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特開2024-152448工事用エレベータ及びカウンターウエイト装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152448
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】工事用エレベータ及びカウンターウエイト装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 9/187 20060101AFI20241018BHJP
   B66B 11/00 20060101ALI20241018BHJP
   B66B 9/02 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B66B9/187 C
B66B11/00 A
B66B9/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066649
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391028889
【氏名又は名称】三成研機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】599016110
【氏名又は名称】株式会社エスシー・マシーナリ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 忍
(72)【発明者】
【氏名】古口 光
(72)【発明者】
【氏名】下坪 章光
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 克弘
(72)【発明者】
【氏名】日置 礼一郎
(72)【発明者】
【氏名】本保 裕文
(72)【発明者】
【氏名】日比野 直人
(72)【発明者】
【氏名】稲毛 一城
【テーマコード(参考)】
3F301
3F306
【Fターム(参考)】
3F301AA13
3F301BA08
3F301BB19
3F306DA03
3F306DA37
(57)【要約】
【課題】搬器部の積載可能重量を向上できる工事用エレベータ及びカウンターウエイト装置を提供する。
【解決手段】揚程を延伸可能なマスト部11と、マスト部11の側方に昇降可能に配置された搬器部12及びウエイト部13と、マスト部11のトップシーブ部14に支持され、一方側に搬器部12が連結されるとともにトップシーブ部14を介して他方側にウエイト部13が連結されたワイヤロープ15と、搬器部12に設けられて搬器部12を昇降駆動するための駆動部16と、ワイヤロープ15の余剰分を巻付けて収納する余巻ドラム部17と、を備えた工事用エレベータ10であって、余巻ドラム部17がウエイト部13とともにワイヤロープ15の他方側に配置されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揚程を延伸可能なマスト部と、
前記マスト部に対して昇降可能に配置された搬器部及びウエイト部と、
前記マスト部のトップシーブ部に支持され、一方側に前記搬器部が連結されるとともに前記トップシーブ部を介して他方側に前記ウエイト部が連結されたワイヤと、
前記搬器部に設けられて該搬器部を昇降駆動するための駆動部と、
前記ワイヤの余剰分を巻付けて収納する余巻ドラム部と、を備えた工事用エレベータであって、
前記余巻ドラム部が前記ウエイト部とともに前記ワイヤの他方側に配置されており、
前記マスト部は、上下に延設されたガイドレールを有し、
前記ウエイト部は、前記ガイドレールに沿って昇降する第1フレームと、前記第1フレームに固定されたウエイトブロックと、を有し、
前記余巻ドラム部は、前記ガイドレールに沿って昇降する第2フレームと、前記第2フレームに固定された余巻ドラムとを有し、
前記第1フレームと前記第2フレームとは、緩衝材を介して上下に連結されている、工事用エレベータ。
【請求項2】
前記第1フレーム及び前記第2フレームは、前記ガイドレールを挟持して転動する複数のローラを有する、請求項1に記載の工事用エレベータ。
【請求項3】
前記複数のローラは、前記第1フレーム及び前記第2フレームに対する配置が調整可能に構成されている請求項2に記載の工事用エレベータ。
【請求項4】
前記第1フレームと前記第2フレームとが横方向に相対変位可能に連結されている請求項1に記載の工事用エレベータ。
【請求項5】
予め設定された総重量となる単数又は複数の前記ウエイトブロックが前記第1フレームに固定されている、請求項1に記載の工事用エレベータ。
【請求項6】
前記第2フレームが前記第1フレームの下側に配置されている、請求項1に記載の工事用エレベータ。
