(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152465
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】上肢アシスト装置用エンドエフェクタ
(51)【国際特許分類】
B25J 11/00 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066686
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】522317693
【氏名又は名称】株式会社SHIN‐JIGEN
(74)【代理人】
【識別番号】100147647
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】森川 史崇
(72)【発明者】
【氏名】桂 典史
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS38
3C707KS30
3C707KV15
3C707KW04
3C707KX08
3C707XK02
3C707XK06
3C707XK17
3C707XK18
3C707XK19
3C707XK24
3C707XK42
(57)【要約】
【課題】 上肢アシスト装置の引張力によって、作業者が荷物を持ち上げる動作を支援すると共に、作業者が荷物を把持する動作も支援することが可能な上肢アシスト装置用エンドエフェクタを提供する。
【解決手段】 本発明の上肢アシスト装置用エンドエフェクタ1は、一端部が上肢アシスト装置に接続され、作業者の指に装着可能な指装着部11が他端部に設けられた引張力伝達部材2と、引張力伝達部材2に接続され、作業者の腕部に装着可能な腕部装着部材4と、指装着部11への引張力の伝達が開始してから所定時間経過後に、腕部装着部材4に対し、引張力伝達部材2の引張力と等しい大きさの引張力の伝達を開始する段階的伝達機構5と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上肢アシスト装置の引張力を作業者の腕に伝達する上肢アシスト装置用エンドエフェクタであって、
一端部が前記上肢アシスト装置に接続され、作業者の指に装着可能な指装着部が他端部に設けられた引張力伝達部材と、
前記引張力伝達部材に接続され、作業者の腕部に装着可能な腕部装着部材と、
前記指装着部への引張力の伝達が開始してから所定時間経過後に、前記腕部装着部材に対し、前記引張力伝達部材の引張力と等しい大きさの引張力の伝達を開始する段階的伝達機構と、
を備えることを特徴とする上肢アシスト装置用エンドエフェクタ。
【請求項2】
前記段階的伝達機構が、
前記引張力伝達部材と前記腕部装着部材とを互いに接続して設けられた弾性部材と、
前記引張力伝達部材の引っ張り方向への移動に伴い、前記弾性部材に所定長の弾性変形まで許容する一方、所定長を超えた前記弾性部材の弾性変形を規制すると共に、前記引張力伝達部材と前記腕部装着部材とを剛的に接続するストッパ手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の上肢アシスト装置用エンドエフェクタ。
【請求項3】
前記ストッパ手段が、
前記弾性部材が、所定距離だけ離間した固定位置において前記引張力伝達部材にそれぞれ固定された弾性部材固定部と、
前記引張力伝達部材と前記弾性部材との隙間に挿通された前記腕部装着部材が、前記弾性部材の長さ方向中間部に固定された腕部装着部材固定部と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の上肢アシスト装置用エンドエフェクタ。
【請求項4】
前記引張力伝達部材は、前記上肢アシスト装置への接続位置から前記指装着部までの長さを調節可能であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の上肢アシスト装置用エンドエフェクタ。
【請求項5】
前記引張力伝達部材は、一端部が前記上肢アシスト装置に接続されて、他端部に第一面ファスナー部が設けられた第一伝達部材と、一端部に前記指装着部が設けられて、他端部に前記第一面ファスナー部に脱着可能な第二面ファスナー部が設けられた第二伝達部材と、を有することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の上肢アシスト装置用エンドエフェクタ。
【請求項6】
前記引張力伝達部材が、作業者による荷物の把持を検知する把持検知センサを取り外し可能に保持することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の上肢アシスト装置用エンドエフェクタ。
