(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152466
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】波長変換光学系
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20241018BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20241018BHJP
F21V 9/40 20180101ALI20241018BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20241018BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20241018BHJP
【FI】
G03B21/14 A
G03B21/00 D
F21V9/40 200
H04N5/74 A
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066687
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】山岸 成多
(72)【発明者】
【氏名】山縣 侑生
【テーマコード(参考)】
2K203
5C058
【Fターム(参考)】
2K203FA07
2K203FA25
2K203FA34
2K203FA45
2K203GA23
2K203GA33
2K203GA35
2K203GA36
2K203GA40
2K203HA08
2K203HA15
2K203HA30
2K203HA33
2K203HA67
2K203HA82
2K203HA92
2K203HB19
2K203HB22
2K203HB26
2K203MA32
5C058BA35
5C058EA02
5C058EA12
5C058EA13
(57)【要約】
【課題】光学系の部品点数を削減でき、装置の小型化を容易に実現できる波長変換光学系を提供する。
【解決手段】本開示に係る波長変換光学系は、レーザ光を発生する光源を含み、第1波長帯の第1光を出射する光源部と、波長変換部と、光源部からの第1光を波長変換部へ導く第1光学素子と、を備え、波長変換部は、第1光学素子から第1光を受光し、第1光の一部を第1波長帯と異なる第2波長帯の第2光に変換し、第1光の他の一部から第1波長帯の第3光を生成して、第1光学素子へ出射し、第1光学素子は、第1領域と第1領域に囲まれる第2領域とを有し、第1領域において光源部からの第1光を反射し、第2領域において波長変換部からの第2光及び第3光の少なくとも一部を透過させて出射するか、又は、第1領域において光源部からの第1光を透過させ、第2領域において波長変換部からの第2光及び第3光の少なくとも一部を反射して出射する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発生する光源を含み、第1波長帯の第1光を出射する光源部と、
波長変換部と、
前記光源部からの前記第1光を前記波長変換部へ導く第1光学素子と、
を備え、
前記波長変換部は、前記第1光学素子から前記第1光を受光し、前記第1光の一部を前記第1波長帯と異なる第2波長帯の第2光に変換し、前記第1光の他の一部から前記第1波長帯の第3光を生成して、前記第1光学素子へ出射し、
前記第1光学素子は、第1領域と前記第1領域に囲まれる第2領域とを有し、前記第1領域において前記光源部からの前記第1光を反射し、前記第2領域において前記波長変換部からの前記第2光及び前記第3光の少なくとも一部を透過させて出射する、
波長変換光学系。
【請求項2】
レーザ光を発生する光源を含み、第1波長帯の第1光を出射する光源部と、
波長変換部と、
前記光源部からの前記第1光を前記波長変換部へ導く第1光学素子と、
を備え、
前記波長変換部は、前記第1光学素子から前記第1光を受光し、前記第1光の一部を前記第1波長帯と異なる第2波長帯の第2光に変換し、前記第1光の他の一部から前記第1波長帯の第3光を生成して、前記第1光学素子へ出射し、
前記第1光学素子は、第1領域と前記第1領域に囲まれる第2領域とを有し、前記第1領域において前記光源部からの前記第1光を透過させ、前記第2領域において前記波長変換部からの前記第2光及び前記第3光の少なくとも一部を反射して出射する、
波長変換光学系。
【請求項3】
前記光源部は、第2光学素子を含み、
前記第2光学素子は、前記光源からのレーザ光を、環状の光ビームに変換して前記第1光として出射し、
前記第2領域は、前記第1光学素子における前記第1光の環状の光ビームの内側にある、
請求項1又は2に記載の波長変換光学系。
【請求項4】
前記波長変換部は、集光レンズと波長変換素子とを備え、
前記第1光は、第1光軸に沿って環状の光ビームとして前記集光レンズに入射し、前記波長変換素子に集光され、
前記第2光と前記第3光とは、前記波長変換素子から前記集光レンズを透過して前記第1光軸上から出射される、
請求項3に記載の波長変換光学系。
【請求項5】
前記波長変換素子は、前記第1光の入射方向に沿って配置された蛍光体と反射層とを含み、
前記蛍光体は、前記第1光の一部により励起され、前記第2波長帯の光を発光し、
前記反射層は、前記第2波長帯の光及び前記第1光の他の一部を前記第2光及び前記第3光として拡散反射させる、
請求項4に記載の波長変換光学系。
【請求項6】
前記波長変換素子は、
回転可能な基板と、前記基板の回転方向に沿って前記基板上に設けられた第1発光領域及び第2発光領域とを含み、
前記第1発光領域は、前記第1光の一部により励起され、前記第2波長帯の光を発光する蛍光体を有し、
前記第2発光領域は、前記第1光の他の一部を前記第3光として拡散反射させる反射層を有する、
請求項4に記載の波長変換光学系。
【請求項7】
前記波長変換素子は、互いに異なる2つ以上の波長帯の光を発光する蛍光体を含む、
請求項5に記載の波長変換光学系。
【請求項8】
前記波長変換部は、拡散板を更に備え、
前記第1光は、前記拡散板の外周部を透過して前記集光レンズに入射し、前記集光レンズを透過した前記第2光と前記第3光とは、前記拡散板の中央部を透過して出射され、
前記拡散板は、前記外周部を透過する光に対し、前記中央部を透過する光よりも大きい角度で拡散させるように構成されている、
請求項4に記載の波長変換光学系。
【請求項9】
前記拡散板の前記第2光と前記第3光との光路に該当する中央部は中空である、
請求項8記載の波長変換光学系。
【請求項10】
前記第2光学素子は、2つのアキシコンレンズを含み、
2つの前記アキシコンレンズは、前記光源からのレーザ光を環状の平行な光ビームに変換し、前記第1光として出射する、
請求項3に記載の波長変換光学系。
【請求項11】
前記第2光学素子は、アキシコンレンズとアキシコンミラーとを含み、
前記アキシコンレンズと前記アキシコンミラーとは、前記光源からのレーザ光を環状の平行な光ビームに変換し、前記第1光として出射する、
請求項3に記載の波長変換光学系。
【請求項12】
前記光源部は、第2光学素子を含み、
前記第2光学素子は、2つの透過型アキシコンプリズムを含み、
2つの前記透過型アキシコンプリズムは、前記光源からのレーザ光を円周に沿って配される複数の平行な光ビームに変換し、前記第1光として出射し、
前記第2領域は、前記第1光学素子における前記第1光の複数の平行な光ビームの内側にある、
請求項1又は2に記載の波長変換光学系。
【請求項13】
前記光源部は、第2光学素子を含み、
前記第2光学素子は、透過型アキシコンプリズムと反射型アキシコンプリズムとを含み、
前記透過型アキシコンプリズムと前記反射型アキシコンプリズムとは、前記光源からのレーザ光を円周に沿って配される複数の平行な光ビームに変換し、前記第1光として出射し、
前記第2領域は、前記第1光学素子における前記第1光の複数の平行な光ビームの内側にある、
請求項1又は2に記載の波長変換光学系。
【請求項14】
前記第1光学素子の前記第1領域は、前記第1光のS偏光成分を反射する特性を有する、
請求項1に記載の波長変換光学系。
【請求項15】
前記第1光学素子の前記第1領域は、前記第1光のP偏光成分を透過する特性を有する、
請求項2に記載の波長変換光学系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、入射光を異なる波長の光に変換して出射する波長変換光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、投写型映像表示装置の照明光学系としてレーザ光源を用いる場合が増えつつある。そのような照明光学系を備える投写型映像表示装置のうち、例えば、3板式投写型映像表示装置では、青色レーザ光で励起された蛍光体により生成された黄色光と、別途に設けた光学系からの青色光とを合成して白色照明光を生成する照明光学系が用いられる。また、単板式投写型映像表示装置の照明光学系は、青色レーザ光で励起されて赤色及び緑色の蛍光光を発生させる蛍光体部分と、レーザ光による青色光を出射する部分とをそれぞれ設けられた蛍光体ホイールを回転させて、R/G/Bの3原色の光を時間的に分割して1つの光変調素子に導くように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の投写型映像表示装置の照明光学系の構成では、例えば、レーザ光源を用いた場合、レーザ光は、蛍光体の励起光として利用されるとともに、白色照明光を合成するための青色光としても利用される。そのため、照明光学系において、蛍光体を励起するための励起光と照明光を合成するための青色光とを、異なる光路を設けて伝搬させるように波長変換光学系を構成する必要がある。その結果、照明光学系を始め、投写型映像表示装置全体の大型化や構成部品の複雑化となり、コストアップが生じる。そこで、例えば、特許文献1の照明光学系が提案されている。
