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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152467
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/26 20060101AFI20241018BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20241018BHJP
   G01N 30/80 20060101ALI20241018BHJP
   G01N 30/24 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G01N30/26 M
G01N30/72 C
G01N30/80 C
G01N30/24 E
G01N30/26 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066689
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】大友 伊織
(57)【要約】
【課題】大型化および高額化することが防止された分析装置を提供する。
【解決手段】分析装置100は、送液ポンプ111、第1の試料供給部、第2の試料供給部、分離カラム140,150、検出器および流路切替バルブ30を含む。送液ポンプ111は、溶離液を供給する。第1の試料供給部は、試料の分析に用いられる分離カラム140に試料を供給する。第2の試料供給部は、試料の分取に用いられる分離カラム150に試料を供給する。検出器は、分離カラム140または分離カラム150を通過した試料を検出する。流路切替バルブ30は、送液ポンプ111により供給された溶離液を分離カラム140に導くとともに分離カラム140を通過した試料を検出器に導く第1の流路状態と、送液ポンプ111により供給された溶離液および分離カラム150を通過した試料の一部を検出器に導く第2の流路状態とに切り替え可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶離液を供給する送液ポンプと、
試料の分析に用いられる第1の分離カラムと、
前記第1の分離カラムに試料を供給する第1の試料供給部と、
試料の分取に用いられる第2の分離カラムと、
前記第2の分離カラムに試料を供給する第2の試料供給部と、
前記第1の分離カラムまたは前記第2の分離カラムを通過した試料を検出する検出器と、
前記送液ポンプにより供給された前記溶離液を前記第1の分離カラムに導くとともに前記第1の分離カラムを通過した試料を前記検出器に導く第1の流路状態と、前記送液ポンプにより供給された前記溶離液および前記第2の分離カラムを通過した試料の一部を前記検出器に導く第2の流路状態とに切り替え可能な流路切替バルブとを備える、分析装置。
【請求項2】
前記第2の分離カラムを通過した試料の他の一部を捕集する捕集部をさらに備える、請求項1記載の分析装置。
【請求項3】
前記第1の試料供給部と前記第2の試料供給部とは、前記第1の分離カラムへの試料の供給と前記第2の分離カラムへの試料の供給とを選択的に実行する共通の試料供給部により構成される、請求項1または2記載の分析装置。
【請求項4】
前記検出器は、質量分析装置を含む、請求項1または2記載の分析装置。
【請求項5】
試料の分析に用いられる移動相と、メイクアップ溶液とを前記溶離液として選択的に前記送液ポンプに導く溶離液切替バルブをさらに備え、
前記送液ポンプは、前記溶離液切替バルブにより導かれた前記溶離液を供給する、請求項1または2記載の分析装置。
【請求項6】
前記第2の分離カラムの下流に接続された第1の入口管と、第2の入口管と、出口管とを含む合流管をさらに備え、
前記流路切替バルブは、
前記第1の分離カラムの上流に接続された第1のポートと、
前記送液ポンプに接続された第2のポートと、
前記合流管の前記第2の入口管に接続された第3のポートと、
前記合流管の前記出口管に接続された第4のポートと、
前記検出器に接続された第5のポートと、
前記第1の分離カラムの下流に接続された第6のポートとを含み、
前記第1の流路状態においては、前記第1のポートと前記第2のポートとの間、前記第3のポートと前記第4のポートとの間、および前記第5のポートと前記第6のポートとの間が接続され、
