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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152455
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】自動車用シール材
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/36 20160101AFI20241018BHJP
   B60J 10/84 20160101ALI20241018BHJP
   B60J 10/86 20160101ALI20241018BHJP
【FI】
B60J10/36
B60J10/84
B60J10/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066662
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森岡 雅弘
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA12
3D201CA03
3D201CA23
3D201DA16
3D201DA23
3D201FA04
(57)【要約】
【課題】クリップの取付不良が起こらないようにする。
【解決手段】シール材本体10は、クリップ20の取付孔15cを有する基底部15と、基底部15の幅方向一端部から延びるシール部16と、シール部16の先端部から基端部まで延びる凸部17とを有している。凸部17が形成された凸部有り部分Aと、凸部17が形成されていない凸部無し部分Bとの境界が基底部15の長手方向中間部に位置付けられている。取付孔15cへの取り付け時におけるクリップ20の頭部21の端部が、取付孔15cの中心線に沿って見たときに凸部有り部分Aと重複するように配置可能とされている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に配設されるドアが閉状態にあるときに当該ドアと車体との間をシールするシール材本体と、該シール材本体を前記ドア及び車体の一方の部材に取り付けるためのクリップとを備えた自動車用シール材であって、
前記シール材本体は、
前記一方の部材に沿って延びるように形成され、前記クリップの取付孔を有する基底部と、
前記基底部の幅方向一端部から当該基底部に対して離れる方向に延びるシール部と、
前記シール部の先端部から当該シール部の基端部まで延びるとともに当該シール部との間に中空部を形成する凸部と、を有し、
前記凸部は前記基底部の長手方向の一部にのみ形成され、前記凸部が形成された凸部有り部分と、当該凸部有り部分よりも前記基底部の長手方向一方側において前記凸部が形成されていない凸部無し部分との境界が前記基底部の長手方向中間部に位置付けられ、
前記クリップは、
前記取付孔に取り付けられた状態で前記基底部における前記シール部側に位置する面に沿って延びるように形成された抜け止め用の頭部と、
前記頭部から突出し、前記一方の部材に形成された係止孔に差し込まれる差込部と、を有し、
前記取付孔への取り付け時における前記クリップの前記頭部の端部が、前記取付孔の中心線に沿って見たときに前記凸部有り部分と重複するように配置可能とされていることを特徴とする自動車用シール材。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用シール材において、
前記境界は、前記取付孔の中心線よりも前記基底部の長手方向一方に5mm以上離間していることを特徴とする自動車用シール材。
【請求項3】
請求項2に記載の自動車用シール材において、
前記境界は、前記取付孔よりも前記基底部の長手方向一方に離間していることを特徴とする自動車用シール材。
【請求項4】
請求項3に記載の自動車用シール材において、
前記凸部は、前記取付孔の中心線に沿って見たときに前記取付孔の全体と重複するように形成されていることを特徴とする自動車用シール材。
【請求項5】
請求項2に記載の自動車用シール材において、
前記クリップの前記頭部は、前記基底部の長手方向に長い形状を有しており、
前記取付孔への取り付け時における前記クリップの前記頭部の長手方向の端部が、前記取付孔の中心線に沿って見たときに前記凸部有り部分と重複するように配置可能とされていることを特徴とする自動車用シール材。
【請求項6】
請求項1に記載の自動車用シール材において、
前記シール材本体は、押出成形された押出成形部と、開閉可能な金型によって成形された型成形部とが接続されてなり、
