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特開2024-152451コイル部品及びコイル部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152451
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】コイル部品及びコイル部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20241018BHJP
   H01F 27/08 20060101ALI20241018BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01F37/00 S
H01F37/00 N
H01F37/00 E
H01F27/08 150
H01F41/04 A
H01F37/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066652
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】ニデックモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】中尾 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】藤本 明宏
(72)【発明者】
【氏名】西川 聡
(72)【発明者】
【氏名】林 和輝
【テーマコード(参考)】
5E050
5E062
【Fターム(参考)】
5E050BA01
5E062FF02
5E062FG12
(57)【要約】
【課題】コイルに放熱部材を良好に固定可能なコイル部品を提供する。
【解決手段】コイル部品(1)は、コイル(3)と、コイル(3)を収容するボビン(5)と、ボビン(5)に一体化され、コイル(3)の側面の一部に接着剤(B)により固定された放熱部材(4)と、を備えている。ボビン(5)は、接着剤(B)を貯留するための貯留部(51)を有している。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線部を有するコイルと、
接着剤を貯留するための貯留部を有し、前記コイルを収容するボビンと、
前記ボビンに一体化され、前記コイルの側面の少なくとも一部に前記貯留部に貯留された前記接着剤により固定された放熱部材と、
を備えていることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記放熱部材は、前記コイルの前記巻線部の軸方向に沿って延び、
前記放熱部材の前記軸方向の長さは、前記コイルの前記軸方向の長さ以上であることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記ボビンは、前記コイルと前記放熱部材との間にリブを有していることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記放熱部材は、第1貫通孔が設けられた被締結部を有し、前記第1貫通孔に挿通されたネジにより、前記被締結部が支持部材に締結されていることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記ボビンは、第2貫通孔が設けられたカラーを有し、
前記カラーは、前記ボビンにおける前記放熱部材の前記被締結部とは反対側に配置され、前記第2貫通孔に挿通されたネジにより、前記支持部材に締結されていることを特徴とする請求項4に記載のコイル部品。
【請求項6】
コイルと、前記コイルを収容するボビンと、前記コイルの側面に固定された放熱部材とを有するコイル部品の製造方法であって、
前記ボビンの一側面に放熱部材をインサート成形するインサート工程と、
前記ボビンの一側面を底面にした状態で、前記ボビンの貯留部に接着剤を貯留する貯留工程と、
前記貯留部に貯留された前記接着剤により、前記放熱部材がインサート成形された前記ボビンの一側面にコイルを固定する固定工程と、
を含むことを特徴とするコイル部品の製造方法。
【請求項7】
前記ボビンに固定された前記コイルを、支持部材に配置する配置工程と、
前記ボビンに設けられたカラー、及び前記放熱部材に設けられた被締結部を、前記支持部材にネジにより締結する締結工程と、
を更に含むことを特徴とする請求項6に記載のコイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイル部品、及びコイル部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイル部品においては、発熱量が大きくなるため、放熱性能を高くする必要がある。例えば、特許文献1のリアクトルでは、リアクトルの設置面とは反対側に位置する取り付け面に放熱部材を配設することにより、放熱性能を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-147041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のリアクトルでは、コイルの取り付け面に、接着剤により放熱部材を固定している。このため、接着剤が取り付け面の周囲に流れることで、接着にムラが生じてコイルに放熱部材を良好に固定できないおそれがあった。