前記第2の流路状態においては、前記第2のポートと前記第3のポートとの間、前記第4のポートと前記第5のポートとの間、および前記第6のポートと前記第1のポートとの間が接続される、請求項1または2記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフにより試料を成分ごとに分離し、分離された試料の成分を分画して捕集する分取装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された分取液体クロマトグラフ装置においては、インジェクタにより溶出流路に注入された試料が、送液ポンプにより送給された移動相に乗って分離カラムに導入される。分離カラムに導入された試料は、成分ごとに分離され、分離カラムから溶出される。
【0003】
分離カラムから溶出された試料の一部は、スプリッタにより検出流路に流され、メイクアップポンプにより送給された移動相に乗ってフォトダイオードアレイ検出器または質量分析検出に導入される。溶出された試料の成分がこれらの検出器により検出される。検出結果に基づいて、分離カラムから溶出された試料の他の一部が、溶出流路においてフラクションコレクタにより成分ごとに所定の容器に分画される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-14559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分取装置において試料の成分を分画する前に、分析装置において試料の成分を確認するための分析が行われることがある。また、このような試料の成分の分析と分取とを行うための構成が1つの分析装置で実現されることがある。しかしながら、この場合、分析装置に多数の送液ポンプを設ける必要がある。そのため、分析装置が大型化するとともに、分析装置が高額化する。分析および分取の各々において、高圧グラジエント送液が行われる場合、この問題はより顕著になる。
【0006】
本発明の目的は、大型化および高額化することが防止された分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、溶離液を供給する送液ポンプと、試料の分析に用いられる第1の分離カラムと、前記第1の分離カラムに試料を供給する第1の試料供給部と、試料の分取に用いられる第2の分離カラムと、前記第2の分離カラムに試料を供給する第2の試料供給部と、前記第1の分離カラムまたは前記第2の分離カラムを通過した試料を検出する検出器と、前記送液ポンプにより供給された前記溶離液を前記第1の分離カラムに導くとともに前記第1の分離カラムを通過した試料を前記検出器に導く第1の流路状態と、前記送液ポンプにより供給された前記溶離液および前記第2の分離カラムを通過した試料の一部を前記検出器に導く第2の流路状態とに切り替え可能な流路切替バルブとを備える、分析装置に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、分析装置の大型化および高額化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係る分析装置の構成を示す図である。
図2】分析装置の分析動作を説明するための図である。
図3】分析装置の分取動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)分析装置の構成
以下、本発明の実施の形態に係る分析装置について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る分析装置の構成を示す図である。図1に示すように、分析装置100は、例えば液体クロマトグラフであり、溶離液供給部110,120、試料供給部130、分離カラム140,150、検出器160,170、質量分析装置180および捕集部190を備える。
【0011】
溶離液供給部110は、送液ポンプ111,112、溶離液切替バルブ113および混合部114を含む。また、溶離液供給部110には、種々の溶離液が貯留されたボトル1~3が設けられる。具体的には、ボトル1,3には、試料の分析に用いられる移動相が貯留される。ボトル2には、メイクアップ溶液が貯留される。
【0012】