前記型成形部における前記基底部の長手方向中間部に、前記取付孔及び前記境界が位置していることを特徴とする自動車用シール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車に配設されるドアと車体との間をシールする自動車用シール材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、自動車にはドアと車体との間をシールするためのシール材が設けられている。特許文献1のシール材は、ウエザーストリップであり、車体のドアシル部に対してクリップによって取り付けられるようになっている。ドアを閉じると、このウエザーストリップがドアと車体との間で弾性変形してシール機能を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-1553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば図6に示すような断面形状を有する自動車用シール材を自動車のドアに対してクリップ20を用いて取り付けたい場合がある。すなわち、シール材は、ドアの取付面に沿って延びる基底部15と、基底部15の幅方向一端部から延びるシール部16と、シール部16の先端部から当該シール部16の基端部まで延びるとともにシール部16との間に中空部Sを形成する凸部17とを有している。基底部15には、クリップ20の取付孔15cが形成されている。クリップ20は取付孔15cに差し込まれた状態でシール材に保持され、ドアにシール材を取り付ける際には、クリップ20をドアに形成された係止孔(図示せず)に押し込んで係止させることが可能である。
【0005】
図9のFIG.9A~9Cは、クリップ20をシール材に保持する際の工程を順に示している。FIG.9Aでは、クリップ20の頭部21を長手方向一方側から取付孔15cに差し込み、その後、FIG.9Bでは、型成形部(符号12で示す)を弾性変形させて取付孔15cを図の左右方向に拡張し、クリップ20の頭部21の長手方向他方側を取付孔15cに差し込む。このとき、作業者がシール材を握ることにより、図5に実線で示すように凸部17が基底部15に接近した状態になっていることがある。この状態で、凸部17の端部が取付孔15cの直上方に位置していると、FIG.9Cに示すように、クリップ20の頭部21の長手方向他方側が中空部Sに入ることがあり、クリップ20の取付不良となり得る。
【0006】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、クリップの取付不良が起こらないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、自動車に配設されるドアが閉状態にあるときに当該ドアと車体との間をシールするシール材本体と、該シール材本体を前記ドア及び車体の一方の部材に取り付けるためのクリップとを備えた自動車用シール材を前提とすることができる。前記シール材本体は、前記一方の部材に沿って延びるように形成され、前記クリップの取付孔を有する基底部と、前記基底部の幅方向一端部から当該基底部に対して離れる方向に延びるシール部と、前記シール部の先端部から当該シール部の基端部まで延びるとともに当該シール部との間に中空部を形成する凸部と、を有している。前記凸部は前記基底部の長手方向の一部にのみ形成され、前記凸部が形成された凸部有り部分と、当該凸部有り部分よりも前記基底部の長手方向一方側において前記凸部が形成されていない凸部無し部分との境界が前記基底部の長手方向中間部に位置付けられている。前記クリップは、前記取付孔に取り付けられた状態で前記基底部における前記シール部側に位置する面に沿って延びるように形成された抜け止め用の頭部と、前記頭部から突出し、前記一方の部材に形成された係止孔に差し込まれる差込部と、を有している。前記取付孔への取り付け時における前記クリップの前記頭部の端部が、前記取付孔の中心線に沿って見たときに前記凸部有り部分と重複するように配置可能とされている。
【0008】
すなわち、クリップをシール材本体に取り付ける際には、クリップの頭部を基底部の取付孔に差し込むことになる。クリップの頭部は、取付孔からの抜け止めとなる部分であることから取付孔よりも大きく形成されているので、例えば頭部の長手方向一方側を取付孔に差し込んだ後、長手方向他方側を取付孔に差し込むようにする場合があり、従って、クリップを基底部の長手方向に変位させながら基底部に取り付けることがある。この取付時に、クリップの頭部の端部がシール材本体の凸部有り部分と重複するように配置されるので、中空部へ入り難くなり、これにより、クリップの取付不良が防止される。
【0009】
前記境界は、前記取付孔の中心線よりも前記基底部の長手方向一方に5mm以上離間していてもよい。また、前記境界は、前記取付孔よりも前記基底部の長手方向一方に離間していてもよい。さらに、前記凸部は、前記取付孔の中心線に沿って見たときに前記取付孔の全体と重複するように形成されていてもよい。これにより、取付時にクリップの頭部の端部が中空部へより一層入り難くなる。