【0005】
本開示は、コイルに放熱部材を良好に固定可能なコイル部品、及びコイル部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の態様1に係るコイル部品は、巻線部を有するコイルと、接着剤を貯留するための貯留部を有し、前記コイルを収容するボビンと、前記ボビンに一体化され、前記コイルの側面の少なくとも一部に前記貯留部に貯留された前記接着剤により固定された放熱部材と、を備えている。
【0007】
上記構成によれば、接着剤は貯留部に貯留されており、接着剤によって放熱部材がコイルの側面の少なくとも一部に固定されている。このため、接着剤が貯留部の外側へ流れ出ることがないので、接着にムラが生じることがなく、コイルに放熱部材を良好に固定することができる。
【0008】
本開示の態様2に係るコイル部品では、前記放熱部材は、前記コイルの前記巻線部の軸方向に沿って延び、前記放熱部材の前記軸方向の長さは、前記コイルの前記軸方向の長さ以上である。
【0009】
上記構成によれば、放熱部材の軸方向の長さが、コイルの軸方向の長さ以上であるので、コイルの冷却効果を上げることができる。
【0010】
本開示の態様3に係るコイル部品では、前記ボビンは、前記コイルと前記放熱部材との間にリブを有している。
【0011】
上記構成によれば、コイルと放熱部材との間にリブが配置されることにより、コイルと放熱部材との絶縁距離を一定に保つことができ、放熱部材がコイル部品の電気的性能へ悪影響を与えることを防ぐことができる。
【0012】
本開示の態様4に係るコイル部品では、前記放熱部材は、第1貫通孔が設けられた被締結部を有し、前記第1貫通孔に挿通されたネジにより、前記被締結部が支持部材に締結されている。
【0013】
上記構成によれば、放熱部材の被締結部を支持部材にネジ締結することにより、コイル部品を支持部材に確実に固定することができる。
【0014】
本開示の態様5に係るコイル部品では、前記ボビンは、第2貫通孔が設けられたカラーを有している。前記カラーは、前記ボビンにおける前記放熱部材の前記被締結部とは反対側に配置され、前記第2貫通孔に挿通されたネジにより、前記支持部材に締結されている。
【0015】
上記構成によれば、放熱部材の被締結部とは反対側に配置されたボビンのカラーを、支持部材にネジ締結することにより、コイル部品をより確実に支持部材に固定できる。
【0016】
本開示の態様6に係るコイル部品の製造方法は、コイルと、前記コイルを収容するボビンと、前記コイルの側面に固定された放熱部材とを有するコイル部品の製造方法であって、前記ボビンの一側面に放熱部材をインサート成形するインサート工程と、前記ボビンの一側面を底面にした状態で、前記ボビンの貯留部に接着剤を貯留する貯留工程と、前記貯留部に貯留された前記接着剤により、前記放熱部材がインサート成形された前記ボビンの一側面にコイルを固定する固定工程と、を含む。
【0017】
上記構成によれば、固定工程にて、貯留部に貯留された接着剤により、放熱部材がインサート成形されたボビンの一側面にコイルを固定する。このため、接着剤が貯留部の外側へ流れ出ることがないので、接着にムラが生じることがなく、コイルに放熱部材を良好に固定することができる。
【0018】
本開示の態様7に係るコイル部品の製造方法は、前記ボビンに固定された前記コイルを、支持部材に配置する配置工程と、前記ボビンに設けられたカラー、及び前記放熱部材に設けられた被締結部を、前記支持部材にネジにより締結する締結工程と、を更に含む。
【0019】
上記構成によれば、締結工程にて、ボビンのカラー及び放熱部材の被締結部を、支持部材にネジ締結することにより、コイル部品をより確実に支持部材に固定できる。
【発明の効果】
【0020】
本開示の一態様によれば、コイルに放熱部材を良好に固定可能なコイル部品、及びコイル部品の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の実施形態に係る平滑コイルの全体構成を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る平滑コイルの構成を示す分解斜視図である。
図3】実施形態に係る平滑コイルの製造方法の流れを示すフローチャートである。
図4】実施形態に係るボビンに放熱部材がインサート成形された状態を示す斜視図である。
図5】実施形態に係るボビンの貯留部に接着剤が貯留された様子を示す斜視図である。
図6】実施形態に係るコイルがボビンに固定される様子を示す模式的な断面図である。
図7】実施形態に係るコイルがボビンに固定された状態を示す斜視図である。