送液ポンプ111は、送液ポンプの例であり、溶離液切替バルブ113により導かれた溶離液を供給する。溶離液切替バルブ113は、ボトル1に貯留された移動相と、ボトル2に貯留されたメイクアップ溶液とを選択的に送液ポンプ111に導く。すなわち、送液ポンプ111は、移動相とメイクアップ溶液とを選択的に供給する。送液ポンプ112は、ボトル3に貯留された移動相を供給する。混合部114は、例えばグラジエントミキサを含む。混合部114は、送液ポンプ111,112により供給された移動相の高圧グラジエント送液を行う。
【0013】
溶離液供給部120は、送液ポンプ121,122および混合部123を含む。また、溶離液供給部120には、試料の分析に用いられる移動相が貯留されたボトル4,5が設けられる。送液ポンプ121,122は、ボトル4,5に貯留された移動相をそれぞれ供給する。混合部123は、例えばグラジエントミキサを含む。混合部123は、送液ポンプ121,122により供給された移動相の高圧グラジエント送液を行う。
【0014】
試料供給部130は、例えばリキッドハンドラであり、2つの注入ポート131,132を含む。注入ポート131,132は、それぞれ第1および第2の試料供給部の例である。試料供給部130は、注入ポート131,132から選択的に試料を供給する。注入ポート131から供給された試料は、溶離液供給部110により供給された移動相とともに分離カラム140に導入される。注入ポート132から供給された試料は、溶離液供給部120により供給された移動相とともに分離カラム150に導入される。
【0015】
分離カラム140は、図示しないカラム恒温槽の内部に収容され、所定の一定温度に維持される。分離カラム140は、第1の分離カラムの例であり、試料の分析に用いられる。具体的には、分離カラム140は、溶離液供給部110により供給された移動相とともに試料供給部130の注入ポート131から導入された試料を化学的性質または組成の違いにより成分ごとに分離する。
【0016】
分離カラム150は、図示しないカラム恒温槽の内部に収容され、所定の一定温度に維持される。本例では、分離カラム150は、分離カラム140よりも大きい容量を有する。分離カラム150は、分離カラム140と共通のカラム恒温槽の内部に収容されてもよい。分離カラム150は、第2の分離カラムの例であり、試料の分取に用いられる。具体的には、分離カラム150は、溶離液供給部120により供給された移動相とともに試料供給部130の注入ポート132から導入された試料を化学的性質または組成の違いにより成分ごとに分離する。
【0017】
検出器160,170は、例えばPDA(フォトダイオードアレイ)、UV(紫外線)検出器または吸光度検出器である。検出器160は、分離カラム140の下流に設けられ、分離カラム140を通過した試料の成分を検出する。検出器170は、分離カラム150の下流に設けられ、分離カラム150を通過した試料の成分を検出する。
【0018】
質量分析装置180は、検出器の例である。質量分析装置180は、分離カラム140または分離カラム150を通過した試料をイオン化し、イオン化された試料の質量分析を行うことにより試料の成分を検出する。捕集部190は、例えばフラクションコレクタを含む。捕集部190は、検出器170の下流に設けられ、分離カラム150を通過した試料を捕集する。
【0019】
また、分析装置100は、分岐管10、合流管20、流路切替バルブ30および制御部40をさらに含む。分岐管10は、入口管11および2つの出口管12,13を含む。合流管20は、2つの入口管21,22および出口管23を含む。入口管21,22は、それぞれ第1および第2の入口管の例である。分岐管10の入口管11は、分離カラム150の下流に接続される。分岐管10の出口管12は、検出器170に接続される。分岐管10の出口管13は、合流管20の入口管21に接続される。
【0020】
流路切替バルブ30は、例えば多方切替バルブであり、6つのポート31~36を含む。ポート31~36が、それぞれ第1~第6のポートの例である。ポート31は、溶離液供給部110の混合部114に接続される。ポート32は、溶離液供給部110の送液ポンプ111に接続される。ポート33は、合流管20の入口管22に接続される。ポート34は、合流管20の出口管23に接続される。ポート35は、質量分析装置180に接続される。ポート36は、検出器160に接続される。
【0021】