【0005】
特許文献1に開示された照明光学系は、領域を分けて入射光を反射するミラーが用いられ、レーザ光源による青色光はミラーの周辺領域によって反射され、レーザ光源により励起された緑色及び赤色の蛍光光はミラーの内側領域によって反射されて、インテグレータロッドに集光するように構成されている。当該照明光学系では、蛍光体を励起するための励起光と照明光を合成するための青色光との別々の伝搬光路を設けることなく、単一の光源を用いて波長変換光学系を構成し、白色照明光を得ることができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1の照明光学系の構成では、インテグレータロッドの後では、赤色及び緑色の蛍光光は照明光学系の出射光軸に対して小さい角度で伝搬し、青色光は照明光学系の出射光軸に対して大きい角度で伝搬することとなる。そのため、当該照明光学系を投写型映像表示装置に適用したとき、投写映像に色の不均一の発生が課題となる。したがって、照明光学系において、簡単な光路構成で白色照明光を実現する点で、従来の波長変換光学系の構成は未だ改善の余地がある。
【0007】
本開示は、このような状況を鑑みてなされたものであって、光学系の部品点数を削減でき、装置の小型化を容易に実現できる波長変換光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本開示の一態様に係る波長変換光学系は、レーザ光を発生する光源を含み、第1波長帯の第1光を出射する光源部と、波長変換部と、光源部からの第1光を波長変換部へ導く第1光学素子と、を備え、波長変換部は、第1光学素子から第1光を受光し、第1光の一部を第1波長帯と異なる第2波長帯の第2光に変換し、第1光の他の一部から第1波長帯の第3光を生成して、第1光学素子へ出射し、第1光学素子は、第1領域と第1領域に囲まれる第2領域とを有し、第1領域において光源部からの第1光を反射し、第2領域において波長変換部からの第2光及び第3光の少なくとも一部を透過させて出射する。
【0009】
また、前記目的を達成するために、本開示の他の態様に係る波長変換光学系は、レーザ光を発生する光源を含み、第1波長帯の第1光を出射する光源部と、波長変換部と、光源部からの第1光を波長変換部へ導く第1光学素子と、を備え、波長変換部は、第1光学素子から第1光を受光し、第1光の一部を第1波長帯と異なる第2波長帯の第2光に変換し、第1光の他の一部から第1波長帯の第3光を生成して、第1光学素子へ出射し、第1光学素子は、第1領域と第1領域に囲まれる第2領域とを有し、第1領域において光源部からの第1光を透過させ、第2領域において波長変換部からの第2光及び第3光の少なくとも一部を反射して出射する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の態様に係る波長変換光学系によれば、光学系の部品点数を削減でき、装置の小型化を容易に実現することができる。これによって、コンパクトで、高い画質の投写映像を実現可能な投写型映像表示装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る波長変換光学系及び照明光学系の構成を示す概略図
【
図2】
図1の波長変換光学系の合成ミラーの構成を示す概略斜視図
【
図3】
図1の波長変換光学系の蛍光体ホイールの構成例を示す図
【
図4】
図1の照明光学系を適用した投写型映像表示装置の構成例を示す概略図
【
図5】本開示の実施の形態2に係る波長変換光学系を備える照明光学系及び当該照明光学系を適用した投写型映像表示装置の構成例を示す概略図
【
図6】
図5の波長変換光学系の蛍光体ホイールの構成例を示す図
【
図7】
図5の照明光学系のカラーホイールの構成例を示す図
【
図9】本開示の実施の形態3に係る波長変換光学系及び照明光学系の構成を示す概略図
【
図10】本開示の実施の形態4に係る波長変換光学系及び照明光学系の構成を示す概略図
【
図11】本開示の実施の形態5に係る波長変換光学系及び照明光学系の構成を示す概略図
【
図12】
図11波長変換光学系のアキシコンプリズムの構成を示す概略斜視図
【
図13】
図11の波長変換光学系の合成ミラー及び合成ミラーにおける青色光ビームの入射位置を示す概略斜視図
【
図14】
図11の波長変換光学系の合成ミラーの別の構成を示す概略斜視図
【
図15】本開示の実施の形態6に係る波長変換光学系及び照明光学系の構成を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の第1態様によれば、レーザ光を発生する光源を含み、第1波長帯の第1光を出射する光源部と、波長変換部と、光源部からの第1光を波長変換部へ導く第1光学素子と、を備え、波長変換部は、第1光学素子から第1光を受光し、第1光の一部を第1波長帯と異なる第2波長帯の第2光に変換し、第1光の他の一部から第1波長帯の第3光を生成して、第1光学素子へ出射し、第1光学素子は、第1領域と第1領域に囲まれる第2領域とを有し、第1領域において光源部からの第1光を反射し、第2領域において波長変換部からの第2光及び第3光の少なくとも一部を透過させて出射する、波長変換光学系を提供する。
【0013】
本開示の第2態様によれば、レーザ光を発生する光源を含み、第1波長帯の第1光を出射する光源部と、波長変換部と、光源部からの第1光を波長変換部へ導く第1光学素子と、を備え、波長変換部は、第1光学素子から第1光を受光し、第1光の一部を第1波長帯と異なる第2波長帯の第2光に変換し、第1光の他の一部から第1波長帯の第3光を生成して、第1光学素子へ出射し、第1光学素子は、第1領域と第1領域に囲まれる第2領域とを有し、第1領域において光源部からの第1光を透過させ、第2領域において波長変換部からの第2光及び第3光の少なくとも一部を反射して出射する、波長変換光学系を提供する。
【0014】
第1態様と第2態様とのいずれかによれば、光学系の部品点数を削減でき、装置の小型化を容易に実現することができる。
【0015】
本開示の第3態様によれば、光源部は、第2光学素子を含み、第2光学素子は、光源からのレーザ光を、環状の光ビームに変換して第1光として出射し、第2領域は、第1光学素子における第1光の環状の光ビームの内側にある、第1又は第2態様に記載の波長変換光学系を提供する。
【0016】
本開示の第4態様によれば、波長変換部は、集光レンズと波長変換素子とを備え、第1光は、第1光軸に沿って環状の光ビームとして集光レンズに入射し、波長変換素子に集光され、第2光と第3光とは、波長変換素子から集光レンズを透過して第1光軸上から出射される、第3態様に記載の波長変換光学系を提供する。
【0017】
本開示の第5態様によれば、波長変換素子は、第1光の入射方向に沿って配置された蛍光体と反射層とを含み、蛍光体は、第1光の一部により励起され、第2波長帯の光を発光し、反射層は、第2波長帯の光及び第1光の他の一部を第2光及び第3光として拡散反射させる、第4態様に記載の波長変換光学系を提供する。
【0018】
本開示の第6態様によれば、波長変換素子は、回転可能な基板と、基板の回転方向に沿って基板上に設けられた第1発光領域及び第2発光領域とを含み、第1発光領域は、第1光の一部により励起され、第2波長帯の光を発光する蛍光体を有し、第2発光領域は、第1光の他の一部を第3光として拡散反射させる反射層を有する、第4態様に記載の波長変換光学系を提供する。
【0019】
本開示の第7態様によれば、波長変換素子は、互いに異なる2つ以上の波長帯の光を発光する蛍光体を含む、第5又は第6態様に記載の波長変換光学系を提供する。
【0020】
本開示の第8態様によれば、波長変換部は、拡散板を更に備え、第1光は、拡散板の外周部を透過して集光レンズに入射し、集光レンズを透過した第2光と第3光とは、拡散板の中央部を透過して出射され、拡散板は、外周部を透過する光に対し、中央部を透過する光よりも大きい角度で拡散させるように構成されている、第4から第7態様のいずれか1つに記載の波長変換光学系を提供する。
【0021】
本開示の第9態様によれば、拡散板の第2光と第3光との光路に該当する中央部は中空である、第8態様に記載の波長変換光学系を提供する。
【0022】
本開示の第10態様によれば、第2光学素子は、2つのアキシコンレンズを含み、2つのアキシコンレンズは、光源からのレーザ光を環状の平行な光ビームに変換し、第1光として出射する、第3から第9態様のいずれか1つに記載の波長変換光学系を提供する。
【0023】
本開示の第11態様によれば、第2光学素子は、アキシコンレンズとアキシコンミラーとを含み、アキシコンレンズとアキシコンミラーとは、光源からのレーザ光を環状の平行な光ビームに変換し、第1光として出射する、第3から第9態様のいずれか1つに記載の波長変換光学系を提供する。
【0024】
本開示の第12態様によれば、光源部は、第2光学素子を含み、第2光学素子は、2つの透過型アキシコンプリズムを含み、2つの透過型アキシコンプリズムは、光源からのレーザ光を円周に沿って配される複数の平行な光ビームに変換し、第1光として出射し、第2領域は、第1光学素子における第1光の複数の平行な光ビームの内側にある、第1又は第2態様に記載の波長変換光学系を提供する。