図8】実施形態に係る平滑コイルが支持部材に配置された状態を示す斜視図である。
図9】実施形態に係る平滑コイルの放熱経路を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施形態について、図1図9を参照して説明する。図1は、平滑コイル1の全体構成を示す斜視図である。図2は、平滑コイル1の構成を示す分解斜視図である。以下、説明の便宜上、図1及び図2の矢印に示されるように、平滑コイル1の上下方向、左右方向、及び前後方向を定義する。
【0023】
図1及び図2に示すように、平滑コイル1は、カバー2と、コイル3と、放熱部材4と、ボビン5とを備えている。平滑コイル1は、コイル部品の一例である。平滑コイル1は、車両等に搭載されるDC-DCコンバータ(図示省略)に配置される。具体的には、平滑コイル1は、DC-DCコンバータに設けられた支持部材7に、ネジ61、ネジ62、ネジ63によって締結されることにより固定されている。支持部材7は、アルミニウム、亜鉛等のダイカストにより形成されている。
【0024】
カバー2は、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂等の絶縁性を有する樹脂から形成されている。カバー2は、円筒状の筒部21と、第1鍔部22と、第2鍔部23とを有している。筒部21は、コイル3の巻線部31の内側に挿入される。
【0025】
第1鍔部22は、巻線部31の後側上部を覆っている。第2鍔部23は、巻線部31の左側上部を覆っている。第1鍔部22の左側には、孔22aが設けられている。孔22aには、ボビン5の突出部56が挿通される。第1鍔部22の右側には、孔22bが設けられている。孔22bには、ボビン5の突出部57が挿通される。
【0026】
コイル3は、巻線部31と、入力端子32と、出力端子33とを有している。巻線部31は、銅等の導電性部材からなる電線が、螺旋状に巻かれたものである。入力端子32は、巻線部31の一端部から引き出され、下方に屈曲してから前方へ延出している。出力端子33は、巻線部31の他端部から水平に引き出され、ボビン5から右方へ延出している。なお、入力端子32及び出力端子33の延出方向は、適宜変更可能である。
【0027】
放熱部材4は、ボビン5にインサート成形され、ボビン5と一体化されている。放熱部材4は、本体部41と、第1被締結部42と、第2被締結部43と、底部44とを有している。放熱部材4の上下方向の長さL1は、コイル3の上下方向の長さ、即ち巻線部31の軸方向の長さL2以上であって、ボビン5の上下方向の長さ以下であることが好ましい(図9参照)。なお、放熱部材4の上下方向は、巻線部31の軸方向に相当する。また、第1被締結部42及び第2被締結部43は、特許請求の範囲の「被締結部」に相当する。
【0028】
本体部41は、コイル3の巻線部31の後側の側面に沿った形状を有している。本体部41は、第1側面411と、第2側面412と、第3側面413とを有している。本体部41は、コイル3の巻線部31の軸方向に沿って延びている。
【0029】
第1側面411は、ボビン5の後面50に略平行に配置される。第2側面412は、第1側面411から左側前方に屈曲している。第3側面413は、第1側面411から右側前方に屈曲している。
【0030】
第1被締結部42は、本体部41の第2側面412の下部から左側後方へ延出している。第1被締結部42には、貫通孔42aが設けられている。貫通孔42aには、ネジ61が挿通される。
【0031】
第2被締結部43は、本体部41の第3側面413の下部から右側後方へ延出している。第2被締結部43には、貫通孔43aが設けられている。貫通孔43aには、ネジ62が挿通される。貫通孔42a及び貫通孔43aは、特許請求の範囲の「第1貫通孔」に相当する。底部44は、本体部41の第1側面411の下部から前方へ延出している。底部44は、ボビン5の下面と一体化されている。なお、第1被締結部42及び第2被締結部43は、いずれか一方だけであってもよい。
【0032】
ボビン5は、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の絶縁性及び高耐熱性を有する合成樹脂により形成されている。
【0033】
ボビン5は、コイル3を収容するための部材である。ボビン5は、コイル3の巻線部31の外周を囲むように構成されている。具体的には、ボビン5は、巻線部31の左側面、後側面、右側面、及び下面を覆うように構成されている。ボビン5の上側の一部は、カバー2の第1鍔部22及び第2鍔部23により覆われている。ボビン5の前側は開放されており、コイル3を出し入れが可能になっている。
【0034】
ボビン5は、貯留部51と、カラー54と、孔部55とを有している。貯留部51は、後述する貯留工程S2及び固定工程S3(図3参照)において、ボビン5の後面50を下側にした状態で、液状の接着剤Bを貯留するための部位である。接着剤Bとしては、例えばシリコン系の接着剤、又はアクリル系の接着剤を用いることができる。
【0035】