【請求項7】
前記把持検知センサが、内部に流体が充填された袋部材と、前記流体の圧力変化を検出する圧力センサと、を有し、
前記指装着部が、前記袋部材を収納し又は取り出し可能なセンサ収納部を有することを特徴とする請求項6に記載の上肢アシスト装置用エンドエフェクタ。
【請求項8】
前記指装着部が、作業者の何れか一の指を挿入可能な筒状の指サックを有することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の上肢アシスト装置用エンドエフェクタ。
【請求項9】
前記指装着部が、作業者の前記一の指とは異なる他の指を挿入可能なリング状の補助リングを更に有することを特徴とする請求項8に記載の上肢アシスト装置用エンドエフェクタ。
【請求項10】
前記一の指が人差し指であって、前記他の指が中指であることを特徴とする請求項9に記載の上肢アシスト装置用エンドエフェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上肢アシスト装置の引張力を作業者の腕に伝達するための上肢アシスト装置用エンドエフェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、作業者による荷物の持ち上げ動作を支援する上肢アシスト装置が広く開発されている。この上肢アシスト装置には、上肢アシスト装置用エンドエフェクタ(以下、「エンドエフェクタ」と省略する場合もある)と呼ばれる部材が接続され、このエンドエフェクタが作業者の腕に装着される。これにより、上肢アシスト装置で発生したモータ等の駆動力が、エンドエフェクタを介して作業者の腕に引張力として伝達される。ここで、エンドエフェクタとしては、引張力伝達部材と、腕部装着部材とを備えたものが従来知られている(例えば、特許文献1の
図3を参照)。引張力伝達部材は、紐状の部材であって、その一端部が上肢アシスト装置に接続されると共に、他端部には作業者の指に装着可能な指装着部が設けられる。一方、腕部装着部材は、作業者の手首等の腕部に装着可能なベルト状等の部材であって、引張力伝達部材に対して剛的に接続して設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の上肢アシスト装置用エンドエフェクタでは、上肢アシスト装置の引張力が、引張力伝達部材と腕部装着部材に対してほぼ同時に作用するため、荷物を持ち上げる動作を支援する力にはなるが、荷物を把持する動作を支援する力にはなりにくいという問題があった。より詳細には、上肢アシスト装置は、作業者が荷物を把持したことを検知した時に、モータ等を駆動させるよう制御されている。ここで、作業者が荷物を把持した時、作業者の指は内向きに曲がるため、引張力伝達部材の指装着部付近は弛んだ状態となる。従って、この状態において上肢アシスト装置のモータ等が駆動すると、引張力伝達部材に引張力が伝達すると共に、それに剛的に接続された腕部装着部材にもほぼ同時に引張力が伝達する。そうすると、腕部装着部材を介して作業者の腕部には引張力が作用するが、引張力伝達部材が緩んだ状態の指装着部を介しては、作業者の指に引張力が作用しにくい。従って、作業者の腕部に作用する引張力は、荷物を持ち上げる動作を支援する力にはなるが、荷物を把持する動作を支援する力にはなりにくい。
【0005】
そこで本発明は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、上肢アシスト装置の引張力によって、作業者が荷物を持ち上げる動作を支援することができると共に、作業者が荷物を把持する動作も支援することができる上肢アシスト装置用エンドエフェクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様に係る上肢アシスト装置用エンドエフェクタは、上肢アシスト装置の引張力を作業者の腕に伝達する上肢アシスト装置用エンドエフェクタであって、一端部が前記上肢アシスト装置に接続され、作業者の指に装着可能な指装着部が他端部に設けられた引張力伝達部材と、前記引張力伝達部材に接続され、作業者の腕部に装着可能な腕部装着部材と、前記指装着部への引張力の伝達が開始してから所定時間経過後に、前記腕部装着部材に対し、前記引張力伝達部材の引張力と等しい大きさの引張力の伝達を開始する段階的伝達機構と、を備える。
【0007】
なお、本発明の一の態様に係る上肢アシスト装置用エンドエフェクタにおいては、前記段階的伝達機構が、前記引張力伝達部材と前記腕部装着部材とを互いに接続して設けられた弾性部材と、前記引張力伝達部材の引っ張り方向への移動に伴い、前記弾性部材に所定長の弾性変形まで許容する一方、所定長を超えた前記弾性部材の弾性変形を規制すると共に、前記引張力伝達部材と前記腕部装着部材とを剛的に接続するストッパ手段と、を有してもよい。