【請求項7】
前記ウエイトブロックの横断面形状が全長にわたり連続した凹部を有し、前記ワイヤが前記凹部内に配置されている、請求項1に記載の工事用エレベータ。
【請求項8】
マスト部が揚程を延伸可能に構成されるとともにトップシーブ部を備え、一方側に搬器部が連結されたワイヤにおける前記トップシーブ部を介した他方側に連結されるカウンターウエイト装置であって、
前記ワイヤの余剰分を巻付けて収納するための余巻ドラム部と、
前記余巻ドラム部に連結されたウエイト部と、を備え、
前記ウエイト部は、ガイドレールに沿って昇降する第1フレームと、前記第1フレームに固定されたウエイトブロックと、を有し、
前記余巻ドラム部は、前記ガイドレールに沿って昇降する第2フレームと、前記第2フレームに固定された余巻ドラムとを有し、
前記第1フレームと前記第2フレームとは、緩衝材を介して上下に連結されているカウンターウエイト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工事用エレベータ及びカウンターウエイト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マスト部の揚程を延伸可能な工事用エレベータが知られている。例えば下記特許文献1には、ガイドレールに案内されて昇降自在な搬器部とカウンターウエイトがワイヤで繋がれていて、搬器部上の余巻きドラムにワイヤの途中を巻き付けて固定するとともにワイヤの搬器部側が尻手取付手段を介して搬器部に連結された工事用エレベータが提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-189381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、マスト部の揚程を延伸可能な工事用エレベータでは、ワイヤの余剰部分が余巻きドラムに巻付けて収容されていた。巻付けられたワイヤには、マスト部の揚程を延伸するために必要な長さが含まれるため、高層建築物を建設する場合などには重量が嵩み、例えば巻付けられたワイヤが1tonを超えることもあった。
ところが、従来の工事用エレベータでは余巻ドラムが搬器部上に積載されているため、ワイヤを巻付けた余巻ドラムの重量分だけ搬器部の積載可能重量が削減されているという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、搬器部の積載可能重量を向上できる工事用エレベータ及びカウンターウエイト装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の工事用エレベータは、揚程を延伸可能なマスト部と、前記マスト部に対して昇降可能に配置された搬器部及びウエイト部と、前記マスト部のトップシーブ部に支持され、一方側に前記搬器部が連結されるとともに前記トップシーブ部を介して他方側に前記ウエイト部が連結されたワイヤと、前記搬器部に設けられて該搬器部を昇降駆動するための駆動部と、前記ワイヤの余剰分を巻付けて収納する余巻ドラム部と、を備えた工事用エレベータであって、前記余巻ドラム部が前記ウエイト部とともに前記ワイヤの他方側に配置されており、前記マスト部は、上下に延設されたガイドレールを有し、前記ウエイト部は、前記ガイドレールに沿って昇降する第1フレームと、前記第1フレームに固定されたウエイトブロックと、を有し、前記余巻ドラム部は、前記ガイドレールに沿って昇降する第2フレームと、前記第2フレームに固定された余巻ドラムとを有し、前記第1フレームと前記第2フレームとは、緩衝材を介して上下に連結されていることを特徴としている。
【0007】
本発明の工事用エレベータによれば、ワイヤの余剰分を巻付けて収納する余巻ドラム部がウエイト部とともにワイヤの他方側に配置されているため、余巻ドラムの重量が搬器部に負荷されることがない。そのため余巻ドラムの重量により積載可能重量が削減されることを防止でき、搬器部の積載可能重量を増加することが可能である。
また、ワイヤの他方側にウエイト部と余巻ドラム部とを配置していても、ウエイト部と余巻ドラム部とを上下に配置することで横断面形状を小さく抑えることができるとともに、一体的に昇降させることができる。そのため、搬器部や施工対象物によりマスト部周囲の配置スペースが限られていても、ワイヤの他方側にウエイト部と余巻ドラム部とを配置させることができる。
さらに、第1フレームと第2フレームとが緩衝材を介して連結されているので、昇降時に、ガイドレールの目違い段差を乗り越える際などにウエイト部に横方向の力が作用して加振されても、緩衝材により減衰できて余巻ドラム部に伝わりにくい。そのため振動がワイヤに伝達されて横揺れが生じることを抑制できるとともに、限られた空間内に配置されたワイヤが周囲の部材や他のワイヤに接触して損傷することを防止できる。
