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特開2024-152458冷媒間熱交換器、および、熱管理システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152458
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】冷媒間熱交換器、および、熱管理システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20241018BHJP
   F25B 41/20 20210101ALI20241018BHJP
   F28D 7/10 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
F25B1/00 331Z
F25B41/20 Z
F28D7/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066665
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(72)【発明者】
【氏名】唐沢 悠綺
(72)【発明者】
【氏名】相澤 英男
(72)【発明者】
【氏名】今井 健二郎
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA35
3L103BB38
3L103BB42
3L103DD10
3L103DD37
(57)【要約】
【課題】多様な熱交換状態を提供可能な冷媒間熱交換器、および、冷媒サイクル装置を提供する。
【解決手段】冷媒間熱交換器システム41は、3以上の冷媒通路41a、41b、41cを提供する。冷媒間熱交換器システム41は、冷媒サイクル装置2における2種類の冷媒を互いに熱交換させる内部熱交換器として機能する。さらに、冷媒間熱交換器システム41は、3以上の冷媒通路41a、41b、41cと、2種類の冷媒との対応関係を、少なくとも2つの状態に切り替える。少なくとも2つの状態は、外気吸熱モードと、外気遮熱モードと、低圧損モードとの2つを含む。このため、冷媒サイクル装置2は、冷媒サイクル装置2の運転状態に適した内部熱交換のモードを選択的に利用することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3以上の複数の冷媒通路(41a、41b、41c、41d)を区画し、それらの冷媒通路に導入される少なくとも2つの異なる状態の冷媒の間において内部熱交換を可能とする熱交換管(42)と、
複数の前記冷媒通路の少なくともひとつの両端に設けられ、状態が異なる2つの冷媒を択一的に導入可能であって、導入される冷媒を切り替え可能な制御弁機構(43)とを備える冷媒間熱交換器。
【請求項2】
前記制御弁機構は、複数の前記冷媒通路の少なくとも2つの両端に設けられ、これら2つの前記冷媒通路のそれぞれに関して、状態が異なる2つの冷媒を択一的に導入可能であって、導入される冷媒を切り替え可能である請求項1に記載の冷媒間熱交換器。
【請求項3】
前記制御弁機構は、複数の前記冷媒通路のすべての両端に設けられ、すべての前記冷媒通路のそれぞれに関して、状態が異なる2つの冷媒を択一的に導入可能であって、導入される冷媒を切り替え可能である請求項1に記載の冷媒間熱交換器。
【請求項4】
前記制御弁機構は、
複数の固定通路(843f)を有するハウジング(843e)と、
前記ハウジングに対して複数の位置にスライドして移動可能であって、複数の前記固定通路に対応して位置付けられ、前記固定通路を閉塞する閉塞壁(843h)と前記固定通路と連通する可動通路(843i)とを有する可動弁体(843g)とを備えるシャッター弁(843a、843b)である請求項1に記載の冷媒間熱交換器。
【請求項5】
状態が異なる2つの冷媒は、減圧前の高温高圧冷媒(HPR)と、蒸発後の低温低圧冷媒(LPR)であって、
前記制御弁機構は、
隣接する2つの前記冷媒通路のそれぞれに前記高温高圧冷媒と前記低温低圧冷媒とを導入し、さらに、残る少なくともひとつの前記冷媒通路に前記低温低圧冷媒を導入する低圧損モードと、
隣接する2つの前記冷媒通路のそれぞれに前記高温高圧冷媒と前記低温低圧冷媒とを導入し、さらに、隣接する2つの前記冷媒通路を囲む前記冷媒通路を前記高温高圧冷媒と前記低温低圧冷媒との両方から遮断する外気遮熱モードとに切り替え可能である請求項1から請求項4のいずれかひとつに記載の冷媒間熱交換器。
【請求項6】
状態が異なる2つの冷媒は、減圧前の高温高圧冷媒(HPR)と、蒸発後の低温低圧冷媒(LPR)であって、
前記制御弁機構は、
隣接する2つの前記冷媒通路のそれぞれに前記高温高圧冷媒と前記低温低圧冷媒とを導入し、さらに、残る少なくともひとつの前記冷媒通路に前記低温低圧冷媒を導入する低圧損モードと、
隣接する2つの前記冷媒通路のそれぞれに前記高温高圧冷媒と前記低温低圧冷媒とを導入し、さらに、隣接する2つの前記冷媒通路を囲む前記冷媒通路に前記低温低圧冷媒を導入する外気吸熱モードとに切り替え可能である請求項1から請求項4のいずれかひとつに記載の冷媒間熱交換器。
【請求項7】
状態が異なる2つの冷媒は、減圧前の高温高圧冷媒(HPR)と、蒸発後の低温低圧冷媒(LPR)であって、
前記制御弁機構は、
隣接する2つの前記冷媒通路のそれぞれに前記高温高圧冷媒と前記低温低圧冷媒とを導入し、さらに、残る少なくともひとつの前記冷媒通路に前記低温低圧冷媒を導入する低圧損モードと、
隣接する2つの前記冷媒通路のそれぞれに前記高温高圧冷媒と前記低温低圧冷媒とを導入し、さらに、隣接する2つの前記冷媒通路を囲む前記冷媒通路を前記高温高圧冷媒と前記低温低圧冷媒との両方から遮断する外気遮熱モードと、
隣接する2つの前記冷媒通路のそれぞれに前記高温高圧冷媒と前記低温低圧冷媒とを導入し、さらに、隣接する2つの前記冷媒通路を囲む前記冷媒通路に前記低温低圧冷媒を導入する外気吸熱モードとに切り替え可能である請求項1から請求項4のいずれかひとつに記載の冷媒間熱交換器。
【請求項8】
冷媒循環経路に配置された圧縮機(21)、
前記冷媒循環経路における前記圧縮機の下流に配置された室外熱交換器(25)、
前記冷媒循環経路における前記室外熱交換器の下流に配置された冷房用の減圧器(26)、
前記冷媒循環経路における前記減圧器の下流に配置された室内熱交換器(27)、および、
前記減圧器による減圧前の高温高圧冷媒(HPR)と、前記室内熱交換器による蒸発後の低温低圧冷媒(LPR)との内部熱交換を提供する請求項5に記載の冷媒間熱交換器(41)を備える冷媒サイクル装置(2)と、
前記低圧損モード、または、前記外気遮熱モードを提供するように、前記制御弁機構を制御する制御装置(10)とを備える熱管理システム。
【請求項9】
冷媒循環経路に配置された圧縮機(21)、
前記冷媒循環経路における前記圧縮機の下流に配置された利用側高温熱交換器(23)、
前記冷媒循環経路における前記利用側高温熱交換器の下流に配置された暖房用の減圧器(24)、
前記冷媒循環経路における前記暖房用の減圧器の下流に配置された室外熱交換器(25)、
前記冷媒循環経路における前記室外熱交換器の下流に配置された冷房用の減圧器(26)、
前記冷媒循環経路における前記冷房用の減圧器の下流に配置された室内熱交換器(27)、
前記冷媒循環経路を冷房モードと暖房モードとに切り替えるモード切替機構(30)、
および、
前記冷房モードにおいて、前記冷房用の減圧器による減圧前の高温高圧冷媒(HPR)と、前記室内熱交換器による蒸発後の低温低圧冷媒(LPR)との内部熱交換を提供し、前記暖房モードにおいて、前記暖房用の減圧器による減圧前の高温高圧冷媒(HPR)と、前記室外熱交換器による蒸発後の低温低圧冷媒(LPR)との内部熱交換を提供する請求項6に記載の冷媒間熱交換器(41)を備える冷媒サイクル装置(2)と、
前記冷房モードにおいて前記低圧損モードを提供し、前記暖房モードにおいて前記外気吸熱モードを提供するように、前記制御弁機構を制御する制御装置(10)とを備える熱管理システム。
【請求項10】
冷媒循環経路に配置された圧縮機(21)、
前記冷媒循環経路における前記圧縮機の下流に配置された利用側高温熱交換器(23)、
前記冷媒循環経路における前記利用側高温熱交換器の下流に配置された暖房用の減圧器(24)、
前記冷媒循環経路における前記暖房用の減圧器の下流に配置された室外熱交換器(25)、
前記冷媒循環経路における前記室外熱交換器の下流に配置された冷房用の減圧器(26)、
前記冷媒循環経路における前記冷房用の減圧器の下流に配置された室内熱交換器(27)、
前記冷媒循環経路を冷房モードと暖房モードとに切り替えるモード切替機構(30)、
および、
前記冷房モードにおいて、前記冷房用の減圧器による減圧前の高温高圧冷媒(HPR)と、前記室内熱交換器による蒸発後の低温低圧冷媒(LPR)との内部熱交換を提供し、前記暖房モードにおいて、前記暖房用の減圧器による減圧前の高温高圧冷媒(HPR)と、前記室外熱交換器による蒸発後の低温低圧冷媒(LPR)との内部熱交換を提供する請求項7に記載の冷媒間熱交換器(41)を備える冷媒サイクル装置(2)と、
前記冷房モードにおいて、前記冷媒サイクル装置の運転状態に基づいて、前記低圧損モード、または、前記外気遮熱モードを選択的に提供し、前記暖房モードにおいて前記外気吸熱モードを提供するように、前記制御弁機構を制御する制御装置(10)とを備える熱管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、冷媒間熱交換器、および、冷媒間熱交換器を含む熱管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、冷媒間熱交換器、および、冷媒間熱交換器を含む熱管理システムを開示する。特許文献1は、3重管を2つの冷媒サイクルを直列に接続する冷媒熱交換器として利用している。特許文献2、および、特許文献3は、2重管の冷媒熱交換器を開示している。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-133186号公報
【特許文献2】特開2006-162241号公報