【0025】
本開示の第13態様によれば、光源部は、第2光学素子を含み、第2光学素子は、透過型アキシコンプリズムと反射型アキシコンプリズムとを含み、透過型アキシコンプリズムと反射型アキシコンプリズムとは、光源からのレーザ光を円周に沿って配される複数の平行な光ビームに変換し、第1光として出射し、第2領域は、第1光学素子における第1光の複数の平行な光ビームの内側にある、第1又は第2態様に記載の波長変換光学系を提供する。
【0026】
本開示の第14態様によれば、第1光学素子の第1領域は、第1光のS偏光成分を反射する特性を有する、第1又は第3から第13態様のいずれか1つに記載の波長変換光学系を提供する。
【0027】
本開示の第15態様によれば、第1光学素子の第1領域は、第1光のP偏光成分を透過する特性を有する、第2から第13態様のいずれか1つに記載の波長変換光学系を提供する。
【0028】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0029】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0030】
本開示の実施の形態に係る波長変換光学系、並びにそれを備える照明光学系及びその照明光学系を用いた投写型映像表示装置について、
図1乃至
図10を参照しながら説明する。添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供するものであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。また、各図においては、説明を容易なものとするため、各要素を誇張して示している。なお、図面において実質的に同一の部材については、同一の符号を付している。
【0031】
(実施の形態1)
図1から
図4を参照して本開示の実施の形態1に係る波長変換光学系及び照明光学系、並びに実施の形態1に係る波長変換光学系を備える照明光学系を適用した3板式投写型映像表示装置を説明する。
図1は、本開示の実施の形態1に係る波長変換光学系51及び照明光学系100の構成を示す概略図である。
図2は、
図1の波長変換光学系51の合成ミラー105の構成を示す概略斜視図である。
図3は、
図1の波長変換光学系51の蛍光体ホイール110の構成例を示す図であって、
図3の(a)は、
図1のX-Z平面において、+Y方向に面する蛍光体ホイール110の正面を示し、
図3の(b)は、
図2のX-Y平面における蛍光体ホイール110の側面を示している。
図4は、
図1の照明光学系100を適用した投写型映像表示装置200の構成例を示す概略図である。なお、
図1及び
図4は、X-Y面において照明光学系100及び投写型映像表示装置200の構成を示している。
【0032】
実施の形態1に係る照明光学系100は、
図1に示すように、波長変換光学系51と、集光レンズ116、ロッドインテグレータ117とを備えている。照明光学系100は、白色照明光Liを出射するように構成されている。
【0033】
<実施の形態1に係る波長変換光学系>
本実施の形態では、波長変換光学系51は、光源部11と、合成ミラー105と、波長変換部21とによって構成されている。なお、本明細書では、「合成ミラー」は、「第1光学素子」とも称す。
【0034】
波長変換光学系51の光源部11は、光源101と、1対のアキシコンレンズ102,103とを含むことができる。光源101は、例えば、複数の半導体レーザ(LD)によって構成される。本実施の形態では、青色光を出射する半導体レーザ素子(図示せず)を使用して光源101を構成することができる。光源101から出射される青色レーザ光は、波長が455nm付近であって、映像光として用いられるとともに、蛍光体ホイール110の蛍光体層を励起するための励起光としても用いられる。
【0035】
光源101から発された青色レーザ光は、光軸Oaに沿って図示+X方向に出射され、円錐状のレンズ面を有する第1アキシコンレンズ102に入射し、第1アキシコンレンズ102によって、環状の光ビームに変換されたのち、同様に円錐状のレンズ面を有する第2アキシコンレンズ103によって環状の平行な光ビームに変換される。当該環状の平行な光ビームの青色光LEは、光源部11から出射され、図示+X方向に合成ミラー105に入射する。
【0036】
本明細書では、光源部において、レーザ光を環状の光ビームに変換させる光学系であって、アキシコンレンズ、又はアキシコンレンズ及びアキシコンミラー、又はアキシコンプリズムを含む光学系は、「第2光学素子」又は「アキシコン系」とも称す。
【0037】
なお、本明細書における「平行な光ビーム」とは、完全に平行な光ビームだけでなく、実際に、光学系上の誤差を考慮したものであって、例えば、±5度程度の収束角又は発散角が含まれた略平行光ビームであってもよい。
【0038】
合成ミラー105は、
図1に示すように、光軸Oaに対して45度を成すように傾斜を持って配置される。
図2に示すように、合成ミラー105は、第1領域105aと、第1領域105aに囲まれている第2領域105bとを有する。本実施の形態では、第1領域105aは、波長が455nm付近の青色光を反射する特性を有する反射膜が施され、第2領域105bは、中空な開口として構成されてもよく、可視光域の光を透過させる透明素材で構成されてもよい。
【0039】
光源部11から入射した青色光LEは、環状の光ビームとして合成ミラー105に入射する。本実施の形態では、合成ミラー105は、第2領域105bが、合成ミラー105における光源部11からの青色光の環状の光ビームの内側にあるように構成することができる。これによって、光源部11からの青色光LEは、合成ミラー105の第1領域105aに入射し、第1領域105aの青色光反射膜で反射して光軸Obに沿って図示-Y方向に進み、波長変換部21へ導かれる。
【0040】
なお、
図2では、第1領域105aを中空の矩形状に、第2領域105bを円形状に示しているが、本開示はこれに限定されない。本開示は、合成ミラー105の大きさや形状、又は第1領域105aと第2領域105bとの形状に限定されない。合成ミラーは用途に応じた大きさや形状を有してもよく、第1領域と第2領域とは、他の形状を有してもよい。
【0041】
波長変換部21は、本実施の形態では、集光レンズ107,108と、波長変換素子である蛍光体ホイール110とを含む。合成ミラー105の第1領域105aで反射した青色光LEは、光軸Obに沿って環状の光ビームとして前集光レンズ107に入射する。好ましくは、合成ミラー105の第1領域105aで反射した青色光LEは、環状の平行な光ビームとして前集光レンズ107の外周部に入射し、その後、後集光レンズ108を経て、蛍光体ホイール110に集光される。
【0042】
本実施の形態の蛍光体ホイール110は、例えば、3つの光変調素子を備える3板式の投写型映像表示装置の照明光学系において利用することができる。
図3に示すように、蛍光体ホイール110は、中央部のモータ111と、モータ111により回転駆動される円盤状の基板112とによって構成されている。
【0043】
基板112は、例えば、アルミニウム製であって、モータ111の駆動により、回転軸111aを中心に図示回転方向Aに回転することができる。基板112を回転させることによって、励起光による基板112上の蛍光体層の温度上昇を抑制し、波長変換効率を安定に維持することができる。
【0044】
図3の(a)に示す基板112の表面上に、反射層113が形成され、当該反射層113は、励起光、及び、励起光により励起された蛍光体が発光した蛍光光を拡散反射する特性を有するように構成することができる。
【0045】
図3の(a)に示すように、反射層113上には、環状の蛍光体層115が配置されている。蛍光体層115は、入射した青色光によって励起され、青色光の波長帯と異なる波長帯の蛍光光を発光することができる。
図3には、1種の蛍光体を有する蛍光体ホイール110の構成例を示しているが、本開示はこれに限定されない。例えば、蛍光体ホイール110は、互いに異なる2つ以上の波長帯の光を発光する2種以上の蛍光体を有するように構成することもできる。これについて、実施の形態2において、
図6を参照して後段で説明する。
【0046】
本実施の形態では、蛍光体層115は、入射した青色光LEの一部を吸収して励起され、黄色蛍光光LFを発するとともに、入射した青色光LEの他の一部を透過させる特性を有する。蛍光体層115によって発生された黄色蛍光光LFと、青色光LEの他の一部である青色光LBとは、反射層113で拡散反射し、図示+Y方向に再び集光レンズ108,107の順に入射する。なお、本実施の形態では、反射層113は、蛍光体層115と同様な拡散反射特性を有し、蛍光体層115により発光された蛍光光と類似の角度分布をもって入射した青色光LEを反射することができる。これによって、黄色蛍光光LFと青色光LBとは、均一な角度分布を有して再び集光レンズ108,107の順に入射することができる。ちなみに、ここでいう青色光LEと青色光LBとは波長が同じであることは自明である。
【0047】
図示+Y方向に進む黄色蛍光光LFと青色光LBとは、集光レンズ108,107を透過して、光軸Obの軸上から平行な光ビームとして出射される。このように集光レンズ108,107を透過して光軸Obの軸上から出射された黄色蛍光光LFと青色光LBとは、更に光軸Obに沿って図示+Y方向に進み、合成ミラー105の中央部の第2領域105bに到達することができる。