【0010】
前記クリップの前記頭部は、前記基底部の長手方向に長い形状を有していてもよく、これにより、頭部の長手方向寸法が取付孔の径よりも長くなり、取付孔からの抜けを抑制できる。この場合、前記取付孔への取り付け時における前記クリップの前記頭部の長手方向の端部が、前記取付孔の中心線に沿って見たときに前記凸部有り部分と重複するように配置可能とされていてもよい。
【0011】
前記シール材本体は、押出成形された押出成形部と、開閉可能な金型によって成形された型成形部とが接続されることによって構成されていてもよい。この場合、前記型成形部における前記基底部の長手方向中間部に前記取付孔及び前記境界が位置するように、当該型成形部を成形することができる。すなわち、押出成形に比べて形状設定の自由度が高い型成形部に取付孔を位置付けることで、取付孔の形成が容易になる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、クリップの頭部の端部がシール材本体の中空部に入らないように、当該クリップをシール材本体の基底部に取り付けることができるので、クリップのシール材本体への取付不良を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態に係る自動車用シール材が取り付けられたドアを車室内側から見た側面図である。
図2図2は、自動車用シール材の側面図である。
図3図3は、自動車用シール材の一部を示す斜視図である。
図4図4は、図3におけるIV-IV線断面図である。
図5図5は、シール部が撓み変形した状態を示す図4相当図である。
図6図6は、図3におけるVI-VI線断面図である。
図7図7は、図3におけるVII-VII線断面図である。
図8】FIG.8Aはクリップの頭部の前端部を取付孔に差し込んだ状態を示し、FIG.8Bはクリップの頭部の後端部を取付孔に差し込んだ状態を示し、FIG.8Cはクリップの取付が完了した状態を示している。
図9】本発明が適用される前のクリップの取付要領を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車用シール材1が取り付けられたドア100を車室内側から見た側面図である。ドア100は、図示しないが、自動車を構成している車体の側部に配設され、車体に形成された乗降用の開口部を閉塞する部材である。この実施形態では、自動車の右側(運転席側)に配設されるドア100の場合について説明するが、ドア100は、左側(助手席側)のドアであってもよいし、後席用のドアであってもよく、本発明が適用されるドアは特に限定されるものではない。尚、本実施形態の説明では、車両前側を単に前といい、車両後側を単に後というものとする。
【0016】
ドア100は、ドア本体101と、ウインドフレーム102とを備えている。ドア本体101は、ドア100の略下半部を構成する部分である。ウインドフレーム102は、ドア本体101の上部から上方へ突出するように設けられており、ドア100の略上半部を構成する部分である。ウインドフレーム102によってウインドガラス(図示せず)の周縁部が保持されるようになっている。
【0017】
ドア本体101の車室内側の下部に自動車用シール材1が取り付けられている。自動車用シール材1は、車両前後方向に長く延びるように形成されたシール材本体10と、シール材本体10をドア100に取り付けるためのクリップ20(図3図6図7等に示す)とを備えている。シール材本体10は、ドア100が閉状態にあるときに当該ドア100と車体との間をシールするための部材である。この実施形態では、シール材本体10がクリップ20によってドア100の下部に取り付けられている例について説明するが、これに限らず、シール材本体10がクリップ20によって車体に取り付けられていてもよい。また、クリップ20の数は1つであってもよいし、複数であってよい。クリップ20が複数ある場合には、複数のクリップ20をシール材本体10の長手方向に互いに間隔をあけて配置すればよい。
【0018】
シール材本体10の長手方向はドア100の前後方向と一致している。シール材本体10の前側部分は、前端部に近づけば近づくほど上に位置するように側面視で湾曲した前側湾曲部12で構成されている。この前側湾曲部12は、ドア100の前後方向中央部よりも前方に配置される。シール材本体10の後側部分は、後端部に近づけば近づくほど上に位置するように側面視で湾曲した後側湾曲部13で構成されている。この後側湾曲部13は、ドア100の前後方向中央部よりも後方に配置される。シール材本体10の前側湾曲部12と後側湾曲部13との間の部分は、中間部14とされている。中間部14は、前後方向に直線状に延びている。中間部14の前端部に前側湾曲部12の後端部が接続され、また、中間部14の後端部に後側湾曲部13の前端部が接続されている。
