの切削加工により、安価で信頼性が高い油圧制御装置にできる効果がある。
本図では、スリーブ510を貫通穴とし、ソレノイドケース515にて開口部を密閉するので、簡素な構成で電磁弁の弁部を連結カバ16sの内部に構成できる。
【0024】
図6は、本発明のアクティブサスペンションの、制御装置の概略構成図である。
本図は、
図2に示す本発明のアクティブサスペンション1の制御装置6と、入力手段である、走行状態判定センサ7と、外部環境判定センサ8、および出力手段であるアクティブサスペンション(1FL、1FR、1RL、1RR)で構成される。
制御装置6は、制御部61と、走行状態判定部62、外部環境判定部63、車両姿勢判定部64からなる入力部と、出力部である駆動部65で構成される。
入力部の走行状態判定部62は、入力手段の走行状態判定センサ7である、車速センサ74、操舵角センサ75、加速度センサ76等の入力を制御部61に入力し、外部環境判定部63は、入力手段の外部環境判定部センサ8である、車載カメラ81、LIDAR82、ミリ波レーダ83等の入力を制御部61に入力し、車両姿勢判定部64は、各車軸に設けた出力手段であるアクティブサスペンション(1FL、1FR、1RL、1RR)に設けたシフトセンサ71等の入力を制御部61に入力する。
制御部61は、前記入力部からの入力等を基に、出力部である駆動部65に信号を出力し、各車軸の出力手段であるアクティブサスペンション(1FL、1FR、1RL、1RR)の各電磁弁51の上昇コイル(U)または下降コイル(D)に電圧を出力して車高制御を行う。
図7は、実施例2の、本発明のアクティブサスペンションの情報処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図7は、
図6に示す本発明のアクティブサスペンションの制御装置6にて、入力手段である走行状態判定センサ7、外部環境判定センサ8の入力情報を基に、出力手段である各車軸のアクティブサスペンション1の電磁弁51を制御する。
具体的には、
図6に示す入力手段の走行状態判定センサ7の車速センサ74等の入力情報により、自車が走行状態であるかを判断する(ステップS010)。
ここで、走行中でないと判断した場合は、全車軸のアクティブサスペンションの電磁弁51を励磁せず、RETURNに進む(ステップS110)。
一方、走行中であると判断した場合は、各車軸のアクティブサスペンションのシフトセンサ71にてシフト変位を測定し、現状の車高状態を確認する(ステップS020)。
次に、走行状態判定センサ7の車速センサ74、操舵角センサ75、加速度センサ76や、外部環境判定センサ8の車載カメラ81、LIDAR82、ミリ波レーダ83等の入力情報により、現状から予想される、道路状況と運転状況の判定を行う(ステップS030)。
この道路状況と運転状況の判定により、自車に予想される走行状況を解析し、それに対応した各車軸のアクティブサスペンションの、ロール、ピッチ、ヨー等に最適なシフト変位量(目標値)を算出する(ステップS040)。
具体的には、車速センサ74、加速度センサ76にて現状の速度と各加速度を測定し、アクセル開度センサや車速センサ74にて車速動向を予想し、操舵角センサ75、車載カメラ81、LIDAR82、ミリ波レーダ83および地図情報等により今後の道路の曲率半径等を予想して遠心力等を試算する。更に、車載カメラ81等の外部環境判定センサ8にて道路状況(傾斜や片勾配(カント)等)を予想し、各車軸のアクティブサスペンションの最適なシフト変位量(目標値)を算出する。
ステップS020の各車軸のアクティブサスペンションのシフトセンサ71にて測定したシフト変位(現状値)と、ステップS040にて算出した各車軸のアクティブサスペンションの目標値を比較する(ステップS050)。
ここで、各車軸のアクティブサスペンションのシフト変位の(現状値)と(目標値)の差異が、規定値(誤差レベル等)以下であるかを判断する(ステップS060)。
ここで、各車軸のアクティブサスペンションのシフト変位の(現状値)と(目標値)の差異が、規定値(誤差レベル等)以下である場合は、当該車軸のアクティブサスペンションの電磁弁51を励磁せず(ステップS100)、RETURNに進む。
一方、各車軸のアクティブサスペンションのシフト変位の(現状値)と(目標値)の差異が、規定値(誤差レベル等)以上であると、各車軸のアクティブサスペンションのシフト変位の(現状値)と(目標値)の比較が、(目標値>現状値)の場合は、当該車軸のアクティブサスペンションの電磁弁51のコイル(U)を励磁し(ステップS080)、RETURNに進む(ステップS070)。