【0048】
合成ミラー105の第2領域105bは、前述したように、開口又は可視光域の光が透過するように構成されているため、合成ミラー105の第2領域105bに到達した黄色蛍光光LFと青色光LBとは、白色の照明光を合成して第2領域105bから出射する。出射した照明光は、集光レンズ116によりロッドインテグレータ117の入射面117aに集光される。ロッドインテグレータ107に入射した照明光は、ロッドインテグレータ107の内部で複数回反射することにより、光強度分布が均一化された白色照明光Liとして照明光学系100から出射される。
【0049】
なお、本実施の形態では、出射する照明光の均一性を上げる手段として、ロッドインテグレータを利用しているが、本開示はこれに限定されない。例えば、ロッドインテグレータに代えて、ミラーを組み合わせての中空のインテグレータでも同様に使用可能である。また、少なくとも2枚のレンズアレイからなるレンズアレイタイプのインテグレータでも使用可能である。
【0050】
集光レンズ108,107を透過して光軸Obの軸上から出射された黄色蛍光光LFと青色光LBとは、第2領域105bよりも大きい光ビームで合成ミラー105に到達する場合がある。合成ミラー105の第1領域105aに施された反射膜は、青色光以外の色域の光を透過する特性を有するように構成することができる。これによって、合成ミラー105の第1領域105aに到達した青色光LBの部分は反射膜で反射して照明光Liの出射光軸Obから離れるが、第1領域105aに到達した黄色蛍光光LFの部分は第1領域105aの反射膜を透過し、集光レンズ116を経てロッドインテグレータ117に到達することができる。このように、合成ミラー105の第1領域105aで青色光LBの一部が損失となる場合がある。これを補うために、例えば、波長変換部21の後集光レンズ108から出射される光において、青色光LBの配分が多く含まれるように、蛍光体ホイール110の蛍光体層115の波長変換率を設計することによって、照明光学系100から良好なホワイトバランスの白色照明光を出射することができる。
【0051】
又は、合成ミラー105の第1領域105aに施された反射膜は、可視光域の光を反射するように構成することもできる。これによって、合成ミラー105の第1領域105aに到達した青色光LBの部分と黄色蛍光光LFの部分との両方が反射膜で反射して照明光Liの出射光軸Obから離れるため、波長変換部21の後集光レンズ108から出射される光の色バランスが変化することなく、照明光学系100から白色照明光を得ることができる。
【0052】
更に代替的に、例えば、光源部11は、偏光素子を設けて、合成ミラー105に対して、例えば、青色光のS偏光光を入射するように構成することができる。このとき、合成ミラー105の第1領域105aにおいて、青色光のS偏光成分のみを反射する特性を有する反射膜を施すことができる。蛍光体ホイール110から後集光レンズ108を出射される光のうち、無偏光光、すなわち、電場ベクトルの方向がランダムな光の内P偏光成分は、合成ミラー105の第1領域105aにおけるS偏光成分のみを反射する反射膜を透過してロッドインテグレータ117に入射することができる。このようにして、光損失なく白色照明光を出射することができる。また、光源部11のレーザ光源が偏光光を出射する場合、偏光方向を合成ミラー105についてS偏光方向になるようにレーザ光源が設置されていれば上記偏光素子が必要ないことは言うまでもない。
【0053】
このように、本実施の形態に係る波長変換光学系51は、光源部11からの青色光LEと、波長変換部21からの蛍光光LFと青色光LBとが、共通の第1光学素子である合成ミラー105を経由し、光の分離及び合成を実現するように構成されている。これによって、光学系の部品点数を削減でき、装置の小型化を容易に実現することができる。
【0054】
本開示の波長変換光学系51は、波長選択型偏光ビームスプリッタやダイクロイックミラーを利用することなく、シンプルかつ安価に作製できる合成ミラー105を用いて構成することができる。また、本実施の形態では、合成ミラー105の中央部における第2領域105bは、開口として構成することができる。そのため、出射される照明光Liの最も光密度の高い光ビームの中心付近に、何ら作用を及ぼさないことから、光強度のみならず、色や均一性においても安定した照明光を提供することができる。更に、出射される照明光Liを合成するための青色光は、照明光学系の出射光軸Obに沿って伝搬するため、本開示の波長変換光学系を備える照明光学系を用いて、従来技術に比べて、コンパクトで、高い画質の投写映像を実現可能な投写型映像表示装置を構成することができる。
【0055】
本実施の形態に係る波長変換光学系51を備える照明光学系100を適用した投写型映像表示装置の一例として、
図4を参照して、3板式投写型映像表示装置200を説明する。
図4の投写型映像表示装置200の照明光学系100は、前述した実施の形態1に係る照明光学系100である。
図4において、同様な要素について、同じ符号を付しており、説明を省略する。
【0056】
図4に示すように、照明光学系100から出射された照明光Liはリレー光学系201に入射する。リレー光学系201はレンズ202、203、204と、ミラー205とを含み、照明光Liを、全反射プリズム206に導く。
【0057】
全反射プリズム206は、第1のプリズム207と第2のプリズム208とによって構成され、第1のプリズム207と第2のプリズム208との近接面には薄い空気層(エアギャップ)が形成されている。全反射プリズム206に入射した光は全反射面209で全反射された後、カラープリズムユニット210に入射する。
【0058】
カラープリズムユニット210は、青色光を反射する特性を備えた青色光反射ダイクロイックミラー面211を備えた第一のプリズム212と、赤色光を反射する特性を備えた赤色光反射ダイクロイックミラー面213を備えた第2のプリズム214と、第3のプリズム215とを接着固定して構成される。また、第一のプリズム212と第2のプリズム214との間は全反射を利用するため、エアギャップが設けられている。
【0059】
カラープリズムユニット210の各プリズムの端面には、図示のように、光変調素子であるDMD(Digital Micromirror Device)216R,216G,216Bが配置されている。これらDMDは、マイクロミラーを2次元的に配置することによって構成され、映像信号に従ってマイクロミラーを偏向させ、入射光を、投写光学系218に向かう反射光と、投写光学系218の有効外へ進む反射光とに分離する。なお、
図4に示す投写型映像表示装置200において、DMD216Bは青光変調用,DMD216Rは赤光変調用,DMD216Gは緑光変調用である。DMD216R,216G,216Bにより反射された光は、再びカラープリズムユニット210を透過する。
【0060】
カラープリズムユニット210を透過する過程で、分離された青色光、赤色光、及び緑色光が合成され、全反射プリズム206に入射する。全反射プリズム206に入射した光は臨海角以下で空気層に入射するので、全反射プリズム206を透過して、光軸Ocに沿って図示+Y方向に進み、投写光学系218に入射する。このようにして、DMD216R,216G,216Bにより形成された映像光がスクリーン等の投写対象物(図示せず)上に拡大投写される。
【0061】
前述したように、本開示に係る波長変換光学系51は、数少ない光学部品で小型に構成され、波長変換光学系51を備える照明光学系100を用いて、高い画質の投写映像を実現可能な投写型映像表示装置を構成することができる。光変調素子として、DMDを用いていることで、液晶パネルを用いた光変調素子と比べて、高い耐光性及び耐熱性を有する投写型映像表示装置を構成することができる。また、3つのDMDを用いる3板式投写型映像表示装置は、色再現性が良好で、明るく高精細な投写映像を得ることができる。ただし、一定の光出力以下であれば光変調素子として液晶パネルに置き換えることが可能なことは同業者には周知であるので、ここで詳細な説明は割愛する。
【0062】
(実施の形態2)
図5から
図7を参照して本開示の実施の形態2に係る波長変換光学系及び照明光学系、並びに実施の形態2に係る波長変換光学系を備える照明光学系を適用した単板式投写型映像表示装置を説明する。
図5は、本開示の実施の形態2に係る波長変換光学系53を備える照明光学系300及び当該照明光学系300を適用した投写型映像表示装置400の構成例を示す概略図である。
図6は、
図5の波長変換光学系53の蛍光体ホイール310の構成例を示す図であって、
図6の(a)は、
図5のX-Z平面において、+Y方向に面する蛍光体ホイール310の正面を示し、
図6の(b)は、
図5のX-Y平面における蛍光体ホイール310の側面を示している。
図7は、
図5の照明光学系300のカラーホイール320の構成例を示す図であって、
図7の(a)は、
図5のX-Y平面におけるカラーホイール320の側面を示し、
図7の(b)は、
図5のX-Z平面において、-Y方向に面するカラーホイール320の正面を示している。
【0063】
<実施の形態2に係る波長変換光学系>
本実施の形態では、波長変換光学系53は、光源部13と、合成ミラー105と、波長変換部23とによって構成されている。合成ミラー105は、前述したに実施の形態1に係る波長変換光学系51が備える合成ミラー105であって、
図5において、同様な構成要素に同じ符号を付しており、説明を省略する。
【0064】