流路切替バルブ30は、第1の流路状態と第2の流路状態とで切り替え可能である。第1の流路状態においては、ポート31,32間が接続され、ポート33,34間が接続され、ポート35,36間が接続される。第2の流路状態においては、ポート32,33間が接続され、ポート34,35間が接続され、ポート36,31間が接続される。
【0022】
制御部40は、例えばCPU(中央演算処理装置)およびメモリ、またはマイクロコンピュータ等を含み、分析装置100の各部の動作を制御する。また、制御部40は、検出器160,170または質量分析装置180における検出結果に基づいて、クロマトグラム等のデータを生成する。生成されたデータは、試料の成分の確認または分析装置100の各部の動作の制御に用いられる。
【0023】
(2)分析装置の動作
分析装置100は、分析動作と分取動作とを選択的に実行する。図2は、分析装置100の分析動作を説明するための図である。図2に示すように、分析動作時には、流路切替バルブ30は第1の流路状態になる。また、溶離液供給部110の溶離液切替バルブ113は、ボトル1に貯留された移動相が送液ポンプ111に導かれるようにボトル1と送液ポンプ111とを接続する。これにより、図2に太い実線で示す流路が形成される。
【0024】
分析動作時においては、送液ポンプ111は、ボトル1に貯留された移動相を供給する。また、送液ポンプ112は、ボトル3に貯留された移動相を供給する。送液ポンプ111により供給された移動相は、流路切替バルブ30のポート32,31を通して溶離液供給部110の混合部114に導入される。混合部114は、送液ポンプ111により流路切替バルブ30を介して供給された移動相と、送液ポンプ112により供給された移動相とを、比率を連続的に変えつつ混合して送液する。
【0025】
試料供給部130は、図示しないトレイに保持された任意のバイアルから分析対象の試料を採取し、注入ポート131から流路に供給する。注入ポート131から供給された試料は、混合部114により供給された移動相とともに分離カラム140に導入される。以下の説明では、移動相に含まれる試料を単に試料と呼ぶ。分離カラム140は、導入された試料を成分ごとに分離する。分離カラム140により成分ごとに分離された試料は、検出器160に導入される。
【0026】
検出器160は、導入された試料の成分を検出する。検出器160の下流からは、試料の成分が導出される。検出器160から導出された試料の成分は、流路切替バルブ30のポート36,35を通して質量分析装置180に導入される。質量分析装置180は、導入された試料の成分の質量分析を行うことにより、試料の成分を検出する。
【0027】
このように、分析動作時においては、流路切替バルブ30が第1の流路状態に切り替えられる。これにより、送液ポンプ111により供給された移動相が分離カラム140に導かれるとともに、分離カラム140を通過した試料が質量分析装置180に導かれる。検出器160または質量分析装置180による検出結果に基づいて、制御部40により液体クロマトグラムまたはマスクロマトグラム等のデータが生成される。生成されたデータは、分析対象の試料の成分の確認に用いられる。
【0028】
図3は、分析装置100の分取動作を説明するための図である。図3に示すように、分取動作時には、流路切替バルブ30は第2の流路状態になる。また、溶離液供給部110の溶離液切替バルブ113は、ボトル2に貯留されたメイクアップ溶液が送液ポンプ111に導かれるようにボトル2と送液ポンプ111とを接続する。これにより、図3に太い実線で示す流路が形成される。
【0029】
分取動作時においては、溶離液供給部120の送液ポンプ121は、ボトル4に貯留された移動相を供給する。また、送液ポンプ122は、ボトル5に貯留された移動相を供給する。混合部123は、送液ポンプ121により供給された移動相と、送液ポンプ122により供給された移動相とを、比率を連続的に変えつつ混合して送液する。
【0030】
試料供給部130は、図示しないトレイに保持されたバイアルから分析動作時に分析が行われた試料と同一種類の試料を採取し、注入ポート132から流路に供給する。注入ポート132から供給された試料は、混合部123により供給された移動相とともに分離カラム150に導入される。分離カラム150は、導入された試料を成分ごとに分離する。なお、分離カラム150の容量は分離カラム140の容量よりも大きいので、分離カラム140よりも大量の試料を成分ごとに分離することができる。
【0031】