【特許文献3】特開2021-188786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術文献の構成は、3重管が提供する3つの通路を、第1サイクルの冷媒と、第2サイクルの冷媒と、給湯水とに固定的に利用している。結果的に、熱的な負荷の変動があると、適切な熱交換を提供できない場合がある。また、3重管が設置された環境温度の変動も、3重管における熱交換に影響を与える場合がある。上述の観点において、または言及されていない他の観点において、冷媒間熱交換器、および、冷媒間熱交換器を含む熱管理システムにはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示されるひとつの目的は、多様な熱交換状態を提供可能な冷媒間熱交換器、および、冷媒間熱交換器を含む熱管理システムを提供することである。
【0006】
開示される他のひとつの目的は、冷媒間熱交換器が設置された環境温度に応じた熱交換状態を提供可能な冷媒間熱交換器、および、冷媒間熱交換器を含む熱管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示された冷媒間熱交換器は、3以上の複数の冷媒通路(41a、41b、41c、41d)を区画し、それらの冷媒通路に導入される少なくとも2つの異なる状態の冷媒の間において内部熱交換を可能とする熱交換管(42)と、複数の冷媒通路の少なくともひとつの両端に設けられ、状態が異なる2つの冷媒を択一的に導入可能であって、導入される冷媒を切り替え可能な制御弁機構(43)とを備える。
【0008】
開示される冷媒間熱交換器によると、熱交換管は、3以上の複数の冷媒通路を区画する。さらに、制御弁機構は、少なくともひとつの冷媒通路に導入される冷媒を切り替えることができる。このため、少なくとも2つの内部熱交換の状態を提供することができる。これにより、多様な熱交換状態を提供可能な冷媒間熱交換器が提供される。
【0009】
ここに開示された熱管理システムは、冷媒循環経路に配置された圧縮機(21)、冷媒循環経路における圧縮機の下流に配置された室外熱交換器(25)、冷媒循環経路における室外熱交換器の下流に配置された冷房用の減圧器(26)、冷媒循環経路における減圧器の下流に配置された室内熱交換器(27)、および、減圧器による減圧前の高温高圧冷媒(HPR)と、室内熱交換器による蒸発後の低温低圧冷媒(LPR)との内部熱交換を提供する上記冷媒間熱交換器(41)を備える冷媒サイクル装置(2)と、低圧損モード、または、外気遮熱モードを提供するように、制御弁機構を制御する制御装置(10)とを備える。
【0010】
この熱管理システムによると、冷媒間熱交換器は、低圧損モード、または、外気遮熱モードを提供するように運転される。冷媒間熱交換器が設置された環境温度に応じた熱交換状態を提供することができる。
【0011】
ここに開示された熱管理システムは、冷媒循環経路に配置された圧縮機(21)、冷媒循環経路における圧縮機の下流に配置された利用側高温熱交換器(23)、冷媒循環経路における利用側高温熱交換器の下流に配置された暖房用の減圧器(24)、冷媒循環経路における暖房用の減圧器の下流に配置された室外熱交換器(25)、冷媒循環経路における室外熱交換器の下流に配置された冷房用の減圧器(26)、冷媒循環経路における冷房用の減圧器の下流に配置された室内熱交換器(27)、冷媒循環経路を冷房モードと暖房モードとに切り替えるモード切替機構(30)、および、冷房モードにおいて、冷房用の減圧器による減圧前の高温高圧冷媒(HPR)と、室内熱交換器による蒸発後の低温低圧冷媒(LPR)との内部熱交換を提供し、暖房モードにおいて、暖房用の減圧器による減圧前の高温高圧冷媒(HPR)と、室外熱交換器による蒸発後の低温低圧冷媒(LPR)との内部熱交換を提供する上記冷媒間熱交換器(41)を備える冷媒サイクル装置(2)と、冷房モードにおいて低圧損モードを提供し、暖房モードにおいて外気吸熱モードを提供するように、制御弁機構を制御する制御装置(10)とを備える。
【0012】
この熱管理システムによると、冷媒間熱交換器は、低圧損モード、または、外気吸熱モードを提供するように運転される。冷媒間熱交換器が設置された環境温度に応じた冷房モード、または、暖房モードを提供でき、それらに応じた熱交換状態を提供することができる。
【0013】
ここに開示された熱管理システムは、冷媒循環経路に配置された圧縮機(21)、冷媒循環経路における圧縮機の下流に配置された利用側高温熱交換器(23)、冷媒循環経路における利用側高温熱交換器の下流に配置された暖房用の減圧器(24)、冷媒循環経路における暖房用の減圧器の下流に配置された室外熱交換器(25)、冷媒循環経路における室外熱交換器の下流に配置された冷房用の減圧器(26)、冷媒循環経路における冷房用の減圧器の下流に配置された室内熱交換器(27)、冷媒循環経路を冷房モードと暖房モードとに切り替えるモード切替機構(30)、および、冷房モードにおいて、冷房用の減圧器による減圧前の高温高圧冷媒(HPR)と、室内熱交換器による蒸発後の低温低圧冷媒(LPR)との内部熱交換を提供し、暖房モードにおいて、暖房用の減圧器による減圧前の高温高圧冷媒(HPR)と、室外熱交換器による蒸発後の低温低圧冷媒(LPR)との内部熱交換を提供する上記冷媒間熱交換器(41)を備える冷媒サイクル装置(2)と、冷房モードにおいて、冷媒サイクル装置の運転状態に基づいて、低圧損モード、または、外気遮熱モードを選択的に提供し、暖房モードにおいて外気吸熱モードを提供するように、制御弁機構を制御する制御装置(10)とを備える。
【0014】
この熱管理システムによると、冷媒間熱交換器は、低圧損モード、または、外気遮熱モードを提供するように運転される。冷媒間熱交換器が設置された環境温度に応じた熱交換状態を提供することができる。さらに、冷媒間熱交換器が設置された環境温度に応じた冷房モード、または、暖房モードを提供でき、それらに応じた熱交換状態を提供することができる。
【0015】
この明細書において開示された複数の形態は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る熱管理システムのブロック図である。
図2】冷媒間熱交換器システムの冷媒回路図である。
図3図2のIII-III線における熱交換管の断面図である。
図4】熱管理システムのフローチャートである。
図5】外気遮熱モードにおける連通状態を示す冷媒回路図である。
図6図5のVI-VI線における熱交換管の断面図である。
図7】低圧損モードにおける連通状態を示す冷媒回路図である。
図8図7のVIII-VIII線における熱交換管の断面図である。
図9】第2実施形態に係る熱交換管の断面図である。
図10】第3実施形態に係る熱交換管の断面図である。
図11】第4実施形態に係る熱交換管の断面図である。
図12】第5実施形態に係る熱交換管の断面図である。
図13】第6実施形態に係る熱管理システムのブロック図である。
図14】熱管理システムのフローチャートである。
図15】冷房運転における連通状態を示す冷媒回路図である。
図16】低圧損モードにおける連通状態を示す冷媒回路図である。
図17図16のXVII-XVII線における熱交換管の断面図である。
図18】暖房運転における連通状態を示す冷媒回路図である。
図19】外気吸熱モードにおける連通状態を示す冷媒回路図である。
図20図19のXX-XX線における熱交換管の断面図である。
図21】第7実施形態に係る熱管理システムのフローチャートである。
図22】第8実施形態に係る冷媒間熱交換器システムの冷媒回路図である。
図23】冷媒間熱交換器システムの切替弁の断面図である。
図24】冷媒間熱交換器システムを示す概念的な分解斜視図である。
図25】冷媒間熱交換器システムが提供する複数のモードを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
複数の実施形態が、図面を参照しながら説明される。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に、対応する部分および/または関連付けられる部分には、同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0018】
第1実施形態
図1において、熱管理システム1は、乗り物に搭載されている。熱管理システム1は、乗り物における熱的要素の温度を制御する。熱管理システム1は、温度調節装置を提供している。熱管理システム1は、乗り物用の温度調節装置を提供している。これに代えて、熱管理システム1は、ヒトが乗らない無人の移動体に適用されてもよい。さらに、移動体は、車両、船舶、および、航空機である場合がある。熱管理システム1は、土地に固定された建物に適用されてもよい。
【0019】
熱管理システム1は、冷媒サイクル装置2を備える。冷媒サイクル装置2は、蒸気圧縮式サイクル装置とも呼ばれる。冷媒サイクル装置2は、低温熱源だけを提供する冷凍サイクル装置である。冷媒サイクル装置2は、冷媒を循環させ、冷媒の相変化を利用して熱を輸送する。冷媒サイクル装置2は、特開2022-190675号公報に開示されたサイクルにより提供されてもよい。特開2022-190675号公報の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【0020】
冷媒サイクル装置2は、温度調節対象物に低温熱源、および/または、高温熱源を供給することにより、温度調節対象物の温度を調節する。温度調節対象物は、空気、または、水等の液体の場合がある。この実施形態では、ひとつの温度調節対象物は、空調装置を流れる空気である。例えば、冷媒サイクル装置2を流れる冷媒と、空調装置を流れる空気との間で、直接的、または、間接的な熱交換が提供される。
【0021】
温度調節対象物は、代替的に、または、追加的に、電気回路、または、バッテリ等の機器の場合がある。機器の温度調節は、冷媒サイクル装置2を流れる冷媒と、機器との間で、直接的、または、間接的な熱交換が実行されることで、提供される。例えば、中間媒体として、水などの媒体を利用することにより、間接的な熱交換が提供される。水に代えて、不凍水、ガスなどを用いることができる。
【0022】