波長変換光学系53の光源部13は、光源301と、アフォーカルレンズ302,303と、アキシコンレンズ304と、アキシコンミラー306とを含む。光源301により発された青色レーザ光は、光軸Oaに沿って図示+X方向に出射され、アフォーカル光学系を形成するアフォーカル凸レンズ302、アフォーカル凹レンズ303により光線の高さを抑えられた平行な光ビームとしてアキシコンレンズ304に入射する。入射した光はアキシコンレンズ304により環状の光ビームに変換され、合成ミラー105に入射する。
【0065】
アキシコンレンズ304を透過した環状の光ビームは、合成ミラー105の第2領域105bに入射し、第2領域105bを通過して円錐状の反射面を有するアキシコンミラー306に到達する。アキシコンミラー306によって、環状の平行な光ビームの青色光LEに変換されたのち反射して再び合成ミラー105に入射する。
【0066】
合成ミラー105の第2領域105bは、アキシコンミラー306によって環状の平行な光ビームに変換された青色光LEの、合成ミラー105における環状の光ビームの内側にあるように構成することができる。これによって、環状の平行な光ビームの青色光LEは、合成ミラー105の第1領域105aに入射し、第1領域105aの青色光反射膜で反射して光軸Obに沿って図示-Y方向に進み、波長変換部23へ導かれる。
【0067】
なお、合成ミラー105の第1領域105aは、例えば、青色光のS偏光成分のみを反射する特性を有する反射膜を施すこともできる。この場合、光源部13は、光源301から出射された青色レーザ光のS偏光で合成ミラー105に入射するように構成することができる。
【0068】
波長変換部23は、本実施の形態では、拡散板309と、集光レンズ307,308と、波長変換素子である蛍光体ホイール310とを含む。合成ミラー105の第1領域105aで反射した青色光LEは、光軸Obに沿って環状の光ビームとして拡散板309に入射する。
【0069】
拡散板309は、外周部を透過する光に対して、中央部を透過する光よりも大きい角度で拡散させるように構成することができる。本実施の形態では、拡散板309は、中央部に開口を有するように構成されている。なお、本開示は、拡散板309の大きさや形状に限定されない。拡散板309は、用途に応じた大きさや形状を有することができ、また、拡散板309の外周部と中央部との大きさや形状、又は拡散特性は、具体的な光路設計に応じて構成することができる。
【0070】
本実施の形態では、光源部13から入射した青色光LEは、環状の光ビームとして拡散板309の外周部領域に入射し、拡散板309の外周部により拡散され、やや広がりをもった均一な光ビームで前集光レンズ307に入射し、その後、後集光レンズ308を経て、蛍光体ホイール310に集光される。
【0071】
拡散板309の外周部の拡散によって、励起光としての青色レーザ光は均一に広げて蛍光体ホイール310を照射することができる。これによって、入射したレーザ光の高い集光性による蛍光体ホイールの蛍光体層の損傷を防止することができる。
【0072】
本実施の形態の蛍光体ホイール310は、例えば、1つの光変調素子を備える単板式の投写型映像表示装置の照明光学系において利用することができる。
図6に示すように、蛍光体ホイール310は、中央部のモータ311と、モータ311により回転駆動される円盤状の基板312とによって構成されている。
【0073】
基板312は、例えば、アルミニウム製であって、モータ311の駆動により、回転軸311aを中心に図示回転方向Aに回転することができる。基板312を回転させることによって、励起光による基板312上の蛍光体層の温度上昇を抑制し、波長変換効率を安定に維持することができる。
【0074】
図6の(a)に示す基板312の表面上に、反射層313が形成され、当該反射層313は、励起光、及び、励起光により励起された蛍光体が発光した蛍光光を拡散反射する特性を有するように構成することができる。
【0075】
本実施の形態では、蛍光体ホイール310は、
図6の(a)に示すように、反射層313上に形成された環状領域315を有する。当該環状領域315は、反射領域315Bと、蛍光体領域315G,315Rとによって構成されている。反射領域315Bは、入射した青色光LEを反射するように形成され、本実施の形態では、反射層313を露出させることで構成されている。蛍光体領域315Gは、入射した青色光LEにより励起されて緑色の蛍光光を発光する蛍光体を含み、蛍光体領域315Rは、入射した青色光LEにより励起されて赤色の蛍光光を発光する蛍光体を含む。なお、蛍光体ホイール310は、2種の蛍光体を有するように示しているが、本開示はこれに限定されない。例えば、蛍光体ホイール310の環状領域315に1種、又は3種以上の蛍光体を有するように構成することもできる。
【0076】
本実施の形態では、反射層313は、蛍光体領域315R,315Gに含まれる蛍光体と同様な拡散反射特性を有し、蛍光体により発光された蛍光光と類似の角度分布をもって入射した青色光LEを反射することができる。なお、本実施の形態では、反射領域315Bは、反射層313を露出させることで構成されているが、本開示はこれに限定されない。例えば、用途に応じて、適切な反射材料を添付するなど別手段により所望の拡散反射特性を有するように反射領域315Bを構成することができる。
【0077】
このように構成された蛍光体ホイール310は、モータ311の駆動により、図示回転方向Aに回転する。蛍光体ホイール310の回転により、入射した青色光LEは、反射領域315Bと蛍光体領域315G,315Rと順に入射し、蛍光体ホイール310が1回転する間に、青色光と、緑色蛍光光と、赤色蛍光光とが時分割に出射される。時分割に出射された青色光と緑色蛍光光と赤色蛍光光とは、均一な角度分布を有して図示+Y方向に再び集光レンズ308,307の順に入射することができる。
【0078】
図示+Y方向に再び集光レンズ308,307の順に入射した青色光と緑色蛍光光と赤色蛍光光とは、集光レンズ308,307を透過して光軸Obの軸上で拡散板309の中央部に入射する。
【0079】
前述したように、蛍光体ホイール310の蛍光体上に励起光のエネルギーの偏りが発生しないように滑らかな強度分布を実現するため、拡散板309は、蛍光体ホイール310に入射する励起光が通過するように配置されている。一方、拡散板の拡散作用によって、通過した光ビームの集光性に大きく影響を与えることがある。本実施の形態では、集光レンズ308,307を透過した青色光と緑色蛍光光と赤色蛍光光との光路に該当する拡散板309の中央部は、中空であってもよく、又は、入射光に対して小さい拡散角度で拡散する、あるいは拡散作用を持たない平行平面で構成することができる。そのため、拡散板309の中央部に入射した青色光と緑色蛍光光と赤色蛍光光とは、大きく発散せず光軸Obの軸上で拡散板309を透過して出射することができる。このように出射された青色光と緑色蛍光光と赤色蛍光光とは、所望の集光性を保って光軸Obに沿って図示+Y方向に進み、合成ミラー105の中央部の第2領域105bに到達することができる。なお、「光路に該当する」とは、光ビームの光路に当たることを意味する。
【0080】
合成ミラー105の第2領域105bは、前述したように、開口又は可視光域の光が透過するように構成されているため、合成ミラー105の第2領域105bに到達した青色光と緑色蛍光光と赤色蛍光光とは、第2領域105bから出射し、集光レンズ316を透過してカラーホイール320に入射する。
【0081】
カラーホイール320の構成について、
図7を参照して説明する。カラーホイール320は、集光レンズ316を透過した青色光と緑色蛍光光と赤色蛍光光とを受光し、回転によって複数の色帯域の光を透過して時分割に出射するように構成されている。
【0082】
図7に示すとおり、カラーホイール320は、透明基板319と、透明基板319上に形成されたダイクロイック層318G,318R及び反射防止層318Bと、透明基板319を回転させるためのモータ321とによって構成されている。
【0083】
透明基板319には、円周方向において3つの色光セグメントSR、SG、SBを有している。本実施の形態では、カラーホイール320の色光セグメントSBは、蛍光体ホイール310の反射領域315B(
図6参照)と対応した角度を有し、色光セグメントSGとSRとは、それぞれ、蛍光体ホイール310の蛍光体領域315G,315R(
図6参照)と対応した角度を有する。
【0084】
透明基板319において、色光セグメントSRで赤色光を透過させるダイクロイック層318Rが形成され、色光セグメントSGで緑色光を透過させるダイクロイック層318Gが形成され、色光セグメントSBで光源光である青色光を透過させる反射防止層318Bが形成される。
【0085】
カラーホイール320は、回転方向Bに沿って、蛍光体ホイール310と同期回転するように制御されている。具体的には、蛍光体ホイール310に入射する励起光である青色光LEが赤色蛍光光を発する蛍光体領域315Rに入射している期間に、ダイクロイック層318Rが光軸Ob上にあり、励起光である青色光LEが緑色蛍光光を発する蛍光体領域315Gに入射している期間に、ダイクロイック層318Gが光軸Ob上にあり、青色光LEが反射領域315Bに入射している期間に、反射防止層318Bが光軸Ob上にあるように制御されている。これによって、色純度の優れた赤色、緑色、及び青色の波長帯の光が順次出射し、ロッドインテグレータ317に入射する。
【0086】