【0008】
本発明の工事用エレベータは、前記第1フレーム及び前記第2フレームは、前記ガイドレールを挟持して転動する複数のローラを有していてもよい。
このようにすれば、複数のローラによりガイドレールを挟持するため、ウエイト部及び余巻ドラム部がガイドレールに安定して支持され、昇降時にガイドレールからの距離が変動し難い。そのため、限られた配置スペースにウエイト部及び余巻ドラム部を配置していても、昇降時に搬器部や施工対象物等の周囲の部材に接触することを防止できる。
【0009】
本発明の工事用エレベータは、前記複数のローラは、前記第1フレーム及び前記第2フレームに対する配置が調整可能に構成されていてもよい。
このようにすれば、ガイドレールに対するウエイト部及び余巻ドラム部の向きや距離を調整できるため、昇降中に搬器部や施工対象物等の周囲の部材に接触することをより確実に防止できる。
【0010】
本発明の工事用エレベータは、前記第1フレームと前記第2フレームとが横方向に相対変位可能に連結されていてもよい。
このようにすれば、第1フレームと第2フレームとが横方向に相対変位可能であるため、昇降時に余巻ドラム部に回転力が生じても、余巻ドラム部からウエイト部に回転力が伝達されない構造にできる。そのためガイドレールによりウエイト部を安定して案内することができる。
【0011】
本発明の工事用エレベータは、予め設定された総重量となる単数又は複数の前記ウエイトブロックが前記第1フレームに固定されていてもよい。
このようにすれば、ウエイトブロックを固定した第1フレームを複数連結しないため、昇降時に複数の第1フレーム間で装置位置や相対向きが変動するといった不具合が発生することが無くなり、ガイドレールによりウエイト部を安定して案内することができる。
【0012】
本発明の工事用エレベータは、前記第2フレームが前記第1フレームの下側に配置されていてもよい。
このようにすれば、余巻ドラム部がウエイト部の下側に配置されるため、余巻ドラム部及びウエイト部を最下部まで下降させた状態でクライミング作業(揚程を延伸する作業)を行う際、余巻ドラム部を地面付近に配置することができる。そのため、クライミング作業に伴うワイヤの調整作業のための足場が不要となり、作業効率を向上できる。
【0013】
本発明の工事用エレベータは、前記ウエイトブロックの横断面形状が全長にわたり連続した凹部を有し、前記ワイヤが前記凹部内に配置されていてもよい。
このようにすれば、上方に延びるワイヤをウエイトブロックの重心位置近傍に配置できるため、昇降時にウエイト部の向きや傾きなどの変動を抑え易くなり、複数のローラに偏荷重が作用したり、ガイドレールに片当たりしたりすることを抑制できる。
【0014】
上記課題を解決する本発明のカウンターウエイト装置は、マスト部が揚程を延伸可能に構成されるとともにトップシーブ部を備え、一方側に搬器部が連結されたワイヤにおける前記トップシーブ部を介した他方側に連結されるカウンターウエイト装置であって、前記ワイヤの余剰分を巻付けて収納するための余巻ドラム部と、前記余巻ドラム部に連結されたウエイト部と、を備え、前記ウエイト部は、ガイドレールに沿って昇降する第1フレームと、前記第1フレームに固定されたウエイトブロックと、を有し、前記余巻ドラム部は、前記ガイドレールに沿って昇降する第2フレームと、前記第2フレームに固定された余巻ドラムとを有し、前記第1フレームと前記第2フレームとは、緩衝材を介して上下に連結されていることを特徴としている。
本発明のカウンターウエイト装置によれば、上述のような工事用エレベータを構築することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の工事用エレベータ及びカウンターウエイト装置によれば、搬器部の積載可能重量を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る工事用エレベータの正面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る工事用エレベータの側面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る工事用エレベータの平面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る工事用エレベータのカウンターウエイト装置を装着した状態を示す側面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る工事用エレベータのカウンターウエイト装置の正面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る工事用エレベータのカウンターウエイト装置における図4のA-A断面図である。