冷媒サイクル装置2は、冷媒が循環する循環系統を構成している。循環系統には、圧縮機21、室外熱交換器25、冷房用の減圧器26、蒸発器である室内熱交換器27、および、アキュムレータ28が順に配置されている。さらに、循環系統には、高温高圧の冷媒と、低温低圧の冷媒との熱交換を提供する冷媒間熱交換器システム41が配置されている。
【0023】
圧縮機21は、冷媒循環経路に配置されている。圧縮機21は、低温低圧の冷媒を吸入し、加圧して、高温高圧の冷媒として吐出する。圧縮機21は、冷媒サイクル装置2における、低圧系統と高圧系統との間に配置されている。圧縮機21は、冷媒サイクル装置2における室外機に設置されている。圧縮機21は、電動のモータ22によって駆動される電動の圧縮機である。
【0024】
室外熱交換器25は、冷媒循環経路における圧縮機21の下流に配置されている。室外熱交換器25は、高温高圧の冷媒からの放熱を可能とする。室外熱交換器25は、非利用側熱交換器である。室外熱交換器25は、冷媒サイクル装置2における、高圧系統に配置されている。室外熱交換器25は、圧縮機21と減圧器26との間に配置されている。室外熱交換器25は、放熱器、または、凝縮器とも呼ばれる。
【0025】
冷房用の減圧器26は、冷媒循環経路における室外熱交換器25の下流に配置されている。減圧器26は、高温高圧冷媒を減圧し、低温低圧冷媒を生成する。減圧器26は、膨張弁によって提供されている。減圧器26は、減圧器とも呼ばれる。減圧器26は、温度感応式の膨張弁、または、電気式の膨張弁によって提供されている。減圧器26は、冷媒サイクル装置2における、低圧系統と高圧系統との間に配置されている。減圧器26は、室外熱交換器25と室内熱交換器27との間に配置されている。
【0026】
室内熱交換器27は、冷媒循環経路における冷房用の減圧器26の下流に配置されている。室内熱交換器27は、減圧された冷媒を蒸発させることにより冷媒へ吸熱させる。言い換えると、室内熱交換器27は、利用側低温熱交換器である。室内熱交換器27は、低温熱源でもある。室内熱交換器27は、冷媒サイクル装置2における、低圧系統に配置されている。室内熱交換器27は、減圧器26とアキュムレータ28との間に配置されている。室内熱交換器27は、冷却器、または、蒸発器とも呼ばれる。
【0027】
アキュムレータ28は、気液混合冷媒を受け入れ、気冷媒と潤滑オイルとを圧縮機21に供給する。アキュムレータ28は、冷媒サイクル装置2の低圧系統において余剰冷媒を貯留するタンクとして機能する。アキュムレータ28は、室内熱交換器27と圧縮機21との間に設けられている。冷媒サイクル装置2は、アキュムレータサイクルとも呼ばれる。冷媒サイクル装置2は、アキュムレータ28に代えて、レシーバを備えていてもよい。レシーバは、冷媒サイクル装置2の高圧系統に設けられた気液分離器である。この場合、冷媒サイクル装置2は、レシーバサイクルとも呼ばれる。
【0028】
冷媒間熱交換器システム41は、室外熱交換器25と減圧器26との間における高温高圧冷媒HPRと、室内熱交換器27と圧縮機21との間における低温低圧冷媒LPRとの間において熱交換を提供する。冷媒間熱交換器システム41における熱交換は、圧縮機21に吸入される冷媒の液成分を減少させる。また、冷媒間熱交換器システム41における熱交換は、減圧器26に供給される冷媒を冷却する。この結果、冷媒間熱交換器システム41における熱交換は、減圧器26に供給される冷媒の過冷却度を大きくする。冷媒間熱交換器システム41は、冷媒サイクル装置2の内部熱交換器とも呼ばれる。
【0029】
冷媒間熱交換器システム41は、熱交換管42と、制御弁機構43とを備える。熱交換管42は、3以上の冷媒通路を有する。熱交換管42は、3以上の冷媒通路を提供する断面形状をもつ多穴管によって提供することができる。この場合、多穴管は、金属の押し出し成形方法により製造された押出管により提供することができる。多穴管は、連続する金属材料によって形成されている。代替的に、熱交換管42は、複数の管部材を組み合わせた接合管により提供することができる。接合管は、互いに接合された複数の金属材料によって形成されている。さらに、代替的に、熱交換管42は、複数の管を内外に組み合わせた多重管によって提供することができる。この実施形態では、熱交換管42は、多重管によって提供されている。この実施形態では、熱交換管42は、3重管によって提供されている。熱交換管42の長さは、所定の内部熱交換性能が得られるように設定することができる。
【0030】
制御弁機構43は、高温高圧冷媒HPRと低温低圧冷媒LPRとを含む状態が異なる2つの冷媒と、3以上の冷媒通路との対応関係を、少なくとも2以上の状態に切り替える。この明細書における「状態が異なる2つの冷媒」とは、冷媒の化学的な組成の差を指すのではない。「状態が異なる2つの冷媒」は、温度、および/または、圧力が異なり、内部熱交換させることが可能な冷媒の状態を指している。制御弁機構43は、少なくとも冷媒通路を開閉する機能を有している。制御弁機構43は、複数の独立した開閉弁によって提供される場合がある。これに代えて、制御弁機構43は、機能的に互いに連携して開閉する複数の系統を形成する複数の開閉弁によって提供される場合がある。さらに、これに代えて、制御弁機構43は、熱交換管42の一端に配置された第1弁機構と、熱交換管42の他端に配置された第2弁機構とを備える場合がある。さらに、これに代えて、制御弁機構43は、複数の通路を開閉する複数の開閉弁が、構造的に、および/または、機能的に統合された統合弁によって提供される場合がある。この場合、統合弁は、冷媒間熱交換器システム41が2以上の熱交換状態を提供するように、状態が異なる2つの冷媒と、3以上の冷媒通路との対応関係を切り替える。
【0031】
あくまで例示として、熱交換管42が、第1通路と、第2通路と、第3通路とを提供する場合を想定する。制御弁機構43は、第1通路に高温高圧冷媒HPRが流れる場合と、第1通路に低温低圧冷媒LPRが流れる場合と、第1通路に冷媒が流れない場合との少なくとも2つを切り替える。制御弁機構43は、第2通路に高温高圧冷媒HPRが流れる場合と、第2通路に低温低圧冷媒LPRが流れる場合と、第2通路に冷媒が流れない場合との少なくとも2つを切り替える。制御弁機構43は、第3通路に高温高圧冷媒HPRが流れる場合と、第3通路に低温低圧冷媒LPRが流れる場合と、第3通路に冷媒が流れない場合との少なくとも2つを切り替える。これらの場合において、冷媒が流れない通路は、断熱層として機能する場合がある。しかも、冷媒が流れない層は、冷媒への空気、水などの異物の混入を回避しながら断熱層を提供する。
【0032】
熱管理システム1は、空調装置5を備える。空調装置5は、乗り物の乗員空間の空気の温度、および/または、湿度を調整する。空調装置5は、空調ケース51を備える。空調ケース51は、下流端が空調対象である室内に向けて開口しているダクト状の部材である。空調装置5は、例えば、空調ケース51の上流端から順に複数の空調機器を備える。空調機器は、例えば、空調ケース51の上流端に設置された内外気切替装置52、および、シロッコファンなどによって提供された電動の送風機53を含む。空調機器は、室内熱交換器27を含む。室内熱交換器27は、空調ケース51内に配置されている。室内熱交換器27は、送風機53の下流に配置されている。室内熱交換器27は、空気の流れ方向に関して空調ケース51を横切るように配置されている。空調機器は、エアミックスドアなどによって提供された温度調節装置54、および、室内加熱器55を含む。温度調節装置54、および、室内加熱器55は、空調ケース51内に配置されている。温度調節装置54、および、室内加熱器55は、室内熱交換器27の下流に配置されている。複数の空調機器を含む。室内加熱器55は、空調ケース51内を流れる空気の一部だけと交差するように配置されている。温度調節装置54は、室内加熱器55の上流側、または、下流側に、室内加熱器55を通過する空気量と、室内加熱器55を通過しない空気量との比率を調節するように配置されている。
【0033】
室内加熱器55は、電気的な発熱により空気を加熱する電熱器、または、乗り物における高温熱源の熱を導入して空気を加熱する熱交換器によって提供することができる。この実施形態では、室内加熱器55は、高温系統56を循環する媒体によって熱源機器57から供給される熱を利用する。媒体は、水、不凍液、冷媒、または、ガスによって提供することができる。高温系統56は、媒体を循環させるポンプ58を有する。熱源機器57は、例えば、内燃機関によって提供される。この場合、媒体は、内燃機関の冷却液が利用される。これに代えて、熱源機器57は、電池、モータ、インバータ機器などの電気的な発熱機器によって提供される場合がある。さらに、熱源機器57は、冷媒サイクル装置2から放熱される廃熱を利用する場合がある。この場合、熱源機器57は、例えば、室外熱交換器25と熱交換する熱交換器によって提供される場合がある。
【0034】
さらに、冷媒サイクル装置2は、室内熱交換器27に対して並列的、または、直列的に設けられた低温系統を備える場合がある。低温系統は、例えば、発熱機器としてのバッテリ、モータ、インバータなどの温度を調節する用途に利用される場合がある。
【0035】
熱管理システム1は、制御装置10を備える。制御装置10は、電子制御装置(ECU)である。制御装置10は、制御対象としての構成部品を制御することにより冷媒サイクル装置2を制御する。制御装置10は、予め定められた制御特性に基づいて、冷媒サイクル装置2を制御する制御方法を実行する。制御装置、または制御システムは、(a)if-then-else形式と呼ばれる複数の論理としてのアルゴリズム、または(b)機械学習によってチューニングされた学習済みモデル、例えばニューラルネットワークとしてのアルゴリズムによって提供される。
【0036】
制御装置は、少なくともひとつのコンピュータを含む制御システムによって提供される。制御システムは、データ通信装置によってリンクされた複数のコンピュータを含む場合がある。コンピュータは、ハードウェアである少なくともひとつのプロセッサ(ハードウェアプロセッサ)を含む。ハードウェアプロセッサは、下記(i)、(ii)、または(iii)により提供することができる。
【0037】