ロッドインテグレータ107に入射した赤色、緑色、及び青色の波長帯の光は、ロッドインテグレータ107の内部で複数回反射することにより、光強度分布が均一化されて白色照明光Liとして照明光学系300から出射される。
【0087】
照明光Liの各色光が時分割で照明光学系300から出射され、出射した各色光は、リレーレンズ322、323を経て、折り返しミラー324、集光ミラー325によって光変調素子であるDMD326に導入される。
【0088】
DMD326は、映像信号に従って入射した複数の色帯域の色光を空間的に変調し、映像信号に応じた投射光を生成することができる。DMD326の動作は、実施の形態1で説明したDMD216R,216G,216Bと同様であるため、詳細な説明を省略する。DMD326は入射してくる色光に合わせて、各色光用の映像信号による映像を高速に切り替えて表示することで、1つのDMDでカラー表示を実現することができる。
【0089】
このように、本開示に係る波長変換光学系は、各色光用のDMDを備える3板式投写型映像表示装置のみならず、このように単板式投写型映像表示装置にも適用可能である。なお、画像表示素子としては入射する光を変調するライトバルブであれば置き換え可能であり、透過型液晶や反射型液晶パネルを用いる投写型表示装置にも適用することができる。
【0090】
(合成ミラーの他の構成)
本開示の波長変換光学系が備える合成ミラーは、
図2に示した構成と異なるように構成することができる。合成ミラーの他の構成について、
図8を参照して説明する。
図8は、合成ミラー505の構成を示す概略斜視図である。
【0091】
図8に示す合成ミラー505は、第1領域505aと、第1領域505aに囲まれている第2領域505bとを有する。合成ミラー505の第1領域505aは、波長が455nm付近の青色光を透過させる特性を有し、第2領域505bには、可視光域の光を反射する反射膜が施されている。
【0092】
なお、本開示は、合成ミラー505の大きさや形状、又は第1領域505aと第2領域505bとの形状に限定されない。合成ミラーは用途に応じた大きさや形状を有してもよく、第1領域と第2領域とは、他の形状を有してもよい。
【0093】
図8に示す合成ミラー505を備えた波長変換光学系及び照明光学系の構成について
図9及び
図10を参照して説明する。
図9は、本開示の実施の形態3に係る波長変換光学系55及び照明光学系500の構成を示す概略図である。
図10は、本開示の実施の形態4に係る波長変換光学系56及び照明光学系600の構成を示す概略図である。
【0094】
(実施の形態3に係る波長変換光学系及び照明光学系)
本実施の形態では、波長変換光学系55は、光源部15と、合成ミラー505と、波長変換部25とによって構成されている。合成ミラー505は、
図8に示すように構成されている。
【0095】
波長変換光学系55の光源部15は、光源501と、1対のアキシコンレンズ502,503とを含むことができる。光源501から出射される青色レーザ光は、波長が455nm付近であって、映像光として用いられるとともに、蛍光体ホイール510の蛍光体を励起するための励起光としても用いられる。
【0096】
光源501から発された青色レーザ光は、光軸Oaに沿って図示+X方向に出射され、円錐状の第1アキシコンレンズ502に入射し、第1アキシコンレンズ502によって、環状の光ビームに変換されたのち、第2アキシコンレンズ503によって環状の平行な光ビームに変換される。当該環状の平行な光ビームの青色光LEは、光源部15から出射され、図示+X方向に合成ミラー505に入射する。
【0097】
光源部15から入射した青色光LEは、環状の光ビームとして合成ミラー505に入射する。本実施の形態では、合成ミラー505は、第2領域505bが、合成ミラー505における光源部15からの青色光の環状の光ビームの内側にあるように構成することができる。これによって、光源部15からの青色光LEは、合成ミラー505の第1領域505aに入射し、第1領域505aを透過して図示+X方向に進み、波長変換部25へ導かれる。
【0098】
波長変換部25は、本実施の形態では、集光レンズ507,508と、波長変換素子である蛍光体ホイール510とを含む。合成ミラー505を透過した青色光LEは、光軸Oaに沿って環状の光ビームとして前集光レンズ507に入射する。好ましくは、合成ミラー505の第1領域505aを透過した青色光LEは、環状の平行な光ビームで前集光レンズ507の外周部に入射し、その後、後集光レンズ508を経て、蛍光体ホイール510に集光される。
【0099】
本実施の形態の蛍光体ホイール510は、例えば、
図3に示す蛍光体ホイール110と同様な構成を有してもよく、又は
図6に示す蛍光体ホイール310と同様な構成を有してもよい。ここで詳細な説明を省略する。
【0100】
蛍光体ホイール510で発生した蛍光光LFと青色光LBとは、図示-X方向に進み、後集光レンズ508、前集光レンズ507を順に透過し、概ね平行光ビームとして光軸Oaの軸上から出射され、合成ミラー505の第2領域505bに到達する。合成ミラー505の第2領域505bにおいて、蛍光光LFと青色光LBとは反射して図示+Y方向に進み、集光レンズ516により集光され、ロッドインテグレータ517に入射する。ロッドインテグレータ507の内部で複数回反射することにより、光強度分布が均一化された白色照明光Liとして照明光学系100から出射される。
【0101】
ここでも、集光レンズ508,507を透過して光軸Oaの軸上から出射された黄色蛍光光LFと青色光LBとは、合成ミラー505の第2領域505bよりも大きいビームで合成ミラー505に到達する場合がある。合成ミラー505の第1領域105aは、青色光以外の色域の光を反射する特性を有するように構成することができる。これによって、合成ミラー505の第1領域505aに到達した青色光LBの部分は透過して照明光Liの出射光軸Obから離れるが、第1領域505aに到達した蛍光光LFの部分は第1領域505aで反射し、集光レンズ516を経てロッドインテグレータ517に到達することができる。このように、合成ミラー505の第1領域505aで青色光LBの一部が損失となる場合がある。これを補うために、例えば、波長変換部25の後集光レンズ508から出射される光において、青色光LBの配分が多く含まれるように、蛍光体ホイール510の蛍光体層515の波長変換率を設計することによって、照明光学系500から良好なホワイトバランスの白色照明光を出射することができる。
【0102】
又は、合成ミラー505の第1領域505aは、可視光域の光を透過するように構成することもできる。これによって、合成ミラー505の第1領域505aに到達した青色光LBの部分と蛍光光LFの部分との両方が透過して照明光Liの出射光軸Obから離れるため、波長変換部25の後集光レンズ508から出射される光の色バランスが変化することなく、照明光学系500から白色照明光を得ることができる。
【0103】
更に代替的に、例えば、光源部15は、偏光素子を設けて、合成ミラー505に対して、例えば、青色光のP偏光光を入射するように構成することができる。このとき、合成ミラー505の第1領域505aにおいて、青色光のP偏光成分のみを透過する特性を有するように構成することができる。なお、光源部15のレーザ光源が偏光光を出射する場合、偏光方向を合成ミラー505についてP偏光方向となるようにレーザ光源が設置されていれば上記偏光素子を設置する必要がない。このようにして、光損失なく白色照明光を出射することができる。
【0104】
(実施の形態4に係る波長変換光学系及び照明光学系)
本実施の形態では、波長変換光学系56は、光源部16と、合成ミラー505と、波長変換部25とによって構成されている。合成ミラー505は、
図8に示すように構成されている。また、波長変換光学系56は、光源部16の構成において
図9に示す波長変換光学系55とは異なる。
図10において、
図9に示す波長変換光学系55及び照明光学系500と同様な要素について、同じ符号を付しており、説明を省略する。
【0105】
波長変換光学系56の光源部16は、光源601と、拡散板602と、アキシコンレンズ603と、アキシコンミラー606とを含む。光源601により発された青色レーザ光は、光軸Obに沿って図示+Y方向に出射され、拡散板602に入射する。
【0106】
拡散板602は、実施の形態2で説明した拡散板309(
図5参照)の外周部よりも、入射光に対して小さい拡散角度で拡散するように構成することができる。そのため、拡散板602を通過した青色光の光ビームは、所望の集光性を保って光軸Obに沿って進むことができる。続いて、青色光の光ビームは、アキシコンレンズ603に入射し、アキシコンレンズ603によって環状の光ビームに変換されたのち、光軸Obに沿って図示+Y方向に進み、合成ミラー505の第2領域505bに到達することができる。
【0107】
拡散板602によって、集光性の高い青色レーザ光の光ビームは、やや広げて均一にアキシコンレンズ603を照射することができる。拡散板602の大きさや形状、又は拡散特性は、具体的な光路設計に応じて構成することができる。
【0108】
合成ミラー505の第2領域505bで青色光が図示+X方向に反射し、アキシコンミラー606に入射し、アキシコンミラー606により環状の平行な光ビームの青色光LEに変換されるとともに、図示-X方向に反射して合成ミラー505の第1領域505aに到達する。合成ミラー505の第1領域505aを透過した青色光LEは、更に図示-X方向に進み、波長変換部25へ導かれる。波長変換部25に到達した後の光の伝搬は、実施の形態3に係る波長変換光学系55と同様であるため、ここで詳細な説明を省略する。