【0008】
また、本発明の一の態様に係る上肢アシスト装置用エンドエフェクタにおいては、前記ストッパ手段が、前記弾性部材が、所定距離だけ離間した固定位置において前記引張力伝達部材にそれぞれ固定された弾性部材固定部と、前記引張力伝達部材と前記弾性部材との隙間に挿通された前記腕部装着部材が、前記弾性部材の長さ方向中間部に固定された腕部装着部材固定部と、を有してもよい。
【0009】
また、本発明の一の態様に係る上肢アシスト装置用エンドエフェクタにおいては、前記引張力伝達部材は、前記アシスト装置への接続位置から前記指装着部までの長さを調節可能であってもよい。
【0010】
また、本発明の一の態様に係る上肢アシスト装置用エンドエフェクタにおいては、前記引張力伝達部材は、一端部が前記上肢アシスト装置に接続されて、他端部に第一面ファスナー部が設けられた第一伝達部材と、一端部に前記指装着部が設けられて、他端部に前記第一面ファスナー部に脱着可能な第二面ファスナー部が設けられた第二伝達部材と、を有してもよい。
【0011】
また、本発明の一の態様に係る上肢アシスト装置用エンドエフェクタにおいては、前記引張力伝達部材が、作業者による荷物の把持を検知する把持検知センサを取り外し可能に保持してもよい。
【0012】
また、本発明の一の態様に係る上肢アシスト装置用エンドエフェクタにおいては、前記把持検知センサが、内部に流体が充填された袋部材と、前記流体の圧力変化を検出する圧力センサと、を有し、前記指装着部が、前記袋部材を収納し又は取り出し可能なセンサ収納部を有することを特徴とする請求項6に記載の上肢アシスト装置用エンドエフェクタ。
【0013】
また、本発明の一の態様に係る上肢アシスト装置用エンドエフェクタにおいては、前記指装着部が、作業者の何れか一の指を挿入可能な筒状の指サックを有してもよい。
【0014】
また、本発明の一の態様に係る上肢アシスト装置用エンドエフェクタにおいては、前記指装着部が、作業者の前記一の指とは異なる他の指を挿入可能なリング状の補助リングを更に有してもよい。
【0015】
また、本発明の一の態様に係る上肢アシスト装置用エンドエフェクタにおいては、前記一の指が人差し指であって、前記他の指が中指であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一の態様に係る上肢アシスト装置用エンドエフェクタによれば、上肢アシスト装置の引張力によって、作業者が荷物を持ち上げる動作を支援することができると共に、作業者が荷物を把持する動作も支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る上肢アシスト装置用エンドエフェクタ1の構成を示す概略斜視図である。
【
図2】上肢アシスト装置用エンドエフェクタ1の構成を示す分解斜視図である。
【
図3】把持検知センサ6の概略構成を示す模式図である。
【
図4】上肢アシスト装置用エンドエフェクタ1の作用効果を説明する図であり、
図1におけるA-A断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る上肢アシスト装置用エンドエフェクタについて、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
(上肢アシスト装置用エンドエフェクタの構成)
まず、本発明の実施形態に係る上肢アシスト装置用エンドエフェクタの構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る上肢アシスト装置用エンドエフェクタ1の構成を示す概略斜視図である。上肢アシスト装置用エンドエフェクタ1は、引張力伝達部材2と、伸縮バンド3(本発明に係る「弾性部材」に相当)と、腕部装着部材4と、段階的伝達機構5と、把持検知センサ6と、を備えている。
【0020】
(引張力伝達部材)
引張力伝達部材2は、上肢アシスト装置(不図示)が発生させた引張力を作業者に伝達する役割を果たす。ここで、
図2は、上肢アシスト装置用エンドエフェクタ1の構成を示す分解斜視図である。引張力伝達部材2は、第一伝達部材7と、第二伝達部材8と、を有している。
【0021】
第一伝達部材7は、引張力伝達部材2を上肢アシスト装置に接続するために用いられる。この第一伝達部材7は、伸縮しにくい繊維素材等からなる帯状の部材であって、その外側面には、所定長さに亘って第一面ファスナー部9(
図2に破線で示す)が設けられている。このように構成される第一伝達部材7は、図に詳細は示さないが、その基端部が上肢アシスト装置に接続されている。
【0022】