(i)ハードウェアプロセッサは、少なくともひとつのメモリに格納されたプログラムを実行する少なくともひとつのプロセッサコアである場合がある。この場合、コンピュータは、少なくともひとつのメモリと、少なくともひとつのプロセッサコアとによって提供される。プロセッサコアは、CPU:Central Processing Unit、GPU:Graphics Processing Unit、RISC-CPUなどと呼ばれる。メモリは、記憶媒体とも呼ばれる。メモリは、プロセッサによって読み取り可能な「プログラムおよび/またはデータ」を非一時的に格納する非遷移的かつ実体的な記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリ、磁気ディスク、または光学ディスクなどによって提供される。プログラムは、それ単体で、またはプログラムが格納された記憶媒体として流通する場合がある。
【0038】
(ii)ハードウェアプロセッサは、ハードウェア論理回路である場合がある。この場合、コンピュータは、プログラムされた多数の論理ユニット(ゲート回路)を含むデジタル回路によって提供される。デジタル回路は、ロジック回路アレイ、例えば、ASIC:Application-Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、SoC:System on a Chip、PGA:Programmable Gate Array、CPLD:Complex Programmable Logic Deviceなどとも呼ばれる。デジタル回路は、プログラムおよび/またはデータを格納したメモリを備える場合がある。コンピュータは、アナログ回路によって提供される場合がある。コンピュータは、デジタル回路とアナログ回路との組み合わせによって提供される場合がある。
【0039】
(iii)ハードウェアプロセッサは、上記(i)と上記(ii)との組み合わせである場合がある。(i)と(ii)とは、異なるチップの上、または共通のチップの上に配置される。これらの場合、(ii)の部分は、アクセラレータとも呼ばれる。
【0040】
制御装置と信号源と制御対象物とは、多様な要素を提供する。それらの要素の少なくとも一部は、ブロック、モジュール、またはセクションと呼ぶことができる。さらに、制御システムに含まれる要素は、意図的な場合にのみ、機能的な手段と呼ばれる。
【0041】
熱管理システム1は、制御システムを提供するための複数のセンサと、複数のアクチュエータとを備える。複数のセンサと複数のアクチュエータとは、制御装置10に電気的に接続されている。制御装置10は、複数のセンサから検出信号を受信する。制御装置10は、予め定められた制御プログラムを実行することにより、検出信号に応じて、制御信号を演算する。制御装置10は、複数のアクチュエータに制御信号を出力する。こうして、制御装置10により、熱管理システム1が制御される。
【0042】
複数のセンサは、空調運転を開始する指令を入力するスイッチを含む場合がある。複数のセンサは、少なくとも室内の空気温度を検出する温度センサを含む場合がある。複数のセンサは、冷媒サイクル装置2における各部の温度、および/または、圧力を検出するセンサを含む場合がある。
【0043】
この実施形態では、複数のセンサは、冷房運転のための熱的な負荷の大きさを示す指標として利用可能な物理量を検出し、対応する出力信号を生成するセンサを含む場合がある。例えば、複数のセンサは、空調装置5が最大冷房状態であることを示す温度設定器、または、圧縮機21の運転状態を検出するセンサを含む場合がある。さらに、複数のセンサは、冷媒流量が高流量であることを検出するセンサを含む場合がある。例えば、高流量は、冷媒サイクル装置2における冷媒流量を小流量と中流量と高流量とに三等分した場合の上記高流量に対応させることができる。また、複数のセンサは、送風機53が高風量、または、中風量以上の比較的多い風量で運転されていることを検出するセンサを含む場合がある。ここでも、高風量、または、中風量は、送風機53による風量を低風量と中風量と高風量とに三等分した場合の高風量と中風量とにそれぞれ対応させることができる。加えて、複数のセンサは、乗り物の移動速度が比較的高い高速度であることを検出するセンサを含む場合がある。乗り物が高速度で移動する場合、移動に消費されるエネルギが比較的大きい。このため、乗り物において利用可能なエネルギのうち、空調に割り振ることができる割合が相対的に低い。このため、空調のための負荷は、相対的に高い状態であるといえる。ここでも、高速度は、乗り物において利用可能な移動速度を低速度と中速度と高速度とに三等分した場合の高速度に対応させることができる。
【0044】
この実施形態では、複数のセンサは、冷媒間熱交換器システム41が設置された機械室の温度を検出するセンサを含む場合がある。このセンサが検出する温度は、機室温度と呼ばれる。乗り物がエンジンを備える場合、冷媒間熱交換器システム41はエンジンコンパートメントに設置される場合がある。この場合、機室温度は、エンジンコンパートメント温度と呼ばれる。乗り物が走行用のモータ、または、走行動力用のバッテリを備える場合、冷媒間熱交換器システム41は、モータとともに、または、バッテリとともに設置される場合がある。この場合、機室温度は、モータ室温度、または、バッテリ室温度と呼ばれる。さらに、複数のセンサは、熱交換管42に供給される高圧冷媒の温度を検出するセンサを含む場合がある。
【0045】
複数のアクチュエータは、少なくともモータ22を含む。制御装置10は、少なくともモータ22の回転数を制御することにより、圧縮機21からの吐出容量を制御する。この実施形態では、複数のアクチュエータは、減圧器26、ポンプ58、および、制御弁機構43を含む。さらに、複数のアクチュエータは、内外気切替装置52、送風機53、および、温度調節装置54を含む。
【0046】
図2において、冷媒間熱交換器システム41は、熱交換管42と、制御弁機構43とを備えている。熱交換管42は、3つ以上の複数の冷媒流路を区画する。熱交換管42は、複数の冷媒通路に、状態が異なる少なくとも2つの冷媒」を位置付けることができる管である。しかも、熱交換管42において、複数の冷媒通路は、それら2つ以上の冷媒の混合を阻止するように区画されている。熱交換管42は、少なくとも2つの冷媒の間において熱交換を提供するように構成されている。少なくとも2つの冷媒は、圧力、および/または、温度が異なる。例えば、ひとつの冷媒は、減圧行程前の高温高圧冷媒である。他のひとつの冷媒は、減圧工程後、さらには、蒸発行程後の低温低圧冷媒である。さらに、追加状態の冷媒は、閉空間に閉じ込められた冷媒である。この追加状態の冷媒は、断熱層として機能し得る圧力、および、温度である。
【0047】
図3において、図2のIII-III線における断面が図示されている。熱交換管42は、3以上の複数の冷媒通路41a、41b、41cを区画している。熱交換管42は、それらの冷媒通路41a、41b、41cに導入される、少なくとも2つの異なる状態の冷媒HPR、LPRの間において内部熱交換を可能とする。熱交換管42は、3重以上の多重管によって提供されている。熱交換管42は、内層管42aと、中層管42bと、外層管42cとを備える。内層管42aと、中層管42bと、外層管42cとは、3層の多重管を形成するように多重に配置されている。内層管42aは、中層管42bの内部に配置されている。中層管42bは、外層管42cの内部に配置されている。内層管42aの中には、内層通路41aが区画されている。内層管42aと中層管42bとの間には、中層通路41bが区画されている。中層管42bと外層管42cとの間には、外層通路41cが区画されている。
【0048】
内層管42aと中層管42bとの間、および/または、中層管42bと外層管42cとの間は、熱交換管42の長さ方向に関して全体的に、または、部分的に、互いに接触している場合がある。熱交換管42は、機器への搭載のために、曲げられる場合がある。そのような蛇行状態の熱交換管42においては、内層管42aと中層管42bとの間、および/または、中層管42bと外層管42cとの間は、部分的に接触している。このような多重管内における部分的な接触は、冷媒間の熱交換を許容する。
【0049】
内層通路41a内の冷媒と、中層通路41b内の冷媒とは、内層管42aと経由して互いに熱交換可能である。中層通路41b内の冷媒と、外層通路41c内の冷媒とは、中層管42bを経由して互いに熱交換可能である。外層通路41c内の冷媒と外層通路41c外の環境、例えば外気とは、外層管42cを経由して互いに熱交換可能である。さらに、内層通路41a内の冷媒と、外層通路41c内の冷媒とは、内層管42aと、中層通路41b内の冷媒と、中層管42bとを経由して互いに熱交換可能である。
【0050】
図2に戻り、制御弁機構43は、熱交換管42の一端に配置された複数の開閉弁43aと、熱交換管42の他端に配置された複数の開閉弁43bとを備えている。この実施形態において取り扱われる少なくとも2つの冷媒は、上流側の高圧通路2aから供給され、下流側の高圧通路2bへ戻される高温高圧冷媒HPRと、上流側の低圧通路2cから供給され、下流側の低圧通路2dへ戻される低温低圧冷媒LPRとである。
【0051】
制御弁機構43は、複数の冷媒通路41a、41b、41cの少なくともひとつの両端に設けられている。制御弁機構43は、その冷媒通路に、状態が異なる2つの冷媒を択一的に導入可能であって、導入される冷媒を切り替え可能である。つまり、制御弁機構43は、ひとつの冷媒通路に高温高圧冷媒HPRを導入する経路と、同じ冷媒通路に低温低圧冷媒LPRを導入する経路との両方に設けられている。制御弁機構43は、複数の冷媒通路のうちの少なくとも2つの両端に設けられている。制御弁機構43は、これら2つの冷媒通路のそれぞれに関して、状態が異なる2つの冷媒を択一的に導入可能であって、導入される冷媒を切り替え可能である。さらに、図示されるように、制御弁機構43は、複数の冷媒通路のすべての両端に設けられている。制御弁機構43は、すべての冷媒通路のそれぞれに関して、状態が異なる2つの冷媒を択一的に導入可能であって、導入される冷媒を切り替え可能である。
【0052】