一方、各車軸のアクティブサスペンションのシフト変位の(現状値)と(目標値)の比較が、(目標値<現状値)の場合は、当該車軸のアクティブサスペンションの電磁弁51のコイル(D)を励磁し(ステップS090)、RETURNに進む。
以上の情報処理ルーチンに従って、各車軸の車高制御を行う。
図7のフローチャートは、自車の運転中にアクティブサスペンションの制御装置6にて繰り返し実行される。
図8は、前記実施例2の、右カーブ走行時の車高制御の説明図である。
図8の上図は、自車10が右カーブを走行時の模式平面図であり、各放射状の自車10の背面図は、カーブの入り口(C1)、カーブの途中(C2)、カーブの出口(C3)に於ける、本発明のアクティブサスペンションのシフト制御が、OFFの場合とONの場合で、矢印のように車高制御ONにより自車の姿勢が改善する。
図8の下図は、右カーブ走行時の、
図11に示す概略構成図の前輪右側の車軸(1FR)を、
図6に示す前記制御装置6がシフト制御する各要素の作動状況を示すタイムチャートである。
各要素の項目は、上から、シフト位置、ばね変位、電磁弁51の上昇コイル(U)と下降コイル(D)の電圧の印加状態、ハンドル操作の操舵角センサ75、遠心力等の横加速度センサの測定値である。
上図の左下の直線の道路からカーブに侵入する直前に、曲がろうとする右方向にハンドル操作が開始され、操舵角センサ75のタイムチャートで低位設定角(TL)を超えると、前記
図7のフローチャートの情報処理ルーチンにより車軸(1FR)のシフト変位の目標値Sh1を横加速度センサの測定値等により試算し、シフトの測定値と比較し、目標値<測定値であるので、車軸(1FR)の電磁弁51のコイル(D)を励磁し、車軸(1FR)の車高の下降制御を開始する。
図3で説明したように、アクチュエータ4の作動油は、電磁弁51、アキュムレータ連通管56等を経由して連続的にアキュムレータ3に移動するので、アクチュエータ4の作動油の減少により、シフト変位の(-)方向に移動して車高は連続的に下降する。
ただし、
図3で説明したように、車高の下降制御は、ショックアブソーバ2のロッド23の伸長時はばね13が伸長し、車高制御の下降速度は少し上昇し、ショックアブソーバ2のロッド23の押し込み時はばね13が圧縮され、ばね変位が(-)方向に変位するので、ショックアブソーバ2の作動油の加圧により送り出された作動油はアキュムレータ3に送られるので、車高の下降に寄与しない作動油が共通の油路を通過するので、車高制御の下降速度は少し低下するので下降速度は、ばね13の変位により変動する。
次に、操舵角センサ75のタイムチャートで高位設定角(Th)を超えると、シフト変位の目標値Sh2を試算し、シフト変位の測定値と比較し、目標値<測定値であるので、車軸(1FR)の電磁弁51のコイル(D)の励磁を継続し、車軸(1FR)の車高の下降制御を継続する。
シフト変位の目標値Sh2を試算後、シフトの測定値が目標値に達すると、電磁弁51のコイル(D)の励磁を停止して、車高の下降を停止する。
操舵角センサ75のタイムチャートで、シフト変位の目標値Sh2を試算後、所定時間(t)秒毎に目標値Sh3を試算し、車高制御を前記手順で継続する。
模式平面図の、カーブの途中(C2)以降は、
図3で説明したように、ショックアブソーバ2のロッド23のシリンダ21への押し込みによる作動油の加圧により、ばね13の圧縮時に車高が上昇し、ばね13の伸長時は車高が保持されるので間欠的に上昇する。
車高の下降と上昇で油圧の作動原理は異なるが、車高制御のアルゴリズムは前記車高下降時と同じであるので、説明を省略する。
図8は車高制御の説明を容易にするために、所定時間(t)は長くし、緩衝制御を弱めて減衰振動に近い制動として説明している。
加速度センサ76により横加速度を測定できない場合は、カーブの半径を予想して車速センサ74により遠心力を試算する等の方法がある。
横加速度のタイムチャートとシフト変位のタイムチャートは、本来同期しているのが望ましい。実施例1の本図では、シフト変位が遅れて制御されるが、地図情報の活用や、車載カメラ81等の外部環境判定センサ8により、道路のカーブ形状等の進路情報や片勾配等の路面状態を予想して、より正確な目標値にて制制御するのが望ましいので、本発明のアクティブサスペンションは、自動運転との親和性がある。