第二伝達部材8は、引張力伝達部材2を作業者の指に装着するために用いられる。この第二伝達部材8も、伸縮しにくい繊維素材等からなる帯状の部材である。第二伝達部材8は、その内側面に、第一面ファスナー部9に脱着可能な第二面ファスナー部10が所定長さに亘って設けられると共に、その先端部に、指装着部11が設けられている。
【0023】
指装着部11は、作業者による荷物の把持を検知する役割と、上肢アシスト装置の引張力を作業者の指に伝達する役割とを果たす。この指装着部11は、
図1及び
図2に示すように、指サック12と、補助リング13と、を有している。
【0024】
指サック12は、指装着部11を作業者の指に装着するために用いられる。この指サック12は、ゴム部材等からなる筒状の部材であって、その内径及び軸方向長さは、作業者の人差し指を挿通させやすい程度にそれぞれ設定されている。また、指サック12の内側面には、後述する把持検知センサ6を収納し又は取り出すことが可能な、袋状のセンサ収納部14が設けられている。このように構成される指サック12は、引張力伝達部材2の先端部に設けられている。一方、補助リング13は、指装着部11材の指への取り付けを安定させるために用いられる。この補助リング13は、ゴム部材等からなるリング状の部材であって、その内径は、作業者の中指を挿通させやすい程度に設定されている。このように構成される補助リング13は、引張力伝達部材2の先端部に、指サック12に隣接して設けられている。
【0025】
このように構成される第二伝達部材8は、
図2に示すように、その第二面ファスナー部10が第一面ファスナー部9に貼り合わされることにより、第一伝達部材7の先端部に剛的に接続されている。そして、このような引張力伝達部材2の構成によれば、第一面ファスナー部9と第二面ファスナー部10の貼り合わせ位置を適宜調節することにより、引張力伝達部材2の全体の長さを、すなわち上肢アシスト装置への接続位置から指装着部11までの長さを、作業者の体形等に応じて適宜調節することができる。
【0026】
(伸縮バンド)
伸縮バンド3は、引張力伝達部材2と腕部装着部材4とを相対移動可能に接続する役割を果たす。この伸縮バンド3は、ゴム等の弾性部材からなる帯状の部材であって、その横幅は、引張力伝達部材2の横幅と同程度に設定されている。また、伸縮バンド3の長さは、腕部装着部材4の横幅より大きく、本実施形態では2~3倍程度の大きさに設定されている。このように構成される伸縮バンド3は、
図2に示すように、引張力伝達部材2の内側面に沿わせるように配置され、その長さ方向両端部が、引張力伝達部材2に対して縫合等によりそれぞれ固定されている(本発明に係る「弾性部材固定部」に相当)。これにより、伸縮バンド3は、その長手方向両端部のみが引張力伝達部材2にそれぞれ固定され、その長手方向中間部は引張力伝達部材2から離反可能となっている。
【0027】
(腕部装着部材)
腕部装着部材4は、上肢アシスト装置の引張力を作業者の腕部に伝達する役割を果たす。なお、本願明細書における「腕部」とは、作業者の腕全体から指を除いた全ての領域、すなわち、上腕、前腕、手首、及び手の平等を含んだ領域を意味している。この腕部装着部材4は、
図1及び
図2に示すように、装着ベルト15と、接続用バンド16と、ベルト固定具17と、を有している。
【0028】
装着ベルト15は、腕部装着部材4を作業者の手首に装着するために使用される。この装着ベルト15は、伸縮しにくい繊維素材等からなる帯状の部材であって、作業者の手首に巻回可能な程度の長さを有している。このように構成される装着ベルト15は、その長さ方向が引張力伝達部材2の長さ方向と直交するように配置され、段階的伝達機構5を介して、引張力伝達部材2に接続されている。
【0029】
接続用バンド16は、引張力伝達部材2と腕部装着部材4とを相対移動可能に接続する役割を果たす。この接続用バンド16は、ナイロン等の非伸縮性素材からなる帯状の部材であって、その横幅は、装着ベルト15の横幅と同程度に設定されている。また、接続用バンド16の長さは、引張力伝達部材2の横幅より大きく、本実施形態では2~3倍程度の大きさに設定されている。このように構成される接続用バンド16は、
図1及び
図2に示すように、伸縮バンド3と引張力伝達部材2との間の隙間に挿通されると共に、装着ベルト15の内側面に沿わせるように配置され、その長さ方向両端部が、装着ベルト15に対して縫合等によりそれぞれ固定されている。これにより、接続用バンド16は、その長手方向両端部のみが装着ベルト15にそれぞれ固定され、その長手方向中間部は装着ベルト15から離反可能となっている。そして、この接続用バンド16の長手方向中央部が、伸縮バンド3の長手方向中央部に対して縫合等により固定されている(本発明に係る「腕部装着部材固定部」に相当)。これにより、引張力伝達部材2に引張力が作用しない「初期状態」において、接続用バンド16の幅方向両端部と、伸縮バンド3の長さ方向両端部における引張力伝達部材2への固定位置との間には、若干の遊び18がそれぞれ形成されている。