複数の開閉弁43aは、高圧通路2aと外層通路41cとの間に配置された開閉弁43a1と、高圧通路2aと中層通路41bとの間に配置された開閉弁43a2と、高圧通路2aと内層通路41aとの間に配置された開閉弁43a3とを備える。複数の開閉弁43bは、高圧通路2bと外層通路41cとの間に配置された開閉弁43b1と、高圧通路2bと中層通路41bとの間に配置された開閉弁43b2と、高圧通路2bと内層通路41aとの間に配置された開閉弁43b3とを備える。複数の開閉弁43aは、低圧通路2cと外層通路41cとの間に配置された開閉弁43a6と、低圧通路2cと中層通路41bとの間に配置された開閉弁43a5と、低圧通路2cと内層通路41aとの間に配置された開閉弁43a4とを備える。複数の開閉弁43bは、低圧通路2dと外層通路41cとの間に配置された開閉弁43b6と、低圧通路2dと中層通路41bとの間に配置された開閉弁43b5と、低圧通路2dと内層通路41aとの間に配置された開閉弁43b4とを備える。
【0053】
ひとつの冷媒通路に連結された高温高圧冷媒HPRのための開閉弁と、同じ冷媒通路に連結された低温低圧冷媒LPRのための開閉弁とは、同時に開弁しない。このような、ひとつの冷媒通路に連結された異種冷媒のための複数の開閉弁の同時開弁を阻止するように、制御装置10における制御回路、または、制御装置10における制御ルールが設定されている。例えば、外層通路41cに連結された高温高圧冷媒HPRのための開閉弁43a1、または、開閉弁43b1が開くとき、外層通路41cに連結された低温低圧冷媒LPRのための開閉弁43b6、または、開閉弁43a6が開くことはない。同一通路に対して1つの冷媒のみを選択的に流すための制御回路、または、制御ルールは、2つの冷媒の混合を回避するために有効である。
【0054】
一方で、制御弁機構43において、ひとつの冷媒通路に連結された高温高圧冷媒HPRのための開閉弁と、同じ冷媒通路に連結された低温低圧冷媒LPRのための開閉弁とは、同時に閉弁することがある。このような、ひとつの冷媒通路に連結された異種冷媒のための複数の開閉弁の同時閉弁は、その冷媒通路を独立させ、孤立させるために利用される。
【0055】
熱交換管42の端部は、複数の管の間をろう付け等により接合し、冷媒通路を引き出し管によって引き出す構造により終端することができる。これに代えて、熱交換管42の端部は、シール部材を用いたジョイント部材との連結によって終端することができる。これらの熱交換管42の端部の構造に関しては、特開2006-162241号公報の開示、または、特開2021-188786号公報の開示を参照することができ、これらの開示はこの明細書の開示として参照により導入される。
【0056】
図4は、制御装置10が実行する制御フローチャート100を示す。制御フローチャート100は、この実施形態における冷媒間熱交換器システム41の制御方法を図示している。制御フローチャート100を含むプログラムは、制御装置10によって繰り返して実行される。
【0057】
制御装置10は、ステップ101において、制御に必要な信号を入力する。ここでは、冷房運転のための熱負荷を評価するための信号が入力される。さらに、冷媒間熱交換器システム41が配置された機械室の温度を示す信号が入力される。加えて、空調装置5を制御するための設定温度、室内温度、および、冷媒圧力などの信号が入力される。
【0058】
制御装置10は、ステップ102において、冷房運転を実行する。制御装置10は、モータ22を回転させることにより圧縮機21を運転する。この結果、冷媒サイクル装置2内を冷媒が循環する。
【0059】
制御装置10は、ステップ103において、冷房運転のための熱負荷が、所定の閾値より大きいか否かを判定する。ステップ103における判定は、空調装置5が、高効率の運転による、熱的な高い出力(冷房におけるより低い温度への空調)を求めているか否かを判定する判定手段を提供している。この判定は、後述する低圧損モードが求められているか否かの判定である。熱負荷が閾値より低い場合、ステップ103の判定は、YESに分岐する。熱負荷が閾値以上である場合、ステップ103の判定は、NOに分岐する。例えば、高い冷媒流量による最大冷房が実行されているとき、ステップ103がNOに分岐するように閾値は設定される。代替的に、送風機53の風量が高風量であるときに、ステップ103がNOに分岐するように閾値は設定される。さらに、代替的に、乗り物の移動速度(車両の速度)が相対的に高く、冷房に消費できるエネルギが相対的に少ないときに、ステップ103がNOに分岐するように閾値は設定される。
【0060】
制御装置10は、ステップ104において、冷媒間熱交換器システム41が設置されている機械室の温度が閾値より高いか否かを判定する。ステップ104における判定は、冷媒間熱交換器システム41における冷媒間の熱交換が、機室温度によって損なわれるか否かを判定する判定手段を提供している。この判定は、後述する外気遮熱モードが求められているか否かの判定である。機室温度が閾値より高い場合、ステップ104の判定は、NOに分岐する。機室温度が閾値以下である場合、ステップ104の判定は、YESに分岐する。なお、ステップ104における閾値は、冷媒間熱交換器システム41に供給される高温高圧冷媒の温度である場合がある。また、代替的に、ステップ104における閾値は、冷媒間熱交換器システム41に供給される高温高圧冷媒の温度より所定温度だけ高い温度に設定される場合がある。さらに、代替的に、ステップ104における閾値は、冷媒間熱交換器システム41に供給される高温高圧冷媒の温度より所定温度だけ低い温度に設定される場合がある。
【0061】
制御装置10は、ステップ105において、冷媒間熱交換器システム41を外気遮熱モードで運転するように制御弁機構43を制御する。
【0062】
図5、および、図6は、外気遮熱モードにおける冷媒間熱交換器システム41の運転状態を示している。このモードでは、内層通路41aに低温低圧冷媒LPRが導入される。一方、中層通路41bには高温高圧冷媒HPRが導入される。この結果、低温低圧冷媒LPRと高温高圧冷媒HPRとの間において熱交換が実行される。低温低圧冷媒LPRは、残留する液冷媒の蒸発が促され、圧縮機21への液吸入が回避される。高温高圧冷媒HPRは過冷却が促進され、膨張行程、蒸発行程における冷却性能が向上する。このとき、低温低圧冷媒LPRの流れ方向と高温高圧冷媒HPRの流れ方向とは、互いに逆方向であり、対向流の熱交換が提供されている。
【0063】
さらに、このモードでは、外層通路41cが、低温低圧冷媒LPRからも、高温高圧冷媒HPRからも遮断される。外層通路41cに残留する冷媒は、低温低圧冷媒LPRからも、高温高圧冷媒HPRからも隔離される。このため、外層通路41cは、断熱層として機能する。この結果、外気と、高温高圧冷媒HPRとの間の熱交換が抑制される。例えば、外気によって高温高圧冷媒HPRの過冷却状態が損なわれる事態が抑制される。
【0064】
このように、冷媒間熱交換器システム41は、例示された外気遮熱モードにおいて、内層通路41aに低温低圧冷媒LPRを流し、中層通路41bに高温高圧冷媒HPRを流す。これに代えて、冷媒間熱交換器システム41は、外気遮熱モードにおいて、内層通路41aに高温高圧冷媒HPRを流し、中層通路41bに低温低圧冷媒LPRを流してもよい。
【0065】
図4に戻り、制御装置10は、ステップ106において、冷媒間熱交換器システム41を低圧損モードで運転するように制御弁機構43を制御する。
【0066】
図7、および、図8は、低圧損モードにおける冷媒間熱交換器システム41の運転状態を示している。このモードでは、内層通路41aと中層通路41bとの両方に低温低圧冷媒LPRが導入される。一方、外層通路41cには高温高圧冷媒HPRが導入される。この結果、低温低圧冷媒LPRと高温高圧冷媒HPRとの間において熱交換が実行される。低温低圧冷媒LPRは、残留する液冷媒の蒸発が促され、圧縮機21への液吸入が回避される。高温高圧冷媒HPRは過冷却が促進され、膨張行程、蒸発行程における冷却性能が向上する。このとき、低温低圧冷媒LPRの流れ方向と高温高圧冷媒HPRの流れ方向とは、互いに逆方向であり、対向流の熱交換が提供されている。
【0067】
さらに、このモードでは、内層通路41aと中層通路41bとの両方に低温低圧冷媒LPRが導入される。このため、低温低圧冷媒LPRは、相対的に大きい断面積をもつ通路を流れる。このため、蒸発行程によって体積が膨張した低温低圧冷媒LPRの圧力損失が抑制される。
【0068】
この実施形態において、状態が異なる2つの冷媒は、減圧器26で減圧前の高温高圧冷媒HPRと、室内熱交換器27で蒸発後の低温低圧冷媒LPRである。制御弁機構43は、低圧損モードと、外気遮熱モードとを提供可能であり、しかも、これら2つのモードを切り替え可能である。
【0069】
制御弁機構43は、低圧損モードでは、隣接する2つの冷媒通路41b、41cのそれぞれに高温高圧冷媒HPRと低温低圧冷媒LPRとを導入する。さらに、制御弁機構43は、残る少なくともひとつの冷媒通路41aに低温低圧冷媒LPRを導入する。この結果、低温低圧冷媒LPRの圧力損失を低く抑えることができる。制御弁機構43は、外気遮熱モードでは、隣接する2つの冷媒通路41a、41bのそれぞれに高温高圧冷媒HPRと低温低圧冷媒LPRとを導入する。さらに、制御弁機構43は、隣接する2つの冷媒通路を囲む冷媒通路41cを高温高圧冷媒HPRと低温低圧冷媒LPRとの両方から遮断する。制御装置10は、低圧損モード、または、外気遮熱モードを提供するように、制御弁機構43を制御する。
【0070】
以上に述べた実施形態によると、冷媒間熱交換器システム41は、3以上の冷媒通路41a、41b、41cを提供する。冷媒間熱交換器システム41は、冷媒サイクル装置2における2つの冷媒を互いに熱交換させる内部熱交換器として機能する。さらに、冷媒間熱交換器システム41は、3以上の冷媒通路41a、41b、41cと、2つの冷媒との対応関係を、少なくとも2以上の状態に切り替える。これにより、冷媒間熱交換器システム41は、多様な熱交換状態を提供することができる。2つの冷媒は、高温高圧冷媒HPRと、低温低圧冷媒LPRとを含む場合がある。この場合、多様な熱交換状態は、低温低圧冷媒LPRを2つの冷媒通路に流し、高温高圧冷媒HPRを残る1つの冷媒通路に流す低圧損モードを含む。多様な熱交換状態は、外層通路41cを冷媒から遮断し、内層通路41aと中層通路41bとのそれぞれに、低温低圧冷媒LPRと高温高圧冷媒HPRとを流す外気遮熱モードを含む。
【0071】
冷媒間熱交換器システム41は、外気遮熱モードと、低圧損モードとを提供する。このため、冷媒サイクル装置2は、冷媒サイクル装置2の運転状態に適したモードを選択的に利用することができる。