【0109】
このように、本実施の形態に係る波長変換光学系は、光源部からの青色光と、波長変換部からの照明光を合成するための蛍光光と青色光とが、共通の第1光学素子である合成ミラーの異なる光学特性を有する領域を経由し、光の分離及び合成を実現するように構成されている。これによって、光学系の部品点数を削減でき、装置の小型化を容易に実現することができる。また、本実施の形態に係る波長変換光学系を備える照明光学系を用いて、高い画質の投写映像を実現可能な投写型映像表示装置を構成することができる。
【0110】
なお、上記実施の形態において説明した波長変換光学系のいずれも、3板式投写型映像表示装置、又は単板式投写型映像表示装置の照明光学系に適用することができる。また、液晶パネルを用いて投写型表示装置を構成することもできる。
【0111】
また、上記実施の形態において、2つのアキシコンレンズ、又はアキシコンミラーの後の青色光は、環状の平行な光ビームで出射するように説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、2つのアキシコンレンズ、又はアキシコンミラーの後の青色光は、平行光ビームではなく、収束方向に所定の角度を有する光ビームで出射することもできる。これによって、合成ミラーにおける励起光と蛍光光との分離がより容易となる。また、用途に応じて青色光の光ビームの収束角を微調整して出射することも可能である。例えば、アキシコンレンズ、アキシコンミラーの形状、又はアキシコン系に、レンズ等の光学素子を加えることによって、光源部から出射する青色光の光ビームの収束角を調整することができる。
【0112】
前述した実施の形態1から実施の形態4は、アキシコンレンズ、又はアキシコンレンズ及びアキシコンミラーで構成されたアキシコン系を備える波長変換光学系を説明したが、波長変換光学系に用いられるアキシコン系はアキシコンプリズムで構成することもできる。アキシコンプリズムで構成されたアキシコン系を備える波長変換光学系に係る実施の形態5及び実施の形態6について、以下、
図11から
図15を参照して説明する。
【0113】
(実施の形態5に係る波長変換光学系及び照明光学系)
実施の形態5に係る波長変換光学系及び照明光学系の構成について
図11から
図14を参照して説明する。
図11は、本開示の実施の形態5に係る波長変換光学系57及び照明光学系700の構成を示す概略図である。
図12は、
図11波長変換光学系57のアキシコンプリズム702の構成を示す概略斜視図である。
図13は、
図11の波長変換光学系57の合成ミラー705及び合成ミラー705における青色光ビームの入射位置を示す概略斜視図である。
図14は、
図11の波長変換光学系57の合成ミラー705Aの別の構成を示す概略斜視図である。
【0114】
本実施の形態では、波長変換光学系57は、光源部17と、合成ミラー705と、波長変換部27とによって構成されている。合成ミラー705は、
図13又は
図14に示すように構成することができる。
【0115】
波長変換光学系57の光源部17は、光源701と、1対の透過型アキシコンプリズム702,703とを含むことができる。光源701から出射される青色レーザ光は、波長が455nm付近であって、映像光として用いられるとともに、蛍光体ホイール710の蛍光体を励起するための励起光としても用いられる。
【0116】
光源701から発された青色レーザ光は、光軸Oaに沿って図示+X方向に出射され、第1透過型アキシコンプリズム702と第2透過型アキシコンプリズム703とを順に透過する。第1透過型アキシコンプリズム702と第2透過型アキシコンプリズム703とは、同様な構造を有し、
図12は、例として、第1透過型アキシコンプリズム702の構成を示している。
【0117】
図12に示すように、第1透過型アキシコンプリズム702は、回転対称なプリズムであって、共通の光軸を有し、互いに対向する第1面702aと第2面702bとによって構成されている。本開示の実施の形態5及び後段で説明する実施の形態6の波長変換光学系が備える透過型又は反射型アキシコンプリズムは、多面錐形状の第1面702aを有することで、円錐状のレンズ面を有するアキシコンレンズと異なる。第1透過型アキシコンプリズム702の多面錐形状の第1面702aは、傾斜を持った複数の透過面702a1,702a2・・・で構成されている。このように構成された透過型アキシコンプリズムは、入射した光を、円周に沿って配された複数の光ビームに変換して透過させることができる。なお、変換された円周に沿って配される光ビームの数は、第1面702aに含まれる傾斜透過面数に等しい。また、波長変換光学系57を構成する1対の透過型アキシコンプリズム702,703は、同じ数の傾斜透過面で構成される。
【0118】
図11に戻って、第1透過型アキシコンプリズム702は、入射した青色レーザ光を、光軸Oa中心とした円周に沿って配され、第1面702aの透過面数の複数の光ビームに変換したのち透過させる。透過した光は、第2透過型アキシコンプリズム703によって光軸Oa中心とした円周に沿って配され、第2透過型アキシコンプリズム703の透過面数の複数の平行な光ビームに変換される。当該円周に沿って配された複数の平行な光ビームの青色光LEは、光源部17から出射され、図示+X方向に進み、合成ミラー705に入射する。
【0119】
合成ミラー705は、
図13に示すように、第1領域705aと、第1領域705aに囲まれている第2領域705bとを有する。本実施の形態では、第1領域705aは、青色レーザ光の波長の光を反射する特性を有する反射膜が施され、第2領域105bは、中空な開口として構成されてもよく、可視光域の光を透過させる透明素材で構成されてもよい。
【0120】
光源部17から入射した青色光LEは、円周C1に沿って配された複数の平行な光ビームLE1,LE2・・・・として合成ミラー705に入射する。本実施の形態では、合成ミラー705は、第2領域705bが、合成ミラー705に到達した複数の平行な光ビームLE1,LE2・・・・の内側にあるように構成することができる。これによって、合成ミラー705に入射した青色光LEは、合成ミラー705の第1領域705aの反射膜で反射される。
【0121】
図11に戻って、青色光LEは、合成ミラー705の第1領域705aで反射して光軸Obに沿って図示-Y方向に進み、波長変換部27へ導かれる。
【0122】
波長変換部27は、本実施の形態では、集光レンズ707,708と、波長変換素子である蛍光体ホイール710とを含む。青色光LEは、光軸Obに沿って複数の平行な光ビームとして前集光レンズ707に入射する。好ましくは、青色光LEは、複数の平行な光ビームとして前集光レンズ707の外周部近傍の円周に沿って離散的に入射し、その後、後集光レンズ708を経て、蛍光体ホイール710に集光される。
【0123】
本実施の形態の蛍光体ホイール710は、前述した実施の形態と同様に、例えば、
図3に示す蛍光体ホイール110と同様な構成を有してもよく、又は
図6に示す蛍光体ホイール310と同様な構成を有してもよい。ここでの詳細な説明を省略する。
【0124】
蛍光体ホイール710の蛍光体層715で発生した蛍光光LFは、青色拡散光とともに、反射層713で反射し、図示+Y方向に進み、後集光レンズ708、前集光レンズ707を順に透過し、概ね平行光ビームとして光軸Obの軸上から出射され、合成ミラー705の第2領域705bに到達する。合成ミラー705の第2領域706bは開口又は透明領域であるため、蛍光光LFと青色光LBとは透過して図示+Y方向に進み、集光レンズ716により集光され、ロッドインテグレータ717に入射する。ロッドインテグレータ711の内部で複数回反射することにより、光強度分布が均一化された白色照明光Liとして照明光学系700から出射される。
【0125】
ここでも、集光レンズ708,707を透過して光軸Obの軸上から出射された蛍光光LFと青色光LBとは、合成ミラー705の第2領域705bよりも大きいビームで合成ミラー705に到達する場合がある。合成ミラー705の第1領域705aは、青色光以外の色域の光を透過する特性を有するように構成することができる。これによって、合成ミラー705の第1領域705aに到達した青色光LBの部分は反射して照明光Liの出射光軸Obから離れるが、第1領域705aに到達した蛍光光LFの部分は第1領域705aを透過し、集光レンズ716を経てロッドインテグレータ717に到達することができる。
【0126】
このように、合成ミラー705の第1領域705aで青色光LBの一部が損失となる場合がある。これを補うために、例えば、波長変換部27の後集光レンズ708から出射される光において、青色光LBの配分が多く含まれるように、蛍光体ホイール710の蛍光体層715の波長変換率を設計することによって、照明光学系700から高効率で損失の少ない、望しいホワイトバランスの白色照明光を出射することができる。
【0127】
この実施の形態でもレーザ光の強度分布の均一化のために拡散板を導入することができる。例えば、
図10に示す拡散板602と同様に、光線高の低い第1透過型アキシコンプリズム702と光源701との間に拡散板を配置するか、又は、
図5に示す拡散板309と同様に、前集光レンズ707と合成ミラー705との間に、拡散板を配置することができる。このように配置された拡散板は、前述した拡散板309,602と同様な構成を有するものを用いることで同様な効果を得ることができる。なお、前集光レンズ707と合成ミラー705との間に、前述した拡散板309と同様な構成で複数の平行な光ビームの入射位置にのみ拡散処理することで蛍光体ホイール710からの戻り光への拡散影響を抑えることができる。