分離カラム150により成分ごとに分離された試料は、分岐管10の入口管11に導入される。入口管11に導入された試料の成分は、出口管12,13の各々から導出される。出口管12から導出される試料の容量は、出口管13から導出される試料の容量よりも大きい。出口管12から導出される試料の容量と、出口管13から導出される試料の容量との比は、例えば2000:1である。
【0032】
分岐管10の出口管12から導出された試料の成分は、検出器170に導入される。検出器170は、導入された試料の成分を検出する。検出器170の下流からは、試料の成分が導出され、捕集部190に導入される。捕集部190は、制御部40により生成されたデータに基づいて、導入された試料を成分ごとに異なる容器に捕集する。
【0033】
一方、分岐管10の出口管13から導出された試料の成分は、合流管20の入口管21に導入される。また、溶離液供給部110の送液ポンプ111は、ボトル2に貯留されたメイクアップ溶液を供給する。送液ポンプ111により供給されたメイクアップ溶液は、流路切替バルブ30のポート32,33を通して合流管20の入口管22に導入される。入口管21に導入された試料の成分は、入口管22に導入されたメイクアップ溶液とともに出口管23から導出される。
【0034】
合流管20の出口管23から導出された試料の成分は、メイクアップ溶液により輸送され、流路切替バルブ30のポート34,35を通して質量分析装置180に導入される。これにより、試料の容量が小さい場合でも、試料の成分を質量分析装置180に効率よく導入することができる。また、質量分析装置180における試料のイオン化効率および検出の感度を向上させることができる。質量分析装置180は、導入された試料の成分の質量分析を行うことにより、試料の成分を検出する。
【0035】
このように、分取動作時においては、流路切替バルブ30が第2の流路状態に切り替えられる。これにより、送液ポンプ111により供給されたメイクアップ溶液および分離カラム150を通過した試料の一部が質量分析装置180に導かれる。検出器170または質量分析装置180による検出結果に基づいて、制御部40により液体クロマトグラムまたはマスクロマトグラム等のデータが生成される。生成されたデータは、捕集部190による試料の成分ごとの捕集に用いられる。
【0036】
(3)効果
本実施の形態に係る分析装置100においては、送液ポンプ111により溶離液が供給される。試料供給部130により注入ポート131から試料の分析に用いられる分離カラム140に試料が供給される。試料供給部130により注入ポート132から試料の分取に用いられる分離カラム150に試料が供給される。分離カラム140または分離カラム150を通過した試料が質量分析装置180により検出される。
【0037】
ここで、流路切替バルブ30が第1の流路状態と第2の流路状態とで切り替えられる。第1の流路状態においては、送液ポンプ111により供給された溶離液が分離カラム140に導かれるとともに、分離カラム140を通過した試料が質量分析装置180に導かれる。第2の流路状態においては、送液ポンプ111により供給された溶離液および分離カラム150を通過した試料の一部が質量分析装置180に導かれる。
【0038】
この構成によれば、流路切替バルブ30が第1の流路状態と第2の流路状態とで切り替えられることにより、分離カラム140を用いた試料の分析と、分離カラム150を用いた試料の分取とが選択的に実行される。分析動作における分離カラム140への溶離液の供給および質量分析装置180への分離後の試料の導入と、分取動作における質量分析装置180への分離後の試料の導入とを共通の送液ポンプ111により行うことが可能である。
【0039】
この場合、分析動作における分離カラム140への溶離液の供給および質量分析装置180への分離後の試料の導入を行うための送液ポンプと、分取動作における質量分析装置180への分離後の試料の導入を行うための送液ポンプとを別個に設ける必要がない。これにより、分析装置100の大型化および高額化を防止することができる。
【0040】
また、分離カラム140への試料の供給と分離カラム150への試料の供給とは、共通の試料供給部130により選択的に実行される。この場合、分離カラム140に試料を供給する試料供給部と、分離カラム150に試料を供給する試料供給部とを別個に設ける必要がない。これにより、分取システムの大型化および高額化をより確実に防止することができる。
【0041】