【0072】
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、熱交換管42を3重管によって提供した。これに代えて、この実施形態では、熱交換管42を2並列内管式の多重管によって提供している。
【0073】
図9において、熱交換管42は、2つの内層管242a、242bと、外層管42cとを備えている。2つの内層管242a、242bは、並列に配置されている。外層管42cは、2つの内層管242a、242bを収容している。よって、内層管242aの内部には内層通路41aが区画されている。内層管242bの内部には内層通路41bが区画されている。さらに、外層管42cと、2つの内層管242a、242bとの間には、外層通路41cが区画されている。
【0074】
この実施形態の熱交換管42は、先行する実施形態の熱交換管42に代えて、または、後続の実施形態における熱交換管に代えて利用可能である。
【0075】
第3実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、熱交換管42を3重管によって提供した。これに代えて、この実施形態では、熱交換管42を3並列内管式の多重管によって提供している。
【0076】
図10において、熱交換管42は、3つの内層管342a、342b、342dと、外層管42cとを備えている。3つの内層管342a、342b、342dは、並列に配置されている。外層管42cは、3つの内層管342a、342b、342dを収容している。よって、内層管342aの内部には内層通路41aが区画されている。内層管342bの内部には内層通路41bが区画されている。内層管342dの内部には内層通路41dが区画されている。さらに、外層管42cと、3つの内層管342a、342b、342dとの間には、外層通路41cが区画されている。
【0077】
この構成では、冷媒間熱交換器システム41は、4つの冷媒通路41a、41b、41c、41dを提供する熱交換管42を備える。制御弁機構43は、4つの冷媒通路41a、41b、41c、41dに対して、少なくとも2つの冷媒を対応させて流す。しかも、制御弁機構43は、4つの冷媒通路41a、41b、41c、41dと、少なくとも2つの冷媒との対応関係を切り替える。この結果、この実施形態でも、多様な熱交換状態が提供される。
【0078】
この実施形態の熱交換管42は、先行する実施形態の熱交換管に代えて、または、後続の実施形態における熱交換管に代えて利用可能である。
【0079】
第4実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、熱交換管42を3重管によって提供した。これに代えて、この実施形態では、熱交換管42を2並列内管多重内管併用式の多重管によって提供している。
【0080】
図11において、熱交換管42は、2重管としての内層管42a、および、中層管42bと、内層管442dと、外層管42cとを備えている。内層管42aと中層管42bとは、熱交換管42における部分的な2重管(多重管)を構成している。内層管42aと中層管42bとを含む多重管と、内層管442dとは、並列に配置されている。外層管42cは、内層管42aと中層管42bとを含む多重管と、内層管442dとを収容している。内層管42aの内部には内層通路41aが区画されている。内層管42aと中層管42bとの間には中層通路41bが区画されている。内層管442dの内部には内層通路41dが区画されている。さらに、外層管42cと中層管42bとの間、および、外層管42cと内層管442dとの間には、外層通路41cが区画されている。
【0081】
この実施形態の熱交換管42は、先行する実施形態の熱交換管に代えて、または、後続の実施形態における熱交換管に代えて利用可能である。
【0082】
複数の実施形態から理解されるように、多重管は、外層管42cの内部において、2以上の並列に位置付けられた2以上の複数の並列管を備える場合がある。さらに、多重管は、外層管42cの内部において、2以上の多重に位置付けられた1以上の多重管を備える場合がある。
【0083】
第5実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、熱交換管42を多重管によって提供した。これに代えて、この実施形態では、熱交換管42を多穴管によって提供している。
【0084】
図12において、熱交換管42は、多穴管542aを備えている。多穴管542aは、外壁542eと、隔壁542fとを有する。隔壁542fは、外壁542eが区画する内部空間を、3以上の冷媒通路に区画する。多穴管542aは、外壁542eと隔壁542fとによって、3つの冷媒通路41a、41b、41cを区画している。
【0085】
この実施形態の熱交換管42は、先行する実施形態の熱交換管に代えて、または、後続の実施形態における熱交換管に代えて利用可能である。
【0086】
第6実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、冷媒サイクル装置2は、低温熱源を提供する冷凍サイクル装置である。これに代えて、この実施形態では、冷媒サイクル装置602は、低温熱源だけでなく、高温熱源を提供するヒートポンプサイクル装置として構成されている。
【0087】
図13において、先行する実施形態と同じ、または、同等の構成要素については、同じ参照符号を付している。それらの構成要素については、先行する実施形態の説明を参照することができる。
【0088】
冷媒サイクル装置602は、熱媒体冷媒熱交換器23を備える。熱媒体冷媒熱交換器23は、高温熱源を提供する。熱媒体冷媒熱交換器23は、冷媒循環経路における圧縮機21の下流に配置されている。熱媒体冷媒熱交換器23は、利用側高温熱交換器である。熱媒体冷媒熱交換器23は、圧縮機21の下流に配置されている。
【0089】
冷媒サイクル装置602は、暖房用の減圧器24を備える。暖房用の減圧器24は、熱媒体冷媒熱交換器23と室外熱交換器25との間に配置されている。暖房用の減圧器24冷媒循環経路における熱媒体冷媒熱交換器23の下流に配置されている。室外熱交換器25は、冷媒循環経路における暖房用の減圧器24の下流に配置されている。減圧器24は、膨張弁によって提供されている。暖房用の減圧器24は、ヒートポンプとして機能する暖房時において絞り状態に制御される。この結果、暖房状態においては、熱媒体冷媒熱交換器23を放熱器(凝縮器)として機能させ、室外熱交換器25を吸熱器(蒸発器)として機能させる。減圧器24は、冷房時においてほぼ全開状態に制御される。
【0090】
熱媒体冷媒熱交換器23は、熱源熱交換器657を含む。熱源熱交換器657には、高温系統56の媒体が流れる。これにより、熱媒体冷媒熱交換器23は、冷媒と高温系統56の媒体との間の熱交換を提供する。熱源熱交換器657は、高温系統56の熱源機器57として機能する。
【0091】
冷媒サイクル装置602は、冷媒サイクル装置602の運転モードを冷房モードと、暖房モードとに切り替えるモード切替機構30を備える。このモード切替機構30は、第1暖房バイパス通路30a、第2暖房バイパス通路30b、開閉弁31、逆止弁32、逆止弁33、開閉弁34、および、逆止弁35を備える。
【0092】
冷媒サイクル装置602は、熱媒体冷媒熱交換器23から、冷媒間熱交換器システム41を経由して、減圧器24へ合流する第1暖房バイパス通路30aを備える。冷媒サイクル装置602は、室外熱交換器25から、冷媒間熱交換器システム41を経由して、アキュムレータ28へ達する第2暖房バイパス通路30bを備える。第1暖房バイパス通路30aと第2暖房バイパス通路30bとは、暖房モードにおいて、冷媒間熱交換器システム41を内部熱交換器として機能させる。
【0093】
冷媒サイクル装置602は、冷媒間熱交換器システム41の上流の第1暖房バイパス通路30aに設けられた開閉弁31と、冷媒間熱交換器システム41の下流の第1暖房バイパス通路30aに設けられた逆止弁32とを備える。さらに、冷媒サイクル装置602は、第1暖房バイパス通路30aと並列な高圧通路に設けられた逆止弁33を備える。開閉弁31と、逆止弁32、33とは、開閉弁31の開閉により、冷媒間熱交換器システム41を経由するモードと、冷媒間熱交換器システム41を経由しないモードとの選択を可能としている。
【0094】
冷媒サイクル装置602は、冷媒間熱交換器システム41の上流の第2暖房バイパス通路30bに設けられた開閉弁34を備える。さらに、冷媒サイクル装置602は、第2暖房バイパス通路30bと並列な高圧通路に設けられた逆止弁35を備える。開閉弁34と、逆止弁35とは、開閉弁34の開閉により、アキュムレータ28に冷媒を流すモードと、室内熱交換器27を経由するモードとの選択を可能としている。
【0095】
図14は、この実施形態の制御装置10が実行する制御フローチャート600を示す。制御フローチャート600は、ステップ101、および、106に加えて、ステップ607、608、609、および、610を備える。ステップ101、および、ステップ106は、先行する実施形態と同じである。
【0096】
制御装置10は、ステップ607において、空調装置5の運転モードが冷房モードであるか、暖房モードであるかを判定する。ステップ607は、運転モードが冷房モードであるか否かを判定している。この判定は、室温と設定温度との差、または、利用者の指示に基づいて判定することができる。運転モードが冷房モードである場合、ステップ607は、YESに分岐する。運転モードが暖房モードである場合、ステップ607は、NOに分岐する。
【0097】
制御装置10は、ステップ608において、冷房運転を実行する。制御装置10は、冷房運転を提供するように開閉弁31、34を制御する。さらに、制御装置10は、ステップ106において、冷媒間熱交換器システム41を低圧損モードで運転するように制御弁機構43を制御する。
【0098】
図15図16、および、図17は、冷房運転における冷媒流れを示している。図15において、冷房運転における熱媒体冷媒熱交換器23と室外熱交換器25との両方は放熱器として機能する。冷媒は減圧器26において減圧され、冷媒は室内熱交換器27において蒸発する。室外熱交換器25と減圧器26との間の高温高圧冷媒HPRと、室内熱交換器27とアキュムレータ28との間の低温低圧冷媒LPRとは、冷媒間熱交換器システム41において熱交換する。