【0030】
ベルト固定具17は、装着ベルト15の長さを調節して適宜の位置で移動不能に固定するために使用される。このベルト固定具17は、樹脂製のいわゆるバックルであって、装着ベルト15の長さ方向一端部に取り付けられている。
【0031】
(段階的伝達機構)
段階的伝達機構5は、上肢アシスト装置から引張力伝達部材2に伝達した引張力を、ワンテンポ遅れて腕部装着部材4に伝達する役割を果たす。この段階的伝達機構5は、
図1及び
図2に示すように、上述の伸縮バンド3と、上述の接続用バンド16と、ストッパ手段19と、を含んで構成される。
【0032】
ストッパ手段19は、引張力伝達部材2の引っ張り方向への移動に伴い、伸縮バンド3に所定長の弾性変形まで許容する一方、所定長を超えた伸縮バンド3の弾性変形を規制する。換言すれば、ストッパ手段19は、引張力伝達部材2と腕部装着部材4とが相対移動するのを所定範囲まで許容する一方、所定範囲を超えて両者が相対移動するのを規制することにより、両者を剛的に接続する。このストッパ手段19は、
図1に示すように、上述の弾性部材固定部と、上述の腕部装着部材固定部と、を含んで構成される。
【0033】
(把持検知センサ)
把持検知センサ6は、作業者が荷物を把持したことを検知する役割を果たす。この把持検知センサ6は、密閉空間に充填された流体の圧力変化を検出する圧力センサユニットである。
図3は、把持検知センサ6の概略構成を示す模式図である。把持検知センサ6は、チューブ状の管状部材20と、その一端部に接続されて内部空間に空気が充填された袋部材21と、管状部材20の他端部に接続されて空気の圧力変化を検出する圧力センサ22と、を有している。このように構成される把持検知センサ6は、その袋部材21が、指サック12の内側面に設けられたセンサ収納部14に挿入されると共に、その圧力センサ22が、引張力伝達部材2の所定箇所に取り付けられている。
【0034】
このような把持検知センサ6の構成によれば、作業者が荷物を把持する際、作業者の指と荷物との間で袋部材21が押し潰されることにより、その内部に充填された空気の圧力が変化する。この空気の圧力変化を圧力センサ22が検出することにより、作業者による荷物の把持を検知することができる。また、センサ収納部14から袋部材21を取り出すことにより、把持検知センサ6を引張力伝達部材2から容易に取り外すことができる。従って、引張力伝達部材2が汚れた場合には、把持検知センサ6を取り外して、引張力伝達部材2だけを洗濯することができる。なお、把持検知センサ6は、本実施形態の圧力センサユニットに限られず、空気以外の流体の圧力変化を検出する圧力センサユニットや、ピエゾ抵抗効果を利用して圧力変化を検出する圧力センサユニット等、作業者による荷物の把持を任意の方式で検出可能なセンサユニットとして構成することが可能である。
【0035】
(上肢アシスト装置用エンドエフェクタの作用効果)
次に、本発明の実施形態に係る上肢アシスト装置用エンドエフェクタ1の作用効果について説明する。
図4は、上肢アシスト装置用エンドエフェクタ1の作用効果を説明する図であり、
図1におけるA-A断面を示している。まず、前述のように、伸縮バンド3の長さは、接続用バンド16の横幅の2~3倍程度の大きさに設定されている。そして、接続用バンド16は、伸縮バンド3の長手方向中央部に固定されている。従って、上肢アシスト装置の引張力が引張力伝達部材2に作用しない初期状態においては、
図4(a)に示すように、接続用バンド16の幅方向両端部と、伸縮バンド3の長さ方向両端部との間には、若干の遊び18がそれぞれ形成されている。すなわち、引張力伝達部材2と腕部装着部材4とは、この遊び18の分だけ相対移動が可能な状態となっている。そしてこの時、腕部装着部材4には、何らの力も作用していない。
【0036】
次に、
図4(a)に示す初期状態から、作業者が荷物を持ち上げるべく指先で荷物を把持すると、それが把持検知センサ6によって検知されることにより、上肢アシスト装置でモータ等が駆動される。これにより、上肢アシスト装置から引張力伝達部材2に対する引張力の伝達が開始する。そうすると、
図4(b)に示すように、引張力伝達部材2は引っ張り方向へ移動を開始する。そしてこの時、上述の遊び18の分だけ引張力伝達部材2には腕部装着部材4に対する相対移動が許容されているため、伸縮バンド3の弾性変形によって腕部装着部材4には若干の引張力が作用するものの、腕部装着部材4は引っ張り方向へは移動しない。すなわち、腕部装着部材4は初期状態の位置に留まったまま、引張力伝達部材2だけが引っ張り方向へ移動する。そうすると、図に詳細は示さないが、荷物を把持する際に作業者の指が内向きに曲がることにより、引張力伝達部材2の指装着部11付近には若干の弛みが生じるが、この弛みは引張力伝達部材2の引っ張り方向への移動によって解消される。その後、上肢アシスト装置の引張力は、引張力伝達部材2の指装着部11を介して、その大部分が作業者の指に伝達される。これにより、作業者の荷物を把持する動作が、上肢アシスト装置の引張力によって支援される。