試料の分析に用いられる移動相と、メイクアップ溶液とが溶離液として溶離液切替バルブ113により選択的に送液ポンプ111に導かれる。送液ポンプ111は、溶離液切替バルブ113により導かれた溶離液を供給する。この場合、分析装置100の大型化および高額化を防止しつつ、適切な移動相を溶離液として用いて試料を適切に分析するとともに、適切なメイクアップ溶液を溶離液として用いて試料を適切に分取することができる。
【0042】
流路切替バルブ30においては、ポート31が分離カラム140の上流における混合部114に接続され、ポート32が送液ポンプ111に接続される。ポート33が合流管20の入口管22に接続され、ポート34が合流管20の出口管23に接続される。ポート35が質量分析装置180に接続され、ポート36が分離カラム140の下流にある検出器160に接続される。また、合流管20の入口管11が分離カラム150の下流に接続され、合流管20の入口管21が分岐管10の出口管13に接続される。
【0043】
第1の流路状態においては、ポート31,32間、ポート33,34間およびポート35,36間が接続される。第2の流路状態においては、ポート32,33間、ポート34,35間およびポート36,31間が接続される。この場合、簡単な構成で、共通の送液ポンプ111により分析動作時に分離カラム140への溶離液の供給および質量分析装置180への分離後の試料の導入を行い、分取動作時に質量分析装置180への分離後の試料の導入を行うことができる。
【0044】
(4)他の実施の形態
(a)上記実施の形態においては、溶離液供給部110は2つの送液ポンプ111,112を含むが、実施の形態はこれに限定されない。溶離液供給部110は、送液ポンプ111を含めばよく、送液ポンプ112を含まなくてもよい。この場合、溶離液供給部110は混合部114を含まない。したがって、流路切替バルブ30のポート31は、分離カラム140の上流(例えば試料供給部130の注入ポート131)に接続される。
【0045】
同様に、溶離液供給部120は2つの送液ポンプ121,122を含むが、実施の形態はこれに限定されない。溶離液供給部120は、送液ポンプ121,122の一方を含めばよく、送液ポンプ121,122の他方を含まなくてもよい。この場合、溶離液供給部120は混合部123を含まない。
【0046】
(b)上記実施の形態において、移動相とメイクアップ溶液とで異なる溶離液が用いられるが、実施の形態はこれに限定されない。移動相とメイクアップ溶液とで同じ溶離液が用いられてもよい。この場合、溶離液供給部110は溶離液切替バルブ113を含まない。
【0047】
(c)上記実施の形態において、分離カラム140への試料の供給と分離カラム150への試料の供給とが共通の試料供給部130により実行されるが、実施の形態はこれに限定されない。分離カラム140に試料を供給する試料供給部と、分離カラム150に試料を供給する試料供給部とが別個に設けられてもよい。
【0048】
(d)上記実施の形態において、分析装置100は分離カラム150を通過した試料の他の一部を捕集する捕集部190を含む。この場合、試料の分取を容易に行うことができる。しかしながら、実施の形態はこれに限定されない。分析装置100は捕集部190を含まなくてもよい。
【0049】
(e)上記実施の形態において、試料の検出に質量分析装置180が用いられる。この場合、分離カラム140または分離カラム150を通過した試料の成分を詳細に分析することができる。しかしながら、実施の形態はこれに限定されない。試料の検出に他の検出器が用いられてもよい。分取動作時に、分岐管10の出口管12から導出される試料の容量が小さい場合でも、試料は送液ポンプ111により供給される溶離液により輸送されるので、試料の検出に所望の検出器を用いることができる。
【0050】
(f)上記実施の形態において、分析装置100は検出器160,170を含むが、実施の形態はこれに限定されない。試料の成分は、質量分析装置180により検出することが可能である。そのため、分析装置100は、検出器160,170の一方または両方を含まなくてもよい。
【0051】
(5)態様
上記の複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0052】
(第1項)一態様に係る分析装置は、
溶離液を供給する送液ポンプと、
試料の分析に用いられる第1の分離カラムと、
前記第1の分離カラムに試料を供給する第1の試料供給部と、