【0099】
図16、および、図17に図示されるように、冷媒間熱交換器システム41は、低圧損モードにおいて運転される。この結果、冷房運転における効率が改善され、冷房能力が高められる。
【0100】
図14に戻り、制御装置10は、ステップ609において、暖房運転を実行する。制御装置10は、暖房運転を提供するように開閉弁31、34を制御する。さらに、制御装置10は、ステップ610において、冷媒間熱交換器システム41を外気吸熱モードで運転するように制御弁機構43を制御する。
【0101】
図18図19、および、図20は、暖房運転における冷媒流れを示している。図18において、暖房運転における熱媒体冷媒熱交換器23は放熱器として機能する。冷媒は減圧器24において減圧され、冷媒は室外熱交換器25において蒸発する。熱媒体冷媒熱交換器23と減圧器24との間の高温高圧冷媒HPRと、室外熱交換器25とアキュムレータ28との間の低温低圧冷媒LPRとは、冷媒間熱交換器システム41において熱交換する。
【0102】
図19、および、図20に図示されるように、冷媒間熱交換器システム41は、内層通路41aに高温高圧冷媒HPRを導入し、中層通路41bと外層通路41cとの両方に低温低圧冷媒LPRを導入する。図示される冷媒状態は、外気吸熱モードと呼ばれる。内層通路41aを流れる高温高圧冷媒HPRと、中層通路41bを流れる低温低圧冷媒LPRとの間において冷媒サイクル装置602における内部熱交換が実行される。さらに、外層管42cの外に存在する外気と、外層通路41cを流れる低温低圧冷媒LPRとの間でも熱交換が実行される。このとき、外気から低温低圧冷媒LPRへの吸熱が実行される。この結果、冷媒間熱交換器システム41において、外気からの吸熱が実行され、暖房能力が高められる。この結果、暖房運転における効率が改善され、暖房能力が高められる。
【0103】
この実施形態において、状態が異なる2つの冷媒は、暖房用減圧器24、または、減圧器26で減圧前の高温高圧冷媒HPRと、室外熱交換器25、または、室内熱交換器27で蒸発後の低温低圧冷媒LPRである。制御弁機構43は、低圧損モードと外気吸熱モードとを提供可能であり、しかも、これら2つのモードを切り替え可能である。冷媒間熱交換器システム41は、冷房モードにおいて、冷房用の減圧器26による減圧前の高温高圧冷媒HPRと、室内熱交換器27による蒸発後の低温低圧冷媒LPRとの内部熱交換を提供する。冷媒間熱交換器システム41は、暖房モードにおいて、暖房用の減圧器24による減圧前の高温高圧冷媒HPRと、室外熱交換器25による蒸発後の低温低圧冷媒LPRとの内部熱交換を提供する。
【0104】
制御弁機構43は、低圧損モードでは、隣接する2つの冷媒通路41b、41cのそれぞれに高温高圧冷媒HPRと低温低圧冷媒LPRとを導入する。さらに、制御弁機構43は、残る少なくともひとつの冷媒通路41aに低温低圧冷媒LPRを導入する。この結果、低温低圧冷媒LPRの圧力損失を低く抑えることができる。制御弁機構43は、外気吸熱モードでは、隣接する2つの冷媒通路41a、41bのそれぞれに高温高圧冷媒HPRと低温低圧冷媒LPRとを導入する。さらに、制御弁機構43は、隣接する2つの冷媒通路を囲む冷媒通路41cに低温低圧冷媒LPRを導入する。この結果、外気の熱を、低温低圧冷媒LPRに吸熱することができる。制御装置10は、冷房モードにおいて低圧損モードを提供し、暖房モードにおいて外気吸熱モードを提供するように、制御弁機構43を制御する。
【0105】
以上に述べた実施形態によると、冷媒間熱交換器システム41は、3以上の冷媒通路41a、41b、41cを提供する。冷媒間熱交換器システム41は、冷媒サイクル装置2における2つの冷媒を互いに熱交換させる内部熱交換器として機能する。さらに、冷媒間熱交換器システム41は、3以上の冷媒通路41a、41b、41cと、2つの冷媒との対応関係を、冷房運転における状態と、暖房運転における状態とに切り替える。冷房運転における状態は、冷媒間熱交換器システム41における、低温低圧冷媒LPRと高温高圧冷媒HPRとの間の内部熱交換により、冷媒サイクル装置2の効率を改善し、冷房能力を高める。さらに、暖房運転における状態は、低温低圧冷媒LPRを外層通路41cに流すから、外気からの吸熱により暖房能力を向上させる。このため、冷媒間熱交換器システム41における、低温低圧冷媒LPRと高温高圧冷媒HPRとの間の内部熱交換に加えて、外気からの吸熱によって、冷媒サイクル装置2の効率を改善し、暖房能力を高める。
【0106】
第7実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、冷媒サイクル装置602は、低圧損モード(ステップ106)と、外気吸熱モード(ステップ610)を提供する。これに代えて、この実施形態では、冷媒サイクル装置は、低圧損モードと外気吸熱モードとに加えて、外気遮熱モード(ステップ105)を選択的に実行するように構成されている。
【0107】
図21は、この実施形態の制御装置10が実行する制御フローチャート700を示す。制御フローチャート700は、ステップ101、103、104、105、および、106に加えて、ステップ607、608、609、および、610を備える。これらステップは、先行する実施形態と同じである。
【0108】
図21において、冷媒間熱交換器システム41の運転モードは、暖房運転と冷房運転とのそれぞれに対応するモードに切り替えられる。暖房運転においては、冷媒間熱交換器システム41の運転モードは、外気吸熱モードに切り替えられる。冷房運転においては、冷媒間熱交換器システム41の運転モードは、外気遮熱モード、または、低圧損モードに切り替えられる。さらに、冷房運転においては、冷媒間熱交換器システム41の運転モードは、冷房運転における熱的な環境に応じて、熱的な環境に適したモード、外気遮熱モード、または、低圧損モードに切り替えられる。
【0109】
この実施形態において、状態が異なる2つの冷媒は、暖房用減圧器24、または、減圧器26で減圧前の高温高圧冷媒HPRと、室外熱交換器25、または、室内熱交換器27で蒸発後の低温低圧冷媒LPRである。制御弁機構43は、暖房モードにおいては、外気吸熱モードを提供可能である。制御弁機構43は、冷房モードにおいては、低圧損モードと外気遮熱モードとを提供可能であり、しかも、これら2つのモードを切り替え可能である。冷媒間熱交換器システム41は、冷房モードにおいて、冷房用の減圧器26による減圧前の高温高圧冷媒HPRと、室内熱交換器27による蒸発後の低温低圧冷媒LPRとの内部熱交換を提供する。冷媒間熱交換器システム41は、暖房モードにおいて、暖房用の減圧器24による減圧前の高温高圧冷媒HPRと、室外熱交換器25による蒸発後の低温低圧冷媒LPRとの内部熱交換を提供する。制御装置10は、冷房モードにおいて、冷媒サイクル装置2の運転状態に基づいて、低圧損モード、または、外気遮熱モードを選択的に提供する。さらに、制御装置10は、暖房モードにおいて外気吸熱モードを提供するように、制御弁機構43を制御する。
【0110】
以上に述べた実施形態によると、冷媒間熱交換器システム41は、3以上の冷媒通路41a、41b、41cを提供する。冷媒間熱交換器システム41は、冷媒サイクル装置2における2つの冷媒を互いに熱交換させる内部熱交換器として機能する。さらに、冷媒間熱交換器システム41は、3以上の冷媒通路41a、41b、41cと、2つの冷媒との対応関係を、2つの状態に切り替える。2つの状態は、外気吸熱モードと、外気遮熱モードと、低圧損モードとを含む。このため、冷媒サイクル装置2は、冷媒サイクル装置2の運転状態に適した内部熱交換のモードを選択的に利用することができる。
【0111】
第8実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、冷媒間熱交換器システム41は、複数の開閉弁によって制御弁機構43を提供している。これに代えて、この実施形態では、制御弁機構43は、複数の冷媒通路を開閉するシャッター弁を備える。
【0112】
図22において、冷媒間熱交換器システム41は、熱交換管42と、制御弁機構43とを備える。制御弁機構43は、熱交換管42の一端に設けられた制御弁機構843aを備える。制御弁機構843aは、スライドするように移動可能なシャッター弁によって提供されている。制御弁機構843aは、シャッター状の可動弁体を駆動するためのアクチュエータ843cを備える。制御弁機構43は、熱交換管42の他端に設けられた制御弁機構843bを備える。制御弁機構843bは、シャッター弁によって提供されている。制御弁機構843bは、シャッター状の可動弁体を駆動するためのアクチュエータ843dを備える。制御弁機構843aと制御弁機構843bとは、相似形である。図示の例では、制御弁機構843aと制御弁機構843bとは、それぞれがアクチュエータ843c、843dを備える。これに代えて、制御弁機構843aと制御弁機構843bとは、共通のアクチュエータを備え、共通のアクチュエータによって駆動されてもよい。
【0113】
図23において、制御弁機構843bが例示されている。制御弁機構843aは、相似形である。制御弁機構843bは、ハウジング843eを備える。ハウジング843eは、熱交換管42が提供する複数の冷媒通路41a、41b、41cに対応する複数の固定通路843fを有する。ハウジング843eは、固定弁体として機能する。ハウジング843eは、シャッター状の可動弁体843gを移動可能に支持している。可動弁体843gは、ハウジング843eに対して、複数の位置にスライドして移動可能であり、複数の位置において停止可能である。ハウジング843eと、可動弁体843gとの間には、冷媒の漏れを阻止する程度のシール性が確保されている。ハウジング843eと可動弁体843gとの間には、冷媒の漏れを阻止しながら、可動弁体843gの移動を許容するシール部材が配置される場合がある。アクチュエータ843dは、可動弁体843gを移動させるように、可動弁体843gと作用的に連結されている。
【0114】