図7】(a)~(d)は本発明の第1実施形態に係る工事用エレベータの揚程の延伸方法を説明する図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る工事用エレベータのカウンターウエイト装置を装着した状態を示す側面図である。
図9】本発明の変形例の工事用エレベータのカウンターウエイト装置を示す側面図である。
図10】本発明の他の変形例の工事用エレベータを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施形態について図を用いて詳細に説明する。図1図3は、本実施形態の工事用エレベータを概略で示す正面図、側面図及び平面図である。
【0018】
工事用エレベータ10は、マスト部11と、マスト部11の側方に昇降可能に配置された搬器部12及びウエイト部13と、マスト部11のトップシーブ部14に支持されて、一方側に搬器部12が連結されるとともにトップシーブ部14を介して他方側にウエイト部13が連結されたワイヤロープ15と、搬器部12に設けられて搬器部12を昇降駆動するための駆動部16と、ワイヤロープ15の余剰分を巻付けて収納する余巻ドラム部17と、を備えている。本実施形態では、余巻ドラム部17がウエイト部13の下に連結された状態でワイヤロープ15の他方側に連結されることでカウンターウエイト装置20が構成されている。
【0019】
マスト部11は、ピット等の基礎部に立設され、一側面に施工対象物との壁つなぎ部21が設けられるとともに、反対側面に搬器部12を装着する搬器装着部22が上下に連続して設けられている。搬器装着部22には、詳細な図示は省略しているが、搬器部12の昇降をガイドするための案内部及びラックギヤが全長にわたり設けられている。
【0020】
マスト部11の壁つなぎ部21と搬器装着部22との間に配置される側面には、ウエイト部13及び余巻ドラム部17の昇降をガイドするためのガイドレール23が上下に全長にわたり設けられている。マスト部11の上部には、トップシーブ部14が設けられ、トップシーブ部14は駆動部及びガバナ等とともに配置されている。マスト部11は施工対象物の構築が進行するに伴って、揚程が延伸可能に構成されている。マスト部11の延伸方法については後述する。
【0021】
搬器部12は、マスト部11の搬器装着部22に昇降可能に支持される昇降フレーム25と、昇降フレーム25に固定されたケージ26と、昇降フレーム25を昇降する昇降用の駆動部16と、昇降フレーム25にワイヤロープ15を連結するためのワイヤ連結部27と、を備えている。駆動部16はマスト部11のラックギヤと噛合するピニオンを回転駆動することで、搬器部12をマスト部11のラックギヤに沿って昇降されるように構成されている。駆動部16には制動部も設けられている。
【0022】
ワイヤロープ15は、搬器部12とウエイト部13とをトップシーブ部14を経由して連結していて、施工対象物が完成するまでの間にマスト部11の揚程が延伸される延伸距離に応じた長さを有している。本実施形態では、片側2本のワイヤロープ15が使用されている。
【0023】
図4図6は、本実施形態のカウンターウエイト装置20を示す正面図、側面図及び平面図である。本実施形態のカウンターウエイト装置20は、余巻ドラム部17とウエイト部13とが上下に連結されて構成されている。
【0024】
ウエイト部13は、マスト部11に設けられたガイドレール23に沿って昇降する第1フレーム31と、第1フレーム31に固定されたウエイトブロック32と、を備えている。
【0025】
第1フレーム31は、単一又は複数のウエイトブロック32を載置して固定可能なブロック固定部31aが設けられ、下端が余巻ドラム部17に連結されている。
【0026】
第1フレーム31のマスト部11側の側面には複数のガイドローラ29が上下に間隔を開けて配置されている。複数のガイドローラ29は、マスト部11のガイドレール23を挟持して転動可能に配置されるとともに、第1フレーム31に対する配置が調整可能に構成されている。第1フレーム31に対するガイドローラ29の配置を調整することで、ガイドレール23に対する第1フレーム31の各部までの距離や第1フレーム31の傾きなどが調整可能である。
【0027】
本実施形態のウエイトブロック32は、搬器部12側の重量や余巻ドラム部17の重量などに基づいて予め設定された設定重量を有する。ウエイトブロック32の水平方向の横断面形状が全長にわたり連続した凹部32aを有するように配置されている。凹部32a内にウエイトブロック32の重心が配置されるように形成されており、ワイヤロープ15が凹部32a内に配置されている。
【0028】