試料の分取に用いられる第2の分離カラムと、
前記第2の分離カラムに試料を供給する第2の試料供給部と、
前記第1の分離カラムまたは前記第2の分離カラムを通過した試料を検出する検出器と、
前記送液ポンプにより供給された前記溶離液を前記第1の分離カラムに導くとともに前記第1の分離カラムを通過した試料を前記検出器に導く第1の流路状態と、前記送液ポンプにより供給された前記溶離液および前記第2の分離カラムを通過した試料の一部を前記検出器に導く第2の流路状態とに切り替え可能な流路切替バルブとを備えてもよい。
【0053】
この分析装置においては、分析動作における第1の分離カラムへの溶離液の供給および検出器への分離後の試料の導入と、分取動作における検出器への分離後の試料の導入とを共通の送液ポンプにより行うことが可能である。そのため、分析動作における第1の分離カラムへの溶離液の供給および検出器への分離後の試料の導入を行うための送液ポンプと、分取動作における検出器への分離後の試料の導入を行うための送液ポンプとを別個に設ける必要がない。これにより、分析装置の大型化および高額化を防止することができる。
【0054】
(第2項)第1項に記載の分析装置は、
前記第2の分離カラムを通過した試料の他の一部を捕集する捕集部をさらに備えてもよい。
【0055】
この場合、試料の分取を容易に行うことができる。
【0056】
(第3項)第1項または第2項に記載の分析装置において、
前記第1の試料供給部と前記第2の試料供給部とは、前記第1の分離カラムへの試料の供給と前記第2の分離カラムへの試料の供給とを選択的に実行する共通の試料供給部により構成されてもよい。
【0057】
この場合、第1の試料供給部と第2の試料供給部とを別個に設ける必要がない。これにより、分取システムの大型化および高額化をより確実に防止することができる。
【0058】
(第4項)第1項~第3項のいずれか一項に記載の分析装置において、
前記検出器は、質量分析装置を含んでもよい。
【0059】
この場合、第1の分離カラムまたは第2の分離カラムを通過した試料の成分を詳細に分析することができる。
【0060】
(第5項)第1項~第4項のいずれか一項に記載の分析装置は、
試料の分析に用いられる移動相と、メイクアップ溶液とを前記溶離液として選択的に前記送液ポンプに導く溶離液切替バルブをさらに備え、
前記送液ポンプは、前記溶離液切替バルブにより導かれた前記溶離液を供給してもよい。
【0061】
この場合、分析装置の大型化および高額化を防止しつつ、適切な移動相を溶離液として用いて試料を適切に分析するとともに、適切なメイクアップ溶液を溶離液として用いて試料を適切に分取することができる。
【0062】
(第6項)第1項~第5項のいずれか一項に記載の分析装置は、
前記第2の分離カラムの下流に接続された第1の入口管と、第2の入口管と、出口管とを含む合流管をさらに備え、
前記流路切替バルブは、
前記第1の分離カラムの上流に接続された第1のポートと、
前記送液ポンプに接続された第2のポートと、
前記合流管の前記第2の入口管に接続された第3のポートと、
前記合流管の前記出口管に接続された第4のポートと、
前記検出器に接続された第5のポートと、
前記第1の分離カラムの下流に接続された第6のポートとを含み、
前記第1の流路状態においては、前記第1のポートと前記第2のポートとの間、前記第3のポートと前記第4のポートとの間、および前記第5のポートと前記第6のポートとの間が接続され、
前記第2の流路状態においては、前記第2のポートと前記第3のポートとの間、前記第4のポートと前記第5のポートとの間、および前記第6のポートと前記第1のポートとの間が接続されてもよい。
【0063】
この場合、簡単な構成で、共通の送液ポンプにより分析動作時に第1の分離カラムへの溶離液の供給および検出器への分離後の試料の導入を行い、分取動作時に検出器への分離後の試料の導入を行うことができる。
【符号の説明】
【0064】
1~5…ボトル,10…分岐管,11,21,22…入口管,12,13,23…出口管,20…合流管,30…流路切替バルブ,31~36…ポート,40…制御部,100…分析装置,110,120…溶離液供給部,111,112,121,122…送液ポンプ,113…溶離液切替バルブ,114,123…混合部,130…試料供給部,131,132…注入ポート,140,150…分離カラム,160,170…検出器,180…質量分析装置,190…捕集部
図1
図2
図3