可動弁体843gは、複数の固定通路843fに対応して位置付けられた複数の閉塞壁843hと複数の可動通路843iとを有する。閉塞壁843hは、固定通路843fを閉塞することにより、閉弁状態を規定する。複数の閉塞壁843hは、可動弁体843gの本体によって提供されている。可動通路843iは、固定通路843fと連通することにより、開弁状態を規定する。複数の可動通路843iは、貫通穴によって提供されている。複数の可動通路843iは、可動弁体843gが規定の位置に位置付けられているときに、固定通路843fと連通するようにレイアウトされ、配置されている。
【0115】
図示の例では、可動弁体843gは、紙面と垂直方向へスライドするように移動可能である。ハウジング843eは、紙面と平行に並ぶ複数の固定通路843fを有している。可動弁体843gが紙面垂直方向へ移動して所定の位置に位置付けられることにより、閉塞壁843hが所定の固定通路843fを閉塞することにより該当通路の閉弁状態が提供される。可動弁体843gが紙面垂直方向へ移動して所定の位置に位置付けられることにより、可動通路843iが所定の固定通路843fと連通することにより該当通路の開弁状態が提供される。
【0116】
図24は、制御弁機構843bの模式的な斜視図である。図示においては、アクチュエータ843dとハウジング843eとは省略され、可動弁体843gが図示されている。可動弁体843gは、複数の可動通路843iを有する。固定通路843fを連通させない位置には、可動通路なしで閉塞壁843hが設けられている。複数の可動通路843iは、所定のモードを提供するための固定通路843fを連通させる位置に対応して設けられている。可動弁体843gは、両矢印Mで図示される方向へスライドするように移動可能である。
【0117】
図25において、制御弁機構843a、843bが提供する3つの運転モードが図示されている。表の上段は、可動弁体843gの複数の停止可能を示す。図示の例では、可動弁体843gは、(A)、(B)、(C)で示される3位置に停止可能である。表の中段は、3位置における、複数の固定通路843fと複数の可動通路843iとの連通状態を示している。
【0118】
図示の例においては、下記の連通状態が提供される。(A)位置において、上から2本目の固定通路843fと上から2段目にある可動通路843iとが連通し、上から4本目の固定通路843fと上から4段目にある可動通路843iとが連通している。(B)位置において、上から1本目の固定通路843fと上から1段目にある可動通路843iとが連通し、上から4本目の固定通路843fと上から4段目にある可動通路843iとが連通し、上から5本目の固定通路843fと上から5段目にある可動通路843iとが連通している。(C)位置において、上から3本目の固定通路843fと上から3段目にある可動通路843iとが連通し、上から5本目の固定通路843fと上から5段目にある可動通路843iとが連通し、上から6本目の固定通路843fと上から6段目にある可動通路843iとが連通している。上から複数の固定通路843fと、上から2断面にある可動通路843iと、上から4段目にある可動通路843iとが連通している。
【0119】
上から1本目の固定通路843fは、高圧通路2a、2bと外層通路41cとを連通可能である。上から2本目の固定通路843fは、高圧通路2a、2bと中層通路41bとを連通可能である。上から3本目の固定通路843fは、高圧通路2a、2bと内層通路41aとを連通可能である。上から4本目の固定通路843fは、低圧通路2c、2dと内層通路41aとを連通可能である。上から5本目の固定通路843fは、低圧通路2c、2dと中層通路41bとを連通可能である。上から6本目の固定通路843fは、低圧通路2c、2dと外層通路41cとを連通可能である。上から1段目の閉塞壁と可動通路843iとは、高圧通路2a、2bと外層通路41cとの連通を断続可能である。上から2段目の閉塞壁と可動通路843iとは、高圧通路2a、2bと中層通路41bとの連通を断続可能である。上から3段目の閉塞壁と可動通路843iとは、高圧通路2a、2bと内層通路41aとの連通を断続可能である。上から4段目の閉塞壁と可動通路843iとは、低圧通路2c、2dと内層通路41aとの連通を断続可能である。上から5段目の閉塞壁と可動通路843iとは、低圧通路2c、2dと中層通路41bとの連通を断続可能である。上から6段目の閉塞壁と可動通路843iとは、低圧通路2c、2dと外層通路41cとの連通を断続可能である。
【0120】
表の下段は、3位置における、冷媒間熱交換器システム41の運転モードを示している。(A)位置は、外気遮熱モードを提供する。(B)位置は、低圧損モードを提供する。(C)位置は、外気吸熱モードを提供する。
【0121】
この実施形態では、第7実施形態において説明した制御フローチャート700を利用可能である。
【0122】
以上に述べた実施形態によると、冷媒間熱交換器システム41は、3以上の冷媒通路41a、41b、41cを提供する。冷媒間熱交換器システム41は、冷媒サイクル装置2における2つの冷媒を互いに熱交換させる内部熱交換器として機能する。さらに、冷媒間熱交換器システム41は、3以上の冷媒通路41a、41b、41cと、2つの冷媒との対応関係を、少なくとも3つの状態に切り替える。3つの状態は、外気吸熱モードと、外気遮熱モードと、低圧損モードとを含む。このため、冷媒サイクル装置2は、冷媒サイクル装置2の運転状態に適した内部熱交換のモードを選択的に利用することができる。
【0123】
他の実施形態
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形形態を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0124】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0125】
上記実施形態では、外層通路41cと高圧通路2a、2bとの連通、および、外層通路41cと低圧通路2c、2dとの連通を遮断することにより、外層通路41cの冷媒を隔離して、外気遮熱モードを提供した。これに代えて、中層通路41bの冷媒を隔離することにより、外気遮熱モードを提供してもよい。さらに、冷媒間熱交換器システム41は、内外に隣接する2つの層に供給する冷媒を、入れ替えることにより、複数の内部熱交換モードを提供してもよい。例えば、第1内部熱交換モードでは、外層通路41cに高温高圧冷媒HPRを供給し、中層通路41bに低温低圧冷媒LPRを供給する。第2内部熱交換モードでは、外層通路41cに低温低圧冷媒LPRを供給し、中層通路41bに高温高圧冷媒HPRを供給する。同様の関係は、中層通路41bと、内層通路41aとの間においても成立させることができる。
【0126】
上記実施形態では、制御弁機構43は、3以上の冷媒通路のすべてに関して、少なくとも2つの冷媒を択一的に導入可能に構成されている。すなわち、3つの冷媒通路のすべてにおいて高温高圧冷媒HPRと低温低圧冷媒LPRとを択一的に導入可能とするために、すべての冷媒通路の両端に開閉機能をもつ制御弁機構43を配置している。これに代えて、3以上の冷媒通路のいずれかひとつを、ひとつの状態の冷媒に固定的に利用してもよい。例えば、内層通路41aを低温低圧冷媒LPRの専用通路として固定的に利用してもよい。この場合、図2における開閉弁43a3、43b3、43a4、43b4を廃止し、内層通路41aを高圧通路2a、2bに連通させることなく、内層通路41aを低圧通路2c、2dとだけ連通させた構成をとることができる。ただし、少なくともひとつの冷媒通路の両端には、状態が異なる少なくとも2つの冷媒を択一的に導入可能な制御弁機構43が設けられる。
【0127】
上記実施形態では、制御弁機構43は、複数の開閉弁を備える。これに代えて、制御弁機構43は、複数の通路を切り替える多ポート弁に統合することができる。第8実施形態のスライド弁は、統合弁のひとつの態様を示している。さらに、開閉弁43a1、43a2、および、43a3は、三方弁に統合することができる。この場合、図2に例示された制御弁機構43は、4つの三方弁に統合することができる。
【0128】
上記実施形態では、冷媒間熱交換器システム41において内部熱交換される2つの冷媒は、互いに反対方向に向けて流れる対向流である。これに代えて、冷媒間熱交換器システム41における2つの冷媒は、互いに同方向に向けて流れる平行流であってもよい。さらに、冷媒間熱交換器システム41における少なくともひとつの冷媒通路における流れ方向を反転させてもよい。この場合、対向流と平行流とが切り替えられる。このような流れ方向切替機構は、冷媒バイパス通路と、開閉弁とを付加的に設けることで実現することができる。
【0129】
上記実施形態では、内側に位置付けられた管は、一方向にのみ延びている。これに代えて、内側に位置付けられた管は、数回にわたって蛇行してもよい。例えば、内層管42aは、中層管42bの長手方向において、数回にわたって往復するように蛇行してもよい。このような構成は、設計上の目標とする内部熱交換量を調節することを可能とするから、熱交換管42の長さ寸法設定の自由度を高める。
【0130】
さらに、上記実施形態では、冷媒間熱交換器システム41において、内層管42a、または、中層管42bを通して熱交換が実行されている。これに代えて、複数の管の間に熱輸送媒体を満たし、熱輸送媒体を介して熱交換が実行されてもよい。熱輸送媒体は、空気、水、不凍液、オイル、ガスなど多様な媒体を利用することができる。さらに、熱輸送媒体は、送風機、ポンプなどによって強制的に流動させてもよい。
【符号の説明】
【0131】
1 熱管理システム、 2 冷媒サイクル装置、
2a、2b 高圧通路、 2c、2d 低圧通路、
5 空調装置、 10 制御装置、
21 圧縮機、 22 モータ、 23 利用側高温熱交換器、
24 暖房用の減圧器、 25 室外熱交換器、
26 冷房用の減圧器、 27 室内熱交換器、
30 モード切替機構、
41 冷媒間熱交換器、 42 熱交換管、 43 制御弁機構、
41a、41b、41c、41d 冷媒通路、
42 熱交換管、 43 制御弁機構、
843a、843b シャッター弁、 843e ハウジング、
843f 固定通路、 843g 可動弁体、
843h 閉塞壁、 843i 可動通路、
HPR 高温高圧冷媒、 LPR 低温低圧冷媒。
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