余巻ドラム部17は、ガイドレール23に沿って昇降する第2フレーム34と、第2フレーム34に固定されたドラム35と、ワイヤロープ15を固定して連結する尻手36と、を備えている。
【0029】
第2フレーム34は、複数のドラム35が上下に並べて配置されるドラム配置部34aと、尻手36が配置されるワイヤ連結部34bと、を備え、ドラム配置部34aが下側に配置され、ワイヤ連結部34bが上側に配置されている。第2フレーム34の正面視における横幅がウエイト部13の第1フレーム31の正面視における横幅と同一に形成されている。
【0030】
第2フレーム34のマスト部11側の側面には複数のガイドローラ29が上下に間隔を開けて配置されている。複数のガイドローラ29は、マスト部11のガイドレール23を挟持して転動可能に配置されるとともに、第2フレーム34に対する配置が調整可能に構成されている。第2フレーム34に対するガイドローラ29の配置を調整することで、ガイドレール23に対する第2フレーム34の各部までの距離や第2フレーム34の傾きなどが調整可能である。
【0031】
第2フレーム34は、第1フレーム31の下側に配置されて連結されている。連結部分は、第1フレーム31と第2フレーム34とを横方向に相対回転等の変位が可能に連結するものであり、本実施形態では第2フレーム34の上面に防振ゴムからなる緩衝材37を介在させて第1フレーム31を載置して連結している。第1フレーム31と、第2フレーム34と、が離間したりズレたりしないように、相対変位可能な状態で任意の接続手段等により連結することも可能である。
【0032】
ドラム35は、ワイヤロープ15の余剰分を巻付けて収納するもので、本実施形態では2本のワイヤロープ15がそれぞれドラム35に巻付けられている。これらのドラム35が同じ向きで上下に配置されている。
【0033】
尻手36は、ドラム35の上方となる第2フレーム34の上部に設けられている。尻手36は、一方側に搬器部12が連結されたワイヤロープ15をカウンターウエイト装置20の余巻ドラム部17に連結する吊り点である。尻手36は、連続したワイヤロープ15において、搬器部12とカウンターウエイト装置20との連結部分と、ドラム35に巻付けられた余剰分と、の間の位置で、ワイヤロープ15をカウンターウエイト装置20の余巻ドラム部17に固定するものであってもよい。
【0034】
このような構成の工事用エレベータ10は、搬器部12に設けられた駆動部16によりピニオンを回転駆動することで、マスト部11に沿って搬器部12が搬器装着部22に沿って昇降する。搬器部12に連結された2本のワイヤロープ15を介してカウンターウエイト装置20が従動して、搬器部12が施工対象物に対して昇降することで使用される。そして、施工対象物の構築が進行するに伴い、所定の段階でマスト部11の揚程を延伸する。
【0035】
図7(a)~(d)はマスト部11の揚程の延伸方法を説明する図である。
マスト部11の揚程を延伸するには、まず図7(a)に示すように、搬器部12を最上部の停止位置まで移動させて停止する。この状態で、搬器部12を固定する。これによりカウンターウエイト装置20が最下部の停止位置に配置される。この状態で、ウエイト部13のウエイトブロック32を外してベース階に仮置きする。
【0036】
図7(b)に示すように、タワークレーン等を利用して、マスト部11の上端部に継足部41を連結し、必要に応じて壁つなぎ部21を設置し、搬器装着部22の案内部及びラックギヤ、並びにカウンターウエイト装置20のガイドレール23を継足部41まで延伸させる。
【0037】
図7(c)に示すように、尻手36によるワイヤロープ15の固定を解除して、余巻ドラム部17からワイヤロープ15を繰出しつつ、蓮台42及び搬器部12を継足されたマスト部11の上部における所定位置まで上昇させる。
【0038】
図7(d)に示すように、搬器部12を上下動させながら、搬器部12とカウンターウエイト装置20との間に配置されるワイヤロープ15の長さを調整し、その後、尻手36により再びワイヤロープ15をカウンターウエイト装置20に固定する。その後、必要に応じてウエイト部13のウエイトブロック32の重量を調整してウエイト部13にウエイトブロック32を固定する。これによりマスト部11の揚程の延伸作業が終了する。
【0039】
以上のような本実施形態の工事用エレベータ10によれば、ワイヤロープ15の余剰分を巻付けて収納する余巻ドラム部17がウエイト部13とともにワイヤロープ15の他方側に配置されている。そのため、余巻ドラム部17の重量が搬器部12に負荷されることがない。その結果、余巻ドラム部17の重量により搬器部12の積載可能重量が削減されることを防止でき、搬器部12の積載可能重量を増加することが可能である。
【0040】