【0037】
その後、引張力伝達部材2が引っ張り方向へ更に移動すると、
図4(c)に示すように、上述の遊び18が失われ、伸縮バンド3の引張力伝達部材2への固定部が、腕部装着部材4の接続用バンド16に接触する位置に到達する。これにより、引張力伝達部材2と腕部装着部材4とは相対移動が規制された状態となり、伸縮バンド3の弾性変形が規制され、引張力伝達部材2と腕部装着部材4とが剛的に接続された状態となる。その後は、
図4(d)に示すように、引張力伝達部材2が引っ張り方向へ更に移動すると、それと一体的に腕部装着部材4も引っ張り方向へ移動し、引張力伝達部材2に作用する引張力と等しい大きさの引張力が、腕部装着部材4にも作用するようになる。これにより、作業者の荷物を持ち上げる動作が、上肢アシスト装置の引張力によって支援される。
【0038】
このように、段階的伝達機構5によれば、引張力伝達部材2の指装着部11を介して作業者の指に引張力が伝達し始めてから、所定時間経過後に、それと等しい大きさの引張力が腕部装着部材4を介して作業者の腕部に伝達される。従って、上肢アシスト装置の引張力によって、作業者が荷物を把持する動作と、作業者が荷物を持ち上げる動作の両方を支援することができる。
【0039】
(変形例)
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。例えば、本発明の実施形態としては、以下に示すような変形例が考えられる。
【0040】
本実施形態では、
図1に示すように、引張力伝達部材2の指装着部11が、作業者の人差し指に装着するための1個の指サック12と、中指に装着するための1個の補助リング13とを有している。しかし、指装着部11は、作業者の1本以上の任意の指に装着可能であれば足り、指サック12及び補助リング13の個数や装着される指は本実施形態に限定されない。例えば、指サック12のみで指装着部11を構成することや、或いは複数個の補助リング13を設けて複数本の指にそれぞれ装着することも可能である。
【0041】
本実施形態では、
図1に示すように、腕部装着部材4を引張力伝達部材2に接続するために、装着ベルト15の内側面に接続用バンド16を設けている。しかし、接続用バンド16は本発明に必須の構成ではなく、装着ベルト15及びベルト固定具17のみで腕部装着部材4を構成することも可能である。この場合、引張力伝達部材2と伸縮バンド3との間の隙間に、腕部装着部材4を構成する装着ベルト15を挿通させ、この装着ベルト15と伸縮バンド3とを縫合等により固定すればよい。
【0042】
本実施形態では、
図1に示すように、腕部装着部材4を構成する接続用バンド16が、伸縮バンド3の長手方向中央部に固定されている。しかし、伸縮バンド3における接続用バンド16の固定位置は、本実施形態に限定されず、長手方向中間部すなわち長手方向両端部を除いた任意の位置に固定することが可能である。すなわち、伸縮バンド3の長手方向先端部における引張力伝達部材2への固定位置と接続用バンド16の幅方向端部との間に、上述の遊び18が形成される範囲内であれば、伸縮バンド3の任意の位置に接続用バンド16を固定することが可能である。
【0043】
本実施形態では、
図1に示すように、腕部装着部材4は、その装着ベルト15を用いて作業者の手首に装着される。しかし、腕部装着部材4は、作業者の腕部に対して引張力を伝達可能であれば、その装着位置や装着態様は本実施形態に限定されない。例えば、作業者の上腕や前腕に腕部装着部材4が装着されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る上肢アシスト装置用エンドエフェクタ1は、その段階的伝達機構5として、指装着部11への引張力の伝達が開始してから所定時間経過後に、それと等しい大きさの引張力を腕部装着部材4に対して伝達することが可能な、任意の機構を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 上肢アシスト装置用エンドエフェクタ
2 引張力伝達部材
4 腕部装着部材
5 段階的伝達機構
6 把持検知センサ
7 第一伝達部材
8 第二伝達部材
9 第一面ファスナー部
10 第二面ファスナー部
11 指装着部
12 指サック
13 補助リング
14 センサ収納部
19 ストッパ手段
21 袋部材
22 圧力センサ