貯留部51には、リブ52と、リブ53とが設けられている。リブ52及びリブ53は、コイル3と放熱部材4との間の絶縁距離を保つための部材である。図6に示すように、リブ52は、ボビン5の上側壁部510から下方へ突出している。リブ53は、ボビン5の下側壁部520から上方へ突出している。
【0036】
リブ52及びリブ53の前後方向の長さは、同じ程度の長さになっている。これにより、ボビン5内にコイル3の巻線部31を安定して配置することが可能となっている。
【0037】
ボビン5は、後面50から見て左側前部に、カラー54を有している。即ち、カラー54は、ボビン5において、放熱部材4の第1被締結部42及び第2被締結部43の配置位置とは、反対側に配置されている。カラー54には、貫通孔54aが設けられている。貫通孔54aには、ネジ63が挿通される。ボビン5は、ネジ63により支持部材7に締結されている。なお、貫通孔54aは、特許請求の範囲の「第2貫通孔」に相当する。
【0038】
ボビン5は、その下面に孔部55を有している。孔部55には、カバー2の筒部21が挿通される。なお、孔部55、巻線部31、及び筒部21は、それぞれの中心軸が同軸になるように配置される。
【0039】
ボビン5の上側壁部510の左側には、突出部56が突設されている。突出部56は、カバー2の孔22aに挿通される。ボビン5の上側壁部510の右側には、突出部57が突設されている。突出部57は、カバー2の孔22bに挿通される。これにより、ボビン5とカバー2との位置決めがなされる。
【0040】
[平滑コイルの製造方法]
次に、平滑コイル1の製造方法について、図3図8も参照して説明する。図3は、平滑コイル1の製造方法の流れを示すフローチャートである。図3に示すように、本実施形態の平滑コイル1の製造方法では、インサート工程(S1)と、貯留工程(S2)と、固定工程(S3)と、配置工程(S4)と、締結工程(S5)とが順に行われる。
【0041】
まず、インサート工程S1では、ボビン5の後面50に、放熱部材4をインサート成形する。ここで、図4は、ボビン5に放熱部材4がインサート成形された状態を示す斜視図である。図4に示すように、放熱部材4は、ボビン5と一体化されている。また、放熱部材4の本体部41の第1側面411よりも前方側に、リブ52及びリブ53が配置されている。なお、ボビン5の後面50は、特許請求の範囲の「ボビンの一側面」に相当する。
【0042】
続いて、貯留工程S2では、放熱部材4がインサート成形されたボビン5の貯留部51を底面にした状態にする。そして、貯留部51に、液状の接着剤Bを貯留させる。ここで、図5は、ボビン5の貯留部51内に接着剤Bが貯留された様子を示す斜視図である。図6は、コイル3がボビン5に固定される様子を示す模式的な断面図である。図5及び図6に示すように、貯留部51が容器状に形成され、貯留部51内に接着剤Bを貯めることが可能な構成となっているので、貯留部51の外側へ接着剤Bが流れ出ることが防止できるようになっている。
【0043】
次に、固定工程S3では、ボビン5の貯留部51を下側にした状態で、ボビン5の後面50側へコイル3を押し込む。図6に示すように、貯留部51に貯留された接着剤Bが硬化することによって、ボビン5にコイル3が固定される。
【0044】
このとき、コイル3の巻線部31は、リブ52及びリブ53に当接した状態となっている。このため、コイル3は、接着剤B、リブ52及びリブ53を介して、放熱部材4の本体部41に固定された状態になる。
【0045】
ここで、図7は、コイル3がボビン5に固定された状態を示す斜視図である。図7に示すように、コイル3の巻線部31がボビン5内に収容された状態で、コイル3がボビン5に固定される。なお、入力端子32及び出力端子33は、ボビン5から突出した状態になっている。
【0046】
次に、配置工程S4において、ボビン5に固定されたコイル3を、支持部材7に配置する。ここで、図8は、平滑コイル1が支持部材7に配置された状態を示す斜視図である。図8に示すように、平滑コイル1は、DC-DCコンバータに設けられた支持部材7の所定位置に配置される。
【0047】
ここで、支持部材7は、矩形板状の部材であり、台座71と、台座72と、台座73とを有している。各台座71,72,73は、円筒状の形状を有している。台座71は、支持部材7の左側後部の上面に配置され、ネジ孔71aを有している。台座72は、支持部材7の右側後部の上面に配置され、ネジ孔72aを有している。台座73は、支持部材7の左側前部の上面に配置され、ネジ孔73aを有している。
【0048】
次に、締結工程S5において、第1被締結部42の貫通孔42a及び台座71のネジ孔71aにネジ61を挿通し、第2被締結部43の貫通孔43a、及び台座72のネジ孔72aにネジ62を挿通する。また、カラー54の貫通孔54a、及び台座73のネジ孔73aにネジ63を挿通する。そして、平滑コイル1を、各ネジ61、ネジ62、及びネジ63により、支持部材7に固定する。これにより、締結工程S5が完了する。このようにして、平滑コイル1の製造が行われる。