本実施形態の工事用エレベータ10では、マスト部11にガイドレール23を有している。また、ウエイト部13は、第1フレーム31と第1フレーム31に固定されたウエイトブロック32とを有している。また、余巻ドラム部17は、第2フレーム34と第2フレーム34に固定されたドラム35とを有している。そして、第1フレーム31と第2フレーム34とが上下に連結されて、ガイドレール23に沿って昇降可能に構成されている。そのため、ワイヤロープ15の他方側にウエイト部13と余巻ドラム部17とを配置していても、ウエイト部13と余巻ドラム部17とを上下に配置することで横断面形状を小さく抑えることができ、またウエイト部13と余巻ドラム部17とを一体的に昇降させることができる。これによりマスト部11周囲の限られた配置スペースであっても、ワイヤロープ15の他方側にウエイト部13と余巻ドラム部17とを確実に配置させることができる。
【0041】
本実施形態の工事用エレベータ10では、第1フレーム31及び第2フレーム34がガイドレール23を挟持して転動する複数のガイドローラ29を有している。そのため、ウエイト部13及び余巻ドラム部17がガイドレール23に安定して支持され、昇降時にガイドレール23からの距離が変動し難い。これにより、ウエイト部13及び余巻ドラム部17が昇降時に搬器部12や施工対象物等の周囲の部材に接触することを防止でき、安定して駆動させることができる。
【0042】
本実施形態の工事用エレベータ10では、複数のガイドローラ29が第1フレーム31及び第2フレーム34に対する配置を調整可能に構成されている。そのため、ガイドレール23に対するウエイト部13及び余巻ドラム部17の向きや距離を容易に調整でき、昇降中に搬器部12や施工対象物等の周囲の部材に接触することをより確実に防止することができる。
【0043】
本実施形態の工事用エレベータ10では、第1フレーム31と第2フレーム34とが横方向に相対変位可能に連結されている。そのため、昇降時に余巻ドラム部17に回転力が生じても、余巻ドラム部17からウエイト部13に回転力が伝達し難い。このため、ガイドレール23によりウエイト部13を安定して案内することができ、複数のガイドローラ29に偏荷重が作用したりガイドレール23に片当たりしたりすることを抑制できる。
【0044】
本実施形態の工事用エレベータ10では、第1フレーム31と第2フレーム34とが緩衝材37を介して連結されている。そのため、昇降時にガイドレール23の目違い段差を乗り越える際などにウエイト部13に横方向の力が作用して加振されても、緩衝材37により減衰でき、振動が余巻ドラム部17に伝わりにくい。これにより振動がワイヤロープ15に伝達されて横揺れが生じることを抑制でき、限られた空間内に配置されたワイヤロープ15が周囲の部材や他のワイヤロープ15に接触して損傷することを防止できる。
【0045】
本実施形態の工事用エレベータ10では、予め設定された総重量となる単数又は複数のウエイトブロック32が一つの第1フレーム31に固定されている。そのため、ウエイトブロック32を固定した第1フレーム31を複数連結しないことで、昇降時に複数の第1フレーム31,31間で装置位置や相対向きが変動することがなく、ガイドレール23によりウエイト部13を安定して案内することができる。
【0046】
本実施形態の工事用エレベータ10では、第2フレーム34が第1フレーム31の下側に配置されているため、余巻ドラム部17はウエイト部13の下側に配置される。また、余巻ドラム部17をウエイト部13側に設けることにより、クライミング作業時のワイヤ調整作業を高所で行わなければならない場合あるが、余巻ドラム部17をウエイト部13の下側に配置することにより、余巻ドラム部17及びウエイト部13を最下部まで下降させた状態でクライミング作業(揚程を延伸する作業)を行う際、余巻ドラム部17を地面に付近に配置することができる。その結果、クライミング作業に伴うワイヤの盛替え工事のための足場が不要であり、クライミング作業の度に足場を設置して作業後に毎回撤去するような手間がなく、作業効率を向上できる。
【0047】
本実施形態の工事用エレベータ10では、ウエイトブロック32の横断面形状が全長にわたり連続した凹部32aを有し、ワイヤロープ15が凹部32a内に配置されている。そのため、鉛直方向に延びるワイヤロープ15をウエイトブロック32の重心位置近傍に配置することができる。これにより、昇降時にウエイト部13の向きや傾きなどの変動を抑え易くでき、複数のガイドローラ29に偏荷重が作用したり、ガイドレール23に片当たりしたりすることを抑制できる。また、ウエイト部13の下側に余巻ドラム部17を設けた場合、ウエイト部13を下から押し上げる形となり、不安定な吊り形状となりガイドローラ29への偏荷重が生じる虞があるが、ワイヤロープ15が凹部32a内に配置されることによりガイドローラ29に偏荷重が作用することを抑制できる。
【0048】