【0019】
中間部14は、ゴムや熱可塑性エラストマー等のような弾性を有する材料を口金(図示せず)から押し出して所望の断面形状を得る押出成形法によって成形された押出成形部である。このため、中間部14の断面形状は、前端部から後端部まで同一となっている。中間部14を得る際には、当該中間部14よりも長い押出成形材を用意しておき、その押出成形材を所定の長さに切断することで中間部14を得ることができる。
【0020】
一方、前側湾曲部12及び後側湾曲部13は、それぞれ、開閉可能な金型(図示せず)によって成形された型成形部である。例えば上型及び下型を用意し、上型及び下型を型閉じしてから、ゴムや熱可塑性エラストマー等のような弾性を有する材料をキャビティ内に射出して成形することにより、前側湾曲部12及び後側湾曲部13をそれぞれ得ることができる。中間部14と前側湾曲部12と接続する際には、中間部14を先に用意し、この中間部14の前端部を上型及び下型内で保持してからキャビティ内に弾性材料を射出すると、前側湾曲部12の成形と同時に、中間部14の前端部と前側湾曲部12とが接続されて一体化する。後側湾曲部13も同様に中間部14と接続することができる。図2における鎖線L1は、前側湾曲部12と中間部14との接続部を示しており、また、図2における鎖線L2は、後側湾曲部13と中間部14との接続部を示している。要するに、鎖線L1、L2は、型成形部と押出成形部との境界を示す線である。
【0021】
図4に示すように、シール材本体10は、基底部15と、シール部16と、凸部17とを有しており、基底部15、シール部16及び凸部17は一体成形されている。基底部15は、ドア100の車室内側の面に沿って前後方向に延びるように形成されており、前側湾曲部12、中間部14、後側湾曲部13まで連続している。基底部15がドア100に対してクリップ20によって取付可能な部分である。基底部15の幅方向一端部には、ドア100側へ向けて突出するとともに、当該基底部15の長手方向に延びる第1突出部15aが形成されている。基底部15の幅方向他端部には、ドア100側へ向けて突出するとともに、当該基底部15の長手方向に延びる第2突出部15bが形成されている。
【0022】
シール部16は、基底部15の幅方向一端部から当該基底部15に対して離れる方向に延びていて、基底部15の長手方向に連続している。シール部16の先端部に近づけば近づくほど基底部15からの離間距離が長くなっている。また、基底部15の幅方向他端部には、第2突出部15bと反対方向に突出するとともに、当該基底部15の長手方向に延びる側板部18が形成されている。側板部18の先端側部分は、基端側部分に比べてシール部16から離れるように屈曲している。
【0023】
凸部17は、シール部16の先端部から当該シール部16の基端部まで延びるとともに当該シール部16との間に中空部Sを形成する部分である。図5は、シール部16が基底部15に接近する方向に撓み変形した状態にあるときのシール材本体10の断面形状を示している。例えば後述するように作業者がクリップ20を基底部15に取り付ける際に中間部14を握って保持すると、図5のようにシール部16が弾性変形する。
【0024】
図5に示す状態では、シール部16が基底部15に接近する方向に移動するとともに、凸部17が側板部18の先端側部分及び基底部15に接触する。これにより、凸部17の形状が図4に示す形状(作業者が中間部14を握っていないときの形状)とは異なる形状になり、凸部17が後述するクリップ20の頭部21に接触する。
【0025】
図6は、前側湾曲部12の後側部分の断面である。この図6に示すようにクリップ20が配設されており、基底部15は、クリップ20の取付孔15cを有している。取付孔15cは、型成形部である前側湾曲部12の基底部15に位置しており、基底部15を厚み方向に貫通する貫通孔で構成されている。取付孔15cの形状は特に限定されるものではないが、この実施形態では円形としている。取付孔15cの中心線Cは、基底部15の厚み方向に延びている。
【0026】
図3に示すように、凸部17は基底部15の長手方向の一部にのみ形成されている。具体的には、図7に示すように、シール材本体10は、凸部17が形成された凸部有り部分Aと、凸部有り部分Aよりも基底部15の前側(長手方向一方側)において凸部17が形成されていない凸部無し部分Bとに分けることができ、凸部有り部分A及び凸部無し部分Bでシール材本体10が構成されている。凸部有り部分Aと凸部無し部分Bとの境界は、型成形部である前側湾曲部12の基底部15の前後方向中間部(長手方向中間部)に位置付けられており、鎖線L3で示すことができる。鎖線L3を凸部有り部分Aと凸部無し部分Bとの境界線と呼ぶことにする。この境界線L3上に凸部17の前端部(長手方向一端部)が位置することになる。