【0049】
[放熱部材の放熱性能]
次に、平滑コイル1の放熱性能について、図9を参照して説明する。図9は、平滑コイル1の放熱経路Rを示す模式的な断面図である。
【0050】
平滑コイル1の作動に伴ってコイル3で発生した熱は、図9の放熱経路Rに示されるように、コイル3の巻線部31、接着剤B又はリブ52,53、放熱部材4の本体部41、第1被締結部42又は第2被締結部43、及び支持部材7の順に伝達される。このように、コイル3で発生した熱が、放熱部材4を介して支持部材7へ放熱される。これにより、コイル3の巻線部31を冷却することが可能となっている。
【0051】
特に、図9に示すように、放熱部材4の上下方向の長さL1が、コイル3の巻線部31の軸方向の長さL2以上となっているので、巻線部31を構成する複数のターンの全てのターンを冷却できることから、放熱部材4によるコイル3の冷却性能を十分に発揮することができる。
【0052】
平滑コイル1の冷却性能が十分である場合、コイル3の放熱面積を小さくすることが可能である。即ち、巻線部31を水平に切断した断面積を小さくすることが可能である。これにより、平滑コイル1の小型化を図ることができる。
【0053】
なお、第1被締結部42の貫通孔42a、及び第2被締結部43の貫通孔43aのそれぞれの大きさは、固定強度を確保可能な最小限の大きさに設定されていることが好ましい。貫通孔42a及び貫通孔43aの大きさを極力小さくすることで、第1被締結部42及び第2被締結部43の放熱面積を大きくすることができ、コイル3の放熱性をより高めることができる。
【0054】
以上説明した本実施形態の平滑コイル1によれば、固定工程(S3)にて、貯留部51に貯留された接着剤Bによって、放熱部材4がインサート成形されたボビン5にコイル3を固定する。このため、接着剤Bが貯留部51の外側へ流れ出ることがないので、接着にムラが生じることがなく、コイル3をボビン5に良好に固定できる。これにより、コイル3に放熱部材4を良好に固定できる。
【0055】
また、貯留部51に貯留する接着剤Bの厚さ、即ち接着剤Bの量を最小限にしながら、コイル3をボビン5に固定できる。更に、安価な接着剤Bによって、コイル3をボビン5に固定することが可能である。
【0056】
また、コイル3と放熱部材4との間に、リブ52及びリブ53が配置されているので、コイル3と放熱部材4との絶縁距離を一定に保つことができ、放熱部材4が平滑コイル1の電気的性能へ悪影響を与えることを防ぐことができる。
【0057】
また、締結工程(S5)にて、放熱部材4の第1被締結部42及び第2被締結部43を、ネジ61及びネジ62により支持部材7に締結することで、放熱部材4を支持部材7に確実に固定できる。更に、ボビン5における第1被締結部42及び第2被締結部43とは反対側に配置されたカラー54を、ネジ63により支持部材7に締結することで、平滑コイル1をより確実にDC-DCコンバータに固定できる。
【0058】
このように、カラー54の貫通孔54aと、第1被締結部42の貫通孔42aと、第2被締結部43の貫通孔43aとの3箇所にて、平滑コイル1とDC-DCコンバータの支持部材7とをネジ締結することで、固定強度を十分確保できるので、複数個所にカラーを設ける必要がない。従って、複数のカラーを設ける場合よりも、ネジ締結のスペースを小さくできるので、平滑コイル1を小型にすることができる。
【0059】
〔その他の実施形態〕
上記した実施形態では、コイル部品の一例として、平滑コイル1に本開示を適用したが、これに限らず、他にもトランス等に本開示を適用してもよい。また、平滑コイル1は、DC-DCコンバータに配置されるものとしたが、これに限らず、他にもインバータ等に配置されてもよい。
【0060】
また、上記した実施形態では、放熱部材4は、コイル3の後方の側面を覆うように配置されるものとしたが、これに限定されない。放熱部材4は、例えば、コイル3の半周、即ち、コイル3の左側、後側、及び右側の側面を覆うように配置されていてもよい。また、放熱部材4の上下方向の長さL1は、コイル3の巻線部31の軸方向の長さL2以上であるものとしたが、これに限定されない。放熱部材4の上下方向の長さL1は、コイル3を適切に放熱できれば、巻線部31の軸方向の長さL2未満であってもよい。
【0061】
また、上記した実施形態では、貯留部51に2つのリブ52,53が設けられているものとしたが、これに限らず、リブの数は1つでもよいし、3つ以上であってもよい。
【0062】
本開示は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1 平滑コイル
3 コイル
4 放熱部材
5 ボビン
7 支持部材
42 第1被締結部
42a 貫通孔
43 第2被締結部
43a 貫通孔
51 貯留部
52、53 リブ
54 カラー
54a 貫通孔
S1 インサート工程
S2 貯留工程
S3 固定工程
S4 配置工程
S5 締結工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9