また、本実施形態のカウンターウエイト装置20によれば、ワイヤロープ15の余剰分を巻付けて収納するための余巻ドラム部17と、余巻ドラム部17に連結されたウエイト部13と、を備えて構成されている。そのため、マスト部11が揚程を延伸可能に構成されたエレベータにおいて、ワイヤロープ15の一方側に搬器部12が連結され、トップシーブ部14を介した他方側に余巻ドラム部17が連結されることで、余巻ドラム部17の重量により積載可能重量が削減されることを防止できる工事用エレベータ10を構築することができる。
【0049】
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態の工事用エレベータの一部を示す側面図及び断面図である。
第2実施形態の工事用エレベータ100は、カウンターウエイト装置20の構成が異なる他は、第1実施形態と同様に構成されている。
【0050】
第2実施形態のカウンターウエイト装置20では、複数のウエイトブロック32がそれぞれ第1フレーム31に固定されて、ガイドレール23に沿って直列に連結されている。ウエイトブロック32及び第1フレーム31が複数連結されることで、予め設定された設定重量を実現している。なお、上下の第1フレーム31,31の連結構造、及び第1フレーム31と第2フレーム34との間の連結構造は、第1実施形態の第1フレーム31と第2フレーム34との間のフレーム連結部分と同様である。
【0051】
このような構成であっても、余巻ドラム部17の重量により搬器部12の積載可能重量が削減されることを防止して、搬器部12の積載可能重量を増加することができるなど、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0052】
なお、上記各実施形態は本発明の範囲内において適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、余巻ドラム部17がウエイト部13の下側に配置された例について説明したが、図9に示すように、余巻ドラム部17がウエイト部13の上側に配置されて、ウエイト部13が余巻ドラム部17に吊下げられた構成であってもよい。この場合、余巻ドラム部17の第2フレーム34の下側に配置されるウエイト部13の第1フレーム31は、第2フレーム34とピン等により揺動可能に連結されていてもよく、同様に複数の第1フレーム31,31間もピン等により揺動可能に連結されていてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、1本のマスト部11に搬器部12及びカウンターウエイト装置20が装着された例について説明したが、図10に示すように、複数のマスト部11を設置して搬器部12をマスト部11,11間に架設するように装着し、各マスト部11にカウンターウエイト装置20を装着することも可能である。
【0054】
また、上記実施形態では、第1フレーム31及び第2フレーム34に設けられたガイドローラ29によりガイドレール23を挟持したが、特に限定されるものではなく、他の部材によりガイドされていてもよい。
【0055】
さらに、上記実施形態では、第1フレーム31と第2フレーム34との間、及び第1フレーム31間が横方向に相対変位可能に連結されていて、間に緩衝材37を介在させたが、他の連結手段を用いることができ、強固に一体化していてもよい。
【0056】
そして、上記実施形態では、ウエイトブロック32として凹部32aを有する構成にしたが、凹部32aを設けていないウエイトブロック32の構成としてもよく、また、筒状のウエイトブロックを用いて筒状の内部にワイヤロープ15を挿通させる構成としてもよい。
【0057】
なお、2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。本実施形態に係る溶接装置は、このSDGsの17の目標のうち、例えば「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」の目標などの達成に貢献し得る。
【符号の説明】
【0058】
10 工事用エレベータ
11 マスト部
12 搬器部
13 ウエイト部
14 トップシーブ部
15 ワイヤロープ
16 駆動部
17 余巻ドラム部
20 カウンターウエイト装置
21 壁つなぎ部
22 搬器装着部
23 ガイドレール
25 昇降フレーム
26 ケージ
27 ワイヤ連結部
29 ガイドローラ
31 第1フレーム
31a ブロック固定部
32 ウエイトブロック
32a 凹部
34 第2フレーム
34a ドラム配置部
35 ドラム
36 尻手
37 緩衝材
41 継足部
42 蓮台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10