【0027】
図6にも示すように、クリップ20は、抜け止め用の頭部21と、差込部22とを有している。頭部21は、取付孔15cに取り付けられた状態で基底部15におけるシール部16側に位置する面に沿って延びるように形成されている。この頭部21は、基底部15の長手方向に長い形状を有しており、従って前後方向の寸法が幅方向の寸法に比べて長くなっている。
【0028】
差込部22は、頭部21から突出し、ドア100に形成された係止孔(図示せず)に差し込まれた状態で当該係止孔の周縁部に係止する部分である。クリップ20の中心線は、差込部22の突出方向に延びている。クリップ20には、基底部15におけるドア100側の面に係合する傘部23も設けられている。傘部23がドア100に接触することで、クリップ20とドア100との間がシールされる。
【0029】
凸部有り部分Aと凸部無し部分Bとの境界(境界線L3)は、取付孔15cの中心線Cよりも基底部15の長手方向一方に5mm以上離間している。すなわち、境界線L3と取付孔15cの中心線Cとの前後方向の距離Dは、5mm以上に設定されている。距離Dは、8mm以上であってもよいが、10mm以下となるように設定しておくのが型成形する上での成形性の観点から好ましい。
【0030】
この実施形態では、凸部有り部分Aと凸部無し部分Bとの境界が取付孔15cよりも基底部15の前方に離間している。具体的には、取付孔15cの周縁部のうち、最も前に位置する部分よりも前方に境界線L3が位置している。つまり、取付孔15cの中心線Cに沿って見たときに、凸部17が取付孔15cの全体と重複するように形成されることになる。
【0031】
凸部有り部分Aと凸部無し部分Bとの境界を上述したように位置付けることで、取付孔15cへの取り付け時におけるクリップ20の頭部21の長手方向の端部である後端部が、取付孔15cの中心線Cに沿って見たときに凸部有り部分Aと重複するように配置可能になる。
【0032】
以下、クリップ20を基底部15に取り付ける要領について図8を参照しながら説明する。この説明では、シール材本体10の基底部15が水平方向に延びるように配置されていることを前提として上下方向を定義するが、これは説明の便宜を図るための定義であり、クリップ20を取り付ける際のシール材本体10の姿勢を限定するものではなく、シール材本体10がどのような姿勢であってもクリップ20を取り付けることができる。
【0033】
FIG.8Aに示すように、クリップ20は、基底部15の下方に配置しておき、頭部21の前端部を後端部よりも上に位置付けるとともに、後端部よりも先に取付孔15cに差し込んでいく。このとき、作業者は押出成形部である中間部14を握って保持する。
【0034】
そして、クリップ20の頭部21の前端部を取付孔15cに押し込むようにして型成形部である前側湾曲部12の基底部15を弾性変形させる。頭部21の前端部が取付孔15cに入った段階でクリップ20に対して前方へ向けて力を加えて基底部15を弾性変形させ、FIG.8Bに示すように取付孔15cを前方に拡張させて取付孔15cの前後方向の寸法を長くする。取付孔15cを前方に拡張させた状態で、頭部21の後端部を取付孔15cに押し込むと、頭部21の全体を基底部15の上に位置付けることができる。
【0035】
このとき、作業者が中間部14を握っているので、図5に実線で示すように凸部17が基底部15に接近することになり、上述した従来例の場合にはクリップ20の頭部21が中空部Sに入り込みやすくなる。このことに対し、本実施形態では、取付孔15cへの取り付け時に、クリップ20の頭部21の後端部が、取付孔15cの中心線Cに沿って見たときに凸部有り部分Aと重複するように配置されるので、中空部Sに入り難くなる。
【0036】
そして、FIG.8Cに示すように、クリップ20から外力を除くと、基底部15の形状が復元して取付孔15cが元の形状に戻り、クリップ20が所定の位置に配置される。取付孔15cは前方に拡張しているので、取付孔15cが元の形状に戻る際には、クリップ20が後に変位することになるが、頭部21の後端部が中空部Sに入ることはない。これにより、クリップ20のシール材本体10への取付不良を防止できる。
【0037】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上説明したように、本開示に係る自動車用シール材は、例えば自動車に配設されるドアと車体との間をシールする場合に利用できる。
【符号の説明】
【0039】
1 自動車用シール材
10 シール材本体
12 前側湾曲部(押出成形部)
14 中間部(型成形部)
15 基底部
15c 取付孔
16 シール部
17 凸部
20 クリップ
21 頭部
22 差込部
100 ドア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9