【0128】
ここでも前述したように、光源701からの光を、合成ミラー705においてS偏光となるように出射し、合成ミラー705の第1領域705aは、光源部17からの波長においてS偏光光を反射し、P偏光光を透過する偏光ビームスプリッタとして構成することができる。この場合、光源部17からのS偏光光は合成ミラー705の第1領域705aで反射せしめられ、集光レンズ707,708を経て蛍光体ホイール710に集光し、蛍光光、又は青色拡散光となる。黄色蛍光光と青色拡散光とは、元の偏光特性はなく、自然光となる。再度集光レンズ708,707を経て出射し、合成ミラー705に到達した光は、第1領域705aに入射する光のうち、青色光のS偏光光は反射されるが、青色光のP偏光光、及び光源部17の出射光の波長以外の可視光は、偏光方向によらず透過することができる。このようにして、光利用効率を改善することができる。
【0129】
更に、
図14は、波長変換光学系57に用いられる別の構成の合成ミラー705Aを示している。合成ミラー705Aは、第1領域705A1と、第1領域705A1に囲まれている第2領域705bとを有する。第2領域705bは、
図13の合成ミラー705と同様に、開口又は透明素材で構成され、合成ミラー705に到達した、円周C1に沿って配された複数の平行な光ビームLE1,LE2・・・の内側にあるように構成することができる。合成ミラー705Aは、第1領域705A1の構成において
図13の合成ミラー705と異なる。
【0130】
合成ミラー705Aの第1領域705A1は、第1の反射領域705a1と第2の反射領域705a2とを含み、第1の反射領域705a1と第2の反射領域705a2とが、第2領域705bの外側において、交互に配置されるように構成することができる。
図14に示すように、光源部17からの青色光は、円周に沿って配された複数の平行な光ビームとして合成ミラー705Aの第1領域705A1に入射し、第1領域705A1の第1の反射領域705a1は青色光の複数の平行な光ビームLE1,LE2・・・の入射位置を含み、第2の反射領域705a2は複数の平行な光ビームLE1,LE2・・・の入射位置の間にあるように構成することができる。また、第1の反射領域705a1は、青色光の波長の光を反射する特性を有する反射膜が施され、第2の反射領域705a2は、第1の反射領域705a1と異なる反射特性を有し、例えば、青色光の波長の光の少なくとも一部を透過する特性を有するように構成することができる。
【0131】
図14の合成ミラー705Aを利用することによって、例えば、光源部17(
図11参照)からの光が一方向の偏光光ではない場合、合成ミラー705Aの第1領域705A1は、光源部17からの青色光を反射する特性を有する領域を減少することで、蛍光体ホイール710で蛍光光及び青色拡散光となって再度合成ミラー705Aに入射したとき、第1領域705A1で反射されて照明光Liとして利用されない青色光の部分を抑えることができる。
【0132】
光学システムにおいて光線の広がり、すなわち、エテンデュ(Etendue)の観点から考えると、アキシコンレンズを用いた波長変換光学系において、レーザ光源の出射光を環状の光ビームに変換するとき、周方向において光ビームのエテンデュの増加を伴う。一方、アキシコンプリズムを用いた波長変換光学系において、レーザ光源の出射光を複数の点光源に分散して出射し、エテンデュの増加を伴わずに光を伝搬することができる。これによって、光ビームのエテンデュの増加を抑制し、光源からの光の利用効率を向上することができる。
【0133】
なお、
図12は、例として、8つの傾斜透過面で構成された多面錐形状の第1面702aを有するアキシコンプリズムを示しているが、本開示はこれに限定されない。アキシコンプリズムの多面錐形状の第1面は、任意の数の傾斜透過面で構成することができる。ただし、
図11に示す波長変換光学系57の光源部17を構成する1対のアキシコンプリズム702,703は、多面錐形状の第1面が同じ数の傾斜透過面で構成される。
【0134】
(実施の形態6に係る波長変換光学系及び照明光学系)
実施の形態6に係る波長変換光学系及び照明光学系の構成について
図15を参照して説明する。
図15は、本開示の実施の形態6に係る波長変換光学系58及び照明光学系800の構成を示す概略図である。
【0135】
本実施の形態では、波長変換光学系58は、光源部18と、合成ミラー705と、波長変換部27とによって構成されている。合成ミラー705は、
図13や
図14に示すように構成することができ、波長変換部27は、
図11に示す波長変換光学系57の波長変換部と同様に構成されている。
図15において、波長変換光学系58における、波長変換光学系57と同様な構成要素を同じ符号で示している。
【0136】
波長変換光学系58の光学系は、
図5の波長変換光学系53において、アキシコンレンズ304,306を、アキシコンプリズム804,806に置き換えて構成することができる。したがって、光学系について、詳細の説明を省略する。また、波長変換光学系58は、アキシコンプリズム804,806を備える点で、
図11の波長変換光学系57と類似する。ただし、波長変換光学系58において、1対のアキシコンプリズムは、透過型アキシコンプリズム804と反射型アキシコンプリズム806とで構成されている。
【0137】
反射型アキシコンプリズム806は、
図15に示すように、入射光が光入射面である平面状の第2面806bで反射せず、多面錐形状の第1面806aで反射するように構成することができる。反射型アキシコンプリズム806の多面錐形状の第1面806aは、複数の傾斜面が、第2面806b側の背面において反射膜が施され、光軸Oaを中心に配置されるように構成されている。第1面806aを構成する複数の傾斜面の傾きは、対を成す透過型アキシコンプリズム804から合成ミラー705を経て入射した、透過型アキシコンプリズム804の傾斜透過面の数に相当する複数の光ビームが平行な光となって反射型アキシコンプリズム806から出射するように構成される。当然ながら、対と成す透過型アキシコンプリズム804と反射型アキシコンプリズム806とは、多面錐形状の第1面が同じ数の傾斜面で構成される。なお、実施の形態2で説明した
図5に示すアキシコンミラー306も、本実施の形態の反射型アキシコンプリズム806と同様に、入射光が光入射面で反射せず、背面において反射するように構成することもできる。
【0138】
なお、合成ミラー705、705Aは
図8に示す合成ミラー505のように、第2領域において反射特性を有するように構成することができる。これについて、詳細の説明を省略する。
【0139】
アキシコンプルズムを用いたアキシコン系は、アキシコンレンズを用いたアキシコン系と同様に、種々の投写型表示装置において、波長変換光学系を備える照明光学系に利用可能である。
【0140】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、上記実施の形態を説明した。本開示にかかる技術の理解のために、添付図面及び詳細な説明を提供した。したがって、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。したがって、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0141】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。そのような変更、及び異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本開示は、映像表示装置に適用可能であり、プロジェクタなどの投写型映像表示装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0143】
11,13,15,16,17,18 光源部
21,23,25,26,27 波長変換部
51,53,55,56,57,58 波長変換光学系
100,300,500,600,700,800 照明光学系
101,301,501,601,701,801 光源
102,103 アキシコンレンズ
105,505,705,705A 合成ミラー,第1光学素子
105a,505a,705a,705A1 第1領域
105b,505b,705b 第2領域
107,108,707,708 集光レンズ
110,310,510,710 蛍光体ホイール,波長変換素子
111 モータ
112 基板
113,713 反射層
115,715 蛍光体層
116,716 集光レンズ
117,717 ロッドインテグレータ
200,400 投写型映像表示装置
201 リレー光学系
202,203,204 レンズ
205 ミラー
206 全反射プリズム
210 カラープリズムユニット
216R,216G,216B,326 光変調素子(DMD)
218 投写光学系
304,603 アキシコンレンズ
306,606 アキシコンミラー
309,602 拡散板
318G,318R ダイクロイック層
318B 反射防止層
319 透明基板
320 カラーホイール
502,503 アキシコンレンズ
702 第1透過型アキシコンプリズム
703 第2透過型アキシコンプリズム
804 透過型アキシコンプリズム
806 反射型アキシコンプリズム